説明

独立気泡成形体用樹脂組成物及び独立気泡成形体

【課 題】 予備的な混練温度では成形用樹脂と混練しても熱膨張せず、高温成形時の加熱によって均一な独立気泡が形成される独立気泡成形体を製造できる独立気泡成形体用樹脂組成物の提供。
【解決手段】マトリックス樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルを含有してなる独立気泡成形体用樹脂組成物であって、前記熱膨張性マイクロカプセルが、(I)(a)ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーとカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合ポリマーおよび(b)該共重合ポリマーをイオン架橋している1〜3価の金属カチオンを含むシェル、ならびに(II)揮発性膨張剤を含むコアからなることを特徴とする独立気泡成形体用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い成形温度で成形しても軽量性、断熱性、耐衝撃性、剛性などに優れた独立気泡成形体に導きうる成形用樹脂組成物及びそれから得られる独立気泡成型体に関する。更に、詳しくは、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、押出成形等において高い成形温度で成形しても独立気泡がつぶれにくい独立気泡成形体用樹脂組成物及びそれから得られる独立気泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック発泡体は、発泡体の素材と形成された気泡の状態に応じて遮熱性、断熱性、遮音性、吸音性、防振性、軽量化などを発現させることができ、様々な用途で用いられている。例えば、化学発泡剤を発泡させて得られた発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリ塩化ビニル等からなる発泡樹脂の表面に、ポリ塩化ビニルやオレフィン系熱可塑性エラストマーなどからなる樹脂シートもしくはファブリックを表皮材として貼り合わせた複合成形体がクッション材として使用されていた。
また、表皮材を貼り合わせずに、化学発泡剤を含有する熱可塑性エラストマーと表皮用樹脂とをキャビティームーブ法によって射出成形して得られた表皮付き発泡体も提案されている。
【0003】
しかしながら、化学発泡剤を用いた成形用樹脂組成物では加熱しても発泡しないことがあり、射出発泡成形機内で発泡剤が急激に分解する恐れもあるなど取り扱いが難しい。したがって、樹脂の種類によっては十分な発泡倍率を得ることができず成形体として所望の硬度を得ることが困難な場合があった。
近年において、この問題を解決すべく種々検討されており、特許文献1には、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、重炭酸塩などの化学発泡剤を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体のマスターバッチペレットを用いることにより、樹脂の種類を問わず硬度や発泡率が高く均一な気泡が形成された射出発泡成形体が得られる旨記載されている。
【0004】
しかしながら、加熱分解した化学発泡剤は分解ガスと同時に発泡残さを生じ、成形体に残った残さが成形体の接着性能に影響を与えることがあった。また、化学発泡剤を使用すると、全てが独立気泡とはならず、どうしても連続気泡となる部分が生じてしまい気密性が非常に高い発泡成形体を得ることが難しいといった問題点があった。
これに対して、特許文献2には、ラジカル架橋性エラストマーと熱可塑性樹脂とからなる架橋された熱可塑性エラストマー組成物を、化学発泡剤に代えて熱膨張性マイクロカプセルで発泡させてなる熱可塑性エラストマー発泡体が記載され、さらに、この熱膨張性マイクロカプセルをマスターバッチの形態で用いてもよい旨記載されており、実施例では熱膨張性マイクロカプセルがマスターバッチの形態で用いられている。
しかしながら、実施例で挙げられているような市販の熱膨張性マイクロカプセルは、低温で発泡するものであって、高温での使用を想定した熱膨張性マイクロカプセルではなかった。したがって、熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡体では独立気泡を一定の大きさにすることが難しく、均一な独立気泡が形成された独立気泡成形体を得ることが難しかった。
【0005】
また、ニトリル系モノマー80重量%以上、非ニトリル系モノマー20重量%以下および架橋剤0.1〜1重量%を含有する重合成分から得られるポリマーを用いて、揮発性膨張剤をマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルにおいて、非ニトリル系モノマーがメタクリル酸エステル類またはアクリル酸エステル類である熱膨張性マイクロカプセルが特許文献3に開示されている。また、この特許文献3に記載の熱膨張性マイクロカプセルは、従来の熱膨張性マイクロカプセルに比べ耐熱性に優れ、140℃以下では発泡しないと記載されているが、実際には130〜140℃で1分程度加熱を続けると一部のマイクロカプセルが熱膨張してしまうものであり、また、この方法では、最大発泡温度が180℃以上を得ることは困難であった。
【0006】
また、ニトリル系モノマーを85重量%以上含有するエチレン性不飽和モノマーの単独重合体もしくは共重合体からなるシェルポリマーとイソオクタンを50重量%以上含有する発泡剤とからなる熱膨張性マイクロカプセルが特許文献4に開示されている。この特許文献4によると、最大発泡温度が好ましくは190℃以上(最も好ましくは200℃以上)の熱膨張性マイクロカプセルが得られるとされている。したがって、最大発泡温度が非常に高い。
しかし、このような最大発泡温度が190℃以上の熱膨張性マイクロカプセルは成形時の短時間の加熱に対しては高い耐熱性を示していたが、熱膨張性マイクロカプセルを成形用樹脂と110℃程度の温度で混練してマスターバッチを作製しようとする場合には、混練中に一部の熱膨張性マイクロカプセルが膨張してしまうといった問題点があった。
【特許文献1】特開2000−178372号公報
【特許文献2】特開平11−343362号公報
【特許文献3】特許第2894990号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1149628号明細書(EP 1 149 628 A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、予備的な混練温度では成形用樹脂と混練しても熱膨張せず、高温成形時の加熱によって均一な独立気泡が形成される独立気泡成形体を製造できる独立気泡成形体用樹脂組成物、及び気密性が高く、高い断熱性を有する該独立気泡成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、マトリックス樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルを含有してなる独立気泡成形体用樹脂組成物であって、前記熱膨張性マイクロカプセルが、(I)(a)ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーとカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合ポリマーおよび(b)該共重合ポリマーをイオン架橋している1〜3価の金属カチオンを含むシェル、ならびに(II)揮発性膨張剤を含むコアからなることを特徴とする独立気泡成形体用樹脂組成物が、予備的な混練温度では成形用樹脂と混練しても熱膨張せず、高温成形時の加熱によって均一な独立気泡が形成される独立気泡成形体を製造可能にすることを見出し、該独立気泡成形体用樹脂組成物から得られる独立気泡成形体が、気密性が高く、高い断熱性を有することを知見した。
また、本発明者らは、上記種々の知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] マトリックス樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルを含有してなる独立気泡成形体用樹脂組成物であって、前記熱膨張性マイクロカプセルが、(I)(a)ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーとカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合ポリマーおよび(b)該共重合ポリマーをイオン架橋している1〜3価の金属カチオンを含むシェル、ならびに(II)揮発性膨張剤を含むコアからなることを特徴とする独立気泡成形体用樹脂組成物、
[2] 上記熱膨張性マイクロカプセルにおける揮発性膨張剤は、沸点が60℃以上の炭化水素であることを特徴とする前記[1]記載の独立気泡成形体用樹脂組成物、
[3] 上記熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡温度が200℃以上であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の独立気泡成形体用樹脂組成物、
[4] 上記熱膨張性マイクロカプセルにおけるシェル中のニトリル成分が80重量%未満であることを特徴とする前記[1]、[2]又は[3]記載の独立気泡成形体用樹脂組成物、および
[5] 上記マトリックス樹脂が、硬質発泡体が得られるマトリックス樹脂であることを特徴とする前記[1]、[2]、[3]又は[4]記載の独立気泡成形体用樹脂組成物、
に関する。
また、本発明は更に次のような態様を含む。
[6] カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーのラジカル重合性不飽和結合を有する炭素鎖の炭素数が3〜8である前記[1]記載の樹脂組成物、
[7] 金属カチオンの含有量が、共重合ポリマーに対して0.1〜10重量%含有する前記[1]または[6]に記載の樹脂組成物、
[8] 金属カチオンが亜鉛カチオンである前記[1]、[6]及び[7]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[9] マトリックス樹脂が、硬質樹脂または軟質樹脂であることを特徴とする前記[1]及び[6]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[10] 熱膨張性マイクロカプセルの含有量が、樹脂組成物全体に対して1〜65重量%である前記[1]及び[6]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[11] マスターバッチペレットである前記[1]及び[6]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物、
[12] 前記[1]及び[6]〜[11]のいずれかに記載の樹脂組成物を加熱して、該樹脂組成物中の熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させることを特徴とする独立気泡成形体の製法、
[13] 前記[12]記載の製法で得られる独立気泡成形体、および
[14] 前記[13]記載の独立気泡成形体の表面に表皮材が積層されていることを特徴とする複合成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物は、耐熱性が高く最大発泡温度が高い熱膨張性マイクロカプセルを含有しているので、成形温度が高温で通常の熱膨張性マイクロカプセルでは気泡がつぶれてしまう成形条件であっても、該独立気泡成形体用樹脂組成物から、均一な独立気泡を有する独立気泡成形体を製造することができる。
また、本発明の独立気泡成形体は、上記独立気泡成形体用樹脂組成物より得られるので気密性が高く、高い断熱性を有する成形体となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物は、マトリックス樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルを含有してなる独立気泡成形体用樹脂組成物であって、前記熱膨張性マイクロカプセルが、(I)(a)ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーとカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合ポリマーおよび(b)該共重合ポリマーをイオン架橋している1〜3価の金属カチオンを含むシェル、ならびに(II)揮発性膨張剤を含むコアからなることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物に用いられる熱膨張性マイクロカプセルについてより具体的に説明する。
上記熱膨張性マイクロカプセルに使用されるニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーは、少なくとも1個のシアノ基を有するラジカル重合性不飽和モノマーであれば特に限定されない。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルまたはこれらの任意の混合物等が挙げられるが、中でもアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが特に好ましい。
【0013】
また、上記熱膨張性マイクロカプセルに使用されるカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーは、イオン架橋可能な遊離カルボキシル基を分子当たり1個以上持つラジカル重合性不飽和モノマーであれば特に限定されないが、ラジカル重合性不飽和結合を有する炭素鎖の炭素数が3〜8であるのが好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、およびマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸のモノエステルやその誘導体が挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、これらのなかで、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
上記ラジカル重合性不飽和モノマーの量は、全モノマーに対して、5〜50重量%であるのが好ましい。10重量%以上であると、上記樹脂組成物の最大発泡温度が190℃以上となるので好ましく、50重量%以下であるのが、発泡倍率が急激に落ちたりしないので好ましい。
【0014】
本発明では、上記ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーやカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマー以外の他のモノマーをさらに用いてよい。「他のモノマー」としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、熱膨張性マイクロカプセルに必要な特性に応じて適宜選択されて使用され得るが、これらのなかでメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル等が好適に用いられる。これらモノマーの使用量は、全モノマー中の12重量%未満が好ましい。12重量%以上になるとシェルのガスバリアー性が低下し熱膨張性が低下し易いので好ましくない。
【0015】
上記「1〜3価の金属カチオン」は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されるものではなく、このような金属カチオンとしては、例えば、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、リチウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、バリウムカチオン、鉄カチオン、ニッケルカチオン、銅カチオン、亜鉛カチオン、スズカチオン、クロムカチオン、鉛カチオン、ストロンチウムカチオン、アルミニウムカチオンなどが挙げられ、これらは1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、本発明においては、上記「1〜3価の金属カチオン」として、1〜3価の金属カチオンを共重合ポリマーに供給できる金属カチオン供給体を用いてよい。金属カチオン供給体としては、例えば上記した「1〜3価の金属カチオン」の水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、亜硝酸塩、亜硫酸塩やオクチル酸、ステアリン酸等の各有機酸の塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの水酸化物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの塩化物、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウムなどのリン酸化物および炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛などの炭酸化物が挙げられる。なかでも水酸化亜鉛、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化銅などの遷移金属水酸化物が、架橋構造を安定して保つため、熱膨張性マイクロカプセルの熱安定性が優れる一方、射出成形などにおいて200℃を越える成形温度に達した場合、熱膨張性マイクロカプセルのシェルの架橋構造が壊れることにより、シェルが柔軟となり、より高い熱膨張倍率が得られるといった感温特性を示すため、成形用樹脂組成物用途に優れる点で好ましく、2価の遷移金属の水酸化物が、反応効率上有効であるためより好ましい。
【0017】
また、上記金属カチオン供給体を添加する場合は、予めアルカリ金属の水酸化物を添加した後、上記アルカリ金属の水酸化物以外の金属カチオン供給体を添加することが好ましい。上記アルカリ金属の水酸化物を予め添加することにより、カルボキシル基等の官能基が活性化され、上記金属カチオンとの反応を促進させることができる。
例えば、Zn(OH)は水溶性が低く、添加によって所望のイオン架橋を得ることができないことがあるが、このような方法を用いることで、例えば、NaOHを添加した後、水溶液の高いZnClを添加することにより、Zn(OH)を添加した場合と同様の効果を得ることができる。
【0018】
上記アルカリ金属の水酸化物としては特に限定されないが、Na、K、Liの水酸化物が好ましく、なかでも塩基性の強いNa、Kの水酸化物を用いることが好ましい。
【0019】
上記熱膨張性マイクロカプセル内に包含される揮発性膨張剤は、シェルの軟化点以下の温度でガス状になる物質であり、低沸点有機溶剤が好適である。例えば、エタン、エチレン、プパン、プロペン、n−ブタン、iso−ブタン、ブテン、iso−ブテン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−へキサン、ヘプタン、石油エーテル、n−オクタン、iso−オクタンなどの低分子量炭化水素;CClF、CCl、CClF、CClF−CClF等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシランなどのテトラアルキルシランなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、iso−ブタン、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−へキサン、石油エーテル、n−オクタン、iso−オクタンおよびこれらの二種以上の混合物が好ましい。
また、前記揮発性膨張剤は、沸点が60℃以上の炭化水素であるのも好ましい。すなわち、沸点がシェルの軟化点以下であり、かつ60℃以上の炭化水素が好ましい。このような揮発性膨張剤としては、例えば、n−ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、iso−オクタン、n−ノナン、n−デカンなどが挙げられる。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物が用いられてもよい。
【0020】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、揮発性膨張剤の存在下に、ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーとカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとを共重合させ、揮発性膨張剤を内包する共重合ポリマーを得て、共重合ポリマーを1〜3価の金属カチオンでイオン架橋させることにより製造され得る。
上記共重合ポリマーに揮発性膨張剤を内包させる方法としては特に限定されず、公知の方法で行われる。例えば、特公昭42−26524号公報に記載されているような、上記したラジカル重合性不飽和モノマーと架橋剤との混合物に上記揮発性膨張剤および重合開始剤を加えた油性混合液を、分散安定剤等を含む水性分散媒体中に分散させて懸濁重合させる方法が挙げられる。
【0021】
また、上記架橋剤としては特に限定はされないが、基本的にはラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマーが好適に用いられる。上記架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内、ポリエチレングリコール等の2官能架橋剤は、200℃を超える高温領域でも熱膨張したマイクロカプセルが収縮しにくく膨張した状態を維持しやすくさせることができやすい(いわゆる「へたり」を抑制し易い)ので好適に用いられる。
これら架橋剤の量は全モノマー中の0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%が好ましい。
架橋剤を用いることにより、上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルの強度を強化することができ、熱膨張時にシェルが潰れにくくなる。
【0022】
なお、上記重合開始剤としては特に限定されず、上記モノマーに可溶な過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。重合開始剤の具体例としては、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジ−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。
【0023】
上記分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蓚酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
分散安定剤の量は特に限定されず、分散安定剤の種類、マイクロカプセルの粒子径等により適宜決定されてよいが通常は、全モノマー100重量部に対して、0.1〜20重量部が用いられる。
【0024】
上記懸濁重合の際には分散安定剤に補助安定剤が併用されてよく、補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等を使用することができる。
【0025】
上記分散安定剤と補助安定剤は適宜組み合わせて使用されてよいが、コロイダルシリカと上記縮合生成物との組合せ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組合せ、水酸化マグネシウムおよび/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。
好ましい組合せとしてコロイダルシリカと縮合生成物との組合せが挙げられる。縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸の縮合生成物が好ましい。
【0026】
他の好ましい組み合わせとしては、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物の組み合わせが挙げられる。水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミンが挙げられる。これらのなかでもポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0027】
コロイダルシリカの使用量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、全モノマー100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、特に好ましくは2〜10重量部である。また、上記縮合生成物及び水溶性窒素含有化合物の量も熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、全モノマー100重量部に対して、0.05〜2重量部の割合が好ましい。
上記分散安定剤と補助安定剤に、さらに塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩が加えられてもよく、無機塩が添加されると、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルが得られやすくなる。無機塩の量は、通常、全モノマー100重量部に対して0〜100重量部である。なお、このような塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩は、重合後の熱膨張性マイクロカプセルの表面に付着することがあるが、本発明におけるイオン架橋には関与しないので、重合後に洗浄して、表面に付着した無機塩を除去または減少させることができる。
【0028】
上記「分散安定剤等を含有する水性分散媒体」は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製される。この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境で重合がおこなわれ、水性分散媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3〜4に調製される。一方、水酸化マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性環境の中で重合させる。
【0029】
上記水性分散媒体を調製する際には、通常は重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じてさらに安定助剤を加えて、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等の公知の添加剤が加えられてもよい。
【0030】
本発明においては、モノマーおよび揮発性膨張剤を、別々に水性分散媒体に加えて、水性分散媒体中で油性混合液を形成してもよいが、通常は、予めモノマーおよび揮発性膨張剤を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に加えられる。この際、油性混合液と水性分散媒体をあらかじめ別々の容器で調製しておき、ついで別の容器で攪拌しながら混合して油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に加えてもよい。
本発明においては、上記重合開始剤を、予め上記油性混合液に加えてもよいが、水性分散媒体と油性混合液を重合反応容器内で攪拌混合した後、混合液に加えてもよい。
【0031】
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば特殊機化工業株式会社製)などにより攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器などの静止型分散装置を通過させる方法などが挙げられる。静止型分散装置には水性分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、あらかじめ攪拌しながら混合した分散液を供給してもよい。
上記モノマーの重合条件は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましい反応温度は30〜100℃、より好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、好ましくは4〜30時間、より好ましくは6〜20時間である。
【0032】
上記共重合ポリマーに1〜3価の金属カチオンをイオン架橋させる手段は、例えば、重合時もしくは重合後に1〜3価の金属カチオンを付加させて共重合ポリマー中のカルボキシル基を1〜3価の金属カチオンでイオン架橋させる手段などが挙げられる。本発明では、重合時の油相に1〜3価の金属カチオンを存在させることにより、シェルの共重合ポリマーをイオン架橋させるのが好ましい。重合時の油相に1〜3価の金属カチオンを存在させることにより、共重合ポリマーが金属カチオンでイオン架橋されるので、重合により形成されたシェルは、ポリマーに配位した金属カチオンを介してイオン架橋された共重合ポリマー、すなわちイオン架橋物で構成され得る。
【0033】
1〜3価の金属カチオンによるイオン架橋は高分子鎖間をイオン結合により疑似架橋されている点に特徴があるが、「結晶部」および「非晶部」を有する共重合ポリマーの固体構造のなかに、金属イオンが凝集した「イオン凝集体」の相が導入されたモデルを考えることができる。イオン結合力は温度に強く依存するが、一般に高温域でイオン結合は解離と結合を繰り返しているといわれる(イオン−ホッピング)。水酸化亜鉛等の金属水酸化物の場合、例えば水酸化ナトリウムに比べ架橋力は強いことから耐熱性は高いが、200℃付近の高温域では前記イオン凝集体が変形しやすい粒子(相)として振る舞っていると考えられ、それによりシェルポリマーが高温域で柔軟となり高熱膨張率が得られるのではないかと思われる。このことから、イオン架橋物で構成されるシェルを有する上記熱膨張性マイクロカプセルは、成形用樹脂用途に特に優れていると思われる。
【0034】
熱膨張性マイクロカプセルのシェルを構成するイオン架橋物は、前記モノマー仕込み中の油性混合物に1〜3価の金属カチオン又はそれを生ずる金属カチオン供給体を添加してもよいし、前記モノマー重合後、その共重合体に、添加することにより製造することが出来る。1〜3価の金属カチオン供給体の添加は、それ自体を直接添加してもよいし、水溶液などの溶液の形態で添加してもよい。上記イオン架橋物は、共重合ポリマーの遊離カルボキシル基の一部ないし全量がイオン化して、カルボキシルアニオンとなり、1〜3価の金属イオンをカウンターカチオンとしてイオン結合が形成されているために、イオン架橋率は添加する金属カチオン供給体の量によって容易に調節することができる。
本発明においては、前記カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーの量に対して0.1〜10重量%の金属カチオンを添加することにより、良好なガスバリヤー性が得られ、予備的な混練温度では成形用樹脂と混練しても熱膨張せず、かつ最大発泡温度が190℃以上、さらには200℃以上であることが可能となる。なお、本発明においては、上記熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡温度が200℃以上であるのが好ましい。
【0035】
また、上記熱膨張性マイクロカプセルにおけるシェル中のニトリル成分は、80重量%未満であるのが、最大発泡温度をより高くすることができるので好ましい。なお、前記「ニトリル成分」とは、シェル中のニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマー成分をいい、より具体的には、シェルを構成するイオン架橋物中の共重合ポリマーに含まれるニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマー単位をいう。
本発明においては、上記熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径が1〜500μmであることが好ましい。より好ましくは2〜350μm、さらに好ましくは5〜50μmである。
【0036】
本発明の独立気泡成形体用組成物は、マトリックス樹脂中に上記熱膨張性マイクロカプセルが含有されており、熱膨張性マイクロカプセルが該独立成形体用組成物中に1〜65重量%含有されていることが好ましい。
【0037】
本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物におけるマトリックス樹脂は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。
マトリックス樹脂に軟質樹脂を用いた上記樹脂組成物からなる独立気泡成形体は軟質発泡体となり、上記マトリックス樹脂に硬質樹脂を用いた上記樹脂組成物からなる独立気泡成形体は硬質発泡体となる。
【0038】
軟質発泡体が得られるマトリックス樹脂としては、オレフィン系、ウレタン系、あるいはスチレン系の熱可塑性エラストマーなどの軟質樹脂が挙げられる。さらに、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、デュポン・ダウエラストマージャパン社製の「エンゲージ」シリーズ、三井化学社製の「ミラストマー」シリーズ、住友化学社製の「住友TPEサントプレーン」シリーズ、エイイーエス社製の「サントプレーン」シリーズ等が挙げられる。スチレン系エラストマーとしては、三菱化学社製の「ラバロン」シリーズ等が挙げられる。また、これらの樹脂を所望の加工性や硬さに合わせて混合して使用してもよい。
【0039】
硬質発泡体が得られるマトリックス樹脂としては、ポリプロピレン系、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、スチレン系、アクリル樹脂系、アクリロニトリル系、モンテルポリオレフィンズカンパニー社製のホモポリプロピレン樹脂「PF814」や、グランドポリマー社製のランダムポリプロピレン樹脂「B230」、「J704」や、三井化学社製の高密度ポリエチレン「3300F」、「TSOP−5(LA880)」などの硬質樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂は混合して使用してもよい。本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物において、より高発泡倍率が発現できるものは、上記硬質発泡体が得られるマトリックス樹脂を用いたときである。
【0040】
また、上記マトリックス樹脂は生分解性樹脂であってもよく、例えば、酢酸セルロース(P−CA)系とポリカプロラクトン(P−H、P−HB)系のダイセル化学工業社の「セルグリーン」シリーズ、三井化学のポリ乳酸「LACEA」、などが挙げられる。本発明においては、熱特性に応じて、上記生分解性樹脂1種類を単独でまたは2種以上混合して用いてもよく、また、上記生分解性樹脂を単独もしくは上記生分解性樹脂以外の他のマトリックス樹脂と併用して用いても構わない。
【0041】
本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物には、所望により化学発泡剤が含有されていてもよい。化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ化合物、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等のヒドラジン誘導体、バリウムアゾジカルボキシレート(Ba/AC)等のアゾ化合物、炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩等が挙げられ、その中でも、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、重炭酸塩などが挙げられる。
化学発泡剤の含有割合は、化学発泡剤と熱膨張性マイクロカプセルとの合計重量に対して50重量%以下であることが好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、上記熱膨張性マイクロカプセルおよびマトリックス樹脂を用いて、常法に従い製造され得る。製造手段としては、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、熱膨張性マイクロカプセルを成形装置内でマトリックス樹脂と溶融混練して独立気泡成形体用樹脂組成物を製造してもよいし、予め熱膨張性マイクロカプセルおよび化学発泡剤等の発泡剤以外のマトリックス樹脂などの原料、熱膨張性マイクロカプセルおよび所望により化学発泡剤等を混練し作製したマスターバッチとして用いてもよい。上記混練時の加熱温度は、通常、上記熱膨張性マイクロカプセルの発泡温度より低く、マトリックス樹脂の融点より高い温度である。
【0043】
本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物は発泡性マスターバッチペレットであるのが好ましい。すなわち、熱膨張性マイクロカプセルなどの発泡材を除く樹脂や各種添加剤等の材料をあらかじめ混練しておき、所定温度まで加熱した後、熱膨張マイクロカプセルなどの発泡材を添加して、さらに混練した混練物を、ペレット形状に成形した発泡性マスターバッチであることが好ましい。より具体的には、同方向2軸押出機にあらかじめ混練しておいた他の原材料と共に熱膨張性マイクロカプセルなどの発泡剤を直接投入し、ペレタイザーにて所望の大きさに切断することによりペレット形状の発泡性マスターバッチを得ることができる。また、バッチ式の混練機で混練した後、造粒機で造粒することによりペレット形状の発泡性マスターバッチを製造してもよい。混練機としては、熱膨張性マイクロカプセルを破壊することなく混練できる点で、加圧ニーダー、バンバリーミキサーが特に好ましい。
【0044】
本発明の独立気泡成形体用樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、押出成形等の種々の成形方法で成形することができる。
本発明の樹脂組成物に用いられる熱膨張性マイクロカプセルは高い耐熱性を有するため高温で最大発泡倍率に達する。したがって、本発明の樹脂組成物は、高温で成形しても独立気泡のつぶれのないという効果を奏する。
このため、本発明の樹脂組成物は、例えば、150℃〜240℃、特に190〜220℃の範囲のいわゆる高温成形温度で成形するための成形用樹脂組成物であるのが好ましい。
【0045】
本発明の独立気泡成形体は、上記樹脂組成物を加熱して、該樹脂組成物中の熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させて製造されるが、通常、上記樹脂組成物の成形時に、上記樹脂組成物に含まれる熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させて製造される。該成形手段は、例えば射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、押出成形等の公知の成形手段であってよいが、射出成形などの高温成形であるのが好ましい。成形温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、通常、150℃〜240℃、好ましくは190〜220℃である。
【0046】
なお、マトリックス樹脂として軟質樹脂を用いた場合はクッション性に優れた独立気泡成形体が得られ、マトリックス樹脂として硬質樹脂を用いた場合は剛性の高い独立気泡成形体が得られる。なお、マトリックス樹脂として硬質樹脂を用いた場合には、さらに、曲げ特性の良い成形品が、より高倍率で得られる。
【0047】
本発明の独立気泡成形体は、さらに2次製品、3次製品に加工されていてもよい。例えば、本発明の独立気泡成形体の表面に表皮材を貼り合わせた複合成形体であってもよい。なお、表皮材としては、レザー、樹脂フィルム、織布、および不織布などが挙げられる。これらの複合成形体は、上記樹脂組成物の射出成形時に同時に表皮材を成形して一体化させることができる。また、本発明の独立気泡成形体に表皮材を接着剤で接着して一体化させてもよいし、成形体に表皮材を融着させて一体化させてもよい。
【0048】
また、本革や石や木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパを用いて、表面に皮目や木目模様等の意匠を伴った表皮層を設けた複合成形体としてもよいし、表皮材上にクッション性のある軟質発泡層を設け、さらにこの上に、骨材となる硬質発泡層を設けた3層構成の複合成形体としてもよい。
【0049】
また、本発明においては、リサイクル等の観点から、独立気泡成形体からなる発泡層と表皮材からなる表皮層は同系統の熱可塑性エラストマーで構成されるのが好ましい。
【0050】
本発明の独立気泡成形体の好ましい態様としては、例えば、環境負荷が小さくリサイクルしやすく住宅用建材や自動車用部材等に汎用されているポリオレフィン成形体が挙げられる。
また、本発明の独立気泡成形体は、上記樹脂組成物を高温成形してなる成形体であるのが好ましく、このような高温での成形を必要とする製品としては例えば自動車用成形体においては、ドアトリム、インストルメントパネル(インパネ)等の内装材成形体、バンパー等のボディ材などがある。また、靴底などが挙げられる。
また、これらは例えば、上記高温成形温度領域での射出成形方法により得ることができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、高温で射出成形方法により製造しなければならないなどの要求を満たす優れた独立気泡形成用発泡性樹脂組成物となる。
また、一軸、二軸を問わずせん断による粒子の破壊を防ぎつつ高温で成形することができる点から、本発明の独立気泡発泡成形体の成形に押出成形を用いるのも好ましい。
【実施例】
【0051】
〔測定方法および定義〕
熱膨張性マイクロカプセルの評価
(1)体積平均粒子径
粒度分布径測定器LA−910(HORIBA社製)を用いて測定した。
(2)発泡開始温度、最大発泡温度、最大変位
熱機械分析装置(TMA)(商品名「TMA2940」、TA instruments社製)を使用し、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から220℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度、その変位の最大値を最大変位量とし、その最大変位量における温度を最大発泡温度とした。
(3)金属分析
試料10gを1N塩酸20mlに添加し、2時間攪拌させた後、濾紙にてろ過した。そのろ液を検出範囲に入るよう希釈し、原子吸光装置(島津製作所AA−680)にて分析した。
成形品の評価
(1)比重 JIS K−7112 A法(水中置換法)で実施した。
(2)曲げ弾性率、曲げ強度 JIS K−7203 で実施した。
(3)アイゾット衝撃値 JIS K−7110 で実施した。
(4)成形品断面気泡状態
SEM装置により倍率50倍で観察した。
【0052】
実施例1、2および比較例1、2、3
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
表1に示した配合処方によって調整した油性混合物を、分散剤(コロイダルシリカとポリビニルピロリドンの併用系)および無機塩(NaCl)を含む水媒体中に添加し、ホモジナイザーで攪拌混合した後、窒素置換した加圧重合器(20L)内へ仕込み加圧(0.2MPa)し、60℃で20時間反応させた。ついで、得られた反応生成物をろ過と水洗を繰り返した後、乾燥して熱膨張性マイクロカプセルを得た。得られた熱膨張性マイクロカプセルの性質は表2に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
(発泡性マスターバッチペレットの作製)
粉体状およびペレット状の低密度ポリエチレン100重量部と滑剤としてエチレンビスステアリン酸アマイド0.2重量部をバンバリーミキサーで混練し、約140℃になったところで熱膨張性マイクロカプセル50重量部を添加し、さらに30秒間混練して押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチを得た。また、比較例3として、熱膨張性マイクロカプセルの替わりに、無機化学発泡剤(商品名:ポリスレン)を添加した。
【0056】
(射出成形)
次に、このマスターバッチペレット5重量部をポリプロピレン樹脂100重量部と混合し、この混合ペレットをアキュムレーターを備えたスクリュー式の射出成形機にホッパーから供給して溶融混練し、射出成形をおこなった。シリンダー温度は200℃、射出速度は60mm/secにそれぞれ設定し、樹脂板を成形した。
【0057】
このようにして得られた樹脂板の物性は表3に示すように実施例1および2は低比重で高い曲げ弾性率および強度を示した。また、樹脂板の断面を観察したところ、均一な独立気泡が形成された発泡体であった。比較例1はマスターバッチで発泡したため、射出成形は出来なかった。比較例2はマスターバッチはやや発泡気味で成形品物性も比重が高い値を示し、低比重化が困難であった。比較例3は成形品断面において一部連続気泡が見られ、曲げ弾性率、曲げ強度およびアイゾット衝撃値が実施例に比べ低値を示した。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例3〜6および比較例4
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
表4に示した配合処方によって調整した油性混合物を用いたこと以外、実施例1と同様にして熱膨張性マイクロカプセルを得た。得られた熱膨張性マイクロカプセルの性質は表5に示した。
【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
(発泡性マスターバッチペレットの作製)
粉体状およびペレット状の低密度ポリエチレン100重量部と滑剤としてエチレンビスステアリン酸アマイド0.2重量部をバンバリーミキサーで混練し、約140℃になったところで熱膨張性マイクロカプセル50重量部を添加し、さらに30秒間混練して押し出すと同時にペレット化し、マスターバッチを得た。また、比較例5として、熱膨張性マイクロカプセルの替わりに、無機化学発泡剤(永和化成社製の商品名ポリスレン)を添加した。
【0063】
(射出成形)
次に、このマスターバッチペレット5重量部をポリプロピレン樹脂100重量部と混合し、この混合ペレットをアキュムレーターを備えたスクリュー式の射出成形機にホッパーから供給して溶融混練し、射出成形をおこなった。シリンダー温度は200℃、射出速度は60mm/secにそれぞれ設定し、樹脂板を成形した。得られた樹脂板の物性を表6に示した。
また、比較例5として、熱膨張性マイクロカプセルに代えて無機化学発泡剤(永和化成社製の商品名ポリスレン)を用いたこと以外、上記と同様にして樹脂板を成形した。得られた樹脂板の物性を表6に示した。
【0064】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の独立気泡成形体は、遮熱性、断熱性、遮音性、吸音性、防振性、軽量化などを発現させることができるため、様々な用途で用いられ、例えば住宅用建材、自動車用部材、靴底等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂中に熱膨張性マイクロカプセルを含有してなる独立気泡成形体用樹脂組成物であって、前記熱膨張性マイクロカプセルが、(I)(a)ニトリル系ラジカル重合性不飽和モノマーとカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合ポリマーおよび(b)該共重合ポリマーをイオン架橋している1〜3価の金属カチオンを含むシェル、ならびに(II)揮発性膨張剤を含むコアからなることを特徴とする独立気泡成形体用樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱膨張性マイクロカプセルにおける揮発性膨張剤は、沸点が60℃以上の炭化水素であることを特徴とする請求項1記載の独立気泡成形体用樹脂組成物。
【請求項3】
上記熱膨張性マイクロカプセルの最大発泡温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の独立気泡成形体用樹脂組成物。
【請求項4】
上記熱膨張性マイクロカプセルにおけるシェル中のニトリル成分が80重量%未満であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の独立気泡成形体用樹脂組成物。
【請求項5】
上記マトリックス樹脂が、硬質発泡体が得られるマトリックス樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の独立気泡成形体用樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−45532(P2006−45532A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191351(P2005−191351)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】