説明

獣医薬及びヒトの医薬における予防及び治療のための新規ワクチン

本発明は、新規ワクチン、ヒト医薬及び獣医薬におけるカンジダ真菌症の免疫予防及び治療のための使用、並びにその製造方法に関する:本発明ワクチンは
カンジダ属(Candida)菌株
a1)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)CCM 8355、
a2)カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)CCM 8356、
a3)カンジダ・クルセイ(Candida krusei)CCM 8357及び
a4)免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株
並びに場合により医薬的に許容できる、担体等の助剤の組合せを含み、
最終産物中の成分a1〜a4の比率a1:a2:a3:a4が10〜20:10〜20:10〜20:40〜70である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ワクチン、獣医薬及びヒトの医薬におけるカンジダ真菌症の免疫予防及び治療のためのその使用、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌症は酵母及び下等菌類に起因する。公知のおおよそ10,000種中、わずか300種がヒトに対して病原性である。それらの有害な作用は、一方では生体組織に対する直接攻撃、他方ではマイコトキシンの産生、及び、アレルギーの誘発等の間接作用に基づく。感染部位に基づき、全身性真菌症と表在性真菌症に区別される。
【0003】
カンジダ属(Candida)は、多数の条件的病原性菌種を含む無芽胞発芽菌の属の一つである。カンジダ症の最も一般的な病原体は、特に、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)、カンジダ・ギリエルモンジィ(C. guilliermondii)、カンジダ・クルセイ(C. krusei)、カンジダ・パラプシローシス(C. parapsilosis)、カンジダ・プソイドトロピカリス(C. pseudotropicalis)、カンジダ・プルケリマ(C. pulcherrima)、カンジダ・ステラトイデア(C. stellatoidea)、カンジダ・グラブラタ(C. glabrata)及びカンジダ・トロピカリス(C. tropicalis)である。
【0004】
カンジダ真菌症は、カンジダ属菌種、大部分はカンジダ・アルビカンスに起因する日和見真菌症(真菌病)であり、皮膚又は粘膜皮膚の疾患、特に口内炎(口腔カンジダ症)、食道炎、おむつ紅斑又は外陰部膣炎の形で発現しうる。特に、新生児及び免疫競合性障害の患者では、致命的な広汎性カンジダ症として全身に発現しうる。これは、特に、細胞増殖抑制薬若しくは抗生物質の投与、ステロイド若しくはホルモンの投与、非経口栄養補給、悪性疾患、内分泌障害又は免疫不全の場合に起きる。最近、カンジダ属菌に起因する院内真菌症の発症率が著しく上昇しており(例えば、Dolezal, Ceska a Slovenska farmacie, Vol. LI, 第5版, 2002年9月, p. 226-235を参照)、上記真菌症は、特に入院患者の罹患率及び死亡率の重要な原因となっている。
【0005】
表在性真菌症の治療処置のための活性物質の選択肢は広いものの、全身性真菌症を治療する可能性はきわめて限定される。
真菌感染症に対する新規治療薬の開発における遺伝子工学の役割が、Korabecna et al., Epidemiol. Microbiol. Immunol., 52, 2003, No.1, p. 25-33に概説されている。
【0006】
上記のように、近年、真菌感染症の発症率は著しく上昇している。これは特に、移植片レシピエント、癌患者及びエイズ患者等の免疫系が抑制された患者の数が絶え間なく増加しているためである。他方、広域抗真菌薬の使用が広がり、多数の耐性病原菌株が発生することにより、状況がさらに悪化している(例えば、Jarvis et al., Clinical Infectious Disease, 1995, 20, p. 1526-30; Beck-Sague et al., The Journal of Infectious Disease, 1993, 167, p.1247-51; Gottfredson et al., Pathology, 30, 1998, p. 405-418; Tomsikova et al., Epidemiol. Microbiol. Immunol., 51, 2002, No. 3, p. 119-124; Rex et al., Antimicrob. Agents Chemother., 39, 1995, p. 1-8; Kunova, Epidemiol. Microbiol. Immunol., 51, 2002, No. 3, p. 131-134を参照)。
【0007】
しかしながら、ヒトで最も蔓延している真菌感染症は膣真菌感染症である。これに関して、上記感染症は慢性化する場合がきわめて多く、これらの症例では、多くの場合、長期間にわたって局所投与される抗生物質がしばしば効果なく残存することが問題となる。
【0008】
免疫学に基づく真菌症療法薬の製造は、特に、de Bernardis et al., Infection and Immunity, 1994年2月, p. 509-519; de Bernardis et al., Infection and Immunity, 1997年8月, p. 3399-3404; de Bernardis et al., Infection and Immunity, 2000年6月, p. 3297-3304; Martinez et al., Clinical Microbiology Reviews, 1998年1月, p. 121-141; Polonelli et al., Med. Mycol., 2000, 38, Suppl. 1: 281-292; Medling et al., Mycoses, 1966, 39, p. 177-183、及びOdds F.C., Candida and Candidosis; 第2版, 1988, Bailliere Tindal W.B. Saunders(ロンドン)で取り扱われている。
【0009】
したがって、長年、真菌感染症、特にカンジダ感染症に対するワクチンの開発のために多大な取り組みがなされてきた。その方法は多様である。
例えば、CS 277 558号公報には、酵母に起因する慢性膣炎その他の慢性粘膜炎症の経口及び/又は局所治療のためのワクチンが記載され、本ワクチンはまた抗真菌薬と併用できる。本ワクチンは、3つのカンジダ・アルビカンス菌株(CA 37、CA 91及びCA 120)、カンジダ・クルセイ菌株(CK 9)、カンジダ・グラブラタ菌株(TG 15)及び3つのプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株(PA 3、PA 17及びPA 530)を含有する。
【0010】
RU 2185842号公報には、特にカンジダ属菌に起因する尿生殖器感染症の治療のための、枯草菌(Bacillus subtilis)を、場合により、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)及び/又は乳酸菌属(Lactobacillus)菌株と組合せてもよい製剤が記載されている。
【0011】
US 5,578,309号公報、US 2002/0160009A1号公報及びWO 00/52053号パンフレットには、カンジダ感染症の治療のためのカンジダ・アルビカンス由来のホスホマンナンの使用、特に、カンジダ感染症に対する受動免疫のためのモノクローナル抗体の使用が記載されている。
【0012】
WO 96/07426号パンフレットは、カンジダ・アルビカンス、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、淋菌(Neisseria gonorrhoea)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)又は陰部ヘルペス(Herpes genitalis)等の膣に感染できる微生物の死菌を含有する、アジュバントがない経腸投与用ワクチンが開示する。
【0013】
US 6,099,853号公報には、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・モルガニ(Proteus morganii)及び大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)種の8〜14種類の異なる不活化した尿路病原性細菌菌株を含有する、尿生殖器感染症の治療のための坐剤の製剤が記載されている。
【0014】
雌性生殖管の受動及び能動免疫のための抗体及び抗原を含有する微小粒子は、US 4,732,763号公報の対象である。US 5,288,639号公報には、他の生物の公知のストレスタンパク質に対する相同性が高いカンジダ由来のポリペプチド配列及びそれを用いて産生された抗体を、真菌症、特にカンジダ真菌症の治療及び診断に使用することが記載されている。
【0015】
一方、US 4,678,748号公報には、カンジダ・ギリエルモンジィ感染症の診断、予防及び/又は治療のための免疫生物製剤の製造方法が開示されている。
発明の詳細な記述
本発明は、第1に
以下のカンジダ属(Candida)菌株
a1)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)CCM 8355、
a2)カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)CCM 8356、
a3)カンジダ・クルセイ(Candida krusei)CCM 8357、及び
a4)免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株の組合せ、並びに、場合により、1又はそれ以上のビヒクル、充填剤又は担体等の助剤を含む新規なワクチンに関し、ここで、最終産物中の成分a1〜a4の比率a1:a2:a3:a4が10〜20:10〜20:10〜20:40〜70である。
【0016】
さらに本発明は、本発明のワクチンの製造方法に関する。
本発明のワクチンは、ヒト医薬及び獣医薬に用いられる。
本発明では、カンジダ真菌症(カンジダ症)は、カンジダ属の真菌に起因する疾患を示す。上記のように、これは局所的又は全身に生じる場合がある。
【0017】
したがって、本発明は、局所、皮膚若しくは粘膜皮膚及び/又は全身性カンジダ症の予防及び/又は治療のためのワクチンを提供する。
これに関して、局所カンジダ症は、生殖管、尿生殖管、口腔、消化管、乳腺、耳道又は皮膚の外粘膜に生じる場合がある。
【0018】
特に、口内炎(口腔カンジダ症、鵞口瘡)、食道炎、おむつ紅斑、膿疱性膿皮炎、毛包炎、落屑形紅斑、間擦疹、静脈炎、肉芽腫性カンジダ症、肉芽腫、爪炎、爪周囲炎、カンジダ菌性指間びらん症、マズラ真菌症(特に足)、外陰部膣炎、注射後膿瘍、火傷後合併症、口角びらん症(口角炎)、舌炎、黒毛舌、肥厚性舌カンジダ症、口腔白板症、扁桃カンジダ症、角膜炎、眼内炎、角膜潰瘍、耳炎及び亀頭炎があげられる。
【0019】
本発明のワクチンで治療及び予防できる全身性カンジダ症としては、特に、汎発性全身性カンジダ症、カンジダ血症、急性血行性播種性カンジダ症、慢性播種性カンジダ症、カンジダ心内膜炎、カンジダ心外膜炎、化膿性静脈炎、カンジダ髄膜炎、カンジダ肺炎、カンジダ骨髄炎、カンジダ縦隔炎、カンジダ関節炎、カンジダ胃炎、カンジダ大腸炎、間質性口腔カンジダ症、腹膜炎、血管炎、口腔咽頭カンジダ症及び食道カンジダ症、腎モニリア症(腎カンジダ症)、尿道炎、偽膜性膀胱炎、足菌腫、腎膿瘍、カンジダ気管支炎、カンジダ気管支肺炎、原発性気管支カンジダ症、原発性肺カンジダ症、カンジダ髄膜脳炎、汎発性原発性全身性カンジダ症による脳膿瘍又は眼損傷があげられる。さらに、例えば気管支喘息、気管支炎、鼻炎、湿疹、農夫肺及びこれらに類する症候群等のアレルギー性誘発性疾患もまた含まれる。
【0020】
好ましくは、免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス菌株はプロピオニバクテリウム・アクネスCCM 7083である。試験した他の免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス菌株はプロピオニバクテリウム・アクネスPA3及びプロピオニバクテリウム・アクネスPA 530である。
【0021】
さらに、比率a1:a2:a3:a4が15〜20:15〜20:15〜20:40〜55又は10〜15:10〜15:10〜15:55〜70であるワクチンが好ましい。特に好ましくは、本比率はa1:a2:a3:a4=10:10:10:70、及び20:20:20:40又は15:15:15:55である。経口投与では、a1:a2:a3:a4=10:10:10:70の比率、膣投与では、a1:a2:a3:a4=15:15:15:55の比率、直腸投与ではa1:a2:a3:a4=20:20:20:40の比率がきわめて好ましい。
【0022】
本発明のワクチンは、好ましくは投与量当たり、ワクチン菌株a1〜a4の総乾燥重量2〜10mgを含有する。
最終産物の総ホルムアルデヒド含量は、好ましくは0.02重量%未満である。
【0023】
本発明のワクチンは、当業者であれば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第15版等のそれ自体公知の方法に従って非経口用、局所用又は経口用の剤形に製剤化できる。
これに関して、局所、膣又は直腸投与が、特に好ましい。
【0024】
本発明ワクチンの剤形としては、特に、(硬)カプセル剤、錠剤、ロゼンジ、トローチ剤、シロップ剤、経口用懸濁液剤、経口用乳剤、小球剤、丸剤、直腸坐剤、膣坐剤(vaginal suppository、vaginal ovule)、アンプル剤、充填済み注射器、エアゾル剤、吹入剤又は口内洗浄剤があげられる。
【0025】
本発明で用いられる助剤としては、矯味矯臭剤のほか、例えば希釈剤、担体、ビヒクル、保存剤、着色剤、崩壊剤、結合剤、乳化剤、可溶化剤、架橋剤、溶剤、緩衝剤、ゲル化剤、増粘剤、フィルム形成剤、流動促進剤、滑沢剤、離型剤、流動調節剤、収着剤、酸化防止剤があげられる。
【0026】
坐剤及び膣坐剤のための基剤としては、脂質を含有する水溶性製剤があげられ、その際、特に、カカオ脂、硬質脂肪、マクロゴール(Macrogol)6000、PEG 6000、又はマクロゴール類若しくはグリセリン-ゼラチンの混合物が用いられる。
【0027】
経口用剤形を製剤化する際の担体/ビヒクルとしては、特にアエロジル(Aerosil)、ショ糖、デンプン、特にバレイショデンプン、又はこれらのうち少なくとも2つの混合物が用いられる。
【0028】
本発明のワクチンは、皮膚真菌症、肺真菌症、腸真菌症等の局所性又は全身性のカンジダ症、又はクロモミセス症、マズラ真菌症、ケロイド性ブラストミセス症、藻菌症、ブラストミセス症若しくはコクシジオイデス症等の深在性真菌症の予防及び/又は治療のための、ヒト医薬及び獣医薬に良好に用いることができる。
【0029】
本発明のワクチンは、抗原に関する組成が広範であるため、同種カンジダ属菌株に対して免疫を誘導するだけでなく、:クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)のような発芽菌;黄色こうじ菌(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・パラシティカス(Aspergillus parasiticus)、黒色こうじ菌(Aspergillus niger)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ムコール・プラムベウス(Mucor plumbeus)、ムコール・ルーキシ(Mucor rouxii)、アブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)、アルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)、アルテルナリア・アルテルネート(Alternaria alternate)、マラセジア・パチデルマチス(Malassezia pachydermatis)、マラセジア・フルフール(Malassezia furfur)、サッカロミセス-セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)のような糸状菌;カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ゼンラノイデス(Candia zeylanoides)、カンジダ・ペリキュローサ(Candida pelliculosa)、カンジダ・ルシタニア(Candida lusitaniae)、カンジダ・ケフィール(Candida kefyr)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びカンジダ・ギリエルモンジィ(Candida guilliermondii)ののような二形性真菌、並びに、トリコフィトン・ベルコースム(Trichophyton verrucosum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)及びトリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)のような皮膚糸状菌等の他の真菌症病原体に対しても交差反応を誘発し、したがって本発明ワクチンはこれらに対する防御を誘発できる。
【0030】
本発明のプロピオニバクテリウム・アクネス菌株には著しい非特異的免疫刺激作用があり、したがって、特異的免疫応答の形成に正の作用を有し、その結果、全体にわたって免疫応答を増強する。
【0031】
さらに、本発明のワクチンは、抗真菌薬又は抗生物質等の他の医薬組成物と組合せて投与できる。これは、同時に、連続した特定の時間の間隔で、又は特異的な治療レジメンで実施できる。
【0032】
用いるワクチン菌株a1〜a3はカンジダ属に属し、菌株カンジダ・アルビカンスCCM 8355(a1)、カンジダ・グラブラタCCM 8356(a2)及びカンジダ・クルセイCCM 8357(a3)の培養物を、ブダペスト条約により本出願人がマサリク大学のCCM−チェコ微生物コレクション(ブルノ、チェコ共和国ブルノ、ツベルデホ(Tvrdeho)14,620 00)に、2003年1月23日に各々、寄託番号CCM 8355、CCM 8356及びCCM 8357として寄託した。
【0033】
さらに、ワクチン菌株a4としては、免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス菌株であるプロピオニバクテリウム・アクネスCCM 7083を用いるのが好ましい。プロピオニバクテリウム・アクネスCCM 7083の培養物はまた、ブダペスト条約により本出願人がマサリク大学のCCM−チェコ微生物コレクション(ブルノ、チェコ共和国ブルノ、ツベルデホ(Tvrdeho)14,620 00)に、2003年1月23日に寄託番号CCM 7083として寄託した。
【0034】
本発明に最適な混合比のカンジダ属菌株及び免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス菌株の選択のため、本発明のワクチンは、患者の免疫系に対して正の作用を有し、存在するの局所性及び全身性カンジダ真菌症の予防及び治療に共に用いられる。
【0035】
極めて多数の病原性カンジダ属及びプロピオニバクテリウム属菌株が公知であるが、一般に、数株を除き、種々のインビボ動物モデルで免疫調節又は免疫刺激作用を検出することはできなかった。しかしながら、意外にも、本発明のワクチン菌株は免疫系に対して正の作用を示した。
【0036】
これらの菌株はさらに以下のように特定される。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
選択したカンジダ属菌株は全て37℃で増殖し、塩化ナトリウム及びホウ酸に耐性であった。これらの菌株は分節胞子若しくは莢膜、色素、フェノールオキシダーゼ又はプロテイナーゼをいずれも産生しなかった。
【0040】
【表3】

【0041】
選択したプロピオニバクテリウム属菌株はカタラーゼ陽性(すなわちカタラーゼを産生した)、ペニシリン感受性であり、インドールを産生した。本菌株は無動性であり、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラムノース、サッカロース、サリシン、トレハロース又はエスクリンをいずれも分解しなかった。本菌株は、レシチナーゼ、リパーゼ、ウレアーゼ又は色素をいずれも産生しなかった。乳汁の前消化もみられなかった。
【0042】
図1〜3は、4種類のワクチン菌株のPCR特性分析を示す。
さらに、本発明は本発明のワクチンを製造するための方法に関し、下記の工程:
1)ワクチン菌株a1〜a4を各々培養し、細胞塊を単離し;
2)カンジダ属菌株a1〜a3をホルムアルデヒドにより不活化し;
3)プロピオニバクテリウム属菌株a4を熱不活化し;
4)菌株a1〜a4を各々凍結乾燥し;
5)これらのワクチン菌株を、場合により1又はそれ以上の助剤、担体、ビヒクルと混合し;
6)場合により用量剤形を処方する
ことを含む前記方法である。
【0043】
ワクチン菌株を不活化するための他のとりうる方法は、特に、ベータプロピオラクトン等による化学的不活化である。
本発明の好ましい方法は、工程1)において、カンジダ属菌株a1〜a3を各々グルコースペプトン寒天上で23〜27℃48〜72時間、又はサブロー寒天上で35〜39℃22〜27時間、好気的条件下に培養し、単離し、その後無菌注射用水で洗浄し、3回の凍結融解サイクルで崩壊させるものである。
【0044】
本発明の他の好ましい方法は、工程1)において、カンジダ属菌株a1〜a3を各々サブロー培地中、37℃で24〜48時間、好気的条件下に、培養するものである。
その後、細菌細胞を、カットオフ300kDaの限外濾過カートリッジを用いて単離し、無菌生理食塩水を用いた反復洗浄及び4,500gでの遠心分離(例えば、Jouan KR 22、5,000rpm)で精製する。単離した細菌細胞をその後、無菌注射用水で洗浄し、3回の凍結融解サイクル(少なくとも−20℃)で崩壊させる。ワクチン菌株a1〜a3を凍結融解サイクルで崩壊させる代わりに、超音波で崩壊させてもよい。
【0045】
本発明のさらに好ましい方法は、工程1)において、プロピオニバクテリウム・アクネス菌株a4を血液寒天上、強化クロストリジア寒天上又は血液添加VL寒天中で、35〜39℃46〜50時間、絶対嫌気的条件下に培養し、単離し、続いて無菌注射用水で洗浄及び溶菌し、2〜8℃で22〜26時間抽出し、工程3)において、これを56〜62℃に1時間、少なくとも24時間間隔で3回加熱して不活化するものである。
【0046】
本発明他の好ましい方法としては、工程1)において、プロピオニバクテリウム・アクネス菌株a4を強化クロストリジア培地中、35〜39℃で46〜50時間、絶対嫌気的条件下及び静止条件下で培養し、カットオフ300kDaの限外濾過カートリッジを用いて細菌細胞を単離する。その後、生理食塩水による反復洗浄及び4,500gにおける遠心分離(例えばJouan KR 22、5,000rpm)により精製を行い、その後、無菌注射用水で溶菌し、2〜8℃で22〜26時間抽出する。工程3)において、本細菌材料を56〜62℃に1時間、少なくとも24時間間隔で3回加熱して不活化する。
【0047】
本発明の特に好ましい方法は、工程1)において、菌株a1〜a4を各々発酵槽/バイオリアクター内で、好ましくは連続的に培養した後単離する。本発明に用いることができるバイオリアクターは、例えばAPPLIKON ADI、270リットルである。
【0048】
この場合、カンジダ属菌株a1〜a3を無菌液体サブロー培地中、好気的条件下に、0.1〜0.2バールの圧力、15〜20%のO2、pH値5.6〜7.2、23〜27℃、40〜50 rpmで16〜24時間培養することが好ましい。
【0049】
プロピオニバクテリウム・アクネス菌株a4の発酵槽/バイオリアクター内での好ましい培養条件としては、嫌気的条件下、約10l/分のN:C02(1:2)の混合物を添加して0.1〜0.2バールで、最大1%02、pH値6.4〜7.2、35〜39℃で15〜17時間、液体改変強化クロストリジア培地中、40〜50rpmでの培養があげられる。
【0050】
培養を発酵槽/バイオリアクター内で行う場合、細胞塊の単離は、3,600〜5,300gでの工業用超遠心分離又は限外濾過で行うことが好ましい。
ワクチン菌株の不活化のための他のとりうる方法は、特に、ベータプロピオラクトン等の化学的不活化がある。
【0051】
以下に記載の動物モデル及びヒトの医薬への適用例から明らかなように、本発明は極めて有効なワクチンを提供し、さらに、非経口投与の必要がないため、容易に適用できる。
【実施例】
【0052】
製造例及び使用例
製造例1:経口投与用ワクチンの製造
本発明のカンジダ属菌株a1〜a3の培養に、80〜100kPa加圧して20〜30分間殺菌したサブロー寒天を用いた。pH値を6.0〜6.9に調整した後、寒天をガラスペトリ皿に注入し、再び同一条件下で殺菌した。凝固した培地が入ったペトリ皿の無菌性を検査し、個々のカンジダ属ワクチン菌株a1〜a3を各々接種した。このため、凍結乾燥又は新鮮な接種物を用いて、これを培地の表面に分散させた後、23〜27℃で48〜72時間、好気的条件下で常圧及び大気湿度90〜98%で、最適増殖に達するまで培養した(分光計を用いて、Br中、605nmでのOD測定で判定)。その後、培地の表面から注射用水で培養物を回収し、3回の凍結融解サイクル(少なくとも−20℃)で崩壊させた。得られた溶菌物にホルムアルデヒド水溶液を加えて不活化した。最終産物の総ホルムアルデヒド含量は0.02重量%未満であった。無菌性検査後、カンジダ属菌株の不活化溶菌物を残留含水率が好ましくは3%未満になるまで48時間、凍結乾燥した。
【0053】
プロピオニバクテリウム・アクネスワクチン菌株の培養には強化クロストリジア寒天を用いた。培地をオートクレーブ内で80〜100kPa加圧して20〜30分間殺菌した。pH値を6.6〜7.0に調整した後、培地をガラスペトリ皿に装填し、同一条件下で再び殺菌した。凝固した培地の無菌性を検査し、プロピオニバクテリウム・アクネスワクチン菌株の培養物を接種した。本ワクチン菌株を培地の表面に分散させ、35〜39℃で46〜50時間、絶対嫌気的条件下で増殖が最適に達するまで培養した。最大抗原産生期に(分光計を用いて、Br中、605nmでのOD測定により判定)、注射用水を用いて培養物を回収し、2〜8℃で22〜26時間抽出した。得られた細胞塊を56〜62℃に1時間、少なくとも24時間間隔で3回加熱して不活化した。無菌性検査の後、不活化した細胞塊を好ましくは3%未満の含水率が得られるまで48時間、凍結乾燥した。
【0054】
凍結乾燥の後、アエロジル、ショ糖及びバレイショデンプンその他の適切なビヒクルの混合物からなる担体中に、最終産物中に菌株がa1:a2:a3:a4=10:10:10:70の比率で含有するように菌株を混合した。
【0055】
本方法で得た混合物を経口用(硬)ゼラチンカプセルに充填した。その際、各カプセルはワクチン菌株2mg及び担体/ビヒクル248mgを含有した。最終産物の微生物学的純度、残留含水率、溶解度及びホルムアルデヒド含量を検査した。
以下に記載するように、マウスに実験的に適用した際、本ワクチンは強力に特異的な体液性及び細胞性の免疫応答を誘導した。
【0056】
製造例2:膣投与用ワクチンの製造
製造例1に記載の方法で使用菌株を培養した。
凍結乾燥後、最終産物中に菌株がa1:a2:a3:a4=15:15:15:55の比率で含有するよう菌株を溶融カカオ脂と混合し、公知の方法で膣坐剤を製造した。膣坐剤はワクチン菌株6mg(乾燥重量)及びカカオ脂3g(又は他の基剤)を含有した。
最終産物の微生物学的純度、溶解度及びホルムアルデヒド含量を検査した。
マウスに実験的に適用した際、製造例1に示したのと同様の特性が得られた。
【0057】
製造例3:直腸投与用ワクチンの製造
製造例1に記載の方法で使用菌株を培養した。凍結乾燥の後、最終産物中に菌株がa1:a2:a3:a4=20:20:20:40の比率で含有するように菌株を溶融カカオ脂と混合し、公知の方法で直腸坐剤を製造した。
直腸坐剤は10mgのワクチン菌株(乾燥重量)及び3gのカカオ脂(又は他の基剤)を含有した。
最終産物の微生物学的純度、溶解度及びホルムアルデヒド含量を検査した。
マウスに実験的に投与した際、製造例1及び2に示したのと同様の特性が得られた。
【0058】
製造例4:発酵槽法によるワクチンの製造
本発明のカンジダ属及びプロピオニバクテリウム・アクネスワクチン菌株を大規模培養(出発材料、各々250及び200リットル)するために、APPLIKON ADI、270リットル等の培養条件を制御する特別なバイオリアクターを用いた。
【0059】
本発明のカンジダ属ワクチン菌株を、pH値5.8〜7.2の無菌改変サブロー培地で各々培養した。培地に接種するために、新たに調製した各カンジダ属菌株の培養物を用いた。菌株を23〜27℃に制御された温度で好気的条件下に16〜24時間、最適増殖に達するまで培養した(分光計を用いて、Br中、605nmでOD測定により判定)。
細胞塊を工業用超遠心分離又は限外濾過で培地から単離した。
その後の処理法は、製造例1〜3に記載の寒天を用いる静止法と同様であった。
【0060】
プロピオニバクテリウム・アクネスワクチン菌株もまた、液体改変強化クロストリジア培地中で、バイオリアクター内pH値6.4〜7.2で培養した。培地に接種するために、新たに調製したプロピオニバクテリウム・アクネス培養物を用いた。培養は、絶対嫌気的条件下に、35〜39℃で制御された温度で15〜17時間行った。細胞塊は、工業用超遠心分離又は限外濾過で単離した。
その後の処理法は、製造例1〜3に記載の寒天を用いる静止法と同様であった。
【0061】
マウスモデルにおける有効性の証明
実施例1:本発明ワクチンの免疫刺激作用
本発明ワクチンの免疫刺激作用を証明するために、プロピオニバクテリウム・アクネスCCM 7083、カンジダ・グラブラタCCM 8356、カンジダ・アルビカンスCCM 8355及びカンジダ・クルセイCCM 8357のワクチンを接種した実験用マウスの肝臓及び脾臓の重量並びに総体重の試験を、下記のように、ワクチン接種していない対照実験動物と比較して行った。
【0062】
ワクチン接種:用量0.5ml:0.75mgのプロピオニバクテリウム・アクネス菌株CCM 7083、0.25mgのカンジダ・グラブラタ菌株CCM 8356、0.25mgのカンジダ・アルビカンス菌株CCM 8355及び0.25mgのカンジダ・クルセイ菌株CCM 8357を含有
投与経路:腹腔内
動物種:実験用雌白マウス(非近交系HAN:ICR)
匹数:110
体重:平均30g(84日令)
ワクチン接種群の動物数:11
対照群の動物数:11
方法:ワクチン接種群1匹及びワクチン非接種群(対照)1匹のマウスの屠殺及び解剖を0、15、30、45及び60日後に規則的間隔で行った。肝臓重量、脾臓重量及び総体重を各々測定した。実験は投与の60日後に終了した。ワクチン接種マウスは、6週間後にはワクチン非接種実験動物と比較して正常に戻っているべきである。
【0063】
プロピオニバクテリウム・アクネス菌株、カンジダ・グラブラタ菌株、カンジダ・アルビカンス菌株及びカンジダ・クルセイ菌株をマウスに投与した後、ワクチン接種マウスは、本発明の菌株が投与されなかった対照マウスと比較して肝臓及び脾臓の重量が有意に増加し(下記の表1を参照)、したがって本発明のワクチンの免疫刺激作用が証明された。
【0064】
肝臓重量は菌株投与後30日目に再び正常になり、脾臓重量は約45日目に再び正常な数値を示した。
【0065】
【表4】

【0066】
実施例2:製造例1の製剤を用いたチャレンジ試験
方法:
体重15〜18gのC3H/HeJマウス40匹を試験に用いた。マウスを4つの試験群に分けた:
−第1群−マウス10匹−ワクチン接種なし、チャレンジなし;
−第2群−マウス10匹−下記のヒト用カプセル剤のための本発明の剤型(すなわちヒト用CANDIVACカプセル剤、製造例1)を経口0.5ml用量でワクチン接種した(マウス当たりの1用量は1.5mgの溶存試験菌株を含むプロピオニバクテリウム・アクネス菌株0.5ml−0.75mg;カンジダ・アルビカンス菌株0.25mg;カンジダ・グラブラタ菌株0.25mg及びカンジダ・クルセイ菌株0.25mg)。本群の動物に本ワクチンを試験0、7及び14日目に投与した。最終投与の24時間後に、細菌1.5×104.0個(100M LD50)を含有する0.2ml量のチャレンジ細菌株フランシセラ-ツラレンシス(Francisella tularensis)を動物に皮下投与した;
−第3群−マウス10匹−第2群と同様、ただしワクチンを0.5mlの用量で腹腔内投与した;
−第4群−マウス10匹−チャレンジ細菌菌株フランシセラ−ツラレンシス1.5×104.0個(100M LD50)のみを投与した対照群。
フランシセラ−ツラレンシスのチャレンジ後、全ての動物を28日間観察し、試験マウスの罹患率及び死亡率を記録した。
【0067】
結果:
製造例1のヒト用ワクチンCANDIVACカプセル剤により、ワクチン非接種対照マウス(死亡率100%)と比較して、経口投与(80%のマウスが生存)及び腹腔内投与(90%のマウスが生存)後のマウスの生存率が有意に高まり、防御がもたらされた。
【0068】
これらの結果を下記の表2にまとめる。
【0069】
【表5】

【0070】
実施例3:本発明のワクチンの芽球化転換試験
試験法:
BALB/cマウスにヒト用経口カプセル剤の本発明の剤型(すなわちヒト用CANDIVACカプセル剤、製造例1)に相当する製剤を、試験0、7及び14日目に腹腔内及び皮下投与した。対照群には緩衝化食塩水を投与した。
【0071】
一部の動物を最終用量投与の24、48、72時間、5及び7日後に屠殺した。得られた脾臓から細胞懸濁液を調製し、培地1ml当たり細胞4×106個の濃度に希釈した。本細胞懸濁液20μl及びマイトジェン50μlを各々ピペットで試験キットのウェルに移した。ConAを2μl/培地mlの濃度、LPS(リポ多糖)を20μl/培地1mlの濃度で用いた。ワクチンCANDIVACの特異的抗原を100μl/培地1mlの濃度で用いた。細胞及びマイトジェンを37℃の温度、5%CO2で67時間インキュベートした。その後50μgの標識チミジン(ウェル当たり1μCi)を添加した。試験プレートを37℃、5%CO2及び100%大気湿度でさらに5時間インキュベートした。ハーベスターFlowで細胞を採取した後、シンチレーション液を含むボトルに細胞を移し、放射能(β線)をRackbetaコンピューターにより測定し、cpmで示した。
【0072】
結果:
どちらの投与経路でも、ワクチンCANDIVACの投与によりほとんど全ての時間間隔において細胞増殖が増大した。経口投与後7日目だけは、細胞増殖は統計的に有意に増大していない。
【0073】
【表6】

【0074】
表3は、脾細胞の基礎リンパ滲出(媒質として表わす)、並びにConA、LPS及び本発明のワクチンによるインビトロ刺激後の脾細胞増殖を示す。結果を転換指数、すなわちワクチン接種マウスと対照マウスの細胞のリンパ滲出比の形で示す。
【0075】
実験動物(マウス)における本発明のワクチン中の各菌株−カンジダ・アルビカンス(CCM 8355)、カンジダ・グラブラタ(CCM 8356)、カンジダ・クルセイ(CCM 8357)及びプロピオニバクテリウム・アクネス(CCM 7083)の本発明の比率の決定
試験法
種々の比率の本発明のカンジダ属菌株及びプロピオニバクテリウム属菌株をワクチンの調製に用いた。種々の比率のワクチン菌株乾燥物5mgを1mlのPBS pH7.2に溶解した。
【0076】
こうして調製したワクチン組成物を、体重16〜20gの非近交系SPF−ICR雌マウスに腹腔内投与した(マウス5匹、各0.2ml)。10日後、動物をクロロホルムで屠殺して解剖した。肝臓及び脾臓の重量増加を測定し、組織学的に立証した。PBSのみを腹腔内投与したマウス2匹の群を対照群として用いた。体重増加の結果をノンパラメトリックU−検定により統計的に評価した。
【0077】
肝臓及び脾臓の組織学的検査をパラフィン法及びヘマトキシリン−エオシン染色法で行った。
ワクチン接種14日後、残りのワクチン接種動物の各群3匹及びワクチン非接種対照動物3匹を、全用量はマウス当たり104.0個のカンジダ・アルビカンスのカンジダ生細胞中カンジダ・アルビカンス生菌の静脈内投与によりチャレンジした。全ての試験動物(ワクチン接種及びワクチン非接種マウス)をチャレンジ試験の4週間後に屠殺し、カンジダ・アルビカンス菌株の生細胞を検査した。
【0078】
カンジダ・アルビカンス菌株を腎臓から単離して培養できない場合のみ、本ワクチンを防御性であるとみなす。
【0079】
【表7−1】

【0080】
【表7−2】

【0081】
表4の結果は、4つのワクチン菌株(カンジダ・アルビカンスCCM 8355=a1;カンジダ・グラブラタCCM 8356=a2;カンジダ・クルセイCCM 8357=a3;プロピオニバクテリウム・アクネスCCM 7083=a4)の比率が下記の場合に本発明のワクチンの有効性及び安全性に関して最適結果が得られることを示す。
1. a1:a2:a3:a4 = 10〜20:10〜20:10〜20:40〜70
2. a1:a2:a3:a4 = 15〜20:15〜20:15〜20:40〜55
3. a1:a2:a3:a4 = 10〜15:10〜15:10〜15:55〜70
4. a1:a2:a3:a4 = 10:10:10:70
5. a1:a2:a3:a4 = 15:15:15:55
6. a1:a2:a3:a4 = 20:20:20:40
ワクチン組成物7、8、9及び10はカンジダ生菌株によるチャレンジ試験において防御活性を示さなかった。
組成物7及び8は、プロピオニバクテリウム・アクネスの量が多いため、非特異的免疫を示した。カンジダ属菌に対する特異的防御は得られなかった。
組成物9及び10は非特異的及び特異的免疫が不十分であった。
【0082】
【表8−1】

【0083】
【表8−2】

【0084】
上記結果は、本発明のワクチンが大部分の患者で卓越した防御活性をもたらしたことを立証する。これは、慢性的経過をたどる場合がきわめて多く、全身性となる可能性があり、したがって治療がきわめて困難なカンジダ感染症の重大性からみて、特に重要である。
【0085】
ヒト医薬への適用例
使用例1:膣坐剤
34歳の女性が、水泳プールを訪れた後、菌類に起因すると思われる炎症性膣炎(痒み、灼熱感、帯下)に罹患した。製造例2のカンジダ坐剤を、連続した5日間、毎晩1個の膣坐剤を用いた治療を行った。1日後に不快感がわずかに改善され、4日後に患者は疾患がなくなった。
【0086】
使用例2:膣坐剤
47歳の女性患者が、抗生物質投与後に、真菌性膣炎に繰り返し罹患した。製造例2のカンジダワクチン坐剤7個を用いた連続5日間の治療(夜、膣)により、2日後に改善され、5日後に患者は疾患がなくなった。さらに抗生物質による治療が予想されたので、その女性に4週後及び8週後に再び各々7個のカプセル剤を投与した。10週間後に抗生物質を投与すると膣炎は再発しなかった。
【0087】
使用例3:直腸坐剤
24歳の男性患者が、痔疾による著しい疾患に罹患した。硬化療法にもかかわらず、なお肛門付近の痒み及び灼熱感による不快感があり、直腸で菌類が生息していることが推測された。製造例3の直腸坐剤10個を用いた治療(連続10日間、夜、直腸)により、2〜3日後に不快感がかなり改善され、6週間持続した。
【0088】
使用例4:経口用カプセル剤
61歳の患者が、白血球減少症のため再発性鵞口瘡(口腔カンジダ症)に罹患した−Ampho−Moronal(アンホテリシンB)は反復使用のためほとんど効果がなかった。製造例1のカンジダワクチン5カプセルの投与により、5日後に不快感が改善された。さらに各5日間の投与2サイクル−4及び8週後−により、基礎疾患は持続したにもかかわらず不快感は患者が耐えられる程度に抑えられた。
【0089】
使用例5:カプセル剤
72歳の女性患者が、不規則排便、下痢、鼓腸及び体調不良等の消化器領域の不特定疾患を罹患し続けていた。医学的にみて、重篤な器質性障害は除外され、腸内に菌類が生息しているように思われた。製造例1のカンジダカプセル剤を用いた3カ月間の治療(各月初めに各々連続10日間、1日1カプセルの投与、朝)により、1サイクル後に既にかなりの疾患が改善され、3サイクル後には疾患はほとんど鎮静した。
【0090】
獣医薬への適用例
さらに、本発明のワクチンは獣医薬としても用いることができ、有効である。ネコ及びイヌ等の小動物例えばへの適用が特に有利であろう。
【0091】
以上の記載及び使用例から明らかなように、本発明は、獣医薬及びヒト医薬において、カンジダ真菌症を免疫予防及び治療するための、有効性が高く、さらに易用性ワクチンを提供する。ヒト医薬において、本発明のワクチンは経口、非経口、並びに局所、特に膣及び直腸にも適用できる。この場合、経口、膣及び直腸適用が特に好ましい。さらに本発明のワクチンは、獣医薬において非経口、局所又は経口適用できる。
【0092】
したがって、ヒト医薬及び獣医薬でカンジダ真菌症を効果的に免疫予防及び治療するための易用性で耐容性が良好なワクチンが提供される。さらに、好ましくは、経口又は局所適用により、アナフィラキシー反応又はアナフィラキシー様反応のリスクを避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の3つのカンジダ菌株のPCR特性分析を示す。
【図2】本発明のプロピオニバクテリウム・アクネス菌株のPCR−RFLP特性分析を示す。
【図3】本発明の3つのカンジダ菌株のPCR−RFLP特性分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のカンジダ属(Candida)菌株
a1)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)CCM 8355、
a2)カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)CCM 8356、
a3)カンジダ・クルセイ(Candida krusei)CCM 8357、及び
a4)免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株の組合せ、並びに、場合により、1又はそれ以上の助剤からなるワクチンであって、ここで、最終産物中の成分a1〜a4の比率a1:a2:a3:a4が10〜20:10〜20:10〜20:40〜70である、前記ワクチン。
【請求項2】
免疫調節性プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株(a4)がプロピオニバクテリウム・アクネスCCM 7083である、請求項1記載のワクチン。
【請求項3】
比率a1:a2:a3:a4が15〜20:15〜20:15〜20:40〜55である、請求項1又は2記載のワクチン。
【請求項4】
比率a1:a2:a3:a4が10〜15:10〜15:10〜15:55〜70である、請求項1又は2記載のワクチン。
【請求項5】
全てのワクチン菌株a1〜a4の総乾燥重量が投与量当たり2〜10mgである、前記いずれか1項記載のワクチン。
【請求項6】
最終産物の総ホルムアルデヒド含量が0.02重量%未満である、前記いずれか1項記載のワクチン。
【請求項7】
非経口、経口又は局所(local)投与用である、前記いずれか1項記載のワクチン。
【請求項8】
局部(topical)、膣又は直腸投与用である、請求項7記載のワクチン。
【請求項9】
比率a1:a2:a3:a4が10:10:10:70である、経口投与用の請求項7記載のワクチン。
【請求項10】
比率a1:a2:a3:a4が15:15:15:55である、膣投与用の請求項7記載のワクチン。
【請求項11】
比率a1:a2:a3:a4が20:20:20:40である、直腸投与用の請求項7記載のワクチン。
【請求項12】
カプセル剤、錠剤、ロゼンジ(lozenges)、トローチ剤(pastilles)、シロップ剤、経口用懸濁液剤、経口用乳剤、小球剤(globuli)、丸剤、坐剤、膣坐剤、アンプル剤、充填済み注射器、エアゾル剤、吹入剤又は口内洗浄剤の剤型に製剤化された、前記いずれか1項記載のワクチン。
【請求項13】
局所、皮膚若しくは粘膜皮膚及び/又は全身性のカンジダ症の予防及び/又は治療のための、前記いずれか1項記載のワクチン。
【請求項14】
局所カンジダ症が、生殖管、尿生殖管、口腔、消化管、乳腺、耳道又は皮膚の外粘膜に感染をおこしている、請求項13記載のワクチン。
【請求項15】
口内炎(口腔カンジダ症)、食道炎、おむつ紅斑又は外陰部膣炎の予防及び/又は治療のための、請求項14記載のワクチン。
【請求項16】
全身性カンジダ症が、汎発性全身性カンジダ症、カンジダ血症、急性血行性播種性カンジダ症、慢性播種性カンジダ症、カンジダ心内膜炎、カンジダ心外膜炎、化膿性静脈炎、カンジダ髄膜炎、カンジダ肺炎、カンジダ骨髄炎、カンジダ縦隔炎、カンジダ関節炎、口腔咽頭カンジダ症及び食道カンジダ症から選択される、請求項13記載のワクチン。
【請求項17】
獣医薬に適用するための、請求項1〜16いずれか1項記載のワクチン。
【請求項18】
ヒトの医薬に適用するための、請求項1〜16いずれか1項記載のワクチン。
【請求項19】
請求項1〜18いずれか1項記載のワクチンを製造するための方法であって、以下の:
1)ワクチン菌株a1〜a4を各々培養し;
2)カンジダ属(Candida)菌株a1〜a3をホルムアルデヒドで不活化し;
3)プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)菌株a4を熱不活化し;
4)不活化した前記菌株を凍結乾燥し;及び
5)これらのワクチン菌株を、場合により1又はそれ以上の助剤と混合して、最終産物中にa1:a2:a3:a4=10〜20:10〜20:10〜20:40〜70の比率とする
ことを含む、前記方法。
【請求項20】
全てのワクチン菌株の総乾燥重量が投与量当たり2〜10mgである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
最終産物の総ホルムアルデヒド含量が0.02重量%未満である、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
工程1)において、カンジダ属(Candida)菌株a1〜a3をグルコースペプトン寒天又はサブロー寒天上で、23〜27℃で48〜72時間、又は35〜39℃で22〜27時間、好気的条件下で常圧及び大気湿度90〜98%で培養し、その後無菌注射用水で洗浄し、3回の凍結融解サイクルで崩壊させる、請求項19〜21いずれか1項記載の方法。
【請求項23】
工程1)において、カンジダ属(Candida)菌株a1〜a3をサブロー培地中、37℃で24〜48時間、好気的条件下で培養し、その後カットオフ300kDaの限外濾過カートリッジを用いて細胞を単離し、その後無菌生理食塩水による反復洗浄及び4,500gでの遠心分離により精製し、その後無菌注射用水で洗浄し、3回の凍結融解サイクルで細胞を崩壊させる、請求項19〜21いずれか1項記載の方法。
【請求項24】
工程1)において、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株a4を血液寒天、強化クロストリジア寒天又は血液添加VL寒天上で、35〜39℃で46〜50時間、絶対嫌気的条件下で常圧及び大気湿度90〜98%で培養し、その後細菌を無菌蒸留水で溶菌し、2〜8℃で22〜26時間抽出し、工程3)において、前記細菌材料を56〜62℃に少なくとも1時間、少なくとも24時間間隔で3回加熱することにより不活化する、請求項19〜23いずれか1項記載の方法。
【請求項25】
工程1)において、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株a4を強化クロストリジア培地中、35〜39℃で46〜50時間、静止状態で絶対嫌気的条件にて培養し、カットオフ300kDaの限外濾過カートリッジを用いて細菌細胞を単離し、その後無菌生理食塩水による反復洗浄及び4,500gにおける遠心分離により精製し、続いて細菌を無菌蒸留水で溶菌し、2〜8℃で22〜26時間抽出し、工程3)において、前記細菌材料を56〜62℃に少なくとも1時間、少なくとも24時間間隔で3回加熱することにより不活化する、請求項19〜23いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
ワクチン菌株a1〜a4を発酵槽で大量培養する、請求項19〜25いずれか1項記載の方法。
【請求項27】
工程1)において、カンジダ属(Candida)菌株a1〜a3をpH値5.6〜7.2のサブロー培地中、23〜27℃の温度で16〜24時間、溶存酸素15〜20%の好気的条件下に、濾過大気を添加して大気圧に対して0.1〜0.2バールの圧力、40〜50rpmで培養し、3,600〜5,300gでの工業用超遠心分離、カットオフ300kDaの限外濾過カートリッジによる限外濾過、又はその組合せにより菌株を単離する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
工程1)において、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)菌株をpH値6.4〜7.2の強化クロストリジア培地中、35〜39℃の温度で15〜17時間、最大溶存酸素1%の絶対嫌気的条件下に、毎分10リットルのN2:C02(1:2)の濾過混合物の添加により大気圧に対して0.1〜0.2バールの圧力において、40〜50rpmで培養し、3,600〜5,300gでの工業用超遠心分離、カットオフ300kDaの限外濾過カートリッジによる限外濾過、又はその組合せにより菌株を単離する、請求項26又は27記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−514568(P2008−514568A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532852(P2007−532852)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010347
【国際公開番号】WO2006/032533
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504033533)リームセール・アルツナイミッテル・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【出願人】(504033485)バイオベータ・アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】