説明

生地押え装置

【課題】 生地押えが突出状態でも編目からの反力で押戻されないで、生地押えを大きなストロークで進退させることが可能な生地押え装置を提供する。
【解決手段】 生地押え装置10は、キャリッジ9に取付けられ、歯口4の上方から、キャリッジ9が臨む針床3とは歯口4を挟んで対向する針床から歯口4に進出する編針2の底面側に押え部材11を進退させることができる。押え部材11は、下方の先端に生地押え12aを有し、上方の基端に摺動板12bを有する。摺動板12bは、連行部材13に連行されて、上下方向の摺動変位を行う。連行部材13の摺動変位は、ベース部材14に設ける溝で案内され、ピニオン歯車15をモータ16で駆動して行われる。生地押え12aの突出状態では、押え部材11の上端の係止部11cを揺動レバー17の先端で係止してロック状態とすることができるので、編目からの反力で押戻されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機で針床に沿ってキャリッジを走行させながら編地を編成する際に、編成駆動される編針のフックに係止している編目を押える生地押え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機では、編目をフックに係止している編針が歯口に進出する際に係止されている編目が一緒に付き上がったり、引下げ張力の弱い編端の編目が浮いたりするのを防止するために、生地押え装置が用いられる(たとえば、特許文献1参照)。生地押え装置は、針床から歯口に進出して編成動作を行う編針の底面側に、歯口を挟んで対向する針床側から生地押えを突出させて、編目を押えるように作用する。
【0003】
生地押え装置は、たとえば手袋の指袋を順次編成する際のように、生地に充分な引下げ力を作用させることができないで、筒状に編成を行うような場合に、特に有効となる。ただし、指袋を編成するような場合は、編糸をいったん切断して、端糸の処理を行うための端糸処理装置を用いる(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
端糸処理装置を用いるような場合は、生地押え装置の生地押えを、進退可能にしておく必要がある。特許文献1には、生地押えを溝付カムで駆動して進退させる構成が開示されている。
【特許文献1】実開昭54−106356号公報
【特許文献2】特開2005−89933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、生地押えを溝付カムで駆動して進退させるためには、溝付カムを生地押えの進退方向とは垂直なキャリッジの走行方向に移動させる必要がある。特許文献2に示すような端糸処理装置を併用すると、生地押えは、端糸処理装置の上方から編針の底面側に進退させる必要があり、必要なストロークが大きくなり、溝付カムの移動量も大きくなる。しかしながら溝付カムを用いて端糸処理装置と併用すると、機械的に干渉しやすくなるので、生地押えを進退するストロークを大きくすることが困難となる。
【0006】
生地押えを、進退する方向に直接駆動するようにすれば、溝付カムを用いて進退方向と垂直に駆動する場合のような併用する装置の制限を受けずに進退ストロークを大きくすることができると期待される。しかしながら、生地押えが突出状態で編目を押える際の反力を常に受けることになるので、編成時に編針とともに歯口に進出する編目で生地押えが押戻されるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、生地押えが突出状態でも編目からの反力で押戻されないで、生地押えを大きなストロークで進退させることが可能な生地押え装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、横編機のキャリッジに搭載され、歯口の上方から、該キャリッジが走行する針床に対向する針床から歯口に進出する編針の底面側に突出する突出状態で、編針に係止されている生地の編目が編針とともに付き上がるのを防ぎ、歯口から退避することも可能な生地押え装置において、
先端に生地押えが形成され、対向する針床から歯口に進出する編針の底面側に、生地押えを進退させる方向への摺動変位が可能な押え部材と、
押え部材を連行させて摺動変位する連行部材と、
生地押えの突出状態で摺動変位を抑止して押え部材をロックするように、ばねで付勢され、連行部材が生地押えの突出状態から押え部材を退避させる際にはロックを解除するロック機構とを、
含むことを特徴とする生地押え装置である。
【0009】
また本発明で、前記ロック機構は、
先端で前記押え部材の上端をロックする揺動レバーと、
揺動レバーの先端付近に設けられるローラとを備え、
前記連行部材は、上端でロック部材のローラを押して、ロックを解除することを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記押え部材には、段差部が設けられ、
前記ロック機構は、先端で押え部材の段差部を係止してロックする揺動レバーを備え、
前記連行部材は、揺動レバーの先端を押え部材の段差部から離してロックを解除させる傾斜部を備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明で、前記押え部材の生地押えは、先端付近にキャリッジの走行方向に延びる長孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動源で、先端に生地押えが形成される押え部材を、対向する針床から歯口に進出する編針の底面側に進退するように駆動することができる。生地押えを編針の底面側に進出させれば、突出状態の先端で編目を押えることができる。これによって、編目をフックに係止している編針が歯口に進出する際に係止されている編目が一緒に付き上がったり、引下げ張力の弱い編端の編目が浮いたりするのを防止することができる。生地押えを退避させれば、端糸処理装置な押え部材などを作用させる際に支障が生じないようにすることができる。ロック機構は、押え部材の突出状態で摺動変位を抑止するようにロックするので、生地押えに対する編目からの反力が直接連行部材には掛らないようにすることができ、押え部材が突出状態でも押戻されないので、生地押えの作用を安定に持続させることができる。また、連行部材が押え部材を連行して、生地押えが突出状態となるように摺動変位させれば、ばねで付勢されているロック機構によるロックを自動的に開始させることができるとともに、押え部材を退避させる際には、連行部材でロックを解除させることができる。
【0013】
また本発明によれば、ロック機構に備えられる揺動レバーの先端で押え部材の上端を係止してロックすることができる。揺動レバーの先端付近にはローラを備え、連行部材がローラを押すと、揺動レバーによる押え部材のロックを解除することができる。
【0014】
また本発明によれば、ロック機構に備えられる揺動レバーの先端で押え部材に設ける段差部を係止してロックすることができる。連行部材に設ける傾斜部では、ロック部材の先端を押え部材の段差部から離して、ロックを解除することができる。
【0015】
また本発明によれば、生地押えの先端で編目を押えることができなくても、先端付近に設ける長孔を利用して、確実に編目の付き上がりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図8で本発明の実施の一形態を概略的に示す。図9〜図11で本発明の実施の他の形態を概略的に示す。各図の説明では、先行して説明している部分に対応する部分に、同一の参照符を付して、重複する説明を省略している部分がある。また、説明の便宜上、一部の構成の図示を省略している場合がある。
【0017】
図1は部分的な断面を含むように側面から見た横編機1としての構成を示す。横編機1は、編針2が多数並設される針床3を、歯口4を挟んで前後に備える。ただし、編針2を歯口4に進出させている側の針床の図示は省略する。歯口4では、中心線4aとして示す方向が上下方向となり、針床3は歯口4側が高くなるように傾斜しているけれども、針床3をほぼ水平な角度となるようにして示す。
【0018】
編針2は、先端にフック2aが設けられ、給糸口5からフック2aに供給される編糸を引込むと編目ループ6が形成される。編針2としては、スライダ2bでフック2aを開閉する複合針を示すけれども、べらでフック2aを開閉するべら針も用いられる。新たな編目を形成するためには、編目ループ6を針幹側に残してフック2aを歯口4に進出させる。フック2aに新たな編糸が供給されると、編針2は針床側に引込まれ、編目ループ6は相対的にフック2a側に移動する。スライダ2bなどでフック2aが閉じていると、編目ループ6はフック2aの外周側を通ってノックオーバし、生地7が形成される。横編機1では、紙面に垂直な、針床3の長手方向にキャリッジ9が走行し、キャリッジ9に搭載されるカム機構が編針2を駆動して編成動作を行わせる。
【0019】
本実施形態の生地押え装置10は、キャリッジ9に取付けられ、歯口4の上方から、キャリッジ9が臨む針床3とは歯口4を挟んで対向する針床から歯口4に進出する編針2の底面側に押え部材11を進退させることができる。押え部材11は、下方の先端に生地押え12aを有し、上方の基端に摺動板12bを有する。摺動板12bは、連行部材13に連行されて、図では上下方向で示す摺動変位を行う。連行部材13の摺動変位は、ベース部材14に設ける溝で案内され、ピニオン歯車15による駆動に従って行われる。ピニオン歯車15は、駆動源としてのモータ16の出力軸に取付られている。駆動源を備えているので、移動位置に対する制約が少ない状態で生地を押えることができる。
【0020】
押え部材11が下限付近まで編針2の裏面側に突出している突出状態では、押え部材11の上端を、ロック機構としての揺動レバー17の先端で係止して、摺動変位を抑止し、ロック状態とすることができる。揺動レバー17は、揺動軸17aまわりに揺動変位が可能であり、先端付近にローラ18を備え、ねじりコイルばね19で先端が図の左方に突出するように、付勢されている。生地押え装置10の前面は、カバー20で覆われている。
【0021】
横編機1では、生地押え装置10とともに、端糸処理装置21も併用される。端糸処理装置21は、編糸の把持部22や切断部23を備え、歯口4の上方に架設される案内軸24,25に沿って、キャリッジ9と平行に移動する。移動のための駆動は、可動ラック26によって行われる。可動ラック26は、ホルダ27内に収容されている。端糸処理装置21は、ホルダ27によっても支持される。ホルダ27は、保持軌道28に取付けられている。
【0022】
図2は、図1に示す生地押え装置10の構成を正面側から見て、カバー20を取外した構成として示す。押え部材11の先端の生地押え12aには、先端付近に長孔12aを設けている。連行部材13は、大略的にU字の形状を有し、連行部材13でピニオン歯車15に臨む内側の辺には、ラック13aが形成され、ピニオン歯車15の外周の歯に噛合する。連行部材13の昇降変位のための駆動は、ピニオン歯車15がラック13aに対して行うので、キャリッジ9の走行方向となる図の横方向には大きなスペースをとらなくても、ストロークが大きい駆動を行うことができる。押え部材11の摺動板12bと連行部材13との間には、圧縮コイルばね30が設けられる。圧縮コイルばね30の上端側は、押え部材11のばね保持部11bで保持される。
【0023】
連行部材13には、ラック13aが形成される辺に対向する内側の辺付近に、圧縮コイルばね30の下部を保持するばね保持部13bも形成される。押え部材11の摺動板12bは、ピニオン歯車15が設けられる内側が空いている形状を有し、下側には内部から摺動変位を案内するガイド板31が嵌め込まれている。ガイド板31は、取付けねじ31a,31bでベース部材14に取付けられている。摺動板12bの外部は、ベース部材14に設けられる溝に嵌合して、摺動変位するように案内される。
【0024】
摺動板12bの上端には、揺動レバー17の先端で係止される係止部11cを有する。揺動レバー17の先端での係止部11cの係止は、ねじりコイルばね19による付勢で保持され、ロック状態となる。連行部材13には、揺動レバー17の先端でのロック状態を、揺動レバー17の側方でローラ18を押して解除する解除部13cが設けられている。押え部材11は、生地押え12aと摺動板12bとに分けて、取付ねじ32で固定している。生地押え12aと摺動板12bとの間の空間には、軌跡33で示すように、対向する針床側から編針のフックを進出させることができる。なお、押え部材11は、生地押え12aと摺動板12bとを分けているけれども、生地押え12aと摺動板12bとを一体に形成することもできる。
【0025】
連行部材13が下降する摺動変位を行うようにピニオン歯車15で駆動されると、押え部材11のばね保持部11bの上部の当接部11dに、連行部材13の当接部13dが当接し、押え部材11も下方に連行する。連行部材13が上昇する摺動変位を行うように駆動されると、連行部材13のばね保持部13bから圧縮コイルばね30を介して、押え部材11のばね保持部11bに上昇力が伝達される。しかしながら、押え部材11の係止部11cが揺動レバー17の先端で係止されてロックされていると、圧縮コイルばね30を圧縮しつつ、連行部材13のみが上昇する。後述するように、連行部材13の解除部13cがローラ18を押圧する位置まで上昇すると、ロックが解除される。連行部材13で、押え部材11の係止部11cに対応する側の部分は、ロックが解除されるまで揺動レバー17の先端に当接しないように切り欠かれて、切欠部13eが形成されている。
【0026】
図3、図4、および図5は、押え部材11、連行部材13、および揺動レバー17に関連する構成をそれぞれ示す。各図の(a)は正面から見た構成、(b)は側面から見た構成をそれぞれ示す。図3(b)に示すように、生地押え12aは、先端付近の板厚を薄くしている。これは、図1に示すように、可動シンカ8が歯口4の中心線4aに接近していても、生地押え12aに接触しないようにするためである。図4に示すように、連行部材13の上部は、解除部13cよりも側端側に切欠部13dが設けられている。図5に示すように、揺動レバー17は、先端付近にはローラ18が設けられ、基端側の揺動軸17aを中心に揺動変位が可能である。ねじりコイルばね19は、図5(b)では時計回り方向に、揺動レバー17を、先端やローラ18が左方に突出するように付勢している。
【0027】
図6は、生地押え装置10としての主要部の構成を示す。摺動板12bおよび連行部材13は、上限付近まで上昇しており、揺動レバー17の先端は、摺動板12bの裏面側に当接しているけれども、係止はしていない。ピニオン歯車15を回転させれば、ラック13aを介して連行部材13を昇降変位させることができる。揺動レバー17による係止が行われていないので、摺動板12bも連行部材13に連行されて昇降変位する。
【0028】
図7は、揺動レバー17の先端で押え部材11の上端の係止部11cを係止している状態(a)から係止を解除した状態(d)まで、連行部材13を上昇させる際の変化を示す。図7(a)は、図1および図2に対応する生地押え12aの突出状態であり、係止部11cへの係止で摺動変位が抑制されるロック状態となっている。図7(b)は、連行部材13を少し上昇させている状態を示す。係止部11cへのロックは継続しているので、摺動板12bは上昇しないけれども、図示を省略している圧縮コイルばね30が縮み、連行部材13は上昇し、解除部13cがローラ18に接近する。図7(c)は、連行部材13の解除部13cでローラ18が押され、揺動レバー17の先端が摺動板12bの係止部11cから外れてロックが解除される状態を示す。図7(d)に示すように、さらに連行部材13を上昇させると、ロックが外れた摺動板12bも連行されて上昇する。ロック解除後は、常にローラ18が連行部材13の裏面に沿うようになり、揺動レバー17の先端は連行部材13の裏面から離れる状態を保つ。
【0029】
ロックが解除されている状態からロック状態への変化は、大略的に、(d)から(a)まで、連行部材13で押え部材11を下降するように連行して行われる。たとえば、図6のように、ローラ18が完全に連行部材13の裏面に沿っている状態から、連行部材13を下降させると、当接部13d,11dを介する連行で、押え部材11も下降し、図7(d)の状態になる。ただし、連行部材13が下降を続けると、当接部13d,11dを介する下方への駆動で、押え部材11は(c),(b),(a)で示す位置よりも下降しうる。連行部材13が(b)よりも下降すると、解除部13cによるローラ18への押圧は無くなり、揺動レバー17は時計回り方向に揺動変位して、先端は押え部材11の係止部11cの上昇を抑えるロック状態となる。
【0030】
生地押え12aの先端が編目を押えると、編目が付き上がる反力で押え部材11も上昇力を受ける。揺動レバー17による係止部11cのロックで、押え部材11の上昇を確実に防ぐことができ、連行部材13の駆動源となるモータ16には負荷がかからない。
【0031】
図8は、生地押え12aの先端付近に長孔11aを設ける効果を示す。図8(a)は、生地押え12aの先端で、編目ループ6を押えている状態を示す。ただし、長孔11a付近は板厚が薄くなっているので、図8(b)に示すように、編目ループ6を先端では押えられず、編針2の底面と生地押え12aとの間に編目ループ6が入って、編針2の進出に伴って編目ループ6も付き上がる場合があり得る。付き上がる編目ループ6でも、図8(c)に示すように長孔11aの位置では落込み、さらに付き上がることは防止可能となる。なお、長孔11aは三つに分けて設けているけれども、一つにまとめるようにしてもよい。分けると、強度を確保することができる。分ける場合、孔が無い部分で、付き上がり防止の効果が得られなくなるけれども、生地押え装置10はキャリッジ9とともに移動するので、付き上がりかけた編目ループ6をいずれかの孔に落込ませることができる。
【0032】
図9は部分的な断面を含むように側面から見た横編機41としての構成を示す。横編機41は、生地押え装置50を備える。生地押え装置50では、押え部材51の先端側に生地押え52aが設けられ、基端側に摺動板52bが設けられる。連行部材53をベース部材54に収容し、ピニオン歯車15によるラック53aへの昇降駆動で摺動板52bを連行させる構成は、基本的に図1の生地押え装置10と同様である。生地押え装置50で生地押え装置10に対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。ベース部材54では、連行部材53の下端付近で摺動板52bを係止するように、揺動レバー57の揺動軸57aを支持している。揺動レバー57は、図の時計回り方向にねじりコイルばね59で付勢されている。摺動板52bの表面側は、カバー60で覆われている。
【0033】
図10は、図9の生地押え装置50を正面側から見た構成を、カバー60を取除いた構成として示す。揺動レバー57の先端には、幅方向の右半分で押え部材51としての摺動板52bの段差部51cが作用し、幅方向の左半分で連行部材53の傾斜部53cが作用する。
【0034】
図11は、押え部材51の段差部51c、連行部材53の傾斜部53cおよび揺動レバー57の作用を示す。図11(a)は、各部を切り離した状態で示す。ただし、実際の段差部51cと傾斜部53cとは、ほぼ同じ位置に並ぶように配置されている。図11(b)は、押え部材51の段差部51cを揺動レバー57の先端で係止して摺動変位をロックしている状態を示す。図11(c)は、上昇する連行部材53の傾斜部53cで揺動レバー57の先端を反時計回り方向に揺動変位させる直前の状態を示す。この状態から、ピニオン歯車15でラック53aを駆動して、連行部材53の傾斜部53cを上昇させると、傾斜部53cの傾斜面で揺動レバー57を反時計回り方向に揺動させることができる。図11(b)のように、揺動レバー57の先端が押え部材51の段差部51cを係止してロック状態となっていても、揺動レバー57の反時計回り方向への揺動で、ロック状態を解除させることができる。
【0035】
以上で説明した生地押え装置10,50では、ピニオン歯車15で連行部材13,53のラック13a,53aを介して摺動変位するように駆動しているけれども、ベルトなどを介して摺動変位するように駆動してもよい。回転駆動ではなく、シリンダなどで、直線的に駆動してもよい。ロック機構は、ばね付勢される揺動レバー17,57を用いているので、ソレノイドなどのアクチュエータ等での駆動を必要としない。
【0036】
また、横編機1,41では、生地押え装置10,50と端糸処理装置21とを併用しているけれども、生地押え装置10,50のみを使用することも当然可能である。端糸処理装置21を使用しない場合は、押え部材11の昇降変位に必要なストロークを小さくし、キャリッジ9への取付け位置を歯口4に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の一形態としての生地押え装置10を含む横編機1の概略的な構成を、部分的な断面ととともに示す右側面図である。
【図2】図1の生地押え装置10の正面図である。
【図3】図1の押え部材11の正面図および右側面図である。
【図4】図1の連行部材13の正面図および右側面図である。
【図5】図1の揺動レバー17に関連する構成の正面図および右側面図である。
【図6】図1の生地押え装置10としての主要部の構成を示す正面図および右側面図である。
【図7】図1の揺動レバー17の先端で押え部材11の上端の係止部11cを係止している状態から係止を解除した状態まで、連行部材13を上昇させる際の変化を示す右側面図である。
【図8】図1の生地押え12aの先端付近に長孔11aを設ける効果を示す図である。
【図9】本発明の実施の他の形態としての生地押え装置50を含む横編機41の概略的な構成を、部分的な断面ととともに示す右側面図である。
【図10】図9の生地押え装置50の正面図である。
【図11】図9の押え部材51の段差部51c、連行部材53の傾斜部53cおよび揺動レバー57の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1,41 横編機
2 編針
3 針床
4 歯口
6 編目ループ
7 生地
9 キャリッジ
10,50 生地押え装置
11,51 押え部材
11c 係止部
12a,52a 生地押え
12b,52b 摺動板
13,53 連行部材
13c 解除部
15 ピニオン歯車
16 モータ
17,57 揺動レバー
18 ローラ
19,59 ねじりコイルばね
21 端糸処理装置
30 圧縮コイルばね
51c 段差部
53c 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機のキャリッジに搭載され、歯口の上方から、該キャリッジが走行する針床に対向する針床から歯口に進出する編針の底面側に突出する突出状態で、編針に係止されている生地の編目が編針とともに付き上がるのを防ぎ、歯口から退避することも可能な生地押え装置において、
先端に生地押えが形成され、対向する針床から歯口に進出する編針の底面側に、生地押えを進退させる方向への摺動変位が可能な押え部材と、
押え部材を連行させて摺動変位する連行部材と、
生地押えの突出状態で摺動変位を抑止して押え部材をロックするように、ばねで付勢され、連行部材が生地押えの突出状態から押え部材を退避させる際にはロックを解除するロック機構とを、
含むことを特徴とする生地押え装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、
先端で前記押え部材の上端をロックする揺動レバーと、
揺動レバーの先端付近に設けられるローラとを備え、
前記連行部材は、上端でロック部材のローラを押して、ロックを解除することを特徴とする請求項1記載の生地押え装置。
【請求項3】
前記押え部材には、段差部が設けられ、
前記ロック機構は、先端で押え部材の段差部を係止してロックする揺動レバーを備え、
前記連行部材は、揺動レバーの先端を押え部材の段差部から離してロックを解除させる傾斜部を備えることを特徴とする請求項1記載の生地押え装置。
【請求項4】
前記押え部材の生地押えは、先端付近にキャリッジの走行方向に延びる長孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の生地押え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−191416(P2009−191416A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35320(P2008−35320)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】