説明

玉網

【課題】釣り用の玉網において、装飾性に優れた外観を有し、且つ、魚を網に取り込んだ際に、魚へのストレスを抑えて、網部に衝突したり、暴れることにより魚が弱ることを抑制した玉網の提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る玉網1は、糸30を編みこんで成る網部3の内面側33bにJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部6を形成し、前記網部3の外面側33aにJIS規格に基づく明度基準3以上の装飾部7を形成した構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮎釣り等の魚釣りに使用する玉網に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣りで使用される玉網は、魚を取り込むための網部と、網部の開口部に沿って止着される枠部と、手で把持するために前記枠部から延びる柄部とを備えて成る。また、前記網部は、一般に、線材、例えば合成樹脂や木綿等の柔軟な糸を編み込むことにより、前記開口部と閉じられた底面とを有する有底円筒状に形成されている(例えば、特許文献1参照)。従来、このような玉網において、網部の装飾性を向上させる際には、例えば、網素材に有色の軟質の樹脂をコーティングすることによって、着色された軟質層を積層することで加飾性を得ること(例えば特許文献2)や、網部に使用される網糸を染色したものを使用して編み込みを行うことにより、網部の装飾性を得ることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−81258号公報
【特許文献2】特開2007−289069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鮎などの魚は、明るい色を嫌うという性質があり、鮎が網部内に取り込まれた際、網内面側が明るい色で装飾されていると、鮎は釣り上げられたことによる興奮状態に加え、更にストレスを受けることとなり、落ち着くことなく、網部に衝突したり、暴れることにより、弱ってしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、装飾性に優れた外観を有し、且つ、魚を網に取り込んだ際に、魚へのストレスを抑えて、魚が弱ることを抑制した玉網の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決する本発明の玉網は、糸を編み込んで成る網部を有する玉網であって、前記網部は、上側の開口部と下側の閉じられた底部とを有する有底筒状に形成されており、前記網部の内面側にJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部を形成し、前記網部の外面側に前記着色部より明度の高い装飾部を形成したことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、魚が収容される網部の内面側の明度を低く(暗く)形成したことにより、網部に取り込まれた魚を、釣り上げられたことによる興奮状態から早く落ち着かせることができ、網部に衝突したり、暴れることで魚が弱ることを抑制している。更に、網部の外面側の明度を内面側に比較し高くした装飾部を形成することで、優れた装飾外観を得ることができる。
【0008】
また、本発明の前記着色部は、有色塗料を網部内面に塗布した塗膜であることを特徴とする。このように網部内面側を塗装するという比較的簡単な作業により明度が低い着色部を形成することができる。
【0009】
また、本発明の前記着色部は、網部内面の底部側に設けられ、網部内面の開口部側には、前記着色部より明度の高い高明度領域を形成したことを特徴とする。このように構成することにより、明るい色を嫌うという性質の魚は、明度を低く(暗く)形成した底部側に集まることになり、網部に取り込まれた魚が、開口部より逃げることを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の前記高明度領域は、JIS規格に基づく明度基準7以上に形成したことを特徴とする。このように構成することにより、上記した網部に取り込まれた魚が、開口部より逃げることを防ぐ効果を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記網部の底部に水を溜めることが可能な袋体を備え、該袋体の内面側にJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部を形成したことを特徴とする。このように構成することにより、網の中に魚を入れたまま移動したり、網の中に魚を入れた状態で仕掛けの取り外しを行う際に、魚にストレスを与えることを抑えて作業することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装飾性に優れた外観を有し、且つ、魚を網に取り込んだ際に、魚へのストレスを抑えて、魚が弱ることを抑制した玉網を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る玉網の概略斜視図である。
【図2】図1玉網の一部欠斜視図である。
【図3】図1の網内面側の一部拡大図である。
【図4】網部の内面側の着色部と、外面側の装飾部を示す概略図である。
【図5】網部の内面側に形成された高明度領域と着色部を説明する概略図である。
【図6】網部の底部に袋体を形成した実施例を説明する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に係わる玉網に取り込んだ魚から釣人が釣針を外そうとしている状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明に係る玉網の実施形態について説明する。
図1から図4は、本発明の第1の実施形態に係る玉網1が示されている。図示のように、本実施形態に係る玉網1は、有底円筒状の形状を成す網部3と、この網部3の上側の開口部5に取付けられた略円形の枠部2と、枠部2に取付けられた或いは枠部2と一体の柄部4とを有する。なお、本実施形態の玉網1は例えば鮎釣用として形成してあり、枠部2は、木材、プラスチックあるいは金属等の好適な材料により例えば30〜40cm程度の枠径を持つ略円形状に形成してある。また、釣り人が手に持ち或いはベルト等に引掛けて携行するのに好適な柄部4は、木材、プラスチックあるいは金属等の好適な材料により、操作し易い長さ及び太さを持つ所要形状に形成してある。
【0015】
前記網部3は、図1から図4に示すように、所定の糸30、例えばナイロンモノフィラメント等の適宜の合成樹脂製の糸を編み込むことにより形成され、略筒状の側面部31と、側面部31の下端に連続し、底面を閉塞する底部32とを有する。この場合、底部32は、本実施形態では略円形状の輪郭(外形)を成して閉塞されている。
【0016】
上記構成において、網部3の内面側33bにJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部を形成されている。ここで、JIS規格では、明度基準が0(黒)〜10(白)の段階で規定されており、明度が高いとは、色が明るいことを表し、他の部分よりも相対的に反射率が高い領域とされる。逆に、明度が低いとは、色が暗いことを表し、他の部分よりも相対的に反射率が低い(光の吸収率が高い)領域とされる。
【0017】
より具体的には、図2から図4に示すように、網部3の内面側33bの糸30の表面に、JIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部6となるような黒色または濃色塗料をガン吹き等によって吹き付けることで形成する。これは、鮎などの魚の習性として明るい色を嫌い(明度が高い)、明度が低い色(明度が低い)を好むことから、このような明度の低い着色部を網部の内面側31bに形成すると、鮎が網部内に取り込まれた際、鮎は釣り上げられたことによる興奮状態に加えて、明るさによるストレス(刺激)を受けず、網部に衝突したり、暴れて弱ることが防止される。
【0018】
また、図2および図4に示すように、網部3の外面側33aの糸30の表面に、前記着色部6より明度の高い装飾部7となるような、色彩のある有色の塗料をガン吹き等によって吹き付けることで形成する。特に、使用する塗料に光輝性粒子(粒径が1μm〜4μmのアルミフレーク、合成雲母、ガラスフレークなど)を混ぜ合わせることにより、網部の外面側は優れた装飾的外観を得ることができる。
【0019】
図5は、玉網1の第2の実施例を示している。図示のように、網部3の内面側33bの底部32側に、第1の実施例と同様に、黒色または濃色塗料を底部32から開口部5に向けて所定の深さ塗布し、JIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部6を形成し、且つ、網部3内面の開口部5側に、前記着色部6に比べ明度の高い明色塗料を塗布し、高明度領域8を形成している。このように構成することにより、明るい色を嫌うという性質の魚は、図7に示すように、明度を低く(暗く)形成した底面側に集まることになり、釣人が魚に掛かった釣針を外そうとする際に、魚が開口部より逃げることを防ぐことができる。
【0020】
さらに好ましくは、前記高明度領域は、JIS規格に基づく明度基準7以上に形成し、着色部6と高明度領域8の明度差を大きくすることで、魚が開口部側に近づくことを抑制し、より効果を向上することができる。すなわち、鮎釣りでは、一般に、図7に示すように、川に入った状態の釣人100が、自分の腰のベルト101に玉網1の柄部4を差し込んで玉網1の網部3を水中に浸した状態で、取り込んだ鮎から掛け針を取り外す作業を行うが、その際に、網部内面の底面側を明度基準0〜2の着色部6を形成し、開口部側が明度の高い高明度領域に形成されていれば、明るい色を嫌う性質の鮎は、開口部側に近づくことを拒み、開口部より逃げることが防止される。
なお、本実施形態においても、網部3の外面側33aの糸30の表面に、前記着色部6より明度の高い装飾部7となるような、色彩のある有色の塗料を塗布することで優れた装飾外観を得ることができる。
【0021】
図6は、玉網1の第3の実施例を示している。図示のように、網部3の底部32に水を溜めることが可能な袋体9を備え、上記実施例同様に袋体9の内面に黒色または濃色塗料を塗布することで、該袋体の内面側9bにJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部を形成している。このように構成することにより、網の中に魚を入れたまま移動したり、網の中に魚を入れた状態で仕掛けの取り外しを行う際に、魚にストレスを与えることを抑えて作業することができる。なお、本実施形態においても、網部3の外面側33aの糸30の表面に、前記着色部6より明度の高い装飾部7となるような、色彩のある有色の塗料を塗布することで優れた装飾外観を得ることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々変更することが可能である。
上記した例では、着色部、装飾部、高明度領域は、塗料を塗布することで例示したが、塗装に限定することなく所望の明度が形成されればよく、染色糸を用いたり、染色糸の一部を塗装するなどした構成であっても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 玉網
3 網部
5 開口部
6 着色部
7 装飾部
8 高明度領域
9 袋体
30 糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を編み込んで成る網部を有する玉網であって、
前記網部は、上側の開口部と閉じられた底面とを有する有底筒状に形成され、前記網部の内面側にJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部を形成し、前記網部の外面側にJIS規格に基づく明度基準3以上の装飾部を形成したことを特徴とする玉網。
【請求項2】
前記着色部は、有色塗料を網部内面に塗布した塗膜であることを特徴とする請求項1に記載の玉網。
【請求項3】
前記着色部は、網部内面の底面側に設けられ、網部内面の開口部側には、前記着色部より明度の高い高明度領域を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の玉網。
【請求項4】
前記高明度領域は、JIS規格に基づく明度基準7以上に形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の玉網。
【請求項5】
前記網部の底部に水を溜めることが可能な袋体を備え、該袋体の内面側にJIS規格に基づく明度基準0〜2の着色部を形成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の玉網。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−10647(P2012−10647A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150332(P2010−150332)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】