説明

生地搬送装置

【課題】生地搬送装置において、構造の複雑化やランニングコストの高騰化を招来することなく、生地パーツ等の搬送距離や搬送姿勢を正確且つ一定に保持できるようにする。
【解決手段】テーブル面4と、この上に設けられた生地押さえ部材16を具備しこれを移動可能にする第1駆動手段10と、生地押さえ部材16上に重なる状態で設けられた駆動伝達部材20を具備しこれを生地押さえ部材16と同行して移動可能にする第2駆動手段11とを有し、生地押さえ部材16は多数の通孔25が形成されたメッシュ構造であり、駆動伝達部材20は通孔25を貫通してテーブル面4側へ突出する棘状の係止突起26が多数植設された棘構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロール状態又は定尺切りされた状態で供給される生地から、縫製などで必要とされる所定形状の生地パーツを裁断により取り出す工程では、裁断後の生地パーツを次工程へ移動させる前に、一旦、積層状にストックさせることがある。
このような場合に好適に使用される生地パーツの移載装置は公知である(例えば、特許文献1等参照)。
この移載装置は、生地パーツを搬出する生地送りコンベアから、これに隣接して設けられたテーブル面へ一旦、生地パーツを乗り移らせ、このテーブル面の上方に設けた移動コンベアの下張り側ベルトで生地パーツをテーブル面へ押さえつけるようにし、そのうえで移動コンベアを駆動させることで、テーブル面上で生地パーツを摺動させるというものであった。
【0003】
なお、この移載装置では、生地送りコンベアからテーブル面への乗り移り位置の上方に対応させて吸引機構が設けられ、生地パーツの乗り移りを確実化させる工夫がなされていた。但し、この吸引機構は、吸引効率を考慮して、乗り移りに必要な最小範囲で設けられている。
【特許文献1】特開2005−68599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テーブル面上で生地パーツを摺動させるための駆動力は、移送コンベアの下張り側ベルトを生地パーツに押し付けることに依存したものであるが、移送コンベアでは吸引機構による生地吸着を行うことを理由に、空隙率の大きなメッシュ素材をベルト素材に用いていた。
しかし、このようなメッシュ素材のベルトでは、生地に対して強い摩擦力を生じさせるのが難しく、それゆえ十分な生地搬送力を得ることも難しいという一面があった。このことが原因となり、生地パーツの搬送距離にバラツキや不足が起こったり、生地パーツの搬送姿勢(搬送向き)が悪化したりする不都合が起こることになる。これらの不都合が起こると、テーブル面上の生地パーツを次工程へ移動させる作業に支障が出る。
【0005】
そのため、移送コンベアの下張り側ベルトにおいて、テーブル面に対する面圧分布を高精度に設定、調節、維持させることが重要となっているが、このため維持管理が非常に面倒となっていた。
また、生地パーツが存在しない箇所においてテーブル面と下張り側ベルトとが接触するため、移送コンベアの駆動力(ベルト駆動)に十分余裕を持たせる必要があった。更に、このテーブル面と下張り側ベルトとの接触により、ベルトの摩耗が早まったり亀裂の原因になったりすることもあった。
【0006】
なお、テーブル面をエアテーブル構造(テーブル面上にエアが吹き出す構造)にすることも考えられるが、構造の複雑化やランニングコストの高騰化という問題が生ずる点で、簡単には採用することはできなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、構造の複雑化やランニングコストの高騰化を招来することなく、生地や生地パーツの搬送距離や搬送姿勢(搬送向き)を正確且つ一定に保持できるようにした生地搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る生地搬送装置は、生地を支持するテーブル面と、このテーブル面上に設けられた生地押さえ部材を具備すると共に当該生地押さえ部材をテーブル面に沿って移動可能にして成る第1駆動手段と、この第1駆動手段の生地押さえ部材上に重なる状態で設けられた駆動伝達部材を具備すると共に当該駆動伝達部材を上記生地押さえ部材と同行して移動可能にして成る第2駆動手段とを有しており、第1駆動手段の生地押さえ部材は多数の通孔が形成されたメッシュ構造を有しており、第2駆動手段の駆動伝達部材は上記生地押さえ部材の通孔を貫通してテーブル面側へ突出する棘状の係止突起が多数植設された棘構造を有して形成されている。
【0008】
このような構成であれば、生地押さえ部材の通孔から突出する駆動伝達部材の係止突起がテーブル面上の生地(生地パーツをも含むものとして以下、「生地パーツ等」と言う)と接触し、この係止突起を介して駆動伝達部材から生地へ駆動力が伝えられることになる。
そのため、テーブル面に対する生地押さえ部材(第1駆動手段)の高さや、テーブル面に対する駆動伝達部材(第2駆動手段)の高さ、面圧分布などは、従来に比べればそれほど高精度(摩擦抵抗のバランスを保つほどのシビアな精度)に設定、調節、維持する必要はない。従って、維持管理の面倒が解消される。
【0009】
また生地パーツ等が存在しない箇所では、テーブル面に対して生地押さえ部材が接触しないか又は接触したとしても軽度の接触でよいので、第1駆動手段として駆動力に過大な余裕を持たせる必要はなく、可及的なコンパクト化が可能になる。更に、生地押さえ部材がテーブル面との接触を理由として異常な摩耗や亀裂を生じることもない。
第2駆動手段の駆動伝達部材は起毛生地により形成されており、この起毛生地の起毛部によって(駆動伝達部材としての)係止突起が形成されたものとするとよい。
なお、起毛生地以外でもよい。
【0010】
第1駆動手段は、生地押さえ部材がテーブル面上を自走可能なベルトによって形成され、第2駆動手段は、駆動伝達部材が第1駆動手段のベルト上を自走可能なベルトによって形成されたものとすればよい。
更に具体的に言えば、第1駆動手段は、生地押さえ部材が下張り側ベルトによって形成されその上方で上張り側ベルトが回帰するように架け渡されたエンドレスベルトを循環駆動するものとされ、また第2駆動手段は、駆動伝達部材が下張り側ベルトによって形成されその上方で上張り側ベルトが回帰するように架け渡されたエンドレスベルトを循環駆動するものとされて、第1駆動手段のエンドレスベルトに対してその内側に第2駆動手段のエンドレスベルトが内包状に配置されたものとすればよい。
【0011】
このようにすると構造が簡潔であり、またコンパクト化も図れる。
第1駆動手段のベルト(下張り側ベルト)に対し、第2駆動手段のベルト(下張り側ベルト)が重なりを始める位置より搬送方向の上流部で、第1駆動手段のベルトの上方から当該ベルトを介してその下方を吸引させる生地吸引部が設けられたものとすればよい。
このようにすると、生地パーツ等に対して駆動伝達部材の係止突起を確実に係止させることができるようになり、確実な搬送が可能となる。
テーブル面に隣接して生地送りコンベアが設けられており、この生地送りコンベアからテーブル面への乗り移り位置の上方又は生地送りコンベアの上方に対応させて前記生地吸引部が設けられたものとすればよい。
【0012】
このようにすると、生地送りコンベアによって搬入される生地パーツ等をテーブル面上へ乗り移らせることが確実に行えるようになる。
なお、生地送りコンベアが生地裁断装置から生地パーツ等を搬出するためのものとして使用される場合、対象とされる生地パーツ等は小さく、また生地パーツ等の輪郭部は生地送りコンベア(コンベアはフェルト製であることが多い)に対して裁断時の食い込みが生じていることもあるため、生地吸引部によって生地パーツ等を吸引することが殊更有益な手段となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る生地搬送装置では、構造の複雑化やランニングコストの高騰化を招来することなく、生地パーツ等の搬送距離や搬送姿勢(搬送向き)を正確且つ一定に保持できるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図4は、本発明に係る生地搬送装置1の一実施形態を示している。本実施形態は、生地裁断装置2で裁断された生地パーツ等Wを生地送りコンベア3によって隣接するテーブル面4上へ搬出し、その後、このテーブル面4を側方へスライドさせる(図2中の二点鎖線参照)ことで、その下方に待機させていたストック台5上へ生地パーツ等Wを積層させるシステム内にあって、生地送りコンベア3からテーブル面4上への移載装置として本発明に係る生地搬送装置1を適用した場合を示している。
【0015】
なお、生地送りコンベア3は、生地裁断装置2においてカット台(裁断対象とする生地を広げて支持する台)としての作用をも兼備するものであって、フェルトなど、切刃による食い込みを許容できる素材で形成されている。
この生地搬送装置1は、テーブル面4をベースとするもので、且つこのテーブル面4の上方に設けられた第1駆動手段10及び第2駆動手段11を有している。また、第1駆動手段10の内部に組み込まれる状態で設けられた生地吸引部12を有している。
第1駆動手段10は、前後一対のローラー14a,14bにエンドレスベルト15が架け渡されて成るもので、このエンドレスベルト15の下張り側ベルト15aがテーブル面4上に沿って移動可能なようにして設置されている。
【0016】
下張り側ベルト15aのうち、テーブル面4上にオーバーラップする部分が、第1駆動手段10としての生地押さえ部材16とされ、この生地押さえ部材16がテーブル面4に沿って移動可能となっていることになる。第1駆動手段10は、この生地押さえ部材16の上方で上張り側ベルト15bが回帰するという具合に循環駆動されるものである。
一方、第2駆動手段11も同様に、前後一対のローラー18a,18bにエンドレスベルト19が架け渡されて成るもので、このエンドレスベルト19が、第1駆動手段10のエンドレスベルト15に対してその内側に内包されるように配置されている。
【0017】
また、この第2駆動手段11におけるエンドレスベルト19の下張り側ベルト19aが、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aに対してその上に重ねられるように配置されている。
第2駆動手段11の下張り側ベルト19aにおいて、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aに重ねられる部分が、第2駆動手段11としての駆動伝達部材20とされ、この駆動伝達部材20が、第1駆動手段10の生地押さえ部材16と同速同方向へ移動可能となっていることになる。第2駆動手段11は、この駆動伝達部材20の上方で上張り側ベルト19bが回帰するという具合に循環駆動されるものである。
【0018】
なお、第1駆動手段10と第2駆動手段11とで、駆動装置を共用させるようにしてもよいし、各別に設けてもよい。
図1に示すように、第1駆動手段10のエンドレスベルト15(生地押さえ部材16を含む全体)は、多数の通孔25が形成されたメッシュ構造を有している。例えば、繊維径が0.15mm程度のナイロン糸を使って、空隙率50%程度となるように平織りした生地を採用すればよい。
これに対し、第2駆動手段11のエンドレスベルト19(駆動伝達部材20を含む全体)は、棘状の係止突起26が多数植設された棘構造を有して形成されている。係止突起26は、第1駆動手段10のエンドレスベルト15のうち、少なくとも生地押さえ部材16となる部分で通孔25内を貫通し、且つテーブル面4側へ突出することが必要とされており、そのための太さや突出長さ、突出密度、腰の強さなどが要求される。
【0019】
但し、通孔25内を貫通した後に突出する長さや、一つの通孔25内を貫通する本数などは特に限定されるものではない。このような第2駆動手段11のエンドレスベルト19には、例えば、毛足が2mm以上の起毛生地を採用することができる。この場合、起毛生地の起毛部が係止突起26に相当する。起毛生地としてはカットパイルのような織物が好適である。なお、起毛部(係止突起26)の材質としてテーブル面4を傷つけないことが求められる。
このようなことから、生地押さえ部材16の通孔25から突出する駆動伝達部材20の係止突起26がテーブル面4上の生地パーツ等Wに対して接触するようになり、この係止突起26を介して駆動伝達部材20から生地パーツ等Wへ駆動力が伝えられることになる。
【0020】
第1駆動手段10及び第2駆動手段11の各下張り側ベルト15a,19a(生地押さえ部材16及び駆動伝達部材20)がテーブル面4上を移動する方向において(図1及び図2の右から左へ向けた方向)、第1駆動手段10の上流側となる端部は生地送りコンベア3の上方へ張り出すようになっており、また第2駆動手段11の上流側となる端部は生地送りコンベア3側へ張り出さないようになっている。
これら第1駆動手段10と第2駆動手段11との張出量の差となる部分、即ち、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aに対して第2駆動手段11の下張り側ベルト19aが重なりを始める位置より、更に上流部(生地送りコンベア3からテーブル面4への乗り移り位置上方であって且つ第1駆動手段10の下張り側ベルト15aだけが単独で張り出すようになっている部分)で、上記した生地吸引部12が設けられている。
【0021】
図4に示すように、この生地吸引部12は、下面に複数の吸引孔30が設けられた吸引ボックス31に対し、エア配管32を介してブロワーや真空発生装置等による吸引装置(図示略)が接続されたものであって、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aの上方から、この下張り側ベルト15aを介してその下方を吸引させるようになっている。
なお、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aを巻出す側のローラー14bと生地吸引部12の吸引ボックス31との間に生じるスペースは、可及的に小さくなるようにするのが好ましい。
【0022】
このような構成を具備した本発明に係る生地搬送装置1では、生地送りコンベア3によって生地パーツ等Wが第1駆動手段10の先端下部まで搬入されると、まず生地吸引部12で生地パーツ等Wが吸引される(図4参照)。
従って生地パーツ等Wは、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aに張り付け状態とされながらも、この第1駆動手段10と生地送りコンベア3とで上下から挟持された状態(即ち、第1駆動手段10及び生地送りコンベア3の両方から駆動を受ける状態)となって、生地送りコンベア3による搬送状態が継続される。
【0023】
裁断後の生地パーツ等Wが、その輪郭部を生地送りコンベア3に食い込ませていることや裁断によって小さくなっていること等の状況下にあったとしても、上記のように生地吸引部12が生地パーツ等Wを吸引することで、この段階で搬送の失敗や生地パーツ等Wの搬送姿勢(搬送向き)ズレなどは起こらない。
第1駆動手段10の下張り側ベルト15aに対して第2駆動手段11の下張り側ベルト19aが重なりを始める位置まで生地パーツ等Wが搬送されると、この生地パーツ等Wに対して駆動伝達部材20の係止突起26が係止するようになる(図1参照)。
【0024】
従って生地パーツ等Wには、係止突起26を介して第2駆動手段11による駆動が伝えられるようになり、生地吸引部12から外れて吸引作用を受けない状態になっても、それまでの搬送駆動状態は継続される。これにより確実に、生地パーツ等Wは生地送りコンベア3からテーブル面4上へ乗り移るようになる。
なお、生地送りコンベア3による搬送速度を基準にして、第1駆動手段10及び第2駆動手段11の搬送速度を同速の関係にしておけば、生地パーツ等Wには搬送方向において何ら張力は生じない。従って、生地パーツ等Wは、生地送りコンベア3だけで搬送されていた状態と同じ条件を保持して、搬送を続けることになる。
【0025】
生地パーツ等Wが縮みやカール、皺などを生じ易い生地質である場合には、生地送りコンベア3による搬送速度よりも、第1駆動手段10及び第2駆動手段11の搬送速度を若干速くし、生地パーツ等Wに搬送方向の張力を生じさせるようにしてもよい。
生地パーツ等Wがテーブル面4上へと乗り移った後も、生地パーツ等Wに対して駆動伝達部材20の係止突起26が係止した状態は継続する。
そのため、生地パーツ等Wには、テーブル面4に対して生じる摩擦抵抗よりも、係止突起26による係止作用の方が強く影響し、結果として駆動伝達部材20からの駆動を得てテーブル面4上を確実に搬送される。従って当然に、このときも生地パーツ等Wの搬送距離にバラツキや不足が起こったり、生地パーツ等Wの搬送姿勢(搬送向き)が悪化したりする不都合は起らない。
【0026】
かくして、テーブル面4上の所定位置へと生地パーツ等Wが移載される。この移載が完了した時点で第1駆動手段10及び第2駆動手段11を停止させ、その後、このテーブル面4を側方へスライドさせる。このようにして、生地パーツ等Wはストック台5上で一義的な配置で積層されてゆくことになる(図2参照)。テーブル面4をスライドさせるときも、生地パーツ等Wには係止突起26による係止作用が付与されているので、生地パーツ等Wに位置ズレは生じない。
また生地パーツ等Wを駆動伝達部材20(係止突起26)から離反させ、下方へ落下させることに関し、確実性を高めるには、一例として、第1駆動手段10のエンドレスベルト15の張り具合を、第2駆動手段11のエンドレスベルト19よりも緩めに設定する方法が挙げられる。
【0027】
その他の例としては、第2駆動手段11を第1駆動手段10に対して所定タイミングで上方に持ち上げるようにし、生地押え部材16から駆動伝達部材20(係止突起26)を強制的に離反させるという方法も推奨される。
なお、テーブル面4を、元の第1駆動手段10及び第2駆動手段11下方へと戻すべくスライドさせる場合は、第1駆動手段10及び第2駆動手段11を少し上昇させ、テーブル面4と干渉しない高さに待避させておくとよい。
本発明に係る生地搬送装置1では、テーブル面4に対する生地押さえ部材16(第1駆動手段10)の高さや、テーブル面4に対する駆動伝達部材20(第2駆動手段11)の高さ、面圧分布などは、従来に比べればそれほど高精度(摩擦抵抗のバランスを保つほどのシビアな精度)に設定、調節、維持する必要はない。従って、維持管理の面倒が解消される。
【0028】
また生地パーツ等Wが存在しない箇所では、テーブル面4に対して生地押さえ部材16が接触しないか又は接触したとしても軽度の接触でよいので、第1駆動手段10として駆動力に過大な余裕を持たせる必要はなく、可及的なコンパクト化が可能になる。更に、生地押さえ部材16が、テーブル面4との接触を理由に異常な摩耗や亀裂を生じることもない。
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0029】
例えば図5に示すように、第2駆動手段11の下張り側ベルト19aに対してウエイトローラー40を載せるように設けておくと、テーブル面4に対する生地押さえ部材16(第1駆動手段10)や駆動伝達部材20(第2駆動手段11)の接圧の強弱を調整したり搬送方向で均一化させたりできるものとなり、好適である。
第1駆動手段10のエンドレスベルト15の張り具合を、第2駆動手段11のエンドレスベルト19に比べて少しだけ緩めに設定しておくと、それぞれの下張り側ベルト15a,19aが後部のローラ14a,18aに巻き取られる部分間で、第1駆動手段10の下張り側ベルト15aに小さな弛みが生じるようになる。このような弛みは、両下張り側ベルト15a,19aの重ね状態を剥離させる現象を招来することになり、生地押さえ部材16から駆動伝達部材20を積極的に離反させることに繋がる。
【0030】
すなわち、生地押さえ部材16の通孔25から駆動伝達部材20の係止突起26を確実に脱出させることができ、これによって生地パーツ等Wへの駆動伝達を確実に解除できることになる。
図6に示すように、第2駆動手段11の下張り側ベルト19aに対して剥離ローラー41を設けておき、この剥離ローラー41より搬送後方下流側に設ける第2駆動手段11の後部ローラー18bを径小のものにしたり、或いは高位に設置したりするような構造を採用することもできる。
【0031】
このようにすると、剥離ローラー41に対応する箇所で第1駆動手段10の下張り側ベルト15aから第2駆動手段11の下張り側ベルト19aを強制的に剥離させることができるようになる。すなわち、生地押さえ部材16から駆動伝達部材20を強制的に離反させることができるので、通孔25から係止突起26の脱出箇所を確立させることに繋がる。
従って、生地パーツ等Wへの駆動伝達を定位置で解除させることができる(定位置での搬送停止ができる)ものとなる。なお、この剥離ローラー41は、搬送方向で位置変更可能な構造にしておけば(図例ではローラー軸の取付孔42を前後に長い長孔にしてある)、生地パーツ等Wの大きさや形状などにより、その搬送停止位置を変更調節できるものとなり、一層便利である。
【0032】
第1駆動手段10内で第2駆動手段11を全体として高さ調節可能な構造を採用することもできる。このようにすると、第1駆動手段10の下張り側ベルト15a(生地押さえ部材16)に対し、第2駆動手段11の下張り側ベルト19a(駆動伝達部材20)が重なる部分で、生地押さえ部材16の通孔25から駆動伝達部材20の係止突起26が突出する程度を調節することができる。
すなわち、この調節によって生地パーツ等Wに対する駆動伝達力の強弱を調節することができるので、テーブル面4上で生地パーツ等Wに適度なスリップを生じさせることも可能になる。従って、生地パーツ等Wに作用する張力が強すぎる場合に、この調節を行って張力を緩和させることができる。
【0033】
第2駆動手段11のエンドレスベルト19は、第1駆動手段10のエンドレスベルト15の架け渡しに用いられたローラー14a,14bのうち、いずれか一方又は両方と共用させるようにして架け渡すことも可能である。なお、両方のローラー14a、14bを共用させる場合は、即ちエンドレスベルト15,19が二重のベルトとなることを意味するが、このような構造も採用可能である。
生地押さえ部材16(第1駆動手段10のエンドレスベルト15)や駆動伝達部材20(第2駆動手段11のエンドレスベルト19)における材質は、上記したものに限定されるものではない。
【0034】
第1駆動手段10の生地押さえ部材16をエンドレスベルト15で形成することは限定されず、図7に示すように、少なくとも搬送方向の上流側(図例では上下両方)が巻き取られる状態でベルト駆動される構成としてもよい。また同様に、第2駆動手段11の駆動伝達部材20についても、エンドレスベルト19で形成することは限定されず、両端が巻き取られる状態でベルト駆動される構成としてもよい。
本発明に係る生地搬送装置1は、生地裁断装置2への採用が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図3のB部拡大図である。
【図2】本発明に係る生地搬送装置の一実施形態を適用して構成した生地裁断システムの平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図3のC部拡大図である。
【図5】本発明に係る生地搬送装置の別実施形態を示した側断面図である。
【図6】本発明に係る生地搬送装置の別実施形態を示した側断面図である。
【図7】本発明に係る生地搬送装置の別実施形態を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 生地搬送装置
4 テーブル面
10 第1駆動手段
11 第2駆動手段
12 生地吸引部
15 エンドレスベルト
15a 下張り側ベルト
15b 上張り側ベルト
16 生地押さえ部材
19 エンドレスベルト
19a 下張り側ベルト
19b 上張り側ベルト
20 駆動伝達部材
25 通孔
26 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を支持するテーブル面(4)と、
このテーブル面(4)上に設けられた生地押さえ部材(16)を具備すると共に当該生地押さえ部材(16)をテーブル面(4)に沿って移動可能にして成る第1駆動手段(10)と、
この第1駆動手段(10)の生地押さえ部材(16)上に重なる状態で設けられた駆動伝達部材(20)を具備すると共に当該駆動伝達部材(20)を上記生地押さえ部材(16)と同行して移動可能にして成る第2駆動手段(11)とを有しており、
第1駆動手段(10)の生地押さえ部材(16)は多数の通孔(25)が形成されたメッシュ構造を有しており、
第2駆動手段(11)の駆動伝達部材(20)は上記生地押さえ部材(16)の通孔(25)を貫通してテーブル面(4)側へ突出する棘状の係止突起(26)が多数植設された棘構造を有して形成されている
ことを特徴とする生地搬送装置。
【請求項2】
前記第2駆動手段(11)の駆動伝達部材(20)は起毛生地により形成されており、この起毛生地の起毛部によって係止突起(26)が形成されていることを特徴とする請求項1記載の生地搬送装置。
【請求項3】
前記第1駆動手段(10)は生地押さえ部材(16)がテーブル面(4)上を自走可能なベルト(15a)によって形成され、前記第2駆動手段(11)は駆動伝達部材(20)が第1駆動手段(10)のベルト(15a)上を自走可能なベルト(19a)によって形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生地搬送装置。
【請求項4】
前記第1駆動手段(10)は生地押さえ部材(16)が下張り側ベルト(15a)によって形成されその上方で上張り側ベルト(15b)が回帰するように架け渡されたエンドレスベルト(15)を循環駆動するものとされ、前記第2駆動手段(11)は駆動伝達部材(20)が下張り側ベルト(19a)によって形成されその上方で上張り側ベルト(19b)が回帰するように架け渡されたエンドレスベルト(19)を循環駆動するものとされて、第1駆動手段(10)のエンドレスベルト(15)に対してその内側に第2駆動手段(11)のエンドレスベルト(19)が内包状に配置されていることを特徴とする請求項3記載の生地搬送装置。
【請求項5】
前記第1駆動手段(10)のベルト(15a)に対して第2駆動手段(11)のベルト(19a)が重なりを始める位置より搬送方向の上流部で、第1駆動手段(10)のベルト(15a)の上方から当該ベルト(15a)を介してその下方を吸引させる生地吸引部(12)が設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の生地搬送装置。
【請求項6】
前記テーブル面(4)に隣接して生地送りコンベア(3)が設けられており、この生地送りコンベア(3)からテーブル面(4)への乗り移り位置の上方又は生地送りコンベア(3)の上方に対応させて前記生地吸引部(12)が設けられていることを特徴とする請求項5記載の生地搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−52928(P2010−52928A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221860(P2008−221860)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】