説明

生産システム

【課題】ワークに複数の作業面が存在する場合に、ワークを安定して支持して、ロボットアームの変位を効果的に抑制し、ワークを高精度に位置決めすることができる生産システムを提供する。
【解決手段】生産システムは、ロボットアーム20の先端に設けられ、ワーク50を保持するハンド30と、ワーク50に対して作業を施す作業装置とを備えている。また、生産システムは、ロボットアーム20の作業領域内に配置され、ハンド30を支持する支持面60a,60bを有する支持台60を備えている。ハンド30には、ワーク50を保持した際にワーク50に接触する面とは反対側であってワーク50の各作業面50a〜50cに平行となる被支持面30a〜30cが形成されている。ロボットアーム20は、ハンド30の複数の被支持面30a〜30cのうち、作業装置により作業が施されるワーク50の作業面に平行な被支持面を、支持台60の支持面に押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームと、ロボットアームの先端に設けられたハンドと、ハンドに保持されたワークに作業を施す作業装置とを備えた生産システムに関し、特に作業装置による作業時の反力によるロボットアームの変位を抑制する生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアームの先端に設けたハンドでワークを保持し、このワークに対して部品の組付作業や加工作業などの製造作業を施す作業装置を備えた生産システムが知られている。このような生産システムでは、製造作業実施時の作業装置による反力に抗してワークを所定の位置決め位置で支えるのは、複数の関節を介して連結されたロボットアームのみであった。
【0003】
ロボットアームを駆動するためのサーボモータは指令位置と現在位置との位置偏差に応じてトルクを発生させている。このため、製造作業実施時の反力が大きい場合には、位置決め精度を維持しつつ製造作業実施時の反力に相当するトルクを発生させることは困難であり、位置決め誤差が生じてしまうことがあった。また、ワークを保持するロボットアームの先端では複数の関節での位置決め誤差が累積してしまい、位置決め精度はさらに低下する。その結果、ビス締め作業などの製造作業実施時の反力が大きい場合には、ロボットアームのみでワークを所定の位置決め位置に維持することは困難であり、部品の精確な組付作業が困難であった。
【0004】
このような問題を改善するものとして、作業時に支持部材でハンドを支持する生産システムが提案されている(特許文献1参照)。この生産システムは、ワークに加工作業を施す加工装置と、ロボットアームの先端に設けられたハンドと、ハンドを支持する支持部を有する支持部材とを備えている。加工時にはハンドを支持部材の支持部に係合した状態を維持するとともに、加工装置と逆の方向に付勢して支持部にハンドを押付けることで、作業実施時の反力によるロボットアームの変位を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4092948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の生産システムでは、ハンドを支持部に押し付けて、ロボットアームの変位を抑制しているが、ワークに対して一方向からの作業を前提としているものである。したがって、ワークに複数の作業面が存在する場合には、上述した従来の生産システムでは対応できなかった。つまり、上述した生産システムでは、ワークにおいて作業が施される作業面とハンドにおいて支持部に押し付けられる被支持面とが平行でない場合には、ロボットアーム(即ち、ワーク)が変位してしまう可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、ワークに複数の作業面が存在する場合に、ワークを安定して支持して、ロボットアームの変位を効果的に抑制し、ワークを高精度に位置決めすることができる生産システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークの複数の作業面に順次作業を施す作業装置を備えた生産システムにおいて、多関節のロボットアームと、前記ロボットアームの先端に設けられ、前記ワークを保持するハンドと、前記ロボットアームの作業領域内に配置され、前記ハンドを支持する支持面を有する支持台と、を備え、前記ハンドには、前記ワークを保持した際に前記ワークに接触する面とは反対側であって前記ワークの各作業面に平行となる被支持面がそれぞれ形成されており、前記ロボットアームは、前記ハンドの複数の被支持面のうち、前記作業装置により作業が施される前記ワークの作業面に平行な被支持面を、前記支持台の支持面に押し付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハンドには、保持するワークの各作業面に平行な被支持面がそれぞれ形成されており、各作業面に作業を施す際に、ロボットアームにより、各作業面に平行なそれぞれの被支持面が支持面に押し付けられる。したがって、作業装置によりワークの各作業面に作業を施す際に、ワークを安定して支持することができ、ロボットアームの変位が抑制され、ワークを高精度に位置決め保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る生産システムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】各搬送用ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図3】作業装置によりワークの作業面に作業を施すのに先立つロボットアームの動作を説明するための図である。(a)は支持台の支持面とハンドの被支持面とが接触する前の状態を示す図、(b)は支持台の支持面とハンドの被支持面とが接触した状態を示す図である。また、(c)は支持台の支持面とハンドの被支持面とが接触する前の状態を示す図、(d)は支持台の支持面とハンドの被支持面とが接触した状態を示す図である。
【図4】作業装置によりワークの第2の作業面に作業を施すのに先立つロボットアームの動作を説明するための図である。(a)は支持台の支持面とハンドの被支持面とが接触する前の状態を示す図、(b)は支持台の支持面とハンドの被支持面とが接触した状態を示す図である。
【図5】本実施形態の生産システムでの生産タクト短縮効果を示したロボットアーム及び作業装置の動作を示す動作サイクル図である。(a)は仮に支持台に支持面を設けない場合のロボットアーム及び作業装置の動作を示す動作サイクル図、(b)は本実施形態のロボットアーム及び作業装置の動作を示す動作サイクル図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る生産システムの概略構成を示す斜視図である。図1において、生産システム100は、ワーク供給装置11と、少なくとも1台(図1では、2台)の作業装置12,13と、少なくとも1台(図1では3台)の搬送用ユニット14とを備えている。ワーク供給装置11及び複数の作業装置12,13は、ワーク50の搬送方向(矢印A方向)に沿って一列に配置されている。
【0012】
これらワーク供給装置11及び複数の作業装置12,13による作業位置を結ぶように、ワーク供給装置11及び複数の作業装置12,13に沿ってレール15が配置されている。各搬送用ユニット14は、搬送用ロボット40を有し、ワーク供給装置11及び複数の作業装置12,13によるそれぞれの作業位置に、レール15に沿って順次移動するように構成されている。
【0013】
ワーク供給装置11は、多関節のロボットアーム11aとロボットアーム11aの先端に設けられたハンド11bとを有する作業用ロボットである。ワーク供給装置11は、例えばベルトコンベアなどにより連続的に供給されるワーク50をハンド11bにより把持して搬送用ユニット14の搬送用ロボット40に供給する。
【0014】
作業装置12,13は、搬送用ユニット14により搬送されたワーク50に作業を施すものであり、本実施形態では、ワーク50に不図示の部品供給装置から供給された部品を組み付ける組付作業を施すものである。具体的には、作業装置12は、多関節のロボットアーム12aと、ロボットアーム12aの先端に設けられたハンド12bとを有する作業用ロボットである。また、作業装置13は、多関節のロボットアーム13aと、ロボットアーム13aの先端に設けられたハンド13bとを有する作業用ロボットである。
【0015】
これら作業装置12,13は、生産工程に応じて配置される。つまり、作業装置は少なくとも1台設けられていればよいが、本実施形態では、複数(2台)の作業装置12,13が設けられている。なお、作業装置12,13は、ワーク50に加工作業を施す加工装置(例えば穴あけ加工装置等)であってもよい。
【0016】
図2は、各搬送用ユニット14の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、各搬送用ユニット14は、レール15に沿ってワーク供給装置11及び各作業装置12,13による作業位置に順次移動するスライダ16を備えている。各スライダ16は、各々独立して自走可能に構成されている。本実施形態では、レール15及びスライダ16はリニアサーボモータであり、レール15が固定子、スライダ16が可動子である。
【0017】
各搬送用ユニット14の搬送用ロボット40は、スライダ16上に搭載された多関節のロボットアーム20と、ロボットアーム20の先端に設けられ、ワーク供給装置11により供給されたワーク50を保持するハンド30とを有する。
【0018】
また、各搬送用ユニット14は、スライダ16上に搭載され、ワーク50を保持したハンド30を支持する複数の支持面60a,60bを有する支持台60を備えている。本実施形態では、支持台60は、互いに直交する一対の支持面60a,60bを有しており、一方の支持面60aは水平に形成され、他方の支持面60bは垂直に形成されている。支持台60は、ハンド30が支持面60aの上方及び支持面60bの側方に移動できるように、ロボットアーム20の作業領域内に配置されている。
【0019】
ロボットアーム20は、Y軸方向に移動可能な直動軸21と、水平方向に旋回可能な旋回軸22と、垂直方向に旋回可能な旋回軸23〜25とにより構成される。また、旋回軸23〜25を協調して動作させることでロボットアーム20の先端に設けたハンド30をZ軸方向に直進動作させることが可能となっている。ここで、水平面内のレール15に平行な方向をX軸方向、水平面内のレール15に直角な方向をY軸方向、垂直方向をZ軸方向とする。直動軸21は、例えばサーボモータの回転をボールネジにより直進運動に変換することで駆動され、旋回軸22〜25は、例えばサーボモータの回転により各々駆動される。また、各サーボモータは電流値に制限をかけることで一定のトルクで駆動する駆動部を備えている。
【0020】
旋回軸25の先端には、ハンド30が設けられている。ハンド30は、チャック機構31とチャック機構31により開閉駆動される一対のフィンガ32とで構成されている。
【0021】
本実施形態の生産システム100で製造作業が施されるワーク50は、事務機器などの作業を施す必要のある複数の作業面50a,50b,50cを有するワークである。生産システム100では、ワーク50の各作業面50a,50b,50cに部品を組付ける組付作業を順次行う。つまり、複数の作業装置12,13でワーク50の複数(N面(Nは2以上の整数))の作業面50a〜50cに順次作業を施す。本実施形態では、N=3であり、ワーク50は、3面の作業面50a〜50cを有する。複数の作業面50a,50b,50cは、互いに交差するように形成されており、特に、作業面50aと作業面50cとは互いに直交するように形成されている。
【0022】
ハンド30には、ワーク50を保持した際にワーク50に接触する面とは反対側であってワーク50の各作業面50a〜50cに平行となる平面状の被支持面がそれぞれ形成されている。つまり、ハンド30には、複数(N面)の被支持面30a,30b,30cが形成されている。そして、ハンド30によりワーク50が保持された状態において、ロボットアーム20の姿勢によらず、作業面50aと被支持面30aとが、作業面50bと被支持面30bとが、作業面50cと被支持面30cとが各々平行になるよう構成されている。
【0023】
本実施形態では、支持台60の支持面60aはハンド30の被支持面30a及び被支持面30bを、支持台60の支持面60bはハンド30の被支持面30cをそれぞれ押し当て可能な形状となっている。
【0024】
また、本実施形態では、作業装置12は、ワーク50の作業面50aにZ軸方向から部品を組付ける第1の組付作業と、ワーク50の作業面50bにZ軸方向から部品を組付ける第2の組付作業とを順次実施する。また、作業装置13は、ワーク50の作業面50cにY軸方向から部品を組付ける第3の組付作業と、ワーク50の作業面50bにZ軸方向から部品を組付ける第4の組付作業とを順次実施する。
【0025】
以下、生産システム100の動作について図1及び図2を参照しながら説明する。まず、例えばベルトコンベアにより、ワーク50の作業面50aが水平上面になるように姿勢が整えられた状態でワーク50をワーク供給装置11に搬送すると共に、スライダ16を上流より前進させてワーク供給装置11の作業位置に移動させる。そして、ロボットアーム20の直動軸21及び旋回軸22〜25を動作させて、ワーク供給装置11のワーク供給位置に搬送用ロボット40のハンド30を位置決めさせる。
【0026】
ハンド30の一対のフィンガ32にワーク50を把持させた後、ロボットアーム20の直動軸21及び旋回軸22〜25を動作させて、ワーク50を受け取るワーク供給位置から支持台60に支持させる支持位置にハンド30を移動させる。
【0027】
次いで、スライダ16を下流に前進させると共に、ロボットアーム20の直動軸21及び旋回軸22〜25を動作させて、支持台60の支持面60aに、ハンド30の被支持面30aを押し当てさせる。つまり、ロボットアーム20は、ハンド30の複数の被支持面のうち、スライダ16による移動先での作業装置12により作業が施されるワーク50の作業面50aに平行な被支持面30aを、支持台60の支持面60aに押し付ける。
【0028】
支持面60aと被支持面30aとが押し当てられた状態で、スライダ16を停止させ、レール15に沿うように設置された作業装置12の作業位置に、ロボットアーム20の先端に設けられたハンド30を位置決めさせる。
【0029】
この作業装置12による作業に先立つロボットアーム20の動作について詳細に説明する。図3は、作業装置12によりワーク50の作業面50a,50bに作業を施すのに先立つロボットアーム20の動作を説明するための図である。
【0030】
ワーク供給装置11よりワーク50を取出した後、図3(a)に示すように、ロボットアーム20は、支持台60の支持面60aとハンド30の被支持面30aとが接触せず、且つ支持面60aと被支持面30aとが平行な姿勢P1にハンド30を移動させる。姿勢P1の状態で直動軸21及び旋回軸22はサーボロック状態にする。ロボットアーム20は、旋回軸23〜25のサーボモータの電流値に各々制限をかけた状態で、旋回軸23〜25を同期して動作させることでZ軸方向に下降させ、図3(b)に示すように、支持台60の支持面60aにハンド30の被支持面30aを押し付ける。
【0031】
この状態で、図1に示す作業装置12により、ハンド30に把持されたワーク50の作業面50aに、Z軸方向(支持面60aに垂直な方向)から第1の組付作業が実施される。なお、第1の組付作業の実施中、ロボットアーム20の旋回軸23〜25の動作により、ハンド30を作業装置12による第1の組付作業の作業方向と同一の方向に付勢して、支持面60aと被支持面30aとが押し当てられた状態を維持させる。この状態では、作業面50aと被支持面30aとが平行であり、且つ被支持面30aと支持面60aとが平行であるため、第1の組付作業実施時の反力を支持面60aで反力に対して鉛直に支えることができる。つまり、作業装置12による第1の組付作業の実施中は、ロボットアーム20による被支持面30aの押し付け状態を維持することで、第1の組付作業実施時の反力F1を支持台60の支持力F2で支持することができる。また、各サーボモータの電流値に各々制限をかけることで、一定の力で支持面60aと被支持面30aを押し当てることができ、ハンド30を衝突させた場合のような過大な負荷を各サーボモータにかけずに済む。
【0032】
第1の組付作業が完了した後、ロボットアーム20の直動軸21及び旋回軸22〜25を動作させて、支持面60aと被支持面30aとが押し当てられた状態を解除する。その後、ロボットアーム20の旋回軸22〜25を動作させて、支持台60の支持面60aにハンド30の被支持面30bを押し当てさせ、ハンド30を位置決めさせる。
【0033】
具体的に説明すると、図3(c)に示すように、ロボットアーム20は、支持台60の支持面60aとハンド30の被支持面30bが接触せず、且つ支持面60aと被支持面30bが平行な姿勢P2にハンド30を移動させる。ロボットアーム20は、各サーボモータの電流値に各々制限をかけた状態で、旋回軸23〜25を同期して動作させることでZ軸方向に下降させ、図3(d)に示すように、支持面60aに被支持面30bを押し付ける。
【0034】
この状態で、図1に示す作業装置12により、ハンド30により把持されたワーク50の作業面50bに、Z軸方向(支持面60aに垂直な方向)から第2の組付作業が実施される。なお、第2の組付作業の実施中、ロボットアーム20の旋回軸23〜25の動作により、ハンド30を作業装置12による第2の組付作業の作業方向と同一の方向に付勢して、支持面60aと被支持面30bとが押し当てられた状態を維持させる。この第2の組付作業の実施中は、ロボットアーム20により被支持面30bの押し付け状態を維持することで、第2の組付作業実施時の反力F3を支持台60の支持力F4で支持することができる。したがって、ハンド30の位置決め精度を損なうことなくワーク50を位置決めすることが可能となる。
【0035】
以上、作業装置12は一方向(支持面60aに垂直な方向)からワーク50のそれぞれの作業面50a,50bに作業を施すものであり、作業する作業面を切り替える場合には、ロボットアーム20によりハンド30(ワーク50)の姿勢を変更する。
【0036】
これに対し、作業装置13は、二方向(支持面60aに垂直な方向及び支持面60cに垂直な方向)からワークのそれぞれの作業面50a,50cに作業を施すものであり、作業する作業面を切り替える場合には、作業装置13の姿勢を変更する。
【0037】
以下、互いに直交する一対の作業面50b,50cのうち、一方の作業面50bを第1の作業面、他方の作業面50cを第2の作業面として説明する。また、互いに直交する支持台60の一対の支持面60a,60bのうち、一方の支持面60aを第1の支持面、他方の支持面60bを第2の支持面として説明する。またハンド30において、ワーク50を保持した際にワーク50に接触する面とは反対側であって、ワーク50の第1の作業面50bに平行となる被支持面30bを第1の被支持面、第2の作業面50cに平行となる被支持面30cを第2の被支持面として説明する。
【0038】
作業装置12による第2の組付作業が完了した後、スライダ16を下流に前進させると共に、ロボットアーム20の直動軸21及び旋回軸22〜25を動作させて、支持台60の支持面60aとハンド30の被支持面30bとが押し当てられた状態を解除する。
【0039】
その後、ロボットアーム20の直動軸21を動作させて、支持台60の第2の支持面60bにハンド30の第2の被支持面30cを押し当てさせる。つまり、ロボットアーム20は、ハンド30の複数の被支持面のうち、スライダ16による移動先での作業装置13により作業が施されるワーク50の第2の作業面50cに平行な第2の被支持面30cを、支持台60の第2の支持面60bに押し付ける。第2の支持面60bと第2の被支持面30cとが押し当てられた状態でスライダ16を停止させ、レール15に沿うように設置された作業装置13の作業位置に、ハンド30を位置決めさせる。
【0040】
この作業装置13による作業に先立つロボットアーム20の動作について詳細に説明する。図4は、作業装置13によりワーク50の第2の作業面50cに作業を施すのに先立つロボットアーム20の動作を説明するための図である。
【0041】
作業装置12による第2の組付作業が完了した後、図4(a)に示すように、支持台60の第2の支持面60bとハンド30の第2の被支持面30cが接触せず、且つ第2の支持面60bと第2の被支持面30cが平行な姿勢P3にハンド30を移動させる。なお、姿勢P3では第1の支持面60aと第1の被支持面30bも平行となっている。姿勢P3の状態で旋回軸22〜25をサーボロック状態にする。ロボットアーム20は、直動軸21のサーボモータの電流値に制限をかけた状態で直動軸21が駆動され、図4(b)に示すように、ハンド30の第2の被支持面30cを支持台60の第2の支持面60bに押し付ける。
【0042】
この状態で、図1に示す作業装置13により、ハンド30により把持されたワーク50の第2の作業面50cに、Y軸方向(第2の支持面60bに垂直な方向)から第3の組付作業が実施される。なお、第3の組付作業の実施中、ロボットアーム20の直動軸21の動作により、ハンド30を作業装置13による第3の組付作業の作業方向と同一の方向に付勢して、第2の支持面60bと第2の被支持面30cとが押し当てられた状態を維持させる。この第3の組付作業の実施中は、ロボットアーム20による第2の被支持面30cの押し付け状態を維持することで、第3の組付作業実施時の反力F5を支持台60の支持力F6で支持することができる。したがって、ハンド30の位置決め精度を損なうことなくワーク50を位置決めすることが可能となる。
【0043】
次に、第3の組付作業が完了した後、ロボットアーム20の直動軸21及び旋回軸22〜25を動作させて、第2の支持面60bと第2の被支持面30cとが押し当てられた状態を解除する。そして、ロボットアーム20は、図4(a)に示す姿勢P3にハンド30を移動させる。このとき、ハンド30の姿勢は維持されたままである。
【0044】
その後、各サーボモータの電流値に各々制限をかけた状態で、旋回軸23〜25を同期して動作させることでハンド30をZ軸方向に下降させ、第2の組付作業による反力を支持する場合と同様に、第1の支持面60bに第1の被支持面30bを押し当てさせる。これにより、ハンド30を位置決めさせる。
【0045】
この状態で、作業装置13により、ハンド30により把持されたワーク50の第1の作業面50bに、Z軸方向(第1の支持面60aに垂直な方向)から第4の組付作業が実施される。なお、第4の組付作業の実施中、ロボットアーム20の旋回軸23〜25の動作により、ハンド30を作業装置13による第4の組付作業の作業方向と同一の方向に付勢して、第1の支持面60aと第1の被支持面30bとが押し当てられた状態を維持させる。この第4の組付作業の実施中は、ロボットアーム20による第1の被支持面30bの押し付け状態を維持することで、第4の組付作業実施時の反力F3(図3(d))を支持台60の支持力F4で支持することができる。したがって、ハンド30の位置決め精度を損なうことなくワーク50を位置決めすることが可能となる。
【0046】
このように生産システム100ではスライダ16を適宜下流に前進させると共に、ロボットアーム20の動作により支持台60の支持面とハンド30の被支持面とが押し当てられた状態でワーク50を位置決めする。このように位置決めされたワーク50に各作業装置が作業することで一連の作業が順次実施される。
【0047】
以上、本実施形態では、作業装置13による作業において、ハンド30の姿勢を変更せずに、第3の組付作業及び第4の組付作業を行っている。以下、生産システム100における生産タクト短縮効果について、図5を参照しながら説明する。
【0048】
図5(a)は、仮に支持台60に支持面60bを設けない場合のロボットアーム20及び作業装置13の動作を示す動作サイクル図であり、図5(b)は、本実施形態のロボットアーム20及び作業装置13の動作を示す動作サイクル図である。
【0049】
まず、仮に支持台60に支持面60bを設けない場合について説明する。第3の組付作業による反力を支持するためには、支持面60aと被支持面30cとを平行にする必要があり、第4の組付作業による反力を支持するためには、支持面60aと被支持面30bとを平行にする必要がある。このため、第3の組付作業による反力と第4の組付作業による反力を支持するために、ワーク50をX軸回りに90度回転させる必要がある。従って、ロボットアーム20にワーク50をX軸回りに回転させる機構が必要になると共に、図5(a)に示すように、ロボットアーム20の先端を支持するための姿勢を変換する時間が必要になる。これにより、作業装置13は、組付作業を実施しない待機時間が長くなってしまう。
【0050】
一方、本実施形態の生産システム100では、支持台60に、第1の支持面60aと第2の支持面60bとが互いに直交するように設けられている。本実施形態では、ワーク50をX軸回りに回転させる必要はなく(即ちハンド30の姿勢を変更する必要はなく)、ロボットアーム20はより少ない姿勢の変換で済む。
【0051】
また、生産システム100では第1の支持面60aと第1の被支持面30bが平行であり、且つ第2の支持面60bと第2の被支持面30cが平行なロボットアーム20の姿勢を図4(a)に示す姿勢P3としている。このため、第3の組付作業完了後にロボットアーム20の先端に設けたハンド30を支持するための姿勢の変換が不要である。従って、図5(b)に示すように、ロボットアーム20の先端に設けたハンド30を支持するための姿勢を変換する時間がなくなり、組付作業を実施しない待機時間を短縮することが可能になる。
【0052】
このように生産システム100は、複数の支持面60a,60bを有する支持台60を備えているので、製造作業実施時の反力を支持する方向を変更できるため、ワーク50の複数の作業面への作業を順次実施する場合のワーク50の姿勢の変換がより小さくてすむ。このため、ハンド30を支持するための動作をより短い時間で完了でき、生産効率の向上が可能である。
【0053】
また生産システム100は、スライダ16に支持台60とロボットアーム20を設置しているので、スライダ16の前進と同時に支持台60の支持面とハンド30の被支持面とを押し当てることができる。このため、スライダ16が停止すると共に各作業装置12,13による作業を実施することができる。従って、生産システム全体のタクトを短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0054】
また、生産システム100のハンド30には、保持するワーク50の各作業面に平行な被支持面30a〜30cがそれぞれ形成されている。そして、各作業面50a〜50cに作業を施す際に、ロボットアーム20により、各作業面に平行なそれぞれの被支持面が支持台60の支持面に押し付けられる。したがって、作業装置12,13によりワーク50の各作業面に作業を施す際に、ワーク50を安定して支持することができ、ロボットアーム20の変位が抑制され、ワーク50を高精度に位置決め保持することができる。
【0055】
また、ハンド30に複数の被支持面30a〜30cを有することで、複数の支持台を個別に設置せずに、ワーク50の複数の姿勢で製造作業による反力を支持することが出来る。このため、支持台60に使用する部品点数を削減させることができ、生産ライン全体を簡易化、且つ低コスト化することができる。
【0056】
次に、生産システム100における位置決め位置の変更方法について、図3及び図4を用いて説明する。
【0057】
異なるワークを投入する場合や、ワークの形状に変更があった場合には、作業装置の作業位置、若しくはロボットアーム20の位置決め位置の変更が必要になることがある。作業装置が空圧を用いた一方向にのみ動作可能なエアシリンダ等により構成されている場合は、作業装置の作業位置の変更のみでは対応できず、ロボットアーム20の位置決め位置を変更する必要がある。また、作業装置が自由度の高い6軸のロボットアーム等により構成されている場合であっても、作業位置の変更に伴って部品の組付状態を確認するために設置されたカメラやセンサの取付位置の変更が必要となることがある。このため、作業装置の作業位置の変更を行うよりも、搬送用のロボットアーム20の位置決め位置を変更するほうが効率がよく、生産システムの自動化までの時間が短縮される場合がある。
【0058】
第1の組付作業の作業位置に変更があった場合は、図3(a)に示す姿勢P1の、第2の組付作業の作業位置若しくは第4の作業位置に変更があった場合は、図3(c)に示す姿勢P2の教示位置を変更すれば良い。X軸方向に変更があった場合はスライダ16の教示位置のみを、Y軸方向に変更があった場合は直動軸21の教示位置のみをそれぞれ変更することで対応ができる。水平面内にワーク50を回転させる必要がある場合には、スライダ16と直動軸21と旋回軸22との教示位置を変更することで、対応することができる。
【0059】
また、第3の作業位置に変更があった場合は図4(a)に示す姿勢P3の教示位置を変更すれば良い。X軸方向に変更があった場合はスライダ16の教示位置のみを、Z軸方向に変更があった場合は旋回軸23〜25の教示位置をそれぞれ変更することで対応ができる。
【0060】
このように本実施形態の生産システム100では、異なるワークを投入する場合や、ワークの形状に変更があった場合でも、搬送用のロボットアーム20の位置決め位置を変更することで対応でき、生産システムの自動化までの時間が短縮できる。
【0061】
なお、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
上記実施形態では、複数の作業装置がある場合について説明したが、1台の作業装置のみの場合であっても、本願発明は適用可能である。この場合、1台の作業装置がワークの複数の作業面に対して作業を施すこととなる。
【符号の説明】
【0063】
12,13…作業装置、14…搬送用ユニット、15…レール、16…スライダ、20…ロボットアーム、30…ハンド、30a〜30c…被支持面、50…ワーク、50a〜50c…作業面、60…支持台、60a〜60c…支持面、100…生産システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの複数の作業面に順次作業を施す作業装置を備えた生産システムにおいて、
多関節のロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、前記ワークを保持するハンドと、
前記ロボットアームの作業領域内に配置され、前記ハンドを支持する支持面を有する支持台と、を備え、
前記ハンドには、前記ワークを保持した際に前記ワークに接触する面とは反対側であって前記ワークの各作業面に平行となる被支持面がそれぞれ形成されており、
前記ロボットアームは、前記ハンドの複数の被支持面のうち、前記作業装置により作業が施される前記ワークの作業面に平行な被支持面を、前記支持台の支持面に押し付けることを特徴とする生産システム。
【請求項2】
ワークの複数の作業面に順次作業を施す複数の作業装置を備えた生産システムにおいて、
多関節のロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、前記ワークを保持するハンドと、
前記ロボットアームの作業領域内に配置され、前記ハンドを支持する支持面を有する支持台と、
前記各作業装置による作業位置を結ぶレールと、
前記ロボットアーム及び前記支持台が搭載され、前記レールに沿って前記各作業装置による作業位置に順次移動するスライダと、を備え、
前記ハンドには、前記ワークを保持した際に前記ワークに接触する面とは反対側であって前記ワークの各作業面に平行となる被支持面がそれぞれ形成されており、
前記ロボットアームは、前記ハンドの複数の被支持面のうち、前記スライダによる移動先での前記作業装置により作業が施される前記ワークの作業面に平行な被支持面を、前記支持台の支持面に押し付けることを特徴とする生産システム。
【請求項3】
ワークの互いに直交する第1の作業面及び第2の作業面に順次作業を施す作業装置を備えた生産システムにおいて、
多関節のロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、前記ワークを保持するハンドと、
前記ロボットアームの作業領域内に配置され、前記ハンドを支持する互いに直交する第1の支持面及び第2の支持面を有する支持台と、を備え、
前記ハンドには、前記ワークを保持した際に前記ワークに接触する面とは反対側であって前記ワークの第1の作業面に平行となる第1の被支持面と、前記ワークを保持した際に前記ワークに接触する面とは反対側であって前記ワークの第2の作業面に平行となる第2の被支持面と、が形成されており、
前記ロボットアームは、前記ハンドの姿勢を維持したまま、前記作業装置により前記ワークの第1の作業面へ作業を施す際には前記ハンドの第1の被支持面を前記支持台の第1の支持面に押し付け、前記作業装置により前記ワークの第2の作業面へ作業を施す際には前記ハンドの第2の被支持面を前記支持台の第2の支持面に押し付けることを特徴とする生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236262(P2012−236262A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107384(P2011−107384)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】