説明

生花らしさを維持でき美麗なプリザーブドフラワー加工品を製造する方法

【課題】 長期間退色が起こらないプリザーブドフラワーの加工品を製造する方法を提供する。
【解決手段】 上記の課題は,ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程とを含む,プリザーブドフラワー加工品の製造方法により解決される。特に,コーティング用の樹脂液として,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルを含むものを用いることで解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,生花さしさを維持でき美麗なプリザーブドフラワー加工品を製造する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
プリザーブドフラワーは,生花のもつ可憐さ,ソフト感を最大限生かすことができる造花方法であり,生花を長く維持する方法としてよく知られている。そして,近年,プリザーブドフラワーにさらに加工を施す技術が開発されている。
【0003】
たとえば,特開2008−57059号公報(特許文献1)では,プリザーブドフラワーに蓄光性や芳香性をもたらすために,蓄光剤や芳香剤のアルコール溶液にプリザーブドフラワーを浸漬させる技術が開示されている。
【0004】
また,特開2007−70778号(特許文献2)には,プリザーブドフラワーのローズの花びらを分解してワイヤーに組合せ,スイートピーの造花を製造する方法が開示されている。
【0005】
さらに,特開2007−70779号(特許文献3)には,プリザーブドフラワーのローズの花びらを分解してワイヤーに組合せ,ポピーの造花を製造する方法が開示されている。
【0006】
このようにプリザーブドフラワーは,いろいろと研究がされている。しかしながら,プリザーブドフラワーは,生花を乾燥させた後に樹脂をコーティングしたものである。そして,一般的には,生花を乾燥させたものをそのまま樹脂に浸漬して製造される。このため,樹脂に被覆されていない部分が存在するので,次第に退色するという問題がある。また,プリザーブドフラワーに用いられる樹脂は,長期間形状を維持させるためにアルコール類などが用いられている(特許3813165号,特開2007−320945号,特開2004−203815号,特開2004−99605号)。このため,プリザーブドフラワーは長期間形状を維持できるものの,このアルコール類に花の色素が溶解し,退色が生ずるという問題がある。
【特許文献1】特開2008−57059号公報
【特許文献2】特開2007−70778号
【特許文献3】特開2007−70779号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,長期間にわたり生花さしさを維持できる,美麗なプリザーブドフラワー加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,基本的には,プリザーブドフラワーをあえて分離して,分離した状態で特定の樹脂をコーティングすることで,退色等を防ぐことができ,長期間にわたり生花さしさを維持できる,美麗なプリザーブドフラワー加工品を得ることができるという知見に基づくものである。
【0009】
すなわち,本発明の第1の側面に係る発明の第1のパターンであるプリザーブドフラワー加工品の製造方法は,ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程とを含む。本発明では,プリザーブドフラワーをあえて花びらごとの状態とした上で,樹脂コーティングを行い,その上で再結合させて花びらを形成する。このようにすることで,長期間にわたり生花さしさを維持できる,美麗なプリザーブドフラワー加工品を得ることができる。
【0010】
そして,樹脂コーティングを形成する工程は,花びらを,樹脂溶液に浸漬する工程を含む。樹脂溶液は,水冷又は氷冷されることが好ましい。この樹脂溶液は,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルを含む。本発明におけるC−C10芳香族アルキル(炭素数が7以上10以下の芳香族アルキル)として,トルエン,オルトキシレン,メタキシレン,及びパラキシレンのいずれか又は2種類以上があげられる。また,本発明におけるC−C酢酸エステルとして,酢酸エチル,及び酢酸ブチルのいずれか又は両方があげられる。これらの溶液を用いることで,プリザーブドフラワーからの退色を防止できる。そして,花びらを樹脂溶液に浸漬する時間としては1秒以上1分以下があげられる。
【0011】
本発明の別のパターンは,ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程と,を含む。そして,樹脂コーティングを形成する工程は,花びらを,樹脂溶液に浸漬する工程と,樹脂溶液に浸漬した花びらを取り出し,取り出した花びらに環状ケトン含有液を塗布する工程と,を含む。この塗布工程は,浸漬塗布,スプレー塗布,スピンコート塗布,筆による塗布などがあげられる。これらの中では,筆による塗布が好ましい。このように環状ケトン含有液を筆で塗布することで,樹脂が必要以上に厚くなる事態を防止できる。また,これにより不自然なつやを解消し,可憐さを表現できる。
【0012】
そして,本発明における樹脂溶液は,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルを含み,環状ケトン含有液に含まれる環状ケトンは,C−C環状ケトンである。なお,この環状ケトン含有液は,C−C環状ケトンの他に,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルを含んでもよい。このように樹脂コーティングと同様の成分を含むことで,浸漬により形成した樹脂コーティング層を溶解することができるため,ムラなどを調整することができる。
【0013】
樹脂溶液に含まれるC−C10芳香族アルキル,及び環状ケトン含有液に含まれるC−C10芳香族アルキルは,同一でも異なってもよい。そして,本発明における,C−C10芳香族アルキルとして,トルエン,オルトキシレン,メタキシレン,及びパラキシレンのいずれか又は2種類以上があげられる。樹脂溶液に含まれるC−C酢酸エステル,及び環状ケトン含有液に含まれるC−C酢酸エステルは,同一でも異なってもよい。そして,本発明におけるとしてC−C酢酸エステルとして,酢酸エチル,及び酢酸ブチルのいずれか又は両方があげられる。本発明におけるC−C環状ケトンとして,シクロヘキサノンがあげられる。
【0014】
本発明の第3のパターンは,ある生花の花びらを分離する工程と,分離した花びらを乾燥させる工程と,乾燥した花びらに樹脂コーティングを形成する工程と,樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程とを含む,プリザーブドフラワー加工品の製造方法に関する。すなわち,あえて花びらごとに分離をして樹脂を塗布した後に,再結合させることでプリザーブドフラワーの加工品を製造する。
【0015】
このパターンとして,好ましいものは,乾燥した花びらに樹脂コーティングを形成する工程は,花びらを第1の樹脂溶液に浸漬する第1の浸漬工程,浸漬した花びらを乾燥させる工程,乾燥した花びらを第2の樹脂溶液に浸漬する第2の浸漬工程,第2の浸漬工程で樹脂に浸漬された花びらを引き上げ,完全に花びらが乾燥する前に,花びらに環状ケトン含有液を塗布する工程と,を含む。そして,前記第1の樹脂溶液,及び前記第2の樹脂溶液は,同一でも異なってもよく,先に説明した樹脂溶液を適宜用いることができる。また,環状ケトン含有液も,先に説明したものを適宜用いることができる。このように,第1の浸漬工程と乾燥工程を経て,花びらのプリザーブドフラワーを得て,その後に先に説明した加工方法と同様の加工を施すことで,プリザーブドフラワーの加工品を得ることができる。
【0016】
本発明の第2の側面は,ある茎のついた花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,前記花びらが分離されたプリザーブドフラワーの茎の先端に紙を巻きつける工程と,前記プリザーブドフラワーの茎に巻きつけられた紙を芯として,前記樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,花びらを分離する前の前記茎のついた花より大きな花の形状を有するプリザーブドフラワー加工品を製造する工程と,を含む,プリザーブドフラワー加工品の製造方法に関する。
【0017】
本発明の第3の側面は,ある茎のついた花の花びらを分離する工程と,分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,前記花びらが分離された茎の先端に紙を巻きつける工程と,前記茎に巻きつけられた紙を芯として,前記樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,花びらを分離する前の前記茎のついた花より大きな花の形状を有するプリザーブドフラワーを製造する工程と,を含む,プリザーブドフラワーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,長期間にわたり生花さしさを維持できる,美麗なプリザーブドフラワー加工品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1のパターンであるプリザーブドフラワー加工品の製造方法は,ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程とを含む。図1は,プリザーブドフラワー加工品の製造方法の製造例を示す図である。図1Aは,分離前のプリザーブドフラワーを示し,図1Bは花びらを分離したプリザーブドフラワーを示し,図1Cは花びらごとに樹脂をコーティングする工程を示し,図1Dはもとの花の形状を再現した様子を示す。図中,符号1は,ある花の形状をしたプリザーブドフラワーを示す。符号2は,花びらを示す。符号3は,樹脂を示す。符号4は,プリザーブドフラワー加工品を示す。本発明では,プリザーブドフラワーをあえて花びらごとの状態とした上で,樹脂コーティングを行い,その上で再結合させて花びらを形成する。このようにすることで,長期間にわたり生花さしさを維持できる,美麗なプリザーブドフラワー加工品を得ることができる。
【0020】
プリザーブドフラワーは,公知であり,公知の方法を用いて適宜製造できる。プリザーブドフラワーの製造方法の例は,たとえば,特開2008−57059号公報に開示される方法を用いることができる。プリザーブドフラワーとして,公知の花のプリザーブドフラワーを適宜用いることができる。プリザーブドフラワーとして,バラ,ゆり,ソメイヨシノ,チューリップ,つばき,及び梅のプリザーブドフラワーがあげられる。プリザーブドフラワーは,基本的には,生花を乾燥させた後,乾燥した花に樹脂を浸潤させることで製造できる。本発明では,生花を花弁に分けて乾燥させた後に,樹脂を浸潤させて花弁をプリザーブドフラワー化し,その花弁を用いて加工品を製造してもよい。また,花の状態のプリザーブドフラワーを花弁に分離して,その上で加工を施してもよい。
【0021】
そして,樹脂コーティングを形成する工程は,花びらを,樹脂溶液に浸漬する工程を含む。この樹脂溶液は,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルを含む。これら芳香族アルキル及び酢酸エステルは,樹脂溶液の主成分であることが好ましいが,適宜,薄めて用いてもよい。これらの溶液を用いることで,プリザーブドフラワーからの退色を防止できる。C−C10芳香族アルキルとは,芳香族アルキルであって,炭素数が7以上10以下のものを意味する。C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルの重量比は,湿度や樹脂コーティング層の厚さ,加工品の強度,加工品の色合いなどに応じて適宜調整する。C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルの重量比として,1:10〜10:1があげられ,2:3〜3:2でもよい。
【0022】
本発明におけるC−C10芳香族アルキルとして,トルエン,オルトキシレン,メタキシレン,及びパラキシレンのいずれか又は2種類以上があげられる。また,本発明におけるC−C酢酸エステルとして,酢酸エチル,及び酢酸ブチルのいずれか又は両方があげられる。たとえば,酢酸エチルの量を増減することで,樹脂溶液の濃度を調整できる。
【0023】
花びらを,樹脂溶液に浸漬する際は,大き目の容器と小さ目の容器を用意するものが好ましい。そして,大き目の容器に水,氷,又は氷水を入れ,その上から小さめの容器を入れる。そして,その小さめの容器に樹脂溶液を入れる。このように水浴又は氷浴により低温とした状態で浸漬処理を行うことで,樹脂溶液が揮発することを防止でき,プリザーブドフラワーに与えるダメージを最小限にすることができる。
【0024】
花びらを樹脂溶液に浸漬する時間は,花びらの大きさや樹脂コーティングの厚さ,湿度,温度などの条件に応じて適宜調整すればよい。この浸漬時間をたとえば,10分以上5時間以下のようにすれば,効果的に樹脂コーティングを形成できる。しかしながら,1秒以上1分以下,好ましくは3秒以上15秒以下という短い時間だけ浸漬することで,花びらを再結合した後の加工品をより可憐に仕上げることができる。
【0025】
このように浸漬を行った後は,花びらを取り出し,乾燥させた後に花びらを再結合させることで花の形状をしたプリザーブドフラワーの加工品を得ることができる。この加工品をさらに加工して,ブーケ,ブローチやフラワーアレンジメントなどを製造してもよい。
【0026】
なお,上記の浸漬工程の後に,樹脂が完全に乾燥する前に,別の配合液(後述する環状ケトン含有液)に浸漬するか,別の配合液を塗布するものは,本発明の好ましい実施態様である。
【0027】
本発明の別のパターンは,ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程と,を含む。そして,樹脂コーティングを形成する工程は,花びらを,樹脂溶液に浸漬する工程と,樹脂溶液に浸漬した花びらを取り出し,取り出した花びらに環状ケトン含有液を塗布する工程と,を含む。このように環状ケトン含有液を筆で塗布することで,樹脂が必要以上に厚くなる事態を防止できる。また,不自然なつやを解消し,生花らしい可憐さを表現できる。
【0028】
「樹脂溶液に浸漬した花びらを取り出し,取り出した花びらに環状ケトン含有液を塗布する工程」を含む以外は,先に説明した製造方法と同様である。この塗布工程は,浸漬塗布,スプレー塗布,スピンコート塗布,筆による塗布などがあげられる。これらの中では,筆による塗布が好ましい。これらの塗布工程は,公知の条件を適宜採用すればよい。また,浸漬塗布工程は,先に説明したものと同様の条件とすればよい。
【0029】
環状ケトン含有液に含まれる環状ケトンは,C−C環状ケトンである。なお,この環状ケトン含有液は,C−C環状ケトンの他に,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルを含んでもよい。これら環状ケトン,芳香族アルキル,及び酢酸エステルが主成分であることが好ましいが,適宜薄めて用いてもよい。このように樹脂コーティングと同様の成分を含むことで,浸漬により形成した樹脂コーティング層を溶解することができるため,ムラなどを調整することができる。すなわち,C−C環状ケトンは,C−C環状ケトン,C−C10芳香族アルキル,及びC−C酢酸エステルの合計を100重量部として,1重量部以上10重量部以下含まれればよく,1重量部以上5重量部でもよい。
【0030】
樹脂溶液に含まれるC−C10芳香族アルキル,及び環状ケトン含有液に含まれるC−C10芳香族アルキルは,同一でも異なってもよい。そして,本発明における,C−C10芳香族アルキルとして,トルエン,オルトキシレン,メタキシレン,及びパラキシレンのいずれか又は2種類以上があげられる。樹脂溶液に含まれるC−C酢酸エステル,及び環状ケトン含有液に含まれるC−C酢酸エステルは,同一でも異なってもよい。そして,本発明におけるとしてC−C酢酸エステルとして,酢酸エチル,及び酢酸ブチルのいずれか又は両方があげられる。本発明におけるC−C環状ケトンとして,シクロヘキサノンがあげられる。
【0031】
なお,実際の製造工程においては,使用目的に応じて樹脂の厚さを調整し,花びらの一面のみコーティングするようにしてもよい。また,樹脂の厚さを厚くし,長期間形状を維持したい場合は,浸漬などの塗布回数を増やしてもよい。また,用いるプリザーブドフラワー,気温,湿度,どのような仕上げ状態にしたいかなどに応じて,樹脂の組成や塗布状況を適宜調整することが好ましい。
【0032】
上記したとおり,本発明によれば,プリザーブドフラワー用の加工液をも提供できる。また,本発明は,プリザーブドフラワーを中心に説明したが,乾燥させた花に樹脂をコーティングしたアレンジされたフラワー一般に応用できる。
【0033】
本発明の第2の側面は,ある茎のついた花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,前記花びらが分離されたプリザーブドフラワーの茎の先端に紙を巻きつける工程と,前記プリザーブドフラワーの茎に巻きつけられた紙を芯として,前記樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,花びらを分離する前の前記茎のついた花より大きな花の形状を有するプリザーブドフラワー加工品を製造する工程と,を含む,プリザーブドフラワー加工品の製造方法に関する。
【0034】
この側面に係るプリザーブドフラワー加工品の製造方法によれば,長期間にわたり生花さしさを維持できる,美麗なプリザーブドフラワー加工品の製造方法を提供することができる。さらには,もとのプリザーブドフラワーよりも大きな花(又は小さな花)など,様々な用途に応じた美麗なプリザーブドフラワー加工品を提供できる。
【0035】
図2は,本発明のプリザーブドフラワー加工品の製造方法を説明するための図である。図2Aは,分離前のプリザーブドフラワーを示し,図2Bは花びらを分離したプリザーブドフラワーを示し,図2Cは花びらごとに樹脂をコーティングする工程を示す。図3は,図2に引き続いた本発明のプリザーブドフラワー加工品の製造方法を説明するための図である。図3Aは,花びらを分離した花をさらに分離した様子を示す。図3Bは,茎に紙を巻きつけた様子を示す図である。図3Cは,茎に花びらを再集合させた際の様子を示す図である。図中符号31は紙を示す。図4は,花びらを結合させプリザーブドフラワー加工品を製造した様子を示す図である。
【0036】
ある茎のついた花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する。具体的には,図2Aの状態から,図2Bに示される状態とする。次に,分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する。これは,先に説明したものと同様である。次に,花びらが分離されたプリザーブドフラワーの茎の先端に紙を巻きつける。図3Aに示される例では,花びらを分離した後にめしべやおしべがついている部分と,茎とをさらに分離している。そして,茎の先端に紙を巻きつけている。この紙として,吸水性などの観点から和紙が好ましい。和紙を用いて芯を作成すると,樹脂を和紙が蓄えるので,プリザーブドフラワーをより長持ちさせることができる。そして,図3Cにしめされるように,茎に花びらを再集合させる。このようにして図4に示される,花びらを結合させたプリザーブドフラワー加工品を製造できる。
【0037】
本発明の第3の側面は,ある茎のついた花の花びらを分離する工程と,分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,前記花びらが分離された茎の先端に紙を巻きつける工程と,前記茎に巻きつけられた紙を芯として,前記樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,花びらを分離する前の前記茎のついた花より大きな花の形状を有するプリザーブドフラワーを製造する工程と,を含む,プリザーブドフラワーの製造方法に関する。この側面に係るプリザーブドフラワーを製造する工程は,原料が生花である点を除けば第2の側面と同様である。この側面において,樹脂としてはプリザーブドフラワー用に用いられる樹脂を適宜用いればよい。
【実施例1】
【0038】
以下の実施例では,クリアー液,つや消し液,硬化剤,薄め液を用いた。クリアー液は,キシレン,酢酸エチル及び酢酸ブチルからなる。これらの液は,市販されているものを適宜用いることができる。つや消し液は,キシレン,酢酸ブチル,及びシクロヘキサノンからなる。硬化液は,トルエン及び酢酸エチルからなる。薄め液の主成分は,酢酸エチルである。クリアー液100重量部に対し,硬化剤40重量部を混合し,これに薄め液を50重量部から100重量部配合した。薄め液の量は,花の種類,季節,外気の状況に応じて変化させた。なお,適宜公知の硬化促進剤を添加してもよい。
【0039】
上記のようにして配合した液に,プリザーブドフラワーを浸漬した。なお,生花を乾燥させたものについては,上記の配合液に浸漬し,乾燥させ,プリザーブドフラワー化した後に,さらに上記の配合液に浸漬した。1回の浸漬時間は,3秒以上5秒以下とした。
【0040】
つや消し液100重量部に対して,硬化剤20重量部を配合して配合液を製造した。プリザーブドフラワーを引き上げ,8割方乾燥した状態(すなわち,完全に乾燥する前の状態)で,この配合液に,浸漬した。なお,この配合液を刷毛で塗布してもよい。
【0041】
このようにして花弁を加工した。その後,花弁を再結合し,花の状態に戻した。このようにして,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いてヘアピンを製造した。図5は,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いたヘアピンの例を示す。
【実施例2】
【0042】
本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いてピアスを製造した。図6は,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いたピアスの例を示す。
【実施例3】
【0043】
本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いてヘアゴムを製造した。図7は,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いたヘアゴムの例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は,フラワーアレンジメントや装飾品などの分野で利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は,プリザーブドフラワー加工品の製造方法の製造例を示す図である。図1Aは,分離前のプリザーブドフラワーを示し,図1Bは花びらを分離したプリザーブドフラワーを示し,図1Cは花びらごとに樹脂をコーティングする工程を示し,図1Dはもとの花の形状を再現した様子を示す。
【図2】図2は,本発明のプリザーブドフラワー加工品の製造方法を説明するための図である。図2Aは,分離前のプリザーブドフラワーを示し,図2Bは花びらを分離したプリザーブドフラワーを示し,図2Cは花びらごとに樹脂をコーティングする工程を示す。
【図3】図3は,図2に引き続いた本発明のプリザーブドフラワー加工品の製造方法を説明するための図である。図3Aは,花びらを分離した花をさらに分離した様子を示す。図3Bは,茎に紙を巻きつけた様子を示す図である。図3Cは,茎に花びらを再集合させた際の様子を示す図である。
【図4】図4は,花びらを結合させプリザーブドフラワー加工品を製造した様子を示す図である。
【図5】図5は,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いたヘアピンの例を示す図面に替わる写真である。
【図6】図6は,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いたピアスの例を示す図面に替わる写真である。
【図7】図7は,本発明のプリザーブドフラワー加工品を用いたヘアゴムの例を示す図面に替わる写真である。
【符号の説明】
【0046】
1 プリザーブドフラワー
2 花びら
3 樹脂
4 プリザーブドフラワー加工品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,
分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,
樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程と,
を含む,
プリザーブドフラワー加工品の製造方法。
【請求項2】
樹脂コーティングを形成する工程は,

花びらを樹脂溶液に浸漬する工程を含み,

前記樹脂溶液は,
−C10芳香族アルキル,及び
−C酢酸エステルを含む,

請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記C−C10芳香族アルキルは,
トルエン,オルトキシレン,メタキシレン,及びパラキシレンのいずれか又は2種類以上であり,

前記C−C酢酸エステルは,
酢酸エチル,及び酢酸ブチルのいずれか又は両方である,

請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂溶液は,水冷又は氷冷される請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記花びらを樹脂溶液に浸漬する工程は,
前記樹脂溶液に花びらを1秒以上1分以下浸漬する工程である請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
ある花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,
分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,
樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程と,
を含み,

前記樹脂コーティングを形成する工程は,

花びらを,樹脂溶液に浸漬する工程と,
樹脂溶液に浸漬した前記花びらを取り出し,取り出した花びらに環状ケトン含有液を塗布する工程と,
を含み,

前記樹脂溶液は,
−C10芳香族アルキル,及び
−C酢酸エステルを含み,

前記環状ケトン含有液に含まれる環状ケトンは,
−C環状ケトンである,

プリザーブドフラワー加工品の製造方法。
【請求項7】
前記環状ケトン含有液を塗布する工程は,花びらに筆で塗布する工程である,請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記環状ケトン含有液は,
−C10芳香族アルキル,及び
−C酢酸エステルを含む,
請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂溶液に含まれるC−C10芳香族アルキル,及び環状ケトン含有液に含まれるC−C10芳香族アルキルは,同一でも異なってもよく,
トルエン,オルトキシレン,メタキシレン,及びパラキシレンのいずれか又は2種類以上であり,

前記樹脂溶液に含まれるC−C酢酸エステル,及び環状ケトン含有液に含まれるC−C酢酸エステルは,同一でも異なってもよく,
酢酸エチル,及び酢酸ブチルのいずれか又は両方であり,

前記C−C環状ケトンは,
シクロヘキサノンである,
請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
ある生花の花びらを分離する工程と,
前記工程で分離した花びらを乾燥させる工程と,
前記工程で乾燥した花びらに樹脂コーティングを形成する工程と,
前記樹脂コーティングされた花びらを結合し,もとの花の形状を再現する工程と,
を含む,
プリザーブドフラワー加工品の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥した花びらに樹脂コーティングを形成する工程は,
前記花びらを第1の樹脂溶液に浸漬する第1の浸漬工程,
前記浸漬した花びらを乾燥させる工程,
前記乾燥した花びらを第2の樹脂溶液に浸漬する第2の浸漬工程,
前記第2の浸漬工程で樹脂に浸漬された花びらを引き上げ,完全に花びらが乾燥する前に,前記花びらに環状ケトン含有液を塗布する工程と,
を含み,

前記第1の樹脂溶液,及び前記第2の樹脂溶液は,同一でも異なってもよく,
−C10芳香族アルキル,及び
−C酢酸エステルを含み,

前記環状ケトン含有液は,
−C10芳香族アルキル,及び
−C酢酸エステルを含む,
請求項10に記載の製造方法。


【請求項12】
ある茎のついた花の形状をしたプリザーブドフラワーの花びらを分離する工程と,
分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,

前記花びらが分離されたプリザーブドフラワーの茎の先端に紙を巻きつける工程と,

前記プリザーブドフラワーの茎に巻きつけられた紙を芯として,前記樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,花びらを分離する前の前記茎のついた花より大きな花の形状を有するプリザーブドフラワー加工品を製造する工程と,

を含む,
プリザーブドフラワー加工品の製造方法。
【請求項13】
ある茎のついた花の花びらを分離する工程と,
分離された前記花びらごとに樹脂コーティングを形成する工程と,

前記花びらが分離された茎の先端に紙を巻きつける工程と,

前記茎に巻きつけられた紙を芯として,前記樹脂コーティングされた前記花びらを結合し,花びらを分離する前の前記茎のついた花より大きな花の形状を有するプリザーブドフラワーを製造する工程と,

を含む,
プリザーブドフラワーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−280938(P2009−280938A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136138(P2008−136138)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【特許番号】特許第4362144号(P4362144)
【特許公報発行日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(508155516)
【Fターム(参考)】