説明

生体リズムを加味した診断治療支援システム

【課題】 一般的な医療情報に基づいて診断、処置、処方を提示するだけでなく、患者個人の情報や、生体リズム等を考慮して適切な診断並びに治療、薬剤の処方等を指示する。
【解決手段】 患者の一般的な個人医療情報と、一般的医療情報と、各病態に応じた一般的生体リズムおよび患者個人の個別的生体リズムを記録した生体リズム情報とを記憶させたデータベースを有するデータサーバ1と、医療管理プログラム及び薬剤管理プログラムが組み込まれて外部から前記データサーバ1に接続して前記各種情報を入力且つ検索可能であり、前記情報によって的確な診断および処置並びに薬剤の処方を決定するための処理手段を有する端末機2,3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師が患者の症状や検査結果を基に判断した病名や治療・処方の的確性を示唆することや薬剤師が処方された薬剤に基づいて患者の症状や病名を確認することができる診断治療支援システムに関するものであり、特に、生体リズムを加味したことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
従来、医師は、患者の症状などの診察結果や検査結果を基にして病名を特定し、治療や薬剤の処方を行うが、患者を診断するには、過去の経験や書物などを基に診断や治療、処方を行うこともある。
【0003】
そのため、診断の結果が医師の経験や知識によって異なる場合も考えられ、殊に、経験が浅い医師や異なる専門分野において診察する場合には的確な診断や治療を迅速にすることが困難である。
【0004】
そこで、例えば特開平6−83880号公報、特開2003−108665号公報、特開2004−240734号公報などに病名ごとの症状や検査結果をデータ化しておき、これらと患者の病状や電子カルテ情報とを比較・対照して病状を検索することにより、迅速で的確な診断を行うための支援システムが提示されており、経験の少ない医師や専門でない医師にとっても適正な診断が可能となっている。
【0005】
ところが、前記従来の医療支援システムは、症状や検査結果を予めデータベースに記憶させてある一般的な医療情報と比較・照合して診断結果を検索するものであり、また、薬剤の処方は病状に合った薬剤をデータにより選択し、その際に、例えば体重や服用している他の薬剤との副作用や相互作用をチェックする程度であり、患者個人に合わせた処方は医師の判断に任されており、治療や薬剤の処方についてまで患者個人に合わせた適切な指示をするものはない。
【0006】
特に、従来の薬剤の処方については、通常の生活習慣や、薬剤の吸収や消化などに都合のよいように定められている朝・昼・夕、或いは食前・食後のような服用時期が指定されている。
【0007】
しかしながら、人間は1日に1回転自転をする昼夜の変化をする地球に永年にわたって進化してきたものであり、1日を基準とした生体リズム(概日リズム、日周リズム)があり、例えば体温、血圧、各種ホルモンの分泌、自律神経などは1日の周期で繰り返される特有の時間帯によって変化し、これらの生体リズムが病状についても重要で例えば1日の内で時間によって発症率や病状に変化があり(図6参照)、また、服用についても服用した薬剤が有効に作用する時間帯や却って副作用だけが作用する時間帯などが生じる場合もある。更に、近頃は生活習慣も一律でなく深夜営業や夜更かし、朝の欠食などきわめて多様化しており、生体リズムにも個人差があり、一律ではない。
【0008】
即ち、従来の医療支援システムは一般的な医療情報に基づいて診断、処置、処方を提示するものであり、患者個人の情報や、病態毎の特徴、生体リズムなどを考慮せずになされるものであり、充分な的確性を有していない場合が多い、というものである。
【特許文献1】開昭60−134817号公報
【特許文献2】実開昭62−125708号公報
【特許文献3】特開平4−31222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、従来の医療支援システムのように一般的な医療情報に基づいて診断、処置、処方を提示するだけでなく、患者個人の情報や、生体リズム等を考慮して適切な診断並びに治療、薬剤の処方等を指示することができる診断治療支援システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明は、患者の身体的な特徴、病歴、薬歴、検査データなどの個人医療情報と、各種の身体的な症状や検査結果を基にした病名の診断、その処置、薬剤の処方を記録した一般的医療情報と、各病態に応じた一般的生体リズムおよび患者個人の個別的生体リズムを記録した生体リズム情報とを記憶させたデータベースを有するデータサーバと、医療管理プログラム及び薬剤管理プログラムが組み込まれて外部から接続した端末機を介して前記医療情報、薬剤情報、個人の電子カルテ、電子薬歴、検査データ、生体リズム情報などのデータを入力且つ検索可能であり、且つ前記端末機からの前記情報によって的確な診断および処置並びに薬剤の処方を決定するための処理手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の一般的な医療情報だけでなく、患者個人に関する情報、更には、生体リズム情報を含めて診断、治療並びに薬剤の処方を行うことが可能であり、その結果、的確な診断、早期の回復、不要な副作用などの発生の阻止を図る治療を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の好ましい実施の形態の概略を示すもので、本発明である生体リズムを加味した診断治療支援システムは、主として、例えば管理センターなどのような箇所に配置された各種の医療に関する情報を記憶させたデータベースを有するデータサーバ1と、医療機関に設置されて前記データサーバ1に例えばインターネットなどの各種の伝達手段を通じて接続される医療機関用端末機2並びに調剤薬局に設置されて前記データサーバ1に例えばインターネットのような各種の伝達手段を通じて接続される調剤薬局用端末機3とを有している。これらの医療機関用端末機2および調剤薬局用端末機3には従来の診断支援システムと同様に、前記データサーバ1に入力された病状や検査情報、個人情報の内容に応じてデータサーバ1に記録されている情報の検索・選択をしたり、医療機関用端末機2および調剤薬局用端末機3に表示させたりする処理機能を有している。
【0014】
そして、前記データサーバ1に配置されるデータベースには、図2,3及び4に示すように、例えば、診断データベース用データ、患者データベース用データ、処方データベース用データ等の各データ(情報)が記憶されている。
【0015】
特に、前記各データは、診療科マスタ、症状大分類マスタ、症状小分類マスタ、身体的所見マスタ、検査マスタ、診断名マスタ、身体的所見マスタ、処方マスタ、診断名マスタ、概日情報マスタ等、更に各マスタ毎に区分けして記録されている。
【0016】
尚、本発明で特に重要とされる生体リズムについての情報は生体マスタ、生体個人マスタ等に区分けされて各コード毎に記録される。
【0017】
そして、診察時に医師は医療機関用端末機2をデータサーバ1に接続して、患者の個人情報をデータサーバ1の患者データの患者マスタ、個人情報マスタ、個人生体マスタなどに入力する。
【0018】
この個人情報には、氏名、住所性別、身長、体重、既往症、現在または過去に服用している薬剤、アレルギーなどの体質だけでなく、個人の生体リズムなどの情報も含まれ、生体リズムの項目としては、例えば1日の食事や睡眠の時間、仕事の内容や時間、場所など生活リズムや生活環境等の個人情報を含むものである。
【0019】
尚、前記個人情報は診察の際に前記医療機関用端末機2を用いて入力してもよいが、既に電子カルテや電子薬歴が形成されている場合にはそれらの情報を利用してもよく、また、既にデータサーバ1に記録されている場合には必要な情報を追加或いは変更するだけでよい。
【0020】
そして、次に、前記医療機関用端末機2を用いて患者の症状情報、検査情報などのデータをデータサーバ1に送って前記症状大分類マスタ、症状小分類マスタ、身体的所見マスタ、検査マスタ、診断名マスタ、身体的所見マスタ、処方マスタ、診断名マスタ、概日情報マスタ等の情報毎に照合・選択をして、可能性のある診断名を有効性の確率とともに医療機関用端末機2の表示部21に表示する。その表示例を図5に示す。
【0021】
尚、本実施の形態では、必ずしも一つの診察名を定めて表示するのではなく、各種の情報から考えられる診察名を、その有効性の割合とともに全て表示し、これらの内で最も可能性の高いものを医師が選択して診断結果とするものであり、医師の診断並びに治療を支援するシステムとしての機能を有するものである。
【0022】
また、本実施の形態では、特に、従来の医療支援システムのように一般的な医療情報を基にして患者の病態や検査結果を入力して診断するだけでなく、患者の
個人的情報、更には、病態についても生体マスタにおいて一般的な生体リズム情報と個別的な生体リズム情報とを勘案して診断結果を選択することから、きわめて精度の高い診断を下すことが可能である。
【0023】
更に、本実施の形態では処方マスタにおいて従来の医療支援システムのように処方する薬剤(医薬品)の選択もすることができるが、この際、従来の医療支援システムと同様に他に服用している或いは処方する複数の薬剤との相互作用や個人的な情報を含めて副作用などについて指示することが可能であるばかりでなく、得意な個人情報や生体リズム情報を用いることにより、従来の、朝、昼。夕とか食前食後などの服用時期だけでなく、例えば、胃潰瘍であれば就寝中に薬効が生じるような就寝前に服用を指示するとか、1日の内で朝と夕とで服用量を変化させる等きめ細かい診断された病名に対する薬剤これらの服用方法などを適切に指示することができる。
【0024】
また、本実施の形態により、処理された診断及び処方データはデータサーバ1に保存されて次回の検診に備えることになり、更に、電子カルテや電子薬歴に転送してそれらのデータの更新をすることができる。このように、検診毎のデータを蓄積して医師がこれらの情報を用いて診断することにより医師の知識レベルの向上が図れるとともに誤診などのミスを防ぐことができる。
【0025】
更に、本実施の形態では、調剤薬局では調剤薬局用端末機3において、医療機関用端末機2やデータサーバ1から送られる処方情報について、その処方過程を分析して患者にとって正しい処方であるか否かを確認することが可能である。
【0026】
患者の所見及び検査値を入力することにより、他の医師が所見及び検査値等から診断した結果を参照しつつ診断をすることができるので、医師の診断の妥当性を確認しつつより正確な診断をすることができ、医療ミスを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい実施の形態におけるシステムの概略図。
【図2】図1に示した実施の形態におけるデータサーバの診断データベースのデータ関連図。
【図3】図1に示した実施の形態におけるデータサーバの患者データベースのデータ関連図。
【図4】図1に示した実施の形態におけるデータサーバの処方データベースのデータ関連図。
【図5】図1に示した実施の形態における医療機関用端末機の表示態様の一例を示す概略図。
【図6】生体リズムと病気の発生との関係図。
【符号の説明】
【0028】
1 データサーバ、 2 医療機関用端末機、 3 調剤薬局用端末機、 21 表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体的な特徴、病歴、薬歴、検査データなどの個人医療情報と、各種の身体的な症状や検査結果を基にした病名の診断、その処置、薬剤の処方を記録した一般的医療情報と、各病態に応じた一般的生体リズムおよび患者個人の個別的生体リズムを記録した生体リズム情報とを記憶させたデータベースを有するデータサーバと、医療管理プログラム及び薬剤管理プログラムが組み込まれて前記データサーバに接続可能で前記医療情報、薬剤情報、個人の電子カルテ、電子薬歴、検査データ、生体リズム情報などのデータを入力且つ検索可能であり、且つ前記情報によって的確な診断および処置並びに薬剤の処方を決定するための処理手段を有する端末機とを有することを特徴とする生体リズムを加味した診断治療支援システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−185396(P2006−185396A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381342(P2004−381342)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(596079138)東日本メディコム株式会社 (19)