説明

現金収納装置

【課題】現金収納装置1が横に倒され破壊行為が行われた場合であっても、現金収納装置1内の紙幣12の隙間にインク24を効率よく付着させる。
【解決手段】インク噴射ノズル8を備え、積載された現金12にインク24を付着させて盗難を抑制する現金収納装置1において、前記インク噴射ノズル8は、上部に、前記現金をさばくさばき板30を有し当該さばき板30の下側に噴射孔8aを備え、下部に、前記インク24を前記噴射孔8aへと運ぶ伸縮パイプ9を備え、スライドシャフト31にガイドされ前記インク24を押し出す圧力により上方向にスライドするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金を取扱う現金自動預払機や現金自動支払機等の自動取引装置において、現金にインクを付着させて盗難を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンビニエンスストアや金融機関には現金自動預払機や現金自動支払機等の自動取引装置が配設されており、この自動取引装置には顧客が入金した紙幣を受け取り、カウントして収納して保管したり、保管している現金の中から顧客に払い出すための紙幣カセットや紙幣スタッカ等の現金収納装置が内蔵されている。
【0003】
近年、この現金を狙って、ブルドーザ、パワーショベル等の重機を使用して自動取引装置の現金収納装置を破壊して現金を盗み出したり、自動取引装置をそのまま持ち去る盗難が増加している。
【0004】
そこで、この現金収納装置に収納された紙幣の盗難防止策として、自動取引装置への異常行為を検出して現金収納装置内の紙幣の隙間にインクを噴射して汚損させる防犯対策が採られている。
【0005】
図6は、上記防犯対策を備えた従来の自動取引装置の現金収納装置11の構成図である。同図に示したように、従来の現金収納装置11は、押圧板13に接続され、押圧板13を上下方向(矢印F、G方向)に案内する左右のベルト14と、当該左右のベルト14に接続されてその動作を同期させるシャフト15と、当該シャフト15に固定されたギヤ16と、当該ギヤ16の回転を停止させる押圧板保持板21と、インク貯蔵部17とインク噴射ノズル18とを連結するインクパイプ19を有している。
【0006】
以上の構成により、従来の現金収納装置11は、装置内に配備された図示しないセンサ等により異常操作を検出すると図示しない制御部によりインク貯蔵部17のガス発生部22に起動信号を送信する。
【0007】
すると、ガス発生部22は、制御部からの信号を受けて化学反応によってガスを発生させ、発生したガスの圧力によってインク押し出し板23を押してインク24を押し出し、矢印Bのようにインクパイプ19を経由してインク噴射ノズル18の噴射孔より矢印Cのように紙幣12に噴射させる。
【0008】
このとき、押し出されたインク24の圧力を用いて押圧板保持板21のロックを解除し、押圧板13および紙幣12が重力によって矢印Gのように下がるときに発生する紙幣12の隙間にインク24を噴射し、少量のインク24で紙幣12を汚損させて盗難を抑制する技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−338218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の現金収納装置11では、押圧板13および紙幣12の自重を利用して紙幣12間に隙間を生じさせるため、現金収納装置11が横倒しにされた状態で破壊行為がされた場合は、押圧板13上の紙幣12に隙間が発生せず、紙幣12端部のみにインクが噴射され、十分な盗難防止の効果が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述の課題を解決するために次の構成を採用する。すなわち、インク噴射ノズルを備え、押圧板上に積載された現金にインクを付着させて盗難を抑制する現金収納装置において、前記インク噴射ノズルは、上部に、前記現金をさばくさばき板を有し当該さばき板の下側に噴射孔を備え、下部に、前記インクを前記噴射孔へと運ぶ伸縮パイプを備え、スライドシャフトにガイドされ前記インクを押し出す圧力により前記押圧板の下側から上方向にスライドするようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の現金処理装置によれば、以上のように構成したので、現金収納装置が横に倒され破壊行為が行われた場合であっても、現金収納装置内の紙幣の隙間にインクを効率よく付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の現金収納装置の構成および動作説明図である。
【図2】実施例1の現金収納装置の要部構成および動作説明図である。
【図3】実施例1の現金収納装置の動作説明図である。
【図4】実施例2の現金収納装置の要部構成および動作説明図である。
【図5】伸縮パイプの変形例である。
【図6】従来の現金収納装置の構成および動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0015】
(構成)
図1は、実施例1の現金収納装置1の構成図であり、図2は本発明の要部となるインク噴射ノズル8の構成図である。同図に示したように、実施例1の現金収納装置1は、従来の現金収納装置11のインク噴射ノズル18に替えて、押圧板13の下側に、上部にさばき板30を配置したインク噴射ノズル8を設けている。
【0016】
インク噴射ノズル8は、さらに、さばき板30の下側に噴射孔8aを備え、スライドシャフト31にガイドされて上下方向(矢印F、G方向)にスライドできるようになっており、インク噴射ノズル8の下部には、インクパイプ19と連結する蛇腹状の伸縮パイプ9が設けられており、インク噴射ノズル8が現金収納装置1の上端まで移動して伸びても十分な長さが確保できるようになっている。
【0017】
その他の構成は従来の現金収納装置11の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0018】
(動作)
以上の構成により実施例1の現金収納装置1は、以下のように動作する。この動作を前出図1、図2および図3の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0019】
まず、現金収納装置1内の図示しないセンサにより異常操作を検出すると、図示しない制御部によりインク貯蔵部17のガス発生部22に対して起動信号を送信する。
【0020】
すると、ガス発生部22は、制御部からの起動信号を受けて、化学反応によってガスを発生させ、発生したガスの圧力によってインク押し出し板23を押し、インク24をインク貯蔵部17より押し出し、インクパイプ19、伸縮パイプ9を経由して矢印Bのようにインク噴射ノズル8に到達させる。
【0021】
すると、インク24の圧力によってインク噴射ノズル8はスライドシャフト21にガイドされて上方向(矢印F方向)に移動する。
【0022】
このインク噴射ノズル8の上方向(矢印F方向)への移動により、図3に示したように、押圧板13上に積載された紙幣12をさばき板30の先端で矢印Aのようにさばきながら、紙幣12の間に発生した隙にインク24を噴射孔8aより噴射し、紙幣12にインク24を付着させる。
【0023】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1の現金収納装置によれば、インク噴射ノズルを備え、押圧板上に積載された現金にインクを付着させて盗難を抑制する現金収納装置において、前記インク噴射ノズルは、上部に、前記現金をさばくさばき板を有し当該さばき板の下側に噴射孔を備え、下部に、前記インクを前記噴射孔へと運ぶ伸縮パイプを備え、スライドシャフトにガイドされ前記インクを押し出す圧力により前記押圧板の下側から上方向にスライドするようにしたので、現金収納装置が横に倒され破壊行為が行われた場合であっても、現金収納装置内の紙幣の隙間にインクを効率よく付着させることができる。
【実施例2】
【0024】
(構成)
図4は、実施例2の現金収納装置1の要部としてのインク噴射ノズル8の構成を示した構成図である。同図に示したように、実施例2の現金収納装置1では、インク噴射ノズル8のさばき板30に支点30aを設け、さばき板30の先端の矢印D方向への移動により矢印D’方向にスライドしインク噴射ノズル8の噴射孔8aと重なる噴射孔8bを配したスライド板33を設け、矢印D’方向へのスライドに対向する付勢手段としてのバネ32を設けている。その他の構成は実施例1の現金収納装置1の構成と同様であるので、同様の構成については簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0025】
(動作)
以上の構成により実施例2の現金収納装置1は、以下のように動作する。なお、インクの圧力によってインク噴射ノズル8がスライドシャフト21にガイドされて上方向(矢印F方向)に移動する動作は実施例1の現金収納装置1の動作と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0026】
まず、通常時は、インク噴射ノズル8はインク24による圧力を受けることなく、図4(a)のように、スライド板33は、ばね32によって上方向(矢印F方向)に持ち上げられており、インク噴射ノズル8の噴射孔8aとスライド板33の噴射孔板8bは、ずれた状態となっており、インク24は噴射されることはない。
【0027】
そして、現金収納装置11内の図示しないセンサにより異常操作が検出されると、ガス発生部22の化学反応によってガスを発生させ、発生したガスの圧力によってインク押し出し板23を押し、インク24をインク貯蔵部17より押し出し、インクパイプ19、伸縮パイプ9を経由して矢印Bのようにインク噴射ノズル8に到達させる。
【0028】
すると、到達したインク24の圧力によりインク噴射ノズル8が上方向(矢印F方向)に移動し、前述の図3と同様に、押圧板13上の紙幣12をさばき板30により押上げる。このとき、実施例2のインク噴射ノズル8では、さばき板30の後端には支点30aを設けているので、先端が支点30aを支点として図4(b)の矢印Dのように回動して押し下げられる。
【0029】
このさばき板30の回動による先端の押し下げにより、さばき板30の下側に設けたスライド板33がバネ32の付勢力に打ち勝って、矢印D’のように押し下げられ、インク噴射ノズル8の噴射孔8aと噴射孔8bが重なる位置となり、インク24が矢印Cのように噴出する。
【0030】
以上のように、押圧板13上に積載された紙幣12をさばき板30の先端でさばきながら、紙幣12の間に発生した隙にインク24を噴射孔8aより噴射し、紙幣12にインク24を付着させる。
【0031】
(実施例2の効果)
以上のように、実施例2の現金処理装置によれば、インク噴射ノズルは、後端に支点を備えたさばき板と、前記支点を支点とした前記さばき板の回動による先端の押し下げによりスライドし前記インク噴射ノズルの噴射孔と重なる噴射孔を配したスライド板と、前記スライドに対向する付勢手段を設けたので、実施例1の効果に加え、紙幣をさばくときのみインクが噴射され、さらに効率よく紙幣の隙間にインクを付着させることができる。
【0032】
《その他の変形例》
以上の実施例の説明では、伸縮パイプ9を蛇腹状のパイプとして説明したが、図5(a)に示したようなコイル状の柔軟なパイプ9a或いは図5(b)に示したようなスライド自在に嵌合する複数の筒材からなる伸縮パイプ9bとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、防盗性を要する現金を取扱う現金自動預払機や現金自動支払機等の自動取引装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1、11 現金収納装置
8、18 インク噴射ノズル
8a、8b 噴射孔
9、9a、9b 伸縮パイプ
12 紙幣
13 押圧板
14 ベルト
15 シャフト
16 ギヤ
17 インク貯蔵部
21 押圧板保持板
22 ガス発生部
23 インク押出し板
24 インク
30 さばき板
30a 支点
31 スライドシャフト
32 バネ
33 スライド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク噴射ノズルを備え、押圧板上に積載された現金にインクを付着させて盗難を抑制する現金収納装置において、
前記インク噴射ノズルは、上部に、前記現金をさばくさばき板を有し当該さばき板の下側に噴射孔を備え、下部に、前記インクを前記噴射孔へと運ぶ伸縮パイプを備え、スライドシャフトにガイドされ前記インクを押し出す圧力により前記押圧板の下側から上方向にスライドするようにしたことを特徴とする現金収納装置。
【請求項2】
前記インク噴射ノズルは、前記さばき板の後端に支点を備え、前記支点を支点とした前記さばき板の回動による先端の押し下げによりスライドし前記インク噴射ノズルの噴射孔と重なる噴射孔を配したスライド板と、前記スライドに対向する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の現金収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−252479(P2012−252479A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124007(P2011−124007)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】