説明

獣足くくりわな用仕掛筒装置並びにその筒蓋

【課題】構造が簡単で、設置し易く、荒天時にも仕掛筒内に土砂等が侵入し難く、管理の容易なものにする。
【解決手段】仕掛筒2の内部に、その筒内に嵌った獣足の荷重が加わる獣足検出線4を複数本、隣接する線同士離して掛け渡し、その各獣足検出線4の先端を仕掛筒2の前側壁に夫々固定し、更に獣足検出線4の後端部を後側壁に設けた対応する貫通穴5を夫々挿通させて外部に引き出し、その各後端付近をまとめて結合し、その後端結合部6にくくりわな本体の先端部に設けたくくり部のくくり動作開始用トリガ部材7を備え付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山野等に棲息する猪、鹿、熊等の獣類の捕獲に使用する獣足くくりわなに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農山村の高齢化、過疎化が進んで里山が荒廃し、耕作放棄地が増えると共に、人里に猪、鹿、熊等の獣類が以前より多く現れるようになって、農作物を食い荒らし、人に危害を加えるばかりでなく、人命が奪われる場合も多くなってきた。このような獣類を捕獲するわなとして、従来から獣道にくくりわなを仕掛け、獣足を輪状のくくり部によりくくって捕まえている。その際には、くくりわなを設置するため、例えば獣道に獣の踏み込み足が入る深さの穴を掘り、その穴の内周壁に短い小枝を数本差し込んで横に渡し、その横木上に獣足検出線を数本拡げて乗せ、その各先端を穴の周囲上に差し込んだ枯れ枝や草等に結びつけた後、その穴の周囲上にくくりわな本体の先端部に設けた輪状のくくり部を乗せて、その上を落ち葉や土等で被ってカムフラージュして用いている。
【0003】
そして、このような獣足検出線の後端はくくりわな本体の安全装置に備えたロック・解除用の安全ピンを止める止め輪に結び付けておく。すると、穴内に獣の踏み込み足が入って、その獣足検出線に獣足の荷重が加わった時、線が穴の底に落ち込む等により緊張状態となり、その線の後端が前方へと引かれるので、止め輪が前方に移動する。それ故、止め輪に嵌っていた安全ピンが抜けて安全装置のロック状態が解除され、圧縮状態にあったコイルスプリングが解放さるので、そのばね力を利用してくくり部の輪を引き締めることにより、獣足をくくって捕獲できる。
【0004】
しかし、獣道に単に穴を掘って、そこにくくりわなを設置するだけでは、降雨、降雪等によって穴の周囲壁が崩れる等して、その穴内が土砂等で埋まり易く、特に荒天後の見回り管理が必要になる。そこで、地中に埋め込んで仕掛ける筒を用い、その仕掛筒内に、獣の踏み込み足により荷重が加わった時に下方移動可能な網等の平板を備え付けたくくりわなが提示されている。
【特許文献1】実開昭53−93466
【特許文献2】特開2004−57174
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1に示されたくくりわなは、確かに穴内に踏み込んだ獣足の荷重検出用に数本の線を用いるだけでよく、構造が簡単である。しかし、それ等の獣足検出線を現場で設置するための負担が大きく問題がある。しかも、特許文献2に示すような仕掛筒を用いていないので、特に荒天後の見回り管理を必要とするため負担が大きく問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、構造が簡単で、設置し易く、荒天時にも仕掛筒内に土砂等が侵入し難くて、管理の容易な獣足くくりわな用仕掛筒装置並びにその筒蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による獣足くくりわな用仕掛筒装置は、獣の踏み込み足が入る上開口を有し、地中に埋め込んで仕掛ける仕掛筒を用いる。そして、上記仕掛筒の内部に、その筒内に嵌った獣足の荷重が加わる複数本の獣足検出線を、隣接する線同士所定の間隔を開けて掛け渡し、その各獣足検出線の先端を仕掛筒の前側壁に夫々固定し、更に獣足検出線の後端部を仕掛筒の後側壁に設けた対応する貫通穴を夫々挿通させて外部に引き出し、その各後端付近をまとめて結合し、その後端結合部にくくりわな本体の先端部に設けたくくり部のくくり動作開始用トリガ部材を備え付ける。
【0008】
又、上記仕掛筒の後壁外面に、真後ろ斜め上方に向って突出し、その先端の高さを仕掛筒の上縁の高さとほぼ等しくした突出部と、その突出部の先端に、わな設置時に各獣足検出線の後端結合部寄り部分とくくりわな本体の一部を乗せるわな設置用受け部とを有するわな設置用支持部材を備え付けると好ましくなる。
【0009】
又、本発明による獣足くくりわな用仕掛筒装置の筒蓋は、上記仕掛筒の内径より少し小さな外径を有する円板体の中央部を除く外周部を放射状に多数分割し、その各分割箇所を夫々スリット状にして多数個の分割部を形成し、その円形に並ぶ分割部に、わな設置時に仕掛筒の上縁を越えて外方に突出し、くくりわな本体の先端部に設けた輪状のくくり部を乗せるくくり部受け突部を複数個配設する。
そして、上記円板体の中央部に1箇所又は複数個所、水抜き穴を設けると好ましくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の獣足くくりわな用仕掛筒装置は、仕掛筒を用い、その内部に複数本の獣足検出線を掛け渡し、その各獣足検出線の後端部を仕掛筒の後側壁に設けた対応する貫通穴を夫々挿通させて外部に引き出し、その各後端付近をまとめて結合し、その後端結合部にくくり動作開始用トリガ部材を備え付けることにより、その装置の構造を簡単にしてユニット化できる。そして、使用時には現場において穴を掘り、その穴内に仕掛筒を置いた後、後端結合部付近等を持って後方に引くと、一度に全ての獣足検出線を引っ張って仕掛筒内に良好に張り渡すことができる。又、その張り渡し状態を保ちながら、くくり動作開始用トリガ部材をくくりわな本体の所定箇所に結合すればよく、設置作業を簡単に行える。又、仕掛筒に設ける各貫通穴を、挿通する獣足検出線の緊張と弛緩の妨げにならない程度に大きくしても、その各穴を線の太さに合せて小さくすることができ、荒天時に各穴から筒内に土砂等が侵入し難くなって、手入れのための見回り回数を減少させることが可能になって管理し易い。
【0011】
又、上記仕掛筒の後壁外面に、真後ろ斜め上方に向って突出し、その先端の高さを仕掛筒の上縁の高さとほぼ等しくした突出部と、その突出部の先端に設けたわな設置用受け部とを有するわな設置用支持部材を備え付けることにより、くくりわな設置時に、仕掛筒の上縁付近に配置してくくりわな本体の先端部に設けたくくり部を輪状にし、そのわな設置用受け部上に各獣足検出線の後端結合部寄り部分とくくりわな本体のくくり部より後側の一部を乗せると、くくり動作開始用トリガ部材をくくりわな本体の所定箇所に結合し易く、くくりわなの設置を簡単にかつ良好に行える。
【0012】
又、本発明の獣足くくりわな用仕掛筒装置の筒蓋は、円板体の外周部を放射状に多数分割し、その各分割箇所を夫々スリット状にして多数個の分割部を形成することにより、それ等の分割箇所に離隔部材を差し込んで、全てのくくり部受け突部付きの分割部の平面と全ての突部のない分割部の平面との間に段差が生じるように偏倚させることができる。このため、わな設置時に仕掛筒に筒蓋を被せて、仕掛筒の上開口を閉鎖できるばかりでなく、全てのくくり部受け突部を仕掛筒の上縁を越えて外側方向に突出し、更に全ての突部のない分割部を上開口から少し内部に嵌めることができる。
【0013】
それ故、仕掛筒に被せた筒蓋の位置ずれが生じず閉鎖状態が安定し、全てのくくり部受け突部上にくくり部を乗せ輪状に拡げて配置すると、仕掛筒の上開口に対しくくり部を正確に位置決めできる。そして、獣足の荷重が筒蓋に加わった時に、くくり部が乗る受け突部より内側にある付け根側部分の方が速く、中央部やその回りにある複数個の突部のない分割部と共に仕掛筒の内部に落下して行き、その筒蓋の中央部と突部のない分割部とで複数本の獣足検出線を良好に押し下げ、くくりわな本体の安全装置を解除して、くくり動作を開始できる。
【0014】
又、上記円板体の中央部に1箇所又は複数個所、水抜き穴を設けることにより、降雨、降雪等によってその筒蓋上に溜まる水を仕掛筒内に落下させて、筒蓋のたわみ等の変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図1〜7を参照して本発明の実施の最良形態を説明する。
図1は本発明を適用した獣足くくりわな用仕掛筒装置の獣足検出線張り渡し状態を示す平面図、図2はその右側面図である。この仕掛筒装置1はくくりわな本体と共に用いて獣足くくりわなを構成する。そして、仕掛筒2として上下開口3(3a、3b)を有する円筒、例えば高さが13.5cm、内径15.5cm、外径16.5cmの塩化ビニール製円筒を用いる。すると、仕掛筒2の上開口3aを獣の踏み込み足が入る捕獲用開口として利用できる。
【0016】
そこで、仕掛筒2の内部に嵌った獣足を検出するため、その筒内に獣足の荷重が加わる獣足検出線4を複数本例えば4本用い、隣接する線4同士を離して掛け渡し、その各獣足検出線4(4a、…4d)の先端を仕掛筒2の前側壁に夫々固定し、更に各獣足検出線4の後端部を仕掛筒2の後側壁に設けた対応する貫通穴5(5a、…5d)を夫々挿通させて外部に引き出し、その各後端付近をまとめて結合し、その後端結合部6にくくりわな本体の先端部に設けたくくり部のくくり動作開始用トリガ部材7を備え付ける。
【0017】
その際、獣足検出線4として例えば長さが30cmで、太さが0.4mmのワイヤーロープを用いる。そして、4本の各獣足検出線4の先端を仕掛筒2の前側壁に夫々固定するため、その前側壁の高さの2分の1の箇所に、先ず各獣足検出線4が通る4個の貫通小孔8(8a、…8d)を穿設し、いずれも隣接する孔8同士が6cm間隔になって、左右に対称となるように2個ずつ分配する。次に、各獣足検出線4の先端部を対応する貫通孔8に挿通して、前側壁より少し外部に突出させ、そこに固定用の抜け止め部材として圧着スリーブ9(9a、…9d)を夫々固着する。
【0018】
又、各獣足検出線4の後端部を仕掛筒2の後側壁を通して夫々外部に引き出すため、その後側壁の高さ2分の1の箇所に、先ず各獣足検出線4が通る4個の貫通小孔5を穿設し、いずれも隣接する孔5同士が1.5cm間隔になって、左右対称となるように2個ずつ分配する。次に、各獣足検出線4の後端部を対応する貫通孔5に挿通して、外部に引き出す。そこで、これ等の各獣足検出線4の後端付近をまとめて結合する結合用部材として、圧着スリーブ10を固着し、その後端結合部6の圧着スリーブ10より後側に輪11を設ける。すると、その輪11に長さが例えば18cm程の1本の針金の一端部をねじり結合して、くくり動作開始用トリガ部材7として用いることができる。
【0019】
又、このような仕掛筒2の後壁の外面中央に、わな設置用支持部材12を備え付ける。その際、わな設置用支持部材12として例えば大略L字状に屈曲した針金製の支持本体13と、その支持本体13の仕掛筒2の後壁外面に沿う長さ9.5cmの垂直部14の上端寄り位置に、十文字状に交差して結合する長さ4cmの針金製の回り止め部15と、その垂直部14の上端から真後ろ斜め上方に向って突出する傾斜角度の小さな長さ7cmの突出部16の先端に十文字状に交差して結合する長さ5cmの針金製のわな設置用受け部17とからなる太さ3.2mmの針金製結合体を用いる。なお、回り止め部15とわな設置用受け部17とをいずれも弧状に屈曲させるが、回り止め部15は仕掛筒2の周囲壁外面の曲率に合せて僅か曲げるのに対し、わな設置用受け部17は中央を低くして左右両端を少し前上方に向けて曲げる。
【0020】
そして、仕掛筒2の後壁に対し、L字状支持本体13の垂直部14の下端を輪部付き圧着スリーブ18、ボルト19、ナット20、ワッシャ21等を用いて固着し、その垂直部14の上端付近を針金22を用いて固着する。すると、支持本体13の先端の高さを仕掛筒2の上縁の高さより少し低く、例えば1cm程低く保持でき、その先端上にわな設置用受け部17を乗せて固着できる。なお、仕掛筒2の後壁の上縁中央付近を幅が4cm、深さが1cm程の弧状に切り欠いて、くくり動作を円滑に行うための凹所23を設けておく。
【0021】
このようにして、仕掛筒装置1を完成すると、装置の構造を簡単にしてユニット化できる。なお、通常は図3に示すように4本の獣足検出線4の後端結合部6寄り部分を、わな設置用受け部17に乗せて取り扱う。
【0022】
そこで、仕掛筒2の上開口3aを閉鎖する筒蓋24として、図4に示すような仕掛筒2の内径より少し小さな例えば15cmの外径を有する円板体25と、その外周に沿って分配し、板面方向に例えば2.5cm突出して設けた複数個のくくり部受け扇面状突部26とからなる円形状板体を用いる。そして、その円板体25の中央部27を除く外周部を放射状に多数分割する。例えば8等分して、各分割箇所28(28a、…28h)を夫々長さ5cmのスリット状にし、8個の扇面状分割部29(29a、…29h)を形成する。又、その円形に並ぶ扇面状分割部29に複数個のくくり部受け扇面状突部を配設する。例えば一つ置きの分割部29a、29c、29e、29gの各半外周面に、くくり部受け扇面状突部26(26a、…26d)を夫々設ける。又、円板体25の中央部27に1箇所又は複数箇所、水抜き穴30を設ける。例えば中央部27の中心に1箇所、各分割箇所28の付け根に1箇所ずつ、直径5mmの貫通穴を夫々設ける。すると、筒蓋24が完成する。なお、筒蓋24の材料として厚さ2.5mmのベニヤ板が適する。
【0023】
このような仕掛筒装置1と筒蓋24、及びくくりわな本体を用いて、獣類を捕獲する場合、獣道に仕掛筒装置1を設置するための穴31を掘る。そして、図5に示すように設置穴31の内部に仕掛筒装置1を入れ、仕掛筒2の上縁が地表面より1〜2cm程下がるようにして置く。そこで、仕掛筒2に筒蓋24を被せるため、先ず筒蓋24の分割箇所28に離隔部材32を差し込んで、全てのくくり部受け突部26を有する分割部29の平面と全ての突部のない分割部29の平面との間に段差が生じるように偏倚させる。その際、離隔部材32として、例えば枯れた小枝等を所定の長さに切断した棒状体を4本用い、その各棒状体32(32a、…32d)を図6に示すように1本ずつ、突部のない分割部29上に夫々乗せ、その両端部をスリット状の分割箇所28に差し込んで、両側にあるくくり部受け突部26のある分割部29の下側に差し込むとよい。
【0024】
すると、仕掛筒2に筒蓋24を被せて、その仕掛筒2の上開口3aを閉鎖できる。しかも、筒蓋24に設けた全てのくくり部受け突部26を仕掛筒2の上縁を乗り越えて夫々外側方向に突出し、更に全ての突部のない分割部29を上開口3aから少し内部に落として嵌めることができる。それ故、仕掛筒2に被せた筒蓋24の位置ずれが生じず閉鎖状態が安定し、全てのくくり部受け突部26の上にくくり部33を乗せ、円形の輪状に拡げて配置した時、仕掛筒2の上開口3aに対しくくり部33を正確に位置決めできる。このようにして、仕掛筒2に筒蓋24を被せた後、その筒回りに土を入れて設置する。しかし、仕掛筒2の後壁外面に備え付けたわな設置用支持部材12の付近には土を入れないようにする。
【0025】
そこで、くくりわな本体34として、先端部にくくり具35等を用いて収縮・拡張可能にした輪状のくくり部33を設け、後端部を立木等への縛り箇所として用いる太い、例えば直径5mmの捕獲用のスチールロープ36と、その捕獲用ロープ36が中心を挿通する圧縮コイルスプリング(図示なし)と、その捕獲用ロープ36が挿通し、圧縮コイルスプリングをロック時に全部、解除時に一部収容する安全装置37付きの嵌合・分離可能な前後管38、39とを組み合せた装置を用いる。なお、前管38はその前端内部に圧縮コイルスプリングの先端止め部を有し、安全装置37の解除時にばね力を受けて前方移動しくくり部を収縮すると共に、ばね力に抗して後方移動可能な移動用の管であるのに対し、後管39はその後端内部に圧縮コイルスプリングの後端止め部を有し、捕獲用ロープ36に固定した後方止め具(図示なし)によって後方移動できない固定用の管である。
【0026】
このくくりわな本体34を設置する場合、先ずくくり部33をトラックのロープ掛け等の簡単に外れることのない所に掛ける。そして、分離している移動用前管38を固定用後管39の方向に引き寄せ、ばね力に抗してコイルスプリングを圧縮して行き、移動用前管38の後端部付近を固定用後管39の前端部内に嵌合し、両管38、39を組み付ける。そこで、安全装置37をロック状態にするため、図7に示すように固定用後管39の前端部に結合した細い後側ワイヤーロープ40の前端輪41で回動自在に支持した後端部屈曲の安全ピン42の平たい後端部43を、移動用前管38の前端部に結合した細い前側ワイヤーロープ44の後端輪45に入れ、その安全ピン42の棒状前側部46を前側ロープ44と平行にする。次に、先端輪部47を有し、前側ロープ44が自在に挿通するピン止め輪部48に安全ピン42の前側部46を挿通して、その先端輪部47付きピン止め輪部48を後方に引き寄せ、そのピン止め輪部48の付近を安全ピン42が抜けないようにガムテープ等を用いて固着する。すると、安全装置37がロック状態になる。なお、49、50は後側、前側ロープ40、44の前端、後端輪41、45を夫々形成するための圧着スリーブである。
【0027】
そこで、捕獲用ロープ36の後端部を近くにある立木に巻き付け、その後端輪に安全装置37をロック状態にした一続きの前後管38、39を差し通して引き抜き、くくりわな本体34を固定する。次に、くくり部33のロープ36を仕掛筒2の外径より少し大きくなるように拡げ、固定用後管39の直後に後方止め具を移動して蝶ねじを締めて固定する。その後、仕掛筒2に備え付けたわな設置用支持部材12の受け部17に4本の獣足検出線4を乗せ、その後端結合部6の付近等を持って後方に引くと、一度に全ての獣足検出線4を引っ張って仕掛筒2の内部に良好に張り渡すことができる。それ故、張り渡し状態を保ちながら、くくり動作開始用トリガ部材7として用いた針金をくくりわな本体34の安全装置37に結合すればよく、設置作業を簡単に行える。
【0028】
又、わな設置用支持部材12の受け部17に移動用前管38の前端部を乗せ、その前管38から突出するくくり部33を筒蓋24の全てのくくり部受け突部26上に乗せて円形の輪状に拡げて配置する。このように受け部17の上に各獣足検出線4の後端結合部6寄り部分とくくりわな本体34を構成する移動用前管38の前端部とを乗せると、くくり動作開始用トリガ部材7として用いた針金をくくりわな本体34の安全装置37に一層結合し易くなり、獣足くくりわなの設置を簡単にかつ良好に行える。なお、くくり部33を円形の輪状に拡げて配置する際には、枯れた小枝等を短く折り、必要な本数例えば5本の各小枝51等を仕掛筒2の外周近傍に分散して地面に立てるとよい。
【0029】
このようにして、くくり部33を拡げた後、土や落ち葉等を用いて、筒蓋24やくくり部33のロープ36等が見えないように被う。そこで、ピン止め輪部48の付近からガムテープをはがし、くくり動作開始用トリガ部材7として用いた針金の先端をピン止め輪部48の先端輪部47に通し、安全ピン42の先端部がピン止め輪部48の先へ5mm程出る位置にピン止め輪部48を移動した後、針金7を折り曲げ、更に一部嵌合した一続きの前後管38、39が見えなくなるように落ち葉等で覆う。すると、獣足くくりわなの設置が完了する。
【0030】
このような獣足くくりわな設置後、降雨や降雪等があっても仕掛筒2の周囲壁が障壁となって内部に土砂等が侵入し難い。又、仕掛筒2に設ける各貫通穴5、8は、挿通する獣足検出線4の緊張と弛緩の妨げにならない程度に大きくしても、その各穴5、8を線の太さに合せて小さくすることができるので、各穴5、8から筒内に土砂等が侵入し難い。しかも、筒蓋24には多数個の水抜き穴30を設けているので、当然各穴30を通して筒内に水が落下し易く、水の重さで筒蓋24がたわむ等の変形が発生しない。それ故、荒天後の手入れのための見回りを必要とせず、見回り回数を減らすことができて、管理を容易に行える。
【0031】
獣の踏み込み足が筒蓋24に乗って、獣足の荷重が筒蓋24に加わると、4個のくくり部受け突部26付きの分割部29a、29c、29e、29gがいずれも付け根箇所で折れ曲がって板面が夫々傾斜し、そのくくり部33が乗る各受け突部26と比べて内側にある各付け根部分が速く、中央部27やその回りにある突部のない分割部29b、29d、29f、29hと共に仕掛筒2の内部に落下する。それ故、筒蓋24の中央部27と突部のない分割部29b、29d、29f、29hとで、仕掛筒2の内部に張り渡されている4本の獣足検出線4を夫々良好に押し下げることができる。なお、各突部26付きの分割部29はいずれもその両側にある分割箇所28をスリット状にして、その付け根に水抜き穴30を夫々設けてあるので、付け根部分が弱く、その位置で折れ曲がり易い。
【0032】
このようにして、筒蓋24により獣足検出線4を押し下げると、それ等の後端結合部6に備え付けたくくり動作開始用トリガ部材7たる針金により安全装置37のピン止め輪部48を牽引して前方に移動できる。すると、安全ピン42が回転してその後端部43が輪45から外れ、安全装置37が解除状態になり、圧縮コイルスプリングのばね力によって移動用前管38が捕獲用ロープ36に沿って前方に移動する。このため、移動用前管38の前端でくくり具35を押し続けることができ、くくり部33が急速に収縮する。それ故、踏み込んだ獣の足を素早くくくって捕獲できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を適用した獣足くくりわな用仕掛筒装置の獣足検出線張り渡し状態を示す平面図である。
【図2】同獣足くくりわな用仕掛筒装置の獣足検出線張り渡し状態を示す右側面図である。
【図3】同獣足くくりわな用仕掛筒装置の獣足検出線無拘束状態を示す背面図である。
【0034】
【図4】同獣足くくりわな用仕掛筒装置に用いる筒蓋の平面図である。
【図5】同獣足くくりわな用仕掛筒装置を設置用穴内に置いた状態を示す縦断面図である。
【図6】同獣足くくりわな設置状態を示す要部の平面図である。
【図7】同獣足くくりわな本体に備え付けた安全装置のロック状態を示す要部の右側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1…仕掛筒装置 2…仕掛筒 3…上下開口 4…獣足検出線 5、8…貫通小孔 6…後端結合部 7…くくり動作開始用トリガ部材 9…固定用抜け止め部材 12…わな設置用支持部材 13…支持本体 16…突出部 17…設置用受け部 24…筒蓋 25…円板体 26…くくり部受け突部 27…中央部 28…分割箇所 29…分割部 30…水抜き穴 31…設置穴 32…離隔部材 33…くくり部 34…くくりわな本体 35…くくり部 36…捕獲用ロープ 37…安全装置 38…移動用前管 39…固定用後管 40…後側ロープ 41…前端輪 42…安全ピン 44…前側ロープ 45…後端輪 47…先端輪部 48…ピン止め輪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
獣の踏み込み足が入る上開口を有し、地中に埋め込んで仕掛ける仕掛筒を用いた獣足くくりわな用仕掛筒装置であって、上記仕掛筒の内部に、その筒内に嵌った獣足の荷重が加わる獣足検出線を複数本、隣接する線同士を離して掛け渡し、その各獣足検出線の先端を仕掛筒の前側壁に夫々固定し、更に獣足検出線の後端部を仕掛筒の後側壁に設けた対応する貫通穴を夫々挿通させて外部に引き出し、その各後端付近をまとめて結合し、その後端結合部にくくりわな本体の先端部に設けたくくり部のくくり動作開始用トリガ部材を備え付けることを特徴とする獣足くくりわな用仕掛筒装置。
【請求項2】
仕掛筒の後壁外面に、真後ろ斜め上方に向って突出し、その先端の高さを仕掛筒の上縁の高さとほぼ等しくした突出部と、その突出部の先端に、わな設置時に各獣足検出線の後端結合部寄り部分とくくりわな本体の一部を乗せるわな設置用受け部とを有するわな設置用支持部材を備え付けることを特徴とする請求項1記載の獣足くくりわな用仕掛筒装置。
【請求項3】
仕掛筒の内径より少し小さな外径を有する円板体の中央部を除く外周部を放射状に多数分割し、その各分割箇所を夫々スリット状にして多数個の分割部を形成し、その円形に並ぶ分割部に、わな設置時に仕掛筒の上縁を越えて外方に突出し、くくりわな本体の先端部に設けた輪状のくくり部を乗せるくくり部受け突部を複数個配設することを特徴とする請求項1又は2記載の獣足くくりわな用仕掛筒装置の筒蓋。
【請求項4】
円板体の中央部に1箇所又は複数個所、水抜き穴を設けることを特徴とする請求項3記載の獣足くくりわな用仕掛筒装置の筒蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−173016(P2008−173016A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6853(P2007−6853)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(507016591)
【Fターム(参考)】