説明

生花加工物の製造方法

【課題】 長期間の鑑賞が可能であり、浴槽等に浮かべて繰返し楽しむことが可能な生花加工物の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 花びら2を乾燥させる工程と、花びら2を、蝋とオイルを混合したコーティング剤3に浸ける工程と、花びら2に付いたコーティング剤3を乾燥させる工程と、を有することを特徴としている。さらに、コーティング剤3に含まれる蝋は、蜜蝋であることとしたり、コーティング剤3に含まれるオイルは、ホホバオイルであることとしたり、小麦胚芽オイルであることとしたり、コーティング剤3に含まれるオイルは、ごま油である構成とすることもできる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生花本来の色に近い色が長持ちし、浴槽等に浮かべることが可能な生花加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生花を加工した生花加工物としては、ドライフラワーやプリザーブドフラワーがある。ドライフラワーの製造方法には、生花を直射日光の当たらない乾燥した場所に干して自然乾燥させて作る方法と、容器に入れた粒子の細かい乾燥剤に生花を埋没させて乾燥させる方法等がある。生花の大きさや種類によっても違うが、自然乾燥による製造方法の場合は2週間から3週間で完成し、乾燥剤を使用して製造する方法の場合は2日から3日で完成する。新鮮な生花を使用することで、生花本来の色に近い色が残ったドライフラワーを作ることが可能となる。
【0003】
一方、プリザーブドフラワーは、生花の脱色及び生花内の水分を脱水するための液と、生花に着色するため液を使用して作成される。生花の種類や大きさ等によってそれぞれの工程にかかる時間は違うが、おおよそ次の通りである。まず生花を脱色及び脱水するための液に2時間から4時間ほど浸けて脱色及び脱水をする。その後生花を取り出し、着色するための液に12時間から24時間ほど浸ける。そして、生花に付いた着色用液の油分を除去するために再度5分から10分ほど脱色・脱水用の液に浸け、最後に8時間ほど自然乾燥させると完成する。このように、専用の液体で処理することで、生花のような質感で長期間の鑑賞が可能となっている。また、脱色した後で着色をしており、本来の生花には存在しない色等、鮮やかな色合いを楽しむこともできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ドライフラワーは乾燥作業に入るタイミングが遅れたり、乾燥時間が長すぎたりすると花の色が変色してしまうことがある。また、光や湿度、さらにはほこり等が原因で変色するため、長期間の鑑賞には向かないという問題点がある。
【0005】
一方で、プリザーブドフラワーの場合は、専用液で着色するために鮮やかな色が長期間持つのだが、高温多湿な環境に弱く、水につけると変色してしまう。また、製造時に使用する専用液が人体に良くないものであるため、浴槽等にプリザーブドフラワーを浮かべるといった使い方ができない。
【0006】
そこで、本発明は、長期間の鑑賞が可能であり、浴槽等に浮かべて繰返し楽しむことが可能な生花加工物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の生花加工物の製造方法は、生花を乾燥させる工程と、前記生花を、蝋とオイルを混合したコーティング剤に浸ける工程と、前記生花に付いたコーティング剤を乾燥させる工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、前記コーティング剤には香料が添加されている構成としたり、前記生花加工物の製造方法は、コーティングされた前記生花を石鹸と香料が混合した液に浸ける工程と、前記生花に付いた石鹸と香料が混合した液を乾燥させる工程と、を有することとしたり、前記コーティング剤に含まれる蝋は、蜜蝋であることとしたり、前記コーティング剤に含まれる蝋は、植物系蝋である構成としたり、前記コーティング剤に含まれるオイルは、植物性オイルである事とすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
生花を乾燥する工程と、生花を蝋とオイルを混合したコーティング剤に浸ける工程と、コーティング剤を乾燥させる工程とを行うことで、生花にほこりや湿気が直接触れることがないため、長期の保存が可能となり、浴槽等に浮かべて繰返し楽しむことが可能となる。
【0010】
コーティング剤の蝋を蜜蝋や植物系蝋にし、オイルを植物性オイルにすることで、人体に悪い影響をあたえる物質を使用していないので、浴槽等に浮かべて楽しむことができる。
【0011】
コーティングされた生花を石鹸と香料を混合した液に浸ける工程と、石鹸と香料を混合した液を乾燥させる工程とを有することで、生花加工物を石鹸として使用することができ、生花加工物が掌等とこすれるので汚れ落ちが良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の生花加工物の製造方法を、図面を基に説明する。
図1は生花加工物の断面図である。生花加工物1は花びら2の表面にコーティング剤3による薄いコーティング層を設けた構成となっている。花びら2は、生花から取り外し乾燥したものである。花びら2の乾燥は、花びら2が変色しないように、直射日光の当たらない場所で自然乾燥させる、又は容器に入れた粒子の細かい乾燥剤に埋没させることで行う。乾燥剤を用いて乾燥させる方が、生花を急速に乾燥させることができるので生花本来の色を残すことができる。本発明は、図1のように花びらや葉を1枚ずつ加工することも可能であるが、生花を花の形状を維持したまま加工することもできる。
【0013】
コーティング剤3は、蝋とオイルを混合した物である。液状のコーティング剤3に花びら2を浸けた後、乾燥させることで形成される。蝋だけでコーティングすると、蝋が乾燥して固まる時に表面にひび割れができたり、蝋が剥がれることがある。そのため、オイルを混ぜて柔軟性を持たせることでひび割れや剥離を防止し、さらには自然の花びらの感触に近い、やわらかな手触りにすることができる。
【0014】
蝋としては、植物系蝋又は動物系蝋等、どのような蝋であっても使用することができるが、融点が高く浴槽等に浮かべたときにコーティング剤3が溶け出すことのないものがよい。その中でも動物系蝋である蜜蝋が好適に使用することができる。また、植物系蝋であるキャンデリラワックスやカルナウバワックスも使用することができる。キャンデリラワックスはキャンデリラという植物から採取されるものであり、カルナウバワックスはブラジルロウヤシの葉から採取されるものである。
【0015】
オイルは酸化しにくい油であればよいが、植物性オイル、特にホホバオイルが好適に使用することができる。また、小麦胚芽オイルや透明な太白ごま油等の食用油を使用しても良い。さらに、このようなコーティング剤3にエッセンシャルオイル等の香料を混ぜることで、生花加工物1に香りをつけることもできる。
【0016】
コーティング剤3は無色透明であると花びら2の色がそのまま見えるので好ましい。しかし、コーティング層はごく薄い層なので、不透明なコーティング剤3や色つきのコーティング剤3を使用した場合でも、花びら2の色が、ほぼそのまま見える。
【0017】
図2は生花加工物の製造方法を示すフローチャートである。まず、自然乾燥又は乾燥剤を使って生花を乾燥させる工程がある(S01)。この時、生花を花の形のまま乾燥させてもよいが、花びら2や葉を1枚ずつ生花から取り外して乾燥させてもよい。
【0018】
生花を乾燥させた後に、乾燥した生花をコーティング剤3に浸け、コーティング層を形成する工程がある(S02)。この時、コーティング剤3は液体の状態であり、乾燥した生花又は花びら2の全体にコーティング剤3が付くように漬ける。そして、乾燥した生花又は花びら2を取り出し、余分なコーティング剤3を落とした後で、コーティング剤3を乾燥させる工程にはいる(S03)。コーティング剤3の乾燥工程は、1分ほど自然乾燥させることで行う。この時、乾燥した生花又は花びら2を金網のような物の上に置くことで、乾燥した生花又は花びら2の表裏を一度に乾燥させる事ができる。
【0019】
図2のフローチャートに示したような工程によって製造された生花加工物1は、コーティング剤3によって花びら2が外気から保護されているため、湿度やほこり等が原因の劣化が防止でき、長期間の鑑賞が可能である。また、コーティング剤3が水分の浸入を防ぐため、水に浸けても花びら2が変色することがない。従って、入浴時に生花加工物1を浴槽に浮かべて、生花加工物1の色合いを楽しむことができ、入浴後は、生花加工物1を浴槽から取り出し、日陰で自然乾燥させることで、再利用が可能となる。また、香料を含んだコーティング剤3を使用した場合には、色合いと同時に香りも楽しむことができる。この時、容器に保管しておけば、容器内に生花加工物1の香りが充満するので、使用した生花加工物1を容器に戻すことで、使用後の生花加工物1に香りが移り、再度香りを楽しむことが可能となる。
【0020】
生花加工物1は、上記のような使い方のほかに、この生花加工物1の表面にさらに石鹸層を形成する工程を加えることで、手洗い用石鹸等として使用することもできる。
【0021】
図3は石鹸層を有する生花加工物の断面図である。生花加工物4は、中心に花びら2があり、その表面にコーティング剤3によるコーティング層がある。石鹸層5は、石鹸成分にエッセンシャルオイル等の香料を添加したものである。固形石鹸をお湯等に溶かし、香料を添加した石鹸水にコーティング層を有する生花加工物1を浸け、剣山等の上に乗せて1日乾燥させることで形成される。石鹸層5は、手洗い時に両手に泡を立てるために充分な石鹸成分が必要となるので、ある程度の厚みが必要となる。固形石鹸として透明石鹸を使用すると、石鹸層5が厚くなったとしても、花びら2の色が透けて見えることとなる。
【0022】
生花加工物4の製造方法としては、コーティング剤3を乾燥させる工程(図2のS03)の後に、石鹸水に浸ける工程と、生花加工物4に付いた石鹸水を乾燥させる工程が続くものとなっている。このように、コーティング層の外側に石鹸層5を設けることで石鹸成分が花びら2に直接触れることがなく、アルカリ性である石鹸成分が花びら2に触れることによって、花びら2が変色してしまうのを防止できる。
【0023】
図4は石鹸層を有する生花加工物を容器に入れた状態を示す斜視図である。容器6はハート型をした白色の磁器である。石鹸層を有する生花加工物4は、花びら2又は葉を加工したものであり、容器6内に複数枚収納されている。また、生花加工物4の下には図示しないクッション材等を敷いてある。クッション材があることで生花加工物4が容器6にくっついてしまうのを防ぐことができる。また、クッション材に香料をつけておくことで、生花加工物4に香りを移すことができ、長期間香りを楽しむこともできる。
【0024】
このような容器6を洗面台等に置いておく。手を洗うときには、手の大きさや汚れ具合によって所望の大きさの生花加工物4を取り、掌の間でこする。そのままこすり続ければ次第に泡立ってくる。この時に生花加工物4で掌をこするのでスクラブ効果があり、掌の汚れがよく落ちる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】生花加工物の断面図である。
【図2】生花加工物の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】石鹸層を有する生花加工物の断面図である。
【図4】石鹸層を有する生花加工物を容器に入れた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1,4 生花加工物
2 花びら
3 コーティング剤
5 石鹸層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生花を乾燥させる工程と、
前記生花を、蝋とオイルを混合したコーティング剤に浸ける工程と、
前記生花に付いたコーティング剤を乾燥させる工程と、
を有することを特徴とする生花加工物の製造方法。
【請求項2】
前記コーティング剤には香料が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の生花加工物の製造方法。
【請求項3】
前記生花加工物の製造方法は、コーティングされた前記生花を石鹸と香料が混合した液に浸ける工程と、
前記生花に付いた、石鹸と香料が混合した液を乾燥させる工程と、を有することを特徴とする請求項1記載の生花加工物の製造方法。
【請求項4】
前記コーティング剤に含まれる蝋は、蜜蝋であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の生花加工物の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング剤に含まれる蝋は、植物系蝋であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の生花加工物の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング剤に含まれるオイルは、植物性オイルであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の生花加工物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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