説明

用便中の排泄音を消去する技術的方法

【課題】自分自身から発する排泄の音が周囲に漏れないで、心置きなく用便できるようにする。
【解決手段】目的の音のみを拾い、不必要な音はカットする指向性が鋭いエレクトリック・マイクを吸盤を使って固定し、スピーカーボックス内に組み込まれたアンプと、壁面に固定された軽くて応答性の良いコーン型スピーカーを利用し、元の位相に逆転した位相を重ね合わせることで音を打消し合うアクティブ・ノイズ・コントロールの技術を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用便中の排泄音を消去或いは可能な限り小さくする技術的方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブ・ノイズ・コントロールという、元の位相に逆転した位相を重ね合わせて音を打ち消しあう技術を利用して、用便中の排泄音を消去または可能な限り小さくし、その音が周囲に漏れることに気兼ねすることなく用を足せることを目的とした技術的な方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
六義園の近くに、特別豪邸と言うのではないが、品の良い家が整然と建ち並んでいる一角がある。ところが電柱が有る所と無い所とでは随分景観が異なり、もし電柱が無ければと、しばしば考えさせられる。ケーブルの技術も飛躍的に進歩し、高耐圧のものが出来ている現在、送電用はともかくとしても、せめて都会の配電用だけでも地下に埋めて欲しいものである。
【0004】
電柱に電線を張り巡らせれば、確かに事故時には発見し易いということはあるが、災害に弱く、見栄えも悪い。にもかかわらず安上がりということだけで、未だに日本の街に電柱が立ち並んでいる。電柱が無くて困るのは犬くらいなもので、マーキングには便利だし快適なトイレとみなしているのだろうか。そういえば昔、私たちも幼児の頃、電柱におしっこをかけあって喜んでいた記憶がある。してみると幼児と犬とは同類ということか。しかしこのことは、たとえ設備が整っていても狭い家のトイレより、外の広い空間で用を足すほうが快適ではないかという問題を提議している。
【0005】
とはいうものの、トイレの設備があるだけまだましかもしれない。未だにオマルが部屋の中に置いてあり、夜中にはそれで用を足す人々もいる。寒い地域ではトイレが外部にあり、そこで用を足すとなれば、そのこと自体が命がけともなりかねない事情もあり、臭いや音に対しては鈍感にならざるを得ない。歴史的に見ても、怖い病気が慢延し、多数の人が死に至るような事態にでもならなければ、わざわざトイレを設置しようという気も起こらないのだろう。外国でトイレが各寝室にそれぞれ併設されている家もあるのは、元々そんな歴史的背景があるからではないだろうか。
【0006】
そんなことを考えつつ世界に目を向けると、大都会にありながら現在でもトイレの設備の無い住居に暮らしていて、用便は家の外で、たとえば道端の物陰で、草むらの中で、線路の上で等、まさに所構わずといった人々もいる。もっとも夜の池袋の酔っ払いだって、物陰に隠れて用を足していて、あまり威張れたものではないが。排便の後始末も葉っぱを使う人、石ころを利用する人、水を使用し必ず左手で処理する人など千差万別。もっとも今まで水を使用していたインドや東南アジアでは、最近トイレット・ペーパーを使う人が多くなってきた。まさに近頃温水を使い始めた日本とは逆の現象である。逆と言えば小用のスタイルだって、デカン高原などでは男性がしゃがみ女性は立って済ませる人々もいる。このように排泄に関しては世界各地で多種多様の方法を編み出している。しかしその時の音については一様に無頓着な人が大多数である。別の言葉で言い換えると、日本の若い女性のようにその音が他所に洩れることに神経質になる人は非常に少ない。小さな個室の中で起こる犯罪や事故に対処する為、足元に隙間を空けたドアーも多い。そのドアーすらなく、皆が仲良く並んで用を足している所では、排泄の音など問題になりようが無い。そのような大多数の人々の中で、日本の若い女性は音に関して繊細で個性的であると言える。
【0007】
もっとも日本の若い女性が、その音の洩れに神経質になるのも分からないでもない。何故なら排泄時の音量は、体の構造の違いからか、男性の70ホン程度に比べて女性は80ホンを超えると言われている。これでは新宿の雑踏の中にいるのと変わらない。しかもこの音域はホンとデシベルを同じ大きさと考えて良く、その音はかなり大きい。そうであれば、その音の洩れを気にすることも、場合により恥ずかしく思うことも肯ける。もっとも恥ずかしいと思う気持ちは人により異なるとは思うが。
【0008】
それはこのようなことからも窺い知れる。日本人は味噌汁を飲む場合、汁椀に直接口をつけることが普通であり、誰もそのことを不思議に思わない。ところが、比較的和食を食べ慣れていて、しかも何時もは格好など気にしないような外国の知人が、スプーンやレンゲを使わず直接汁椀に口を付けて味噌汁を飲むことに、真っ赤になって恥ずかしがったことがあった。してみると、恥ずかしいという気持ちは各人の内部にあって、しかも各人まちまちであることが分かる。しかし恥ずかしいという気持ちのベクトルが個人としてだけでなく、全体としても向きと大きさを変えていくことも考えられる。
【0009】
最近の日本の女性は、見ることや見られること、つまり視覚に関することから興味が薄れ、嗅覚、聴覚へと関心のベクトルが移りつつあるのではないだろうか。若い女性の大半が肘を付いて食事をするし、電車の中では化粧をする人もいる。他人の視線は気にならないし、恥ずかしいとも思わない。良く言えば飾らず天然のまま、口うるさく言えば躾けられていない。でも自然志向に傾いているのは確かなようだ。それは他所の国の人と比べれば良く分かる。
【0010】
例えば眉や口紅はこってり描き、強すぎる日光から目を守る為か、大きな目の回りをさらに強調して塗りたくる人々と違い、睫毛が短く小さな目に少し細工をするのが精々で、口紅も程々に塗る。化粧全般にナチュラル・メイクが好まれる。まして整形手術を受ける女性は、近隣諸国に比べても極端に少ない。現在の技術レベルならよほど下手な手術でもされない限り、そこそこの顔に変身出来るにもかかわらず、心理的なブレーキが働いているのか、或いは関心が無いと言うことか。それは歯の矯正をする人が少ないということからも察することが出来る。観光で日本に来る人は経済的に余裕が有る為に、働きに来る人は少しでも優位に仕事が出来るように、整形している人は多いというのにも関わらず。このように見ること、他人に見られることについて、日本の若い女性は意に介していない。というか、天然のままに近く、大変ナチュラルであり、他人の目を気にしていない。
【0011】
しかし臭いに関しては敏感である。汗臭い男性の臭いにうっとりする女性はほんのごく少数で、大多数の女性は汗臭さは勿論のこと、酒やタバコの匂いも嫌う。
【0012】
まして音に関してはもっと過敏であり、意識的でもある。彼女らはラーメンやうどんを食べるとき、日本人独特のずるずる啜る音を嫌う。それなら多くの国の人がしているようにレンゲやスプーンで麺やスープを掬い、そのまま口の中に放り込めば良いものを、一旦レンゲやスプーンの上には乗せるが、それを再び箸で掬い口に持っていくという特異な方法を編み出した。こうすると麺を啜る音が小さくなると考えたようだ。このように音に関しては神経質なくらいに対応する人が増えた。
【0013】
もし西洋と東洋とを分けるとすれば、その切り口のひとつに街の騒音に対する人々の感性の違いということも数えられるだろう。どちらかといえば寂しいくらい静かな西洋と、音の溢れかえった東洋と言えなくも無い。まさにイスタンブールを境にして対照的で、中でも日本の都会はけたたましいばかりである。昔は海水浴場でさえ、大きな音で音楽を鳴らすことをサービスと勘違いしていた。そのような街やリゾートではうるさくても気にならないようである。
【0014】
ところが、こと身体から発する音、例えば鼻をかむ音や排泄の時の音になると事情は違ってくる。街の騒音に対しては鷹揚な人でも、排泄の音については意識的になる日本人は多く、排泄音を打ち消すためにマスキング効果を期待して、BGMで音楽や小川のせせらぎの音を流しているところもある。しかし、この方法は排泄音より大きな音でなければ期待できない。そこでアクティブ・ノイズ・コントロールの技術を利用して排泄音を打ち消すことが最良の方法と考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
マイクはエレクトリック・マイクを使用し、目的の音のみを拾い、不必要な音はカットするように指向性の鋭いものが良く、インピーダンスは600オームとする。そのマイクを、目的の音を拾い易く、水濡れの心配にも対処出来る場所に吸盤を使って固定する。マイクのスタンド部分はプラスチック製で、折り曲げの出来るストローのように蛇腹になっていて、90度くらいまでは任意の角度に曲げることが出来る。
【0016】
アンプはスピーカー・ボックス内に組み込む。元の位相に逆転した位相を重ね合わせることで、音を打消し合うアクティブ・ノイズ・コントロールの技術を利用するので、コントロール・アンプ部分で入出力の比を微調整する。
【0017】
総合的なパワーはスピーカーの能率によって大きく左右されるので、能率の悪いスピーカーを大パワー・アンプで駆動することは避け、無駄な電気を浪費しない為にもパワーアンプの出力は3ワット程度に抑える。また、使用時のみ電源が入るよう、トイレのドアーに接点を設ければより節電に有効である。
【0018】
不必要な低音域が大きな入力で入る事が無いよう、オクターブあたり12デシベルで低音域をカットすることも考えられる。その場合、これらの調整用つまみと電源用オン・オフ・スイッチの計3個を、スピーカー・ボックスの前面または側面に、操作し易いように出す。電源は家庭用交流100ボルトをアンプ内で直流6ボルトに変換する。
【0019】
スピーカーは軽くて応答性の良いコーン型で、1ワットの入力に対し1メートル地点で90デシベル以上の能率の良いものが望まれる。スペースを取りたくない事と、再生帯域が160から6000ヘルツ程度ということで、口径12センチくらいのフルレンジ型もしくは広帯域のスコーカーを使用する。
【0020】
スピーカーは原則として壁面に固定するが、場合により天井、床、ドアーなど最適な場所を選べば良い。そのスピーカーは上下方向のみ方向を変えることが出来るように、コの字形の軸で左右を固定する。それを壁面などで固定された1本のシャフトにより、コの字形の真ん中で支持する。そのシャフトは壁面に対して360度回転可能である。このようにマイクもスピーカーも一応固定はされているが、その対面する中心軸は一直線上にすることも、それぞれを任意の方向に向けることも可能であるので、ハウリングを防止することも容易である。
【0021】
スピーカーのボックス内部は、不必要な定在波を防ぐことと補強を兼ねて、平面の板で構成するのでは無く、波形に成型した板を使う方が良い。材質は一般的な合板でも良く、適度な吸音処理がされているのであれば、湿気に強く成型のし易いプラスチック製も考えられる。
【0022】
個室内のスペースの関係もあり、スピーカーは出来るだけ小さい密閉型とする。しかし小型にすることで特に低音により背圧が高まることも考えられる。そこで位相反転型として、バスレフの開口部を軽く吸音材で処理し、背圧を抑えるという方法も悪くない。このスピーカーのインピーダンスは一般的な4オームとする。
【発明の効果】
【0023】
アクティブ・ノイズ・コントロールは特に新しい考えでもなく、その技術を応用した商品は既に幾つか発売されている。ところが、日本人の若い女性が望んでいたにも関わらず、排泄の音を打ち消す目的の製品は今まで出ていない。これと同様の現象はよくある。つまり、技術的には可能であり、採算も十分に合い、消費者が望んでいるにも関わらず製品化されていないということは以前からよくある。
【0024】
例えば半世紀前にもよく似たことがあった。その技術的な方法もそっくりである。その頃の日本製のステレオには、プレイヤー部品のように、デザインはともかく、性能的には既に世界トップクラスのものも多かった。ところがスピーカーなどは、親の言うことを聞かない子供のように、入力に対して素直に応答せず、性能的には今一歩といった製品がほとんどで、その性能をカバーするためにアンプ側で負帰還をかけて、何とかコントロールし使用するステレオ愛好家もいた。これは商品化されていなかったので一般の素人が考えながら実行した技術的な方法である。
【0025】
このアクティブ・ノイズ・コントロールという音を打消し合う技術を利用することで、特に用便中の排泄音が周囲に洩れることを気にする若い日本人の女性が、心置きなく用を足すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
マイクは目的の音のみを拾い、不必要な音はカットするように指向性が鋭いエレクトリック・マイクを使用し、目的の音を拾い易く、水濡れの心配をしなくても良いように対応できる場所に吸盤を使って固定する。マイクのスタンド部分はプラスチック製で、任意の角度に曲げることが出来る。
【0027】
アクティブ・ノイズ・コントロールの技術を利用したアンプはスピーカー・ボックス内に組み込む。コントロール・アンプ部分で入出力の比を微調整する。そのつまみ類は前面または側面に出す。パワーアンプの出力は3ワット程度とする。
【0028】
スピーカーは軽くて応答性の良いコーン型で、1ワットの入力に対し1メートルの地点で90デシベル以上の能率の良い、再生帯域が160から6000ヘルツ程度はある、口径12センチくらいのフルレンジ型を使用する。スピーカーは原則として壁面に固定するが、任意の方向に向けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 マイクとマイクスタンド
【図2】 スピーカーと内臓されたアンプ
【符号の説明】
【0030】
1 マイク
2 マイクスタンド
3 ゴム製吸盤
4 アンプ
5 調整つまみ
6 ローカット用つまみ
7 電源スイッチ
8 コの字形シャフト
9 支持シャフト
10 スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用便中に発する排泄の音をアクティブ・ノイズ・コントロールを利用して消去する技術的方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13910(P2010−13910A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195460(P2008−195460)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(504133660)
【Fターム(参考)】