説明

用紙搬送装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】回転動力を受ける一方の搬送ロールの駆動トルクが変動して一対の搬送ロール間における歯車反力が変動することがあっても、一対の搬送ロールの接触部における圧力の変動に起因した用紙搬送不良の発生を低減できる用紙搬送装置等を提供する。
【解決手段】用紙搬送装置は、接触して回転する第一搬送ロール及び第二搬送ロールと、第二搬送ロールを第一搬送ロールに接近する方向に変位させる圧力を加える加圧機構と、第一搬送ロールが受ける回転動力を第一搬送ロールの第一歯車から2以上の伝達歯車を経由させて第二搬送ロールの第二歯車まで伝達させる回転伝達機構を有し、第二歯車と第二歯車に噛み合う回転伝達機構の他の伝達歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点Kにおける法線Mの方向が第一搬送ロールに接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙搬送装置およびこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙に画像を形成する画像形成装置では、その用紙を搬送する用紙搬送装置として、例えば、所要の搬送方向に回転する一対の搬送ロール間に用紙を導入して挟み込んで送り出すように搬送する形式の用紙搬送装置が使用されている。
【0003】
この用紙搬送装置は、例えば、以下のように構成されている。一方の搬送ロールは、固定支持部材に軸が支持され、回転駆動装置からの回転動力を受けて回転する。他方の搬送ロールは、一方の搬送ロールと接近及び離間する方向に変位する変位支持部材に軸が支持され、一方の搬送ロールに押し付けられた状態で回転する。他方の搬送ロールは、圧縮ばね等の加圧機構により変位支持部材を一方の搬送ロールに接近する方向に変位させる圧力が加えられる。また、他方の搬送ロールは、その軸の一端に固定した歯車を、一方の搬送ロールの軸の一端に固定された歯車と噛み合わせることにより、その一方の搬送ロールが受ける回転動力が伝達されて回転する。
【0004】
このような用紙搬送装置においては、各搬送ロールの軸受部への紙粉、磨耗粉等の不要物が付着すること、一対の搬送ロールの搬送方向の上流側又は下流側に配置される用紙搬送部から搬送力や搬送抵抗を受けること等の外的要因により、駆動源側の一方の搬送ロールの駆動トルクが変動して一対の搬送ロール間における歯車反力が変動する。これにより、一対の搬送ロールの接触部における圧力が変動して用紙の搬送不良(例えば、用紙が予定する搬送方向に沿わず傾いた姿勢で搬送される等の現象)が発生することがある。
【0005】
一方、従来においては、転写ロールを像担持体に対して正確に位置決めすることを目的とした画像形成装置として、以下のものが知られている(特許文献1)。すなわち、像担持体に対向し、前記像担持体に接する間隔保持部を有する転写ロールと、この転写ロールを前記像担持体から接離する方向に移動自在であるように収納し、その像担持体を収納するメインフレーム体に閉方向と開方向とに回動自在に支持されたサブフレーム体と、前記メインフレーム体に設けられ、転写ロールのサブフレーム体の閉方向への移動を規制するストッパと、前記サブフレーム体に設けられ、転写ロールを像担持体の回転中心によりも前記ストッパ側へ向けて付勢する弾性部材と、像担持体及び転写ロールを連結駆動するギヤ列とを具備し、そのギヤ列は、ギヤ列の回転により、転写ロールを像担持体の回転中心よりも前記ストッパ側に向けて付勢するよう構成された画像形成装置である。
【0006】
また、駆動時の感光体に対する現像剤担持体の加圧力の変動を抑制し、加圧力を最適な値に保つことにより、感光体と現像剤担持体との間隔を一定の保持することを目的としたプロセスカートリッジとして、以下のものが知られている(特許文献2)。すなわち、駆動ギヤを有する電子写真画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジであって、駆動ギヤと噛合するドラムギヤを有する感光体と、ドラムギヤと噛合するスリーブギヤを有する現像剤担持体を備え、前記感光体を回転可能に支持する第一枠体と、前記現像剤担持体を回転可能に支持する第二枠体からなり、第一枠体と第二枠体を結合し、第二枠体を第一枠体に対して不勢するとともに、回動可能に支持する結合部材を有するプロセスカートリッジにおいて、前記結合部材は、前記第二枠体の長手方向同軸上の駆動側の端部と従動側の端部に、前記ドラムギヤと前記スリーブギヤの噛み合い圧力角方向に一つずつ取り付けられ、前記第二枠体の駆動側における回動の支点は、前記ドラムギヤと前記スリーブギヤの噛み合い圧力角方向の直交方向に移動可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−109383号公報
【特許文献2】特開2001−66970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、回転駆動する一対の搬送ロールの間(接触部)に用紙を導入して搬送する用紙搬送装置として、回転動力を受ける一方の搬送ロールの駆動トルクが変動して一対の搬送ロール間における歯車反力が変動することがあっても、一対の搬送ロールの接触部における圧力の変動に起因した用紙搬送不良の発生を低減することができる用紙搬送装置を提供し、また、このような用紙搬送装置を備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明(A1)の用紙搬送装置は、固定された状態で配置される固定支持部材と、前記固定支持部材に軸が支持され、回転動力を受けて回転する第一搬送ロールと、前記第一搬送ロールと接近及び離間する方向に変位する状態で配置される変位支持部材と、前記変位支持部材に軸が支持され、前記第一搬送ロールに直接又は搬送対象の用紙を介在させて押し付けられた状態で回転する第二搬送ロールと、前記変位支持部材を前記第一搬送ロールに接近する方向に変位させる圧力を加える加圧機構と、前記第一搬送ロールが受ける回転動力を当該第一搬送ロールの軸に固定された第一歯車から2以上の伝達歯車を経由させて前記第二搬送ロールの軸に固定された第二歯車まで伝達させる回転伝達機構を有し、
前記第二歯車又は前記変位支持部材に軸が支持されて当該第二歯車に回転動力を伝達する前記回転伝達機構の伝達歯車の一部と、当該第二歯車又は当該伝達歯車の一部に噛み合う前記回転伝達機構の他の伝達歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点における法線の方向が前記接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置したことを特徴とするものである。
【0010】
この発明(A2)の用紙搬送装置は、上記発明A1の用紙搬送装置において、前記回転伝達機構は、前記伝達歯車として1段歯車と2段歯車を備え、前記第一歯車、前記1段歯車、前記2段歯車及び前記第二歯車をこの順番で噛み合わせる歯車列を構成し、かつ、当該第一歯車の軸、当該1段歯車の軸及び当該2段歯車の軸を1つの保持部材に取り付けた構造であり、前記第二歯車と前記2段歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点における法線の方向が前記接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置したものである。
【0011】
この発明(A3)の用紙搬送装置は、上記発明A1の用紙搬送装置において、前記回転伝達機構は、前記伝達歯車として1段歯車と2段歯車を備え、前記第一歯車、前記1段歯車、前記2段歯車及び前記第二歯車をこの順番で噛み合わせる歯車列を構成し、かつ、前記2段歯車の軸を前記変位支持部材に取り付け、前記1段歯車の軸を前記第一歯車の軸と第一保持部材に取り付けるとともに前記2段歯車の軸と第二保持部材に取り付けた構造であり、前記1段歯車と前記2段歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点における法線の方向が前記接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置したものである。
【0012】
この発明(B)の画像形成装置は、用紙に画像を形成する作像部と、前記作像部に用紙を搬送する用紙搬送部とを有し、前記用紙搬送部を構成する用紙搬送装置として上記発明A1からA3のいずれかの用紙搬送装置を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記発明A1の用紙搬送装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、回転動力を受ける第二搬送ロールの駆動トルクが変動して第一搬送ロールと第二搬送ロールの間の歯車反力が変動することがあっても、一対の搬送ロール(第一搬送ロールと第二搬送ロール)の接触部における圧力の変動に起因した用紙搬送不良の発生を低減することができる。
【0014】
上記発明A2の用紙搬送装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、簡易な構成でもって前記した発明A1による効果を得ることができる。
【0015】
上記発明A3の用紙搬送装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、簡易な構成でもって前記した発明A1による効果を得ることができる。
【0016】
上記発明Bの画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、上記発明A1からA3のいずれかの用紙搬送装置において第一搬送ロールと第二搬送ロールの接触部における圧力の変動に起因した用紙搬送不良の発生が低減され、これにより、その用紙搬送不良に起因した画質不良等の新たな不具合の誘発が低減された画像の形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1等に係る用紙搬送装置を備えた画像形成装置の要部を示す概略説明図である。
【図2】図1の画像形成装置の一部(作像部及び用紙搬送部の一部)を示す概略斜視図である。
【図3】用紙搬送装置の要部(駆動伝達機構など)を示す説明図である。
【図4】図3の駆動伝達機構などの構成を示す説明図である。
【図5】図4の駆動伝達機構における各ギヤの配置関係などの構成を示す説明図である。
【図6】噛み合うギヤにおけるピッチ円や法線を示す説明図である。
【図7】図3の用紙搬送装置の動作状態を示す説明図である。
【図8】実施の形態2に係る用紙搬送装置の要部(駆動伝達機構など)を示す説明図である。
【図9】図8の駆動伝達機構などの構成を示す説明図である。
【図10】図9の駆動伝達機構における各ギヤの配置関係などの構成を示す説明図である。
【図11】図8の用紙搬送装置の動作状態を示す説明図である。
【図12】実施の形態3に係る用紙搬送装置の要部(駆動伝達機構など)を示す説明図である。
【図13】図12の駆動伝達機構などの構成を示す説明図である。
【図14】図13の駆動伝達機構における各ギヤの配置関係などの構成を示す説明図である。
【図15】図12の用紙搬送装置の動作状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1は実施の形態1等に係る用紙搬送装置を備えた画像形成装置の要部の構成を示し、図2はその画像形成装置の一部(作像部及び用紙搬送部の一部)の構成を示している。
【0020】
画像形成装置は、用紙9に画像を形成する作像部1と、この作像部1に用紙9を搬送する用紙搬送部3とを少なくとも有したものである。この作像部1や用紙搬送部3は、図示しない装置本体の内部に配置されている。図中の矢付きの一点鎖線は、用紙9の主な搬送経路を示す。
【0021】
作像部1は、現像剤(トナー)で構成されるトナー像を専用に形成する作像装置10と、作像装置10の転写位置を通過させるように用紙9を搬送してその用紙9にトナー像を転写させる転写装置20と、転写装置20で転写されたトナー像を用紙9に定着させる定着装置26とで主に構成されている。一方、用紙搬送部3は、用紙9を収容するとともに送り出す給紙装置30と、給紙装置30から送り出される用紙9を作像部1(作像装置10と転写装置20の間)にむけて搬送するロール形式の用紙搬送装置40とで主に構成されている。
【0022】
作像部1における作像装置10は、公知の電子写真方式、静電記録方式等の記録方式を利用して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像を専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。また、この4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、例えば上下方向に直列状に並べた状態で配置している。
【0023】
各作像装置(10Y,10M,10C,10K)はいずれも、矢印で示す方向(図中において時計回りの方向)に回転駆動する感光体ドラム12を備えており、この感光体ドラム12の周囲に、以下のような各装置を主に配置した構成になっている。その主な装置とは、感光体ドラム12の表面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電ロール等を備えた帯電装置13と、帯電後の感光体ドラム12の表面に画像データ(信号)の色分離された前記4色の成分に基づく光Hを照射して電位差のある(各色成分の)静電潜像を形成する露光装置14と、その各色成分の静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)のトナーで現像してトナー像にする現像装置15(Y,M,C,K)と、トナー像を用紙9に転写した後の感光体ドラム12の表面に残留するトナー等を除去するドラム用の清掃装置17とである。
【0024】
このうち感光体ドラム12は、円筒状の基材に有機感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。露光装置14は、LEDアレイ、レーザ走査装置等で構成されるものである。露光装置14には、画像形成装置に装備又は接続される原稿読取装置や、記憶媒体の読取装置や、パーソナルコンピュータ等の接続機器から入力される画像データを図示しない画像処理装置で所要の処理を施し、その処理で得られる色成分(本例ではY,M,C,K)ごとの画像信号がそれぞれ入力される。
【0025】
また、現像装置15は、例えば、磁気ブラシ現像方式を利用する二成分現像装置である。現像装置15は、その装置本体に担当する色のトナー(実際には非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤)を収容し、その二成分現像剤を回転駆動する現像ロールにより保持して感光体ドラム12と対向する現像領域(E)に供給する。このほか、前記帯電装置12と現像装置15(の現像ロール)には、画像形成動作時になると、図示しない電源装置から帯電用電圧と現像バイアス電圧が各設定タイミングでそれぞれ印加される。
【0026】
作像部1における転写装置20は、図1や図2に示すように、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光ドラム12の転写位置を通過しながら矢印で示す方向(図1において反時計回りの方向)に回転する転写搬送ベルト21と、この転写搬送ベルト21を所望の状態に架け回して回転自在に支持する複数の支持ロール22a、22bと、用紙搬送部3から供給される用紙9を転写搬送ベルト21の外周面に静電的に吸着させる吸着ロール23と、転写搬送ベルト21を各作像装置10における感光体ドラム12の転写位置に押し付ける転写ロール等の転写体24と、転写搬送ベルト21の外周面に付着する不要なトナー、紙粉等の付着物を除去するベルト用の清掃装置25とで主に構成されている。
【0027】
支持ロール22a、22bの少なくとも1つは、駆動ロールとして構成される。吸着ロール23と転写体24には、画像形成動作時になると、図示しない電源装置から吸着用電圧と転写用電圧が各設定タイミングでそれぞれ印加される。
【0028】
作像部1における定着装置26は、例えば、回転駆動するとともに表面温度が所定の温度に保持されるように加熱手段によって加熱されるロール形式、ベルト形式等の加熱用回転体27と、この加熱回転体27の軸方向にほぼ沿うように所要の圧力で接触して従動回転するロール形式、ベルト形式等の加圧用回転体28とを備えたものである。
【0029】
用紙搬送部3における給紙装置30は、複数枚の用紙9が積み重ねられた状態で収容される用紙収容体31と、この用紙収容体31から用紙9を1枚ずつ送り出すロール方式等の送出装置32とで主に構成されている。用紙収容体31は、複数のものを適用することができる。用紙収容体31には、所要のサイズ、種類等の条件からなる用紙9が収容される。
【0030】
用紙搬送部3における用紙搬送装置40は、給紙装置30と作像装置10Y(実際には転写装置20の吸着ロール23が配置された用紙吸着部)との間に配置されるロール形式の用紙送り装置41と、その用紙送り装置41の前後に配置される用紙搬送案内部材42とで構成されている。この用紙送り装置41は、給紙装置30から送り出される用紙9を一時的に停止させた後、作像部1における転写時期に合わせて送り出す搬送時期調整装置(レジストレーション装置)として構成されている。用紙送り装置41の詳細については、後述する。
【0031】
この画像形成装置においては、画像形成動作の開始指示を受けると、以下の画像形成動作が実行されて画像の形成が行われる。ここでは、前記4色のトナー像で構成されるフルカラー画像を形成する場合を例示する。
【0032】
まず、作像部1では、各作像装置10(Y,M,C,K)における各帯電装置13が回転する各感光体ドラム12の像保持面を所要の極性及び電位に帯電する。続いて、その帯電した感光体ドラム12の像保持面に対して、露光装置14が画像信号に基づく露光を行うことにより、各感光体ドラム12の像保持面に帯電電位に対する所要の電位差からなる各色成分の静電潜像を形成する。しかる後、現像装置15がその静電潜像を所要の極性に帯電しているトナーを現像ロール15aから供給して現像することによりトナー像として顕像化する。この現像装置15では、反転現像が行われる。これにより、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム12上に各色(Y,M,C,K)のトナー像が専用に形成される。
【0033】
一方、用紙搬送部3では、トナー像の転写時期に合わせて給紙装置30から用紙9が1枚ずつ送り出された後、用紙送り装置40(41)を介して所要のタイミングで作像装置10Yと転写装置20の間にむけて供給される。その用紙9は、回転する転写搬送ベルト21の外周面に対して吸着ロール23の静電的作用により吸着される。しかる後、用紙9は、転写搬送ベルト21により搬送されて各作像装置10(Y,M,C,K)の転写位置を通過する際に、各作像装置10における感光ドラム12上の各色(Y,M,C,K)のトナー像が転写体24の静電的作用を受けて用紙9側に順番(Y,M,C,Kの順)に重ね合わせられるような状態で転写される。この転写が終了した後の感光ドラム12の表面はドラム用の清掃装置16により清掃される。
【0034】
続いて、トナー像が転写された後の用紙9は、転写搬送ベルト21から剥離された後、定着装置26にむけて搬送される。定着装置26では、その用紙9が加熱用回転体27と加圧用回転体28の接触部に挿入されて通過する際に加熱及び加圧され、これにより各色成分のトナー像におけるトナーが溶融して用紙9に定着される。この定着が終了した後の用紙9は、その片面への画像の形成を行うだけの場合には、図示しない排紙部に搬送されて収容される。以上により、用紙9にはフルカラー画像が形成される。
【0035】
次に、この画像形成装置の用紙搬送部3における用紙送り装置41について説明する。
【0036】
用紙送り装置41は、図2〜図4等に示すように、固定支持板45に軸51が支持され、図示しない回転駆動装置(モータ、ギヤ列など)からの回転動力を受けて回転する駆動ロール50と、駆動搬送ロール50に接近及び離間する方向(矢印A1,A2で示す方向)に変位する状態で配置される変位支持板46に軸54が支持され、駆動搬送ロール50に直接又は搬送対象の用紙9を介在させて押し付けられた状態で回転する対向搬送ロール53と、変位支持板46を駆動搬送ロール50に接近する方向(矢印A1の方向)に変位させる圧力を加えるバネ式の加圧機構57と、駆動搬送ロール50が受ける回転動力を搬送ロール50の軸51の一端に固定された第一ギヤ52から2以上の伝達ギヤ(61、62、・・・)を経由させて対向搬送ロール53の軸64の一端に固定された第二ギヤ55まで伝達させるギヤ式の回転伝達機構60を有している。
【0037】
固定支持板45は、画像形成装置の本体に直接又は間接的に固定された状態で配置される。変位支持板46は、例えば、固定支持板45に対して上記接近及び離間する方向A1,A2に変位(スライド)可能な状態で取り付けられている。駆動搬送ロール50は、軸51の周囲に弾性層をその軸方向のほぼ全域にわたって形成した構造になっている。対向搬送ロール53は、軸54の周囲に弾性層をその軸方向に間隔あけて複数個に分割して配置する状態で形成した構造になっている。
【0038】
駆動搬送ロール50の軸51は、固定支持板45に図示しない軸受(ベアリング)を介して回転自在に取り付けられている。対向搬送ロール53の軸54は、変位支持板46に図示しない軸受(ベアリング)を介して回転自在に取り付けられている。軸54については、固定支持板45に対して長孔状の開口部45aを貫通させた状態で配置される。
【0039】
加圧機構57は、加圧用のコイルスプリング58を用いて構成されている。コイルスプリング58は、その一端を固定支持板45に取り付けられた取付け板59に固定し、その他端を変位支持板46の一側面部に取り付け、全体が圧縮された状態で配置されており、これにより変位支持板46を所要の圧力Fで矢印A1の方向に押し付けている。この加圧機構57による加圧作用により、対向搬送ロール53は変位支持板46を介して駆動搬送ロール50に圧力Fで押し付けられた状態に保たれる。
【0040】
回転伝達機構60は、伝達ギヤ(アイドラギヤ)として1段ギヤ61と2段ギヤ62(大径ギヤ62Aと小径ギヤ62Bが同心状で一体になった構造のギヤ)を備えたものであり、駆動搬送ロール50の第一ギヤ53、1段ギヤ61、2段ギヤ62及び対向搬送ロール53の第二ギヤ55をこの順番で噛み合わせるギヤ列を構成している。2段ギヤ62については、その大径ギヤ62Aを第一ギヤ53と噛み合わせ、その小径ギヤ62Bを第二ギヤ55とかみ合わせている。また、第一ギヤ53の軸51と1段ギヤ61の軸63と2段ギヤ62の軸64は、1つの保持板65に取り付けており、これによりその各軸51、63、64の位置が固定された状態におかれている。保持板65は、固定支持板(画像形成装置本体でもよい)に直接的又は間接的に取り付けられている。ちなみに、この用紙送り装置41において使用している回転伝達のための各ギヤはいずれもインボリュート曲線の歯で形成された平歯ギヤ又ははすばギヤである。
【0041】
図3の符号56Aは、駆動搬送ロール50の軸51の他端に固定して取り付けられた被伝達ギヤとしての第三ギヤである。符号56Bは、固定支持板45に設ける軸に取り付けられて第三ギヤ56Aと噛み合う伝達ギヤである。伝達ギヤ56Bには、図示しない回転駆動装置からの回転動力がギヤ等を介して伝達される。
【0042】
そして、回転伝達機構60は、図5や図6に示すように、第二ギヤ55と2段ギヤ62を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円Eとの交点Kにおける法線Mの方向が上記接近及び離間する方向A1,A2に対して直交する方向となるように配置している。ここで、直交するとは、接近及び離間する方向A1,A2と交差する部分の角度が85〜95°の範囲内になる場合である。
【0043】
この実施の形態1では、駆動搬送ロール50及び対向搬送ロール53としていずれも半径が6mmのロールを使用する場合において、以下の寸法等からなるギヤを使用するとともに、2段ギヤ62の設置位置を設定することにより、第二ギヤ55と2段ギヤ62を、上記した条件(法線Mの方向が方向A1,A2に対して直交する方向となる)を満たす状態で配置した(図5参照)。
・第一ギヤ52:ピッチ円半径10mm。モジュール1、歯数21。
・第二ギヤ55:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・1段ギヤ61:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・2段ギヤ62の大径ギヤ62A:ピッチ円半径10mm。モジュール1、歯数21。
・2段ギヤ62の小径ギヤ62B:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・第二ギヤ55に対する2段ギヤ62の設置角度(圧接角):θ1=20°
【0044】
この用紙送り装置41は、画像形成動作中における用紙搬送時になると、以下のように動作する。
【0045】
まず、駆動搬送ロール50と対向搬送ロール53は、用紙の搬送時期に合わせて回転と停止の動作が実行される。給紙装置30から用紙9が送り出される際には、駆動搬送ロール50と対向搬送ロール53は停止している。これにより、給紙装置30から送り出される用紙9が、接触した状態にある駆動搬送ロール50と対向搬送ロール53の間(接触部Np:図4)に、用紙搬送案内部材62により案内されて導かれた後に突き当り、一時的に停止させられる。
【0046】
続いて、その用紙3を作像部3に供給する所要の搬送時期が到来すると、図示しない回転駆動装置からの回転動力が最後に伝達ギヤ56Bと第三ギヤ56Aを介して駆動搬送ロール50に伝達され、これにより駆動搬送ロール50が矢印で示す方向(用紙搬送方向)に回転駆動する(図4)。また、この駆動搬送ロール50の回転と同時に、その搬送ロール50で受けた回転動力が第一ギヤ52から回転伝達機構60における1段ギヤ61及び2段ギヤ62を介して第二ギヤ55に伝達され、これにより対向搬送ロール53が矢印で示す方向(用紙搬送方向)に回転駆動する(図4)。さらに、このときの対向搬送ロール53は、加圧機構57の加圧力Fにより駆動搬送ロール50に接近する方向A1に押し付けられた状態で回転している(図7)。これにより、駆動搬送ロール50と対向搬送ロール53の間には、所要の接触圧が発生している。
【0047】
このように一対の搬送ロール50,53が接触した状態で回転することにより、先の停止していた状態の用紙9が、そのロール間に挟まれた状態で作像部1にむけて送り出されるようにして搬送される。図4中の矢付き一点鎖線は、一対の搬送ロール50,53による用紙9の搬送方向を示す。この送り出された用紙9は、実際には、転写装置20の吸着ロール23により転写搬送ベルト21に吸着された後、その転写搬送ベルト21の搬送力により各作像装置10の転写位置を順次通過するようにして搬送される。ここで、この一対の搬送ロール50,53により用紙9が搬送されるときには、図7に示すように、その搬送ロール50,53の間に回転に対する負荷となる搬送抵抗R0(矢付き点線)が発生する。
【0048】
そして、この用紙送り装置41においては、例えば、図7に示すように、一対の搬送ロール50,53の搬送方向の上流側に配置される給紙装置30から搬送抵抗R1(例えば、用紙9の後端部が送出装置32に保持された状態にあるときに発生する)を余分に受けることにより、駆動搬送ロール50の駆動トルクがその分だけ変動(増大)し、変位し得る第二ギヤ55とそれと噛み合う2段ギヤ62(小径ギヤ62B)との間において発生する反力f1が変動する。このときの反力f1は、給紙装置30の搬送抵抗R1の増大することで搬送ロール53を駆動する駆動トルクが増大し、これにより搬送ロール53の第二ギヤ55が2段ギヤ62の小径ギヤ62Bから受ける駆動伝達力が増大して、第二ギヤ55に対する2段ギヤ62の圧接角θ1方向における分力が増大するというメカニズムで発生する。
【0049】
しかし、この場合であっても、その第二ギヤ55と2ギヤ62との間で発生する反力f1は、図7に示すように、その互いに噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円Eとの交点Kにおける法線Mの方向に沿ったものになる。このため、その反力f1は、上記接近及び離間する方向(A1,A2)と直交する方向に作用することになるので、例えば、その接近及び離間する方向A1,A2に沿う分力が発生することが抑制される。
【0050】
この結果、その反力f1は、第二ギヤ55及び軸54を介して変位支持板46を上記方向A1,A2に変位させるように作用することが抑制される。これにより、一対の搬送ロール50,53の間における圧力がその軸方向の全域にわたって変動することも抑制されるようになるので、用紙9が斜めの姿勢で送り出されてしまうという用紙搬送不良が発生することが低減される。
【0051】
また、この用紙送り装置41から搬送される用紙9は、その搬送すべき方向にそって正しい姿勢で作像部3における転写搬送ベルト21に搬送されて、そのベルト21の外周面に吸着ロール23を介して正しい姿勢で保持された後、4つの作像装置10(Y,M,C,K)の転写部を通過するように搬送される。これにより、その用紙9には、各色成分のトナー像が用紙に対して正しい位置にそれぞれ転写される。
【0052】
ちなみに、用紙送り装置41においては、それよりも用紙搬送方向下流側に配置される転写装置20における転写搬送ベルト21や定着装置26における定着速度等の搬送速度が一対の搬送ロール50,53の搬送速度よりも相対的に速い関係にある場合には、用紙搬送力f2が搬送抵抗R0を減じる方向に作用する。
【0053】
[実施の形態2]
図8及び図9は実施の形態2に係る用紙送り装置を示し、図8はその用紙送り装置の正面図、図9はその用紙送り装置の側面図である。
【0054】
実施の形態2に係る用紙送り装置41は、回転伝達機構60における2段ギヤ62の軸64の一端を対向搬送ロール53の軸54と同じ変位支持板47に取り付け、また、1段ギヤ61の軸63を第一ギヤ52の軸51と第一保持板66に回転自在に取り付けるとともに2段ギヤ62の軸64の他端と第二保持板67に回転自在に取り付けた構造にして変更した以外は実施の形態1に係る用紙送り装置41と同じ構成になっている。このため、これ以降及び図面においては、実施の形態1に係る用紙送り装置41と共通する構成部分に同じ符号を付するとともに、その説明を必要な場合を除いて省略する。
【0055】
2段ギヤ62については、その軸64が変位支持板47に取り付けられていることにより、対向搬送ロール53と同様に、駆動搬送ロール50に接近及び離間する方向A1,A2に変位する状態になっている。また、1段ギヤ61については、その軸63が2つの保持板66,67にそれぞれ回転自在に保持されていることにより、その軸61の位置が変位可能な状態である一方で、その軸61と第一ギヤ52の軸51との軸間距離が一定に保持されているとともに軸61と2段ギヤ62の軸64との軸間距離が一定に保持された状態になっている。回転伝達機構60におけるギヤ列は、実施の形態1における回転伝達機構60の場合と同じ構成になっている。
【0056】
そして、回転伝達機構60は、図10に示すように、1段ギヤ61と2段ギヤ62を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円Eとの交点Kにおける法線Mの方向が上記接近及び離間する方向A1,A2に対して直交する方向となるように配置している。
【0057】
この実施の形態2では、駆動搬送ロール50及び対向搬送ロール53としていずれも半径が6mmのロールを使用する場合において、以下の寸法等からなるギヤを使用するとともに、1段ギヤ61及び2段ギヤ62の設置位置を設定することにより、1段ギヤ61と2段ギヤ62を、上記した条件(法線Mの方向が方向A1,A2に対して直交する方向となる)を満たす状態で配置した(図10参照)。
・第一ギヤ52:ピッチ円半径10mm。モジュール1、歯数21。
・第二ギヤ55:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・1段ギヤ61:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・2段ギヤ62の大径ギヤ62A:ピッチ円半径10mm。モジュール1、歯数21。
・2段ギヤ62の小径ギヤ62B:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・2段ギヤ62に対する1段ギヤ61の設置角度(圧接角):θ2=20°
【0058】
以下、実施の形態2に係る用紙送り装置41の用紙搬送時における主な動作について説明する。
【0059】
給紙装置30から送り出された用紙3を作像部3に供給する所要の搬送時期が到来すると、図示しない回転駆動装置からの回転動力が駆動搬送ロール50に伝達されて矢印で示す方向(用紙搬送方向)に回転駆動し、また、駆動搬送ロール50で受けた回転動力が第一ギヤ52から回転伝達機構60における1段ギヤ61及び2段ギヤ62を介して第二ギヤ55に伝達されることで対向搬送ロール53が矢印で示す方向(用紙搬送方向)に回転駆動する(図9)。さらに、このときの対向搬送ロール53は、加圧機構57の加圧力Fにより駆動搬送ロール50に接近する方向A1に押し付けられた状態で回転している(図11)。
【0060】
このように一対の搬送ロール50,53が接触した状態で回転することにより、実施の形態1に係る用紙送り装置41の場合と同様に、先の停止していた状態の用紙9が、そのロール間に挟まれた状態で作像部1にむけて送り出されるようにして搬送される。ここで、この一対の搬送ロール50,53により用紙9が搬送されるときには、図11に示すように、その搬送ロール50,53の間に回転に対する負荷となる搬送抵抗R0(矢付き点線)が発生する。
【0061】
そして、この用紙送り装置41においては、例えば、図11に示すように、一対の搬送ロール50,53の搬送方向の上流側に配置される給紙装置30から搬送抵抗R1(例えば、用紙9の後端部が送出装置32に保持された状態にあるときに発生する)を余分に受けることにより、駆動搬送ロール50の駆動トルクがその分だけ変動(増大)し、変位支持板47に支持されて変位し得る2段ギヤ62(大径ギヤ62A)とそれと噛み合う1段ギヤ61との間において発生する反力f2が変動する。このときの反力f2は、給紙装置30の搬送抵抗R1が増大することで搬送ロール53を駆動する駆動トルクが増大し、これにより搬送ロール53の第二ギヤ55が2段ギヤ62の小径ギヤ62Bから受ける負荷トルクが増大して、2段ギヤ62の大径ギヤ62Bを駆動する1段ギヤ61の負荷トルクが増大し、最後に2段ギヤ62に対する1段ギヤ61の圧接角θ2の方向における分力が増大するというメカニズムで発生する。
【0062】
しかし、この場合であっても、その2段ギヤ62と1段ギヤ61との間で発生する反力f2は、図11に示すように、その互いに噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円Eとの交点Kにおける法線Mの方向に沿ったものになる。このため、その反力f2は、上記接近及び離間する方向(A1,A2)と直交する方向に作用することになるので、例えば、その接近及び離間する方向A1,A2に沿う分力が発生することが抑制される。
【0063】
この結果、その反力f2は、2段ギヤ62及び軸64を介して変位支持板47を上記方向A1,A2に変位させるように作用することが抑制される。これにより、一対の搬送ロール50,53の間における圧力がその軸方向の全域にわたって変動することも抑制されるようになるので、用紙9が斜めの姿勢で送り出されてしまうという用紙搬送不良が発生することが低減される。
【0064】
[実施の形態3]
図12及び図13は実施の形態3に係る用紙送り装置を示し、図12はその用紙送り装置の正面図、図9はその用紙送り装置の側面図である。
【0065】
実施の形態3に係る用紙送り装置41は、回転伝達機構60における2段ギヤ62の軸64の一端を対向搬送ロール53の軸54と同じ変位支持板48に取り付け、また、幅の広い1段ギヤ61の軸63を第一ギヤ52の軸51と第三保持板68に回転自在に取り付けられているとともに2段ギヤ62の軸64と第四保持板69に回転自在に取り付けた構造にして変更した以外は実施の形態2に係る用紙送り装置41と同じ構成になっている。
【0066】
2段ギヤ62については、その軸64が対向搬送ロール53の端部より離れた側の軸端部において変位支持板48に取り付けられていることにより、対向搬送ロール53と同様に、駆動搬送ロール50に接近及び離間する方向A1,A2に変位する状態になっている。2段ギヤ62は、駆動搬送ロール50の軸51と同じかあるいは少しずれた位置に配置した軸64に取り付けられている。また、1段ギヤ61については、その軸63が2つの保持板68,69にそれぞれ回転自在に保持されていることにより、その軸61の位置が変位可能な状態である一方で、その軸61と第一ギヤ52の軸51との軸間距離が一定に保持されているとともに軸61と2段ギヤ62の軸64との軸間距離が一定に保持された状態になっている。回転伝達機構60におけるギヤ列は、実施の形態2における回転伝達機構60の場合と同じ構成になっている。
【0067】
そして、回転伝達機構60は、図14に示すように、1段ギヤ61と2段ギヤ62を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円Eとの交点Kにおける法線Mの方向が上記接近及び離間する方向A1,A2に対して直交する方向となるように配置している。
【0068】
この実施の形態3では、駆動搬送ロール50及び対向搬送ロール53としていずれも半径が6mmのロールを使用する場合において、以下の寸法等からなるギヤを使用するとともに、1段ギヤ61及び2段ギヤ62の設置位置を設定することにより、1段ギヤ61と2段ギヤ62を、上記した条件(法線Mの方向が方向A1,A2に対して直交する方向となる)を満たす状態で配置した(図14参照)。
・第一ギヤ52:ピッチ円半径6mm。モジュール1、歯数21。
・第二ギヤ55:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・1段ギヤ61:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・2段ギヤ62の大径ギヤ62A:ピッチ円半径10mm。モジュール1、歯数21。
・2段ギヤ62の小径ギヤ62B:ピッチ円半径6mm。モジュール0.7、歯数20。
・2段ギヤ62に対する1段ギヤ61の設置角度(圧接角):θ3=20°
【0069】
以下、実施の形態3に係る用紙送り装置41の用紙搬送時における主な動作について説明する。
【0070】
給紙装置30から送り出された用紙3を作像部3に供給する所要の搬送時期が到来すると、図示しない回転駆動装置からの回転動力が駆動搬送ロール50に伝達されて矢印で示す方向(用紙搬送方向)に回転駆動し、また、駆動搬送ロール50で受けた回転動力が第一ギヤ52から回転伝達機構60における1段ギヤ61及び2段ギヤ62を介して第二ギヤ55に伝達されることで対向搬送ロール53が矢印で示す方向(用紙搬送方向)に回転駆動する(図13)。さらに、このときの対向搬送ロール53は、加圧機構57の加圧力Fにより駆動搬送ロール50に接近する方向A1に押し付けられた状態で回転している(図15)。
【0071】
このように一対の搬送ロール50,53が接触した状態で回転することにより、実施の形態1に係る用紙送り装置41の場合と同様に、先の停止していた状態の用紙9が、そのロール間に挟まれた状態で作像部1にむけて送り出されるようにして搬送される。ここで、この一対の搬送ロール50,53により用紙9が搬送されるときには、図15に示すように、その搬送ロール50,53の間に回転に対する負荷となる搬送抵抗R0(矢付き点線)が発生する。
【0072】
そして、この用紙送り装置41においては、例えば、図15に示すように、一対の搬送ロール50,53の搬送方向の上流側に配置される給紙装置30から搬送抵抗R1(例えば、用紙9の後端部が送出装置32に保持された状態にあるときに発生する)を余分に受けることにより、駆動搬送ロール50の駆動トルクがその分だけ変動(増大)し、変位支持板47に支持されて変位し得る2段ギヤ62(大径ギヤ62A)とそれと噛み合う1段ギヤ61との間において発生する反力f3が変動する。このときの反力f3は、給紙装置30の搬送抵抗R1が増大することで搬送ロール53を駆動する駆動トルクが増大し、これにより搬送ロール53の第二ギヤ55が2段ギヤ62の小径ギヤ62Bから受ける負荷トルクが増大して、2段ギヤ62の大径ギヤ62Bを駆動する1段ギヤ61の負荷トルクが増大し、最後に2段ギヤ62に対する1段ギヤ61の圧接角θ3の方向における分力が増大するというというメカニズムで発生する。
【0073】
しかし、この場合であっても、その2段ギヤ62と1段ギヤ61との間で発生する反力f3は、図14に示すように、その互いに噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円Eとの交点Kにおける法線Mの方向に沿ったものになる。このため、その反力f3は、上記接近及び離間する方向(A1,A2)と直交する方向に作用することになるので、例えば、その接近及び離間する方向A1,A2に沿う分力が発生することが抑制される。
【0074】
この結果、その反力f3は、2段ギヤ62及び軸64を介して変位支持板48を上記方向A1,A2に変位させるように作用することが抑制される。これにより、一対の搬送ロール50,53の間における圧力がその軸方向の全域にわたって変動することも抑制されるようになり、このため、用紙9が斜めの姿勢で送り出されてしまうという用紙搬送不良が発生することが低減される。
【0075】
[他の実施の形態]
実施の形態1〜3では、回転伝達機構60として、1段ギヤ61と2段ギヤ62を伝達ギヤとして使用するものを例示したが、この他にも、例えば、第一ギヤ52と第二ギヤ55の間を4個以上の偶数個のギヤで連結して所要の回転駆動の伝達を行うギヤ列を構成したものを適用することができる。
【0076】
また、実施の形態1〜3では、用紙送り装置41を用紙搬送部3におけるロール式の用紙送り装置に適用した場合を例示したが、他の部位において用紙を搬送する装置として適用することも可能である。
【0077】
さらに、実施の形態1〜3では、画像形成装置として、電子写真方式の画像形成方式を適用したものを例示したが、それ以外の画像形成方式(例えばインクジェット方式、サーマルヘッド方式など)を採用した画像形成装置であっても構わない。また、本発明が適用される画像形成装置としては、例えば、プリンタ、コピー機、ファクシミリ等の画像形成装置をはじめ、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ機能(画像入出力送受信機能)等に代表される各機能を複合させた画像形成装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0078】
1 …作像部
3 …用紙搬送部
5 …装着部
41…用紙送り装置(用紙搬送装置)
45…固定支持板(固定支持部材)
46〜48…変位支持板(変位支持部材)
50…駆動搬送ロール(第一搬送ロール)
51…軸
52…第一ギヤ(第一歯車)
53…対向搬送ロール(第二搬送ロール)
54…軸
55…第二ギヤ(第二歯車)
57…加圧機構
60…回転伝達機構
61…1段ギヤ(伝達歯車)
62…2段ギヤ(伝達歯車)
63,64…軸
65…保持板(1つの保持部材)
66,68…第一保持板(第一保持部材)
67,69…第二保持板(第二保持部材)
A1…接近する方向
A2…離間する方向
E …ピッチ円
K …交点
M …法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された状態で配置される固定支持部材と、
前記固定支持部材に軸が支持され、回転動力を受けて回転する第一搬送ロールと、
前記第一搬送ロールと接近及び離間する方向に変位する状態で配置される変位支持部材と、
前記変位支持部材に軸が支持され、前記第一搬送ロールに直接又は搬送対象の用紙を介在させて押し付けられた状態で回転する第二搬送ロールと、
前記変位支持部材を前記第一搬送ロールに接近する方向に変位させる圧力を加える加圧機構と、
前記第一搬送ロールが受ける回転動力を当該第一搬送ロールの軸に固定された第一歯車から2以上の伝達歯車を経由させて前記第二搬送ロールの軸に固定された第二歯車まで伝達させる回転伝達機構を有し、
前記第二歯車又は前記変位支持部材に軸が支持されて当該第二歯車に回転動力を伝達する前記回転伝達機構の伝達歯車の一部と、当該第二歯車又は当該伝達歯車の一部に噛み合う前記回転伝達機構の他の伝達歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点における法線の方向が前記接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置したことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記回転伝達機構は、前記伝達歯車として1段歯車と2段歯車を備え、前記第一歯車、前記1段歯車、前記2段歯車及び前記第二歯車をこの順番で噛み合わせる歯車列を構成し、かつ、当該第一歯車の軸、当該1段歯車の軸及び当該2段歯車の軸を1つの保持部材に取り付けた構造であり、
前記第二歯車と前記2段歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点における法線の方向が前記接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置した請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記回転伝達機構は、前記伝達歯車として1段歯車と2段歯車を備え、前記第一歯車、前記1段歯車、前記2段歯車及び前記第二歯車をこの順番で噛み合わせる歯車列を構成し、かつ、前記2段歯車の軸を前記変位支持部材に取り付け、前記1段歯車の軸を前記第一歯車の軸と第一保持部材に取り付けるとともに前記2段歯車の軸と第二保持部材に取り付けた構造であり、
前記1段歯車と前記2段歯車を、その噛み合うときの歯面において歯型のインボリュート曲線と歯のピッチ円との交点における法線の方向が前記接近及び離間する方向に対して直交する方向となるように配置した請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
用紙に画像を形成する作像部と、前記作像部に用紙を搬送する用紙搬送部とを有し、
前記用紙搬送部を構成する用紙搬送装置として請求項1乃至3のいずれかに記載の用紙搬送装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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