説明

球技用ボール

【解決手段】中空部と該中空部を被覆する包囲層とを有する球状コアと、該球状コア部を被覆する1層以上のカバーとから構成される直径60mmであるパークゴルフ用又はグラウンドゴルフ用の球技用ボールにおいて、上記包囲層のショアD硬度が57〜61であり、上記カバーのうち最外層のショアD硬度が37〜50であり、かつ上記包囲層の硬度が上記カバー硬度よりもショアD硬度で7〜24硬いと共に、包囲層の樹脂材料としてアイオノマー樹脂が使用され、100kg荷重負荷時における変形量が1.49〜1.87mmであることを特徴とする球技用ボール。
【効果】本発明の球技用ボールによれば、打撃後のボールの飛距離又は転がり距離を大きく伸ばすことができ、かつボールの打球感が良好なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球技用ボールに関するものであり、特にパークゴルフ用、グラウンドゴルフ用として好適な球技用ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフ競技に類似した種々のスポーツが行なわれており、特に、年齢、性別、経験等を超えた手軽なスポーツとしてパークゴルフやグランドゴルフが注目を集めている。このパークゴルフやグランドゴルフでは、通常のゴルフボールより直径、質量が大きいボールを使用するものであり、当該ボールの性能としては、打撃後のボールがグランド上で直進したり空中で飛行したりする到達距離が大きいことが望まれる。
【0003】
パークゴルフ等のボールとしては、例えば、特開2002−78829号公報に記載されたボールが提案されている。このボールは、図3に示されるように、中空コア部aと、内層部b及び外層部cからなる2層の被覆部とを有したボールであり、ボールの表面硬度を改良することによってボールの耐摩耗性を向上させて直進性を高めようとしたものである。
【0004】
しかしながら、上記のボールの表面硬度はショアD硬度50〜70に調整されているもの打撃後の飛距離や転がり距離に乏しいものであり、打球感も悪いという欠点がある。特に、打球感はボールの表面硬度だけでなくボール内部の硬度分布によって影響されるものであり、飛距離や転がり距離を伸ばすだけでなく、打球感も良好であることも望まれる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−78829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、打撃後のボールの移動距離を伸ばすだけでなく、打球感も良好に得られる競技用ボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、中空部と該中空部を被覆する包囲層とを有する球状コアと、該球状コア部を被覆する1層以上のカバーとから構成される直径60mmであるパークゴルフ用又はグラウンドゴルフ用の球技用ボールにおいて、上記包囲層のショアD硬度を特定範囲内に硬度調整すると共に、上記カバーのうち最外層のショアD硬度を特定範囲内に硬度調整すると共に、包囲層の樹脂材料としてアイオノマー樹脂が使用され、100kg荷重負荷時における変形量を特定範囲内に設定することにより、意外にも、打球感が良好に得られると共に、打撃後のボールの飛距離や転がり距離を大きく伸ばすことができることを見い出し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記の球技用ボールを提供する。
〔1〕中空部と該中空部を被覆する包囲層とを有する球状コアと、該球状コア部を被覆する1層以上のカバーとから構成される直径60mmであるパークゴルフ用又はグラウンドゴルフ用の球技用ボールにおいて、上記包囲層のショアD硬度が57〜61であり、上記カバーのうち最外層のショアD硬度が37〜50であり、かつ上記包囲層の硬度が上記カバー硬度よりもショアD硬度で7〜24硬いと共に、包囲層の樹脂材料としてアイオノマー樹脂が使用され、100kg荷重負荷時における変形量が1.49〜1.87mmであることを特徴とする球技用ボール。
【発明の効果】
【0009】
本発明の球技用ボールによれば、打撃後のボールの飛距離又は転がり距離を大きく伸ばすことができ、かつボールの打球感が良好なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は本発明の実施例に係る球技用ボールの概略断面図であり、(B)は参考例に係る球技用ボールの概略断面図である。
【図2】上記球技用ボールの成形用金型の断面図である。
【図3】従来の球技用ボールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の球技用ボールは、中空部と該中空部を被覆する包囲層とを有する球状コアと、該球状コア部を被覆する1層以上のカバーとから構成される。例えば、図1(A)に示したように、中空部1aと、該中空部1aを覆う包囲層1bからなる球状コア1及び1層のカバー2との複数層構造に形成した球技用ボールである。
【0012】
また、参考例の球技用ボールは、発泡体からなる球状コアと、該球状コア部を被覆する1層以上のカバーとから構成される。例えば、図1(B)に示したように、発泡体からなる球状コア10と1層のカバー2との二層構造に形成した球技用ボールである。
【0013】
なお、図1では、カバー2については、いずれも単層に形成されているが、必要により上記カバーを2層、3層構造等に多層化することができる。
【0014】
図1(A)のボール構造における中空部1aの直径は通常のように31mm〜45mm、好ましくは32〜40mmに調整される。中空部1aの直径が大きすぎると、打撃時にボールが破損するおそれがある。
【0015】
上記球状コアの包囲層の厚さは、7mm以上、好ましくは8mm以上、上限としては、14mm以下、好ましくは12mm以下であることが推奨される。包囲層の厚さが小さすぎると、打撃耐久性に劣る場合があり、包囲層の厚さが大きすぎると、製品重量の調整が困難となる場合がある。
【0016】
上記包囲層のショアD硬度は57〜61の範囲である。この下限値を下回ると、ボールの反発性に劣り、フルショット時の到達距離が低下するおそれがあり、上限値を上回ると、パット時の打感が損なわれるおそれがある。
なお、本発明における「ショアD硬度」とは、ASTM−D2240に基づく測定値である。
【0017】
一方、図1(B)のボール構造において、発泡体の材料のショアD硬度は61である。この場合の発泡材料のショアD硬度とは非発泡時の材料硬度である。
【0018】
上記発泡体からなるコアの直径は44mm以上、好ましくは46mm以上、上限としては58mm以下、好ましくは56mm以下であることが好ましい。
また、発泡体の比重は0.5〜0.8に調整されることが好ましい。
【0019】
図1(A),(B)のボール構造においては、上記カバーが中空コアの包囲層や発泡コアよりも軟らかく形成されるものであり、具体的には、図1(A)のボール構造では上記カバーのショアD硬度が37〜50の範囲内である。一方、図1(B)のボール構造では上記カバーのショアD硬度が37である。この下限値を下回るとボール表面の耐傷付き性が悪くなる場合があり、特に、包囲層が軟らか過ぎると到達距離の低下が著しくなるおそれがある。なお、ここで詳述するカバーのショアD硬度については、カバーが複数層に形成された場合、最も外側に位置する最外層カバーのショアDのことを意味する。
【0020】
本発明では、上記のとおり、カバーのショアD硬度が35〜50の範囲内に調整されるものであり、この場合、上記カバー(複数層の場合には最外層)を上記球状コアを構成する発泡体の材料又は包囲層よりもショアD硬度で6〜30軟らかく調整することが好ましい。
【0021】
上記カバーの厚さ、即ち、カバー全体の厚さは、特に制限されるものではないが、通常1mm以上、好ましくは2mm以上、上限としては30mm以下、好ましくは29mm以下とすることができる。また、上記のカバーのうち最外層の厚さは、1mm以上、好ましくは2mm以上、上限としては8mm以下、好ましくは6mm以下であることが推奨される。厚さが小さすぎると、耐久性が悪くなる場合があり、厚さが大きすぎると、生産性が悪くなる場合がある。
【0022】
中空部1aを覆う包囲層1b及び球状コア部を覆うカバー2の材料としては、上述した所定のショアD硬度を満足するものであれば、特に制限されるものではないが、好適には、下記に記載した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
即ち、上記熱可塑性樹脂としては、
(I)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体、
(II)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属イオン中和物及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物、及び
(III)熱可塑性エラストマー
から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
ここで、(I)、(II)成分中のオレフィンとしては、炭素数が、通常2以上、上限として8以下、特に6以下のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンであることが好ましい。
【0025】
また、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0026】
更に、不飽和カルボン酸エステルとしては、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルであることが好適で、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0027】
上記の(I)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体とオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体は、いずれも公知の方法に従って得ることができ、各成分の配合割合は特に制限されるものではないが、成分中の不飽和カルボン酸の含量(酸含量)は、通常2質量%(重量%と同義、以下同じ)以上、好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、上限としては25質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であることが推奨される。酸含量が少ないと反発性が低下する可能性があり、多いと加工性が低下する可能性がある。
【0028】
また、上記の(II)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸−ランダム共重合体の金属イオン中和物とオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物は、いずれも上記(I)成分のランダム共重合体又は三元共重合体中の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。
【0029】
ここで、酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられ、好ましくは、Na+、Li+、Zn++、Mg++等が好適に用いられるが、これら金属イオンのランダム共重合体又は三元共重合体の中和度は特に限定されるものではない。
【0030】
また、上記中和方法には、特に制限はなく、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を(I)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及びオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体に導入し、該金属イオンで酸基を中和する方法を採用できる。
【0031】
上記の(I)、(II)成分は、市販品を好適に使用することができ、オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体として、例えば、ニュクレルAN4311、同AN4318、同1560(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)等が、またオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属イオン中和物、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物としては、アイオノマー樹脂として市販されている、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同1855、同1856、同AM7316、同AD8512、同1652、同1653(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同7930、同8120、同8945、同9945(いずれも米国デュポン社製)等が挙げられ、特にニュクレルAN4318、同1560、ハイミラン1706、同1605を好適に使用することができる。
【0032】
上記の(III)熱可塑性エラストマーは、酸基を持たない中性から塩基性の熱可塑性エラストマーであることが推奨され、例えば、ポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。
【0033】
その他、上記の(I)〜(III)の他には、ポリプロピレン、ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの樹脂は上述した(I)〜(III)成分に混合して用いることもできる。
【0034】
また、包囲層及びカバーの材料には、二酸化チタンや硫酸バリウム等の無機充填材を添加することもできる。また、各種の染料,顔料等の着色剤を添加して各層を着色に仕上げたり、透明カバー層とすることもできる。
【0035】
図1(B)のボール構造における発泡コアの材料については、ショアD硬度が55〜70の範囲内とする熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、具体的には、上述した熱可塑性樹脂を例示することができる。そして、上記の熱可塑性樹脂に化学発泡剤を適量に配合して比重0.5〜0.9の発泡コアを製造する。化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどを用いることができ、市販品としては、大塚化学(株)製「ユニホームAZシリーズ」や「ユニファインPシリーズ」(いずれもアゾジカルボンアミドを主成分とする。)が挙げられる。
【0036】
本発明の競技用ボールの100kg荷重負荷時における変形量は1.45mm以上であり、上限値としては1.87mm以下である。上記変形量が小さすぎると、パット時の打感が損なわれることがある。また、上記変形量が大きすぎると、フルショット時の到達距離が低下することがある。
【0037】
本発明の球技用ボールの製造については、射出成形方法を採用することができ、例えば、中空部1aを包囲層1bで被覆した球状コア1を予め作成し、図2に示されるように、当該球体を金型5内に配備し、サポートピン6で球体1を支持しながらキャビティ5a内にカバー材料2を導入して当該カバーを射出成形する方法などが好適に採用される。
【0038】
本発明の球技用ボールは、その直径が50〜70mmであるグラウンドゴルフ用,パークゴルフ用のボール及びこれらの競技に類似した球技用ボールであり、その直径,質量は各種競技の規則等に応じて適宜設計変更することができる。例えば、パークゴルフ用ボールの場合、公式球技用としては、国際パークゴルフ協会認定の規則に従い、直径6cm、重量80〜95gの範囲内とすることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0040】
[実施例1〜3、参考例I及び比較例1〜4]
実施例1〜3及び比較例1〜3においては、一対の半球体(ハーフカップ)を射出成形により作製し、両半球体同士を嵌合することにより、所定直径の中空コア部を包囲層で包囲した球状コアを得た。また、参考例I及び比較例4においては、下記表に示したコア材料100質量部に対して発泡剤(大塚化学社製「AZH−115E」2質量部配合し、直径52mmの球状キャビティを有する金型に射出成形して比重0.76の発泡コアを得た。
【0041】
次いで、この球状コアを図2に示した上下分割金型内に導入し、各種のカバー材料を射出成形して実施例及び比較例のパークゴルフ用ボールを製造した。
【0042】
得られた各パークゴルフ用ボールについて、下記方法により、飛び性能及び打球感を評価した。結果を下記表1に併記する。

飛び性能
スイングロボット(ミヤマエ社製)にてヘッドスピード(HS)28m/sで打撃した時のボールの最終到達点を計測した。使用したクラブは、ブリヂストンスポーツ社製「グランドパーシモン SS−350P」である。

打球感
テスター10人が各例のボールをパークゴルフ用クラブでパットショットした時の打感を評価した。
10人中8人以上が打感が良いと判断したものを◎とする
10人中6〜7人が打感が良いと判断したものを○とする
10人中4〜5人が打感が良いと判断したものを△とする
10人中3人以下が打感が良いと判断したものを×とする
【0043】
【表1】

【符号の説明】
【0044】
1 球状コア
1a 中空部
1b 包囲層
10 発泡コア
2 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部と該中空部を被覆する包囲層とを有する球状コアと、該球状コア部を被覆する1層以上のカバーとから構成される直径60mmであるパークゴルフ用又はグラウンドゴルフ用の球技用ボールにおいて、上記包囲層のショアD硬度が57〜61であり、上記カバーのうち最外層のショアD硬度が37〜50であり、かつ上記包囲層の硬度が上記カバー硬度よりもショアD硬度で7〜24硬いと共に、包囲層の樹脂材料としてアイオノマー樹脂が使用され、100kg荷重負荷時における変形量が1.49〜1.87mmであることを特徴とする球技用ボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−269199(P2010−269199A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203467(P2010−203467)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2004−360756(P2004−360756)の分割
【原出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)