説明

生体用電極

【課題】 心電計、筋電計、脳波計等の機器二使用される生体用電極において、生体電気信号の検出感度が高く、検出速度が速く、且つ電極電位の可逆性が優れた生体用電極を提供すること。
【解決手段】 導電性を有する電極基体と、該電極基体上に担持された銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物とからなることを特徴とする生体用電極。さらに該混合物が炭素、白金、酸化インジウム、酸化ルテニウム、酸化銀及び硫化銀の少なくとも1種をさらに含有する生体用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断等で屡々使用される心電計、筋電計、脳波計等の機器において、生体から発生する微弱な電気信号例えば電位を検出するための生体用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
現在医療分野で使用されている生体電気信号検出用電極としては、金属洋白からなる再利用可能な電極と、銀粉末と塩化銀粉末をペースト状にした後、導電性電極基体上に印刷により設けてなる使い捨て用電極がある。心電図や脳波図を測定する場合、生体からの電気信号は数mV程度の極めて微弱なものであり、生体からのかかる微弱な電気信号を検出するためには、電極電位が安定であり且つ電極インピーダンスが小さく、さらに、雑音電圧を発生しないこと等が要求される。具体的には、アメリカ規格協会(ANSI: American National Standards Institute)で制定されている、使い捨て用心電図検査用電極の規格(AAMI―EC12:Association for the Advancement of Medical Instrumentation EC−12)では、電極面と電極面との間に電解質ゲル又は電解質クリームを貼り又は塗り電極対とし、一対の電極が、(1)直流100μAを1分間印加し、遮断後1分後の電圧値が100mV以上のオフセット電圧を示さないこと(DCO:Direct Current Offset voltage)、(2)10Hz、100μAp−p(Ap−p:交流の(最大電流値−最小電流値))を超えない印加でのインピーダンスの平均値が、2KΩを超えないこと(ACZ:Alternating Current impedance、impedanceはZと記す)、(3)一対の電極の分極電圧の絶対値が4回の2 00Vの充放電のそれぞれの5秒後で100mVを越えないことが要求されている。これら3項目の特性を満たすためには、電極が可逆性の良い電極反応を示すことが重要であり、可逆性の良い電極反応を示す生体用電極としては、銀−塩化銀電極が最適なものとして知られている。
【0003】
銀−塩化銀電極の製造方法としては、例えば、(1)銀箔を電気化学的に処理して銀箔上に塩化銀の薄い表面層を形成させる方法(陽極酸化法)、(2)銀粒子及び塩化銀粒子の混合粉を圧縮した後、加熱焼結することによってペレット型電極を形成させる方法(焼結法)、(3)導電性基体上に銀−塩化銀ペーストを印刷又は塗布する方法(ペースト法)などが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記の如き方法で製造される銀−塩化銀電極は、塩化銀の電気抵抗が極めて高く、塩化銀含有層を厚くすると銀−塩化銀電極のインピーダンスが大きくなるため、塩化銀及び塩化銀と接する回路箇所で生体電気信号の減衰が生じ、生体電気信号の検出感度が低下したりするという欠点がある。一方、銀−塩化銀電極のインピーダンスを低くするために塩化銀含有層を薄くすると、銀−塩化銀電極電位が不安定となり、銀−塩化銀電極電位の可逆性が悪くなったり、生体電気信号の検出速度が低下するなどの問題が生ずる。
【特許文献1】特開平5−176903号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、生体電気信号の検出感度が高く、検出速度が速く、且つ電極電位の可逆性に優れた生体用電極を提供することである。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によれば、導電性を有する電極基体と、該電極基体上に担持された銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物とからなる生体用電極が提供される。
【0007】
以下、本発明の生体用電極についてさらに詳細に説明する。
【0008】
本発明における電極基体としては、例えば、銀、チタン、銅、ニッケル、コバルト、すず等及びこれらの金属を主成分とした合金、ステンレススチール、炭素繊維、導電性樹脂等の導電性支持体、または非導電性支持体(プラスチック等)上に該導電性支持体の薄層を設けたものなどを使用することができる。また、該電極基体は表面が予め粗面化されていてもよい。
【0009】
例えば、チタン又はチタン合金からなる電極基体(以下、チタン基体という)の場合、以下に述べる方法で前処理することにより表面を粗面化することができる。
【0010】
先ず、チタン基体の表面を常法に従い、例えばアルコール等による洗浄及び/又はアルカリ水溶液中での電解により脱脂した後、フッ化水素濃度が1〜20重量%、特に5〜10重量%の範囲内にあるフッ化水素酸又はフッ化水素と硝酸、硫酸などの他の酸との混酸で処理することにより、チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は、チタン基体の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。なお、粗面化を十分に行うためにブラスト処理を併用してもよい。
【0011】
このように酸処理されたチタン基体表面を濃硫酸と接触させて、該チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに該チタン基体表面に水素化チタンの薄い膜を形成する。使用する濃硫酸は一般に40〜80重量%、好ましくは50〜60重量%程度の濃度のものが適当であり、この濃硫酸には必要により、処理の安定化を図る目的で少量の硫酸ナトリウムその他の硫酸塩などを添加してもよい。
【0012】
電極基体の形状は、生体と接触し、微弱な生体電気信号を安定的にキャッチすることができるものであれば特に制約はなく、例えば、平板状、湾曲板状、有孔板状、棒状、板網状などの形状であることができる。
【0013】
本発明に従えば、上記の如き電極基体の表面に、銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物が担持せしめられる。その担持の方法としては、例えば、銀粉末、塩化銀粉末及びホウ素含有粉末の混合物をペースト化し、電極基体上に印刷又は塗布する方法(ペースト化法)、銀粉末、塩化銀粉末及びホウ素含有粉末の混合物を圧縮した後、加熱焼結することによってペレット型電極を形成させる方法(ペレット化法)などが挙げられる。
【0014】
ペースト化法は、例えば、銀粉末、塩化銀粉末及びホウ素含有粉末と有機溶媒とを混合してペーストを作製し、このペーストを電極基体上にスクリーン印刷又はローラーコーティングした後、酸素含有雰囲気中、例えば空気中で熱処理することにより行うことができる。その際の熱処理温度は通常約300〜約600℃、特に約350〜約450℃の範囲内が好適である。上記有機溶媒としては、酸素含有雰囲気中で銀粉末、塩化銀粉末及びホウ素含有粉末を一様に分散させることができるものであれば特に制約なく使用することができ、具体的には、例えば、ターピネオール、エチレングリコール、流動パラフィンなどが挙げられ、中でも、ターピネオールが好適である。なお、本明細書において、「ペースト」とは、液状の低粘度のものから粘土状の高粘度のものまでを包含するものである。
【0015】
また、ペレット化法は、例えば、銀粉末、塩化銀粉末及びホウ素含有粉末の混合物を、例えばペレット形成機を用い1〜1.5MPaの荷重下で加圧してペレットを形成した後、そのペレットを電極基体上にのせて、酸素含有雰囲気中で熱処理することにより行うことができる。その際の熱処理温度は通常約300〜約600℃、特に約350〜約450℃の範囲内が好適である。
【0016】
上記ペースト化法及びペレット化法で使用される該ホウ素含有粉末としては、酸素含有雰囲気中での熱処理により分解して酸化ホウ素を生成し且つ酸化ホウ素以外に固体の分解生成物を実質的に形成しないものが好ましく、具体的には、例えば、ホウ酸、ホウ酸アンモニウムなどが挙げられ、中でも、ホウ酸が好適である。
【0017】
また、ペースト化法及びペレット化法に使用される銀粉末、塩化銀粉末及びホウ素含有粉末の粒径は厳密に制限されるものではないが、通常1μm〜500μm、特に10μm〜100μmの範囲内の平均粒子径を有するものが好適である。
【0018】
かくして、導電性を有する電極基体上に銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物を担持させた生体用電極が得られる。該電極における電極基体上に担持される銀と塩化銀と酸化ホウ素の相対的割合は、厳密に制限されるものではなく広い範囲にわたって変えることができるが、銀、塩化銀及び酸化ホウ素の合計量を基準にして、一般に、銀は30〜50mol%、特に35〜46mol%、塩化銀は40〜59mol%、特に45〜56mol%、そして酸化ホウ素(BOとして)は1〜50mol%、特に2〜20mol%の範囲内が好適である。
【0019】
さらに、必要に応じて、銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物に、炭素、白金、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化銀及び硫化銀の少なくとも1種の導電性粉末を含ませるとができ、それによって、電極特性の安定性を向上させることができる。
【0020】
かかる導電性粉末は、前記のペーストの作製の段階又は加圧形成の前のペレット化用混合物中に混合することができる。その配合量は、銀、塩化銀及び酸化ホウ素の合計量を基準にして、通常0.1〜0.5mg、特に0.2〜0.3mgの範囲内が好適であり、また、導電性粉末は、通常1〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0021】
なお、白金、酸化イリジウム及び酸化ルテニウムは、酸素含有雰囲気中での熱処理により分解してこれらの物質を生成し且つこれらの物質以外は固体の分解生成物を形成しない前駆物質の形態、例えば、塩化白金酸、塩化イリジウム酸、塩化ルテニウムなどの形態でペースト又はペレット化用混合物中に混入することができる。
【0022】
本発明により提供される生体用電極は、生体電気信号の検出感度が高く、検出速度が速く且つ電極電位の可逆性に優れており、医療診断分野において使用される心電計、筋電計、脳波計等の機器の生体用電極として極めて有用である。
【0023】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0024】
実施例1
t=0.5mm、L=20mm及びW=10mmのチタン基体をエタノールによる洗浄により脱脂した後、フッ化水素酸(10重量%)に30秒浸漬後十分に洗浄し、次いで熱硫酸(120℃、50重量%)に60秒浸漬後十分に洗浄する工程を2回繰り返して行い、チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行い、電極基体Aを作製した。
【0025】
一方、銀粉末、塩化銀粉末及びホウ酸粉末をそれぞれ5.0g、9.0g、0.5g秤取り、Ag:AgCl:BOとして40mol%:53mol%:7mol%の割合の混合物を作製した。さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練しペーストAを作製した。
【0026】
電極基体A上に、t=0.5mm L=10mm及びW=10mmのスクリーンを用いてペーストAをスクリーン印刷し、大気中で30分乾燥後、大気中400℃で30分熱処理を行い、電極基体表面に銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物層が形成された実施例電極1を作製した。
【0027】
実施例2
銀粉末、塩化銀粉末及びホウ酸粉末をそれぞれ4.7g、9.0g、0.2g秤取り、Ag:AgCl:BOとして40mol%:57mol%:3mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練しペーストBを作製した。
【0028】
ペーストAの代わりにペーストBを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に、銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物層が形成された実施例電極2を作製した。
【0029】
実施例3
銀粉末、塩化銀粉末及びホウ酸粉末をそれぞれ4.0g、6.0g、0.8g秤取り、Ag:AgCl:BOとして40mol%:46mol%:14mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加えて十分に混練してペーストCを作製した。
【0030】
ペーストAの代わりにペーストCを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物層が形成された実施例電極3を作製した。
【0031】
実施例4
カーボンシート(東レ社製、TGP−H−060F、0.2mm、20mm、10mm、空隙率83%)を電極基体Bとして準備し、電極基体Aの代わりに電極基体Bを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物層が形成された実施例電極4を作製した。
【0032】
実施例5
92.5wt%銀−7.5wt%銅からなる銀合金を用いてt=0.5mm、L=20mm及びW=10mmの電極基体Cを作製し、電極基体Aの代わりに電極基体Cを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物層が形成された実施例電極5を作製した。
【0033】
実施例6
銀粉末、塩化銀粉末、ホウ酸粉末及びカーボン粉末(Cabot社製、バルカンXC−72R)をそれぞれ4.3g、7.5g、0.4g、0.01g秤取り、Ag:AgCl:HBO:Cとして40mol%:53mol%:6mol%:1mol%の割合の混合物を作製した。さらに、2.0gのターピネオールを加え十分に混練して、ペーストBを作製した。
【0034】
ペーストAの代わりにペーストBを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀、酸化ホウ素及び炭素の混合物層が形成された実施例電極6を作製した。
【0035】
実施例7
銀粉末、塩化銀粉末、ホウ酸粉末及び塩化白金酸六水和物をそれぞれ4.3g、7.5g、0.4g、0.6gを秤取り、さらにブタノール12.0gを加えて十分に混合し、Ag:AgCl:BO:Ptとして40mol%:53mol%:6mol%:1mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練してペーストCを作製した。
【0036】
ペーストAの代わりにペーストCを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀、酸化ホウ素及び白金の混合物層が形成された実施例電極7を作製した。
【0037】
実施例8
銀粉末、塩化銀粉末、ホウ酸粉末及び塩化イリジウム酸六水和物をそれぞれ4.3g、7.5g、0.4g、0.6gを秤取り、さらにブタノール12.0gを加えて十分に混合し、Ag:AgCl:BO:IrOとして40mol%:53mol%:6mol%:1mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練してペーストDを作製した。
【0038】
ペーストAの代わりにペーストDを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀、酸化ホウ素及び酸化イリジウムの混合物層が形成された実施例電極8を作製した。
【0039】
実施例9
銀粉末、塩化銀粉末、ホウ酸粉末及び塩化ルテニウムをそれぞれ4.3g、7.5g、0.4g、0.3gを秤取り、さらにブタノール12.0gを加えて十分に混合し、Ag:AgCl:BO:RuOとして40mol%:53mol%:6mol%:1mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練してペーストEを作製した。
【0040】
ペーストAの代わりにペーストEを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀、酸化ホウ素及び酸化ルテニウムの混合物層が形成された実施例電極9を作製した。
【0041】
実施例10
銀板(0.5mm×10mm×20mm)をエタノールで脱脂し、電極基体Dを準備した。
【0042】
銀粉末、塩化銀粉末、ホウ酸粉末及び酸化銀粉末をそれぞれ4.3g、7.5g、0.4g、0.1gを秤取り、さらにブタノール12.0gを加えて十分に混合し、Ag:AgCl:BO:AgOとして40mol%:53mol%:6mol%:1mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練してペーストFを作製した。
【0043】
ペーストAの代わりにペーストFを用い且つ電極基体Aの代わりに電極基体Dを用いる以外は実施例1と同様にして、電極基体表面に銀、塩化銀、酸化ホウ素及び酸化銀の混合物層が形成された実施例電極10を作製した。
【0044】
実施例11
銀粉末、塩化銀粉末、ホウ酸粉末及び硫化銀粉末をそれぞれ4.3g、7.5g、0.4g、0.1g秤取り、さらにブタノール12.0gを加えて十分に混合し、Ag:AgCl:BO:AgSとして40mol%:53mol%:6mol%:1mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練してペーストGを作製した。
【0045】
ペーストAの代わりにペーストGを用い且つ電極基体Aの代わりに電極基体Dを用いる以外は実施例1と同様にして実施例電極11を作製した。
【0046】
実施例12
銀粉末、塩化銀粉末及びホウ酸粉末を、それぞれ4.3g、7.5g、0.4g秤取り、十分に混合して、Ag:AgCl:BOとして40mol%:53mol%:7mol%の割合の混合物Aを得た。
【0047】
得られた混合物Aを0.3mg秤取り、ペレット成形機を用い荷重1.2MPaで1分間プレス成形し、t=0.5mm φ=0.8mmのペレットを得た。
【0048】
得られたペレット0.3gを実施例5で作製した電極基体C上にのせ、大気中500℃で30分熱処理し、電極基体表面に銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物層が形成された実施例電極12を作製した。
【0049】
比較例1
銀粉末及び塩化銀粉末をそれぞれ4.3g、7.5g秤取り十分に混合し、Ag:AgClとして43mol%:57mol%の割合の混合物を作製し、さらに2.0gのターピネオールを加え十分に混練してペーストHを作製した。
【0050】
ペーストAの代わりにペーストHを用いる以外は実施例8と同様にして、電極基体表面に銀及び塩化銀の混合物層が形成された比較例電極1を作製した。
【0051】
比較例2
銀粉末及び塩化銀粉末をそれぞれ4.3g、7.5g秤取り十分に混合し、Ag:AgClとして43mol%:57mol%の割合の混合物Bを作製した。
【0052】
混合物Aの代わりに混合物Bを用いる以外は実施例12と同様にして、電極基体表面に銀及び塩化銀の混合物層が形成された比較例電極2を作製した。
【0053】
上記実施例及び比較例で作製した実施例電極1〜12ならびに比較例電極1及び比較例電極2を各2枚用い、それぞれの電極の担持表面にケラチンクリーム(フクダ電子社製)約0.4gを一様に塗り、ケラチンクリームが内側になるように2枚の電極を貼り合わせ、電極対特性:(1)直流100μAを1分間印加し、遮断後1分後の電圧値(以下、DCOと記す)、(2)10Hzで100μAp―p印加した時のインピーダンス値(以下、ACZと記す)を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例電極1、実施例電極7、実施例電極8、実施例電極11及び比較例電極1について、100回の心電波形測定後の電極対特性を測定し、その結果を表2に示す。
【0054】
電極対特性のDCO値が低いことは、繰り返し発生する生体電気信号の検出速度が速くなること及び電極電位の可逆性に優れていることを表し、ACZ値が低いことは、検出感度が高いことを意味する。
【0055】
表1の結果より、本発明の実施例電極は、DCO及びACZが共に低く、生体電気信号の検出感度が高く、検出速度が速く且つ電極電位の可逆性に優れた生体用電極であることがわかる。また、表2の結果より、銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物に、さらに白金、酸化イリジウム又は硫化銀を加えることにより、生体用電極の電極特性の安定性が向上することがわかる。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する電極基体と、該電極基体上に担持された銀、塩化銀及び酸化ホウ素の混合物とからなることを特徴とする生体用電極。
【請求項2】
該混合物が炭素、白金、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化銀及び硫化銀の少なくとも1種をさらに含有する請求項1に記載の生体用電極。

【公開番号】特開2006−280735(P2006−280735A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106341(P2005−106341)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000198709)石福金属興業株式会社 (55)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)