説明

玉巻紐切断収納容器

【課題】玉巻紐を構成するポリプロピレン紐は、僅かな力で際限なく引き出されるので、紐を確実に切断するには係止具が必要である。本発明は、紐の操作だけで、係止と引き出しを自在に切り替えできる係止具を備えた玉巻紐切断収納容器を提供する。
【解決手段】玉巻紐を収容することができる底部を開口した円筒状の容器本体(3)と、該開口部を着脱可能な嵌合状態で覆うことができる蓋体(6)から成り、天板(4)の中央部付近に、玉巻紐(1)から引き出した紐(2)を通過させる紐導出孔(15)と該紐を係止させる係止板(8)を一体的に形成するとともに、天板と壁板(5)が当接する角部に、カートリッジ(20)を着脱自在に挟持できるホルダー(25)を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玉巻紐を収容して、必要な長さだけ引き出して係止し、切断できる玉巻紐切断収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、玉巻紐、特にポリプロピレン(PP)製の玉巻紐は家庭、事業所等で広く使用されているが、この玉巻紐は、玉全体が連続した紐であるため、必要な長さだけハサミやカッターで切断する必要があった。しかし、引き出し時のちょっとした力加減で必要もないのに長く引き出されたり、あるいは紐の端部が玉巻紐の中心部に引き戻されてしまい、取り出しにくくなることが、しばしばあった。上記のような課題に対処するため玉巻紐を容器に収納し、中心部から順次紐を引き出し、所定の位置で切断する発明が多数成されているが、切断を確実に遂行するためには、何等かの手段で紐を係止し、切断刃に剪断力を付与する必要があった。そのため、引き出し部にノッチを付けて紐を挟んだり、紐を指で押さえる等の方法が用いられてきた。本発明に目的が類似していると思われる技術として「カッター付き紐収納ケース」という発明がある。これは太鼓を輪切りにしたような形状を持つ玉巻紐収納ケースであって、身部分に玉巻紐を収容し、蓋部分の中心付近に紐引き出し孔を設け、且つ蓋部分の側壁にカッターを設置した構成である。そして、紐引き出し孔とカッターを紐導出路で結び、紐導出路の途中部分に指押さえ部を形成したものであり、本発明とは解決の手段、実施の形態が異なるものである(例えば特許文献1参照)。即ち、特許文献1にあっては、切断刃に剪断力を付与するため、引き出された紐を係止する指押さえ部を形成した、カッター付き紐収納ケースの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−95258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の従来例では次のような不都合があった。
(イ)紐を指で押さえないままカッターに導き切断しようとすると、刃の上を紐が滑って切断できなかったり、仮に切断できても、引きちぎられた状態を呈することが多かった。確実に切断するためには、片手で紐を押さえ、もう一方の手で紐の端部を持ち、切り下げる必要がある。即ち、両手を同時に使う必要があった。
(ロ)紐引き出し孔に係止具がないので、紐の端部が不用意に引き出されたり、或いはケース内で玉巻紐が転動したりすると、逆にケース内に引き込まれ、再度紐を導出しなければならない事態も起こった。
本発明は上記の不都合を解決するため成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
玉巻紐(1)を収容することができる底部を開口した円筒状の容器本体(3)と、該開口部を着脱可能な嵌合状態で覆うことができる蓋体(6)から成り、天板(4)の中央部またはその近傍に、玉巻紐から引き出した紐(2)の端部を通過させる紐導出孔(15)と該紐を係止させる係止板(8)を一体的に形成するとともに、天板と壁板(5)が当接する角部に、カッター(19)を内蔵したカートリッジ(20)を着脱自在に挟持できる形態を備えたホルダー(25)を形成した。また、係止板に穿設した切欠(12)は、紐通過部(13)と紐捕捉部(14)から成り、該紐捕捉部の形状を楔形の溝にするとともに、該切欠の断面を紐を捕捉し、且つ係止できるほど薄くしたことを特徴とする。
以上の構成よりなる玉巻紐切断収納容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紐導出孔(15)を通過し、切欠(12)の紐通過部(13)から所定の長さに引き出した紐(2)を、紐捕捉部(14)へ向けて移動させるだけで係止され、そのままカートリッジ(20)に導き、切断できる。切断後、紐の端部は次に使用するまで係止されているので、該端部が不用意に引き出されたり、あるいは容器本体(3)へ引き戻されることはない。そして、紐の端部を摘み上げ、紐通過部へ移動してやれば、紐は係止状態から解放され、再び引き出すことができる。即ち、紐の引き出し、係止、切断そして再引き出しはすべて片手でできる。尚、カートリッジは、ホルダー(25)に装着したまま保管できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1を示す切欠平面図である。
【図3】本発明の実施例1の係止板周辺を示す部分平面図である。
【図4】本発明の実施例1のホルダー部分を示す部分正面図である。
【図5】本発明の実施例1の図2に於けるA−A断面図である。
【図6】本発明の実施例1のカートリッジを示す正面図である。
【図7】本発明の実施例1の使用手順を示す切欠斜視図である。
【図8】本発明の実施例1の使用状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例2の使用状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施例2を示す切欠平面図である。
【図11】本発明の実施例2の図10に於けるB−B断面図である。
【図12】本発明の実施例2の長胴カートリッジを示す正面図である。
【図13】本発明の実施例3の係止板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態について、実施例1、実施例2および実施例3に説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1は、本発明の請求項1記載に係るもので、(イ)〜(チ)の順に説明する。
(イ)図1は、本発明の実施例1を示す分解斜視図であるが、容器本体(3)は硬質合成樹脂製の円筒で、天板(4)と壁板(5)から成り、開口した底部から玉巻紐(1)を収容する。天板の中央部またはその近傍に、係止板(8)を設置するための円筒状の設置筒(9)を形成する。また、天板と壁板が当接する角部に、カッター(19)を内蔵したカートリッジ(20)を着脱自在に挟持できるホルダー(25)を形成する。そして、設置筒とホルダーの間には、連絡窓(17)を設け、紐(2)が天板の下を通行できるようにする。一方、蓋体(6)は軟質合成樹脂製で、フランジ部(7)を用いて容器本体に嵌合している。
(ロ)図2は、本発明の実施例1を示す切欠平面図であるが、設置筒(9)には漏斗状の切欠(12)を穿った係止板(8)を設置し、楔状の先端がホルダー(25)を指向するように配置する。そして、天板(4)に設けた連絡窓(17)は、係止板で係止された紐(2)を紐送り溝(16)を経由して、カートリッジ(20)へ渡す通路の機能を果たすとともに、紐切断後に端部を摘み上げる作業空間を形成している。また、容器本体(3)と一体成型のホルダー(25)は、前面板(30a)、側板、底板および背面板(31a)から成っているが、該背面板を内側へ湾曲させて可撓性を持たせ、湾曲面と前面板の間にカートリッジを挟んで保持する構成である。したがって、挿入するカートリッジの形状に合わせ、前面板にはガード収め(28)を切り欠くとともに、背面板にはガイド溝(29)を穿っている。尚、紐の端部は紐通過部にあり、引き出し可能状態にあることを示している。
(ハ)図3は、本発明の実施例1の係止板周辺を示す部分平面図であるが、係止板(8)は漏斗状の切欠(12)を備えた平板で、紐(2)を通過させるために充分な空間を有する紐通過部(13)と、該紐を係止させる狭隘な楔形の溝である紐捕捉部(14)から成っている。そして、紐通過部と紐捕捉部は滑らかな曲線で結ばれており、紐の引き出しと係止が自在にできる形状である。さらに、切欠の断面がポリプロピレン紐を捕捉し易くするために、係止板は薄くしかも剛性のある金属片または断面を薄く削った硬質合成樹脂が適切である。また、設置筒(9)底面の中心に、紐導出孔(15)を穿ち、玉巻紐(1)から紐を円滑に引き出す機能を持たせている。尚、紐は紐捕捉部にあり、係止状態にあることを示している。
(ニ)図4は、本発明の実施例1のホルダー部分を示す部分正面図であるが、カートリッジ(20)をホルダー(25)に装着の際、該カートリッジのガード(24)部分が前面板(30a)に干渉しないように、該前面板にはガード収め(28)を切り欠いてある。また、背面板(31a)には、カートリッジのカッター溝(23)の形状に相似したガイド溝(29)を穿っている。
(ホ)図5は、本発明の実施例1の図2に於けるA−A断面図であるが、設置筒(9)を天板(4)の下面に垂下した状態で形成するとともに、該設置筒の下端寄り内周面に座(10)を設け、該座上に係止板(8)を置き、固定環(11)で固定する。また、設置筒には、係止された紐(2)を送り出すための紐送り溝(16)をあけ、且つ底面の中心には、紐導出孔(15)を穿孔する。そして、天板と壁板(5)が当接する角部に、ホルダー(25)を形成し、カートリッジ(20)を装着した状態を示している。尚、玉巻紐(1)から導かれた紐は紐導出孔を通過し、係止板から引き出されている状態を示している。
(ヘ)図6は、本発明の実施例1のカートリッジを示す正面図であるが、カートリッジ(20)は、略矩形をした複数枚の合成樹脂の板材を貼り合せた貼合体(22)から成り、該貼合体の貼合面にカッター(19)を挟むための薄い空間を設け、該空間にカッターを封止している。したがって、カッターはカートリッジに内蔵され、取り出しはしない。カートリッジはV字形切込を有するカッター溝(23)を備え、該カッター溝のやや下がった位置にカッターを配置する。そして、カッター溝回りにはガード(24)を設置して、指先がカッターに容易に届かない形状にしている。尚、カートリッジの高さは、ホルダー(25)の高さに同等にする。
(ト)図7は、本発明の実施例1の使用手順を示す切欠斜視図であるが、先ず、容器本体(3)と蓋体(6)に分離する。次に、玉巻紐(1)の中心から紐(2)の端部を引き出し、紐導出孔(15)および切欠(12)を通過させ、係止板(8)の上面へ覗かせておく。最後に、玉巻紐を容器本体に入れ、蓋体を被せる順序である。
(チ)図8は、本発明の実施例1の使用状態を示す斜視図であるが、カートリッジ(20)をホルダー(25)に装着した後、係止板(8)上に端部を覗かせた紐(2)を所定の長さに引き出し、切欠(12)の紐捕捉部(14)に引き込むようにして係止させる。ここで、紐を紐送り溝(16)から連絡窓(17)へ誘導し、さらに、カートリッジのカッター溝(23)へ導きながらカッター(19)に当て引き下ろすと、紐は係止板とカッターの間で緊張しているので容易に切断される。切断時、紐がカッターに当たる角度はほぼ直角である。切断された紐はそのままの状態で係止されているので、紐の端部を見失うことはない。また、カートリッジは常時ホルダーに装着したままで、抜き取るのは交換時のみである。
【実施例2】
【0010】
以下、実施例2について、(リ)〜(オ)の順に説明する。実施例2は請求項1記載に係る実施例1の構造をベースにしたもので、本実施例に於いて、背を高くした長胴カートリッジを適用することによって、紐の切断位置を天板の下から天板の上へ移動し、紐の切れ味をさらに向上させるための実施例である。
(リ)図9は、本発明の実施例2の使用状態を示す斜視図であるが、長胴カートリッジ(21)は、上半分が容器本体(3)から突出した状態で切断ホルダー(26)に装着されている。したがって、紐(2)は係止板(8)からカッター(19)に向けてある勾配をもって導かれる。即ち、実施例1に比較して、紐がカッターに対しより鋭角に当たるので、切れ味の点で優れている。尚、長胴カートリッジは、保管中邪魔になるので、保管ホルダー(27)に格納する。
(ヌ)図10は、本発明の実施例2を示す切欠平面図であるが、保管ホルダー(27)は、天板(4)の下面に一体で形成されている。そして、壁板(5)に設けた着脱窓(18)をとうして、長胴カートリッジ(21)を保管ホルダーに装着した状態を示している。また、切断ホルダー(26)および保管ホルダーは、同形態を有し、前面板(30b)、側板、底板および背面板(31b)から成っているが、挿入する長胴カートリッジの貼合体(22)の下半分に合わせた形状にしている。
(ル)図11は、本発明の実施例2の図10に於けるB−B断面図であるが、設置筒(9)の上端部内周面に座(10)を設け、該座上に係止板(8)を置き、固定環(11)で固定する。そして、天板(4)と壁板(5)が当接する角部に、切断ホルダー(26)を形成し、長胴カートリッジ(21)を装着した状態を示している。また、天板の下面に、垂下して形成した保管ホルダー(27)を示している。
(オ)図12は、本発明の実施例2の長胴カートリッジを示す正面図であるが、長胴カートリッジ(21)は、実施例1のカートリッジ(20)に相似した形態を備えているが、異なる点は長胴カートリッジは背が高いことである。即ち、長胴カートリッジを切断ホルダー(26)に装着した状態で、ガード(24)から上のカッター回りが容器本体(3)上に露出する寸法に設定する。
【実施例3】
【0011】
以下、実施例3について、(ワ)に説明する。実施例3は請求項2記載に係る実施例1の構造をベースにしたもので、本実施例に於いて係止板に穿った切欠の形状に手を加えることで、紐の捕捉効果をさらに高めるための実施例である。
(ワ)図13は、本発明の実施例3の係止板を示す平面図であるが、係止板(8)に穿設した切欠(12)の紐捕捉部(14)に鋸刃状の刻み目(32a、32b)を入れる。
【符号の説明】
【0012】
1 玉巻紐
2 紐
3 容器本体
4 天板
5 壁板
6 蓋体
7 フランジ部
8 係止板
9 設置筒
10 座
11 固定環
12 切欠
13 紐通過部
14 紐捕捉部
15 紐導出孔
16 紐送り溝
17 連絡窓
18 着脱窓
19 カッター
20 カートリッジ
21 長胴カートリッジ
22 貼合体
23 カッター溝
24 ガード
25 ホルダー
26 切断ホルダー
27 保管ホルダー
28 ガード収め
29 ガイド溝
30a、30b 前面板
31a、31b 背面板
32a、32b 刻み目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉巻紐(1)を収容することができる底部を開口した円筒状の容器本体(3)と、該開口部を着脱可能な嵌合状態で覆うことができる蓋体(6)から成り、天板(4)の中央部またはその近傍に、玉巻紐から引き出した紐(2)の端部を通過させる紐導出孔(15)と該紐を係止させる係止板(8)を一体的に形成するとともに、天板と壁板(5)が当接する角部に、カッター(19)を内蔵したカートリッジ(20)を着脱自在に挟持できる形態を備えたホルダー(25)を形成したことを特徴とする玉巻紐切断収納容器。
【請求項2】
前記係止板(8)に穿設した切欠(12)は、紐通過部(13)と紐捕捉部(14)から成り、該紐捕捉部の形状を楔形の溝にするとともに、該切欠の断面を紐(2)を捕捉し、且つ係止できるほど薄くしたことを特徴とする請求項1記載の玉巻紐切断収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−27971(P2013−27971A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−290508(P2011−290508)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(503159715)