説明

生物学的材料の水分含有量を測定する方法及び装置

生物学的材料の水分含有量を自動操作で測定する方法が開示される。前記方法は:既知の水分含有量に応じた複数の異なる材料種類の基準データベースを設ける工程を含む。更に、木材チップ、パルプ、穀物、農作物、またはサトウキビのような生物学的材料サンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査し、そして前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つの異なるエネルギーレベルの放射線の量を求める。続いて、前記サンプルの前記生物学的材料に最も類似する材料種類を、前記基準データベースの中から特定し、そして前記生物学的材料サンプルの水分含有量を、特定した前記材料種類、及び前記サンプルを透過した放射線について求めた前記量に基づいて求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的材料の水分含有量を自動操作で測定する方法及び装置に関するものである。本発明は、木材チップのような木材の水分含有量を測定するために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
木材分野においては、加工対象の材料の水分含有量の正確な測定値を取得して、加工パラメータの制御性を上げることが極めて重要である。材料の相対的な水分含有量に関する正確な知識は、木材パルプ分野においては、多くの加工工程における最終製品の品質にとって最も重要である。例えば、機械パルプ加工において、木材チップが十分新鮮であるかどうか、すなわち十分な水分含有量を有していて、加工可能であるどうかが判明していると有利である。更に、加工時に添加される化学物質の最適量は、材料の繊維量によって変わり、そしてこの繊維量を求めるためには、材料の水分量を正しく推定することが必要である。
【0003】
木質材料の繊維量及び水分含有量を推定するこれまでに知られている方法では、当該材料を乾燥させる。しかしながら、このような方法は長ったらしく面倒であり、そして普通、正しい測定値が得られるまでに1日以上を要し、これによって、処理が全体的に遅くなる。従って、水分含有量を推定する速く、かつ確実な方法が必要になる。
【0004】
同様の必要性が、生物学的材料を扱う他の分野において生じている。例えば、バイオエネルギー分野において、生物学的材料の水分含有量を推定して、燃焼過程を更に正確に制御し、そして燃焼過程の効率を高める速く、かつ確実な方法を有することができれば有利である。
【0005】
例えば、木材の水分含有量を、X線を用いて測定することは、それ自体、既に知られている。しかしながら、このような既知の方法に共通する問題は、装置が大型になって高価になり、これらの方法を実行するのが比較的長ったらしく面倒であり、そして/または結果が不正確であり、かつ信頼性に欠けることである。
【0006】
更に、同じ発明者による特許文献1(国際特許出願第WO97/35175号明細書)には、幾つかのエネルギーレベルの放射線を使用して、例えば木材中の異なる種類の材料などの差異を明らかにする方法が開示されている。しかしながら、この方法では、木材径を更に別に測定する必要があり、そしてこの方法は、例えば水分含有量推定を自動的に行なうためには適していない。
【0007】
更に、セルロース紙の水含有量を求めるためにX線を用いるという特に早期の例が、特許文献2(英国特許出願第GB1115904号明細書)に開示されている。しかしながら、この文献において説明されているプロセスは、成分が既知の薄い材料紙に対して行なわれているに過ぎず、そして自動化には適していない。更には、非特許文献1(ISSN 0282−3772に掲載されたA.ノルデリ及びK−J.ビクターローフによる「二重エネルギーx線を用いた木材燃料の水分含有量の測定」と題する論文)には、バイオ燃料の水分含有量を測定する同様のアプローチが開示されている。しかしながら、この場合においても、判断は、材料種類に関するこれまでの知識、及びこの材料種類に関する情報に基づいて行なわれ、そしてプロセスは、自動的に行なわれることを目的としたものではなく、かつ自動的に行なわれるために適してもいない。
【0008】
従って、生物学的材料の、例えば木材の水分含有量を推定する速く、かつ正確な方法及び装置であって、例えば野外作業に従事する人々が直接使用することができる、自動的に使用することができるなど、速く、かつ正確な方法及び装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願第WO97/35175号明細書
【特許文献2】英国特許出願第GB1115904号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ISSN 0282−3772に掲載されたA.ノルデリ及びK−J.ビクターローフによる「二重エネルギーx線を用いた木材燃料の水分含有量の測定」と題する論文
【発明の概要】
【0011】
従って、本発明の目的は、生物学的材料の水分含有量を自動的に測定する方法及び装置の改善を可能にすることによって、先行技術における上述の問題を解決する、または少なくとも軽減することにある。
【0012】
この目的は、添付の請求項で定義される本発明によって達成される。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、生物学的材料の水分含有量を自動操作で測定する方法が提供され、前記方法は:
既知の水分含有量に応じた複数の異なる材料種類の基準データベースを設ける工程と;
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する工程と;
前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線の量を求める工程と;
前記サンプルの前記生物学的材料に最も類似する材料種類を、前記基準データベースの中から特定する工程と;
前記生物学的材料サンプルの水分含有量を、特定した前記材料種類、及び前記サンプルを透過した放射線について求めた前記量に基づいて求める工程
を含む。
【0014】
本発明は、具体的には、木材チップの水分含有量を推定するために利用することができるが、本発明はまた、他の形態の木材に関してのみならず、パルプ、バイオマス燃料などのような他の種類の生物学的材料に関しても使用することができる。本発明は、液状の、または別体状の、好ましくはチップの形態の生物学的材料に特に有用である。しかしながら、本発明は、他の種類の生物学的材料、具体的にはトウモロコシ、穀物、及びサトウキビのような異なる種類の農作物に関して利用することもできる。
【0015】
「moisture content(水分含有量)」とは、本出願においては、特定量の材料における水分(すなわち、水)量と合計材料量との比を指す。従って、材料の水分含有量の推定は、水分を含まない部分の量を推定することにより間接的に行なうこともできる。例えば、木材チップでは、材料は基本的に、水分及び繊維から成り、従って、水分含有量の推定は実際には、材料の繊維含有量の推定でもある。同様に、水分含有量は、本発明によれば、直接推定することができる、または材料の残りの成分の含有量を推定することにより、間接的に推定することができる。
【0016】
本発明の方法では、2つ以上の異なるエネルギーレベルの放射線の照射を利用し、そして材料の水分含有量を、測定される透過エネルギー、すなわち材料に吸収される各波長の放射線の量から直接求める、または間接的に求める。異なる木材種のような異なる材料種類は、異なる吸水率を有する。しかしながら、本発明によるシステムは、この吸水率の影響を非常に効果的な方法で、基準データベースを使用することにより補正する。
【0017】
2つ以上のエネルギーレベルの放射線の照射は、2つ以上のX線管のような2つ以上の放射線源により行なわれることが好ましい。好適には、各エネルギーレベルの放射線の照射は、別体の放射線源から行なわれる。これは、比較的簡単であり、かつコスト効率の高い解決策でありながら、しかも非常に確実であり、かつ信頼性が高い。更に、これによって、一定の放射線を材料に照射し、そして幾つかの波長の放射線を同時に同じ材料に照射することができ、これによって、例えば測定ステーションの前を連続的に通過する材料の測定が極めて有効に行なわれる。
【0018】
別の構成として、または更に別に、2つ以上の異なるエネルギーレベルの放射線は、2つ以上の検出器により検出されることが好ましい。好適には、各エネルギーレベルの放射線は、別体の放射線検出器で検出される。これは、比較的簡単であり、かつコスト効率の高い解決策でありながら、しかも非常に確実であり、かつ信頼性が高い。更に、これによって、一定の放射線を材料に照射し、そして幾つかの波長の放射線を同時に同じ材料に照射することができ、これによって、例えば測定ステーションの前を連続的に通過する材料の測定が極めて有効に行なわれる。
【0019】
しかしながら、異なるエネルギーレベルの放射線を放出する単一の放射線源を使用することもできる。これは、例えば放射線源に異なる電圧レベルを、例えば高電圧スイッチを介して供給して、異なるエネルギーレベルの放射線を間欠的に照射することにより行なうことができる。例えば、kエッジフィルタを放射線源内で使用して、異なるエネルギーレベルを実現することもできる。更に、幾つかのエネルギーレベルの放射線を連続的に、または同時に検出することができる単一の検出器を使用することもできる。
【0020】
本発明による方法/装置は、材料がパイプライン、コンベヤベルトなどで搬送されるコンベヤラインに沿ったオンライン測定に使用されるために極めて適している。これは、例えば本発明は、生物学的材料の種々の変化する高さ、及び形状に関して、材料種類などに関する所定の情報が無い状態で使用することができるので可能である。
【0021】
しかしながら、本発明は、サンプル容器内に配置される材料サンプルを測定するために、例えば加工産業、野外測定などにおいてサンプルテストするために極めて有効でもある。
【0022】
従って、本発明は、全自動操作または半自動操作で使用することができ、そしてオペレータ操作を必要としない、または極めて限定されたオペレータ操作しか必要としない。
【0023】
従って、生物学的材料、具体的には特定した材料種類及び求めた水分含有量に関する情報は、生物学的材料の次の処理を制御するための入力として使用することができる。これにより、生物学的材料の次の使用が更に効果的になる。例えば、この情報は、更に効果的な浄化、灰化、燃焼などを実現するために使用することができる。制御システムへのこの情報の送信、及び次のプロセスを制御するためのこの情報の使用は、自動化することもできる。これにより、例えば材料種類の特定、及び生物学的材料の水分含有量の測定を、当該材料が移動している途中で当該材料が次の操作に移行するときに実行し、そしてプロセスを前記情報に直接基づいて制御することが可能になる。従ってこれにより次のプロセスを、前記情報に基づいてリアルタイムに制御することができる。しかしながら、情報を保存して、特定の生物学的材料サンプルまたはバッチに関連して後の時点で利用することもできる。
【0024】
X線走査を含むことが好ましい放射線走査によってX線画像を供給することもでき、これらのX線画像を使用して、生物学的材料を更に分析することができる。従って、検出器信号は光学分析に、例えば手元にある生物学的材料の種類、及び当該材料の他の特性を求めるために使用することもできる。
【0025】
前記基準データベースのデータは、複数の異なる材料種類の材料を透過する少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線の透過率を測定することにより、そして前記材料の前記水分含有量を、従来の方法により測定することにより、好ましくは乾燥状態を制御して測定することにより編集されることが好ましい。材料種類は、例えばカバノキ、トウヒ、マツ、オーク、及びハンノキのような異なる木材種とすることができる。これにより、新規材料の次の測定により得られるのと同じ種類の測定データは、正確に測定された水分含有量データに関連付けることができる。基準データベースは初期化中に作成すれば済み、次に繰り返し再使用することができるので、特にこれらの基準データベース測定中にプロセスを高速に行なうという必要はない。
【0026】
生物学的材料サンプルを透過する2つのエネルギーレベルの放射線の量は、校正基準値を基準として求めることが好ましい。校正基準値は、例えば所定の厚さの基準材料を透過する放射線の透過率を測定することにより求めることができ、この測定は、生物学的材料を透過する放射線を測定する各操作の直ぐ前に、そして/または各操作の直ぐ後に行なわれることが好ましく、基準材料は、例えばアルミニウムである。これにより、確実に、十分な校正が常に直ぐ行なわれる。
【0027】
前記生物学的材料の材料種類は、前記基準データベースの中から、前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線について求めた前記量に基づいて特定されることが好ましい。このようにして、材料種類を自動的に特定することができ、これによって、プロセスが非常に高速に行なわれる。しかしながら、材料種類を他の方法で、例えばオペレータによる入力により、色または密度などの他のパラメータを測定することにより特定することも可能である。1つの別の構成によれば、光学方法を使用して、例えば検出器を介して供給されるX線画像に基づいて材料種類を求めることができる。しかしながら、好適には、前記生物学的材料の前記材料種類は、前記基準データベースの中から、最近似T値を有する材料種類として特定され、前記T値は、次式に従って計算され:


上式では、R=ln(N01/N)が成り立つ、すなわちRは、透過率の校正基準値N01と、第1エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの透過率値Nとの比の自然対数であり、そしてRは、第2エネルギーレベルに対応する同じ比の自然対数であり、μwater1は、第1エネルギーレベルの放射線が水を透過するときの減衰率であり、μwater2は、第2エネルギーレベルの放射線が水を透過するときの減衰率であり、そしてXwaterは、等価水厚さである。
【0028】
更に、前記生物学的材料サンプルの水分含有量は好ましくは、前記生物学的材料のK値を求めることにより求めることができ、前記K値は次式に従って計算され:


上式では、N01,N02は、2つのエネルギーレベルの放射線の透過率の校正基準値であり、そしてN,Nは、前記エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの透過率値であり、そして前記生物学的材料の水分含有量の推定は、計算した前記K値を、前記基準データベースの中から特定された材料種類に対応するK値と比較することにより行なわれる。本願発明者は、K値が、多くの種類の生物学的材料に関して、具体的には多くの木材種に関して比較的線形であり、従って、各生物学的材料種類の基準データベースの比較的少ない固有値を使用することによってもサンプル材料の広範囲の水分含有量値の正確な推定が可能になるという知見を得ている。K値が水分含有量に対して線形的に変化する場合、2つの異なるK値のみを基準データベースに格納するだけで十分である。
【0029】
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する前記工程では、1回目の走査を第1エネルギーレベルで行ない、そして次の2回目の走査を第2エネルギーレベルで行なうことが好ましい。
【0030】
前記少なくとも2つの異なるエネルギーレベルは共に、X線波長に対応することが好ましい。更に、両方の前記エネルギーレベルの放射線は、エネルギー20〜150kVpの放射線を発生する単一の放射線源から放出されることが好ましい。この場合、kVp(ピークキロボルト)は、X線管に加えられる最大電圧を指している。この最大電圧kVpによって、X線管内で加速される電子の運動エネルギー、及びX線放出スペクトルのピークエネルギーを求めることができる。X線管に加えられる実電圧は、ばらつく可能性がある。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、生物学的材料の水分含有量を自動操作で測定する装置が提供され、前記装置は:
既知の水分含有量に応じた複数の異なる材料種類のデータを含む基準データベースと;
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する走査装置と;
前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線の量を求める検出器と;
前記サンプルの前記生物学的材料に最も類似する材料種類を、前記基準データベースの中から特定し、そして前記生物学的材料サンプルの水分含有量を、特定した前記材料種類、及び前記サンプルを透過した放射線について求めた前記量に基づいて求めるプロセッサ
を備える。
【0032】
本発明のこれらの態様、及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、そしてこれらの実施形態を参照することにより明瞭になる。
【0033】
例示のために、本発明について以下に、添付の図面に示される本発明の実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態による測定装置の模式上面図である。
【図2】図2は、請求項1に記載の装置の簡易側面図であり、図1に示す装置の構成要素群のうちの幾つかの構成要素が、図を更に分かり易くするために省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1及び2を参照すると、本発明による例示的な測定装置は、少なくとも2つの異なるエネルギーレベル/波長の放射線を放出する放射線源1を備える。好ましくは、放射線源は、2つ以上の異なる波長の放射X線を放出するX線管である。好ましくは、X線管はエネルギー20〜150kVpのX線を発生する。放射線源からの出力放射線は、好ましくは、目標領域に向かってコリメータ2及びレンズ3を通って誘導される。放射線源は、コントローラ4によって制御される。
【0036】
目標領域の反対側には、検出器5を配置して、目標領域に配置される材料を透過した放射線を受けるようにしている。検出器は、アレイ状の半導体検出領域部を備える半導体検出器であることが好ましい。検出器は、プロセッサを有する制御ユニット6、例えば普通のパーソナルコンピュータに接続される。制御ユニットは、検出データを検出器から、USBポートのような適切なインターフェースを介して受信する。
【0037】
この技術分野の当業者であれば誰でも分かることであるが、測定対象の材料を、目標領域を通過するように搬送する多数の別の方法がある。開示する実施形態では、測定対象の材料は、サンプル容器10内に配置される。サンプル容器はキャリア11に載置され、このキャリア11は、サンプル容器が、目標領域を通って、そして放射線経路14を通って移動するように移動させることができる。このキャリアは、例えばコンベヤ12により移動させることができる。しかしながら、キャリアを移動させるリニアモータ、スクリュー機構、レール機構などのような他の手段を用いることもできる。
【0038】
動作状態では、測定対象の材料は、目標領域を通過しながら、そして放射線源の前を通過しながら走査される。1回目の通過では、材料サンプルに第1波長の放射線を照射し、そして2回目の通過では、復路移動中に、第2波長の放射線を照射する。校正用の基準値を取得するために、基準材料、好ましくは、所定量のアルミニウムを、サンプル容器の最初の通過時、及び最後の通過時に測定することが好ましい。
【0039】
これらの基準測定値に基づいて、校正基準値を次式に従って求める:
01,02=NAl1,2exp(μx)
上式では、N01及びN02は、エネルギーレベル1及び2にそれぞれ対応する校正基準値であり、NAl1及びNAl2は、既知の厚さのアルミニウムが通過した後の検出透過率値であり、μは、アルミニウムの既知の減衰率(cm−1)であり、そしてxは、アルミニウムの既知の厚さ(cm)である。
【0040】
基準データベース13を設け、制御ユニット6に接続し、この場合、データは、異なるエネルギーレベルの放射線に対応する少なくとも検出透過率値、及び異なる生物学的材料種類、例えば多数の異なる木材種に対応する水分含有量値に関するものである。
【0041】
異なる波長でテストされる材料を透過する放射線の検出透過率に基づいて、生物学的材料の材料種類が基準データベースの中から特定される。好ましくは、生物学的材料の材料種類は、基準データベースの中から、最近似T値を有する材料種類として特定され、前記T値は、次式に従って計算される:


上式では、R=ln(N01/N)が成り立つ、すなわちRは、透過率の校正基準値N01と、第1エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの透過率値Nとの比の自然対数であり、そしてRは、第2エネルギーレベルに対応する同じ比の自然対数であり、μwater1は、第1エネルギーレベルの放射線が水を透過するときの線形減衰率であり、μwater2は、第2エネルギーレベルの放射線が水を透過するときの線形減衰率であり、そしてXwaterは等価水厚さである。
【0042】
この等価水厚さは、次式に従って計算することができる:


上式では、μbio1は、第1エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの減衰率であり、そしてμbio2は、第2エネルギーレベルでの対応する減衰率である。生物学的材料の減衰率は普通、正確に測定する必要はなく、かつ比較的予測可能であり、そしていずれの種類の生物学的材料に関しても「経験的推測」に基づいて求めることができる。
【0043】
その後、生物学的材料サンプルの水分含有量は、生物学的材料のK値を求めることにより求めることができ、前記K値は次式に従って計算される:


上式では、N01,N02は、2つのエネルギーレベルの放射線の透過率の校正基準値であり、そしてN,Nは、前記エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの透過率値であり、そして前記生物学的材料の水分含有量の推定値は、前記計算K値を、前記基準データベースの中から特定された材料種類に対応するK値と比較することにより得られる。
【0044】
K値と基準データベースのK値との照合は、手近にある特定種類の材料の基準データベースの中から特定することができる最近接K値を特定することにより、そして対応する水分含有量値を、サンプルの推定値として使用することにより行なうことができる。補正を行なって、実際のK値と基準データベースの中から特定される最近接K値との差を補正することもできる。
【0045】
別の構成として、特定の材料種類のK値は、K値と水分含有量との一致度を表わす線形式または多項式に使用することができ、そしてこの関数を次に、サンプル材料のK値に対応する水分含有量の推定値に使用することができる。
【0046】
本発明の特定の実施形態についてこれまで説明してきた。しかしながら、この技術分野の当業者には明白であるように、幾つかの代替形態を用いることができる。例えば、放射線はX線とする必要はなく、他の種類の電磁放射線を使用してもよい。更に、生物学的材料の種類を、自動的に求め、更に半自動的にも求める種々の方法が存在する。所望の使用ラインによって変わるが、基準データベースをカスタマイズして、最も可能性の高い材料種類のみを取り込む、または極めて広範囲の異なる材料種類を取り込むことができる。更にまた、制御処理方法は、異なる態様で実行することができ、例えば特定用途ハードウェアにより、または既存の制御手段による制御を行なうソフトウェアにより実行することができる。
【0047】
このような他の明白な変更は、本発明の範囲に包含されるものとして、当該範囲が添付の請求項で定義された通りに解釈される必要がある。上述の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示しているのであり、そしてこの技術分野の当業者であれば、多くの代替の実施形態を、添付の請求項の範囲から逸脱しない範囲で想到することができることに留意されたい。これらの請求項では、括弧内のいずれの参照記号も、請求項に限定されるものとして解釈されるべきではない。「comprising」という単語は、請求項に列挙されている以外の要素群または工程群の存在を排除しない。1つの要素の前に付される「a」または「an」という単語は、このような要素が複数存在する状態を排除しない。更に、単一のユニットが、これらの請求項に列挙される幾つかの手段の機能を実行してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的材料の水分含有量を自動操作で測定する方法であって:
既知の水分含有量に応じた複数の異なる材料種類の基準データベースを設ける工程と;
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する工程と;
前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つの異なるエネルギーレベルの放射線の量を求める工程と;
前記サンプルの前記生物学的材料に最も類似する材料種類を、前記基準データベースの中から特定する工程と;
前記生物学的材料サンプルの水分含有量を、特定した前記材料種類、及び前記サンプルを透過した放射線について求めた前記量に基づいて求める工程
を含む方法。
【請求項2】
前記基準データベースのデータは、複数の異なる材料種類の材料を透過する少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線の透過率を測定することにより、そして前記材料の前記水分含有量を、従来の方法により測定することにより、好ましくは乾燥状態を制御して測定することにより編集される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する前記工程は、前記生物学的材料を別体状で、好ましくはチップの形態で配置する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する前記工程は、前記生物学的材料をサンプル容器内に配置する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線の量を、校正基準値を基準として求める、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記校正基準値は、所定の厚さの基準材料を透過する放射線の透過率を測定することにより求め、前記校正測定は好ましくは、前記生物学的材料を透過する放射線を測定する各操作の直ぐ前に、そして/または各操作の直ぐ後に行なわれ、前記基準材料は好ましくは、アルミニウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的材料の材料種類は、前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線について求めた前記量に基づいて、前記基準データベースの中から特定される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的材料の前記材料種類は、前記基準データベースの中から、最近似T値を有する材料種類として特定され、前記T値は、次式に従って計算され:


上式では、R=ln(N01/N)が成り立つ、すなわちRは、透過率の校正基準値N01と、第1エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの透過率値Nとの比の自然対数であり、そしてRは、第2エネルギーレベルに対応する同じ比の自然対数であり、μwater1は、第1エネルギーレベルの放射線が水を透過するときの減衰率であり、μwater2は、第2エネルギーレベルの放射線が水を透過するときの減衰率であり、そしてXwaterは、等価水厚さである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的材料サンプルの水分含有量は、前記生物学的材料のK値を求めることにより求めることができ、前記K値は次式に従って計算され:


上式では、N01,N02は、2つのエネルギーレベルの放射線の透過率の校正基準値であり、そしてN,Nは、前記エネルギーレベルの放射線が生物学的材料を透過するときの透過率値であり、そして前記生物学的材料の水分含有量の推定は、計算した前記K値を、前記基準データベースの中から特定された材料種類に対応するK値と比較することにより行なわれる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する前記工程では、1回目の走査を第1エネルギーレベルで行ない、そして次の2回目の走査を第2エネルギーレベルで行なう、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの異なるエネルギーレベルは共に、X線波長に対応する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
両方の前記エネルギーレベルの放射線は、エネルギー20〜150kVpの放射線が発生する単一の放射線源から放出される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
生物学的材料の水分含有量を自動操作で測定する装置であって:
既知の水分含有量に応じた複数の異なる材料種類のデータを含む基準データベースと;
前記生物学的材料のサンプルを、少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの電磁放射線で走査する走査装置と;
前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線の量を求める検出器と;
前記サンプルの前記生物学的材料に最も類似する材料種類を、前記基準データベースの中から特定し、そして前記生物学的材料サンプルの水分含有量を、特定した前記材料種類、及び前記サンプルを透過した放射線について求めた前記量に基づいて求めるプロセッサ
を備える装置。
【請求項14】
更に、前記少なくとも2つの異なるエネルギーレベルの放射線を発生する少なくとも2つの放射線発生源、好ましくは、各特定エネルギーレベルの少なくとも1つの放射線源を備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記生物学的材料の前記サンプルを透過する前記2つのエネルギーレベルの放射線の量を求める少なくとも2つの検出器、好ましくは、各特定エネルギーレベルを検出する少なくとも1つの検出器が配設される、請求項13又は14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504755(P2012−504755A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529555(P2011−529555)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062767
【国際公開番号】WO2010/037820
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511079263)マンテックス アーベー (1)