説明

生きている卵を識別するための方法および装置

【課題】黒菌病卵を識別して除去できる卵キャンドリング方法および装置を提供する。
【解決手段】生きている卵を識別する方法は、キャリア内の卵に光源から光を照射するステップと、各卵を通過する光を光検出器で受け取るステップと、光検出器で受け取った光に対応する出力信号をそれぞれの各卵毎に発生させるステップと、各卵の不透明度を決定するために各卵についての出力信号を解析するステップと、第1の不透明度値よりも小さい不透明度を有する卵を除去するステップと、第1の不透明度値とは異なる第2の不透明度値よりも大きい不透明度を有する卵を除去するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2005年7月29日に出願された米国特許仮出願第60/703,845
号の利益および優先権を主張し、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、一般に卵に関し、詳細には、卵を処理するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
何らかの観察可能な品質に基づく家禽卵同士の間の選別は、周知であり、養鶏産業にお
いて長きにわたって使用される手法である。「キャンドリング」は、そのような技術にお
ける一般的な名称であり、この用語は、キャンドルからの光を使用して卵を検査するとい
う当初の手法に端を発している。卵に精通している当業者に知られるように、殆どの照明
条件下で卵殻は不透明に見えるが、これらの卵殻は、実際には、やや半透明であり、直接
光の前に置かれると、卵の中身を観察することができる。
【0004】
卵は、それが生きている胚を有する場合に「生きている」卵といわれる。卵は、それが
胚を有していない場合、「中身がない」または「無精卵」であるといわれる。より詳細に
、「中身がない」卵は、腐敗していない無精卵である。卵は、それが約1〜5日目に死ん
だ胚を有する場合、「初期に死んだ」といわれる。卵は、それが約5〜15日目に死んだ
胚を有する場合、「中期に死んだ」といわれる。卵は、それが約15〜18日目に死んだ
胚を有する場合、「後期に死んだ」といわれる。卵は、それが腐敗した無精卵の卵黄また
は腐敗した死んだ胚を含む場合(例えば、卵の殻が割れた結果として)、「腐敗している
」といわれる。
【0005】
生きている鶏へと孵化されるべき卵は、一般に、中身が無い卵、腐った卵、および、死
んでいる卵(総称して、「生きていない卵」といわれる)を識別するために胚発育中にキ
ャンドリングされる。生きていない卵は、一般に、利用可能な孵卵器の空間を増大させる
ために孵化から除去される。多くの場合、孵化前に卵内注入によって物質を生きている卵
の中へ導入することが望ましい。鳥の卵の中への様々な物質の注入は、一般に、孵化後の
死亡率を減らすため或いは孵化した鳥の成長速度を上げるために養鶏産業において採用さ
れる。卵内注入のために使用され或いは提案されてきた物質の例としては、ワクチン、抗
生物質、および、ビタミンが挙げられる。卵内処理物質および卵内注入方法は、例えば、
Sharma et al.に対して付与された米国特許第4,458,630号および
Fredericksen et al.に対して付与された米国特許第5,028,4
21号に記載されている。
【0006】
物質の卵内注入は、一般に、卵殻を穿孔して卵殻を貫通する穴を形成し(例えば、パン
チまたはドリルを使用する)、注入針を穴を通じて卵の内部へ(幾つかのケースでは、卵
殻内に収容されている鳥の胚内へ)と延ばし、針を通じて1つ以上の処理物質を注入する
ことによって行なわれる。卵内注入装置の一例は、Hebrankに対して付与された米
国特許第4,681,063号に開示されている。この装置は、卵および注入針を互いに
所定の関係を成すように配置し、複数の卵の高速自動注入を行なうように設計されている
。注入処理の部位および時間の両方の選択は、注入された卵または処理された胚の死亡率
のみならず、注入される物質の有効性にも影響を与え得る。これについては、例えば、H
ebrankに対して付与された米国特許第4,681,063号およびSheeks
et al.に対して付与された米国特許第5,158,038号を参照されたい。
【0007】
商業的な養鶏生産においては、一般に、約60%〜90%の商業用ブロイラーの卵だけ
が孵化する。孵化しない卵としては、受精しなかった卵、および、死んでしまった受精卵
が挙げられる。無精卵は、セット内の全ての卵の約5%から約25%を構成する場合があ
る。商業的な養鶏生産において直面する生きていない卵の数、卵内注入のための自動方法
の使用の増大、および、処理物質のコストの増大を背景として、生きている卵を正確に識
別し且つ生きている卵だけに選択的に注入する自動方法が望ましい。
【0008】
生きている卵と生きていない卵とを識別できることが重要な他の用途がある。これらの
用途のうちの1つは、生きている卵内でのワクチンの培養および取り込みである(「ワク
チン生成卵」といわれる)。例えば、ヒトインフルエンザワクチンの生成は、胚発育のう
ちの約11日目に種ウイルスを鶏の卵の中へ注入し(11日卵)、これにより、約2日間
にわたってウイルスを成長させることができるようにし、(一般に、卵を冷却することに
よって)胚を安楽死させ、その後、卵から羊水を得ることによって達成される。一般に、
生きていない卵の除去を容易にするため、卵は種ウイルスの注入前にキャンドリングされ
る。ワクチン生成卵は、内部に種ウイルスを注入する前に1日以上にわたってキャンドリ
ングされる場合がある。ワクチン生成における生きている卵の識別は重要である。なぜな
ら、生きていない卵内で種ワクチンが無駄にならないようにし、生きていない卵を搬送し
て処分することに伴うコストを減らすことが望ましいからである。また、死んだ胚を含む
卵は特に関心事である。なぜなら、これらは、種材料の注入時または取り込み時にワクチ
ン生成プロセスを更に汚染する可能性があるバクテリアまたは細菌性組織体によって殺さ
れてしまっている場合があるからである。汚染された卵は、胚または卵材料が腐った卵の
ような臭いがする場合があるカスタード状材料へと変化することに関連して「腐敗してい
る」と呼ばれる場合がある。
【0009】
Hebrankに対して付与された米国特許第4,955,728号および第4,91
4,672号はいずれも、赤外線検出器および卵から発せられる赤外線を使用して生きて
いる卵を無精卵から区別するキャンドリング装置について記載している。Hebrank
et al.に対して付与された米国特許第5,745,228号は、卵の両側に配置
されるように構成される光検出器と光エミッタとを含むキャンドリング装置について記載
している。光が短いバーストで各光エミッタから生成され、対応する光検出器は、その対
応する光エミッタが動作している間にだけ監視する。卵のフラットは、キャンドリング装
置を通過して移動する際に連続的に「走査される」。この場合、各検出器と光源との対は
、少なくとも隣接する、好ましくは他の全ての対が休止している間に動作する。
【0010】
従来のキャンドリング装置は、一般に、不透明度が所定の光レベルよりも小さい場合に
フラットから除去されるべき卵を識別する。この所定の光レベルにより、中身がない卵、
初期に死んだ卵、および中期に死んだ卵を識別して除去することができる。残念ながら、
「黒菌病」卵と称される幾つかの生きていない卵は、従来のキャンドリング方法によって
検出することが難しい。黒菌病卵は、殻の質の悪さ及び/又は僅かな殻のひびに関連して
いると考えられており、内部を暗い或いは黒い外観にしてしまうバクテリア汚染物を含む
と考えられている。黒菌病卵は、卵処理装置、特に、卵胚を予防接種するために利用され
る卵内注入装置およびワクチン生成で利用される卵内装置を汚染する可能性がある。した
がって、生きていないとして誤って識別される生きている卵の数を減らしつつ、黒菌病卵
を除去できるように黒菌病卵をより正確に検出する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の説明の観点から、黒菌病卵を識別して除去できる卵キャンドリング方法および装
置が提供される。本発明の幾つかの実施形態によれば、生きている卵を識別する方法は、
キャリア内の卵に光源から光を照射するステップと、各卵を通過する光を光検出器(例え
ば、フォトディテクタ、ビデオカメラなど)で受け取るステップと、光検出器で受け取っ
た光に対応する出力信号をそれぞれの各卵毎に発生させるステップと、各卵の不透明度を
決定するために各卵についての出力信号を解析するステップと、第1の不透明度値よりも
小さい不透明度を有する卵を除去するステップと、第1の不透明度値とは異なる第2の不
透明度値よりも大きい不透明度を有する卵を除去するステップとを含む。除去された卵は
、廃棄されてもよく、または、様々な目的のために更なる処理に晒されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の幾つかの実施形態によれば、生きている胚を含むとして識別された各卵(すな
わち、第1の不透明度値と第2の不透明度値との間の不透明度を有する卵)の中へ1つの
種ウイルス(または、複数の種ウイルス)が注入されてもよい。例えば、生きている胚を
含むとして識別された各卵の中へヒトインフルエンザウイルスが注入されてもよい。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態によれば、生きている卵を識別する装置は、キャリア内の卵
をキャンドリングするキャンドラを含む。キャンドラは、キャリア内の各卵に光を照明す
る光源と、各卵を通過する光源からの光を受け取り、受け取った光に対応する出力信号を
発生させる検出器と、キャンドラと通信し、各卵の不透明度を決定するために各卵につい
ての出力信号を解析するプロセッサとを含む。プロセッサは、不透明度が第1の不透明度
値よりも小さい場合に卵を生きていないと指定し、また、プロセッサは、不透明度が第1
の不透明度値とは異なる第2の不透明度値よりも大きい場合に卵を生きていないと指定す
る。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態によれば、装置は、卵(例えば、生きていない卵)をキャリ
アから除去する卵除去装置を含む。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態によれば、装置は、キャリアから除去された卵を他の卵と置
き換える充填ステーションを含む。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態によれば、装置は、生きている各卵の中へ物質(例えば、予
防接種、ウイルスなど)を注入するように構成された注入装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の幾つかの実施形態に係る、様々なタイプの卵における不透明度レベルを示すとともに、生きている卵の識別を容易にする第1の光レベルおよび第2の光レベルのカットオフを示すグラフである。
【図2】本発明の幾つかの実施形態に係る、生きている卵と生きていない卵とを識別する装置のブロック図である。
【図3】本発明の幾つかの実施形態に係る、図2のキャンドリングステーションからの典型的な光源と光検出器との対のブロック図である。
【図4】本発明の幾つかの実施形態に係る、予防接種/ウイルス供給装置および方法、並びに、材料除去装置および方法と共に使用されてもよい複合注入ヘッド卵内注入/材料除去装置の側面図である。
【図5】本発明の幾つかの実施形態に係る、複数の卵内で生きている卵を識別するための動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、以下、本発明の好ましい実施形態が示される添付図面を参照して、本発明を更
に十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、
また、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、こ
れらの実施形態は、この開示内容が十分且つ完全となり、本発明の範囲を当業者に対して
十分に伝えることができるように提供される。
【0019】
同様の参照符号は、全体にわたって同様の要素を示している。図中、特定の線、層、部
品、要素または特徴の厚さは、明確にするために誇張されている場合がある。破線は、特
に他に特定されていなければ、任意の特徴または動作を示している。本明細書中で言及さ
れた全ての公報、特許出願、特許、および、他の引用文献は、引用することにより本明細
書の一部をなすものとする。
【0020】
本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり
、本発明を限定しようとするものではない。本明細書中で使用される単数形「1つの(a
、an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に他のことを示唆していない限り
複数形を含むと意図される。また、用語「含む(comprises)」及び/又は「含
んでいる(comprising)」は、本明細書で使用される場合、述べられている特
徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は、部品の存在を特定するが、1つ以上の他
の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品及び/又はそれらの群の存在または付加を除
外しないことは言うまでもない。本明細書で使用される用語「及び/又は(and /o
r)」は、1つ以上の関連する記載された項目の任意の全ての組み合わせを含む。本明細
書で使用される「X〜Y」および「約X〜Y」などの表現は、XおよびYを含むと解釈さ
れるべきである。本明細書で使用される「約X〜Y」などの表現は、「約X〜約Y」を意
味している。本明細書で使用される「約XからYまで」などの表現は、「約Xから約Yま
で」を意味している。
【0021】
他に規定されていなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用
語を含む)は、本発明が属する当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する
。また、一般に使用される辞書で規定されるような用語は、明細書の文脈中および関連技
術におけるそれらの意味と整合性がとれる意味を有すると解釈されるべきであり、明細書
中で特に規定されていない限り理想的な或いは非常に正式な意味で解釈されるべきではな
いことは言うまでもない。周知の機能または構成は、簡単のため及び/又は明確にするた
め詳しく説明されない場合がある。
【0022】
要素が他の要素「の上にある」、「に対して取り付けられる」、「に対して接続される
」、「と結合される」、「と接触する」などとして言及される場合には、その要素が他の
要素上に直接にあり、他の要素に対して直接に取り付けられ、他の要素に対して直接に接
続され、他の要素と直接に結合され、あるいは、他の要素と直接に接触されている可能性
があり、あるいは、介在要素が存在していてもよいことは言うまでもない。これに対し、
要素が、例えば、他の要素「上に直接にあり」、「に対して直接に取り付けられ」、「に
対して直接に接続され」、「と直接に結合され」、あるいは、「と直接に接触する」とし
て言及される場合には、介在要素は存在しない。また、当業者であれば分かるように、他
の特徴に「隣接して」配置される構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重なり合う
か、或いは隣接する特徴の下側に位置する部分を有していてもよい。
【0023】
「の下側(under)」、「の下(below)」、「下側の(lower)」、「
の上側(over)」、「上側の(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明
細書では、説明を簡単にするために、図において例示されるように、1つの要素または特
徴の他の要素または特徴に対する関係を説明するために使用されている場合がある。空間
的に相対的な用語は、図面に描かれる方向に加えて、使用時または動作時の装置の様々な
方向を網羅しようとするものであることは言うまでもない。例えば、図面中の装置が反転
される場合、他の要素または特徴「の下側に(under)」、「の下に(beneat
h)」であるとして説明される要素は、結果として、他の要素または特徴「よりも上側(
over)」に方向付けられる。したがって、典型的な用語「下側(under)」は、
「上側(over)」および「下側(under)」の両方の方向を網羅し得る。装置は
、他の方向に(90度回転されるか或いは他の方向に)向けられてもよく、それに応じて
、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子が解釈されてもよい。同様に、用語「上
方」「下方」「垂直」「水平」などは、本明細書では、特に他に示唆されていない限り、
説明のためだけに使用される。
【0024】
「第1」「第2」などの用語は、本明細書では、様々な要素、部品、領域、層、及び/
又は区域を説明するために使用される場合があるが、これらの要素、部品、領域、層、及
び/又は区域がこれらの用語によって限定されるべきでないことは言うまでもない。これ
らの用語は、1つの要素、部品、領域、層、または、区域を他の要素、部品、領域、層、
または、区域から区別するためだけに使用されている。したがって、後述する「第1の」
要素、部品、領域、層、または、区域は、本発明の教示から逸脱することなく、「第2の
」要素、部品、領域、層、または、区域と称することもできる。動作(またはステップ)
の順序は、特に他に示唆されていない限り、請求項または図面に示される順序に限定され
ない。
【0025】
インキュベート11日目(11日)の卵(「11日卵」)がワクチン生成(例えば、ヒ
トインフルエンザワクチンの生成)における使用にとって望ましい。出願人は、意外にも
、幾つかの群れから生じると思われる黒菌病卵が生きている11日卵よりも不透明である
(すなわち、より低い光値を有する)ことを発見した。より具体的には、出願人は、全て
の腐った卵の約40パーセント〜80パーセント(40%〜80%)が生きている11日
卵の約99パーセントよりも低い光値を有することを見出した。したがって、出願人は、
11日卵に関して、2つのカットオフレベルが設定されるキャンドリング処理を行なった
。第1の光レベル(すなわち、第1のカットオフ)よりも小さい不透明度を有する卵が除
去されるとともに、第2の光レベル(すなわち、第2のカットオフ)よりも大きい不透明
度を有する卵が除去される。これが図1に示されている。
【0026】
図1に示される光レベル値は、ノースカロライナ州のリサーチ・トライアングル・パー
クにあるEmbrex社から市販されているVaccine Saver(商標)ワクチ
ン供給システムのS Beam光キャンドリングシステムによって生成される。これらの
光レベル値は、単位が無く、S Beam光キャンドリングシステムによって与えられる
値である。しかしながら、これらの光値は、線形であり、キャンドリング中に卵を通過す
る光の量と相互に関連があるため、2倍多い光が測定値を2倍にする。本発明の実施形態
は、卵をキャンドリングするときに光レベルまたは不透明度レベルを生成する任意のキャ
ンドリング装置を使用して実施することができる。この技術を他の線形不透明度測定シス
テムと共に使用するため、大きな一群の卵がハンドキャンドリングされて、生きている、
無精卵である、死んでいる、および腐っているとしてマークされる。これらの卵は不透明
度測定システムに通過され、卵のそれぞれのタイプ毎に光値が記録される。その後、廃棄
される生きている卵のパーセンテージを最小にし或いは留保される死んでいる卵の数を最
大にするなどの基準によって、下側および上側のカットオフが決定される。
【0027】
図1では、キャンドリング装置を介して卵を通過する光レベルが「X」軸にプロットさ
れ、キャンドリングされた卵の数が「Y」軸にプロットされている。図示のように、黒菌
病卵を含む腐った卵は、一般に、約10の不透明度レベルの上限を有する分布内に入る。
生きている卵は、一般に、約6の不透明度レベルの下限と約30の不透明度レベルの上限
とを有する分布内に入る(S Beam光キャンドリングシステムにおいて)。中間およ
び初期の死んでいる卵は、一般に、約30の不透明度レベルの下限と約80の不透明度レ
ベルの上限とを有する分布内に入る。無精卵は、一般に、約70の不透明度レベルの下限
と100を越える不透明度レベルの上限とを有する分布内に入る。したがって、図1に示
される本発明の幾つかの実施形態によれば、6未満の不透明度レベルを有する全ての卵が
除去されるとともに、30を上回る不透明度レベルを有する全ての卵が除去される。すな
わち、第1の不透明度値が6であるとともに、第2の不透明度値が30であり、これらの
不透明度値が第1および第2のカットオフをそれぞれ表わしている。
【0028】
図2は、本発明の幾つかの実施形態にしたがって第1の不透明度値(第1のカットオフ
)よりも小さい不透明度値を有する卵と、第1の不透明度値とは異なる第2の不透明度値
(第2のカットオフ)よりも大きい不透明度値を有する卵とを識別するように構成される
卵処理システム5のブロック図である。図示のシステム5は、ヒトインフルエンザワクチ
ンの生成のために利用されるとともに、キャンドリングステーション30と、卵除去ステ
ーション50と、充填ステーション60と、種ウイルス注入ステーション70とを含む。
プロセッサ40(例えば、パーソナルコンピュータまたは他の計算機器)は、キャンドリ
ングステーション30、卵除去ステーション50、充填ステーション60、および、種ウ
イルス注入ステーション70のそれぞれの動作を制御する。オペレータがプロセッサ40
および様々なステーション(30、50、60、70)とやりとりできるように構成され
るオペレータインタフェース(例えば、ディスプレイ、グラフィカルユーザインタフェー
スなど)42が設けられてもよい。
【0029】
図示の実施形態において、卵12のキャリア(例えば、エッグフラット)10は、各卵
の不透明度を決定し、フラット10内の各卵12を生きているか或いは生きていないと指
定するように構成されたキャンドリングステーション30へとコンベア22によって、搬
送される。卵のフラット(または、他のキャリア)を搬送するのに適した任意のタイプの
搬送システムが本発明の実施形態にしたがって利用されてもよい。卵搬送システムは、当
業者に周知のため、本明細書で更に説明する必要はない。
【0030】
従来から卵はエッグフラットで運ばれるが、複数の卵を経時的にキャンドリングステー
ション30および他の卵処理装置へ提示する任意の手段が使用されてもよい。実質的に任
意のタイプのエッグフラットが本発明の実施形態にしたがって使用されてもよい。フラッ
トは、任意の数の列、例えば7列の卵を収容してもよく、6列および7列が最も一般的で
ある。また、隣り合う列の卵は、「長方形」フラットの場合のように互いに平行であって
もよく、あるいは、「オフセット」フラットの場合のように互い違いの関係を成していて
もよい。適した市販のフラットの例としては、「CHICKMASTER 54」フラッ
ト、「JAMESWAY 42」フラット、および、「JAMESWAY 84」フラッ
ト(いずれの場合も、数字は、フラットによって運ばれる卵の数を示している)が挙げら
れるが、これらに限定さらない。エッグフラットは、当業者に周知のため、本明細書で更
に説明する必要はない。
【0031】
キャンドリングステーション30は、後述するように、キャリア内の各卵に光を照射す
る光源と、各卵を通過する光源からの光を受け取り且つ受け取った光に対応する出力信号
を発生させる検出器とを含む。本発明の実施形態にしたがって利用されてもよい典型的な
光キャンドリングシステムは、Hebrank et al.に対して付与された米国特
許第5,745,228号に記載されている。適した市販の光キャンドリングシステムと
しては、ノースカロライナ州のリサーチ・トライアングル・パークにあるEmbrex社
から市販されているVaccine Saver(商標)ワクチン供給システムのS B
eam光キャンドリングシステムが挙げられる。
【0032】
図3は、図2のキャンドリングステーション30からの典型的な光源32および光検出
器34の対を示している。キャンドリングステーション30は、エッグフラットなどのキ
ャリア内の卵の1つの列に対応するように複数の光源と光検出器との対を含む。各光源と
光検出器との対はそれぞれの光チャンネルを規定する。各光検出器34は検出増幅器及び
フィルタ回路35に関連付けられ、検出増幅器及びフィルタ回路35はアナログ入力ボー
ド36に関連付けられている。各光源32(例えば、赤外線光源、可視光源など)は光源
ドライバ回路33に関連付けられるとともに、光源ドライバ回路33はデジタル出力ボー
ド37に関連付けられている。当業者であれば分かるように、それぞれの対における光源
32および光検出器34は卵の両側に配置されている。図3では、光検出器34が卵の上
側にあり、光源32が卵の下側にあるが、これらの位置は重要ではなく逆にすることがで
き、あるいは、光源からの光が光検出器へ向けて卵を照射する限りにおいて、光源および
光検出器が異なる方向に配置されてもよい。
【0033】
本発明の実施形態は、光源32および光検出器34の図示された方向および形態に限定
されない。また、本発明の実施形態は、フラット内の各卵毎に対応する各光源および検出
器が設けられていることを要しない。様々な数および組み合わせの光源および検出器が制
限無く利用されてもよい。
【0034】
図示された実施形態はフォトディテクタとして光検出器を実施するが、本発明の幾つか
の実施形態によれば、光値が単独ピクセルまたはピクセル群の出力に基づくカメラが使用
されてもよい。本発明の幾つかの実施形態によれば、カメラ(例えば、ビデオカメラなど
)の使用が複数の卵の測定を可能にしてもよい。例えば、キャリア内の複数の卵が実質的
に同時にビデオカメラによってキャンドリングされてもよい。
【0035】
入力ボードおよび出力ボード36、37は、物理的に1つ以上の別個のボードであって
もよく、プロセッサ40に関連付けられる。この場合、システムの動作は、プロセッサに
関連付けられるユーザインタフェース42で監視される。動作時、各光源32から短いバ
ースト(例えば、50〜300マイクロ秒)で光が生成され、対応する光検出器34が、
その対応する光源32が動作している間、監視する。周囲の光の影響を減少させるため、
光がONでないときの光検出器34の出力が、光がONのときの読み取り値から差し引か
れる。卵のフラットは、キャンドリング装置30を通過して移動するときに連続して「走
査される」。この場合、各光検出器と光源との対は、少なくとも隣接する光検出器と光源
との対、好ましくは全ての他の光検出器と光源との対が休止している間に作動する。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態によれば、プロセッサ40は、各光検出器34からの出力信
号を解析するとともに、キャンドリングステーション30から受け取る各卵12に関する
情報を記憶する。また、プロセッサ40は、前述したように卵が第1のカットオフよりも
小さい不透明度値を有するか或いは第2のカットオフよりも大きい不透明度値を有するか
どうかを決定するように構成されている。
【0037】
本発明の実施形態は図2の構成に限定されず、また、プロセッサ40が図示された構成
要素の全てを制御する必要はない。本発明の他の実施形態によれば、図2に関して説明し
た1つ以上のステーション(30、50、60、70)が個々のプログラマブル論理制御
装置(PLC)によって制御されてもよい。データは、PLCから記憶用の中央コンピュ
ータデータベース制御装置へと往復して転送されてもよい。例えば、処理される卵に関す
る情報を記憶するために中央データベースが設けられてもよい。中央コンピュータデータ
ベース制御装置は、個々のPLCがデータを要求するとき或いはデータを送信するときに
個々のPLCに応答するように構成されていてもよい。中央コンピュータデータベースは
、それぞれのPLCの制御下で様々なステーションを直接に制御する必要はない。
【0038】
図示された装置5において、生きていないとして指定される卵12(すなわち、第1の
カットオフよりも小さい不透明度レベルを有する卵、および、第2のカットオフよりも大
きい不透明度レベルを有する卵)は、キャンドリングステーション30の下流側で卵除去
ステーション50においてフラット10から除去される。本発明の幾つかの実施形態によ
れば、プロセッサ40は、生きていないと決定された卵について選択的除去信号を発生さ
せる。生きていない卵は、フラット10から除去され、廃棄されるか、幾つかの他の目的
のために使用される。充填ステーション60は、生きていない卵を除去することによって
形成される空いた位置に生きている卵を配置するために利用されてもよい。
【0039】
卵除去ステーション50は、生きていないとして識別された卵を除去するように構成さ
れている。プロセッサ40は、キャンドリングステーション30が卵12を生きていない
と識別したかどうかに基づいて卵12に関する選択的除去信号を生成する。引用すること
により本明細書の一部をなすものとするKeromnes et al.に対して付与さ
れた米国特許第4,681,063号または米国特許第5,017,003号に開示され
るように、卵除去ステーション50が吸引型の昇降装置を使用してもよい。卵を除去する
ための様々な装置および方法が制限無く本発明の実施形態と共に使用されてもよい。卵除
去ステーション50の機能を果たし得る典型的な卵除去装置は、参照することにより全体
が本明細書に組み込まれる米国特許第6,145,668号、第6,149,375号、
第6,213,709号、および第6,224,316号に記載されている。
【0040】
卵除去ステーション50は、自動的に且つロボットのように動作することが好ましい。
あるいは、選択された卵は、ユーザインタフェース42で識別され、任意にマークされて
、手で除去されてもよい。
【0041】
図2の図示された実施形態において、種ウイルス注入ステーション70は、充填ステー
ション60の下流側に設けられており、プロセッサ40と動作可能に接続される。種ウイ
ルス注入ステーション70は、生きている胚を含むとして識別されるフラット10内の各
卵12に1つ以上の種ウイルスを注入するように構成されている。本発明の実施形態にし
たがって複数の卵に種ウイルスを注入するための典型的な装置はINOVOJECT(登
録商標)自動注入システム(ノースカロライナ州のリサーチ・トライアングル・パークに
あるEmbrex社)である。しかしながら、任意の卵内注入装置が本発明の実施形態に
係る使用に適し得る。適した注入装置は、市販のエッグキャリア装置またはエッグフラッ
トと連携して動作するように設計されていることが好ましい。
【0042】
図4は、本発明の幾つかの実施形態にしたがって複数の卵から材料を除去するためのみ
ならず、複数の卵内へ種ウイルスを卵内注入するために利用されてもよい装置80を示し
ている。図示された装置80は、固定ベース82と、ルーメンまたは針などの流体供給手
段が内部に既知の技術にしたがって配置される複数の注入供給装置またはヘッド85とを
含む。フラット10は、複数の卵12を実質的に直立の位置で保持する。フラット10は
、卵12の所定の領域に外部からアクセスできるように構成されている。各卵12は、注
入ヘッド85が装置のベース82へ向けて前進する際に各卵のそれぞれの端部が注入ヘッ
ド85のうちの対応する1つに対して適切な位置になるようにフラット10によって保持
される。しかしながら、卵内注入装置(および、卵内材料除)装置)は、様々な方向で卵
に注入(または、卵から材料を除去)してもよい。本発明の実施形態は、図示された方向
で卵に注入する(または、卵から材料を除去する)卵内注入装置及び/又は除去装置だけ
に限定されない。
【0043】
複数の注入ヘッド85はそれぞれ、対向する第1の端部および第2の端部86、87を
有する。ヘッド85は、当分野で既知のように第1の伸展位置と第2の後退位置とを有す
る。注入ヘッド85の伸展時、第1の端部86は、外側の卵殻の所定の領域と接触して当
接するように構成されている。非注入時(または、卵から材料を除去するとき)、注入ヘ
ッド85は、卵12および固定ベース82よりも上側に所定距離だけ離れて静止するよう
に引き込まれる。あるいは、ベース82は、注入ヘッド85に対して適切な位置に卵12
を配置するように縦方向にスライド可能に移動することができる。
【0044】
種ウイルスの注入後、生きている胚を含む卵1は、所定期間にわたって孵卵器60へ送
られる。この期間の終わりに、卵1はワクチン取り込みステーション70へと送られ、こ
こで、各卵1からの材料(例えば、羊水)が抽出される。本発明の実施形態にしたがって
ワクチン取り込み装置として使用できる典型的な装置はINOVOJECT(登録商標)
自動注入システムである。
【0045】
ここで、図5を参照して、複数の卵の間で生きている卵を識別する本発明の幾つかの実
施形態に係る方法について説明する。複数の11日卵のそれぞれには1つ以上の光源から
光が照射される(ブロック100)。各卵を通過する光は光検出器で受け取る(ブロック
110)。光検出器で受け取った光に対応する出力信号がそれぞれの各卵毎に発生させら
れる(ブロック120)。各卵についての出力信号は、各卵の不透明度を決定するために
解析される(ブロック130)。第1の不透明度値よりも小さい不透明度を有する卵が除
去され(ブロック140)、第1の不透明度値とは異なる第2の不透明度値よりも大きい
不透明度を有する卵が除去される(ブロック150)。除去された卵は、廃棄されてもよ
く、または、様々な目的のための更なる処理に晒されてもよい。生きている胚を含むとし
て識別された各卵の中へ物質が注入されてもよい(ブロック160)。例えば、生きてい
る胚を含むとして識別された各卵に処理物質を接種することができる。あるいは、生きて
いる胚を含むとして識別された各卵の中へヒトインフルエンザウイルスが注入されてもよ
い。
【0046】
以上は、本発明の例示であり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発
明の幾つかの典型的な実施形態を説明してきたが、当業者であれば容易に分かるように、
本発明の新規な教示および効果から大きく逸脱することなく、典型的な実施形態において
多くの変形が可能である。したがって、そのような全ての変形は、請求項に規定される本
発明の範囲内に含まれると意図される。本発明は請求項によって規定され、その場合、請
求項の等価物も請求項に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている卵を識別する方法であって、
キャリア内の卵に光源から光を照射するステップと、
各卵を通過する光を光検出器で受け取るステップと、
光検出器で受けた光に対応する出力信号をそれぞれの各卵毎に発生させるステップと、
各卵の不透明度を決定するために各卵についての前記出力信号を解析するステップと、
第1の不透明度値よりも小さい不透明度を有する卵を除去するステップと、
第1の不透明度値とは異なる第2の不透明度値よりも大きい不透明度を有する卵を除去
するステップと
を含む方法。
【請求項2】
各卵について前記光源および検出器が、前記卵のそれぞれの両側の部分に配置されてい
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各卵における前記光源および検出器が、前記卵のそれぞれの両端部に配置されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリア内の各卵がインキュベート11日目のものである、請求項1に記載の方法

【請求項5】
前記キャリアから除去されない各卵の中へウイルスを注入するステップを更に含む、請
求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスがヒトインフルエンザウイルスを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記光検出器がカメラであり、前記カメラが、前記キャリア内の複数の卵を通過する光
を同時に受け取る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生きている卵を識別する装置であって、
キャリア内の卵をキャンドリングするキャンドラを含み、
前記キャンドラが、
キャリア内の各卵に光を照射する光源と、
各卵を通過する光源からの光を受け取り、前記受け取った光に対応する出力信号を発生
させる検出器と、
前記キャンドラと通信し、各卵の不透明度を決定するために各卵についての前記出力信
号を解析するプロセッサであって、不透明度が第1の不透明度値よりも小さい場合に卵を
生きていないと指定し、不透明度が第1の不透明度値とは異なる第2の不透明度値よりも
大きい場合に卵を生きていないと指定するプロセッサと、
を含む装置。
【請求項9】
卵を前記キャリアから除去する卵除去装置を更に含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
卵除去装置が、生きていない卵を前記キャリアから除去する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記キャリアから除去された卵を他の卵と置き換える充填ステーションを更に含む、請
求項9に記載の装置。
【請求項12】
生きている各卵の中へ物質を注入するように構成された注入装置を更に含む、請求項8
に記載の装置。
【請求項13】
前記物質がウイルスを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ウイルスがヒトインフルエンザウイルスを含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記検出器がフォトディテクタを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項16】
前記検出器がビデオカメラを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項17】
前記ビデオカメラが、前記キャリア内の複数の卵を通過する光を同時に受け取る、請求
項16に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150120(P2012−150120A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45347(P2012−45347)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2008−524105(P2008−524105)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(501161398)エンブレクス,インコーポレイテッド (20)