説明

環境測定装置及び環境測定方法

【課題】環境測定装置及び環境測定方法において、同一地点におけるQCMセンサの腐食量と温度とを同時に測定すること。
【解決手段】第1の水晶振動子3の表面に第1の電極5を設けてなり、第1の電極5の腐食量を測定する第1のQCMセンサ1と、第1のQCMセンサ1に近接して配置され、第1の水晶振動子3とはカットが異なる第2の水晶振動子4の表面に、第1の電極5と同じ材料の第2の電極6を設けてなる第2のQCM2センサとを有する環境測定装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境測定装置及び環境測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場やサーバルームには様々な電子機器が設置されるが、その電子機器が置かれる環境中には硫化水素ガスや塩素ガス等の腐食性ガスが含まれることがある。腐食性ガスは、電子機器を腐食してその特性を劣化させる原因となるので、電子機器が置かれる環境中の腐食ガスを監視するのが好ましい。
【0003】
腐食ガスを監視するセンサとしてQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサが知られている。QCMセンサは、水晶振動子の電極の質量が腐食により変化するとその腐食量に応じて共振周波数が減少する性質を利用し、極めて微量な質量変化を測定することができる質量センサである。
【0004】
QCMセンサの共振周波数を測定すればリアルタイムに環境中の腐食ガスを監視できる。但し、腐食が進行する程度は、環境中の腐食ガスの濃度だけでなく、環境の温度にも依存するため、腐食ガスの監視と同時に環境の温度も測定できるのが好ましい。
【0005】
更に、QCMセンサの共振周波数は環境の温度によって変化するため、QCMセンサに対して温度補正をするためにも環境の温度を測定するのが好ましい。
【0006】
温度を測定してQCMセンサを補正する方法として様々な技術が提案されているが、いずれも改善の余地がある。
【0007】
例えば、二つのQCMセンサを用意し、そのうちの一方を温度センサとして利用して、その温度センサの出力で他方のQCMセンサの測定値を補正する方法が提案されている。
【0008】
このように温度センサとして使用するには、環境中でのQCMセンサの腐食を防止するために、温度センサ用のQCMセンサを密閉容器で囲う必要がある。但し、これでは密閉容器が邪魔で二つのQCMセンサを近接させることができず、環境中の同一地点における腐食ガスの量と温度とを測定することができない。
【0009】
また、基本モードよりも周波数が高いオーバートーン周波数で水晶振動子を共振させて温度補正を行う方法も提案されている。しかし、電極が腐食したQCMセンサをオーバートーン周波数で使用するとその出力が不安定となるため、この方法は腐食量の検出には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−265459号公報
【特許文献2】特開2004−184256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
環境測定装置及び環境測定方法において、同一地点におけるQCMセンサの腐食量と温度とを同時に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の開示の一観点によれば、第1の水晶振動子の表面に第1の電極を設けてなり、前記第1の電極の腐食量を測定する第1のQCMセンサと、前記第1のQCMセンサに近接して配置され、前記第1の水晶振動子とはカットが異なる第2の水晶振動子の表面に、前記第1の電極と同じ材料の第2の電極を設けてなる第2のQCMセンサとを有する環境測定装置が提供される。
【0013】
また、その開示の他の観点によれば、第1の水晶振動子の表面に第1の電極を設けてなる第1のQCMセンサを用いて前記第1の電極の腐食量を測定するステップと、温度変化と前記第1の電極の腐食に起因して生じる前記第1のQCMセンサの共振周波数の第1の変化量を測定するステップと、前記第1のQCMセンサに近接して配置され、前記第1の水晶振動子とはカットが異なる第2の水晶振動子の表面に、前記第1の電極と同じ材料の第2の電極を設けてなる第2のQCMセンサを用いて、温度変化と前記第2の電極の腐食に起因して生じる前記第2のQCMセンサの共振周波数の第2の変化量を測定するステップと、前記第1の変化量と前記第2の変化量とに基づいて、前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサの各々が設けられる環境の温度を算出するステップとを有する環境測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
以下の開示によれば、第1の水晶振動子と第2の水晶振動子の各々のカットが異なるため、第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの各々の共振周波数の変化率が温度に対して異なる特性を示す。よって、第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの共振周波数の変化率を利用することで、これらのQCMセンサが置かれている環境の温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第1実施形態に係る第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る環境測定装置の構成図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る環境測定装置が備える第1の発振回路の回路図である。
【図4】図4は、第1実施形態において、第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの各々の共振周波数の変化率と温度との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、第1実施形態の第1例に係る環境測定方法について説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、第1実施形態の第1例で使用する第1〜第3のグラフを示す図である。
【図7】図7は、第1実施形態の第2例に係る環境測定方法について説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、第1実施形態の第2例において、第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの各々の周波数の変化量の一例を示すグラフである。
【図9】図9は、第2実施形態に係る環境測定装置の構成図である。
【図10】図10は、第2実施形態において、切り替え装置における切り替え手順を模式的に示す図である。
【図11】図11は、第2実施形態において、第1のQCMセンサの共振周波数の第1の変化量と第2のQCMセンサの共振周波数の第2の変化量とを複数の時刻において測定し、その結果をセンサ対毎に表示したグラフである。
【図12】図12は、第2実施形態において、腐食量と環境の温度とをセンサ対毎に表示したグラフである。
【図13】図13は、第2実施形態において、環境中における各センサ対の配置例について模式的に示す図である。
【図14】図14は、第2実施形態において、各センサ対の測定結果をグラフ化した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態では、工場やサーバルーム等の環境中の腐食ガスの濃度を推定するだけなく、その環境の温度をも測定できる環境測定装置について説明する。
【0018】
図1は、その環境測定装置が備える第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の斜視図である。
【0019】
このうち、第1のQCMセンサ1は、第1の水晶振動子3の両面に第1の電極5を形成してなる。第1の水晶振動子3のサイズやカットは特に限定されない。本実施形態では、ATカットの水晶振動子を第1の水晶振動子3として使用すると共に、第1の水晶振動子3の平面形状を直径が約8mmの円形とする。
【0020】
なお、ATカットの水晶振動子は、水晶の結晶軸のうちZ軸に対して約35°15′の角度で傾斜したカット面を有する水晶である。ATカットを特徴付けるパラメータとしては、上記の傾斜角(約35°15′)からのカット面のずれの角度もあり、当該角度は、2°44′〜2°54′程度の大きさである。
【0021】
また、第1の電極5の材料は、検知の対象となる腐食ガスに応じて選択される。例えば、硫化水素を検出する場合には第1の電極5の材料として銀を使用し得る。また、塩素を検出する場合には、第1の電極5の材料として銅を使用し得る。
【0022】
そして、第1の水晶振動子3の両面の各々の第1の電極5には、銅等を材料とする第1の導線7が電気的に接続される。その第1の導線7は、上記の第1の水晶振動子3を支持すると共に、樹脂等を材料とする第1の支持部11に固定される。
【0023】
一方、第2のQCMセンサは、第2の水晶振動子4の表面に第2の電極6を形成してなる。
【0024】
第2の水晶振動子4は、その表面が第1の水晶振動子3の表面と平行になるように配される。そして、第2の水晶振動子4のサイズは第1の水晶振動子3と同一であり、第2の電極6の材料も第1の電極5の材料と同一である。
【0025】
但し、第2の水晶振動子4のカットはBTカットであって、第1の水晶振動子3と異なる。なお、BTカットの水晶振動子は、水晶の結晶軸のうちZ軸に対して約−49°の角度で傾斜したカット面を有する水晶である。
【0026】
なお、第1の水晶振動子4と第2の水晶振動子4のカットは、互いに異なるものであれば上記に限定されず、ATカット、BTカット、CTカット、DTカット、GTカット、及びNTカットのいずれかであってもよい。これらのどのカットを選択するかは、測定対象の腐食ガスの種類や測定条件を考慮して決定し得る。
【0027】
そして、第2の水晶振動子4の両面の各々の第2の電極6には、銅等を材料とする第2の導線8が電気的に接続される。その第2の導線8は、上記の第2の水晶振動子4を支持すると共に、樹脂等を材料とする第2の支持部13に固定される。
【0028】
第2の支持部13は、振動吸収材16によって第1の支持部11に接着される。振動吸収材16は、第1の水晶振動子3と第2の水晶振動子4の各々の振動を吸収し、これらの振動子同士が互いに干渉するのを防止するように機能する。そのような機能を有する材料としては、樹脂を材料とする接着剤がある。
【0029】
ここで、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2は、腐食ガスによる第1の電極5や第2の電極6の腐食量を測定するだけでなく、これらのセンサが置かれている環境の温度を測定するのにも使用される。
【0030】
後述のように、その温度の測定は、第1の電極5と第2の電極6の腐食量が同じであることを前提にしている。そのため、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2をなるべく近接させることにより、環境内において温度や腐食ガスの濃度が実質的に同一とみなせる領域内に第1の電極5と第2の電極6とを位置させ、これらの電極の腐食量を同一にするのが好ましい。
【0031】
本実施形態では、第1の水晶振動子3と第2の水晶振動子4との間隔dを1mm以下とすることで、第1の電極5と第2の電極6の腐食量を実質的に同一にする。但し、間隔dが狭すぎると、第1の水晶振動子3と第2の水晶振動子4との間に環境内のダストが挟まったり、環境内の湿度が上昇したときにこれらの水晶振動子の間に水柱が形成されるおそれがあるので、間隔dは0.5mm以上とするのが好ましい。
【0032】
図2は、本実施形態に係る環境測定装置の構成図である。
【0033】
なお、図2において、図1で説明したのと同じ要素には図1におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0034】
この環境測定装置10は、上記した第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の他に、第1及び第2の発振回路21、22、第1及び第2の周波数カウンタ23、24、及び制御部25を有する。
【0035】
第1及び第2の発振回路21、22は、それぞれ第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2を基本波モードで共振させるための回路である。
【0036】
図3は、第1の発振回路21の回路図である。なお、第2の発振回路22の回路図もこれと同様なので、ここでは省略する。
【0037】
図3に示すように、第1の発振回路21は、インバータ28と、第1及び第2の抵抗R1、R2と、第1及び第2のキャパシタC1、C2とを備える。
【0038】
このような回路においては、インバータ28が第1のQCMセンサ1と協働して並列共振回路を形成しており、第1及び第2のキャパシタC1、C2の容量値を適宜設定することで、第1のQCMセンサ1を発振させることができる。
【0039】
なお、第1のQCMセンサ1を流れる水晶電流の大きさは第1の抵抗R1によって調節される。そして、インバータ28には電源電圧Vddが印加されており、第2の抵抗R2がインバータ28の帰還抵抗として機能する。
【0040】
再び図2を参照する。
【0041】
第1の周波数カウンタ23と第2の周波数カウンタ24は、それぞれ第1の発振回路21と第2の発振回路22に接続される。そして、第1の周波数カウンタ23は第1のQCMセンサ1の共振周波数fATを測定し、第2の周波数カウンタ24は第2のQCMセンサ2の共振周波数fBTを測定する。
【0042】
制御部25は、パーソナルコンピュータ等の計算機であって、CPU等の算出部25aと、ハードディスク等の記憶部25bとを有する。このうち、算出部25aは、上記した各共振周波数fAT、fBTを用いて環境内の温度を算出する。
【0043】
次に、この環境測定装置10の動作原理について説明する。
【0044】
硫化水素ガスや塩素ガス等の腐食ガスを含む環境中に第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2を置くと、その腐食ガスによって第1の電極5と第2の電極6(図1参照)の各々が腐食する。
【0045】
上記のように、第1の電極5と第2の電極6は、材料とサイズが同一であると共に、間隔dを狭めたため実質的に同一の温度で同一濃度の腐食ガスに曝されるので、第1の電極5と第2の電極6の腐食量は同一とみなすことができる。
【0046】
そのような腐食によって第1の電極5と第2の電極6の質量が変化し、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の各々の共振周波数fAT、fBTは変化することになる。
【0047】
また、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の各々の共振周波数fAT、fBTは、第1の電極5と第2の電極6の質量の変化だけでなく、これらのセンサが置かれている環境の温度によっても変化する。
【0048】
ここで、仮に、第1の水晶振動子3と第2の水晶振動子4のカットが同一であれば、温度変化が原因の共振周波数の変化量は第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2とで同一になる。
【0049】
しかし、本実施形態では、第1の水晶振動子3のカットをATカットにし、第2の水晶振動子4のカットをBTカットにしたため、温度変化が原因の共振周波数の変化量は第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2とで違った値となる。
【0050】
図4は、そのような共振周波数の変化量の違いについて説明するための図である。
【0051】
上記のようにQCMセンサの共振周波数は温度によって変動する。以下では、温度が基準温度T0からTに増加したときの共振周波数fの変化量をΔTf表す。また、温度が基準温度T0のときのQCMセンサの共振周波数をf0で表す。そして、ΔTfとf0との比(ΔTf/f0)を共振周波数の変化率を呼ぶ。
【0052】
図4では、第1のQCMセンサ1の共振周波数の変化率と温度との関係を示す第1のグラフAと、第2のQCMセンサ2の共振周波数の変化率と温度との関係を示す第2のグラフBとを併記してある。なお、基準温度T0は27℃としている。
【0053】
また、実線で示す第1のグラフAは、ATカットのカット面とZ軸との角度が、上記の35°15′から2°54′だけずれた水晶振動子3を備えた第1のQCMセンサ1で測定としたときのグラフである。
【0054】
図4に示すように、カット面の相違が原因で第1のグラフAと第2のグラフBは異なる曲線となる。このうち、第1のグラフAは、基準温度T0に変曲点が位置する温度Tの3次関数となり、第2のグラフBは、基準温度T0で最大値をとる温度Tの二次関数となる。
【0055】
ここで、温度がTのときの第1のグラフAの値をδAT、温度がTのときの第2のグラフBの絶対値をδBTとすると、これらの和δATBTは、温度Tが基準温度T0以上の領域で温度Tと一対一に対応している。
【0056】
よって、和δATBTの値が分かれば、その値に対応する温度Tを図4から読み取ることで、環境の温度Tが測定できることになる。
【0057】
なお、上記のδBTは、温度Tの変化のみを考慮した場合の第1のQCMセンサ1の共振周波数の変化率の絶対値であるが、後述の式(7)のように、電極の質量変化を考慮した場合はその変化率はδATの1.497倍となる。そのため、実使用下においては、このような電極の質量変化も考慮して温度Tを測定するのが好ましい。
【0058】
また、第1のグラフAの形状は、ATカットのカット面とR面との角度に依存する。例えば、当該角度を2°54′程度に大きくすると、温度上昇に伴う共振周波数の増加が大きくなり温度Tが基準温度T0以上の領域で第1のグラフAと第2のグラフBとの乖離が大きくなって、和δATBTを利用した温度Tの測定精度が向上する。
【0059】
一方、温度Tが基準温度T0以下の領域において温度Tの測定精度を向上させたい場合には、ATカットのカット面とZ軸との角度が、既述の35°15′から2°44′だけずれた水晶振動子3を備えた第1のQCMセンサ1で測定するのがよい。
【0060】
図4の点線は、カット面がこのように2°44′だけずれた第1のQCMセンサ1で測定した場合の第1のグラフAである。これに示すように、この角度では、温度Tが基準温度T0以下の領域で第1のグラフAと第2のグラフBとの乖離が大きくなるため、温度Tの測定精度が向上する。
【0061】
上記したような原理に基づく温度Tの測定方法について以下に説明する。
【0062】
上記のように、QCMセンサの共振周波数は、温度Tだけでなく、第1の電極5や第2の電極6の質量変化によっても変化する。これらの電極の質量が腐食によってMfだけ増加したときの共振周波数fの変化をΔMfで表す。ΔMfは、式(1)のSaurbreyの式によって表現できる。
【0063】
【数1】

但し、fqは基本共振周波数、ρqは水晶振動子の密度、Nはカットに依存する定数、Sは電極の表面積である。
【0064】
ここで、第1のQCMセンサ1の共振周波数と基本共振周波数をそれぞれfAT、fATqとし、第2のQCMセンサ2の共振周波数と基本共振周波数をそれぞれfBT、fBTqとする。既述のように、腐食による電極の質量変化量Mfは第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2で同一とみなせるので、電極の腐食に伴う共振周波数の変化量ΔMfAT、ΔMfBTは式(1)から次のように表される。
【0065】
【数2】

【0066】
【数3】

但し、
【0067】
【数4】

なお、式(2)、(3)において、第1のQCMセンサ1に固有の量には添え字ATを付し、第2のQCMセンサ2に固有の量には添え字BTを付してある。これらの値は次のようになる。
【0068】
NAT=1.67×105Hz・cm
NBT=2.5×105Hz・cm
また、ρqの値は2.65kg/cm3であり、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の各々において同一の値である。
【0069】
式(2)の辺々の比をとると、次の式(5)が得られる。
【0070】
【数5】

ここで、本実施形態では、基準温度T0(27℃)の場合における第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の各々の基本共振周波数fATq、fBTqが同一の値f0になるように、これらのQCMセンサを設計する。
【0071】
このようにすると、式(5)は次の式(6)のようになる。
【0072】
【数6】

これにより次の式(7)が得られる。
【0073】
【数7】

式(7)の左辺は、基準温度T0において、第1の電極5の質量が変動したときの第1のQCMセンサ1の共振周波数の変化率を表す。そして、式(7)の右辺の定数(1.497)を除く項は、基準温度T0において、第2の電極6の質量が変動したときの第2のQCMセンサ2の共振周波数の変化率を表す。
【0074】
式(7)に示されるように、第1のQCMセンサ1の共振周波数の変化率(ΔMfAT/f0)と第2のQCMセンサ2の共振周波数の変化率(ΔMfBT/f0)は同一ではなく、前者は後者の1.497倍となる。
【0075】
このような違いは第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2のカットの違いによって生じたものであり、以下では1.497のことをカット補正定数と呼ぶ。
【0076】
ここで、上記のように、QCMセンサの共振周波数は、環境の温度と電極の質量の両方に依存する。
【0077】
以下では、第1のQCMセンサ1において、温度と質量の両方の変化を加味した共振周波数の変化量をΔfATと書く。同様に、第2のQCMセンサ2において、温度と質量の両方の変化を加味した共振周波数の変化量をΔfBTと書く。
【0078】
この場合、ΔfATは、第1の電極5の質量変化が原因の変化量ΔMfATと、温度変化が原因の共振周波数の変化量ΔTfATとの和として近似できる。図4より、温度変化が原因の共振周波数の変化量はδAT・f0に等しいので、次の式(8)が成立する。
【0079】
【数8】

同様に、第2のQCMセンサについては、次の式(9)が成り立つ。
【0080】
【数9】

なお、式(8)、(9)において、δATとδBTの前の符号を逆にしたのは、温度が基準温度T0以上の領域で第1のグラフA(図4参照)が正の値をとるのに対し、当該領域において第2のグラフBが負の値をとることによる。
【0081】
そして、式(8)より次の式(10)が得られ、式(9)より次の式(11)が得られる。
【0082】
【数10】

【0083】
【数11】

式(10)、(11)を式(7)に代入すると次の式(12)になる。
【0084】
【数12】

これを整理すると、式(13)となる。
【0085】
【数13】

これより、式(14)が得られる。
【0086】
【数14】

ここで、δAT、δBTは、それぞれ次の式(15)、(16)で表されることが知られている。
【0087】
【数15】

【0088】
【数16】

但し、α、β、γ、λは水晶板の切断角度によって一意に定まる定数であって、αは1次周波数温度係数、βは2次周波数温度係数、γは3次周波数温度係数と呼ばれる。そして、λは、BTカットの温度係数と呼ばれる。
【0089】
式(15)、(16)を式(14)に代入することにより、次の式(17)が得られる。
【0090】
【数17】

式(17)はTに関する3次方程式である。よって、ΔfATとΔfBTとを求め、この3次方程式の解を数値計算により求めることで、温度Tを測定することができる。
【0091】
以下に、上記の原理を利用した本実施形態に係る環境測定方法について説明する。その環境測定方法は、式(17)を数値計算で解く方法(第1例)と、図4のようにグラフを利用する方法(第2例)とがある。
【0092】
・第1例
図5は、第1例に係る環境測定方法について説明するためのフローチャートである。
【0093】
最初のステップS1では、算出部25a(図2参照)が、第1のQCMセンサ1の共振周波数の第1の変化量ΔfATを算出する。
【0094】
第1の変化量ΔfATは、第1の周波数カウンタ23から第1の時刻t1における共振周波数fAT(t1)を取得し、更にそれから所定時間経過した第2の時刻t2における共振周波数fAT(t2)を第1の周波数カウンタ23から取得し、それらの差(fAT(t2)−fAT(t1))をとることで算出し得る。
【0095】
また、これと共に、算出部25aが、第2のQCMセンサ2の共振周波数の第2の変化量ΔfBTを算出する。
【0096】
第2の変化量ΔfBTは、上記の第1の時刻t1における共振周波数fBT(t1)と第2の時刻t2における共振周波数fBT(t2)を第2の周波数カウンタ24から取得し、それらの差(fBT(t2)−fBT(t1))をとることで算出し得る。
【0097】
次いで、ステップS2に移り、ステップS1で取得した変化量ΔfAT、ΔfBTを利用して、算出部25aが、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2が設けられている環境の温度Tを算出する。
【0098】
その温度Tは、式(17)に変化量ΔfAT、ΔfBTを代入し、数値計算により算出部25aが式(17)の解を求めることで算出される。
【0099】
次に、ステップS3に移り、第1のQCMセンサ1の第1の電極5の腐食量Mfを算出する。
【0100】
腐食量Mfの算出にあたっては、まず、算出部25aが上記の式(15)に温度Tを代入してδATを算出する。
【0101】
そして、このδATとステップS1で求めたΔfATとを式(10)に代入してΔMfATを算出する。更に、次の式(18)のように、既述のSaurbreyの式にΔMfATの値を代入することで、腐食量Mfが算出される。
【0102】
【数18】

この腐食量Mfは、式(15)を介して温度Tが反映されたδATを利用して算出されたため温度補正がなされており、温度Tを考慮した正確な値となる。
【0103】
その後、ステップS4に移り、ステップS2で求めた温度Tと、ステップS3で求めた腐食量Mfとを、記憶部25bに格納する。
【0104】
以上により、本例に係る環境測定方法の基本ステップを終了する。
【0105】
・第2例
図6は、本例で使用する第1〜第3のグラフA〜Cを示す図である。
【0106】
これらのグラフのうち、第1のグラフAは、図4の第1のQCMセンサ1の共振周波数の変化率を示す第1のグラフAと同一である。そして、第2のグラフBは、図4の第2のQCMセンサ2の共振周波数の変化率を示す第2のグラフBと同一である。
【0107】
また、第3のグラフCは、第2のグラフBにカット補正定数(1.497)を乗じて得られたグラフである。この場合、温度Tにおける第2のグラフBの値の絶対値がδBTのとき、その温度Tにおける第3のグラフCの値の絶対値は1.497δBTとなる。
【0108】
更に、温度Tのときの第1のグラフAの値はδATであるから、当該温度Tにおける第1のグラフAと第3のグラフCの差Dは、δAT+1.497δBTに等しくなる。
【0109】
この値(δAT+1.497δBT)は、式(14)によれば、(ΔfAT−1.497ΔfBT)/f0に等しい。
【0110】
よって、ΔfATとΔfBTからDを求め、第1のグラフAと第3のグラフCとの差がDとなるような温度Tを見つけることで、温度Tを算出することができる。例えば、図6の例では、温度Tが60℃であると算出できる。
【0111】
特に、第3のグラフCは上に凸の2次関数を表し、第1のグラフAは基準温度T0(27℃)以上の領域において増加する3次関数を表すため、当該領域において第1のグラフAと第3のグラフCは互いに大きく乖離する。その乖離の程度は、第1の水晶振動子3(図1参照)第2の水晶振動子4の各々のカットを同一にする場合の凡そ4倍になるため、この方法では温度Tを精度よく測定できることになる。
【0112】
本例では、第1のグラフA〜第3のグラフCが予め記憶部25bに格納されており、これらのグラフを参照することで次のように算出部25aが温度Tを算出する。
【0113】
図7は、本例に係る環境測定方法のフローチャートである。
【0114】
最初のステップS10では、第1例のステップS1(図5参照)と同じ方法を用いて、算出部25aが第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の各々の共振周波数の変化量ΔfAT、ΔfBTを算出する。
【0115】
図8は、変化量ΔfAT、ΔfBTの一例を示すグラフである。このグラフの横軸は、時刻t1において測定を開始してからの経過時間を示し、縦軸は変化量ΔfAT、ΔfBTを示す。
【0116】
図8の例では、時刻t2における第1の変化量ΔfATは3800Hzであり、時刻t2における第2の変化量ΔfBTは1000Hzである。
【0117】
次に、ステップS11に移り、算出部25aが式(14)の左辺に各変化量ΔfAT、ΔfBTを代入することにより、第1のグラフAと第3のグラフCの間隔D(=δAT+1.497δBT)を算出する。
【0118】
例えば、温度が基準温度T0(27℃)のときの第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の共振周波数f0が20×106Hzであるとする。この場合、各変化量ΔfAT、ΔfBTが図8に示される値のとき、間隔Dは115×10-6(3800−1.497×1000)/(20×106)となる。
【0119】
次いで、ステップS12に移り、算出部25aが第1のグラフAと第3のグラフCを参照し、これらのグラフの間隔が上記のDとなるような温度Tを求める。本例では、上記のように温度Tは60℃となる。
【0120】
その後、ステップS13に移り、第1例のステップS3と同じ方法で第1のQCMセンサ1の第1の電極5の腐食量Mfを算出する。その腐食量Mfを基にして、ユーザは、環境内における腐食ガスの凡その濃度を推定できる。
【0121】
そして、ステップS14に移り、ステップS12で求めた温度Tと、ステップS13で求めた腐食量Mfとを記憶部25bに格納し、本例に係る環境測定方法の基本ステップを終了する。
【0122】
上記した本実施形態によれば、第1例と第2例のいずれにおいても、カットが異なる第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2を利用することで、第1の電極5の腐食量Mfだけでなく、その電極と同一地点における温度をも測定できる。
【0123】
一般に、腐食性ガスは、温度が高いほど金属を腐食する性質が強くなる。そのため、本実施形態のように温度が分かれば、腐食量Mfが上昇したときにその原因の一つに温度の高温化があると判断でき、環境内の温度の高低を勘案して電子機器等の腐食防止の対策を講ずることが可能となる。
【0124】
更に、QCMセンサとは別に温度計を設けて環境内の温度を測定することも考えられるが、高濃度の腐食ガスが存在する環境中や、腐食ガスの濃度が低濃度であっても環境の温度が高い場合には、腐食ガスによって温度計自身が腐食してしまう。本実施形態では、第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの各々の電極が腐食することを利用して環境内の温度を測定するため、これらのQCMセンサの腐食を気にする必要がない。
【0125】
しかも、図2に示したように、環境測定装置10に設けられる二つの発振回路21、22と周波数カウンタ23、24は、QCMセンサの腐食量を測定するのに使用するものを流用できるため、温度を測定するための大掛かりな装置が不要となる。
【0126】
(第2実施形態)
本実施形態では、以下のようにして、環境内における温度の分布と、第1のQCMセンサ1の第1の電極5の腐食量の分布を測定する。
【0127】
図9は、本実施形態に係る環境測定装置の構成図である。
【0128】
なお、図9において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0129】
この環境測定装置30は、第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2とを対にしてなるn個のセンサ対Q1、Q2、・・・Qnを備える。更に、環境測定装置30には、切り替え装置31と、周波数カウンタ32と、制御部25とが設けられる。
【0130】
切り替え装置31は、複数のセンサ対Q1、Q2、・・・Qnのうちのいずれかを選択し、選択したセンサ対に対応する第1の発振回路21と第2の発振回路22の出力を後段の周波数カウンタ32に接続する。
【0131】
周波数カウンタ32は、切り替え装置31により選択されたセンサ対Qi(i=1、2、…n)の第1のQCMセンサ1と第2のQCMセンサ2の各々の共振周波数fAT、fBTを測定する。
【0132】
そして、制御部25は、これらの共振周波数fAT、fBTを利用して、第1実施形態の第1例(図5)と第2例(図7)のいずれかのフローチャートに従い、選択されたセンサ対Qiが設置された位置における温度Tと腐食量Mfとを測定する。
【0133】
図10は、切り替え装置32による切り替え手順を模式的に示す図である。
【0134】
図10の例では、1番目のセンサ対Q1から順に、Q2、Q3、・・・Qnと切り替えていき、最後のセンサ対Qnでの測定が終了したら、再び1番目のセンサ対Q1に切り替える。
【0135】
図11は、第1のQCMセンサ1の共振周波数の第1の変化量ΔfATと第2のQCMセンサ2の共振周波数の第2の変化量ΔfBTとを複数の時刻において測定し、その結果をセンサ対Q1、Q2、・・・Qn毎に表示したグラフである。このグラフは、算出部25a(図9参照)が第1の変化量ΔfATと第2の変化量ΔfBTを算出した後に、制御部25の制御下で記憶部25bに格納される。
【0136】
図12は、図11の変化量ΔfAT、ΔfBTを利用して算出部25aが第1実施形態に従って腐食量Mfと環境の温度Tとを算出し、その算出結果をセンサ対Q1、Q2、・・・Qn毎に表示したグラフである。このグラフは、算出部25a(図9参照)が腐食量Mfと温度Tとを算出した後に、制御部25の制御下で記憶部25bに格納される。
【0137】
図12に示すように、本実施形態では、複数のセンサ対Q1、Q2、・・・Qnを設けることで、環境中の異なる地点における温度Tと腐食量Mfとを測定でき、環境中の温度Tの分布と腐食量Mfとを把握することが可能となる。
【0138】
図13は、環境中における各センサ対Q1、Q2、・・・Qnの配置例について模式的に示す図である。
【0139】
この例では、工場等の測定エリア40内の水平面内に、各センサ対Q1、Q2、・・・Qnを行列状に配置している。図13におけるx軸とy軸はその水平面内における座標軸を表し、z軸は鉛直方向の座標軸を表す。
【0140】
図14は、各センサ対Q1、Q2、・・・Qnの測定結果をグラフ化した図であって、図12で算出した温度Tと腐食量Mfとを利用して算出部25a(図9参照)が作成するものである。
【0141】
この例では、図13のセンサ対Q1、Q2、・・・Qnの各々に一つの棒グラフを対応させ、そのグラフの高さで温度を表し、グラフの色彩で腐食量を表している。なお、図14におけるx軸とy軸は、図13におけるのと同一である。
【0142】
環境中で電子機器が腐食する要因には温度と腐食ガスの濃度とがあり、温度が高く且つ腐食ガスの濃度が高いほど電子機器が腐食され易くなる。また、腐食ガスの濃度が高くても温度が低ければ電子機器の腐食は進行し難くなる。
【0143】
図14のように環境中における温度と腐食量の分布を同時に可視化すれば、環境中において腐食が進行し易い場所をユーザが簡単に見つけることができる。
【0144】
例えば、地点Aにおいては腐食量が他の場所よりも高く、地点Bにおいては他の場所よりも温度が高い。よって、ユーザは、地点Aと地点Bにおいて電子機器の腐食が進行すると判断でき、これに基づいて腐食を防止する対策を講ずることが可能となる。
【0145】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0146】
(付記1) 第1の水晶振動子の表面に第1の電極を設けてなり、前記第1の電極の腐食量を測定する第1のQCMセンサと、
前記第1のQCMセンサに近接して配置され、前記第1の水晶振動子とはカットが異なる第2の水晶振動子の表面に、前記第1の電極と同じ材料の第2の電極を設けてなる第2のQCMセンサと、
を有することを特徴とする環境測定装置。
【0147】
(付記2) 前記第1の水晶振動子のカットはATカットであり、前記第2の水晶振動子のカットはBTカットであることを特徴とする付記1に記載の環境測定装置。
【0148】
(付記3) 温度変化と前記第1の電極の腐食に起因して生じる前記第1のQCMセンサの共振周波数の第1の変化量と、温度変化と前記第2の電極の腐食に起因して生じる前記第2のQCMセンサの共振周波数の第2の変化量とに基づいて、前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサの各々が設けられる環境の温度を算出する算出部を更に有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の環境測定装置。
【0149】
(付記4) 前記算出部は、前記第1のQCMセンサの共振周波数の変化率と温度との関係を示す第1のグラフと、前記第2のQCMセンサの共振周波数の変化率と温度との関係を示す第2のグラフの値を1.497倍して得られた第3のグラフとの差とを参照して、前記第1のグラフと前記第3のグラフの値の差が(ΔfAT−1.497ΔfBT)/f0(但し、f0は基準温度における第1のQCMセンサと第2のQCMセンサの共振周波数、ΔfATは前記第1の変化量、ΔfBTは前記第2の変化量)に等しくなる温度を前記環境の前記温度として算出することを特徴とする付記3に記載の環境測定装置。
【0150】
(付記5) 前記算出部は、数値計算により、
【0151】
【数19】

(但し、α、β、γ、λは定数、T0は基準温度、ΔfATは前記第1の変化量、ΔfBTは前記第2の変化量)で表される式(19)の解Tを前記温度として求めることを特徴とする付記3に記載の環境測定装置。
【0152】
(付記6) 前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサを対にして複数設けると共に、
前記算出部が、前記環境内における前記温度の分布と、前記第1のQCMセンサで測定した前記腐食量の前記環境内における分布とを算出することを特徴とする付記3に記載の環境測定装置。
【0153】
(付記7) 前記第1の電極に接続されて前記第1の水晶振動子を支持する第1の導線と、
前記第2の電極に接続されて前記第2の水晶振動子を支持する第2の導線と、
前記第1の導線が固定される第1の支持部と、
前記第2の導線が固定される第2の支持部とを更に有し、
前記第1の支持部と前記第2の支持部とが振動吸収材を介して接着されたことを特徴とする付記1乃至付記6のいずれかに記載の環境測定装置。
【0154】
(付記8) 前記第1の水晶振動子の前記表面と、前記第2の水晶振動子の前記表面とが平行であることを特徴とする付記1乃至付記7のいずれかに記載の環境測定装置。
【0155】
(付記9) 第1の水晶振動子の表面に第1の電極を設けてなる第1のQCMセンサを用いて前記第1の電極の腐食量を測定するステップと、
温度変化と前記第1の電極の腐食に起因して生じる前記第1のQCMセンサの共振周波数の第1の変化量を測定するステップと、
前記第1のQCMセンサに近接して配置され、前記第1の水晶振動子とはカットが異なる第2の水晶振動子の表面に、前記第1の電極と同じ材料の第2の電極を設けてなる第2のQCMセンサを用いて、温度変化と前記第2の電極の腐食に起因して生じる前記第2のQCMセンサの共振周波数の第2の変化量を測定するステップと、
前記第1の変化量と前記第2の変化量とに基づいて、前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサの各々が設けられる環境の温度を算出するステップと、
を有することを特徴とする環境測定方法。
【0156】
(付記10) 前記第1の水晶振動子としてATカットの水晶振動子を使用し、前記第2の水晶振動子としてBTカットの水晶振動子を使用することを特徴とする付記9に記載の環境測定方法。
【符号の説明】
【0157】
1…第1のQCMセンサ、2…第2のQCMセンサ、3…第1の水晶振動子、4…第2の水晶振動子、5…第1の電極、6…第2の電極、7…第1の導線、8…第2の導線、10、30…環境測定装置、11…第1の支持部、13…第2の支持部、16…振動吸収材、21…第1の発振回路、22…第2の発振回路、23…第1の周波数カウンタ、24…第2の周波数カウンタ、25…制御部、25a…算出部、25b…記憶部、28…インバータ、31…切り替え装置、32…周波数カウンタ、Q1〜Qn…第1〜第nのセンサ対、R1…第1の抵抗、R2…第2の抵抗、C1…第1のキャパシタ、C2…第2のキャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水晶振動子の表面に第1の電極を設けてなり、前記第1の電極の腐食量を測定する第1のQCMセンサと、
前記第1のQCMセンサに近接して配置され、前記第1の水晶振動子とはカットが異なる第2の水晶振動子の表面に、前記第1の電極と同じ材料の第2の電極を設けてなる第2のQCMセンサと、
を有することを特徴とする環境測定装置。
【請求項2】
前記第1の水晶振動子のカットはATカットであり、前記第2の水晶振動子のカットはBTカットであることを特徴とする請求項1に記載の環境測定装置。
【請求項3】
温度変化と前記第1の電極の腐食に起因して生じる前記第1のQCMセンサの共振周波数の第1の変化量と、温度変化と前記第2の電極の腐食に起因して生じる前記第2のQCMセンサの共振周波数の第2の変化量とに基づいて、前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサの各々が設けられる環境の温度を算出する算出部を更に有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境測定装置。
【請求項4】
前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサを対にして複数設けると共に、
前記算出部が、前記環境内における前記温度の分布と、前記第1のQCMセンサで測定した前記腐食量の前記環境内における分布とを算出することを特徴とする請求項3に記載の環境測定装置。
【請求項5】
第1の水晶振動子の表面に第1の電極を設けてなる第1のQCMセンサを用いて前記第1の電極の腐食量を測定するステップと、
温度変化と前記第1の電極の腐食に起因して生じる前記第1のQCMセンサの共振周波数の第1の変化量を測定するステップと、
前記第1のQCMセンサに近接して配置され、前記第1の水晶振動子とはカットが異なる第2の水晶振動子の表面に、前記第1の電極と同じ材料の第2の電極を設けてなる第2のQCMセンサを用いて、温度変化と前記第2の電極の腐食に起因して生じる前記第2のQCMセンサの共振周波数の第2の変化量を測定するステップと、
前記第1の変化量と前記第2の変化量とに基づいて、前記第1のQCMセンサと前記第2のQCMセンサの各々が設けられる環境の温度を算出するステップと、
を有することを特徴とする環境測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−29433(P2013−29433A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166139(P2011−166139)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】