説明

玄関ドアのロック装置

【課題】構造が容易で安価に製作することができ、どのような玄関ドアであっても確実にロックすることができる玄関ドアのロック装置を提供する。
【解決手段】建築物のドア用開口部の枠体A側に形成された溝32内に着脱自在に収容される突起部28と、建築物のドアBの外方に先端部が突出して配置され、南京錠26を差し込むための孔36が複数個形成された板状部30とからなる枠体差込部材22と、枠体差込部材22に対し、当該枠体差込部材22の先端側から挿入のために設けたスリット34a,34b,34cを介して一体的に組み込まれる平板ストッパ部材24と、から構成され、枠体差込部材22の先端側からスリット34a,34b,34cのいずれかを介して平板ストッパ部材24を枠体差込部材22に一体的に組付けた状態で、枠体差込部材22の孔内36に南京錠26を挿入することにより、ドアBの回動動作を規制するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関ドアのロック装置に関し、詳しくはマンションあるいはアパートなどの賃貸住宅の空き部屋となった物件に対し、管理者とは異なる他の仲介業者が入居希望者などを案内したりすることが必要な場合に、業者間での鍵の受け渡しという手間のかかる作業を省くことに寄与する玄関ドアのロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アパート・マンションなどの賃貸物件は、多くの仲介業者に入居希望者を案内してもらう必要がある。そのような場合、賃貸物件の管理会社と、入居希望者を紹介する仲介業者との間では、鍵の受け渡しが必要になるが、入居希望者を部屋に紹介する時点で鍵の受け渡しを業者間で行うことは、面倒な作業が強いられることになる。これを改善する手段として、様々な方法がとられている。
【0003】
例えば、物件近くに、暗証番号で開くことのできる鍵ボックスを予め設置しておき、この鍵ボックスの中に空き部屋の鍵を必要に応じて保管するようにすれば、鍵ボックスの暗証番号だけを連絡しあうことにより、管理会社に出向くことなく複数の仲介業者が誰でも入居希望者を案内することができる。
【0004】
しかしながら、このような場合には、実際の部屋の鍵を鍵ボックス内に一時的に保管する必要があることから盗難やいたずらなどに遭い易いという問題を抱えている。
一方、鍵ボックスの設置に変え、例えば、図4に示したようなロック装置2を設置する場合もある。このロック装置2を空き物件に設置すれば、部屋の錠を直接開け閉めしなくても、部屋の内部に入ることが可能になる。例えば、図4のロック装置2を使用する場合は、空きとなった部屋を常に開いた状態(オープン)にしておく。そして、図5に示したように建物側の枠体Aに、図4に示した板状部材2aを着脱自在に取り付けするとともに、この板状部材2aの先端部に、一対のフランジ4,4を具備した駒部材2bを差し込んで、建物の枠体AとドアBとの両間にフランジ4,4を差し渡す。そして、このフランジ4,4でドアBの開閉動作を不能にし、さらに、ロック装置2の孔8a,8b間に南京錠10を差し渡すことにより、ドアBのロックを確実なものとすることができる。
【0005】
しかしながら、このロック装置2では、建物側の枠体Aの凹凸形状やドアBの厚さなどの違いにより、板状部材2aおよび駒部材2bを設置できない場合があった。このような場合には、他の大きさのロック装置2を用意するか、あるいは全く異なる別のタイプのロック装置を用意しなければならない。すなわち、ロック装置2の構造は、汎用性に欠けるという問題があった。
【0006】
また、ロック装置2の構造は、板状部材2aや駒部材2bのフランジ4,4に適度の厚さを有していないと、ロックが機能しないため、板材の厚さが厚くなるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑み、構造が容易で安価に製造することができ、どのような玄関ドアであっても確実にロックすることができる玄関ドアのロック装置を提供することを目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る玄関ドアのロック装置は、
建築物のドア用開口部の枠体側に形成された溝内に着脱自在に収容される突起部と、前記建築物のドアの外方に先端部が突出して配置され、南京錠を差し込むための孔が複数個形成された板状部とからなる枠体差込部材と、
前記枠体差込部材に対し、当該枠体差込部材の先端側から、挿入のために設けたスリットを介して一体的に組み込まれる平板ストッパ部材と、から構成され、
前記枠体差込部材の先端側から前記スリットを介して前記平板ストッパ部材を前記枠体差込部材に一体的に組付けた状態で、前記枠体差込部材の前記孔内に南京錠を挿入することにより、前記ドアの回動動作を規制するようにしたことを特徴としている。
【0009】
このような構成の玄関ドアのロック装置によれば、どのような建物であっても、ドアを固定するための溝を有し、しかもその溝はある範囲内の大きさであるため、その溝に枠体差込部材の突起部を収容することができる。
【0010】
また、枠体差込部材を構成し建物外方に突出する板状部は、ドアのロックに直接関与しないので、板厚を薄くすることが可能である。むしろ、若干の変形性を持たせることが好ましく薄い板材で良いことから、多数の孔を形成し易くなる。
【0011】
一方、ドアのロックに直接関与する平板ストッパ部材は、単純な平板形状で良く、複雑な加工を必要としない。したがって、安価に提供することができる。
ここで、本発明では、前記枠体差込部材および前記平板ストッパ部材は、金属製であるとともに、前記平板ストッパ部材の裏面には、傷防止用のゴム製の面材が付設されていることが好ましい。
【0012】
このように平板ストッパ部材のドアの外表面に対向する側にゴム製の面材を付設すれば、ドアに傷を付けることを防止できる。
また、本発明では、前記枠体差込部材の前記板状部には、南京錠を挿入するための孔が少なくとも上下二段に渡って複数個形成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成であれば、数ミリ単位で南京錠を通すための孔を選択することができるので、ドアを確実に閉じた状態で移動不能に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る玄関ドアのロック装置によれば、単純な構造でありつつ薄い金属材料から大量生産することができ、安価に製造することができる。また、どのような建築物にも適用することができ、汎用性が高い。
【0015】
さらに、平板ストッパ部材の裏側にゴム製の面材を付設することにより、ドアに傷がつくことを防止できる。
また、南京錠を挿入するための孔が多数形成されているので、適宜な孔を選択することができるとともに、その孔の加工も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る玄関ドアのロック装置の分解斜視図である。
【図2】図2は図1に示した本実施例のロック装置における枠体差込部材を建物側の枠体に着脱自在に取り付けたときの斜視図である。
【図3】図3は図2の状態からドアを閉め、その後、平板ストッパ部材を枠体差込部材に挿入したときの斜視図である。
【図4】図4は従来のロック装置の分解斜視図である。
【図5】図5は図4のロック装置を取り付ける時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の一実施例に係るロック装置20を示したものである。 このロック装置20は、互いに交差する態様で組み込まれる枠体差込部材22と平板ストッパ部材24との2部材から構成され、この2部材を図1のように一体的に組み付けた状態で、南京錠26を差し込むことにより構成される。
【0018】
すなわち、枠体差込部材22は、例えば、一枚の金属板を折り曲げることで形成され、一端側に略コ字状に形成された突起部28を有し、他端側に平板の板状部30を延出している。
【0019】
突起部28の大きさは、図2に示したように、建物の枠体Aに形成された溝32内に着脱自在に収容される大きさを有し、その幅Sは、建物側の溝32の幅Tより若干狭く形成されている。枠体差込部材22の板状部30には、上下2段に渡り水平方向に若干位置をずらして多数の孔36が形成されている。
【0020】
一方、図1に示したように、枠体差込部材22の板状部30に差し込まれる略矩形状の平板ストッパ部材24は、金属製の基板部24aとゴム製の面材24bとからなり、金属製の基板部24aには、予め縦方向に3本のスリット34a、34b、34cが所定間隔置きに形成されている。
【0021】
平板ストッパ部材24を構成する金属製の基板部24aとゴム製の面材24bとの間は、接着剤あるいは両面テープなどで一体化されている。
本実施例によるロック装置20は、上記のように構成されているが、以下に、使い勝手について説明する。
【0022】
先ず、空き部屋となった部屋のドアBを図3に二点鎖線で示したように開いた状態とし、建物の枠体Aのドア用開口部を露出させ、この側面に形成された溝32内に、図2に示したように枠体差込部材22の突起部28を着脱自在に収容する。
【0023】
この状態では、枠体差込部材22の先端側の板状部30が建物の外側に突出して配置される。
この状態から、ドアBを図3に示したように、矢印C方向に回動させ、ドアBを枠体Aに合致させる。すなわち、ドアBを閉とする。
【0024】
ドアBを閉じたら、枠体差込部材22の板状部30の先端側に平板ストッパ部材24を配置し、この平板ストッパ部材24のいずれか一つのスリット34a、34b、34cを選択して、そのスリット34a内に板状部30を挿入する。
【0025】
このとき、スリットは周囲の状況を見て平板ストッパ部材24の挿入に衝突を生じさせないスリットが選択される。すなわち、例えばドアBを入居者が開閉するためのノブと、平板ストッパ部材24とが衝突しないスリットが選択される。
【0026】
平板ストッパ部材24を枠体差込部材22の板状部30の先端部から差し込むに際し、その板状ストッパ部材24はできるだけドアBの表面近くまで差し込まれることが好ましい。これにより、ドアBの不用意な移動を防止することができる。なお、平板ストッパ部材24の裏面側には、ゴム製の面材24bが付設されているので、ドアBに平板ストッパ部材24が当接してもドアBに傷がつくことは無い。
【0027】
このようにして、平板ストッパ部材24が所定距離、ドアB側に差し込まれたら、図1に示したように、南京錠26を平板ストッパ部材24の最も近くにある孔36に取り付ければ、ドアBを閉の状態にロックすることができる。この状態でドアBを開こうとしても、平板ストッパ部材24が開閉を遮断しているので、ドアBが回動することはない。
【0028】
上記のようにしてロック装置20を枠体AとドアBとの間に着脱自在に取り付けることができる。
このようなロック装置20を空き部屋に着脱自在に取り付けることにより、例えば、賃貸住宅の管理者と、他の複数の仲介業者とが南京錠26を開旋するためのカギ38を予め共有していれば、空きとなった部屋のカギの直接の受け渡しを行わずに、南京錠26を開閉操作することで、部屋の管理を行うことができる。
【0029】
したがって、業者間で実際の部屋の鍵を直接やりとりする必要がなく、必要に応じて入居希望者を仲介業者が案内することができる。
以上、本発明の一実施例を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。例えば、上記実施例では、マンションやアパートなどの賃貸住宅に適用したが、ビルの空き部屋、貸し倉庫、一軒家など、ドアが設置される様々な物件に適用可能である。また、平板ストッパ部材24に形成されるスリットは3本に限定されない。さらに、この平板ストッパ部材24の裏面側に付設されるゴム製の面材24aは、孔無しのものを貼り付けておき、設置場所でスリットを開口しても良い。
【符号の説明】
【0030】
20 ロック装置
22 枠体差込部材
24 平板ストッパ部材
24a 基板部
24b ゴムの面材
28 突起部
30 板状部
32 溝
34a、34b、34c スリット
36 孔
38 カギ
A 建物側の枠体
B ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のドア用開口部の枠体側に形成された溝内に着脱自在に収容される突起部と、前記建築物のドアの外方に先端部が突出して配置され、南京錠を差し込むための孔が複数個形成された板状部とからなる枠体差込部材と、
前記枠体差込部材に対し、当該枠体差込部材の先端側から、挿入のために設けたスリットを介して一体的に組み込まれる平板ストッパ部材と、から構成され、
前記枠体差込部材の先端側から前記スリットを介して前記平板ストッパ部材を前記枠体差込部材に一体的に組付けた状態で、前記枠体差込部材の前記孔内に南京錠を挿入することにより、前記ドアの回動動作を規制するようにしたことを特徴とする玄関ドアのロック装置。
【請求項2】
前記枠体差込部材および前記平板ストッパ部材は、金属製であるとともに、前記平板ストッパ部材の裏面には、傷防止用のゴム製の面材が付設されていることを特徴とする請求項1に記載の玄関ドアのロック装置。
【請求項3】
前記枠体差込部材の前記板状部には、南京錠を挿入するための孔が少なくとも上下二段に渡って複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の玄関ドアのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41735(P2012−41735A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183950(P2010−183950)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(501147071)エイブル保証株式会社 (1)