説明

生前メッセージ管理・利用システム

【課題】葬儀の参列者の視点に立ち、葬儀を意義あらしめ得るようにした生前メッセージ管理・開示システムを提案する。
【解決手段】委託者3が委託した自己の肉声、又は自己の肉声と画像による生前メッセージは、受託者1においてデータベース2に保管される一方、上記受託者1が上記委託者3の死去情報を得たときには、上記データベース2から読み出され、インターネットを介して特定の葬儀社5に送信され、この特定の葬儀社5により上記委託者3の葬儀において遺族及び参列者に開示される。この結果、遺族及び参列者は、故人たる委託者3から、該委託者3の肉声による、又は肉声と画像による、死去を念頭においた生前メッセージを、恰もここに故人が存在するかの如き感覚で見聞きすることになり、委託者3のお礼と感謝の思いが遺族及び参列者に伝えられ、且つその心中に深く刻み込まれ、上記委託者3の葬儀がより意義深いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、死去時における葬儀を念頭において生前に予め収録した故人の生前メッセージを受託管理し、当該故人の葬儀に際してこれを開示するための生前メッセージ管理・開示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
葬儀は故人の最後の儀式であり、故人の遺徳を偲ぶとともに、故人が生前に世話になった方々に感謝をし、さらに故人の死を通じて遺族の気持ちを新たにする、等の重要な意義をもつものであり、厳粛な中で整然と営まれることが要求される。
【0003】
ところで、近年は、生活環境あるいは住環境の変化から、従来は故人の自宅において遺族の手で営まれることの多かった葬儀を、葬儀社の主導の下で営まれることが多くなった。そして、このような葬儀社の主導の下での葬儀においては、今日の情報化社会の目覚しい進展等を背景として、故人の遺徳を偲び、生前に世話になった方々への感謝を表す、等の観点から、様々な趣向が凝らされている。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるように、葬儀会場において、故人の生前の態様を表す画像を映し出し、参列者等に故人の生前の態様を印象付ける手法とか、特許文献2に示されるように、葬儀用ナレーションのシナリオと追悼ビデオを用意し、シナリオに基づく葬儀の進行と適時でのビデオ放映によって、厳かな整然とした葬儀を実現する手法が採用されている。
【0005】
【特許文献1】 特開2003−284636号公報
【特許文献2】 特開2004−78263号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、葬儀の最後には、参列者へのお礼と感謝を込めて、喪主等の遺族側から参列者に対して挨拶が行われる。この最後の挨拶は、本来、自分のために参列して戴いた人に対して故人がお礼と感謝の気持ちを述べるものであるが、故人であるがために叶わず、そのために故人の代弁として、喪主等が行っている。
【0007】
しかし、この最後の挨拶についても、葬儀社主導の葬儀においては、葬儀社の進行役が形式的且つ画一的な当たり障りの無い言葉で代弁することが多くなり、参列者に対するお礼と感謝の表明という「最後の挨拶」のもつ本来の意義が薄れがちになっていることは否めない。
【0008】
一方、葬儀の参列者は、故人を偲ぶ、という気持ちで参列したものであるから、葬儀において、死を全く意識していない平常時のスナップ写真とかビデオ映像を見せられるよりも、例え死に直面していない時点において予め記録されたものであっても、「葬儀において遺族とか世話になった人に対するお礼とか感謝の気持ちを伝える」という意思をもって記録されたものを見聞きした方が、より大きな感動を受け、故人の葬儀が意義あるものとなる。
【0009】
しかるに、このような観点からの提案は何等なされておらず、延いては葬儀の形骸化の一因ともなっていた。
【00010】
そこで、本願発明は、葬儀の参列者の視点に立ち、葬儀を意義あらしめ得るようにした生前メッセージ管理・開示システムを提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明では、上記課題を解決するために以下のような構成を採用している。
【0012】
本願の第1の発明では、委託者3は将来における自己の死去を念頭に、その葬儀に際して遺族及び参列者に伝えたいメッセージを自己の肉声で、又は自己の肉声と画像で記録し、これを生前メッセージとして情報伝達手段を介して受託者1に寄託し、上記受託者1は寄託された上記生前メッセージを記録情報としてデータベース2に保管し、上記受託者1は上記委託者3の死去情報を得たとき、該委託者3の生前メッセージを上記データベース2から読み出しインターネットを介して特定の葬儀社5に送信し、上記特定の葬儀社5は上記受託者1から送信された生前メッセージを上記委託者3の葬儀において遺族及び参列者に開示することを特徴としている。
【0013】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る生前メッセージ管理・開示システムにおいて、上記受託者1は、上記委託者3から既に寄託された生前メッセージの更改又は削除の要請を受けたときには、上記データベース2に保管された生前メッセージを更改又は削除することを特徴としている。
【0014】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る生前メッセージ管理・開示システムにおいて、上記委託者3は、生前に、死後において自己の意思を代弁する代弁者4を定めてこれを上記委託者3に通知し、上記代弁者4は上記委託者3の死去時に上記死去情報、及び上記生前メッセージの開示の可否情報を上記受託者1に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
(イ)本願の第1の発明に係る生前メッセージ管理・開示システムによれば、委託者3が委託した自己の肉声、又は自己の肉声と画像による生前メッセージは、受託者1においてデータベース2に保管される一方、上記受託者1が上記委託者3の死去情報を得たときには、上記データベース2から読み出され、インターネットを介して特定の葬儀社5に送信され、この特定の葬儀社5により上記委託者3の葬儀において遺族及び参列者に開示される。
【0016】
従って、遺族及び参列者は、故人たる委託者3から、該委託者3の肉声による、又は肉声と画像による、死去を念頭においた生前メッセージを、恰もここに故人が存在するかの如き感覚で見聞きすることになり、委託者3のお礼及び感謝の思いが遺族及び参列者に感動をもって伝えられ、且つその心中に深く刻み込まれ、その結果、上記委託者3の葬儀がより意義深いものとなる。
【0017】
(ロ)本願の第2の発明に係る生前メッセージ管理・開示システムによれば、上記(イ)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記受託者1は、上記委託者3から既に寄託された生前メッセージの更改又は削除の要請を受けたときには、上記データベース2に保管された生前メッセージを更改又は削除するようにしているので、葬儀に際して遺族及び参列者に開示される生前メッセージは、死去の直近における委託者3の意思、及び声あるいは姿をより正確に反映された最新のメッセージとなり、この生前メッセージの開示による上記(a)に記載の効果がさらに促進される。
【0018】
(ハ)本願の第3の発明に係る生前メッセージ管理・開示システムによれば、上記(イ)又は(ロ)に記載の効果に加えて次のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記委託者3は、生前に、死後において自己の意思を代弁する代弁者4を定めてこれを上記委託者3に通知し、上記代弁者4は上記委託者3の死去時に上記死去情報、及び上記生前メッセージの開示の可否情報を上記受託者1に送信するようにしているので、何らかの理由によって代弁者4が生前メッセージの開示を望まないときには、生前メッセージの開示は行われず、特に上記生前メッセージに個人情報が含まれているような場合には、個人情報の保護が図られることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0020】
図1には、本願発明の実施形態に係る生前メッセージ管理・開示システムのシステムブロック図を示している。この生前メッセージ管理・開示システムはインターネットを活用したシステムであって、受託者1はデータベース2を備えサーバとして機能するものであって、ここには多数の委託者3からそれぞれの生前メッセージに関する情報aが入力される。
【0021】
上記委託者3は、生前に、将来における自己の死去を念頭におき、その葬儀に際して遺族及び参列者に伝えたいメッセージを自己の肉声で、又は自己の肉声と画像の双方で記録し、これを生前メッセージとして上記受託者1に寄託する者である。この生前メッセージの記録は、例えば、図3に示すように、データとしてCDディスク11とかフロッピーディスク12等の記録媒体に記録することで行われる。そして、ここで記録されたデータとしての生前メッセージは、インターネットを介して上記受託者1に情報aとして送信されるほかに、例えば、上記CDディスク11とかフロッピーディスク12等の記録媒体を直接郵送等によって上記受託者1に届けられる場合もある。
【0022】
なお、後者の場合には、上記受託者1において上記記録媒体から上記生前メッセージに関するデータを読み出してこれを上記データベース2に記録して保管することになる。従って、インターネットのほかに、郵送手段とか直接的な手渡し手段も、特許請求の範囲における「情報伝達手段」に該当することになる。
【0023】
なお、ここで、上記生前メッセージの内容としては、以下の通りである。即ち、上記生前メッセージは、将来における自己の葬儀に際して遺族及び参列者に伝えたいメッセージを自己の肉声で、又は自己の肉声と画像の双方で記録するものである。このため、生前メッセージとしては、例えば、葬儀の最後において行われる参列者21へのお礼と感謝の気持ちを述べる挨拶メッセージがこれに該当するが、その他に、例えば、遺族に対するお礼と感謝の気持ちを含めた要望メッセージとか、遺族を参列者21に紹介して今後の厚誼を願う嘆願メッセージ等もこれに含まれる。
【0024】
また、この生前メッセージは、固定的なものではなく、一旦、受託者1に委託していたとしても、委託者3が死去に至るまでの間においては、委託者3の意思によって何度でも必要に応じて(例えば、先の生前メッセージに不備があることが後に判明し、これを修正する場合とか、先の生前メッセージを削除して新たな内容に修正したいような場合等)追加・修正を行うことができるものである。なお、ここでの追加・修正を含む新たな生前メッセージは、上記データベース2において先の生前メッセージと書き換えられて保管・管理される。
【0025】
一方、上記委託者3は、上記受託者1に生前メッセージを寄託する際に、死後において自己の意思を代弁する代弁者4を定め、これを上記委託者3に通知しておく。なお、この代弁者4は、上記委託者3が死去した時には、情報bとして、その死去情報を上記受託者1に告知するとともに、上記生前メッセージを開示するか否かの開示可否に関する情報、及び葬儀を依頼する葬儀社5の特定に関する情報を、上記受託者1に送信する義務を有する。
【0026】
従って、上記代弁者4と上記受託者1の間には強い信頼関係が要求されるので、該代弁者4としては、例えば、受託者1の子供等の親族を選択するのが好適である。
【0027】
また、上記受託者1は、多数の葬儀社5とインターネットを介して連携しており、上記代弁者4から得た情報bに基づいて、該代弁者4が特定した葬儀社5に対して委託者3の生前メッセージに関する情報cを送信する。
【0028】
上記特定の葬儀社5は、上記情報cを受けたとき、上記委託者3の葬儀においてその生前メッセージを開示する。即ち、図4に示すように、葬儀会場において、参列者21の前に設置されたモニター15に委託者3の画像20を映し出すとともに、スピーカ16から委託者3の肉声によるメッセージを流すことで、上記委託者3の生前メッセージを開示する。
【0029】
ここで、上記説明を一部重複する部分があるが、図2を参照して、この実施形態に係る生前メッセージ管理・開示システムにおける一連の流れを具体的に説明する。
【0030】
先ず、受託者1は委託者3から生前メッセージの委託を受ける(ステップS1)。この生前メッセージを受けた受託者1は、該生前メッセージをデータベース化し(ステップS2)、これをデータベース2に保管して管理する(ステップS3)。
【0031】
データベース2に保管された生前メッセージは、代弁者4からの通知を受領するまで(即ち、委託者3が死去するまで)継続的に保管及び管理される。しかし、その間に、委託者3が既に委託した生前メッセージの内容の修正・削除等の更改を望む場合もあるため、委託者3から更改要請を受けた場合(ステップS4)には、この更改要請の内容に従って生前メッセージを更改し(ステップS5)、更改された生前メッセージを先の生前メッセージに代えて、上記データベース2において保管管理する(ステップS3)。従って、上記データベース2には、死去の直近における委託者3の意思、及び声あるいは姿がより正確に反映された最新のメッセージが保管されることになる。
【0032】
上記受託者1は、上記委託者3の死去に伴って、該委託者3の代弁者4から死去通知等の情報を受けた場合(ステップS6)には、該代弁者4が生前メッセージの開示を望んでいるか否かを確認する。ここで、代弁者4が生前メッセージの開示を望まないとの意思表示をした場合には、個人情報の保護等の観点から、速やかにデータベース2に保管している生前メッセージを削除し(ステップS10)、生前メッセージの管理及び開示に関する業務を終了する(ステップS11)。
【0033】
これに対して、代弁者4が生前メッセージの開示を望む旨の意思表示をした場合(ステップS7)には、上記委託者3から委託された生前メッセージを上記データベース2から読み出し、これを代弁者4が指定する葬儀社5に送信する(ステップS8)。
【0034】
受託者1から上記生前メッセージの送信を受けた葬儀社5では、葬儀において上記生前メッセージを遺族及び参列者21に開示する(ステップS9)。これで生前メッセージの管理及び開示に関する業務を終了する(ステップS11)。
【0035】
このように、上記委託者3の葬儀において上記生前メッセージが遺族及び参列者に開示されると、葬儀会場における遺族及び参列者21は、故人たる委託者3から、該委託者3の肉声による、又は肉声と画像による、死去を念頭においた生前メッセージを、恰もここに故人が存在するかの如き感覚で見聞きすることになる。この結果、遺族及び参列者21には、上記委託者3のお礼と感謝の思いが感動をもって伝えられ、その心中に深く刻み込まれて長く心に残ることとなり、上記委託者3の葬儀がより意義深いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明の実施形態に係る生前メッセージ管理・開示システムのシステムブロック図である。
【図2】生前メッセージ管理・開示システムのフローシートである。
【図3】生前メッセージの委託管理形態の説明図である。
【図4】葬儀会場における生前メッセージの開示状態説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ・・受託者
2 ・・データベース
3 ・・委託者
4 ・・受任者
5 ・・葬儀社
11 ・・CDディスク
12 ・・フロッピーディスク
15 ・・モニター
16 ・・スピーカ
21 ・・参列者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
委託者(3)は将来における自己の死去を念頭に、その葬儀に際して遺族及び参列者に伝えたいメッセージを自己の肉声で、又は自己の肉声と画像で記録し、これを生前メッセージとして情報伝達手段を介して受託者(1)に寄託し、
上記受託者(1)は寄託された上記生前メッセージを記録情報としてデータベース(2)に保管し、
上記受託者(1)は上記委託者(3)の死去情報を得たとき、該委託者(3)の生前メッセージを上記データベース(2)から読み出しインターネットを介して特定の葬儀社(5)に送信し、
上記特定の葬儀社(5)は上記受託者(1)から送信された生前メッセージを上記委託者(3)の葬儀において遺族及び参列者に開示することを特徴とする生前メッセージ管理・開示システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記受託者(1)は、上記委託者(3)から既に寄託された生前メッセージの更改又は削除の要請を受けたときには、上記データベース(2)に保管された生前メッセージを更改又は削除することを特徴とする生前メッセージ管理・開示システム。
【請求項3】
請求項1において、
上記委託者(3)は、生前に、死後において自己の意思を代弁する代弁者(4)を定めてこれを上記委託者(3)に通知し、上記代弁者(4)は上記委託者(3)の死去時に上記死去情報、及び上記生前メッセージの開示の可否情報を上記受託者(1)に送信することを特徴とする生前メッセージ管理・開示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−32220(P2009−32220A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214155(P2007−214155)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(507217453)多和砕石工業株式会社 (8)