説明

環状ケトンパーオキシド配合物、改良された環状ケトンパーオキシド配合物

【課題】結晶を形成する環状ケトンパーオキシドを含む配合物の安全性及び貯蔵安定性を改善する方法を提供。
【解決手段】結晶化する環状ケトンパーオキシド、及び結晶化する環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より上の温度において環状ケトンパーオキシド配合物の中で固化する、共結晶化する化合物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ケトンパーオキシド配合物に関する。本発明は、(共)重合化及び(共)重合体変性方法においてのそのような配合物の使用にもまた関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願国際公開第98/33770号において、プリモル(Primol)(商標)352及びイソドデカンの混合物中の環状メチルエチルケトンパーオキシドの環状ケトンパーオキシド配合物が開示されている。これらの配合物は許容可能な安全性を有しているが、それらの活性酸素含有量は相対的に低い。さらに比較例A及びBにおいて、プリモル352又はイソドデカンのいずれかの中の単独の減感剤環状ケトンパーオキシド配合物は安全ではないことが示されている。
【0003】
米国特許第6,358,435号において、環状ケトンパーオキシド及び減感剤を含むパーオキシド配合物もまた開示されている。減感剤は、220〜265℃の範囲に該当する95%気化点(boil off point)を特徴とする。これらのパーオキシド配合物は、相対的に高い活性酸素含有量を有し、一般的に20℃において安全であり、貯蔵安定である。
【0004】
しかし、発明者らは、驚いたことにそのような高い活性酸素濃度を有する環状ケトンパーオキシドのこれらの配合物は、爆発に対して敏感である結晶の生成のために−10℃以下において貯蔵されたとき安全性を損ない、危険物(a hazard)であることを見出した。より具体的には、環状ケトンパーオキシド及び減感剤から基本的になる濃縮された配合物、例えば米国特許第6,358,435号の実施例において開示されている環状メチルエチルケトンパーオキシド配合物は、もし−10℃以下において貯蔵されると、結晶を形成し、該結晶は爆発をもたらす。これが安全ではないことが明白である。用語「濃縮された」は、これらの配合物が20〜95重量%の環状ケトンパーオキシド(配合物の重量に基づいて)を含み、残りは減感剤であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述された問題を克服し、−10℃以下において合理的な貯蔵期間の間、貯蔵されたとき、結晶を形成する環状ケトンパーオキシドを含む慣用の配合物の安全性及び貯蔵安定性を改善することが本発明の目的である。
【0006】
この明細書において、「安全性」及び「安全な」は、本発明の環状ケトンパーオキシド配合物が下に記載される安全試験に通ることを意味する。
【0007】
本明細書において使用される用語「貯蔵安定性」又は「貯蔵安定な」は、配合物が、−10℃の温度において合理的な貯蔵期間の間貯蔵されたとき、又は該温度における貯蔵の後、環状ケトンパーオキシドの自己加速する分解温度の下まで加熱されたとき爆発する結晶を形成しない配合物を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1以上の結晶化する環状ケトンパーオキシド、及び結晶化する環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より上の温度において環状ケトンパーオキシド配合物中で固化する、1以上の共結晶化する化合物(co-crystallizing compounds)を含み、場合により1以上の慣用の減感剤(希釈剤)を含んでいてもよい環状ケトンパーオキシド配合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、環状ケトンパーオキシド配合物は「パーオキシド配合物」又は「配合物」と呼ばれる。
【0010】
好ましくは、配合物における共結晶化する化合物は室温(20℃)より下の温度において固化し始め、その結果配合物は慣用の取り扱い温度において液体である。しかし、粘度の高い、又は固体生成物で作業することが望ましいのであれば、配合物においてより高い固化温度を有する共結晶化する化合物もまた使用され得る。
【0011】
本発明の配合物は、−10℃以下の温度において合理的な貯蔵期間の間貯蔵されたとき、又は該温度における貯蔵の後環状ケトンパーオキシドの自己加速する分解温度より下のまで加熱されたとき爆発する結晶を形成しない。該配合物中の結晶化する環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より上の温度において該配合物中で固化する共結晶化化合物が使用されるので、環状ケトンパーオキシドが結晶を形成し始める前に固化された共結晶化する化合物がすでに存在することが確実にされ、その結果配合物中において環状ケトンパーオキシド結晶だけの形成を防止する。
【0012】
典型的には、配合物が例えば20℃より下の温度まで冷却されるとき、共結晶化する化合物の粘度は始め増大し、より粘稠、好ましくはチキソトロピックになる配合物を生じる。配合物がさらに−10℃より下の温度まで冷却され、この温度において合理的な貯蔵期間の間貯蔵されるとき、配合物は非常に粘度の高いゲル状の混合物を形成するか、又は好ましくは結晶が配合物全体に形成される。
【0013】
拘束しない理論に従うと、化合物全体における分散された共結晶化する環状ケトンパーオキシド化合物の分布のために、配合物中における環状ケトンパーオキシド結晶の大きなクラスターの形成が阻止されることが提唱されている。この分布は、環状ケトンパーオキシドを共結晶化する化合物の結晶格子への取り込み、又は共結晶化する化合物の結晶格子中に存在する空隙への環状ケトンパーオキシドの分離のいずれかにより達成され得る。用語「環状ケトンパーオキシドの分離」は、慣用の配合物において形成したであろうところの環状ケトンパーオキシド結晶の平均体積より小さい体積を有する共結晶化する化合物の結晶格子の空隙に捕捉される環状ケトンパーオキシドのために使用される。用語「慣用の配合物」は、環状ケトンパーオキシド含有配合物であって、さらに慣用の減感剤を含むが、共結晶化化合物なしの配合物を記載するために使用される。環状ケトンパーオキシドの分離の場合,共結晶化化合物の結晶格子の空隙中に環状ケトンパーオキシドの小さな固体の粒子が存在し、該粒子は、純粋な環状ケトンパーオキシド又は環状ケトンパーオキシド及び減感剤の混合物であり得ることが想像される。環状ケトンパーオキシドの結晶が存在し得る個々の空隙の大きさは、これらの環状ケトンパーオキシドの結晶の爆発のリスクを許容可能なレベルまで下げて、該配合物の適切な安全性及び貯蔵安定性を確保するのに十分小さいことが期待される。この明細書において、用語「許容可能なレベル」とは、本発明の環状ケトンパーオキシド配合物が下に記載される安全性試験を通ることを意味する。
【0014】
本発明は、高い濃度の環状ケトンパーオキシドを有する配合物、例えば−10℃において飽和されている、又は過飽和されている配合物に特に適する。用語「高い濃度の環状ケトンパーオキシド」は、配合物中の環状ケトンパーオキシドの濃度が、配合物中における環状ケトンパーオキシドの飽和点により決定される最高含有量とともに20%以上であるならば使用される。これらの濃縮された配合物は高い総活性酸素含有量を有する。パーオキシド化合物の活性酸素含有量は、式:16×[パーオキシド結合の数]/[パーオキシドの分子量]×100%に従って計算される。配合物の総活性酸素濃度は組成物のすべての化合物の重量平均である。
【0015】
その結果、別の実施態様において、本発明は−30℃以下において安全であり貯蔵安定である高い総活性酸素含有量を有する配合物にもまた関する。本記載において使用される用語「高い総活性酸素含有量」は、配合物の総重量に基づいて活性酸素の少なくとも3%かつ好ましくは17%以下、より好ましくは12%以下、さらにより好ましくは10%以下、そして最も好ましくは8%以下の活性酸素を意味する。本発明の配合物の貯蔵及び輸送のために、中程度の大量容器及びタンクにおいて貯蔵され輸送される大量の場合(>1包み当たり250kg)特に、配合物を減感剤で希釈し、そうすることにより最終的な配合物の総活性酸素含有量を減らすことが必要であり得る。もし純粋な環状ケトンパーオキシドが使用されるならば、最大総活性酸素含有量が得られ得ることは当業者にとって、明白である。その場合,配合物の総活性酸素含有量は、化合物自身の活性酸素含有量に等しい。本発明の配合物は環状ケトンパーオキシドに加えて共結晶化する化合物を常に含むので、本発明の配合物の最大総活性酸素含有量は、環状ケトンパーオキシドの活性酸素含有量より常に少ない(1つだけの環状ケトンパーオキシドが配合物中に存在する場合)、又は最も高い活性酸素含有量を有する環状ケトンパーオキシドの活性酸素含有量より少ない(2以上の環状ケトンパーオキシドが配合物中に存在する場合)。高い総活性酸素含有量を有する配合物の製造は、使用されるところの反応器の効率的な使用に有利である。
【0016】
用語「結晶化する環状ケトンパーオキシド」は、該環状ケトンパーオキシドの種結晶の存在下、24時間攪拌されながらイソパラフィンと混合されたとき、−30℃以上の温度(以後「結晶化温度」ともまた呼ばれる)において結晶を形成する環状ケトンパーオキシドを命名するために使用される。
【0017】
共結晶化化合物の用語「固化」は、配合物の温度を、配合物中の共結晶化する化合物の粘度が、好ましくは粘稠なゲル状の混合物の形及び/又は配合物全体にわたる結晶の形において該共結晶化する化合物が環状ケトンパーオキシド配合物から分離する程度まで増加される点まで配合物の温度を下げる工程を呼ぶ。
【0018】
共結晶化する化合物は、好ましくは結晶化する環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より上の温度において、固体粒子の形成により配合物から分離する任意の適する化合物であることができる。好ましくは共結晶化する化合物は、環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃、最も好ましくは少なくとも20℃上である温度において分離する、又は固体粒子を形成する。
【0019】
共結晶化する化合物は、好ましくは本発明の配合物が、配合物の推奨される貯蔵温度又は配合物が例えば重合化工程において使用される取り扱い温度のいずれか最も低い温度において液体であるように選択される。
【0020】
好ましくは共結晶化する化合物はC〜C60の炭素原子を有し、場合によりヘテロ原子、例えば窒素、酸素、ハロゲン、シリコン、硫黄、及び燐を有していてもよい炭化水素化合物である。好ましくは、共結晶化する化合物として使用されるべき炭化水素は、環状及び非環状の、芳香族及び非芳香族の、置換された及び置換されていない、ヘテロ原子非含有の、炭化水素、エステル、燐酸エステル、セルロースエステル,水素化されたひまし油及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、ヘテロ原子非含有の炭化水素が選択され、さらにより好ましくは、この炭化水素は非環状であり、最も好ましくは、直鎖のヘテロ原子非含有の炭化水素が選択される。
【0021】
好ましいヘテロ原子非含有の炭化水素は、パラフィン(Paraffin(マリンクロッドベーカーB.V.(Mallinckrodt Baker B.V.)製)、ターヘル(TerHell)5205、ターヘル5413、ターヘル5803、ターヘル6206、ターヘル 4110(シューマン−サソール(Schumann−Sasol)製)、ケラワックス(Kerawax)482(BP製)、ノルパー(Norpar)15(エクソン(Exxon)製)、n−ヘキサデカン、n−エイコサン、n−エネイコサン、オクタデカン,トリシクロヘキシルメタン、及び芳香族炭化水素、例えばナフタレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、1,4−ジヒドロナフタレン、3−メチルナフタレン、ヘキサメチルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルメタン、1,2−ジフェニルメタン、9−メチルフルオレン、フェナントレン、9,10−ジヒドロフェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロフェナントレン、及びオクタヒドロアントラセン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、直鎖の炭化水素がパラフィン、ターヘル5205、ノルパー15、n−ヘキサデカン、n−エイコサン、n−エネイコサン、オクタデカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
好ましいエステル及びカーボネートは、ジシクロヘキシルフタレート、メチルパルミテート、α―ナフチルアセテート、β−ナフチルアセテート、フェニルベンゾエート、エチルジフェニルアセテート、ジメチルオキザレート、トリメチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート、メチルアセチルシリケート、ジフェニルマロネート、メチルp−ビニルベンゾエート、メチルハイドロジェンスクシネート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
好ましい燐酸エステルは、トリエチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリキシリルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、イソドデシル−ジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、塩素化燐酸エステル類、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
好ましいセルロースエステル(該セルロースエステルは、セルロース及び酸性化合物の反応生成物である)は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、フタル酸、トリメリット酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
好ましい水素化されたひまし油は市販のレオシン(Rheocin)(商標)(サドケミー(Sud-Chemie)製)、チキシン(Thixcin)S(レオックス社(RheoxInc.)製)、及びルボチックス(Luvotix)(商標)(レーマンアンドボス(Lehmann & Voss)製)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
本発明の配合物は少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、最も好ましくは少なくとも1重量%の共結晶化する化合物、かつ好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらにより好ましくは10重量%以下、さらにより好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下の共結晶化する化合物を配合物の総重量に基づいて含む。
【0027】
環状ケトンパーオキシド含有配合物が実際に本発明に従う結晶化する環状ケトンパーオキシドを含むか否か決定するために、上述されたように−30℃以上において結晶が形成されるかどうか証明するために使用されることができる試験が開発された:調査下の配合物において使用されるのと同じ重量比における環状ケトンパーオキシド及びイソパラフィンの慣用の配合物に、該純粋な環状ケトンパーオキシドの種が添加され、続いて24時間、−30℃において攪拌された。追加の結晶が形成される、及び/又は種の結晶の成長が観察されるならば、パーオキシドは、本発明に従って配合され得る、結晶化する環状ケトンパーオキシドであると考えられる。
【0028】
結晶化する環状ケトンパーオキシドは好ましくは、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルヘプチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルアミルケトン、メチルオクチルケトン、メチルノニルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、及びそれらの混合物から誘導された環状ケトンパーオキシドからなる群から選択される。より好ましくは、アセトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルヘプチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、及びそれらの混合物から誘導された環状ケトンパーオキシドが選択され、最も好ましくは環状ケトンパーオキシドはメチルエチルケトンから誘導される。
【0029】
本発明の配合物は、1以上の結晶化しない(環状)ケトンパーオキシド及び/又は本発明に従わない1以上の他のパーオキシドと一緒に1以上の結晶化する環状ケトンパーオキシドの混合物をもまた含んでいてもよい。最終配合物にとって決定的であるのは、上述の試験に付されたとき、少なくとも1の環状ケトンパーオキシドを含んでいることである。
【0030】
本発明の配合物は結晶化する環状ケトンを配合物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の結晶化する環状ケトンパーオキシドを含み、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、最も好ましくは80重量%以下の環状ケトンパーオキシドを含む。
【0031】
本発明の配合物中の減感剤は、共結晶化する化合物と同一ではない任意の適する減感剤であり得、又は1以上のそのような減感剤の混合物であることができる。
【0032】
減感剤は、直鎖及び分岐状の炭化水素溶媒、例えばイソドデカン、テトラデカン、トリデカン、イソパール(商標)M、イソドデカン、エクソール(Exxsol)(商標)D80、エクソール(商標)D100、エクソール(商標)D100S、ソルトロール(Soltrol)(商標)145、ソルトロール(商標)170、バルソール(Varsol )(商標)80、バルソール(商標)110、シェルソール(Shellsol)(商標)D100、シェルソール(商標)D70、ハルパソール(Halpasol)(商標)i235/265、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい減感剤は、イソパール(商標)M及びソルトロール(商標)170である。より少なく好ましいが、国際特許出願国際公開第93/25615号に開示されたスチレンオリゴマーの特定のフラクションを使用することもまた可能である。
【0033】
好ましくは、本発明の組成物は、配合物の総重量に基づいて少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%、かつ好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、最も好ましくは80重量%以下の減感剤を含む。減感剤及び共結晶化する化合物は使用前に混合されることができることに留意されたい。このように、共結晶化する化合物を含む特定の減感剤を購入し使用することが可能である。本発明に従う共結晶化する化合物が配合物中に存在するか否かにとって決定的であるのは、共結晶化する化合物が、環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より上の温度において最終的な環状ケトンパーオキシド配合物から、好ましくは固体粒子の形成により分離することである。
【0034】
本発明の配合物の安全性は、環状ケトンパーオキシドのいわゆる「結晶化点」を決定する試験(この目的のために特別に開発された)で評価された。特定の配合物中の環状ケトンパーオキシドの結晶化点を測定することにより、その特定の配合物中の結晶が共結晶化する化合物なしのこの環状ケトンパーオキシドの配合物中の結晶と類似の温度において形成されるか否かが確認されることができる。結晶化点は、十分に低い温度において配合物中に形成された最後の結晶が加熱すると溶解する温度として定義される。
【0035】
配合物中の環状ケトンパーオキシドの結晶化点は、慣用の配合物及び本発明の配合物の別々のバッチを所定の初期温度において貯蔵することにより測定されることができる。慣用の配合物の場合、結晶化点の測定は以下の通りである:最初に配合物は所定の温度Tまで冷却される。Tにおいて1時間の攪拌の後、結晶が配合物中に形成されているならば、配合物はTより3℃高い温度(T)まで加熱される。約6時間攪拌した後、結晶が溶解するか否か確認するために監視される。もしすべての結晶が溶解されていないならば、配合物の温度はさらに3℃上げられ、その温度(T)においてさらに6時間攪拌される。すべての結晶が溶解される最終温度に到達するまでこれらの工程が繰り返される。この最終温度がその配合物中の環状ケトンパーオキシドの結晶化温度として定義される。しかし、もしTにおける時間の攪拌後結晶が形成されないならば、非常に少量(配合物中の環状ケトンパーオキシドの量に基づいて0.05%以下)の純粋な環状ケトンパーオキシドの種が配合物に添加される(これはシーディングと呼ばれる)。種の添加後、配合物は24時間攪拌され、その後再び結晶の存在のために配合物がチェックされる。もし結晶が形成されていないならば、配合物の温度は10℃下げられ(T−10℃)、再びシーディングされる。この温度低下の後結晶が形成されるならば、すべての結晶が溶解されるまで上述された手順に従ってその温度は3℃間隔で上げられる。しかし、結晶が形成されないならば、配合物の温度はさらに10℃下げられ(T−20℃)、さらに少量の種が配合物に添加される。該手順の工程が、その配合物中の環状ケトンパーオキシドの結晶化点が決定されるまで繰り返される。
【0036】
共結晶化化合物を含む配合物の場合、環状ケトンパーオキシドの結晶が慣用の配合物で形成されるところの温度に等しいが、好ましくはより低い初期温度(T’)が選択される。
【0037】
配合物は次にシーディングされ、少なくとも2日間T’において貯蔵される。
【0038】
次に、結晶が存在するか否か決定するのに配合物が十分透明である程度に、固化された共結晶化化合物が再溶解するまで、配合物の温度はT’まで上げられる
【0039】
もし環状ケトンパーオキシドの結晶がT’において検出されるならば、共結晶化する化合物を含む配合物はT’において安全であり貯蔵安定であるとはみなされない。しかしT’において環状ケトンパーオキシドの結晶が検出されないならば、共結晶化する化合物を含む配合物は安全でありT’において安全であり貯蔵安定であるとみなされる、ただし配合物が下に記載される安全性試験:
− 爆発試験
− ケーネン試験(所定の閉じ込め(confinement)下での加熱)
− オランダ又は米国圧力容器試験(所定の閉じ込め下での加熱)
− 燃焼試験(燃焼)、及び
− 時間圧力試験(燃焼)
をもまた通るならばである。
これらの試験を通ることは、燃焼試験、ケーネン試験、及びオランダ(又は米国)圧力容器試験における「中」又は「低」の評価、及び燃焼試験及び時間圧力試験における「ノー」又は「イエス、ゆっくり」の評価を意味する。これらの試験の総合された結果は、最終的な危険評価を決定する。本発明の配合物にとって、この最終危険評価は「中」又は「低」であるべきである。上述された慣用の安全試験及び対応する基準は、「危険物の輸送に関する国連の推奨、試験のマニュアル及び基準(United Nations Recommendations on the Transport of Dangerous Goods,Manual of Tests and Criteria)」に記録されている。これらの国連推奨に従って、該配合物は好ましくは有機パーオキシドタイプD,E,又はF、好ましくはタイプDとして分類される。
【0040】
本発明の配合物は、本発明に従う1以上の減感剤中で環状ケトンパーオキシドを生成し、続いて共結晶化する化合物を添加することにより製造され得る。又は、環状ケトンパーオキシドの製造の後環状ケトンパーオキシドが、選択された1以上の減感剤に直接溶解され、続いて共結晶化する化合物が添加されることができる。より好ましくは、環状ケトンパーオキシドは本発明に従う減感剤及び/又は共結晶化する化合物中で直接製造される。
【0041】
本発明の別の実施態様において、貯蔵及び輸送の規則に適合させるために、配合物は1以上の減感剤及び/又は1以上の共結晶化する化合物(追加的な希釈剤)でさらに希釈される。これは、中程度の大量容器又はタンクにおける大量のこれらの配合物の貯蔵及び輸送にとって、特に真実である。
【0042】
追加的な希釈剤は、パーオキシドに任意の時、すなわちそれらが貯蔵される前であれば、配合物の製造の前、間、又は後に添加され得る。好ましくは、本発明の配合物は配合物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%かつ40重量%以下、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下の追加的な希釈剤を含む。
【0043】
製造されたとき、環状ケトンパーオキシドは典型的には同一または異なる、少なくとも2のケトンパーオキシド物からなる。従って、環状ケトンパーオキシドは、2量体、3量体等の形であり得る。環状ケトンパーオキシドが製造されるとき、主に2量体及び3量体の形からなる混合物が通常形成される。さまざまな形の間の比は、主に製造中の反応条件に依存する。もし所望されるならば、該混合物は個々の環状ケトンパーオキシド化合物に分離され得る。一般的に、環状ケトンパーオキシド3量体は対応する2量体より、揮発性が低く、反応性が高い。ある組成物又は個々の化合物に対する好適性は、パーオキシドの用途における物理的性質又は必要条件、例えば貯蔵安定性、半減期対温度、蒸発性、沸点、溶解度等における相違に依存する。しかし、骨の折れる製造工程を避けるために、本発明の配合物は典型的には、3量体構造ばかりでなくいくらかの2量体をも含む。それにもかかわらず、環状ケトンパーオキシドの任意の形、例えばオリゴマー状化合物又は混合物が本発明に含まれることが理解されるべきである。
【0044】
任意的に、本発明の配合物は、添加剤が最終的な配合物の安全性及び貯蔵安定性に重大な負の効果を有しないかぎりさらにこれらの慣用の添加剤を含み得る。
【0045】
好ましい慣用の添加剤はオゾン劣化防止剤、抗酸化剤、抗分解剤、UV安定化剤、共剤(co-agent)、殺菌剤、抗静電剤、顔料、染料、カップリング剤、分散助剤、ブロー剤、潤滑剤、加工油(process oil)、離型剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される。もし配合物に添加されるならば、これらの慣用の添加剤はその一般的な量において使用される。
【0046】
そのような慣用の添加剤はそれが、例えば下に記載される重合化工程における(共)重合化において使用される少し前、配合物に添加されることが好ましい。
【0047】
本発明はラジカル(共)重合化法、ポリマー変性法、例えば制御されたレオロジーポリプロピレン法、及びパーオキシドを含む他の反応における本発明の配合物の使用にもまた関する。本発明の配合物の使用により、より少ない減感剤が種々の方法に導入され、該方法においてより高いパーオキシドの搭載量を可能にし、及び/又は改良された性質を有し、配合物において使用された減感剤から生じる、下げられたレベルの不純物を含むポリマー状生成物を生成する。これらの配合物の一部である共結晶化する化合物は(共)結晶化変性法に悪影響を与えない。これらの共結晶化する化合物は(共)重合化変性法に参加し得、好ましくは最終的なポリマー生成物に取り込まれる。
【0048】
好ましい更なる実施態様において、これらの配合物は食品に許容されるポリマーに基づく製品の製造のための(共)重合体変性法において使用される。
【0049】
本発明は以下の実施例により説明される。
【実施例】
【0050】
60分間に渡って、14.1gの過酸化水素70%水性溶液が20.8gのメチルエチルケトン、22.5gのイソパール(商標)M、0.75gのパラフィン(融点52〜54℃(マリンクロッドベーカー製)、及び19.2gの50%水性硫酸が、混合物を室温において攪拌しながら添加された。添加後、パーオキシド含有混合物はさらに60分間攪拌された。次に温度は35℃まで上昇され、反応混合物はこの温度においてさらに60分間保たれた。次に反応混合物中の有機相及び水相は放置され分離した。有機相は単離され、15.0gの4N水酸化ナトリウムの水性溶液で中和され、30分間攪拌された。
【0051】
中和された有機相は水で抽出され(2回)、1.0gの硫酸マグネシウム2水和物で感想され、濾過された。このようにして得られたパーオキシド配合物はイソパール(商標)Mで希釈され、配合物の総重量に基づいて7.5重量%の総活性酸素含有量を有する配合物を与えた。配合物中の総活性酸素含有量のうち97%は環状ケトンパーオキシドに帰属した。
【0052】
この配合物は安全であり貯蔵安定であることが見出されたが、パラフィンなしの同じ配合物は安全で貯蔵安定でないことが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の結晶化する環状ケトンパーオキシド、及び結晶化する環状ケトンパーオキシドの結晶化温度より上の温度において環状ケトンパーオキシド配合物中で固化する、1以上の共結晶化する化合物を含み、場合により1以上の慣用の減感剤を含んでいてもよい環状ケトンパーオキシド配合物。
【請求項2】
少なくとも1の環状ケトンパーオキシドが、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルヘプチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルアミルケトン、メチルオクチルケトン、メチルノニルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、及びそれらの混合物から誘導された環状ケトンパーオキシド、好ましくは、アセトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルヘプチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、及びそれらの混合物から誘導された環状ケトンパーオキシド、最も好ましくはメチルエチルケトンから誘導された環状ケトンパーオキシドからなる群から選択されるところの、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
共結晶化する化合物が、環状及び非環状の、芳香族及び非芳香族の、置換された及び置換されていない、へテロ原子非含有の、炭化水素、エステル、燐酸エステル、セルロースエステル,水素化されたひまし油及びそれらの混合物からなる群、好ましくは環状及び非環状の、芳香族及び非芳香族の、置換された及び置換されていない、へテロ原子非含有の炭化水素、好ましくはParaffin、TerHell5205、Norpar15、n−ヘキサデカン、n−エイコサン、n−エネイコサン、オクタデカン、トリシクロヘキシルメタン、ナフタレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、1,4−ジヒドロナフタレン、3−メチルナフタレン、ヘキサメチルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルメタン、1,2−ジフェニルメタン、9−メチルフルオレン、フェナントレン、9,10−ジヒドロフェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロフェナントレン、オクタヒドロアントラセン、及び最も好ましくは、直鎖の炭化水素、すなわちParaffin、TerHell5205、TerHell5413、TerHell 5803、TerHell6206、TerHell4110、Kerawax 482、Norpar15、n−ヘキサデカン、n−エイコサン、n−エネイコサン、オクタデカン、及びその他の炭化水素からなる群から選択される、請求項1又は2のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項4】
減感剤が、直鎖及び分岐状の炭化水素溶媒、すなわちテトラデカン、トリデカン、Isopar(商標)M、Exxsol(商標)D80、Exxsol(商標)D100、Exxsol(商標)D100S、Soltrol(商標)145、Soltrol(商標)170、Varsol(商標)80、Varsol(商標)110、Shellsol(商標)D100、Shellsol(商標)D70、Halpasol(商標)i235/265、その他の炭化水素溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択され、減感剤が好ましくはIsopar(商標)M及びSoltrol(商標)170から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項5】
環状ケトンパーオキシドの結晶化点より少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃、及び最も好ましくは少なくとも20℃上の温度において、好ましくは粘稠なゲル状の混合物の形において、及び/又は配合物全体にわたる結晶の形において、共結晶化する化合物が分離するところの、請求項1〜4のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項6】
配合物の総重量に基づいて活性酸素の少なくとも3%かつ好ましくは17%以下、より好ましくは12%以下、さらにより好ましくは10%以下、そして最も好ましくは8%以下の総活性酸素含有量を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項7】
配合物の推奨される貯蔵温度、又は配合物が使用されるときの取り扱い温度のいずれか最も低い温度において液体であるところの、請求項1〜6のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項8】
ラジカル(共)重合化法又は(共)重合体変性法において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の配合物を使用する方法。
【請求項9】
食品に許容されるポリマー製品の製造のための、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2011−190446(P2011−190446A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78734(P2011−78734)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【分割の表示】特願2004−557939(P2004−557939)の分割
【原出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】