説明

現像装置

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明は、電子写真方式等を利用して像担持体上に形成した静電潜像を非磁性一成分現像剤を使用して現像する現像装置に関するものである。
従来の技術 非磁性一成分現像剤を現像剤担持体上に薄層に塗布し、現像剤担持体に現像バイアスを印加して、電子写真方式等を利用して像担持体上に形成された静電潜像を非磁性一成分現像剤で現像して、可視化する現像装置が種々知られている。
なお、本明細書で非磁性一成分現像剤とは、いわゆる現像剤の中でも特に磁性粒子を含まないトナーのみからなる現像剤を意味する。但し、トナー粒子のみを含有するものに限らず、トナーの他に現像剤の流動性を向上させたり、トナーの帯電量を制御したり、像担持体表面のクリーニングをしたりする1種または複数種の補助剤が外添されているものも含まれる。
さて、二成分現像剤を使用する現像装置に比べて一成分現像剤を使用する現像装置は、小型化が容易であり、またトナー粒子とキャリア粒子の混合比を維持するための手段が不要であるので、構成が簡単であるという利点を有している。上述したように、この一成分現像剤の中でも特に磁性粒子を現像剤中に含まないトナーのみからなる現像剤を非磁性一成分現像剤と呼ぶ。この非磁性一成分現剤を用いた現像法は、特に鮮明なカラー複写が得られ、また画像の定着性も向上することから、様々な提案がなされている。
第4図に、非磁性一成分現像剤を用いた従来の現像装置を示す。第4図に示されるように、非磁性一成分現像剤4が現像剤容器3内に収容されており、この現像剤4が図中A方向に回転する現像剤担持体6と弾性ブレード20とによって現像剤担持体としての現像スリーブ6上に均一に薄層に塗布される。像担持体1と現像スリーブ6は、現像領域Cで0.02〜0.6mmの間隔になっており、この現像領域Cにおいて像担持体1上に形成された静電潜像が現像剤4で可視化される。
このとき現像スリーブ6には、パルスバイアス、交流バイアス等が現像バイアス電源9によって印加される。なお、非磁性一成分現像剤4に電荷を与える方法として、弾性ブレード20による方法以外に弾性ローラを用いる方法などが種々提案されている。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、上記従来の現像装置では、磁性粒子を現像剤4中に含有していないために、一成分磁性現像剤に比べて現像剤4の絶縁性が高く、特に頻繁な現像の繰返しに伴なう現像剤4の比電荷量の増大(チャージアップ)や現像スリーブ6の汚染、現像スリーブ6上のトナー融着が頻繁となってくる。また磁性現像剤を用いた現像装置では、現像スリーブの内部に軸方向に長い現像マグネットを有しており、このために現像剤は、現像スリーブ上を回転、接触し、摺擦することから、現像スリーブから現像に十分な電荷を均一に得ることができるが、非磁性一成分現像剤4では、この回転、接触、摺擦による電荷の授受の機会が少ないために、十分な電荷を均一に得ることが難しい。このために現像濃度の不均一が問題となっていた。
一方、現像剤は電荷を現像スリーブから得る割合が多いのは、磁性、非磁性を問わず言えるが、現像スリーブ6表面の現像剤の電荷量は、非磁性一成分現像剤4を用いた場合、特に高いことがあげられる。このためにスリーブゴーストという現象が顕著に発生していた。
このスリーブゴーストについて、第5図を用いて説明する。
即ち、非印字部(白地)が続いていたために、第5図に示すように、プリントが行なわれても薄い現像しか行なわれない(a)部分とプリントが継続されたために濃い現像が行なわれる(b)部分とで、濃度ムラがでる現象である。
このゴースト形成のメカニズムは、本発明者等の実験および考察によると、スリーブ上に形成される微粉(粒径5〜6ミクロン以下)の層に深く関わっている。つまり、現像スリーブ上のトナー最下層の粒度分布にトナー消費部分とトナー未消費部分との間で明らかな差が生じ、非消費部分でのトナー最下層に微粉層が形成されてるのである。微粉は体積あたりの表面積が大きいために粒径の大きなものに比べると質量あたりに有する摩擦帯電電荷量が大きくなり、鏡映力によりスリーブに対し静電的に強く拘束される。このため粉層が形成された部分の上にあるトナーは、現像スリーブと十分な摩擦帯電ができないために現像能力が低下し、画像上にゴーストとして現われてしまうのである。
また非磁性一成分現像剤は、チャージアップし易いために、特に非接触のジャンピング現像あるいは他の非接触現像ないしは像担持体と現像剤との距離が微小な現像方法においては、現像効率の現象を引き起こし、繰返し現像による濃度低下も引き起こす結果となっていた。
特にプリントスピードの速い画像形成装置で使用する現像装置の場合、現像剤中の荷電制御剤あるいは樹脂が現像スリーブを汚染する割合は、磁性現像剤に比べて非磁性一成分現像剤の方が高く、繰返し現像による濃度低下をより一層引き起こす結果となっていた。
このために現像スリーブ表面に弾性ローラと圧接、摺擦させることにより、現像に寄与する現像剤の比電荷量を均一にすることが提案されているが、しかしながら、これらの方法は結果的に現像装置の大型化を引き起こし、小型の画像形成装置にはコスト、スペースの点から採用することが難しかった。
従って、本発明の目的は、非磁性一成分現像剤に均一に電荷を付与することができ、しかもスリーブゴーストや繰返し現像での画像濃度の低下、トナー融着を改善することができる、小型化が可能な現像装置を提供することである。
課題を解決するための手段 上記目的は本発明に係る現像装置にて達成される。要約すれば本発明は、非磁性一成分現像剤を担持して搬送するための現像剤担持体を有する現像装置において、前記現像剤担持体の表面に、カーボンブラックとグラファイトを少なくとも含む導電性樹脂からなる、体積抵抗率が10-3〜102Ωcmの外皮層を有し、前記外皮層の表層の凹凸面を形成するカーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子とグラファイトおよび樹脂からなる2次粒子との重量割合が1/9〜5/5であることを特徴とする現像装置である。
実施例 以下、本発明の実施例について詳述する。
実施例1 第1図は、本発明の現像装置の一実施例を示す構成図である。
現像装置は、非磁性一成分現像剤4を収容した現像剤容器3内に、像剤担持体としての現像スリーブ13を有してなっている。
矢印B方向に回転する像担持体としての電子写真感光ドラム1上に公知のプロセスにより静電潜像が形成され、現像スリーブ13は、現像剤4を担持して矢印A方向に回転することにより、感光ドラム1と現像スリーブ13とが対向する現像領域Cに搬送して、そこで感光ドラム1上の静電潜像を現像剤4で現像させる。
本実施例では、現像領域Cに搬送される現像剤4の層厚を規制するために、規制部材20としてウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム弾性を有する材料の弾性部材をスリーブ13に圧接させているが、リン青銅、ステンレス鋼等の金属弾性を有する材料等の弾性部材を用いてもよい。
現像スリーブ13に形成される現像剤4の薄層の厚みは、現像領域Cにおいて、スリーブ13と感光ドラム1との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
本発明は、このような現像剤薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち非接触現像型の現像装置に特に有効である。しかし、現像領域Cにおいて現像剤層の厚みがスリーブ13と感光ドラム1との最小間隙以上である現像装置、即ち接触現像型の現像装置にも本発明は適用できる。説明の繁雑を避けるために、以下、非接触型の現像装置を例に採って説明する。
上記現像スリーブ13に担持された現像剤層から感光ドラム1へ向けて現像剤4を飛翔させるために、スリーブ13には電源9により現像バイアス電圧が印加される。このバイアス電圧として直流電圧を使用するときは、潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と、背景部の電位との間の値の電圧がスリーブ13に印加されることが好ましい。一方、現像画像の濃度を高め或いは階調性を向上するために、スリーブ13に交番バイアス電圧を印加して現像領域Cに振動電界を形成してもよい。
この場合も、上記画像部の電位と背景部の電位の間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を、スリーブ13に印加することが好ましい(特公昭58-32375号参照)。また高電位部と低電位部とを有する潜像の高電位部に現像剤、即ち、トナーを付着させて可視化するいわゆる正規現像では、トナーは潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用し、潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化するいわゆる反転現像では、トナーは潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。なお、高電位、低電位というのは絶対値による表現である。いずれにせよ、トナーはスリーブ13との摩擦により潜像を現像するための極性に帯電する。外添したシリカ微粒子もスリーブ13との摩擦により帯電する。
本発明に従えば、前記の現像スリーブ13は、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属製の円筒基体11の表面に外皮層12を設けてなっている。現像剤4はこの外皮層12に担持して、摩擦帯電される。外皮層12は、樹脂中にカーボンブラックとグラファイトとを少なくとも含有する導電性樹脂層からなっており、カーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子とグラファイトおよび樹脂からなる2次粒子とから、外被層12の表面に凹凸面が形成されている。外被層12は、好ましくは体積抵抗率10-3〜102Ωcmとされる。
次に、外皮層12の具体例について説明する。
本発明に従った現像スリーブ13の外被層12の処方を、第1表に本発明例1〜3として示す。比較のために本発明の範囲外の現像スリーブ外被層の処方を、第1表に比較例1〜3として併せて示す。なお、比較例3は、現像スリーブに外皮層を設けず、サンドブラストを行なったままのものである。


樹脂は熱硬化性のフェノール樹脂を用いた。カーボンブラックはコロンビアカーボン社製のCONDUXTEX 9750B、グラファイトは東海カーボン社製のグラファイト(平均粒径7.0μm)を用いた。これらを、メチルアルコールとメチルセロソルブを1:1の割合で用いて、固形分が40%になるように調合し、ガラスビーズと混合し、約24時間ペイントシェークしたものを、ナイロン製のメッシュ(約300μm)にてろ過し、メチルアルコールで約21%に希釈し、第1表に示す処方の外皮層形成用の樹脂塗料とした。
次いで樹脂塗料をBINKS社製エアースプレーガン601番を用いて、16mmφのスリーブ基体に周囲温度30〜35℃で均一に10μmの厚に塗工し、150℃で30分乾燥を行なって、スリーブ基体上に外皮層を形成し、本発明例1、2、3および比較例1、2の現像スリーブを得た。
本発明例1、2、3の現像スリーブの外被層の体積抵抗率を測定器(三菱油化製ロレスチAPインテリジェント)で測定したところ、それぞれ1.0×10-1Ωcmであった。なお外被層の膜厚を種々変化させて体積抵抗率を測定した結果、膜厚が0.5〜30μmのとき体積抵抗率が102〜10-3Ωcmのオーダーで、その膜厚、体積抵抗率の範囲を外れるとチャージアップの傾向が認められ、適当でなかった。
チャージアップとは次のような現象をいう。つまり、一成分現像方法において、トナーは現像スリーブと接触することにより、トナーの帯電を得る。チャージアップ現象とは、スリーブ上の近傍のトナーの比電荷量の絶対値が高くなることである。ここで、トナーの比電荷量とは、単位重量当たりの電荷量であり、通常、マイクロクーロン(μc)/gの単位で示される。以後、このトナーの比電荷量を単に「トリボ」という。
一方、スリーブより離れた位置にあるトナーは、スリーブとの接触回数がスリーブ近傍のトナーに比べて少ないために、トナートリボの絶対値が低くなる。このことは、スリーブ近傍と離れた位置のトナーのトリボ及び粒径を、スリーブと非接触に配置させた吸引法によりファラデーケージに吸引させ、その時のトリボと粒径を計測することで、理解できる。又、粒径としてはスリーブ近傍のトナーは小さく、スリーブより離れたところのトナーは大きい傾向にあることも分かっている。
即ち、スリーブ近傍のトナー状態は、比較的小さなトナーでトリボの大きなトナーが集まっており、スリーブより離れた位置のトナーは、粒径が大きくトリボの比較的低いトナーとなっている。
トナー粒径が小さくなると、比表面積が大きくなり、トナーの比電荷量は大きくなる。即ち、スリーブ近傍のトナーのトナートリボはより大きくなる。これがチャージアップ現象の一つである。
又、トナーには、例えば粒径2ミクロン以下の微粉、即ち、トナー外添剤の遊離したもの、或は、どうしても除去し切れないトナー樹脂の微粉があり、この微粉は更に、チャージアップ現象を起こす。
これらのチャージアップしたトナーはスリーブに鏡映力により強固に電気的に付着するので、スリーブより離れたトナーがスリーブに接触することを妨げることになる。従って、スリーブより離れたトナーのトリボは低い値となり、現像規制部材、例えば、磁性部材或は弾性ブレードなどにより堰き止められる傾向となり、トナーが現像領域に運ばれず、結果としてスリーブ上のトナーコート量は減少する。この現象が、マクロ的にみたチャージアップ現象である。
画像上は、コート量が少なく、トリボの余り高くないものがスリーブ上にコートされるため、現像性能が落ち、濃度が低くなる。
本発明例1、2、3の現像スリーブの外皮層表面を走査型電子顕微鏡で調べたところ、それぞれ第2図(a)、(b)、(c)に示すように2次粒子によって外皮層表面に凹凸面が形成されているのが観察される。即ち、出来上がった現像スリーブ表面を電子顕微鏡で観察すると、第2図に示すように、カーボンブラックおよび樹脂からなるもの25と、グラファイト及び樹脂からなるもの26が混ざっているように観察できる。実際には、グラファイト粒子は偏平状を呈しており、廻りに若干の樹脂を伴っていたり、僅かにカーボン粒子を含んでいることも考えられる。又、カーボン粒子はかなり小さいため(数100オングストロームの粒径)、樹脂中に分散されている。このように、2次粒子は、カーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子25と、グラファイトおよび樹脂からなる2次粒子26とに分類可能であった。これらの2次粒子25と26の重量割合は1/9〜5/5であった。
ここで、2次粒子25と26の重量割合は、現像スリーブ表面には導電性樹脂が均一にコーティングされているために、均一であると判断され、原材料の重量比率とされる。
なお、本実施例では、周囲温度を30〜35℃にコントロールして樹脂塗料の塗工を行なっために、上記のように外皮層に2次粒子の分類が可能になったが、周囲温度を下げると、例えば18℃に下げると、その他の塗工条件が同一であっても、塗工した樹脂塗料の塗膜が乾燥する前に比重の軽いカーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子が移動、凝集して、各々のピグメント、即ち、カーボンブラック及びグラファイトによる2次粒子の塊が分離しずらくなり、2次粒子を分類できなくなる。
次に、第1図の現像装置の現像スリーブ13に本発明例1〜3および比較例1〜3の現像スリーブを適用して、非磁性一成分現像剤4として負極性非磁性一成分現像剤を用いて現像を行ない、画像形成させた結果を、第2表に示す。なお、画像形成は、通常の反転現像系のページプリンタを用いて行なった。


現像バイアスは、AC=1600Vpp(周波数=1800Hz)、DC=−500Vとし、像担持体1と現像スリーブ13との間隔(S-D間隔)=300μmとした。
第2表に示されるように、比較例1〜2は、アランダム#400によるサンドブラストを行なったままの比較例3と比べて、画像の初期濃度、スリーブゴースト等が格段に良くなっているが、本発明例1〜3は、耐久濃度変化、スリーブゴースト、トナー融着等の総合性能で、比較例1〜2を上回っている。
従来から、本発明者等は、導電性微粒子含有樹脂層を表層に有する現像スリーブを用いた現像装置を提案しているが、特に非磁性一成分現像剤を用いた現像装置において初期濃度、繰返し現像性を共に満足させるためには、第1表に示す条件で外皮層を現像スリーブ表層に設けることが適切であった。
本発明例で、ピグメントであるカーボンブラック、グラファイトと樹脂の比P(カーボンブラック+グラファイト=ピグメントの重量)/B(樹脂の重量)を1/4〜4/1まで変化させたところ、本実施例の塗工環境においてはP/B比1/2〜2/1までが適切な範囲であった。
また本発明例3の現像スリーブを第1図の現像装置に組み込んで、粉体帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン社製イースパートアナライザ)で現像スリーブ上の現像剤の比電荷量分布を測定した。その結果を第3図に示す。第3図にて横軸は比電荷量であり、縦軸は頻度を示す。頻度とは、トナーの一つ一つの比電荷量の値に対応した個数を表す。本発明例3では、比較例3の現像スリーブにおける同様な現像剤の比電荷量分布のプロフィルAに比べ、プロフィルBのように現像に使用するトナー極性(本発明例3では負極性)とは反対の極性のトナー、即ち、正極性の反転トナー量が減少し、しかも分布がシャープで比電荷量分布のピーク値も増加していた。本発明例1、2でも、比電荷量分布を測定することにより、同様な傾向を示すことが確かめられた。
以上の現像スリーブ上の現像剤の比電荷量分布の測定結果から、本発明の現像装置は、次のことが大きな特徴である。
(1)現像剤の比電荷量分布がシャープとなる。即ちトナーに均一に電荷を付与することができる。反転トナー量も少ないためにカブリも減少する。
(2)現像剤の比電荷量が増加する。
本発明の現像装置によれば、スリーブゴーストの低減効果も著しいことから、上記(1)、(2)の効果は、現像剤の現像スリーブ近傍での循環、或いは現像剤の現像スリーブとの接触回数が増加するためであると、本発明者等は推測している。
従って、従来の非磁性一成分現像剤を使用する現像装置で用いられているような、現像剤に電荷を付与し、また不必要な現像剤を取り除くための弾性ローラの役割りを、本発明の現像装置では現像スリーブが兼ね備えたようになっている。
また本実施例で示した処方条件の範囲では、非磁性一成分現像剤は、通常、スリーブゴーストが顕著であり、繰返し現像に伴なスリーブ汚染やトナー融着も発生しがちであるが、本発明によれば、実用上問題のないレベルまで改善することが可能になった。
即ち、第2図(a)、(b)、(c)に示すように、現像スリーブの外皮層表面におけるカーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子25と、グラファイトおよび樹脂からなる2次粒子26との比率をコントロールすることで、非磁性一成分現像剤への適用を可能とし、実用上問題のないレベル内にすることができた。これは、カーボンブラックのリークサイトとしての効果、即ち、カーボンブラックは導電性であるため電荷を流し易く又酸化しずらい物質であり、スリーブ近傍のチャージアップしたトナーのトリボを下げるために、電荷を下げるための微小部分(リークサイト)としての効果と、グラファイトの導電性、潤滑性の効果の2つの効果のバランスによるものである。
現像スリーブ表面の外皮層は、本実施例で示した形成方法以外に、カーボンブラックと樹脂を分散したものと、グラファイトと樹脂を分散したものとを各々独立に調合して、2本のスプレーガンを用いて同時にスプレーすることによっても、形成することができる。
この場合は、各々の分散が容易に調整でき、しかも出き上がる塗膜の状態をスプレー条件(例えば各々のスプレー時間)で決定できるので、カーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子と、グラファイトおよび樹脂からなる2次粒子の、外皮層表面での比率を制御し易いという利点を有している。但し、この場合にも、スプレー時の周囲温度が重要であることは同様である。
本実施例では、外皮層形成用の樹脂塗料の溶媒としてメチルアルコールとメチルセロソルブを用いたが、ブタノール、イソプロピルアルコールを用いても、外皮層の表面に同様な2次粒子の比率を得ることができた。
実施例2 本実施例では、本発明例の現像剤担持体を現像装置に用いた場合、現像剤として平均粒径が4〜9μm以下の非磁性一成分現像剤に対しても、本発明の効果があることを示す。
説明の繁雑を避けるために、種々検討した中から一例として、平均粒径が約6μmの非磁性一成分現像剤を用いた場合について述べる。
現像剤の粒径が小さくなると、現像剤個々が持つ全体の比電荷量は増加し、このため従来の現像装置であると、スリーブゴーストやチャージアップが顕著になる。また同時に現像スリーブ13あるいは規制部材20との間の接触回数が減少し、均一な比電荷量を得にくくなる。特に非磁性一成分現像剤においては、その傾向が著しい。
本発明の現像装置によれば、現像剤の粒径が小さくてもスリーブゴースト等に対して優れた効果を発揮する。
即ち、実施例1における本発明例1〜3および比較例1〜3の現像スリーブを第1図に示した現像装置に使用し、平均粒径が6μmの非磁性一成分現像剤を用いて現像し、画像形成を行なったところ、第3表に示す結果が得られた。


なお、実施例1のときと同様に、現像バイアスは、AC=1600Vpp(周波数=1800Hz)、DC=−500Vとし、像担持体1と現像スリーブ13との間隔(S-D間隔)=300μmとした。また画像形成は、通常の反転現像系のページプリンタを用いて行なった。
第2表から明らかなように、本発明例1〜3の現像スリーブを用いた場合、平均粒径が約6μmと小径の非磁性一成分現像剤に対しても効果を発揮し、スリーブゴースト、画像の初期濃度、繰返し現像での濃度変化、トナー融着の全ての面で優れた効果を示し、比較例1〜3の現像スリーブを用いた場合を上回った。
実施例3 本実施例では、本発明の現像剤担持体を現像装置に用いた場合、現像バイアスがDCのみでも現像濃度が上昇することを示す。
本発明の現像剤担持体として実施例1における本発明例3の現像スリーブを使用した。現像装置は、第1図に示す現像装置と基本的に同じであるが、現像スリーブ13と像担持体1との間の間隔(S-D間隔)を100〜300μmの範囲で可変としたものを使用した。S-D間隔の変更は、第1図に示さない100μmのスペーサを介挿することで達成した。なお、比較のために実施例1における比較例3の現像スリーブも、同様にして使用した。
現像剤は負極性の非磁性一成分現像剤(比電荷量=−25μc/g)を用い、像担持体1は負極性のものを用い、DC=−500Vで反転現像系で現像した。形成した画像は線画で、その濃度をマイクロデンシトメータで測定した。濃度の測定結果を第4表に示す。


第4表に示すように、本発明例3の現像スリーブを使用した場合は、各S-D間隔で画像濃度が十分に得られ、比較例3の現像スリーブを使用した場合よりも大きく上回っている。これから本発明によれば、DCの現像バイアスを印加するのみで現像濃度を上昇することができ、DCの現像バイアスのみでも現像が可能であることが判る。
以上の実施例では、いずれも、現像スリーブ13の外被層12の樹脂としてフェノール樹脂を用いた場合を説明したが、他に塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、ポリエステル、ポリスチレン、PMMA、酢酸セルロース、ブチラール、メラミン、エポキシ等も同様に使用可能である。
外被層12の形成法は、スプレーコート法による場合を説明したが、グラファイトと樹脂、カーボンブラックと樹脂からなる2次粒子が外被層12の乾燥時に明確に判断できるような揮発性の高い希釈剤、例えばイソプロピルアルコールのような希釈剤を用いれば、本発明で必要とする表面状態の外被層12を得ることができるので、その場合はデイップ法やローラーコート法等も使用することができる。
またグラファイトは平均粒径7μmのものを使用した場合を示したが、確認したところによると、人工、天然を問わずグラファイトは平均粒径10μmのものまで同様な傾向を示し、使用可能であった。またカーボンブラックは導電性カーボンのみならず、通常のカーボンでも同様な傾向は示すものの、効果としては導電性カーボンが好ましかった。導電性カーボンとして確認したものは、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX975、CONDUCTEX900、CONDUCTEXSC、ライオン社製ケチェンブラックECである。
現像装置は第1図に示すものを一例としてして示したが、本発明は、その弾性ブレード20が別の形式の現像装置にも適用できることは言うまでもない。その弾性ブレードは、金属、非金属を問われず、また第1図と逆方向に現像スリーブ13に当接されるものであっても良い。
発明の効果 以上説明したように、本発明の現像装置では、非磁性一成分現像剤を担持して搬送する現像剤担持体の表面に、カーボンブラックとグラファイトを少なくとも含む導電性樹脂からなる、体積抵抗率が10-3〜102Ωcmの外皮層を設け、その外皮層の表層に凹凸面を形成するカーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子とグラファイトおよび樹脂からなる2次粒子との重量割合を1/9〜5/5としたので、非磁性一成分現像剤の均一帯電を小型の現像装置でも達成することができ、且つスリーブゴーストや繰返し現像での濃度変化、トナー融着を改善することができる。またDCの現像バイアスを印加するのみでも、非磁性一成分現像剤により十分な濃度で現像することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の現像装置の一実施例を示す構成図である。
第2図(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明例1、2、3の現像スリーブの外皮層の表面状態を示す説明図である。
第3図は、本発明例3の現像スリーブを用いたときのスリーブ上の非磁性一成分現像剤の比電荷量分布示すグラフである。
第4図は、従来の現像装置を示す構成図である。
第5図は、第4図の現像装置で発生していたスリーブゴーストを示す説明図である。
1:像担持体
3:現像容器
4:非磁性一成分現像剤
11:スリーブ基体
12:外皮層
13:現像スリーブ
25、26:2次粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】非磁性一成分現像剤を担持して搬送するための現像剤担持体を有する現像装置において、前記現像剤担持体の表面に、カーボンブラックとグラファイトを少なくとも含む導電性樹脂からなる、体積抵抗率が10-3〜102Ωcmの外皮層を有し、前記外皮層の表層の凹凸面を形成するカーボンブラックおよび樹脂からなる2次粒子とグラファイトおよび樹脂からなる2次粒子との重量割合が1/9〜5/5であることを特徴とする現像装置。

【第1図】
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【第2図(a)】
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【第2図(b)】
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【第2図(c)】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【特許番号】第2627560号
【登録日】平成9年(1997)4月18日
【発行日】平成9年(1997)7月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−198862
【出願日】平成1年(1989)7月31日
【公開番号】特開平3−62058
【公開日】平成3年(1991)3月18日
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社