説明

産業車両用アンダーカバー取付構造

【目的】 左右のサイドフレーム間の下部を覆うように設置されるアンダーカバーの組付性を高める。
【構成】 左右のサイドフレーム1の下部内側面の前側には支持ピン2を設け、また後側にはブラケット3を設ける。アンダーカバー5の前側上面には前記支持ピン2に掛止可能な左右一対のフック6を設け、また後側上面には左右一対のブラケット7を設け、このブラケット7をボルト9又はストッパピン11により固定できるように構造とした。従って、サイドフレーム1に対してアンダーカバー6を取付ける場合、支持ピン2に対するフック6の掛止によりアンダーカバー5が位置決めされ、しかも作業者の重量負担が軽減されるため、フレーム側のブラケット7に対するカバー側のブラケット7の固定が容易化される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フォークリフトのような産業車両に用いられるアンダーカバーの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の産業車両にあっては、図9及び図1010に示す如く所定間隔を置いて対向する左右のサイドフレーム31間の下部には、フレーム空間(エンジンルーム)内に設置されるトルコン32やエンジン(図示省略)等を走行中に障害物から保護する目的でアンダーカバー33が取り付けられている。ところで、サイドフレーム31に対するアンダーカバー33の取り付けは、メンテナンス時のサービス作業を考慮して着脱自在な構成を採用するのが普通となっている。そして、従来のアンダカバー取付構造としては、サイドフレーム31の下部側にはL形ブラケット34をボルト35により固定する一方、これに対応してアンダーカバー33の上面にブラケット36を設け、そしてアンダーカバー33に設けた作業孔37から差し込んだボルト38によってカバー側のブラケット36をフレーム側のブラケット34に締着するようにしたものが知られている。なお、図において39はトルコン32のドレンプラグ操作用としてアンダーカバー33に設けた作業孔を示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した従来のアンダーカバー取付構造では、アンダーカバー33を水平に支えた状態で作業孔37からボルト38を差し込んでブラケット34,36相互を締着する構成であるために、両ブラケット34,36のボルト孔の位置合わせがすこぶる面倒で手間を要するものであって、その組付性(脱着性)が悪いという不具合があり、しかもアンダーカバー自体が相当の重量物であることから、作業員の受ける負担は大なるものがあった。
【0004】そこで本発明は、上述の問題に鑑み、組付性の良好なアンダーカバー取付構造を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は次のように構成したものである。すなわち、所定間隔を置いて対向する左右のサイドフレーム間の下部を覆うために、該サイドフレームに着脱可能に取り付けられるアンダーカバーの取付構造であって、前記アンダーカバーの前側上面には前記サイドフレームの下部内側面に設けた掛止具に係脱可能な左右一対の掛止部材を設ける一方、アンダーカバーの後側上面にはブラケットを設け、該ブラケットを前記サイドフレームの下部内側面に設けたブラケットに対して固定具を介して横方向から着脱自在に固定したことを特徴としている。
【0006】
【作用】上述のように構成された本発明のアンダーカバー取付構造においては、アンダーカバーをサイドフレームに取り付ける場合は、まずアンダーカバーの前側上面に設けた左右の掛止部材をサイドフレームの掛止具にそれぞれ掛止する。このことにより、少なくともサイドフレームに対するアンダーカバーの前後方向に関する位置決めがなされるとともに、アンダーカバーの前側の重量を支えることができる。そして、その後はカバー側のブラケットをサイドフレームのブラケットに固定具により固定するが、この場合、上記の如くアンダーカバーの前側が位置決めされ、かつ支持されているため、固定具による固定作業はボルトによる締着方式であれ、ストッパピンによる抜き差し方式であれ、形式の如何に関係なく容易に行うことが可能となる。なお、アンダーカバーの取り外しは上記と逆順で行われるが、その取り外しについても取付時と同様に容易に行うことができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。まず、図1〜図3に基づいて実施例1を説明する。図示のように、所定間隔を置いて対向する左右のサイドフレーム1の前側の下部内側面にはそれぞれ支軸具としての支持ピン2が溶接により水平に突設固定されており、また後側の下部内側面にはそれぞれ平面略コ字形のブラケット3が溶接により固定されており、このブラケット3にはウエルドナット4(又はタップ孔)が設けられている。
【0008】一方、両サイドフレーム1間の空間部に配置される図3に示すトルコン20やエンジン(図示省略)等の動力装置を保護するために、フレーム間下部を覆うように取り付けられるアンダーカバー5は、前後の端末中央部に上向きの反り返し部を備えた略方形状に形成されている。そして、アンダーカバー5の前側上面の左右端寄りには前記サイドフレーム1の支持ピン2に掛止可能な左右一対の掛止部材としての略逆L字型のフック6が設けられ、このフック6は前側を開口側として設定されるとともに、アンダーカバー5の上面との間に支持ピン2の外径に相当する間隔を保有するような突出高さに設定されており、このことにより支持ピン2に掛止した状態でのガタツキの発生が抑えられている。
【0009】また、アンダーカバー5の後側上面の左右端寄りには前記フレーム側のブラケット3に対応するボルト挿通孔8を備えた左右一対のブラケット7が設けられており、このブラケット7は固定具としてのボルト9によりフレーム側のブラケット3に締着される構造となっている。なお、アンダーカバー5の中央部に設けられた孔10はトルコン20のドレンプラグ操作用の作業孔である。
【0010】本実施例は上述のように構成したものであり、アンダーカバー5のサイドフレーム1に対する取り付けは、下記の手順で行われる。すなわち、アンダーカバー5を略水平に持ち上げた状態で、まず、左右のフック6をサイドフレーム1の支持ピン2に対して車両後方からそれぞれ嵌め込むようにして掛止する。つぎに、カバー側のブラケット7のボルト挿通孔8にボルト9を横方向から挿入してフレーム側のブラケット3のウエルドナット4にねじ込むことによりブラケット7を固定する。
【0011】この場合、図2に示すように、フック6の最奥部に支持ピン2が位置するように掛止すれば、このことによりサイドフレーム1に対するアンダーカバー5の前後位置が決定され、しかもアンダーカバー5の前部重量が支持ピン2により支えられて作業者の負担が軽減されるため、フレーム側のブラケット7に対するカバー側のブラケット3の位置合わせ及びボルト9による締付作業を容易に行うことが可能となる。また、エンジン等のサービス作業時において、必要に応じて実施されるアンダーカバー5の取り外しは、上記組付け時とは逆の手順によって容易に行い得るものである。このように、本実施例の取り付け構造によれば、アンダカバー5の組付性を高めて、作業者の組付け作業時の負担を大幅に軽減し得るとともに、組付け時間を短縮することが可能となる。
【0012】つぎに、本発明の実施例2を図4〜図6に基づいて説明する。この実施例はアンダーカバー5の後側の固定構造を、前述した実施例1のボルト固定式からピンによる固定式に変更したものであり、前側のフック6による掛止構造については前述の実施例1と同様に構成されている。すなわち、フレーム側に固定されたブラケット3は、対向するフランジ部に同芯のピン孔3aを有するコ字形に形成され、該ブラケット3内にピン孔7aを有するカバー側のブラケット7を下側から嵌め込んだ状態で両ブラケット3,7のピン孔3a,7aにストッパピン11を横方向から挿入して平座金12を介してクリップピン13により抜け止めする構造としたものである。
【0013】従って、この実施例2によれば、実施例1の場合と同様に、フック6を支持ピン2に掛止したのち、ストッパピン11によりカバー側のブラケット7をフレーム側のブラケット3に固定することができるものであって、アンダーカバー5の組付性を高め得るという実施例1と同様の特徴を有することは勿論のこと、工具を用いることなくアンダーカバー5を脱着できるという利点がある。
【0014】つぎに、本発明の実施例3を図7及び図8に基づいて説明する。この実施例はストッパピン11による固定式をさらに変更して、該ストッパピン11をフレーム側のブラケット3に取り付けたままでカバー側のブラケット7を脱着できるように構成したものであって、アンダーカバー5の前側のフック6による掛止構造については実施例1と同様に構成されている。
【0015】すなわち、フレーム側のブラケット3は3個のフランジを有する略E字形に形成され、各フランジに形成されたピン孔にストッパピン11が横向きに抜き差し可能に取り付けられている。しかして、図7はカバー側のブラケット7の取付状態を示している。ストッパピン11は、その頭部11aに径方向に突設された係合ピン14をフレーム側のブラケット3に設けた溝付きガイド15の溝16に嵌入することにより最奥部まで挿入されてカバー側のブラケット7を固定している。この状態は、ストッパピン11を差し込み方向に付勢するスプリング17により保持され、走行中の振動等による不測の抜脱が防止されている。なお、図中18はスプリング受け、19はその止めピンを示す。
【0016】また、図8はカバー側ブラケット7の取り外した状態を示している。ストッパピン11は、係合ピン14がガイド15の溝16から外れる位置まで引き抜かれており、そして適宜角度だけ回動して係合ピン14をガイド15の端面に掛止することにより、抜脱位置に保持されるようになっている。
【0017】従って、上記のように構成された実施例3によるときは、ストッパピン11をフレーム側のブラケット3に取り付けたままでカバー側のブラケット7の脱着を行うことが可能であり、前述の実施例1及び実施例2と同様の作用効果が得られることに加え、ストッパピン11によるアンダーカバー5の脱着作業をより容易化できるという利点がある。
【0018】なお、アンダーカバー5の前側取付構造であるフック6と支持ピン2とによる掛止方式については、支持ピン2をアンダーカバー5側に、フック6をサイドフレーム1側に設定しても差し支えない。
【0019】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、アンダーカバーの前側をフックによる掛止方式とし、後側をボルトやストッパピン等による固定式としたことにより、サイドフレームに対するアンダーカバーの組付性を高め得たので、初期組付け時は勿論のこと、エンジン等のサービス作業時におけるアンダーカバーの脱着作業の容易化が図られ、安全にして高能率の脱着作業が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係るアンダカバー取付構造の分解斜視図である。
【図2】アンダーカバー取付構造の組付け状態の側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係るアンダカバー取付構造の分解斜視図である。
【図5】アンダーカバー取付構造の組付け状態の側面図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係るアンダーカバー取付構造の要部説明図である。
【図8】同じくストッパピン抜脱状態を示す説明図である。
【図9】従来のアンダーカバー取付構造例を示す分解斜視図である。
【図10】同じく従来例を車両後方から見た正面図である。
【符号の説明】
1…サイドフレーム 2…支持ピン
3…フレーム側ブラケット 5…アンダーカバー
6…フック 7…カバー側ブラケット
9…ボルト 11…ストッパピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定間隔を置いて対向する左右のサイドフレーム間の下部を覆うために、該サイドフレームに着脱可能に取り付けられるアンダーカバーの取付構造であって、前記アンダーカバーの前側上面には前記サイドフレームの下部内側面に設けた掛止具に係脱可能な左右一対の掛止部材を設ける一方、アンダーカバーの後側上面にはブラケットを設け、該ブラケットを前記サイドフレームの下部内側面に設けたブラケットに対して固定具を介して横方向から着脱自在に固定した産業車両用アンダーカバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開平6−8856
【公開日】平成6年(1994)1月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−342118
【出願日】平成3年(1991)11月29日
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機製作所 (4,162)