説明

環境微生物によるバイオマスの自然発火防止方法

【課題】 環境微生物によって、木質チップ等バイオマスから発生するメタノールガス等、可燃ガスを分解消化し、バイオマスから発生する可燃ガスに起因する自然発火の防止方法を提供する。
【解決手段】木質チップ等バイオマスを堆積保管していると、自然発火することがある。
これは木質チップの堆積保管中に、メタノールガス等の可燃ガスが発生し、当該ガスが木質チップ内部で充満し、静電気によって引火したことが原因ということがわかった。
その原因解決のための本法は環境微生物であるバチルス属を添加して、メタノールガス等の可燃ガスを分解消化して、当該ガスの発生、充満を防止して堆積保管中の木質チップの火災発生を防止する。その結果、木質チップの火災発生を防止しつつ堆積保管が可能となることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質チップ等バイオマスの自然発火を防止しつつ保管するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
環境微生物によるバイオマスの自然発火防止方法
【0003】
木質チップをそのまま堆積保存していると、内部が65℃以上の高温状態になり、内部が自然発火によると思われる燻りが生じることがある。
【0004】
高温状態の木質チップを観察したところ、湯気が発生しており、メタノールの臭い(刺激臭)が感じられた。
【0005】
当該木質チップよりの湯気をガス検知管で分析したところ、メタノールが20ppm検出された。
【0006】
メタノールは元々木材を乾留して製造されている。
【0007】
メタノールは沸点が63℃なので、65℃以上の高温状態では、ガス態となる。
【0008】
上記「0003」から「0007」により、木質チップを堆積保存しているとメタノールガスが発生し、内部に充満することが推定された。
【0009】
メタノールガスは引火点が12℃であるため、それ以上の温度ではチップ同士の摩擦等による静電気によって引火し、その結果、火災が発生するということが推定された。
【0010】
環境微生物のバチルス属は太古の昔より、地球の掃除人として有機物を、分解、代謝し無機物にしてきた。この菌がいなければ地球上は動植物の遺体や排泄物でゴミ溜に成っていただろうと言われている。
【0011】
メタノールは化学式CHOHと非常に単純な有機物であるので、バチルス属ならば、メタノールを分解消化して無機物とし、不燃物にすることが可能ではないかと考えた。
【0012】
そこで木質チップにバチルス属(菌株は当方で保管している)の菌培養液を添加し、発生するメタノールガスを当該菌に分解消化させる実験を試みた。
【0013】
木質チップの湯気の発生部位に菌培養液を添加して6時間後に当該木質チップよりの湯気をガス検知管で分析した結果、メタノールは菌培養液添加前の20ppmから菌培養液添加後は検出限界の0.2ppm未満となった。
【0014】
この事実が判明した後、木質チップより湯気が発生し、メタノールの臭い(刺激臭)が感じられた時に、菌培養液を添加する操作を1年間繰り返したが、菌添加後にメタノールガスの発生はなく、それに伴い火災の発生も無かった。
【0015】
木質チップ等バイオマスの資源化ではメタノールを抽出し、利用する方法もあるので、全てのメタノールが永続的に分解されては、バイオマスのメタノール抽出はできなくなる。
【0016】
しかし、「0014」の実験では、菌添加後1週間ほどで、再びメタノールの発生が確認され、再度の菌培養液添加の必要が生じた。
【0017】
「0016」の結果より、菌培養液添加による、メタノール分解は一時的な効果に留まり、菌培養液添加を中止すれば、木質チップからのメタノールの発生は可能と考えられる。
【0018】
以上より、木質チップより湯気が発生し、メタノールの臭い(刺激臭)が感じられた時に、菌培養液を添加すれば、メタノールガスによる火災を防止しつつ、木質チップの保管が可能となり、メタノール抽出実施時の1週間前から菌培養液の添加を中止すれば、木質チップのメタノール抽出には支障が無くなるものと思われる。
【非特許文献1】「化学小事典<第2版>」、三省堂、1980年、p.383
【非特許文献2】「大学教養の生活化学」、医歯薬出版株式会社、1978年、p.94
【発明の開示】

【発明が解決しようすとる課題】
【0019】
近年、木質チップ等のバイオマスの資源化の研究が進み、木くず等の有機廃棄物はチップ化されるなど、資源として利用されるようになってきた。
【0020】
木質チップは堆積保管していると、内部で燻ぶり、火災が発生することがある。
【0021】
この燻ぶりの原因は木質チップ内部に充満したメタノールガスの引火燃焼であることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
火災の原因となるメタノールガスが木質チップから発生し、刺激臭がしてきたところで、環境微生物の菌培養液を木質チップに添加し、微生物によってメタノールを分解消化する。
【発明の効果】
自然発火による火災を防止しつつ、木質チップの堆積保管ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
木くずを破砕して、木質チップを製造して堆積保管中に、湯気が発生し刺激臭がしてきたところで、環境微生物の菌培養液を木質チップ表面に散布することで添加する。
【0024】
菌培養液の添加量は木質チップ100mにつき、約5リットル
【0025】
菌の培養方法は市販の普通ブイヨン培地を定法に従って作成し、菌株液(当方で所有)を1/1000ml添加接種し、室温で1夜培養する。
【0026】
培養確認はグラム染色を実施し、1000倍鏡検で1視野10個以上の生菌確認、培養終了とする。
【実施例】
【0027】
会社で植物発生材の樹木等を引き取り、チップ化して堆積保管しているが、以前は木質チップを堆積保管していると、内部で燻りが発生し、当該木質チップを移動するために掘り崩すと内部が焦げていることがあった。
【0028】
その原因を究明するため観察したところ、当該木質チップよりメタノール様の刺激臭がしたため、ガス感知管で分析した。
【0029】
その結果、メタノールが20ppm検出されたため、燻りの原因は木質チップ内部でメタノールガスが発生、充満し、木質チップの摩擦による静電気でメタノールガスが引火したものと思われた。
【0030】
対策として、発生したメタノールガスの微生物による分解消化を試み、「背景技術」「0012」「0013」に示した実験を実施し、メタノールガスが微生物で分解消化することが可能であることがわかった。
【0031】
そこで、「背景技術」「0014」に示した処置を1年間繰り返し、メタノールガスを微生物で分解消化し続けたところ、その後メタノールガスは検出されず、その間、数回堆積保管中の木質チップを掘り崩した結果、燻りや内部の焦げなど、自然発火は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
木質チップのメタノールガス発生に由来する火災の防止、その他バイオマスの自然発火防止、木質チップ等バイオマスの火災防止しつつ安全な保管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境微生物による、バイオマスの自然発火防止方法
【請求項2】
環境微生物の可燃ガスを分解消化する作用を利用しての、木質チップ等バイオマスの可燃ガス発生に起因する火災防止しつつ保管する方法
【請求項3】
環境微生物のメタノールを分解消化する作用を利用しての、木質チップのメタノール発生に起因する火災を防止しつつ保管する方法

【公開番号】特開2008−133406(P2008−133406A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348499(P2006−348499)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(505130802)
【Fターム(参考)】