説明

生地

【課題】 生地にシボ状態を付与するが、洗濯したときにおいても生地の縮みを抑えることができる生地を提供すること。
【解決手段】 タテ糸4及びヨコ糸6を織成して形成される生地であって、タテ糸4として追加無撚り糸を用い、ヨコ糸6として追加撚り糸6bと追加無撚り糸6aとを用いる。追加無撚り糸6aとして紡績撚り糸を用い、追加撚り糸6bとして紡績撚り糸に100〜1500回/mの割合で追加撚り加工を施した糸を用いる。このヨコ糸6は、5本以下の追加撚り糸6bを含む追加撚り組と5本以下の追加無撚り糸6aを含む追加無撚り組とを交互に配列して織り込み、このように織り込むことによって、きれいなシボ状態とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーツ生地、肌掛け布団の側生地などに用いる生地に関する。
【背景技術】
【0002】
シーツ生地などに用いる生地として、肌に優しい、生地自体に清涼感(さらりとした風合い)がある、などの理由から、自然素材の繊維を用いたものが広く用いられている。このような生地は、綿、麻、セルロース繊維などの自然繊維を素材としたタテ糸及びヨコ糸を用い、これらタテ糸及びヨコ糸を所要の通りに織り込んで形成される。
【0003】
また、このような生地において、清涼感を高めるために、表面をシボ状態となるように織り成すことがある。このようにシボ状態にするときには、タテ糸として追加無撚り糸(例えば、紡績撚り糸)を用い、ヨコ糸として追加撚り糸(例えば、紡績より糸に追加撚り加工を施した糸)を用い、かかるタテ糸及びヨコ糸を所要の通りに織成して形成される。このように織り成すると、追加撚り加工されたヨコ糸により縮み傾向が付与され、湯通しなどすることによってヨコ糸が縮み、生地の表面にシボが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シボ状態の生地を用いたシーツなどにおいては、ヨコ糸に追加撚り加工された糸を用いている故に、洗濯したときにはヨコ糸が更に縮み、横方向の長さが15〜20%程度縮み、縮みが大きい場合には約30%程度縮むことがある。このように大きく縮むと、元の状態に戻すことが難しく、小さくなり過ぎて使用できなくなる。このような縮みの発生を防止するには、洗濯をしないようにすればよいが、洗濯をしないと汚れが付いて衛生上好ましくないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、生地にシボ状態を付与するが、洗濯したときにおいても生地の縮みを抑えることができる生地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の生地は、タテ糸及びヨコ糸を織成して形成される生地において、前記タテ糸として追加無撚り糸を用い、前記ヨコ糸として追加撚り糸と追加無撚り糸とを用いることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の生地では、前記追加無撚り糸は紡績撚り糸であり、前記追加撚り糸は、紡績撚り糸に100〜1500回/mの割合で追加撚り加工が施されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の生地では、前記ヨコ糸は、5本以下の追加撚り糸を含む追加撚り組と5本以下の追加無撚り糸を含む追加無撚り組とが交互に配列されて織り込まれていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の生地では、前記追加撚り組は1本の追加撚り糸から構成され、前記追加無撚り組は1本の追加無撚り糸から構成されていることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の請求項5に記載の生地では、前記追加撚り組は1本の追加撚り糸から構成され、前記追加無撚り組は2本の追加無撚り糸から構成されていることを特徴とする。
【0011】
更にまた、本発明の請求項6に記載の生地では、前記追加撚り組は2本の追加撚り糸から構成され、前記追加無撚り組は1本の追加無撚り糸から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の生地によれば、ヨコ糸として追加撚り糸と追加無撚り糸とを用いるので、追加撚り糸により生地に縮み傾向を付与して表面をシボ状態とすることができ、更に追加無撚りのヨコ糸により縮み傾向を抑え、洗濯したときの生地の縮みを小さく抑えることができる。タテ糸及びヨコ糸は純糸、混紡糸などでよい。尚、タテ糸及びヨコ糸として自然素材の繊維のものを用いることによって、これらタテ糸及びヨコ糸を織り込んだ生地は、肌に優しいものとなる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の生地によれば、追加無撚り糸として紡績撚り糸を用いるので、この糸自体には実質上撚りが施されておらず、一方追加撚り糸として紡績撚り糸に100〜1500回/mの割合で追加撚り加工が施されているので、縮み傾向を付与するための撚りが施されており、従って、生地表面をシボ状態にすることができるとともに、洗濯したときの生地の縮みを小さく抑えることができる。追加撚り加工は、300〜1200回/mの割合で施すのが好ましく、このように追加撚りを施すことによって、生地表面を適度のシボ状態にすることができる。尚、追加撚りは、左撚り、右撚りのいずれでもよい。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の生地によれば、5本以下の追加撚り糸を含む追加撚り組と5本以下の追加無撚り糸を含む追加無撚り組とが交互に配列されているので、適度の縮み傾向と洗濯した際の適度の縮みの抑えを持たせることができる。追加撚り組の追加撚り糸及び追加無撚り組の追加無撚り糸については3本以下にするのが好ましく、このように構成することによって、適度のシボ状態を保つことができるとともに、洗濯したときの生地の縮みを効果的に防止することができる。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の生地によれば、追加撚り組は1本の追加撚り糸から構成され、追加無撚り組は1本の追加無撚り糸から構成されているので、ヨコ糸においては、追加撚り糸と追加無撚り糸とが交互に配列され、非常に好ましい縮み傾向と洗濯した際の効果的な縮みの抑えを持たせることができる。
【0016】
更に、本発明の請求項5に記載の生地によれば、追加撚り組は1本の追加撚り糸から構成され、追加無撚り組は2本の追加無撚り糸から構成されているので、1本の追加撚り糸と2本の追加無撚り糸とが交互に配列され、上述したと同様の効果が達成される。
【0017】
更にまた、本発明の請求項6に記載の生地によれば、追加撚り組は2本の追加撚り糸から構成され、追加無撚り組は1本の追加無撚り糸から構成されているので、2本の追加撚り糸と1本の追加無撚り糸とが交互に配列され、上述したと同様の効果が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う生地の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の生地の一部を拡大して示す部分拡大図であり、図2は、図1におけるII−II線による断面図である。
【0019】
図1及び図2において、図示の生地2は、タテ糸4(軽糸)とヨコ糸6(緯糸)とを織り込んで織布として形成される。実際の生地4では、タテ糸4及びヨコ糸6は配列ピッチが密となるように織り込まれるが、図1及び図2においては、理解を容易にするために、タテ糸4及びヨコ糸6の配列ピッチを大きくして示している。
【0020】
タテ糸4及びヨコ糸6は、自然素材の繊維(綿、麻など)から形成されたものが用いられ、一例として、タテ糸4として綿100%の純糸で、太さが40/1(所謂、40単糸)のもの、またヨコ糸6として麻30%、綿70%の混紡糸で、太さが30/1(所謂、30単糸)のものが用いられる。タテ糸4及びヨコ糸6として、純糸、混紡糸などの適宜の糸を用いることができ、また糸の形態についても単糸、双糸などの適宜のものを用いることができる。例えば、タテ糸4として、綿と麻との混紡糸又は麻100%の純糸、或いはエステルなどの合成繊維と綿又は麻との混紡糸を用いてもよく、またヨコ糸6としても、タテ糸4と略同様に、綿100%又は麻100%の純糸、これらの混紡糸、或いはエステルなどの合成繊維と綿又は麻との混紡糸を用いてもよい。
【0021】
この実施形態では、タテ糸4として追加無撚り糸が用いられる。この追加無撚り糸とは、追加撚り加工が施されていない糸であり、その代表的なものが紡績撚り糸である。この紡績撚り糸とは、紡績工程において紡績の際に僅かの撚りが付与された糸であるが、撚りが付与されていないものと実質上同じであり、生地として織り込んだときに縮み傾向を示すことはない。
【0022】
また、ヨコ糸6としては、上述した追加無撚り糸6aと、追加撚り糸6bとが用いられている。追加撚り糸6bとは、追加撚り加工が施された糸であって、その代表的なものが紡績撚り糸に追加撚り加工を施したものである。このように追加撚り加工を施すことによって、生地として織り込んだときに縮み傾向を示すようになる。
【0023】
追加撚り糸6bは、紡績撚り糸に100〜1500回/mの割合で追加撚りを施したものが用いられ、300〜1200回/mの割合で追加撚りを施されたものが好ましい。この追加撚りの割合が100回/mより少なくなると、生地として織り込んだときに充分な縮み傾向が生じ難くなり、また追撚りの割合が1500回/mより多くなると、生地として織り込んだときに縮み傾向が大きくなる。この追加撚り加工によって付与される撚りは、右撚り、左撚りのいずれでもよい。
【0024】
この実施形態では、タテ糸4は一種類の糸、即ち追加無撚り糸が用いられ、ヨコ糸6は二種類の糸、即ち追加無撚り糸6a及び追加撚り糸6bが用いられ、このヨコ糸6にあっては、追加無撚り糸6aと追加撚り糸6bが交互に配列される。そして、タテ糸4及びヨコ糸6(追加無撚り糸6a及び追加撚り糸6b)は、図1及び図2に示すように、例えば縮み織りされて生地2が形成され、かく形成された生地2に、それ自体周知の自然シボ加工、エンボス加工などの加工が施され、このようにして表面がシボ状態の生地2(織布)が生成される。
【0025】
このように織成した生地2においては、ヨコ糸6として追加無撚り糸6a及び追加撚り糸6bを用いているので、追加撚り糸6bによって生地2に縮み傾向が付与され、表面がシボ状態の生地2を生成することができるとともに、追加無撚り糸6aによって縮み傾向抑制効果(防縮効果)が得られ、洗濯したときの追加撚り糸6bによる縮み傾向が抑えられ、洗濯による生地2の縮みを小さく抑えることができる。
【0026】
上述した生地2のように、表面をシボ状態にするとともに、洗濯による生地2の縮みを防止するためには、ヨコ糸6として、追加無撚り糸6aから構成される追加無撚り組と、追加撚り糸6bから構成される追加撚り組とを交互に配列して織り込むことが好ましい。
【0027】
また、上述した形態では、追加無撚り組を1本の追加無撚り糸6aから構成し、追加撚り組を1本の追加撚り糸6bから構成しているが、追加無撚り組を5本以下の追加撚り糸6aから構成し、追加撚り組を5本以下の追加撚り糸6bから構成することによって、上述した生地2を織り成すことができる。追加無撚り組の追加無撚り糸6aが6本以上になると、部分的に縮み傾向が弱くなり、きれいなシボ状態を生成することが難しくなり、また追加撚り組の追加撚り糸6bが6本以上になると、部分的に縮み傾向が強くなり、このような場合においてもきれいなシボ状態を生成することが難しく、また洗濯した際に縮み易くなる。尚、追加無撚り組の追加無撚り糸6aは3本以下含むように、また追加撚り組の追加撚り糸6bも3本以下含むようにするのが好ましい。
【0028】
上述した実施形態では、追加無撚り組を1本の追加無撚り糸6aから構成し、追加撚り組を1本の追加撚り糸6bから構成しているが、このような構成に限定されず、図3又は図4に示すように構成するようにしてもよい。尚、以下の実施形態において、図1及び図2の実施形態と同様の部材には同様の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0029】
第2の実施形態の生地の一部を拡大して示す図3において、この実施形態の生地2Aでは、ヨコ糸6Aの追加無撚り組が2本の追加無撚り糸6aから構成され、その追加撚り組が1本の追加撚り糸6bから構成され、かかる追加無撚り組と追加撚り組とが交互に配列されて織り込まれており、その他の構成は、上述した実施形態と実質上同一である。
【0030】
また、第3の実施形態の生地の一部を拡大して示す図4において、この実施形態の生地2Bでは、ヨコ糸6Bの追加無撚り組が1本の追加無撚り糸6aから構成され、その追加撚り組が2本の追加撚り糸6bから構成され、かかる追加無撚り組と追加撚り組とが交互に配列されて織り込まれており、その他の構成は、上述した実施形態と実質上同一である。
【0031】
上述した第2及び第3の実施形態においても、追加撚り組の追加撚り糸6bによって適度の縮み傾向が得られるとともに、追加無撚り組の追加無撚り糸6aによって適度の縮み抑え効果が得られ、図1及び図2に示す生地2と同様の効果が得られる。
【0032】
このように織り成した生地2(2A,2B)は、アパレル関係などに幅広く用いることができ、例えば、ケット、肌掛け布団及び布団などにおける側生地、シーツの生地、カバーの生地などに用いることができ、またインナー(パジャマ、トランクスなど)の生地、ホームウエアーの生地などにも広く用いることができる。
【0033】
以上、本発明に従う生地の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0034】
実施例及び比較例
実施例として、タテ糸として綿100%の純糸で、太さが40/1のもの、またヨコ糸として麻30%、綿70%の混紡糸で、太さが30/1(所謂、30単糸)のものを用い、追加無撚り組を1本のヨコ糸(追加無撚り糸)から構成し、追加撚り組を1本のヨコ糸(追加撚り糸で、650回/mの割合で左撚りを施したもの)から構成し、ヨコ糸として追加無撚り組と追加撚り組とを交互に配設し、かかるタテ糸とヨコ糸とを織り込んで生地を製作した。そして、このようにして製作した生地を縦25cm、横25cmの大きさの生地片に切断し、かかる生地片を洗濯し、洗濯して乾いた状態における生地片の縮み度合いを調べた。
【0035】
この実施例においては、洗濯後の縮み度合いを調べたところ、縦にいては約1%程度縮み、また横においても約1%程度縮んだ程度であり、生地自体ほとんど縮まず、充分な防縮効果が得られることが確認できた。
【0036】
比較例として、実施例と同様に、タテ糸として綿100%の純糸で、太さが40/1のもの、またヨコ糸として麻30%、綿70%の混紡糸で、太さが30/1(所謂、30単糸)のものを用い、ヨコ糸については全て追加撚り糸で、650回/mの割合で左撚りを施したものを用い、かかるタテ糸とヨコ糸とを織り込んで生地を製作した。そして、比較例においても、製作した生地を縦25cm、横25cmの大きさの生地片に切断し、かかる生地片を実施例と同様に洗濯し、洗濯して乾いた状態における生地片の縮み度合いを調べた。
【0037】
この比較例においては、洗濯後の縮み度合いを調べたところ、縦にいては約3%程度縮み、また横においては約20%程度と大きく縮み、使い勝手が悪くなる程度に大きく縮んだ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態の生地の一部を拡大して示す部分拡大図。
【図2】図1におけるII−II線による断面図。
【図3】第2の実施形態の生地の一部を拡大して示す部分拡大図。
【図4】第3の実施形態の生地の一部を拡大して示す部分拡大図。
【符号の説明】
【0039】
2,2A,2B 生地
4 タテ糸
6,6A,6B ヨコ糸
6a 追加無撚り糸
6b 追加撚り糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タテ糸及びヨコ糸を織成して形成される生地において、前記タテ糸として追加無撚り糸を用い、前記ヨコ糸として追加撚り糸と追加無撚り糸とを用いることを特徴とする生地。
【請求項2】
前記追加無撚り糸は紡績撚り糸であり、前記追加撚り糸は、紡績撚り糸に100〜1500回/mの割合で追加撚り加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の生地。
【請求項3】
前記ヨコ糸は、5本以下の追加撚り糸を含む追加撚り組と5本以下の追加無撚り糸を含む追加無撚り組とが交互に配列されて織り込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生地。
【請求項4】
前記追加撚り組は1本の追加撚り糸から構成され、前記追加無撚り組は1本の追加無撚り糸から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の生地。
【請求項5】
前記追加撚り組は1本の追加撚り糸から構成され、前記追加無撚り組は2本の追加無撚り糸から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の生地。
【請求項6】
前記追加撚り組は2本の追加撚り糸から構成され、前記追加無撚り組は1本の追加無撚り糸から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の生地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−184706(P2008−184706A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18856(P2007−18856)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(592179089)岡田麻株式会社 (1)
【Fターム(参考)】