説明

生物体封入バイオリアクター用構造物及び生物体封入バイオリアクター、並びに生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法

【課題】多孔質構造体における内部空間の大きさを制御してバイオリアクターの内外の物質移動を容易としながらも封入した生物体がバイオリアクターの反応系からその外部へ拡散することを低減した生物体封入バイオリアクター用構造物及び生物体封入バイオリアクター、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】事後的に溶解可能な粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物120と樹脂材料100とを混合して外側混合物を得て、事後的に溶解可能であると共に空間部104を形成するための空間部形成材料130の周囲を外側混合物により被覆して被包構造体101を形成し、被包構造体において第1被溶解物及び空間部形成材料を溶解することにより、第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部103のさらに内側に空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体106を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物体封入バイオリアクター用構造物及び生物体封入バイオリアクター、並びにその製造方法に関し、特に多孔質構造体を利用して生物体を封入、保持するバイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
有用な微生物、その他の生物体を特定の容器内に収容、固定し、培養しながら所望の反応生成物質を回収する装置にバイオリアクターがある。バイオリアクターは、医薬品製造分野や食品加工分野、さらには汚染物質の除去等の環境分野等にも用いられ、微生物等の直接利用に大きく貢献している。近年では、遺伝子工学の発展に伴い、所望の遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え生物(遺伝子組み換え微生物)が容易に得られるようになってきた。そこで、これらを用いて目的物質を得る際の生産効率はさらに向上している。
【0003】
このような生物体を直接利用するバイオリアクターに求められる特性は、微生物等の生物体の収容、隔離が容易であり、いったん微生物等の生物体を収容すると安易に脱落しないことである。これは、封入した生物体がバイオリアクターの反応系に拡散した場合、事後の反応生成物の分離、精製に支障を来す。また、種類によるものの特定の組み換え体の拡散のおそれを低減する必要もある。
【0004】
生物体を担持、封入するバイオリアクターの例として、ポリウレタンゲルの多孔体を用いることが提案されている(特許文献1参照)。また、連通孔を有する密閉性容器内に、微生物を通過させず水溶物のみを通過する限外濾過膜(メンブレン)を配した微生物生育用容器が提案されている(特許文献2参照)。さらに、目的微生物を添加したアルギン酸ナトリウム水溶液等の保護材ポリマーとポリメタクリル酸メチル等の壁材ポリマーからW/Oエマルジョンを形成し、これからW/O/Wエマルジョンを形成し、壁材ポリマーから有機溶媒を除去したマイクロカプセルが提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
特許文献1のポリウレタンゲルの多孔体を用いた場合、微生物等の生物体の収容、隔離は不完全である。特許文献2の微生物生育用容器は、形状が固定であるため、目的に応じた加工は容易ではない。特許文献3のマイクロカプセルについては、予め微生物等の生物体の固定を前提として調製する必要があり、製法も複雑である。また、多孔質外壁の透過性が悪いため、内部に封入されている微生物の栄養代謝が悪化しやすくなるおそれが指摘されている。加えて、マイクロカプセルを大型化することは容易ではない。他にセラミック等の多孔体の適用も検討されている。しかし、セラミック多孔体は酵素の担持、固定においては有効であるものの、微生物等の生物体にあっては、増殖等の問題から実績を上げていない。
【0006】
このようなことから、バイオリアクター用の構造体を簡単に製造可能とすると共に取り扱いやすさの向上も図り、併せて、バイオリアクターの内外の物質移動を容易としながらも封入した生物体がバイオリアクターの反応系からその外部へ拡散することを低減したバイオリアクター用構造物が探求されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−51794号公報
【特許文献2】特公平6−55132号公報
【特許文献3】特開2004−329159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は以前より樹脂素材を多孔質化する技術を提案し、多孔質構造体のバイオリアクター用途への応用についても鋭意検討を重ねた。その中で、多孔質構造体自体の大きさも自在に設計できる技術に到達した。
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、多孔質構造体における内部空間の大きさを制御することにより、バイオリアクター用の構造体を簡単に製造可能とし、出来上がったバイオリアクターの取り扱いやすさの向上も図り、併せて、バイオリアクターの内外の物質移動を容易としながらもいったん内部に封入された生物体(被封入生物体)がバイオリアクターの反応系からその外部へ拡散することを低減した生物体封入バイオリアクター用構造物及び生物体封入バイオリアクター、並びにその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、樹脂基材内に連通した微細空洞部を備えた多孔質構造を有し、前記微細空洞部の内径よりも大径とする空間部を前記多孔質構造のさらに内側に備えると共に、前記空間部が前記多孔質構造により被覆されていることを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物に係る。
【0011】
請求項2の発明は、前記連通した微細空洞部同士の連通開口部の口径が、被封入生物体の体長よりも小さく形成されている請求項1に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物に係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記空間部が、前記被封入生物体の体長よりも大径の粒状空洞部からなる多孔質構造として形成されている請求項1又は2に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物に係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記被封入生物体が微生物である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物に係る。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバイオリアクター用構造物の形態がシート状物である生物体封入バイオリアクター用構造物に係る。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物において、前記空間部内に前記被封入生物体を封入してなることを特徴とする生物体封入バイオリアクターに係る。
【0016】
請求項7の発明は、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物の粒径よりも大となる空間部を形成するための空間部形成材料の周囲を前記外側混合物により被覆して被包構造体を形成し、前記被包構造体において前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部のさらに内側に前記空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体を形成することを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0017】
請求項8の発明は、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物よりも粒子径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得て、前記内側混合物の周囲を前記外側混合物により被覆して被包構造体を形成し、前記被包構造体において前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部のさらに内側に前記第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部を備えた多孔質構造体を形成することを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0018】
請求項9の発明は、前記被包構造体がシート状物であって、該被包構造体を形成するに際し、前記空間部形成材料と前記外側混合物を共押出しして前記内側材料の周囲を前記外側混合物により被覆する請求項7に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0019】
請求項10の発明は、前記被包構造体がシート状物であって、該被包構造体を形成するに際し、前記内側混合物と前記外側混合物を共押出しして前記内側材料の周囲を前記外側混合物により被覆する請求項8に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0020】
請求項11の発明は、前記被包構造体がシート状物であって、前記被包構造体から得られた多孔質構造体に対し、所定部位で前記多孔質構造体の表面側から加熱圧着が行われる請求項9又は10に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0021】
請求項12の発明は、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得ると共に、該外側混合物を予めシート状物に成形して外側シート状物とし、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物の粒径よりも大となる厚さの空間部を形成するための空間部形成材料の上下両面に前記外側シート状物を重ね、前記外側シート状物同士を加熱ラミネートして積層構造体を形成し、前記積層構造体において前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部のさらに内側に前記空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体を形成することを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0022】
請求項13の発明は、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得ると共に、該外側混合物を予めシート状物に成形して外側シート状物とし、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物よりも粒子径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得ると共に、該内側混合物を予めシート状物に成形して内側シート状物とし、前記内側シート状物の上下両面に前記外側シート状物を重ね、前記外側シート状物同士を加熱ラミネートして積層構造体を形成し、前記積層構造体において前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部のさらに内側に前記第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部を備えた多孔質構造体を形成することを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0023】
請求項14の発明は、前記外側混合物に占める第1被溶解物の体積割合を、少なくとも50%以上とする請求項7ないし13のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0024】
請求項15の発明は、前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項7又は12に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【0025】
請求項16の発明は、前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項8又は13に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物によると、樹脂基材内に連通した微細空洞部を備えた多孔質構造を有し、前記微細空洞部の内径よりも大径とする空間部を前記多孔質構造のさらに内側に備えると共に、前記空間部が前記多孔質構造により被覆されているため、バイオリアクターの内外の物質移動を容易としながらも封入した生物体がバイオリアクターの反応系からその外部へ拡散することを低減することができる。
【0027】
請求項2の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物によると、請求項1に記載の発明において、前記連通した微細空洞部同士の連通開口部の口径が、被封入生物体の体長よりも小さく形成されているため、封入した生物体がバイオリアクターの外部への漏洩防止に十分となる。
【0028】
請求項3の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物によると、請求項1又は2に記載の発明において、前記空間部が、前記被封入生物体の体長よりも大径の粒状空洞部からなる多孔質構造として形成されているため、構造物としての強度が向上する。また、空間部の表面積が拡張されることから、封入された生物体が生育する足場としても役立つ。
【0029】
請求項4の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記被封入生物体が微生物であるため、微生物用のバイオリアクターを製造することができる。
【0030】
請求項5の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物によると、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバイオリアクター用構造物の形態がシート状物であるため、積層、滅菌、保存の取り扱いが簡便である。
【0031】
請求項6の発明に係る生物体封入バイオリアクターによると、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物において、前記空間部内に前記被封入生物体を封入してなるため、生物体のバイオリアクター外部への漏洩を防ぎたい用途に適する。
【0032】
請求項7の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物の粒径よりも大となる空間部を形成するための空間部形成材料の周囲を前記外側混合物により被覆して被包構造体を形成し、前記被包構造体において前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部のさらに内側に前記空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体を形成するため、バイオリアクターの内外の物質移動を容易としながらも封入した生物体がバイオリアクターの反応系からその外部へ拡散することを低減した生物体封入バイオリアクター用構造物の製造が、多孔質構造体における内部空間の大きさの制御を伴うことにより、容易に可能となった。
【0033】
請求項8の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物よりも粒子径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得て、前記内側混合物の周囲を前記外側混合物により被覆して被包構造体を形成し、前記被包構造体において前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部のさらに内側に前記第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部を備えた多孔質構造体を形成するため、バイオリアクターの内外の物質移動を容易としながらも封入した生物体がバイオリアクターの反応系からその外部へ拡散することを低減した生物体封入バイオリアクター用構造物の製造が、多孔質構造体における内部空間の大きさの制御を伴うことにより、容易に可能となった。また、多孔質状の構造物としての強度向上も可能となる。
【0034】
請求項9の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、請求項7に記載の発明において、前記被包構造体がシート状物であって、該被包構造体を形成するに際し、前記空間部形成材料と前記外側混合物を共押出しして前記内側材料の周囲を前記外側混合物により被覆するため、共押出しの製法により簡易かつ迅速に被包構造体を得ることができる。特に、バイオリアクター用構造物を量産する際の生産効率向上が可能となる。
【0035】
請求項10の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、請求項8に記載の発明において、前記被包構造体がシート状物であって、該被包構造体を形成するに際し、前記内側混合物と前記外側混合物を共押出しして前記内側材料の周囲を前記外側混合物により被覆するため、共押出しの製法により簡易かつ迅速に被包構造体を得ることができる。特に、バイオリアクター用構造物を量産する際の生産効率向上が可能となる。
【0036】
請求項11の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、請求項9又は10に記載の発明において、前記被包構造体がシート状物であって、前記被包構造体から得られた多孔質構造体に対し、所定部位で前記多孔質構造体の表面側から加熱圧着が行われるため、バイオリアクター用構造物のどのような位置に対しても加熱圧着することができ、目的に応じた形状への加工が容易となる。
【0037】
請求項12の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得ると共に、該外側混合物を予めシート状物に成形して外側シート状物とし、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物の粒径よりも大となる厚さの空間部を形成するための空間部形成材料の上下両面に前記外側シート状物を重ね、前記外側シート状物同士を加熱ラミネートして積層構造体を形成し、前記積層構造体において前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部のさらに内側に前記空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体を形成するため、加熱ラミネートの樹脂加工の手法を利用でき、必要時に必要な量だけ多孔質構造体を生産することができ生産効率を向上することができる。
【0038】
請求項13の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得ると共に、該外側混合物を予めシート状物に成形して外側シート状物とし、事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物よりも粒子径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得ると共に、該内側混合物を予めシート状物に成形して内側シート状物とし、前記内側シート状物の上下両面に前記外側シート状物を重ね、前記外側シート状物同士を加熱ラミネートして積層構造体を形成し、前記積層構造体において前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部のさらに内側に前記第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部を備えた多孔質構造体を形成するため、加熱ラミネートの樹脂加工の手法を利用でき、必要時に必要な量だけ多孔質構造体を生産することができ生産効率を向上することができる。特に、強度を向上させた多孔質状の構造物を得ることができる。
【0039】
請求項14の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、請求項7ないし13のいずれか1項に記載の発明において、前記外側混合物に占める第1被溶解物の体積割合を、少なくとも50%以上とするため、容易に微細空洞同士を互いに連通させて多孔質構造を得ることができる。
【0040】
請求項15の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、請求項7又は12に記載の発明において、前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去されるため、第1被溶解物及び空間部形成材料の除去を簡単かつ容易とすることができ、量産性に優れる。
【0041】
請求項16の発明に係る生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法によると、請求項8又は13に記載の発明において、前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去されるため、第1被溶解物及び第2被溶解物の除去を簡単かつ容易とすることができ、量産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物の断面模式図である。
【図2】第2構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物の断面模式図である。
【図3】微細空洞部同士が連通しているときの模式図である。
【図4】生物体封入バイオリアクター用構造物をシート状物とした模式図である。
【図5】生物体封入バイオリアクターの使用状態の模式図である。
【図6】第1構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物の概略工程模式図である。
【図7】第2構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物の概略工程模式図である。
【図8】第1被溶解物と最大口径の関係を示す模式図である。
【図9】生物体封入バイオリアクター用構造物の第1製造例に係る第1工程模式図である。
【図10】生物体封入バイオリアクター用構造物の第1製造例に係る第2工程模式図である。
【図11】生物体封入バイオリアクター用構造物の第2製造例に係る第1工程模式図である。
【図12】生物体封入バイオリアクター用構造物の第2製造例に係る第2工程模式図である。
【図13】実施例1の生物体封入バイオリアクター用構造物の縦断面の電子顕微鏡写真である。
【図14】実施例2の生物体封入バイオリアクター用構造物の縦断面の電子顕微鏡写真である。
【図15】実施例3の生物体封入バイオリアクター用構造物の縦断面の電子顕微鏡写真である。
【図16】実施例4の生物体封入バイオリアクター用構造物の縦断面の電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例1のバイオリアクターの代謝の結果を示すグラフである。
【図18】実施例3のバイオリアクターの代謝の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
生物体封入バイオリアクターの基となる構造物について、図1ないし4を用い説明する。図1は第1構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物10Aの断面模式図である。生物体封入バイオリアクター用構造物10Aは樹脂基材11の内部に相互に連通している微細空洞部12を備えた多孔質構造13として形成される。多孔質構造13の内側には、微細空洞部12の内径D1(微細空洞部の粒径D1)よりも大径とする空間部20aがさらに備えられる。同時に、空間部20aの周囲は多孔質構造13により被覆される。例示の空間部20aは直方体形状の空間に形成されており、その高さD2、幅D3のいずれも微細空洞部12の内径D1よりも大である。
【0044】
図2は第2構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物10Bの断面模式図である。第2構造例においても、構造物10Bは樹脂基材11の内部に相互に連通している微細空洞部12を備えた多孔質構造13として形成される。多孔質構造13の内側には、微細空洞部12の内径D1よりも大径とする空間部20bが多孔質構造13により被覆されて、さらに備えられる。空間部20bは、微細空洞部12の内径D1よりも大径であり、後記する被封入生物体の体長よりも大径である粒状空洞部25(粒状空洞部の粒径D4)からなる多孔質構造23として形成される。つまり、第2構造例の生物体封入バイオリアクター用構造物は中央部分とその周りの部分で異なる粒径の空洞部を備えた多孔質構造である。第2構造例の場合、空間部に多孔質の構造が存在するため、生物体封入バイオリアクター用構造物としての強度が向上する。また、空間部の表面積が拡張されることから、封入された生物体が生育する足場としても役立つ。
【0045】
生物体は空間部20a内もしくは空間部20b(粒状空洞部25)内に注入される。図示の多孔質構造13からわかるように、微細空洞部12同士は連通していることに加え、微細空洞部12は外表面14とも連通し、同時に空間部20aまたは20bの内表面15とも連通している。そのため、生物体封入バイオリアクター用構造物10A,10Bの外表面14から空間部20aまたは20bの内表面15まで培養液が浸透し、生物体からの分泌物、代謝物、生成物等も同様の経路により生物体封入バイオリアクター用構造物10A,10Bの外部に拡散可能である。図1及び図2の生物体封入バイオリアクター用構造物は平板のシート状物の開示例である。両図で共通する箇所は同一符号とした。表面14における微細空洞部12の開口部分を拡張するため、別途、生物体封入バイオリアクター用構造物の表面を研磨等により削除することもできる。
【0046】
樹脂基材11内部の微細空洞部12の形状は、特段限定されることはなく、球形状、楕円体、紡錘体等、多角形状体等の適宜である。微細空洞部が球形状の場合には、大きさは直径であり、楕円体、紡錘体等であれば、大きさはそれらの最大長となる。微細空洞部12の形状、大きさは、後述する製法から把握されるように、微細空洞部は被溶解物の大きさに依存する。そのため、微細空洞部は、約1μm〜100μmの範囲内、好ましくは約1μm〜30μmの範囲内の大きさである。
【0047】
図1及び図2の断面模式図に開示の生物体封入バイオリアクター用構造物10A,10Bにおいて、微細空洞部12を有する多孔質構造13は、互いに接触した連通構造として形成されている。そのため、生物体封入バイオリアクター用構造物の多孔質構造13の部位に占める微細空洞部12の体積割合は、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上となる。ただし、微細空洞部の体積割合の上限は約85%となる。
【0048】
図3を用い微細空洞部と封入される生物体との大きさの関係を説明する。同図は微細空洞部12,12同士が連通しているときの模式図である。微細空洞部同士の連通部分には樹脂基材11は無く、連通開口部16が形成される。図示では、一方の微細空洞部12にバイオリアクター用構造物内に封入されている生物体Bm(被封入生物体)がある。生物体Bmの体長Lmに対し、連通開口部16の口径dは小さく形成されている。従って、一方の微細空洞部に存在する生物体Bmは連通開口部16を通過することができず他方の微細空洞部へ移動することができない。このため、空間部20aもしくは空間部20b(粒状空洞部25)と隣接している微細空洞部12に生物体が進入したとしても、生物体は当該微細空洞部から他の微細空洞部に移動することができず、結果的に生物体封入バイオリアクター用構造物10A,10Bの外部への漏出は低減される。微細空洞部、連通開口部等の形成、樹脂基材等については、後記の製造方法において説明する。
【0049】
生物体Bmは、本発明の生物体封入バイオリアクター用構造物内に封入できる生物種であれば特段限定されない。例えば、生物体は、植物細胞、菌類、分泌系の動物細胞等である。環境耐性や増殖の容易さ等から、生物体として微生物が好適に用いられる。微生物を当該構造物内に封入する場合、容易に微生物バイオリアクターを得ることができる。微生物には、酵母をはじめ、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、硝酸菌、糸状菌、光合成細菌、さらには環境浄化目的の菌類等の広汎な微生物が用いられる。これらの菌種は例示であり、この他の微生物種も当然に用いられる。また、ウイルスベクターの感染等によりプラスミドDNAを導入した大腸菌、YAC(Yeast Artificial Cromosome)を組み込んだ酵母等の適宜の遺伝子組み換えの処理をした微生物も用いられる。
【0050】
生物体封入バイオリアクター用構造物における微細空洞部の粒径は、封入しようとする生物体(微生物を含む)の体長を勘案して設計される。図3から理解されるように、微細空洞部12自体の粒径D1は生物体Bmの体長Lmよりも大であっても、微細空洞部同士の連通による連通開口部16が生物体Bmの体長Lmよりも小となれば、封入されている生物体の漏洩防止に十分である。封入されている生物体(被封入生物体)の体長によるものの、通常、連通開口部16の口径dは1μm〜5μmとなるように設計される。ただし、生物体の体長とは、その生物体の種類に応じ本体における最小となる部位の長さである。本明細書において体長とは必ずしも生物体の最大長を意味しない。例えば、動物細胞は楕円形状に概観視できるため、短軸方向の断面直径となる。酵母、球菌、桿菌の場合も動物細胞と同様である。また、かび等の菌類他、らせん菌等の紐のような微生物等では、鞭毛等を除いた生物体本体の最小断面径が体長となる。
【0051】
生物体封入バイオリアクター用構造物の形態は、使用目的に応じて適宜形状となる。具体的には、球状、扁平な粒状、棒状、線状、ブロック等の直方体状、その他形状不定の塊となる場合もある。そこで、積層、滅菌、保存の利便性、取り扱いやすさ等を加味してシート状物が比較的好適である。より具体的には、シート状物は積層により場所が節約でき、保存や滅菌等の取り扱いやすさが向上する。他に装置や器具への組み込みも容易となる。図4はシート状物とした例を開示する。図4(a)はシート状の生物体封入バイオリアクター用構造物10Saであり、内部に1箇所、前記の空間部20aまたは20bが備えられる。図4(b)はシート状の生物体封入バイオリアクター用構造物10Sbであり、内部に複数箇所、前記の空間部20aまたは20bが備えられる。図4(c)はシート状の生物体封入バイオリアクター用構造物10Scであり、内部に1箇所、前記の空間部20aまたは20bが備えられ、併せて、シート状物の両表面をつないで空間部を貫通する柱部11cが備えられる。
【0052】
シート状の生物体封入バイオリアクター用構造物10Saは汎用用途である。バイオリアクター用構造物10Sbは、いったん封入した微生物が安易に他の空間部に移動しないことから、1枚のシート状物に複数種類の生物体を封入できる。例えば、生存試験等のアッセイに適する。バイオリアクター用構造物10Scは、柱部11cにより内部の空間部が補強されるため、構造物自体の強度を向上できる。
【0053】
図示し説明した生物体封入バイオリアクター用構造物の空間部内へ生物体が封入されることによって、生物体封入バイオリアクターが完成する。生物体の封入方法は適宜であるものの、例えば、生物体の存在密度を高めた培養液ごと注射器により空間部内へ注入し、事後、注射針により生じた穴を塞ぐことが考えられる。図5は、出来上がった生物体封入バイオリアクターのひとつの使用例である。
【0054】
図示の例の生物体封入バイオリアクター装置Rは、前出の生物体封入バイオリアクター用構造物10A,10Bであり、シート状の形状としたバイオリアクター用構造物10Saを用いた。当該バイオリアクター用構造物内に生物体、微生物が封入され、バイオリアクターとなる。そして、複数枚のシート状のバイオリアクターは適度な間隔を置いて培養液Brが満たされている培養槽Fm内に配置される。バイオリアクター内の生物体(微生物)の生育、増殖に伴い、所望の反応生成物、代謝産物等を得ることができる。むろん、生物体封入バイオリアクターの形状、大きさ、様式、反応形態等は、適宜である。装置は連続式としても回分式としてもよく、生物体、微生物の代謝や反応に応じて最適に設計される。後記の実施例から理解されるように、本発明の生物体封入バイオリアクター用構造物は、封入した生物体のバイオリアクター外部への漏洩を抑える。このため、生物体の外部漏洩を防ぎたい用途に適する。図中、培養液の循環ポンプ、酸素や炭酸ガスの供給装置、恒温装置、濾過装置等の機器は表記を省略した。
【0055】
これより、生物体封入バイオリアクター用構造物について、図6ないし図10の各図に基づいてその製造方法を説明する。
【0056】
図6の概略工程模式図は、図1の生物体封入バイオリアクター用構造物10A(10Sa,10Sb,10Scも含む)の製造例に相当する。図6(a)のとおり、事後的に溶解可能な粒状物である第1被溶解物120と樹脂材料100は混合され、外側混合物101が得られる。次に図6(b)に示すように、事後的に溶解可能であると共に第1被溶解物120の粒径よりも大となる空間部を形成するための空間部形成材料130が用意される。図中の空間部形成材料130cの内部には一側から他側に通じた貫通口131cが形成されている。後述するように、空間部形成材料130cは前記のバイオリアクター用構造物10Sc等の強度を増すように柱部を有した構造体を形成する際に利用される。
【0057】
図6(c)のとおり、空間部形成材料130の周囲は外側混合物101により被覆され、被包構造体102が形成される。被包構造体102では、樹脂材料100中に第1被溶解物120は適度に分散されている。むろん、この成形段階では、第1被溶解物120及び空間部形成材料130の溶解は始まっておらず、ほぼ混入時の形状を維持している。そして、図6(d)のように、被包構造体102において、第1被溶解物120及び空間部形成材料130の両方が溶解されることによって、第1被溶解物120の除去に起因した多孔質空洞部103が生じる。そのさらに内側に空間部形成材料130の除去に起因した空間部104も生じる。
【0058】
こうして樹脂材料100が取り残され微細空洞部を有した多孔質構造体106を得ることができる。空間部形成材料130cを用いた場合であっても同様に多孔質構造体を得ることができる。なお、貫通口131cの内側に樹脂材料100及び第1被溶解物120が侵入するため、その部分が事後的に多孔質構造の柱状となる。
【0059】
図7の概略工程模式図は、図2の生物体封入バイオリアクター用構造物10B(10Sa,10Sb,10Scも含む)の製造例に相当する。図7(a)のとおり、事後的に溶解可能な粒状物である第1被溶解物120と樹脂材料100は混合され、外側混合物101が得られる。同時に、図7(b)に示すように、事後的に溶解可能であると共に第1被溶解物120の粒径よりも大とする第2被溶解物125と樹脂材料100は混合され、内側混合物111が得られる。内側混合物111は不定形状としても、予め所定形状に成形した成形内側混合物111mとしてもよい。前記の空間部形成材料130cと同様に一側から他側に通じた貫通口(図示せず)を形成しておくことができる。前記のバイオリアクター用構造物10Sc等の柱部を有した構造体を形成する際に利用される。
【0060】
図7(c)のとおり、内側混合物111(成形内側混合物111m)の周囲は外側混合物101により被覆され、被包構造体112が形成される。被包構造体112では、外側の樹脂材料100中に第1被溶解物120は適度に分散され、内側の樹脂材料100中にも第2被溶解物125は適度に分散されている。むろん、この成形段階では、第1被溶解物120及び第2被溶解物125の溶解は始まっておらず、ほぼ混入時の形状を維持している。そして、図7(d)のように、被包構造体112において、第1被溶解物120及び第2被溶解物125の両方が溶解されることによって、第1被溶解物120の除去に起因した第1多孔質空洞部113が生じる。そのさらに内側に第2被溶解物125の除去に起因した第2多孔質空洞部114も生じる。
【0061】
こうして樹脂材料100が取り残され微細空洞部を有した多孔質構造体116を得ることができる。成形内側混合物111mを用いた場合であっても同様に多孔質構造体を得ることができる。なお、成形内側混合物111mに貫通口を設けた場合、貫通口の内側に樹脂材料100及び第1被溶解物120が侵入するため、同様にその貫通口の部分が事後的に多孔質構造の柱状となる。
【0062】
開示の生物体封入バイオリアクター用構造物及びその製造方法において、多孔質構造体は樹脂材料から形成される。これは、多種多様な形状への成形が容易であるためである。また、出来上がる構造物も軽量、安価となり極めて利便性が高いためである。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、あるいはポリエステル樹脂等の有機高分子化合物である。
【0063】
ポリオレフィン樹脂を例示すると、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチルとの1種または2種以上のランダムまたはブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらに前記したこれら重合体の混合物等のポリオレフィン系樹脂、石油樹脂及びテルペン樹脂等の炭化水素系樹脂である。
【0064】
ポリアミド樹脂を例示すると、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610及びナイロンMXD等のポリアミド系樹脂である。
【0065】
ポリエステル樹脂を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0066】
他の利用可能な樹脂として、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン−アクリロニトリル系樹脂、PTFE等のフッ素樹脂、ポリイソプレン系樹脂、SRB等のブタジエン系のゴム、ポリイミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の水素結合性樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリケトン樹脂等を挙げることができる。
【0067】
列記の有機高分子化合物は、樹脂材料から形成される多孔質構造体としての耐久性、安定性、加工容易性、内部に封入される生物体、微生物の種類等が重視され、選択される。さらに、使用期間、用途を考慮してポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂も用いることもできる。
【0068】
図8の模式図を用い、第1被溶解物120同士の当接と被封入生物体との大きさの関係を説明する。図3において既述のとおり、生物体封入バイオリアクター用構造物の微細空洞部同士の連通による連通開口部が生物体の体長よりも小である。また、微細空洞部は前記の第1被溶解物の除去、つまり第1被溶解物の消失によって生じる空間である。そこで、第1被溶解物120は、事後的に溶解可能な粒状物であることが求められる(後述参照)。図8(a)のとおり、当該粒状物同士120,120が当接する部位(当接予定部位121)の最大口径122は、被封入生物体の体長よりも小となることである。なお、図示に際し第1被溶解物120が球形状として説明するが、前述のように第1被溶解物120の形状は適宜の粒状物である。
【0069】
第1被溶解物120,120が互いに接触し合って当接予定部位121が生じている場合、第1被溶解物120,120及び当接予定部位121に樹脂材料は浸透しない(図3参照)。そのため、図8(b)のように、第1被溶解物同士は「8」の字形状として接合する。第1被溶解物が除去された後、「8」の字形状となって微細空洞部は残る。当接予定部位121もくびれた形状として事後的に連通開口部16(図3参照)として残る。つまり、粒状物である第1被溶解物自体を被封入生物体の体長よりも小さくせずとも、あるいは、被封入生物体の体長よりも小さな第1被溶解物が調達できなかったとしても、第1被溶解物同士の当接、接触を利用して、この部位に生じる連通開口部を被封入生物体の体長よりも小とすることができる。そこで、いったんバイオリアクター用構造物の内部に封入された生物体は容易に当該構造物の外部に漏洩しなくなる。
【0070】
図8に示すように、第1被溶解物同士は互いに接触した構造として形成されている(併せて図3も参照できる)。微細空洞同士を互いに連通させた多孔質構造を得るに際し、最も単純な方法は空洞部自体の数を増やすことである。そこで、微細空洞部形成の元となる第1被溶解物の添加量自体を増やすことにより実現できる。生物体封入バイオリアクター用構造物を形成するに際し、外側混合物の部位に占める第1被溶解物の体積割合を、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上とすることにより実現できる。ただし、第1被溶解物の量(体積割合)が増えすぎると、生物体封入バイオリアクター用構造物としての強度が低下し、脆弱化するため、ほぼ85%が上限となる。
【0071】
続いて、第1被溶解物、第2被溶解物、空間部形成材料、並びに多孔質構造体の多孔質空洞部(第1多孔質空洞部、第2多孔質空洞部)、及び空間部の形成手法を述べる。図6、図7にて既に開示のとおり、第1被溶解物、第2被溶解物、及び空間部形成材料の溶解に際しては、水を溶媒として被包構造体をその中に浸漬、あるいは散水等が行われ、被包構造体内部の第1被溶解物、第2被溶解物、及び空間部形成材料は溶解される。水には、温水、熱水、亜臨界水も含まれる。また、酸・アルカリのpH値の調整や適宜の塩類の溶解液も含まれる。これらは総称して水系の溶剤である。
【0072】
第1被溶解物の大きさは、微細空洞部の大きさ(約1μm〜100μmの範囲内、好ましくは約1μm〜30μmの範囲内)に合致する程度の大きさとする必要がある。これとは逆に第2被溶解物、空間部形成材料については内部に生物体が封入されるため、特には大きさの制約は無い。水溶性の被溶解物を具体的に挙げるならば、糖類の結晶、例えば、グルコースの結晶、氷砂糖、あるいは粉糖(糖の凝固物)等である。塩類の結晶の場合、例えば、塩化ナトリウムの結晶、みょうばんの結晶、硝酸カリウムの結晶等である。石灰岩や炭酸カルシウム結晶を水溶性の被溶解物とすることも可能である。この場合、水系の溶媒として希塩酸を用い溶解が行われる。それぞれは所定の粒子径に粉砕、分級される。自明ながら、樹脂材料は水系の溶剤に不溶、難溶な材料から構成される。
【0073】
水系の溶剤を用いる利点は、第1被溶解物、第2被溶解物、及び空間部形成材料の溶解、溶出を安価かつ容易に行うことができる。また、第1被溶解物、第2被溶解物、及び空間部形成材料等の各被溶解物(各被除去物)の溶解後の処理として、乾燥のみで済むことから製造に要する処理が簡便となり、相対的に製造原価の圧縮が可能となる。
【0074】
水系の溶剤の別形態として、第1被溶解物、第2被溶解物、及び内側材料として用いた空間部形成材料は酵素により分解され溶解可能となる物質から選択される。すなわち当該酵素の基質が用いられる。使用する酵素は、アミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ(ペプチダーゼ)等の加水分解酵素から適切に選択され、基質に応じて単一種の酵素、あるいは複数種の酵素としても良い。酵素と被溶解物との対応は両者間の基質特異性に依存する。アミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ等による場合、基質となる被除去物は糖鎖化合物となる。リパーゼは直鎖カルボン酸、トリグリセリド、パラフィン等の油脂類の分解に用いられる。プロテアーゼ(ペプチダーゼ)はタンパク質、あるいはペプチド結合、アミド結合を有する高分子化合物、ポリ乳酸等の加水分解に用いられる。
【0075】
具体例を明示すると、基質となる被溶解物がデンプンの場合、酵素はα,β−アミラーゼ、加えてプルラナーゼ等が選択される。同時に、多孔質構造体を成す基材は、前記のアミラーゼ等の加水分解を受けない組成とする必要がある。例えば、基材はポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂素材となる。
【0076】
デンプン粒子の形態や粒径は植物種によって異なり、粒径は約1〜100μmである。例えば、馬鈴薯デンプンの粒子は平均粒径約30〜40μmの楕円形であり、コーンスターチ粒子は平均粒径13〜15μm程度でその形状はやや角張っている。他に、タピオカデンプンの粒子は約5〜15μm、食用カンナのデンプン粒子は約30〜40μmの粒径である。封入する生物体の体長に応じてこれらのデンプン粒子が第1被溶解物、第2被溶解物として選択される。第2被溶解物、空間部形成材料には米や麦等の粒をそのまま用いることができる。あるいは、デンプンを練って、シート状、板状、棒状、粒状とすることもできる。さらには、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等の水溶性樹脂をシート状、板状、棒状、粒状とすることもできる。なお、酵素分解を容易にするため、成形体は分解するデンプンの糊化温度以上の温水浴中にて加温され、デンプンの糊化(アルファ化)が促進される場合もある。
【0077】
酵素処理に供する酵素溶液は、当該酵素の活性が最適に反映される至適温度、至適pHに維持される。第1被溶解物、第2被溶解物、空間部形成材料(つまり基質)の酵素加水分解物により、酵素溶液自体のpH等が変化することもあり得るため、適宜の緩衝液が添加されることもある。また、酵素加水分解物が反応阻害剤としても作用する懸念もあり得ることから、連続処理、回分処理を適式に組み合わせて行われる。併せて、用途に応じ、必要により残存する酵素の失活を行う場合もある。例えば、アルコール、高塩溶液、酸や塩基の溶液へ浸す他、加熱することもある。なお、樹脂材料の性質によるものの、速度反応論を加味して、至適温度を高めとする酵素の選択が好ましい。酵素処理を利用する利点は、水に不溶、難溶、あるいは含水に伴ってゲル化や粘調化する溶解物を用い、より速い処理速度により微細空洞部を形成可能な点である。
【0078】
水系の溶剤に加えて有機溶剤も加えられる。そこで、第1被溶解物、第2被溶解物、空間部形成材料を有機溶剤により溶解されて除去可能な物質とすることもできる。有機溶剤の種類は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールをはじめとする各種アルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、他にアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、他にアセトニトリル等、また、へキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、シリコーンオイル、テルペン類、リモネン等のいずれであっても良い。これらは、単独種で用いることもできるが、構造体を形成する樹脂材料及び各被溶解物の溶解性に鑑み複数種の有機溶剤を混合調整して用いることができる。構造体を形成する樹脂材料並びに各被溶解物が共に油溶性成分である場合であっても、被溶解物のみ特に有機溶剤に溶解しやすい樹脂種を選択し、構造体を形成する樹脂材料の溶解が進行する以前に溶剤を除去することも考えられる。各被溶解物を有機溶剤に溶出させた後、被包構造体は適宜乾燥を経て所望の多孔質構造体となる。
【0079】
第1被溶解物、第2被溶解物、空間部形成材料の除去は、簡単に調達できる水、酵素、または有機溶剤のいずれかとなるため、製造経費を軽減することができる。同時に、これらにより溶解される組成であるため、多孔質構造体を製造する際の量産性に優れる。
【0080】
図9の模式図に基づいて生物体封入バイオリアクター用構造物の第1製造例を説明する。第1製造例は共押出しを利用した例である。図9(a)では、Tダイ201の口金部202から、前出の外側混合物101及び空間部形成材料130が3層シート状物210pとして一緒に吐出される。共押出しにより、空間部形成材料130の周囲は外側混合物101により被覆される。また、図9(b)では、Tダイ201の口金部202から、前出の外側混合物101及び内側混合物111が3層シート状物210qとして一緒に吐出される。同じく、共押出しにより、内側混合物111の周囲は外側混合物101により被覆される。
【0081】
外側混合物及び空間部形成材料の両方からなる被包構造体は3層シート状物210pに相当し、内側混合物及び外側混合物の両方からなる被包構造体は3層シート状物210qに相当する。共押出しにより得られた被包構造体では、樹脂材料が固化した後、図7や図8の説明のとおり、第1被溶解物、第2被溶解物、空間部形成材料が、水や有機溶媒による溶解、酵素による分解により、完全に消失する(除去完了)。そして、図9(c)のように、空間部104pの両側に多孔質空洞部103pが層状に連続した多孔質構造体216pを得ることができる。ただし、空間部形成材料130の消失に伴い、その空間部104pの両側に生じる多孔質空洞部103pが分離しないようにする必要がある。例えば、3層シート状物210pの成形時において、3層シート状物210pの端部に空間部形成材料130を配置せず、外側混合物101により空間部形成材料130を完全に被覆することである。こうして、空間部形成材料130の完全な被覆と共に、層構造の維持も可能となる。また、図9(d)のように、第2多孔質空洞部114qの両側に第1多孔質空洞部113qが層状に連続した多孔質構造体216qを得ることができる。多孔質構造体216qにおいても、第2多孔質空洞部114qを構成する樹脂材料の両側に第1多孔質空洞部113qがそれぞれ固定されるため、両側の第1多孔質空洞部113qが分離することはない。
【0082】
樹脂成形の共押出しの製造方法を生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法に適用することにより、既存の樹脂加工の手法を応用できるため、簡易かつ迅速に被包構造体を得ることができる。このため、バイオリアクター用構造物を量産する際の生産効率向上が可能となる。特に共押出しの製造方法では、図9の多孔質構造体216pのような連続した空間部を得る場合や、多孔質構造体216qのような多孔質状の空間部を得る場合等、用いる材料を選択することで造り分けが容易となる。このように共押出しを利用する場合、樹脂基材には熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
【0083】
次に、図9の過程により出来上がった多孔質構造体に対し熱融着を施すことにより、被封入生物体を注入可能とする閉鎖空間を形成する方法の一例を開示する。前記の多孔質構造体216qを例に図示する。図10(a),(b)のとおり、この多孔質構造体216qに対し、所定部位で多孔質構造体の表面側から熱板231,232が押し当てられる。開示では両表面側から熱板を押し当てている。熱板と多孔質構造体との接触面は押圧されながら圧縮され、ついに第1多孔質空洞部113qと第2多孔質空洞部114qは潰され、樹脂基材は熱融着される。
【0084】
多孔質構造体と熱板の密着部位235では各層の樹脂が溶融し、固化後に板状となる。この密着部位235により第2多孔質空洞部114qは封止される(封止部114r)。こうして、第2多孔質空洞部114qは完全に第1多孔質空洞部113qの内部に取り囲まれ、第2多孔質空洞部は直に外部に露出しなくなる。つまり、多孔質構造体の末端部分の封止が完全となり、被封入生物体を保持可能な隔離された内部空間を得ることができ、生物体封入バイオリアクター用構造物は完成する。なお、多孔質構造体に対する熱融着は、開示の熱板によるヒートシールの他に超音波圧着等の公知手法も用いられる。
【0085】
図10(c)の模式図は当該第1製造例により作成した生物体封入バイオリアクター用構造物10Kである。熱板による密着部位235はバイオリアクター用構造物の大きさ、形状、用途、封入する生物体の量、製造装置等に応じて適宜である。熱板の密着部位において裁断して小分けするほか、1枚のシートとしても使用することができる。このように、加熱圧着を伴う場合、樹脂材料には熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。図示を省略するが、多孔質構造体216pであっても同様である。バイオリアクター用構造物のどのような位置にも加熱圧着することができるため、目的に応じた形状への加工が容易となる。
【0086】
図11、図12の模式図に基づいて生物体封入バイオリアクター用構造物の第2製造例を説明する。図11は空間部形成材料を含めた加熱ラミネートを利用した例である。はじめに、前記の外側混合物に由来する外側シート状物101sが準備される。第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、これを適宜方法によりシート状に成形して外側シート状物101sを得ることができる。図6ないし図8において説明した外側混合物と同様、第1被溶解物は事後的に溶解可能な粒状物であり、当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする。
【0087】
図11(a)に示すとおり、事後的に溶解可能であると共に第1被溶解物の粒径よりも大となる厚さの空間部を形成する空間部形成材料が用意され、これも予めシート状物として成形される(シート状空間部形成材料130s)。そこで、シート状空間部形成材料130sの上下両面に外側シート状物101s,101sが重ねられる。このように積層された後、図示の例では加熱ローラ241,242間に積層物は搬入され、外側シート状物同士が加熱ラミネートされて積層構造体210sとなる。
【0088】
図11(b)の例は、前記のシート状空間部形成材料130sを細切れにするほか、あるいは同シート状空間部形成材料130sを間欠的に送り込み外側シート状物101s,101s間に載置して積層化している様子である。同様に加熱ローラ241,242間に積層物は搬入され、外側シート状物同士が加熱ラミネートされて積層構造体210tとなる。この場合、シート状空間部形成材料130s毎の隙間も外側シート状物の溶融樹脂により満たされ、一体化する。
【0089】
図11(c),(d)に示すように、加熱ラミネートにより形成された積層構造体210sあるいは210tにおいて、既述のとおり、第1被溶解物及びシート状空間部形成材料が、水や有機溶媒による溶解、酵素による分解により、完全に消失する。その結果、第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部103s,103tが形成される。さらに、その内側にシート状空間部形成材料の除去に起因した空間部104s,104tが形成される。こうして多孔質構造体216s,216tが得られる。特に、図11(d)の多孔質構造体216tは、シート状物の両表面をつないで空間部を貫通する柱部217tが生じる。なお、多孔質構造体216sにおいても、シート状空間部形成材料130sの消失に伴い、その空間部104sの両側に生じる多孔質空洞部103sが分離しないようにする必要がある。積層構造体210sの成形時において、積層構造体210sの端部にシート状空間部形成材料130sを配置せず、外側シート状物101sによりシート状空間部形成材料130sを完全に被覆する。こうして、シート状空間部形成材料130sの完全な被覆と共に、層構造の維持も可能となる。
【0090】
図12は外側混合物に内側混合物を含めて加熱ラミネートした例である。はじめに、前記と同様に外側混合物に由来する外側シート状物101sが準備される。第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、これを適宜方法によりシート状に成形して外側シート状物101sを得ることができる。既述の外側混合物と同じく、第1被溶解物は事後的に溶解可能な粒状物であり、当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする。
【0091】
図12(a)に示すとおり、前出のとおり、事後的に溶解可能であると共に第1被溶解物よりも粒径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得て、これも適宜方法によりシート状に成形して内側シート状物111uを得ることができる。そこで、内側シート状物111uの上下両面に外側シート状物101s,101sが重ねられる。このように積層された後、加熱ローラ241,242間に積層物は搬入され、外側シート状物同士が加熱ラミネートされて積層構造体210uとなる。
【0092】
図12(b)の例は、前記の内側シート状物111uを細切れにするほか、あるいは同内側シート状物111uを間欠的に送り込み外側シート状物101s,101s間に載置して積層化している様子である。同様に加熱ローラ241,242間に積層物は搬入され、外側シート状物同士が加熱ラミネートされて積層構造体210vとなる。この場合、内側シート状物111u毎の隙間も外側シート状物の溶融樹脂により満たされ、一体化する。
【0093】
図12(c),(d)に示すように、加熱ラミネートにより形成された積層構造体210uあるいは210vにおいて、既述のとおり、第1被溶解物及び第2被溶解物が、水や有機溶媒による溶解、酵素による分解により、完全に消失する。その結果、第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部113u,113vが形成される。さらに、その内側に第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部114u,114vが形成される。こうして多孔質構造体216u,216vが得られる。特に、図12(d)の多孔質構造体216vは、シート状物の両表面をつないで空間部を貫通する柱部217vが生じる。
【0094】
図11(c)や図12(c)の多孔質構造体216s、多孔質構造体216uに対する熱融着は、加熱ローラの他に図10参照のとおりの熱板によるヒートシールの他に超音波圧着等の公知手法を用いることができる。こうして、多孔質空洞部の内側の空間部は封止されて被封入生物体を注入可能とする閉鎖空間が形成され、生物体封入バイオリアクター用構造物が出来上がる。図11(d)や図12(d)の多孔質構造体216t、多孔質構造体216vについては、そのまま、複数の被封入生物体を注入可能とする閉鎖空間を複数有した生物体封入バイオリアクター用構造物とすることができる。あるいは、空間部104tが途切れる多孔質空洞部103tや、第2多孔質空洞部114vが途切れる多孔質空洞部113vの箇所で切断するほか、図10参照のとおりの熱板によるヒートシールの他に超音波圧着等の公知手法を用いて封止、切断をすることもできる。
【0095】
図11、図12の加熱ラミネートを用いる方法とする場合、予め積層するもととなる樹脂のシート状物を別途製造しておくことができるため、必要時に必要な量だけ多孔質構造体を生産することができる。このため、生産調整が円滑となる。また、前記の共押出しの製法と同様に既存の樹脂加工の手法を利用できるため、生産効率は高い。むろん、積層構造体として一時的に保存することもできる。
【0096】
これまでの説明から明らかであるように、本発明のバイオリアクター用構造物は樹脂材料を構造骨格として形成されていることから、軽量であり、扱いが便利である。とりわけ、シート状に形成できるため、折り曲げや積層等が容易である。また、多孔質空洞部の内部に形成される被生物体を封入する空間部(多孔質空洞部)は、完全に多孔質空洞部により封止、密閉される。このため、生物体を保持する上で極めて良好な遮蔽性を示している。同時に、生物体を封入、保持する空間部(多孔質空洞部)は、その外側の多孔質空洞部内により囲まれている。このことから、内部に封入された生物体の代謝に必要な酸素や炭酸ガス等のガス成分の流通、栄養分や老廃物、代謝産物等の通過も格段に良好である。つまり、物質移動を容易としながら封入した生物体の反応系外部への拡散を低減可能なバイオリアクター用構造物を得ることができた。
【実施例】
【0097】
発明者らは、生物体封入バイオリアクター用構造物として、図1,図6のとおり概略視できる多孔質構造の内部に空間部を備えた生物体封入バイオリアクター用構造物(実施例1,実施例2)と、図2,図7のとおり概略視できる多孔質構造の内部に多孔質構造の空間部を備えた生物体封入バイオリアクター用構造物(実施例3,実施例4)の2種類を試作し、これに生物体を封入しバイオリアクターとしての作用、性能を評価した。
【0098】
[実施例1のバイオリアクター用構造物の作成]
試作例1の作成に当たり、樹脂基材として直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製:ユメリットZM033)を用いた。以下同樹脂を「LLDPE樹脂」と略記する。空間部形成材料に水溶性シートを用いた。この水溶性シートはポリビニルアルコールからなる厚さ60μmのシート状物(日本合成化学株式会社製:ハイセロンS−400C)である。
【0099】
第1被溶解物となるタピオカデンプン(東海澱粉株式会社製:平均粒径約9μm)70重量部をLLDPE樹脂30重量部に混入し、150℃に加熱し樹脂を溶融しながら混錬して外側混合物(図6等の説明参照)を調製した。この外側混合物をステンレス鏡面板内に注入し、150℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断して外側シート状物(縦5cm×横5cm,厚さ1mm)を得た。
【0100】
空間部形成材料となるポリビニルアルコールの水溶性シートを10枚重ね、これを縦3cm×横3cmの正方形に裁断し、2枚の外側シート状物の中央に挟み込んだ。外側シート状物の周囲に高さ1mmのスペーサー(厚さ調節用の治具)を配し、積層状態の外側シート状物/空間部形成材料/外側シート状物に対して150℃を維持しながら5MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。こうして、空間部形成材料の上下両面及びその四方を完全に外側シート状物により被覆した積層構造体(Ls1)を得た。
【0101】
酵素として耐熱α−アミラーゼ(大和化成株式会社製:クライスターゼT10S)を用い、同酵素を1重量%含み、80℃に加温した熱水浴中に前記の積層構造体(Ls1)を2時間浸漬した後、40℃の超音波浴中に5分間浸漬した。続いて、吸引びんにブフナー漏斗を接続すると共にこの漏斗上に載置し、吸引しながら蒸留水を通水した。ブフナー漏斗を通過した通過液が糖類の呈色反応を示さなくなるまで蒸留水の通水洗浄を続けた。洗浄後、80℃の乾燥機内で24時間乾燥した。こうして、積層構造体(Ls1)から第1被溶解物及び空間部形成材料の両方を溶解して除去し、多孔質空洞部の内部に空間部を備えた実施例1の生物体封入バイオリアクター用構造物を得た。
【0102】
[実施例2のバイオリアクター用構造物の作成]
実施例2の生物体封入バイオリアクター用構造物は、樹脂基材を実施例1にて用いたLLDPE樹脂からエチレンビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業株式会社製:ソノアール4412)に変更し、加熱プレス成形時の温度を170℃とした。その他の作成の条件、手法は、全て実施例1と同様とした。
【0103】
[実施例3のバイオリアクター用構造物の作成]
実施例3の作成にあたり、樹脂基材には実施例1と同様のLLDPE樹脂を用いた。また、実施例1と同様に第1被溶解物として前記のタピオカデンプン70重量部をLLDPE樹脂30重量部に混入し、150℃に加熱し樹脂を溶融しながら混錬して外側混合物(図7等の説明参照)を調製した。この外側混合物をステンレス鏡面板内に注入し、150℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断して外側シート状物(縦5cm×横5cm,厚さ1mm)を得た。
【0104】
第2被溶解物となるカンナデンプン(パプアニューギニア産:平均粒径約40μm)70重量部をLLDPE樹脂30重量部に混入し、150℃に加熱し樹脂を溶融しながら混錬して外側混合物(図7等の説明参照)を調製した。この外側混合物をステンレス鏡面板内に注入し、150℃を維持しながら10MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。成形後、冷却、裁断して内側シート状物(縦5cm×横5cm,厚さ500μm)を得た。
【0105】
内側シート状物を縦3cm×横3cmの正方形に裁断し、2枚の外側シート状物の中央に挟み込んだ。外側シート状物の周囲に高さ1mmのスペーサー(厚さ調節用の治具)を配し、積層状態の外側シート状物/内側シート状物/外側シート状物に対して150℃を維持しながら5MPaで5分間押圧して加熱プレス成形した。こうして、内側シート状物の上下両面及びその四方を完全に外側シート状物により被覆した積層構造体(Ls2)を得た。
【0106】
実施例1と同様の耐熱α−アミラーゼを用い、同酵素を1重量%含み、80℃に加温した熱水浴中に前記の積層構造体(Ls2)を2時間浸漬した後、40℃の超音波浴中に5分間浸漬した。この後、実施例1と同様の洗浄条件による洗浄を終えた後、80℃の乾燥機内で24時間乾燥した。こうして、積層構造体(Ls2)から第1被溶解物及び第2被溶解物の両方を溶解して除去し、多孔質空洞部の内部に多孔質の空間部を備えた実施例3の生物体封入バイオリアクター用構造物を得た。
【0107】
[実施例4のバイオリアクター用構造物の作成]
実施例4の生物体封入バイオリアクター用構造物は、樹脂基材を実施例3にて用いた直鎖状低密度ポリエチレンから、実施例2で使用のエチレンビニルアルコール樹脂に変更し、加熱プレス成形時の温度を170℃とした。その他の作成の条件、手法は、全て実施例3と同様とした。
【0108】
[バイオリアクター用構造物の観察]
実施例1ないし4のバイオリアクター用構造物について、中央部分で厚さ方向に切断し、それぞれの断面構造を電子顕微鏡により観察した。なお、構造の相違を把握するため、各写真の倍率は異なる。図13は実施例1の電子顕微鏡の縦断面写真(倍率50倍)、図14は実施例2の縦断面写真(倍率50倍)、図15は実施例3の縦断面写真(倍率75倍)、図16は実施例4の縦断面写真(倍率35倍)である。
【0109】
図13,14から把握されるように、両実施例とも多孔質空洞部の内部に空間部を備えていることがわかる。図15,16から把握されるように、多孔質空洞部の内部にさらに大きさの異なる多孔質の空間部を備えていることがわかる。実施例1,3は樹脂基材にLLDPE樹脂を用いていることから構造体自体が軟らかくなり、切断時に多孔質の空洞が潰れたと考えられる。対照的にエチレンビニルアルコール樹脂の方がLLDPE樹脂よりも多少剛性があるため、切断面は鮮明である。図示の実施例1ないし4の電子顕微鏡写真による観察のとおり、樹脂の種類を変更しても所望の構造を具備した生物体封入バイオリアクター用構造物を得ることができた。
【0110】
[生物体の選択、濃度の測定]
発明者らは生物体として酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用い、予め所定の濃度で培養した。酵母には、財団法人日本醸造協会が供給する清酒用酵母:きょうかい7号を用いた。前記の酵母を酵母エキス3g、麦芽エキス3g、ポリペプトン5g、グルコース10g、クロラムフェニコール0.05g、及び蒸留水1Lからなる液体培地にて培養した。また、寒天培地(Difco社製:YMAgar)においても同酵母を培養し、次の酵母濃度の測定に用いた。
【0111】
寒天培地にて培養した酵母から、白金耳2回分の画線を分取し、液体培地9mL内に懸濁した。液体培地の酵母懸濁液の吸光度を吸光光度計により測定した(波長:660nm)。吸光度と酵母数の相関から、同懸濁液中の酵母の濃度を1mL当たり107〜108個と推定した。これをさらに液体培地により希釈して106個/mLの酵母濃度とした。
【0112】
[バイオリアクターの試作]
事前に作成した実施例1ないし4の生物体封入バイオリアクター用構造物の中から、構造が異なる実施例1と実施例3の生物体封入バイオリアクター用構造物を代表として選択し、それぞれの構造物からバイオリアクターの作成を試みた
【0113】
実施例1の生物体封入バイオリアクター用構造物の空間部内に、注射器を用いて前記の希釈による酵母懸濁液(酵母濃度106個/mL)を注入した。1個の実施例1のバイオリアクター用構造物当たり750μLの酵母懸濁液を注入した。以降、実施例1のバイオリアクターと称する。実施例3の生物体封入バイオリアクター用構造物の空間部内(多孔質状)にも、同様に注射器を用いて前記の希釈による酵母懸濁液(酵母濃度106個/mL)を注入した。1個の実施例3のバイオリアクター用構造物当たり100μLの酵母懸濁液を注入した。以降、実施例3のバイオリアクターと称する。注射器による酵母の注入後、バイオリアクター用構造物に生じた注射針の跡にLLDPE樹脂を当てて熱融着させ、針跡の穴を完全に塞いだ。両実施例のバイオリアクター用構造物とも、オートクレーブにより100℃、約30分の加熱滅菌を行い、乾燥機にて乾燥してから酵母の注入に供した。
【0114】
[バイオリアクターの性能評価]
内容量300mLの培養瓶に前出の液体培地を50mLずつに入れて代謝反応瓶とした。ここに実施例1のバイオリアクター、実施例3のバイオリアクターのそれぞれを1個ずつ静置し、代謝反応瓶の開口部を軽く密栓しアルミニウム箔で覆った。水を張ったデシケーター内に代謝反応瓶を置き、25℃の恒温器に入れて11日から20日間にわたり代謝状況を観察し、液体培地内の成分変化等を調べた。
【0115】
[生物体漏洩の評価]
実施例のバイオリアクターから生物体(酵母)が外部に漏洩したか否かについて、液体培地の吸光度の測定と共に、培養試験により確認した。吸光度の測定では、実施例のバイオリアクターを入れた代謝反応瓶から所定期間毎に液体培地を1mLずつ分取し、吸光光度計により660nmの吸光度を測定し、培地の濁りの程度を調べた。培養試験については、シャーレに前出の寒天培地(20mL相当)を入れて培地とし、ここに実施例のバイオリアクターを入れた代謝反応瓶から所定期間毎に液体培地を1mLずつ分取して注入し、25℃でインキュベートして酵母のコロニーの有無を調べた。
【0116】
実施例1,3のバイオリアクターに関する吸光度の測定並びに培養試験の結果、いずれからも酵母の漏洩を示す証拠は無かった。
【0117】
[代謝の推移]
実施例1のバイオリアクターはほぼ毎日、実施例3のバイオリアクターは3,4日毎にそれぞれの代謝反応瓶から液体培地を分取し、培地中の栄養分(グルコース)と、代謝産物(エタノール)の量(濃度)の変化、推移を調べた。液体培地は1mLずつ分取してマイクロチューブに入れ、0.45μmのメンブレンフィルタにより遠心分離器を用いて濾過した。濾過後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、ピーク面積からグルコースとエタノールの濃度を求めた。HPLCに装着したカラムにはKS−801(昭和電工株式会社製)を使用した。カラム温度を60℃に設定し、キャリアを純水として流速0.5mL/minの条件でサンプルを装填した。
【0118】
実施例1のバイオリアクターに関する代謝の結果は図17のグラフ、実施例3のバイオリアクターに関する代謝の結果は図18のグラフのとおりである。いずれのグラフからも当初のグルコースの濃度は低下し、これと対照的に代謝産物であるエタノールの濃度は上昇した。バイオリアクター内に封入した生物体(酵母)が、液体培地の栄養分(グルコース)を消費し、代謝産物(エタノール)を産生したことが証明できた。なお、図18において、変化が遅い理由は、実施例3のバイオリアクター自体が保持している酵母の量が、実施例1のバイオリアクターよりも少ないためと考える。
【0119】
[考察]
一連の評価、計測の結果から理解できるように、本実施例の生物体封入バイオリアクター用構造物は、生物体をその内部に保持して栄養分の内部への流入と代謝産物の外部への流出が可能である。しかも、いったんバイオリアクター用構造物内に封入された生物体(微生物)がバイオリアクター用構造物の外部に漏洩するおそれが低いことも確認した。つまり、多孔質構造における微細空洞部の大きさを制御することにより、バイオリアクターの内外の物質移動を容易とし、かつ封入した生物体のバイオリアクター外部へ漏洩、拡散の低減を可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法により製造した生物体封入バイオリアクター用構造物、さらにこれに生物体を封入してなる生物体封入バイオリアクターを用いることにより、各種生物体の反応に好適なバイオリアクターを得ることができる。特に、医薬品等の製造、食品工業、その他農林水産業、さらには環境浄化等の分野においても利用し得る。
【符号の説明】
【0121】
10A,10B,10Sa,10Sb,10Sc,10K 生物体封入バイオリアクター用構造物
11 樹脂基材
12 微細空洞部
13 多孔質構造
20a,20b 空間部
25 大径の粒状空洞部
100 樹脂材料
101 外側混合物
102 被包構造体
103 多孔質空洞部
104 空間部
111 内側混合物
113 第1多孔質空洞部
114 第2多孔質空洞部
120 第1被溶解物
125 第2被溶解物
130 空間部形成材料
210p,210q 3層シート状物
210s,210t,210u,210v 積層構造体
216p,216q,216s,216t,216u,216v 多孔質構造体
235 密着部位
Bm 生物体
Lm 体長
Fm 培養槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材内に連通した微細空洞部を備えた多孔質構造を有し、前記微細空洞部の内径よりも大径とする空間部を前記多孔質構造のさらに内側に備えると共に、前記空間部が前記多孔質構造により被覆されていることを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物。
【請求項2】
前記連通した微細空洞部同士の連通開口部の口径が、被封入生物体の体長よりも小さく形成されている請求項1に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物。
【請求項3】
前記空間部が、前記被封入生物体の体長よりも大径の粒状空洞部からなる多孔質構造として形成されている請求項1又は2に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物。
【請求項4】
前記被封入生物体が微生物である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバイオリアクター用構造物の形態がシート状物である生物体封入バイオリアクター用構造物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物において、前記空間部内に前記被封入生物体を封入してなることを特徴とする生物体封入バイオリアクター。
【請求項7】
事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、
事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物の粒径よりも大となる空間部を形成するための空間部形成材料の周囲を前記外側混合物により被覆して被包構造体を形成し、
前記被包構造体において前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部のさらに内側に前記空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体を形成する
ことを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項8】
事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得て、
事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物よりも粒子径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得て、
前記内側混合物の周囲を前記外側混合物により被覆して被包構造体を形成し、
前記被包構造体において前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部のさらに内側に前記第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部を備えた多孔質構造体を形成する
ことを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項9】
前記被包構造体がシート状物であって、該被包構造体を形成するに際し、前記空間部形成材料と前記外側混合物を共押出しして前記内側材料の周囲を前記外側混合物により被覆する請求項7に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項10】
前記被包構造体がシート状物であって、該被包構造体を形成するに際し、前記内側混合物と前記外側混合物を共押出しして前記内側材料の周囲を前記外側混合物により被覆する請求項8に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項11】
前記被包構造体がシート状物であって、前記被包構造体から得られた多孔質構造体に対し、所定部位で前記多孔質構造体の表面側から加熱圧着が行われる請求項9又は10に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項12】
事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と樹脂材料とを混合して外側混合物を得ると共に、該外側混合物を予めシート状物に成形して外側シート状物とし、
事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物の粒径よりも大となる厚さの空間部を形成するための空間部形成材料の上下両面に前記外側シート状物を重ね、前記外側シート状物同士を加熱ラミネートして積層構造体を形成し、
前記積層構造体において前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した多孔質空洞部のさらに内側に前記空間部形成材料の除去に起因した空間部を備えた多孔質構造体を形成する
ことを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項13】
事後的に溶解可能な粒状物であり当該粒状物同士が当接する部位の最大開口径を被封入生物体の体長よりも小とする第1被溶解物と第1樹脂材料とを混合して外側混合物を得ると共に、該外側混合物を予めシート状物に成形して外側シート状物とし、
事後的に溶解可能であると共に前記第1被溶解物よりも粒子径を大とする第2被溶解物と第2樹脂材料とを混合して内側混合物を得ると共に、該内側混合物を予めシート状物に成形して内側シート状物とし、
前記内側シート状物の上下両面に前記外側シート状物を重ね、前記外側シート状物同士を加熱ラミネートして積層構造体を形成し、
前記積層構造体において前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物を溶解することにより、前記第1被溶解物の除去に起因した第1多孔質空洞部のさらに内側に前記第2被溶解物の除去に起因した第2多孔質空洞部を備えた多孔質構造体を形成する
ことを特徴とする生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項14】
前記外側混合物に占める第1被溶解物の体積割合を、少なくとも50%以上とする請求項7ないし13のいずれか1項に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項15】
前記第1被溶解物及び前記空間部形成材料が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項7又は12に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。
【請求項16】
前記第1被溶解物及び前記第2被溶解物が、水、酵素、または有機溶剤のいずれかによって除去される請求項8又は13に記載の生物体封入バイオリアクター用構造物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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