説明

状態検出方法、状態検出システム及び自動車

【課題】電気機器のオン/オフの状態を検出する状態検出方法、状態検出システム及び自動車の提供。
【解決手段】自動車1に搭載された前方ライト31,32、後方ライト33,34及びパーキングライト35,36などの複数の電気機器のオン/オフの状態を検出するシステムにおいて、任意の点における少なくとも異なる2方向の磁場の大きさを計測する磁力計72と、磁力計72が計測した磁場の大きさの夫々に対する各電気機器(31〜36)の寄与を特定する解析装置74とを備え、この解析装置74による解析結果に基づき、各電気機器(31〜36)のオン/オフの状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器のオン/オフの状態を検出する状態検出方法、状態検出システム及び自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車では、ヘッドライトや方向指示灯の電球などの電気機器に欠陥がないか否かを検出することが望まれる。特に、運転者が、夜までに、前方ライトの1つが機能していないことに容易に気付いたとしても、後方ライトや停止ライトの機能不良に気付かない可能性がある。このような問題は、照明機器以外の電気機器においても発生し得る。
【0003】
ライトの切断を検出し、切断したライトを特定する技術は既に存在する。例えば、特許文献1は、正方形の馬蹄型磁心を有し、その空隙にホール探針を備えた装置を開示している。特許文献1が開示する技術では、バッテリと各ライトとの間の電力供給用のリード線を、ライト毎に異なる回数だけ磁心に巻回する構成としている。よって、磁心の空隙において計測する磁場は、ライトのオン/オフの決定に活用することができる。また、同様の技術は特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5744961号明細書
【特許文献2】米国特許第5041761号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術による場合、電気機器毎に電力供給用のリード線を迂回させて、磁心の周りに巻回しなければならない。そこで、リード線を磁心へ迂回させることなく、自動車の電気機器のそれぞれのオン/オフ状態を検出する手法が望まれていた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電気機器への電力供給を行うリード線を磁心へ迂回させることなく、自動車の電気機器のそれぞれのオン/オフ状態を検出することができる状態検出方法、状態検出システム及び自動車を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、電気的接続を修正することなく、既存の電気機器のオン/オフの状態を検出する方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、既存の自動車に適用可能な状態検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る状態検出方法は、複数の電気機器のオン/オフの状態を検出する方法において、任意の点における少なくとも異なる2方向の磁場の大きさを計測し、計測結果を解析して、磁場の大きさ夫々に対する各電気機器の寄与を特定することにより、各電気機器のオン/オフの状態を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る状態検出方法は、各電気機器を個別にオン又はオフした場合の前記方向における磁場の大きさを学習し、学習結果を参照して、計測した磁場の解析を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る状態検出方法は、各電気機器の状態を示す変数を要素とする状態ベクトルと計測されるべき各方向の磁場の大きさを要素とする磁場ベクトルとの間の関係を示す係数行列を学習により算出し、算出した係数行列と計測した各方向の磁場の大きさとを用いて状態ベクトルを求めることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る状態検出方法は、各電気機器の状態の変化を示す変数を要素とする状態変化ベクトルと各方向の磁場の大きさの時間変化を要素とする磁場変化ベクトルとの間の関係を示す係数行列を学習により算出し、各方向の磁場の大きさを時系列的に計測して、磁場の時間変化を検出し、算出した係数行列と検出した磁場の時間変化とを用いて状態変化ベクトルを求めることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る状態検出方法は、求めた状態変化ベクトルを用いて、各電気機器の変化後の状態に対する確度を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る状態検出システムは、複数の電気機器のオン/オフの状態を検出するシステムにおいて、任意の点における少なくとも異なる2方向の磁場の大きさを計測する計測装置と、該計測装置が計測した磁場の大きさ夫々に対する各電気機器の寄与を特定する解析装置とを備え、該解析装置による解析結果に基づき、各電気機器のオン/オフの状態を検出するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る状態検出システムは、前記解析装置は、各電気機器を個別にオン又はオフした場合の前記方向における磁場の大きさを学習し、学習結果を参照して、計測した磁場の解析を行うようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る状態検出システムは、前記計測装置は、3軸の磁力計であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る状態検出システムは、前述した発明の何れか1つに記載の状態検出システムを備えた自動車であって、複数の電気機器と、前記電気機器のオン/オフの切り替えを制御する制御装置とを備え、前記状態検出システムにより、前記電気機器夫々のオン/オフの状態を検出するようにしてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による場合は、自動車に搭載された電気機器の意図的又は偶発的なオン/オフを、簡易な手法で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る状態検出システムを搭載した自動車の一例を示す概略図である。
【図2】ランプの点灯及び消灯を連続して行った場合の磁気センサの応答波形の一例を示すタイミングチャートである。
【図3】3軸磁力計による応答例を示すタイミングチャートである。
【図4】図1に示すバッテリから各ライトまでの電気経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下の図面において、同一の構成要素に対して同じ符号を付すものとしている。また、明瞭化のために、本願発明の理解に役立つ構成要素のみを示して説明を行う。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る状態検出システムを搭載した自動車の一例を示す概略図である。図1の平面図に示す自動車1には、自動車灯のオン/オフの状態を検出するためのシステム(状態検出システム)が搭載されている。自動車灯(及びその他の電気機器)には、バッテリ2から電力が供給される。図1に示した例では、自動車灯として、前方ライト31,32、後方ライト33,34、及びパーキングライト35,36が自動車1に搭載されている。
本実施の形態では、これらの自動車灯を監視対象として、各ライト31〜36のオン/オフの状態を検出する構成について説明するが、その他の電気機器も監視対象となり得ることは勿論のことである。
【0022】
自動車灯には、フューズボード4を介して電力が供給され、ステアリングホイールのレバー操作及びダッシュボードの制御により利用可能にしている。フューズボード4は、一般的にインストルメント・パネルの操作盤5に集約されたスイッチにより制御される。図1では、簡略化のために、フューズボード4及びインストルメント・パネルの操作盤5を概略的に記載している。フューズボード4及び操作盤5は、リード線45の束により接続されている。フューズボード4及び/又は操作盤5は、リード線又は電気的接続により自動車灯へ接続される。
【0023】
また、図1は、以下の配線を示す。配線61は、フューズボード4から前方ライト31への接続を示し、前方ライト31,32の並列接続のために、延長配線62が前方ライト32まで設けられている。配線63は、フューズボード4から後方ライト33への接続を示し、後方ライト33,34の並列接続のために、延長配線64が後方ライト34まで設けられている。配線65は、操作盤5からパーキングライト35への接続を示し、パーキングライト35,36の並列接続のために、延長配線66がパーキングライト36まで設けられている。
【0024】
フューズボード4の上流側又は下流側のスイッチへの電気機器の接続は、当該機器をフューズによって保護すべきか否かに依る。また、スイッチを使用することなく、自動車用オンボード・コンピュータ等を用いて電力が供給される電気機器が搭載されていてもよい。
【0025】
自動車灯(各ライト31〜36)のオン/オフの状態(接続/非接続の状態)を検出する本実施の形態の状態検出システムは、例えば、自動車1の任意の場所(図1の例では中央付近)に配置された磁力計72を備える。この磁力計72は、少なくとも2つの磁気センサ(不図示)を備え、計測した磁場を表す信号を、解析装置74へ出力する。解析装置74には、バッテリ2より電力が供給される。
【0026】
本願では、磁力計72で計測された磁場を解析装置74が解析することにより、電気機器(各ライト31〜36)のオン/オフの状態を抽出する。
【0027】
電気機器の電力供給用リード線に電流が流れた場合、磁力計72で検知し得る磁場が誘起される。
【0028】
本実施の形態では、ライト31〜36の夫々に対して1本のリード線(正電圧)により電力を供給し、各ライト31〜36は、車体を通じて接地しているという事実を利用する。仮に、バッテリ2の負極に接続されたリード線が、上記のリード線と対をなす場合、一方向に流れる電流によって誘起される磁場と、他方向に流れる電流によって誘起される磁場とが互いに打ち消しあうようになる。
【0029】
また、本実施の形態は、磁場(各センサのレベルの合成値)の大きさ及び方向が、バッテリ2と電気機器との間の電気経路に依存するという事実を利用して、各電気機器のオン/オフの状態を検出する。したがって、計測した磁場における個々の電気機器の寄与を分離することができ、どの自動車灯がオンとなっているかを検出し、特定することができるようになる。
なお、電気機器それぞれの磁場への寄与は、それに至る電気経路のみに依存するものではなく、電気強度にも依存する。
【0030】
また、本実施の形態では、様々な電気機器の磁場への寄与は互いに重畳されていることを考慮する。各ライトのバルブに流れる電流は、0又は定格値の2つの可能な値を持つ。例えば、パーキングライトのバルブには、1アンペア程度の電流が流れ、前方ライトのバルブには、5アンペア程度の電流が流れる。バルブ全体の寄与は、個々のバルブの寄与の和に等しい。
【0031】
図2は、ランプの点灯及び消灯を連続して行った場合の磁気センサの応答波形の一例を示すタイミングチャートである。各ライトのバルブの状態に応じて異なるレベル、すなわち、レベルA(オン)及びレベルE(オフ)が観測される。この例において、横軸は時間tであり、縦軸は磁場Bを表す。磁場Bは、マイクロ・テスラの単位で計測される。2つのパラメータが基本的に磁場の大きさに影響を与えると考えられる。1つは、リード線(配線61〜66)を流れる電流の大きさであり、もう1つは、磁気センサから見たバッテリ2と各ライト31〜36との間の電気的な経路(距離及び方向)である。
【0032】
したがって、磁気センサによって計測される磁場のレベル変化を観測すれば十分である。このように、車内の電気配線に関して修正を加えることなく、簡易に実行することができるため、従来の検出手法に対して利点を有する。
【0033】
実施の形態2.
幾つかの電気機器は、センサ軸上に同一の成分を有する磁場を形成することができる。したがって、幾つかの計測経路を定義して、異なる方向における磁場の変化を、複数の磁気センサ又は多軸の磁力計を利用して計測することが望ましい。異なる経路上での応答を考慮することにより、関係している電気機器を特定することができる。
【0034】
図3は、3軸磁力計による応答例を示すタイミングチャートである。図4は、図1に示すバッテリ2から各ライト31〜36までの電気経路を示す模式図である。
【0035】
自動車1に対して任意の点を原点にとった座標系(例えば、直交座標系)を定め、各軸方向(x軸、y軸、z軸)を定義する。どの軸も他の軸と平行でないので、異なる電気経路による磁場の寄与は、ある電気経路からのものと、他の電気経路からのものとで相違する。また、直交座標系を用いれば、計測した信号間の差異を最大化することができる。
【0036】
各経路の参照レベルBx0,By0,Bz0(例えば、観測されるべき電気機器がオフ状態のレベル)に対し、ある電気機器(例えば、前方ライト31及び32)は、時刻t1にオン(点灯)して時刻t2にオフ(消灯)し、他の電気機器(例えば、後方ライト33及び34)は、時刻t3にオン(点灯)して時刻t4に(消灯)すると仮定する。
【0037】
図3に示されているように、電気機器の同じ要素による寄与は経路に応じて相違する。これは、電気機器の電気経路から生じる磁場の方向は、センサ方向に依存するためである。更に、各ライト31〜36は、同じ時刻に制御されたとしても、異なる電気経路を通じて電力が供給される。例えば、前方ライト31,32を点灯させる場合、一方の前方ライト31は、配線61のみを通じて電力が供給され、他方の前方ライト32は、配線61及び62の双方を通じて電力が供給される。したがって、たとえ一方のライトが点灯していても、他方のライトが消灯していれば、それを特定することができる。
【0038】
例えば、以下のようにして、応答を解析することにより、様々な電気機器のオン/オフの状態を特定することができる。
【0039】
磁力計72により計測する磁場の方向(軸方向)をiにより表記する。ここで、iは、1からmの自然数(ただし、mは2以上の値)をとる。図3及び図4の例では、m=3である。また、観測対象の電気経路(電気機器)をkにより表記する。ここで、kは1からnの自然数であり、図1及び図4の例では、n=6である。
また、Ik は、該当するライトが点灯している場合の電気経路kに流れる電流とする。αk,i は、各軸方向i及び各電気経路kに対する幾何学因子とする。εk は、該当するライトの点灯又は消灯(又は電力を供給している回路の欠陥)に応じて0又は1の値をとる状態変数である。目的は、各ライト31〜36に対する状態変数εkを決定することである。
【0040】
軸方向iで観測される磁場の大きさBi は、αk,i ×Ik ×εk の各電気経路kによる和にBi 0を加えた値となる。ここで、Bi0は、この電気経路における外場の寄与を表す。この変換式は、次の数式1により表される。
【0041】
【数1】

【0042】
第1の近似として、積αk,i ×Ikは、与えられた電気経路kに対して一定であることを考慮する。更に、強磁性体を有する非電気機器からの寄与は、単にBi0としている。
【0043】
数式1を行列方程式で表した場合、次の数式2のように表すことができる。
【0044】
【数2】

【0045】
ここで、Bは、磁場Bi の計測ベクトル、Mは、αk,i ・Ik を係数(行列要素)とするm行n列の混合行列、εは、観測対象のライトのそれぞれの状態に応じて0s及び1sを要素に持つ状態ベクトル、B0は、各軸方向の休止レベルの大きさを要素に持つベクトルを表す。
【0046】
混合行列Mは、学習フェーズにより決定される。例えば、自動車製造時の最終段階において、様々な電気機器を個別に作動させることにより、異なるセンサ上(異なる軸上)の各電気機器の寄与を記録して、混合行列Mの係数(行列要素)を得ることができる。
【0047】
作動中において、ベクトルBの計測(磁場Biの計測)と、混合行列M及びベクトルB0の知識とに基づき、状態ベクトルε(すなわち、電装機器の個々の状態)を決定することができる。
【0048】
実施の形態3.
休止レベルの値B0の変動を考慮することにより、状態検出の改善を図ることができる。本願発明者は、図2に示されるようにライト(31〜36)のスイッチをオンにした場合、磁場がピーク値をとることを見出し、そのピークは、特にコールド・スタートを行う場合において重要となる。このような磁場のピークは、電球の抵抗値が常温時には低い値を有するため、コールド・スタートにおいて電流がピーク値をとることに起因する。本願発明者は、このようなピーク電流は、近傍に位置する電力供給用のリード線を帯磁させるのに十分な大きさを有し、磁化は、この環境下において、より大きな電流がリード線に印加されるまで(すなわち、次のピーク電流が流れるまで)保持される。休止レベルの値B0は、このようにして変動する。
【0049】
磁場の値の急激な変化(遷移)は、一又は複数のライト(31〜36)の点灯又は消灯を示すため、この現象を考慮することにより、状態の検出が容易となる。他の有利な側面は、地磁気の変動や環境磁場による外乱などの影響を取り除くことができるということである。
【0050】
上述の表記を用いると、計測したベクトルBの変動ΔBは、電気機器を新たにオン/オフした際の寄与の代数和に対応する。上述した数式2は、以下のように修正される。
【0051】
【数3】

【0052】
ここで、Δεは、0s及び−1sを要素として持つ状態変化ベクトルである。ベクトルΔεのランクkの要素Δεk は、電気経路kに対応するライトが磁場の変動中にスイッチされなければ、0の値をとり、複数のライト31〜36のうちの1つがオフされることで磁場変動に寄与を与える場合、−1の値をとる。
【0053】
ベクトルBの遷移及びこれらの遷移の大きさを評価するために、ノイズを含む信号において遷移を検出することが可能な手法、所謂デリチェ法を用いることが望ましい。磁力計72により得られる信号に含まれるノイズは、このようにして取り除かれる。デリチェ法は、一般的に、画像処理の分野において、ノイズを含んだ画像信号からエッジを検出するために利用される。例えば、リュー(WY. Liu)、マニャン(IE. Mangnin)、及びヒメネス(G. Gimenez)、「ノイズ信号における遷移を検出するための新たな演算子(A new operator for the detection of transitions in noisy signals)」、信号処理(Traitementdu signal)、1995年、第12巻、第3号、p.225−236を参考として用いることができる。
【0054】
異なるセンサ信号に対してデリチェ演算子を適用することにより、計測した信号の遷移に対応したパルス波形を有するパルス信号が得られる。パルス幅は、演算子のパラメータ(α)に依存する。このパラメータは、幅のあるパルス信号を検出するために必要とされる検出精度と、短いパルス信号を検出するために必要とされる解像度とを勘案して定められる。
【0055】
例えば、時刻t0における応答θi (t0)は、信号Bi (t)にデリチェ演算子を適用した場合、以下の数式4のように表される。
【0056】
【数4】

【0057】
それぞれのパルスの大きさは、信号Bi の遷移の大きさに比例し、計測された信号として記録される。ここで、応答θi の大きさは、ΔBiに留意すべきでる。
【0058】
実施の形態4.
状態変化ベクトルを得るために、ベクトルΔεのそれぞれの可能な値Δεk を、対応する値の確率に関連付けて求めることも可能である。この手法は、例えば、タラントラ(A. Tarantla)著、「逆問題理論−データフィッティング及びモデルパラメータ推定の手法(Inverse Problem Theory - Method for Data Fitting and Model Parameter Estimation)」、エルゼビア(Elsevier)、1987年、p.1−161を参考として用いることができる。
【0059】
ベクトルΔεによって得られる可能性の夫々をz(zは、1と2n との間の値をとる)、σiを軸方向iにおける遷移の標準偏差とした場合、実現可能な状態の組み合わせとなるべき可能性zに対する確率Pz は、以下の数式5により表すことができる。
【0060】
【数5】

【0061】
各軸方向iに対し、計測ベクトルΔBi を、該当する軸方向の標準偏差σi で除算すると共に、各軸方向iに対し、混合行列Mの係数を、関連する軸方向の標準偏差σi で除算することによって得られる混合行列Mi’を計算することにより、上述した数式5は、次式のように単純化される。
【0062】
【数6】

【0063】
ベクトルΔεz の全てについて確率を計算し、最も高い確率の組み合わせが状態変化ベクトルを与える。
【0064】
実施の形態5.
検出の信頼度は、バッテリ2の電圧Uを考慮することによって更に高めることができる。例えば、自動車1のモータが稼働している場合、モータが停止している場合と比較して、バッテリ2の電圧は高くなる。更に、停止状態では、バッテリ2による電流出力に従って低下するかもしれない。この場合、各電気機器を通過する電流強度Ik は一定ではなく、バッテリ2の電圧Uに依存する。よって、より好ましくは、この変化を考慮する必要がある。
【0065】
本実施の形態では、Bi よりもBi /Uの大きさを考慮する。例えば、学習フェーズにおいて、電気機器の抵抗を考慮してバッテリ電圧を変化させることにより、混合行列Mの様々な係数を取得する。そして、計測した磁場の値(計測ベクトルB)を、バッテリ2の現在の電圧で除算した値を求める。前述の実施の形態の1つに従い、レベル(数式2の適用)又は遷移(数式3の適用)に基づいて、各電気機器の状態を決定することができる。
【0066】
以上の実施の形態1〜5では、自動車1に搭載された電気機器の意図的又は偶発的なオン/オフを、簡易な手法で検出することができる。特に、本実施の形態では、強磁性体コアにリード線を巻回する必要がなく、電気経路に修正を加える必要がない。
【0067】
また、本発明は、既存の自動車と互換性があり、自動車の装備品として導入することが可能である。導入したシステムにおいて、異なる電気機器を順次オン/オフし、必要なパラメータを求める学習フェーズを設ければ十分である。
【0068】
なお、自動車1に搭載された電気機器の全てを監視対象とする必要はない。その場合、パラメータ化されていないシステムについては、ある電気機器のオン/オフの切り替えは認識されない。それらの磁場への寄与は、混合行列に含まれるものとは相違する。
【0069】
本発明の具体的な実施の形態を記載した。当業者は、上述した実施の形態に対し、様々な変更や修正を加えることが可能である。例えば、監視すべき電気機器の選択は、それぞれの寄与を検出するために実行される学習フェーズに影響を与える。
【0070】
また、本実施の形態に基づいて実用的に実装することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、本実施の形態では、DC(アナログ)信号について記載したが、実際の演算は、計測した信号のサンプリング、システム解像度に合わせたサンプリング周波数の選択を必要とし、デジタル回路により実行されるものである。
【0071】
また、本実施の形態では、スイッチによりオン/オフされる自動車灯について記載したが、監視対象の電気機器は調光可能な自動車灯であってもよい。また、自動車灯に限らず、様々な電気機器を監視対象として、オン/オフの状態を検出することが可能である。
【0072】
以上のような変更、修正、および改良も本願の開示の一部であり、本発明の技術思想の範囲内に属するものである。実施の形態は1つの例に過ぎず、本願発明を、実施の形態の内容に限定する意図はない。
【符号の説明】
【0073】
1 自動車
2 バッテリ
4 フューズボード
5 操作盤
31,32 前方ライト
33,34 後方ライト
35,36 パーキングライト
72 磁力計
74 解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気機器のオン/オフの状態を検出する方法において、
任意の点における少なくとも異なる2方向の磁場の大きさを計測し、
計測結果を解析して、磁場の大きさ夫々に対する各電気機器の寄与を特定することにより、各電気機器のオン/オフの状態を検出する
ことを特徴とする状態検出方法。
【請求項2】
各電気機器を個別にオン又はオフした場合の前記方向における磁場の大きさを学習し、
学習結果を参照して、計測した磁場の解析を行うことを特徴とする請求項1に記載の状態検出方法。
【請求項3】
各電気機器の状態を示す変数を要素とする状態ベクトルと計測されるべき各方向の磁場の大きさを要素とする磁場ベクトルとの間の関係を示す係数行列を学習により算出し、
算出した係数行列と計測した各方向の磁場の大きさとを用いて状態ベクトルを求めることを特徴とする請求項2に記載の状態検出方法。
【請求項4】
各電気機器の状態の変化を示す変数を要素とする状態変化ベクトルと各方向の磁場の大きさの時間変化を要素とする磁場変化ベクトルとの間の関係を示す係数行列を学習により算出し、
各方向の磁場の大きさを時系列的に計測して、磁場の時間変化を検出し、
算出した係数行列と検出した磁場の時間変化とを用いて状態変化ベクトルを求めることを特徴とする請求項2に記載の状態検出方法。
【請求項5】
求めた状態変化ベクトルを用いて、各電気機器の変化後の状態に対する確度を算出することを特徴とする請求項4に記載の状態検出方法。
【請求項6】
複数の電気機器のオン/オフの状態を検出するシステムにおいて、
任意の点における少なくとも異なる2方向の磁場の大きさを計測する計測装置と、
該計測装置が計測した磁場の大きさ夫々に対する各電気機器の寄与を特定する解析装置と
を備え、
該解析装置による解析結果に基づき、各電気機器のオン/オフの状態を検出するようにしてあることを特徴とする状態検出システム。
【請求項7】
前記解析装置は、各電気機器を個別にオン又はオフした場合の前記方向における磁場の大きさを学習し、
学習結果を参照して、計測した磁場の解析を行うようにしてあることを特徴とする請求項6に記載の状態検出システム。
【請求項8】
前記計測装置は、3軸の磁力計であることを特徴とする請求項6に記載の状態検出システム。
【請求項9】
請求項6から請求項8の何れか1つに記載の状態検出システムを備えた自動車であって、
複数の電気機器と、
前記電気機器のオン/オフの切り替えを制御する制御装置と
を備え、
前記状態検出システムにより、前記電気機器夫々のオン/オフの状態を検出するようにしてあることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−148492(P2011−148492A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11174(P2011−11174)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)