説明

用途分解装置、用途分解方法、及び用途分解プログラム

【課題】実態に即したエネルギー消費の用途に分解分析することができる用途分解装置を提供する。
【解決手段】用途分解装置は、各月の各用途の消費量の割合を規定した三用途分解テーブル315aと、各月の給湯用途の比率を規定した比率テーブル316aと、各月の総電力量を記憶する記憶部210と、電力用途分解部300と、を備え、電力用途分解部300は、比率テーブル316aと三用途分解テーブル315aに基づいて各月の各用途の消費量を概算する第1概算手段321と、三用途分解テーブル315aに基づいて、総電力量から各用途の消費量を概算する第2概算手段322と、第1概算手段321と第2概算手段322とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断手段323と、判断結果に基づいて、各月の暖冷房用途を概算する第3概算手段324と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅や集合住宅の各住戸といったいわゆる全電化の環境に供給される総電力量を各用途に用途分解する用途分解装置、用途分解方法、及び用途分解プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球資源の保全および経済性の両面から省エネルギーが求められている。そのため設備や装置自体の消費エネルギーの低減を図ると共に、運用面においても省エネルギーとすることが求められている。工場などにおいてエネルギーを多量に消費する業務用の設備では、設備ごとにエネルギー消費量を監視し、合理的な運用をする工夫が種々行われている。
【0003】
一方、民生部門の各住戸に用いられる設備機器には、通常そのようなエネルギー消費量を監視する機能は備えられていない。家庭等における省エネルギー活動は、専らこまめに消灯したり、暖房温度の設定値を低くしたりするなどの定性的な行為によって実施されているが、省エネルギー活動が結果として表れる指標がないため、その効果を実感しにくい。そのような状況では省エネルギー活動を行う動機に不足し、教育や習慣、義務感や生活観念などの複数の動機付けに頼っているのが実情であり、定量的な省エネルギー対策はまださほど進んでいない。
【0004】
これに対し本願出願人は、特許文献1において、エネルギー種別ごとの消費量を入力して集積し、過去のデータや他人のデータとの対比によって表現することにより、自己の行動の傾向を評価する生活改善支援システムを提案している。これにより各人が自己の行動を顧みて、省エネルギー活動の改善に利用することが可能である。
【0005】
しかし、エネルギー種別ごとの消費傾向のみではなく、さらにどの目的にどれだけ使ったかということを知ることにより、省エネルギー活動も図りやすくなると考えられる。
【0006】
これに対し、このような人的努力を支援するものとして負荷集中制御システムが知られている(非特許文献1)。上記負荷集中制御システムは、電力供給会社で家庭の電力量計を遠隔検針してそのデータを蓄積し、家庭では電話回線などを介してこのデータにアクセスして、電力使用状況や料金などの情報を家庭内のモニタ画面で見ることができるものである。このシステムによれば、需要家は電力消費量が増加したことを知ることができる、節電の動機を生じさせることができる。
【0007】
さらに特許文献2には、コンピュータを用いて家庭単位若しくは事業所単位にてエネルギーの消費性向を具体的に表示可能な負荷種類分析装置が開示されている。特許文献2によれば、当該負荷種類分析装置により、消費エネルギーを例えば給湯や照明等の消費用途ごと分けて表示することができ、当該表示からエネルギー消費性向を診断することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−086864号公報
【特許文献2】特開2000−162253号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(インターネットURL:http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/bestmix/topics28.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のエネルギー消費性向は、概略の傾向を把握すれば足りるため、算出の単位期間には相応の長さ(例えば1ヶ月)が設定される。エネルギーの消費性向は用途によってはある程度時節に依存し、例えば冷房用のエネルギーは夏期に集中し、暖房用のエネルギーは冬期に集中する。
【0011】
しかし、上記特許文献2に記載の構成は、総電力量を暖冷房用途、厨房用途、照明電力用途にのみ分解分析可能とするものであって、給湯までを電力で賄うとする全電化を採用する環境に用いることができないという問題があった。また、当該給湯による電力消費は、通年使用されるものである一方、季節変動を伴うため、厨房用途などのように通年一定と仮定できるものではなく、引用文献2に記載の構成の如く単純に暖冷房を使用しない月を基準に各月の消費量を分析すると、実情と大幅に異なる結果を生じてしまうという虞がある。
【0012】
そこで、本発明は、給湯を電力で賄う全電化の環境においても、実態に即したエネルギー消費の用途に分解分析することができる用途分解装置、用途分解方法、及び用途分解プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の用途分解装置は、1年を複数の単位期間に分け、該単位期間ごとに、いわゆる全電化の建物に供給される総電力量を当該建物における給湯用途と、厨房用途と、家電用途のうち暖冷房の用途を除いた照明家電用途と、暖冷房用途と、の各用途の消費電力量のそれぞれに用途分解可能な電力用途分解装置であって、各単位期間における前記給湯用途と前記厨房用途と前記照明家電用途との割合を規定した三用途分解テーブルと、暖房及び冷房を使用しない中間期に属する1つの単位期間を基準期間として、該基準期間の給湯用途の割合に対する残りの単位期間の給湯用途の比率を規定した比率テーブルと、実際に前記建物で使用された総電力量を前記単位期間ごとに一年に亘って記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された各単位期間の総電力量の用途を分解する電力分解部と、を備え、前記電力分解部は、前記比率テーブルに規定された比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途と照明家電用途とを概算する第1概算手段と、前記三用途分解テーブルに規定された割合に基づいて、前記記憶部に記憶された各単位期間の総電力量から給湯用途と厨房用途と照明家電用途とを概算する第2概算手段と、前記第1概算手段と前記第2概算手段とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断手段と、該判断手段の結果に基づいて、各単位期間の暖冷房用途を概算する第3概算手段と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、比率テーブルにおいて予め給湯用途の季節変動を見込んでおき、当該比率テーブルに基づいて各単位期間の給湯用途を概算する第1概算手段を備えているため、年間における消費量変更幅が大きく、また家庭ごとのライフステージや嗜好を反映することの多い給湯用途において、精度よく電力消費の用途分解をすることができる。一方、当該比率テーブルに基づいて各単位期間の電力消費を用途分解するのみでは、対象家庭内における給湯消費が概算値に比べて非常に小さい場合などは、実情と著しく異なる結果を生じかねない。そこで、本発明の用途分解装置においては、給湯用途と、厨房用途と、家電用途の割合を予め規定した三用途分解テーブルを用いてこれらの用途を概算する第2概算手段を備えると共に、当該第1概算手段と第2概算手段とを比較衡量して判断する判断手段を備え、当該判断手段によって最も適する方の概算値を採用することにより、実情との乖離を回避した用途分解を行うことができるものとなっているのである。
【0015】
(2)上記判断手段は、前記記憶部に記憶された各単位期間の総電力量と、前記第1概算手段による当該単位期間の各用途の概算値の合計を大小比較し、前記総電力量の方を大とする場合は当該第1概算手段による概算の結果を採用し、前記第1概算手段による前記概算値の合計の方を大とする場合は前記第2概算手段による概算の結果を採用することが好ましい。
【0016】
これによれば、総電力量は実測値であるため、当該実測値を超える概算値はそもそも実情と異なっているものと判断される。一方、上記第2概算手段は、当該総電力量を三用途分解テーブルに基づいて分解するため、第2概算手段による概算値は総電力量そのものであって総電力量を超えるものとはならない。このように、第1概算手段による概算値が明らかに実情とは異なる場合にのみ第2概算手段による概算値を用いることとすることにより、ある一時期間の不在や、生活状態変化による電力消費パタンの変化など、一般に比率テーブルのみでは整合性をとることができない事態が発生しても、柔軟に対応することができる。
【0017】
(3)また、前記第1概算手段は、前記総電力量に前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の給湯用途割合を乗じて当該基準期間の給湯用途を概算すると共に、当該基準期間の給湯用途の概算値に比率テーブルに規定された比率を乗じることで各単位期間の給湯用途を概算することが好ましい。
【0018】
比率テーブルには、予め季節変動が見込まれているため、基準期間の給湯用途の概算値に比率テーブルの比率を乗じることにより、各単位期間に給湯用途に季節変動の影響を織り込むことができるものとなっている。
【0019】
(4)また、前記第1概算手段は、前記基準期間の厨房用途を各単位期間に適用することで当該各単位期間の厨房用途を概算することが好ましい。基準期間は暖冷房を使用しない期間であり、季節変動要因を最も織り込まれていない期間と考えられるため、季節変動の無い用途については、当該基準期間の割合をそのまま他の単位期間に採用することが好ましいと考えられる。また、厨房用途は、全体の電力消費に対しては比較的使用量の小さいものであることが知られている。このため、厨房用途について、基準期間値を各単位期間に適用する場合であっても、実情との大きな齟齬をきたすことはなく、また、計算の簡便化を図ることができるものとなっているのである。
【0020】
(5)かかる点に鑑みれば、前記第1概算手段は、前記基準期間の照明家電用途を各単位期間に適用することで当該各単位期間の照明家電用途を概算することも好ましい。照明家電用途は年間の電力消費の変動が小さく、上述の如く照明家電用途の基準期間の概算値を各単位期間に適用することで、実情に即した概算を可能とするのみならず、計算の簡便化を図ることができる。
【0021】
(6)また、前記第2概算手段は、前記単位期間の総電力量を前記三用途分解テーブルに規定された当該単位期間の割合に分配することで各用途を概算することが好ましい。三用途分解テーブルにおいては、各単位期間における給湯用途、厨房用途及び家電照明用途の3つの相対的な関係によりこれら各用途の割合が規定されており、当該割合に基づいて総電力量を給湯用途、厨房用途及び家電照明用途に分解するため、ある一時期間の不在により当該単位期間の総電力量が一時的に急減となる場合であっても、少なくとも当該総電力量をこれら3つの用途に分解することができ、生活状態の変化による電力消費パタンの変化にも対応することができるものとなっているのである。
【0022】
(7)また、前記第3概算手段は、前記単位期間の総電力量から前記判断手段の判断の結果により採用された給湯用途と、厨房用途と、照明家電用途との合計を引いたものを冷房用途又は暖房用途として概算することが好ましい。これによれば、季節変動の少ない厨房用途及び照明家電用途と、季節変動をある程度見込む必要がある給湯用途を適正に確定させた後に、年間電力消費における変動が最も大きい暖冷房用途を概算することができ、当該暖冷房用途も適正に概算することができる。
【0023】
(8)また、前記電力分解部は、前記単位期間のうち、前記基準期間の候補が複数存在する場合には、最も小さい総電力量である単位期間を基準期間と認定する認定手段を備えていることが好ましい。これによれば、暖冷房の季節変動要因を極力排除された単位期間が基準期間となり、これによって、暖冷房用途以外の三用途をより適正に概算することができる。
【0024】
(9)また、前記電力分解部は、各単位期間において前記建物に供給される上水道の温度を取得可能な給水温度取得手段と、当該給水温度取得手段によって取得される給水温度に基づいて前記三用途分解テーブルの給湯用途割合を算出する算出手段と、を備えていることが好ましい。
【0025】
給湯用途における消費電力とは、主として上水道水を加熱することにより消費されるものとなるが、当該消費電力量は、設定温度や給湯量によっても変動するが、当該上水道水の水温によっても消費電力量が異なるものとなる。上記構成によれば、給水温度取得手段により上水道の温度(給水温度)を取得し、当該給水温度を用いて三用途分解テーブルによる各用途の算出がなされることとなる。すなわち、給湯用途の概算に対し、給水温度を当該給湯用途割合決定のファクターとして加味することで、より三用途分解テーブルと比率テーブルにおける給湯用途の単位期間ごとの割合の精度を上げ、ひいては厨房用途や照明家電用との割合の適正化を図ることができる。
【0026】
(10)また、前記給水温度取得手段は、当該建物の存する地域の気温に基づいて給水温度を推定することが好ましい。これによれば、各概算環境において実測が難しい給水温度を気温より推定することで当該給水温度算定の簡易化を図ることができる。
【0027】
(11)また、前記電力分解部は、新たな単位期間の総電力量の入力に伴って最も古い単位期間を除き、当該新たな単位期間を加えると共に最も古い単位期間を除いた状態で前記三用途分解テーブル及び比率テーブルの割合を更新するテーブル更新手段を備えている
ことが好ましい。
【0028】
上記の如く、各単位期間の用途を分解するについては、季節変動要因を含むものと含まないものが存在するため、1の単位期間の総電力量の用途を分解するについても、少なくとも当該1の単位期間及び基準期間を含む一年の期間の三用途分解テーブル及び比率テーブルが必要となる。上記構成によれば、最新の単位期間の総電力量を用途分解するにつき、当該単位期間を含めた最新の一年の期間において三用途分解テーブル及び比率テーブルが更新されることとなり、これによって、当該最新の単位期間の給水温度等の実情を各テーブル構築に反映することができ、各テーブルを適正に作成することができるものとなっているのである。
【0029】
(12)さらに、本発明の用途分解装置は、前記単位期間のうち、最新の単位期間における総電力量の用途分解の結果のみを表示する表示手段を備えていることが好ましい。上述の如く、当該単位期間を含む過去一年のテーブルが更新され、これによって過去一年の用途分解が再構築されることが可能であるが、利用者にとってもっとも確認したいのは最新の単位期間における用途分解の結果である。したがって、上述の表示手段を設けることにより、利用者が最も確認したい当該最新の単位期間の用途分解の結果を確認できるものとなるのである。或いは、利用者にとって確認不要な過去一年に亘る各単位期間の用途分解の結果を非表示として、利用者の視認性の向上が図られる。
【0030】
(13)本発明の用途分解方法は、1年を複数の単位期間に分け、該単位期間ごとに、いわゆる全電化の建物に供給される総電力量を当該建物における給湯用途と、厨房用途と、家電用途のうち暖冷房の用途を除いた照明家電用途と、暖冷房用途と、の各用途の消費電力量のそれぞれに用途分解する電力用途分解方法であって、各単位期間における前記給湯用途と前記厨房用途と前記照明家電用途との割合を規定した三用途分解テーブルと、暖房及び冷房を使用しない中間期に属する1つの単位期間を基準期間として、該基準期間の給湯用途の割合に対する残りの単位期間の給湯用途の比率を規定した比率テーブルと、を準備するテーブル準備工程と、実際に前記建物で使用された総電力量を前記単位期間ごとに一年に亘って記憶部に記憶させる記憶工程と、前記記憶工程で記憶された各単位期間の総電力量の用途を電力分解部の演算によって分解する電力分解工程と、を備え、前記電力分解工程は、前記比率テーブルに規定された比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途と照明家電用途とを概算する第1概算工程と、前記三用途分解テーブルに規定された割合に基づいて、前記記憶工程で記憶された各単位期間の総電力量から給湯用途と厨房用途と照明家電用途とを概算する第2概算工程と、前記第1概算工程と前記第2概算工程とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断工程と、該判断工程の結果に基づいて、各単位期間の暖冷房用途を概算する第3概算工程と、を備えていることを特徴とする。
【0031】
(14)また、本発明の用途分解プログラムは、1年を複数の単位期間に分け、該単位期間ごとに、いわゆる全電化の建物に供給される総電力量を当該建物における給湯用途と、厨房用途と、家電用途のうち暖冷房の用途を除いた照明家電用途と、暖冷房用途と、の各用途の消費電力量のそれぞれに用途分解する電力用途分解処理をコンピュータに実行させる用途分解プログラムであって、コンピュータに、各単位期間における前記給湯用途と前記厨房用途と前記照明家電用途との割合を規定した三用途分解テーブルと、暖房及び冷房を使用しない中間期に属する1つの単位期間を基準期間として、該基準期間の給湯用途の割合に対する残りの単位期間の給湯用途の比率を規定した比率テーブルと、を利用し、実際に前記建物で使用された総電力量を前記単位期間ごとに一年に亘って記憶する記憶処理と、前記記憶処理で記憶された各単位期間の総電力量の用途を分解する電力分解処理と、を実行させ、前記電力分解処理は、前記比率テーブルに規定された比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途と照明家電用途とを概算する第1概算処理と、前記三用途分解テーブルに規定された割合に基づいて、前記記憶処理で記憶された各単位期間の総電力量から給湯用途と厨房用途と照明家電用途とを概算する第2概算処理と、前記第1概算処理と前記第2概算処理とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断処理と、該判断処理の結果に基づいて、各単位期間の暖冷房用途を概算する第3概算処理と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
このような用途分解方法及び用途分解プログラムによれば、比率テーブルにおいて予め給湯用途の季節変動を見込んでおき、当該比率テーブルに基づいて各単位期間の給湯用途を概算する第1概算手段を備えているため、年間における消費量変更幅が大きく、また家庭ごとのライフステージや嗜好を反映することの多い給湯用途において、精度よく電力消費の用途分解をすることができる。一方、当該比率テーブルに基づいて各単位期間の電力消費を用途分解するのみでは、対象家庭内における給湯消費が概算値に比べて非常に小さい場合などは、実情と著しく異なる結果を生じかねない。そこで、本発明の用途分解方法及び用途分解プログラムにおいては、給湯用途と、厨房用途と、家電用途の割合を予め規定した三用途分解テーブルを用いてこれらの用途を概算する第2概算手段を備えると共に、当該第1概算手段と第2概算手段とを比較衡量して判断する判断手段を備え、当該判断手段によって最も適する方の概算値を採用することにより、実情との乖離を回避した用途分解を行うことができるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の用途分解装置、用途分解方法、及び用途分解プログラムによれば、給湯を電力で賄う全電化の環境においても、実態に即したエネルギー消費の用途に分解分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る用途分解装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】気温と水温との相関関係の一例を示すグラフである。
【図3】(a)、(b)は、用途分解装置の入力画面の一例を示す図である。
【図4】(a)〜(d)は、用途分解装置の結果出力の画面表示の一例を示す図である。
【図5】電力用途分解部を示すブロック図である。
【図6】電力用途分解部による処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の結合子1から結合子2に至る処理を示すフローチャートである
【図8】用途分解装置が備える給湯照明家電比テーブルの一例である。
【図9】用途分解装置が備える標準テーブルの一例である。
【図10】用途分解装置が備える三用途分解テーブルの一例である。
【図11】用途分解装置が備える比率テーブルの一例である。
【図12】第1概算手段による概算結果を示す第1概算結果テーブルの一例である。
【図13】電力分解部による処理結果を示す用途分解結果テーブルの一例である。
【図14】灯油用途分解部による処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0036】
図1に示す用途分解装置100は、戸建て住宅や集合住宅の各住戸等といった1家庭を単位とする環境におけるエネルギー消費量等の分析に用いられる装置である。本実施形態においては当該環境を一住戸が専有する戸建て住宅の建物としているが、集合住宅の一住戸等の他の環境であっても構わない。一般に、本実施形態の如き建物においては、単位期間たる月ごとに消費された総エネルギー量を知ることはできるが、そのエネルギーが如何なる用途にどの程度ずつ消費されたのかといった配分を知ることは困難である。これに鑑み、用途分解装置100は、当該建物で、特に電力で賄うエネルギーについて、月ごとに建物に供給された既知の総電力量が、どの用途にどの程度ずつ消費されたのかの配分を、統計データ等に基づく演算により概算し推定可能とする。用途分解装置100は、特に、いわゆる全電化の建物等に代表される環境に好適に用いられる。ここで、全電化の建物とは、エネルギーが電力により供給され、且つ、供給エネルギーとしてガスを使用しない環境下における建物をいう。
【0037】
用途分解装置100は、コンピュータ110と、入力部120と、出力手段の例としての表示部130とを備えている。用途分解装置100はコンピュータ110に以下に説明する用途分解プログラムを実行させることによって具現化している。
【0038】
入力部120は、キーボードや、マウスなどのポインティングデバイスを用いて、本装置の利用者に情報およびコマンドを入力させる。またインターネットなどのネットワーク102を介して遠隔地のクライアントコンピュータ104から情報およびコマンドを入力しても良く、その場合はネットワークインターフェースが入力部120に相当する。
【0039】
表示部130は各種の操作画面や情報を表示する出力手段であって、このコンピュータ110に直接接続されたモニタのほか、情報の表示に限ればプリンタであっても良い。またネットワークを介して遠隔地より用途分解装置100にアクセスする場合には、ウェブページを用いて操作画面や情報を表示することができる。
【0040】
コンピュータ110は一般的な構成であって、各種の処理や演算を行うCPU、プログラムやデータを記憶するハードディスクなどの記憶媒体、プログラムを実行させる領域であるRAMなどを備えている。以下の説明において記憶部というとき、記憶媒体の中に確保された記憶領域(ファイル)を意味している。
【0041】
次に、用途分解装置100の機能的な構成について説明する。これは同時に用途分解プログラム200の構成にほぼ等しい。
【0042】
図1に示すように、用途分解プログラム200は、消費量記憶部210と、用途分解部216と、積算部218と、出力部220と、給水温度取得手段222とを備えている。
【0043】
消費量記憶部210は、単位期間ごとに総電力量及び灯油量を記憶する。消費量記憶部210に記憶するのは、実際の電力量や灯油量といった各エネルギーの消費量を単位期間ごとに記憶するものであって、エネルギーごとの用途別に分解されていない全体量である。
【0044】
本実施形態において、各単位期間の総電力量および総灯油量は、住宅や事務所などの建物や、マンションやアパートなどの集合住宅であれば建物内の一住戸など、個別にエネルギー消費を計測可能な環境ごとに取得および記憶するものとしている。また、各エネルギーは、利用者が単位期間ごとに入力して蓄積しても良いし、オペレータが消費量を入力したり、システムがネットワークを介して収集した消費量を自動的に入力したりしても良い。消費量の単位はその分量を規定できれば良く、例えば電気の消費量であればkWh(キロワット時)であっても良い。また、これらの公共料金を消費量として入力することにより、他の単位に換算しても良い。
【0045】
また、単位期間とは、エネルギーの計測に対して適切な期間であれば良く、例えば1ヶ月や2ヶ月など月単位とすることができ、またさらに詳細に1日や1週間を単位期間としても良い。本実施形態においては、単位期間として、1月、2月、3月・・・等の各月を採用している(以下、単位期間を「月」とする)。
【0046】
用途分解部216は、各月に使用される総電力量及び総灯油量を用途ごとの消費量に分解する。用途分解部216は電力用途分解部300と、灯油用途分解部400とを備えている。用途分解部216の構成と動作については後述する。本実施形態においては、各用途として、「厨房用途」、「給湯用途」、「照明家電用途」、「暖冷房用途」の4つの用途を準備しており、用途分解部によって、各エネルギーの総量をこれら4つの用途に分解する。各用途と実際の使用態様との関係は以下のように定義されている。なお、暖冷房用途は、さらに暖房用途と冷房用途とに分解可能である。
厨房用途:IHコンロ、電気ヒータコンロなど、調理を主目的として用いられるコンロ機器
給湯用途:浴室給湯器、厨房の給湯器、洗面所の給湯器など
照明家電用途:テレビ、ビデオ、パソコン、洗濯機、掃除機、電子レンジ、電子炊飯器、冷蔵庫、換気扇、照明機具など
暖房用途:電気ストーブ、エアコン(暖房)、コタツ、電気カーペット、灯油ストーブなど
冷房用途:エアコン(冷房)、扇風機など
【0047】
積算部218は、用途分解部216が各エネルギーについて用途ごとに分解した消費量を、複数のエネルギーに重複する用途ごとに積算する。例えば、電気による暖房と灯油による暖房を併用する建物タイプの場合、各エネルギーの用途に暖房が重複するので、暖房に用いるエネルギーの消費量は、(電気による暖房のエネルギー消費量(Eh))+(灯油による暖房のエネルギー消費量(Kh))である。なお、積算するためには消費量の単位をそろえる必要があるが、用途分解部216が単位を揃えて積算部218に出力しても良いし、積算部218が単位を変換(換算)してから積算しても良い。
【0048】
出力部220は、積算部218が積算した結果を表示部130やネットワーク102を介してクライアントコンピュータ104の画面、プリンタ、ウェブページなどに出力する。また、あわせて記録媒体に出力して、積算した結果を記録蓄積しても良い。
【0049】
給水温度取得手段222については後述するが、いずれかのエネルギーによって加熱または冷却される前の給水温度または気温を取得する。これらの温度は、センサー等を現地に設置して実際に測定しても良いし、気象庁の発表するデータから当該地域の温度を取得しても良い。また給水温度取得手段222は、気温から換算して給水温度を求めても良い。図2に示す如く、気温と水温との間には高い相関が認められるため、極めて妥当に給水温度を求めることができる。なお、この場合、給水温度取得手段222は、インターネットなどのネットワーク102を介して気象庁が発表する気温のデータを取得してもよい。
【0050】
本実施形態に係る用途分解装置においては、ユーザが、図3(a)に例示するような入力画面で、現在より前の一年間分の各エネルギーの消費量を入力し、消費量記憶部210に蓄積する。このとき、現在の月(演算を行う当月であって、以下では最新月とも言う)のエネルギー消費量は、図3(b)に例示するような入力画面で別途入力されるように構成しても良い。そして用途分解部216が各エネルギーについて演算してそれぞれの総量を用途ごとに分解し、積算部218が用途ごとに積算して、出力部220が表示部130等に結果を表示させる。
【0051】
図4は結果出力の画面表示の例を示す図であって、表示部130に出力して利用者に提示するものである。図4(a)に示すのは、月(ここでは月単位)ごと、用途別に積み上げた棒グラフである。図4(b)に示すのは、各用途のエネルギーを通年で積算し、1年間の用途別のエネルギー消費量を積み上げた棒グラフである。また図4(c)に示すように、前年のデータと今年のデータを同時に表示し、対比して表示することにより、利用者に対して省エネルギー活動の動機を与える効果を期待することができる。さらに図4(d)に示すように、他人との対比において順位などをつけることにより、利用者の消費性向を評価することでも、利用者に対して省エネルギー活動の動機を与える効果を期待することができる。
【0052】
なお、積算部218が積算した結果とあわせて、またはこれに代えて、エネルギーごとの用途別の消費量(積算する前の値)を出力部220から出力しても良い。図4(c)ではエネルギー用途の種類が選択可能になっており、選択されたエネルギー用途別に消費量を表示させることができる。包括的に把握することも重要であるが、さらに詳細な消費性向を知ることも生活の改善を図る上で意義があるからである。
【0053】
上記説明した如く、各月について用途ごとに分解して、さらに複数のエネルギーに重複する用途ごとに各エネルギーの消費量を積算することにより、複数のエネルギーを利用する家庭や事業所、居住空間等における複数のエネルギーの用途ごとの消費状況を算出し、包括的に提示することができる。これにより、利用者は自己の消費性向を包括的に把握することができ、省エネルギー活動のはげみとすることができる。
【0054】
[用途分解部216]
次に、用途分解部216について説明する。上記したように、用途分解部216は、電力用途分解部300と、灯油用途分解部400とを備えている(図1)。
【0055】
(電力用途分解部300)
図5は電力用途分解部300の構成を説明する図であり、図6及び図7は電力用途分解部300の動作を説明するフローチャートである。
【0056】
電力用途分解部300は、各月の用途ごとの割合を規定するテーブル規定部310と、消費量記憶部210に記憶された各月の総電力量を該テーブル規定部310に基づいて各月の総電力量を各用途に分解する概算部320とを備えている。テーブル規定部310は、統計又はモニタリングによるデータに基づいて各月の標準の厨房用途、給湯用途及び照明家電用途算出のベースとなるデータを作成する標準データ作成部311と、該ベースデータに基づいて各月の厨房用途、給湯用途及び照明家電用との割合を規定した三用途分解テーブルを形成する三用途分解テーブル規定部312と、基準月を設定し、該基準月に対する各月の給湯用途の割合を規定した比率テーブルを規定する比率テーブル規定部313とを備えている。
【0057】
標準データ作成部311においては、複数の邸等を予めモニタリング等することにより、厨房に用いる標準的な電気量を算定する。
【0058】
また、標準データ作成部311においては、統計に基づいて給湯用途と照明家電用途の代表的な使用比(給湯照明家電比)を準備し、図8に示すように、給湯照明家電比テーブルに格納しておく。当該給湯照明家電比は、所定のエネルギー消費環境における包括的な給湯用途と照明家電用途のエネルギーの比である。本実施形態においては、住環境計画研究所「家庭用エネルギー統計年報」の「家庭用用途別エネルギー種別消費マトリックス(関東)2005年度」に基づいて給湯照明家電比を定めている。具体的には、本実施形態においては全電化の環境下での電力消費を用途ごとに分解するものであるので、当該マトリックスの「照明・家電製品・他」のうちの、電気用途分を「照明家電用途」と規定すると共に、ガスによる給湯用途については、機器効率を用いて電気による給湯用途に変換し、これによって給湯用途と照明家電用途の年間の割合を定めることとしている。
【0059】
なお、給湯照明家電比は、年度ごとに更新することも可能である。また、上記「家庭用エネルギー統計年報」に基づいて定める構成以外にも、資源エネルギー庁の「資源・エネルギー統計」の統計値に基づいて導出することも可能である。さらに、給湯照明家電比は、これらのように公共機関から公開されている統計値に基づいて定めるのみに限らず、実際の全電化環境、例えば複数の邸をモニタリング(サンプリング)して取得しても良い。
【0060】
同様に、標準データ作成部311においては、統計値(例えば、公共機関から公開されている統計値)に基づいて規定する1日の平均的な給湯用途の電力量(平均給湯用途電力量)を準備する。本実施形態においては、財団法人建築環境・省エネルギー機構「省エネルギーハンドブック」の給湯負荷Lモードに基づいて平均給湯用途電力量を規定している。具体的には、該省エネルギーハンドブックによる統計値は1日の中の時間帯別の給湯負荷であるから、これを積算することによって1日の平均給湯用途電力量を導出し、この1日の平均給湯用途電力量を各月の日数分積算することで、各月の給湯用途を導出することとしている。当該平均給湯用途電力量についても、これらのように公共機関から公開されている統計値に基づいて定めるのみに限らず、実際の全電化環境、例えば複数の邸をモニタリング(サンプリング)して取得しても良い。
【0061】
上記厨房用途の電力量、の給湯照明家電比及び1日の平均的給湯用途電力量は、上述の如く公的な資料やモニタリングによってあらかじめ準備しておく情報である。以下、これらの準備された情報を用いて、三用途分解テーブルを形成する処理について説明する。以下の説明においては、この用途分解装置100の分析対象である建物において、統計データ等に基づいて厨房用途で標準的に消費されると考えられる電力消費量を「標準厨房用途消費量」と称し、「Ek[STD]」で表す。同様に、給湯用途で標準的に消費されると考えられる電力消費量を「標準給湯用途消費量」と称し、「Es[STD]」で表す。同様に、照明家電用途で標準的に消費されると考えられる電力消費量を「標準照明家電用途消費量」と称し、「Ea[STD]」で表す。
【0062】
三用途分解テーブル規定部312は、標準消費量導出部314と、割合換算部315とを備えている。標準消費量導出部314は、標準テーブル314aの要素として、図9に例示されるように、各月の標準厨房用途消費量、標準給湯用途消費量及び標準照明家電用途消費量を導出する。割合換算部315は、標準消費量導出部314で導出された各月の標準厨房用途消費量、標準給湯用途消費量及び標準照明家電用途消費量を割合に換算し直して、図10に例示されるように、三用途分解テーブル315aを完成させる。
【0063】
標準消費量導出部314は、各月の標準厨房用途消費量Ek[STD]を導出する厨房工程と、標準給湯用途消費量Es[STD]を導出する給湯工程と、標準照明家電用途消費量Ea[STD]を導出する照明家電工程とを行う。
【0064】
厨房工程は、標準データ作成部311により算出された厨房電力量を各月の標準厨房用途消費量Ek[STD]に設定する。したがって、各月の標準厨房用途消費量Ek[STD]は同じ値となる。また、厨房工程においては、算出した各月の結果を標準テーブル314a(図9)に記憶させる。
【0065】
給湯工程では、1日の平均給湯電力量に基づいて各月の標準的な給湯用の電力量である標準給湯用途消費量Es[STD]を算出する。例えば、1日の平均給湯電力量に各月の日数を乗じることで導出することが考えられるが、本実施形態ではさらに水温と機器効率を考慮する。具体的には、給水温度取得手段222を参照して、その月の上水道の平均的な水温を取得する。なお、上述したように、給水温度取得手段222は気象庁の発表する気温から水温を導くことができる。そして、統計による1日の必要湯量をWt、単位期間を構成する日数をD、給湯温度をTh、給水温度をTw、機器効率をCoとすると、各月の標準給湯用途消費量Es[STD]を次式(1)を用いて算出する。
標準給湯用途消費量Es[STD]=(Th−Tw)×Wt×D/Co …式(1)
【0066】
該式(1)においては、給湯の湯量が同じであったとしても給水温度が低くなればより多くの電力を使用することを示している。また、機器効率Coが高い場合には、比率を低くする。
【0067】
このように、給湯工程においては、統計値に基づいて月ごとの標準給湯用途消費量Es[STD]を算出する際に各月の給水温度を考慮する処理を行うため、仮に月の日数が同じであっても、寒い季節の消費電力量は多くなり、暖かい季節の消費電力量は少なくなる。これにより、統計に基づく1日の必要湯量から、実情に即した給湯用統計ガス量を極めて高い妥当性をもって算出することができる。また、住宅等に設置された電力設備の機器効率を加味して算出することにより、より適正な結果を得ることができる。
【0068】
また、給湯工程においては、算出した各月の結果を標準テーブル314a(図9)に記憶させる。
【0069】
次に、照明家電工程に沿って、統計に基づいて規定される標準照明家電用途消費量Ea[STD]を算出する。具体的には、下式(2)を用いて、照明家電工程においては、先ず、給湯工程により算出された各月の標準給湯用途消費量Es[STD]を合計して年間総標準給湯用途消費量を算出する。そして、当該年間総標準給湯用途消費量に給湯照明家電比K=yRa/yRsを乗じ、さらに一年間の単位期間の数Nで割ることで当該単位期間の標準照明家電用途消費量Ea[STD]を求める。本実施形態においては、単位期間は月数であるので、N=12を採用する。そして、当該標準照明家電用途消費量Ea[STD]を各月共通として、算出した各月の結果を標準テーブル314a(図9)に記憶させる。
標準照明家電用途消費量Ea[STD]=ΣEs[STD]×K/N …式(2)
なお、上記の給湯照明家電比K=yRa/yRsは、前述の給湯照明家電比テーブル(図8)に基づき算出することができる。
【0070】
上記の厨房工程、給湯工程、照明家電工程の各工程での演算処理により、図9に例示する如く、各月の標準厨房用途消費量、標準給湯用途消費量、標準照明家電用途消費量を定めた標準テーブル314aが完成することとなる(S11)。その後、割合換算部315によって、各月ごとにこれらを割合(百分率)に換算することにより、図10に例示する如く、三用途分解テーブル315aが完成する(S12)。
【0071】
また、テーブル規定部310は、上記三用途分解テーブル規定部312により算出された標準テーブル314aに基づいて、図11に例示されるような比率テーブル316aを規定する比率テーブル規定部313を備えている。比率テーブル316aは、標準テーブル314aにおける各月の標準給湯用途消費量どうしの比率を示すものであって、後述する基準月(図11の場合、基準月は6月)の標準給湯用途消費量を1とした場合の各月の標準給湯用途消費量を規定する。比率テーブル規定部313は、基準月を定める基準月選定工程と、当該基準月に基づいて各月の標準給湯用途消費量の比率を算出する比率算出工程とを行う。
【0072】
基準月選定工程においては、暖房及び冷房を使用しない非空調期に属する1つの月を基準月(基準期間)として特定する。ここで、非空調期とは、空調、コタツ、電気カーペット、扇風機等といった暖房や冷房に資する家電製品を使用しない期間である。該非空調期は地域によって適宜設定することができ、システムに予め設定しておくことができる。例えば関東であれば、6月を基準月として設定することができる。また、基準月は、夏期と冬期の間の期間である中間期のうちのいずれかの月であることが好ましい。そうすると、6月のみならず、その前月の5月や、或いは季節的には秋である10月や11月も基準月になりえる。そこで、当該基準月選定工程においては、消費量記憶部210にアクセスして、これら基準月の候補となりえる月の総電力量を比較して、もっとも少ない月を基準月とすることとしていている(認定手段)。なお、中間期は、非暖房期と同様に、地域の気候を考慮して予め適宜定めることができる。
【0073】
上記基準月選定工程において基準月が認定された後、比率算出工程に移行する。当該比率算出工程においては、標準テーブル314aを参照して、基準月に認定された月の標準給湯用途消費量Es[STD]に対する他の月の標準給湯用途消費量Es[STD]の比を算出する。これにより、図11に例示する比率テーブル316aが完成する(S13)。
【0074】
(各用途ごとの電力消費量の概算)
続いて、概算部320による各用途ごとの電力消費量の概算について説明する。概算部320は、上記三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aと、消費量記憶部210に記憶されている各月の実際の消費電力量(総電力量)とから、当該総電力量を厨房用途消費量と、給湯用途消費量と、照明家電用途消費量と、暖冷房用途消費量とに分解する演算を行うものであって、第1概算手段321と、第2概算手段322と、判断手段323と、第3概算手段324とを備えている。
【0075】
なお、以下の説明においては、記憶部210に記憶されているm月(m=1,2,…,12)の総電力量をE[m]で表す。例えば、3月の総電力量はE[3]と表され、10月の総電力量はE[10]と表される。また、概算部320の演算によって推定・概算されるm月の厨房用途消費量、給湯用途消費量、照明家電用途消費量を、それぞれ、Ek[m]、Es[m]、Ea[m]で表す。また、これら概算された消費量のうち、特に、後述の第1概算処理で概算された値は、Ek1[m]、Es1[m]、Ea1[m]で表すこととし、後述の第2概算処理で概算された値は、Ek2[m]、Es2[m]、Ea2[m]で表すこととする。また、概算部320の演算によって推定・概算されるm月の暖房用途消費量、冷房用途消費量を、それぞれ、Eh[m]、Ec[m]で表す。また、三用途分解テーブル315aに規定された、m月における厨房用途割合、給湯用途割合、照明家電用途割合を、それぞれ、Rk[m]、Rs[m]、Ra[m]で表す。また、比率テーブル316aに規定されたm月の比率をt[m]で表す。
【0076】
また、以下の説明で具体的な演算の例を示す場合には、図9に示す標準テーブル314aと、図10に示す三用途分解テーブル315aと、図11に示す比率テーブル316aと、に基づいて演算が行われ、図12の第1概算結果テーブル及び図13の用途分解結果テーブルが得られたものとする。なお、第1概算結果テーブルは、テーブル314a,315a,316aに基づいて、後述の第1概算処理で得られる中間的な演算結果であり、用途分解結果テーブルは、テーブル314a,315a,316aに基づいて得られる最終的な電力用途分解の結果である。
【0077】
(第1概算処理)
第1概算手段321は、比率テーブル316aの比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブル315aの基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途消費量と照明家電用途消費量とを概算する。具体的には、先ず、消費量記憶部210から前一年の各月の総電力量を抽出し(S14)、基準月(6月)の総電力量E[6]に三用途分解テーブル315aの基準月の給湯用途割合Rs[6]を乗じて当該基準月の給湯用途消費量Es1[6]を概算する。そして、下式(3)に示すように、当該基準月の給湯用途消費量Es1[6]の概算値に比率テーブル316aの比率t[m]を乗じることで各月の給湯用途消費量Es1[m]を概算する。
給湯用途消費量Es1[m]=Es1[6]・t[m] …式(3)
【0078】
このように、あらかじめ規定しておいた比率テーブル316aを用いることにより、各月の給湯用の電力量を容易に求めることができる。
【0079】
また、第1概算手段321においては、下式(4),(5)に示すように、基準月の総電力量E[6]に三用途分解テーブル315aの基準月の厨房用途割合Rk[6]を乗じて当該基準月の厨房用途消費量Ek1[6]を算出し、当該基準月の厨房用途消費量Ek[6]を各月に適用することで各月の厨房用途を概算する。
厨房用途消費量Ek1[6]=E[6]・Rk[6] …式(4)
厨房用途消費量Ek1[m]=Ek1[6] ;但し、m=1〜5又は7〜12 …式(5)
【0080】
また、下式(6),(7)に示すように、基準月の総電力量E[6]に三用途分解テーブル315aの基準月の照明家電用途割合Ra[6]を乗じて当該基準月の照明家電用途消費量Ea1[6]を算出し、当該基準月の照明家電用途を各月に適用することで各月の照明家電用途を概算する(以上、S15)。
照明家電用途消費量Ea1[6]=E[6]・Ra[6] …式(6)
照明家電用途消費量Ea1[m]=Ea1[6] ;但し、m=1〜5又は7〜12 …式(7)
【0081】
厨房用途消費量及び照明家電用途消費量は、通年に亘って略一定の値となると考えられる。これは厨房でのいわゆるIHコンロなどや他の居室での照明、テレビジョン等に使用される電力には、全体の算定に大きな影響を及ぼすほどの季節要因が無いと考えられるためである。また、水温と調理温度の差が大きいことから、厨房においては給水温度の影響も無視できると考えられるためである。
【0082】
以上の第1概算処理により、Ek1[1]〜Ek1[12]、Ea1[1]〜Ea1[12]、Es1[1]〜Es1[12]が求められ、図12に示す第1概算結果テーブルが作成される。
【0083】
(第2概算処理)
また、第2概算手段322は、下式(8),(9),(10)に示すように、各単位期間の総電力量E[m]を、前記三用途分解テーブル315aにおける当該単位期間の割合(給湯用途割合Rs[m]、厨房用途割合Rk[m]、照明家電用途割合Ra[m])に分配することで、給湯用途消費量Es2[m]と、厨房用途消費量Ek2[m]と、照明家電用途消費量Ea2[m]との各用途の消費量を概算する。すなわち、当該第2概算手段322においては、総電力量E[m]のうちに暖冷房用途は含まれないと仮定して(すなわち、Eh[m]=0,Ec[m]=0と仮定して)、当該暖冷房用途以外の用途である厨房用途、給湯用途、照明家電用途の3用途のみに総電力量E[m]を分解するものである(S16)。
厨房用途消費量Ek2[m] =E[m]・Rk[m];但し、m=1〜12 …式(8)
給湯用途消費量Es2[m] =E[m]・Rs[m];但し、m=1〜12 …式(9)
照明家電用途消費量Ea2[m]=E[m]・Ra[m] ;但し、m=1〜12 …式(10)
【0084】
(判断処理)
また、判断手段323は、各単位期間たる月ごとに、各月の総電力量E[m]と、第1概算手段321による当該単位期間の各用途の概算値の合計Ek1[m]+Es1[m]+Ea1[m]とを比較し、総電力量E[m]の方を大とする場合は、当該第1概算手段321による概算の結果Ek1[m],Es1[m],Ea1[m]を、電力用途分解の結果として採用する。一方、第1概算手段321の合計値Ek1[m]+Es1[m]+Ea1[m]の方を大とする場合は、第2概算手段322による概算の結果Ek2[m],Es2[m],Ea2[m]を、電力用途分解の結果として採用する(S17)。
【0085】
すなわち、第1概算手段321による各用途の概算は、基準月の総電力量をベースとして、各月の各用途をそれぞれ独立して算出するものであり、各月の各用途を年間に亘って一括して概算することができると共に、概算対象家庭の総電力量の消費の多寡に基づき、各用途を概算するため、対象家庭の消費傾向を反映することができる。しかし、例えばある月において利用者の長期不在などといった通常とは異なる使用態様の実情がある場合、当該月においては第1概算手段321による概算値の合計が当該月の総電力量E[m]よりも大きくなり、そもそも実情と異なってしまうという虞がある。
【0086】
あるいは、中間期を除いては暖冷房を使用すると仮定しているが、当該中間期以外の期間にたまたま暖冷房を使用しないという実情がある場合には、総電力量が想定よりも著しく小さなものとなり、その結果、第1概算手段321による概算値の合計が総電力量を上回ることも考えられ、これによって、実体とはかけ離れた結果を導出してしまう虞がある。一方、第2概算手段322は、このように第1概算手段321による不備を補う予備的な概算手段であって、あくまで総電力量を3つの用途に分解するものであり、概算値の合計値は総電力量に等しい。
【0087】
したがって、判断手段323により、総電力量と第1概算値の合計とを比較させ、総電力量の方を大とする場合には第1概算手段321の各概算値を採用することとし(S18)、第1概算値の方を大とする場合には、第2概算手段322による各概算値を採用するもとしている(S19)。すなわち、極端に電気使用量が少ない月があった場合には、暖冷房に対する電気使用はないものとし、すべての電気は照明・家電等に使用されたものとする。これにより、算出した結果が実測値を超えてしまうことを防止し、より妥当な結果を得ることができる。
【0088】
例えば、図12を参照すると、9月においては、総電力量E[9]=720kWh(約2592MJ)であるのに対し、Ek1[9]+Es1[9]+Ea1[9]=2645MJとなっている。つまり、Ek1[9]+Es1[9]+Ea1[9]>E[9]であるので、図13に示されるように、9月の厨房用途消費量、給湯用途消費量、及び照明家電用途消費量については、それぞれ、第2概算処理で得られたEk2[9]=106.7MJ、Es2[9]=476.1MJ、Ea2[9]=2009.3MJが電力用途分解の結果として採用される。その一方、9月以外の月については、Ek1[m]+Es1[m]+Ea1[m]<E[m]であるので、第1概算処理で得られたEk1[m]、Es1[m]、Ea1[m]が電力用途分解の結果として採用される。
【0089】
(第3概算処理)
第3概算手段324においては、判断手段323により第1概算手段321の概算値が採用される場合、下式(11),(12)に示すように、総電力量に対する残余が暖冷房用途として使用されたとされる。また、これによって、暖冷房用途消費量が導出されるが、季節に応じて各月の暖冷房用途は、冷房用途消費量Ec[m]、暖房用途消費量Eh[m]にそれぞれ分けられる。本実施形態においては、7月〜9月の暖冷房用途を冷房用途とし、10月〜5月の暖冷房用途を暖房用途としている。
Ec[m]=E[m]-(Ek1[m]+Es1[m]+Ea1[m]), Eh[m]=0;但し、m=7〜9 …式(11)
Eh[m]=E[m]-(Ek1[m]+Es1[m]+Ea1[m]), Ec[m]=0;但し、m=1〜5又は10〜12 …式(12)
以上により、図13の用途分解結果テーブルに示されるような、電力用途分解の結果が得られる。
【0090】
電力用途分解部300は、算出した用途別の電力消費量を積算部218に出力する。
【0091】
上記構成によれば、各月の総電力量を通年において記録しておけば、各月の総電力量を厨房用と、給湯用と、照明家電用と、暖房用とに用途を分解することができる。そして、第1概算手段321と第2概算手段322による2ルートの概算ルートを有することにより、通常とは異なる電力消費月が存在しても、実態に即したエネルギー消費量の用途を分析することができる。例えば、仮に暖房期の中の単位期間(例えば3月)に暖かい日が続き、総電力量が著しく低かったとしても、その影響を極めて小さくすることができる。
【0092】
また、テーブル規定部310は、利用者が消費量記憶部210に最新月の総電力量を入力するたびに三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aを更新するテーブル更新手段330を備えている。
【0093】
三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aの規定のベースとなる標準テーブル314aは、上述の如く最新月を含む過去1年の各用途の標準を示すものであるが、厨房用途は季節変動を考慮しないため1年に亘って同一の数値が採用されるものの、給湯用途は給水温度という季節変動要因を取り込んで標準値を算出するため、1年に亘って同一の数値を採用することはできない。また、上記においては、給湯用途に基づいて照明家電用途を算出するため、最新月の給湯用途が変化するものである以上、照明家電用途も変化する。
【0094】
したがって、テーブル更新手段330は、消費量記憶部210に最新月の総電力量が入力されたことを確認すると、テーブル規定部310に設定される1年の期間として当該最新月を含む過去1年に更新設定させると共に、給水温度取得手段222に当該最新月の給水温度を取得させ、これら条件を更新した上でテーブル規定部310に標準テーブル314aを再計算させるのである(S21)。そして、当該更新された標準テーブル314aに基づいて、三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aを更新する(S22、S23)。これにより、最新月の総電力量の用途分解が当該最新月の実情に即した状態で示されることとなり、分解精度の向上が図られるのである。
【0095】
(灯油用途分解部400)
また、本実施形態においては、全電化の環境での各エネルギーの用途分解を概算するものであり、そうすると、灯油の用途としては、電力による暖房の補助に用いられるに過ぎず、当該灯油を給湯に用いることはおよそ想定されない。したがって、本実施形態においては、図14に示す灯油用途分解処理において、灯油の実際の使用量Kがそのまま暖房用灯油量Khと推定できる。そこで灯油用途分解部400は、消費量記憶部210を参照して、下式(13)に示すように、利用者により入力された灯油使用量Kをそのまま灯油の暖房用途とする(S31)。
暖房用灯油量Kh=灯油使用量K …式(13)
【0096】
なお、この場合において、非暖房期や中間期を考慮する必要はない。灯油用途分解部400234は、算出した用途別の灯油量を積算部218に出力する。
【0097】
そして積算部218は、電力用途分解部300、灯油用途分解部400の出力を用途別に積算する。そして出力部から、表示部などに出力して利用者に提示する。
【0098】
続いて、上述した用途分解装置100、当該装置100で実行される用途分解プログラム200、及び、当該装置100で実行される用途分解方法による作用効果について説明する。
【0099】
用途分解装置100によれば、比率テーブル316aにおいて予め給湯用途の季節変動を見込んでおき、当該比率テーブル316aに基づいて各単位期間の給湯用途を概算する第1概算手段321を備えているため、年間における消費量変更幅が大きく、また家庭ごとのライフステージや嗜好を反映することの多い給湯用途において、精度よく電力消費の用途分解をすることができる。一方、当該比率テーブル316aに基づいて各単位期間の電力消費を用途分解するのみでは、対象家庭内における給湯消費が概算値に比べて非常に小さい場合などは、実情と著しく異なる結果を生じかねない。
【0100】
そこで、用途分解装置100においては、給湯用途と、厨房用途と、照明家電用途の割合を予め規定した三用途分解テーブル315aを用いてこれらの用途を概算する第2概算手段322を備えると共に、当該第1概算手段321と第2概算手段322とを比較衡量して判断する判断手段323を備え、当該判断手段323によって最も適する方の概算値を採用することにより、実情との乖離を回避した用途分解を行うことができるものとなっているのである。従って、この装置100、プログラム200、及び用途分解方法によれば、給湯を電力で賄う全電化の環境において、実態に即したエネルギー消費の用途に分解分析することができる
【0101】
また、総電力量E[m]は実測値であるため、当該実測値を超えるような第1概算手段321の概算値はそもそも実情と異なっているものと判断される。一方、上記第2概算手段322は、当該総電力量を三用途分解テーブル315aに基づいて分解するため、第2概算手段322による概算値は総電力量E[m]そのものであって総電力量E[m]を超えるものとはならない。このように、前述の判断手段323における判断基準によれば、第1概算手段321の概算値が明らかに実情とは異なる場合にのみ第2概算手段322による概算値を用いることとすることにより、ある一時期間の不在や、生活状態変化による電力消費パタンの変化など、一般に比率テーブル316aのみでは整合性をとることができない事態が発生しても、柔軟に対応することができる。
【0102】
また、第1概算手段321は、電力量E[m]に三用途分解テーブル315aに規定された基準期間の給湯用途割合Rs[6]を乗じて当該基準期間の給湯用途消費量Es[6]を概算すると共に、当該概算値Es[6]に比率テーブル316aに規定された比率t[m]を乗じることで各月の給湯用途消費量Es[m]を概算することとしている。比率テーブル316aには、予め季節変動が見込まれているため、基準月の給湯用途の概算値に比率テーブル316aの比率を乗じることにより、各月の給湯用途消費量Es[m]に季節変動の影響を織り込むことができるものとなっている。
【0103】
また、前記第1概算手段321は、基準月の厨房用途消費量Ek[6]を各月に適用することで当該各月の厨房用途消費量Ek[m]を概算している。基準月は暖冷房を使用しない期間であり、季節変動要因を最も織り込まれていない期間と考えられるため、季節変動の無い用途については、当該基準月の割合をそのまま他の月に採用することが好ましいと考えられる。また、厨房用途は、全体の電力消費に対しては比較的使用量の小さいものであることが知られている。このため、厨房用途について、基準月の値を各月に適用する場合であっても、実情との大きな齟齬をきたすことはなく、また、計算の簡便化を図ることができるものとなっているのである。
【0104】
また、第1概算手段321は、基準月の照明家電用途消費量Ea[6]を各月に適用することで当該各月の照明家電用途消費量Ea[m]を概算している。照明家電用途は年間の電力消費の変動が小さく、上述の如く照明家電用途の基準月の概算値を各月に適用することで、実情に即した概算を可能とするのみならず、計算の簡便化を図ることができる。
【0105】
また、第2概算手段322は、各月の総電力量E[m]を三用途分解テーブル315aに規定された当該単位期間の割合Rk[m],Rs[m],Ra[m]に分配することで各用途消費量Ek[m],Es[m],Ea[m]を概算している。三用途分解テーブル315aにおいては、各月における給湯用途、厨房用途及び家電照明用途の3つの相対的な関係によりこれら各用途の割合が規定されており、当該割合に基づいて総電力量を給湯用途、厨房用途及び家電照明用途に分解するため、ある一時期間の不在により総電力量が一時的に急減となる場合であっても、少なくとも当該総電力量E[m]をこれら3つの用途に分解することができ、生活状態の変化による電力消費パタンの変化にも対応することができるものとなっているのである。
【0106】
また、第3概算手段324は、各月の総電力量E[m]から判断手段323の判断の結果により採用されたEk[m],Es[m],Ea[m]の合計を引いたものを冷房用途消費量Ec[m]又は暖房用途消費量Eh[m]として概算する。これにより、季節変動の少ない厨房用途及び照明家電用途と、季節変動をある程度見込む必要がある給湯用途を適正に確定させた後に、年間電力消費における変動が最も大きい暖冷房用途を概算することができ、当該暖冷房用途も適正に概算することができる。
【0107】
また、基準月選定手段316は、各月のうち、基準月の候補が複数存在する場合に、最も小さい総電力量E[m]である月を基準月と認定する。これにより、暖冷房の季節変動要因を極力排除された月が基準月となり、これによって、暖冷房用途以外の三用途をより適正に概算することができる。
【0108】
また、用途分解部216は、各月において建物に供給される上水道の温度を取得可能な給水温度取得手段222と、当該給水温度取得手段222によって取得される給水温度に基づいて三用途分解テーブル315aの給湯用途割合Rs[m]を算出する。給湯用途における消費電力とは、主として上水道水を加熱することにより消費されるものとなるが、当該消費電力量は、設定温度や給湯量によっても変動するが、当該上水道水の水温により消費電力量が異なるものとなる。上記構成によれば、給水温度取得手段222により上水道の温度(給水温度)を取得し、当該給水温度を用いて三用途分解テーブル315aによる各用途の算出がなされることとなる。すなわち、給湯用途の概算に対し、給水温度を当該給湯用途割合決定のファクターとして加味することで、より三用途分解テーブル315aにおける給湯用途の単位期間ごとの割合の精度を上げ、ひいては厨房用途や照明家電用との割合の適正化を図ることができる。
【0109】
また、給水温度取得手段222は、当該建物の存する地域の気温に基づいて給水温度を推定している。これにより、各概算環境において実測が難しい給水温度を気温より推定することで当該給水温度算定の簡易化を図ることができる。
【0110】
また、用途分解部216は、新たな月の総電力量の入力に伴って最も古い月のデータを除き、当該新たな月のデータを加えると共に最も古い月のデータを除いた状態で三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aの割合を更新するテーブル更新手段330を備えている。上記の如く、各月の用途を分解するについては、季節変動要因を含むものと含まないものが存在するため、1の月の総電力量の用途を分解するについても、少なくとも当該1の月及び基準月を含む一年の期間の三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aが必要となる。上記構成によれば、最新の月の総電力量を用途分解するにつき、当該月を含めた最新の一年の期間において三用途分解テーブル315a及び比率テーブル316aが更新されることとなり、これによって、当該最新の月の給水温度等の実情を各テーブル構築に反映することができ、各テーブルを適正に作成することができるものとなっているのである。
【0111】
さらに、用途分解装置100は、月のうち、最新の月における総電力量の用途分解の結果のみを表示する表示部130を備えている。上述の如く、当該月を含む過去一年のテーブルが更新され、これによって過去一年の用途分解が再構築されることが可能であるが、利用者にとってもっとも確認したいのは最新の月における用途分解の結果である。したがって、上述の表示部130を設けることにより、利用者が最も確認したい当該最新月の用途分解の結果を確認できるものとなるのである。或いは、利用者にとって確認不要な過去一年に亘る各月の用途分解の結果を非表示として、利用者の視認性の向上が図られる。
【0112】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0113】
100…用途分解装置、130…表示部(表示手段)、210…記憶部、222…給水温度取得手段(算出手段)、300…電力分解部、315a…三用途分解テーブル、316…基準月選定手段(認定手段)、316a…比率テーブル、321…第1概算手段、322…第2概算手段、323…判断手段、324…第3概算手段、330…テーブル更新手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1年を複数の単位期間に分け、該単位期間ごとに、いわゆる全電化の環境に供給される総電力量を当該環境における給湯用途と、厨房用途と、家電用途のうち暖冷房の用途を除いた照明家電用途と、暖冷房用途と、の各用途の消費電力量のそれぞれに用途分解可能な電力用途分解装置であって、
各単位期間における前記給湯用途と前記厨房用途と前記照明家電用途との割合を規定した三用途分解テーブルと、
暖房及び冷房を使用しない中間期に属する1つの単位期間を基準期間として、該基準期間の給湯用途の割合に対する残りの単位期間の給湯用途の比率を規定した比率テーブルと、
実際に前記環境で使用された総電力量を前記単位期間ごとに一年に亘って記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された各単位期間の総電力量の用途を分解する電力分解部と、を備え、
前記電力分解部は、
前記比率テーブルに規定された比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途と照明家電用途とを概算する第1概算手段と、
前記三用途分解テーブルに規定された割合に基づいて、前記記憶部に記憶された各単位期間の総電力量から給湯用途と厨房用途と照明家電用途とを概算する第2概算手段と、
前記第1概算手段と前記第2概算手段とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断手段と、
該判断手段の結果に基づいて、各単位期間の暖冷房用途を概算する第3概算手段と、
を備えていることを特徴とする用途分解装置。
【請求項2】
前記判断手段は、
前記記憶部に記憶された各単位期間の総電力量と、前記第1概算手段による当該単位期間の各用途の概算値の合計を大小比較し、
前記総電力量の方を大とする場合は当該第1概算手段による概算の結果を採用し、
前記第1概算手段による前記概算値の合計の方を大とする場合は前記第2概算手段による概算の結果を採用する
ことを特徴とする請求項1に記載の用途分解装置。
【請求項3】
前記第1概算手段は、
前記総電力量に前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の給湯用途割合を乗じて当該基準期間の給湯用途を概算すると共に、当該基準期間の給湯用途の概算値に比率テーブルに規定された比率を乗じることで各単位期間の給湯用途を概算する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用途分解装置。
【請求項4】
前記第1概算手段は、
前記基準期間の厨房用途を各単位期間に適用することで当該各単位期間の厨房用途を概算する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項5】
前記第1概算手段は、
前記基準期間の照明家電用途を各単位期間に適用することで当該各単位期間の照明家電用途を概算する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項6】
前記第2概算手段は、
前記単位期間の総電力量を前記三用途分解テーブルに規定された当該単位期間の割合に分配することで各用途を概算する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項7】
前記第3概算手段は、
前記単位期間の総電力量から前記判断手段の判断の結果により採用された給湯用途と、厨房用途と、照明家電用途との合計を引いたものを冷房用途又は暖房用途として概算する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項8】
前記電力分解部は、
前記単位期間のうち、前記基準期間の候補が複数存在する場合には、最も小さい総電力量である単位期間を基準期間と認定する認定手段を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項9】
前記電力分解部は、
各単位期間において前記環境に供給される上水道の温度を取得可能な給水温度取得手段と、
当該給水温度取得手段によって取得される給水温度に基づいて前記三用途分解テーブルの給湯用途割合を算出する算出手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項10】
前記給水温度取得手段は、
当該環境の存する地域の気温に基づいて給水温度を推定する
ことを特徴とする請求項9に記載の用途分解装置。
【請求項11】
前記電力分解部は、
新たな単位期間の総電力量の入力に伴って最も古い単位期間を除き、当該新たな単位期間を加えると共に最も古い単位期間を除いた状態で前記三用途分解テーブル及び比率テーブルの割合を更新するテーブル更新手段を備えている
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の用途分解装置。
【請求項12】
前記単位期間のうち、最新の単位期間における総電力量の用途分解の結果のみを表示する表示手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の用途分解装置。
【請求項13】
1年を複数の単位期間に分け、該単位期間ごとに、いわゆる全電化の環境に供給される総電力量を当該環境における給湯用途と、厨房用途と、家電用途のうち暖冷房の用途を除いた照明家電用途と、暖冷房用途と、の各用途の消費電力量のそれぞれに用途分解する電力用途分解方法であって、
各単位期間における前記給湯用途と前記厨房用途と前記照明家電用途との割合を規定した三用途分解テーブルと、暖房及び冷房を使用しない中間期に属する1つの単位期間を基準期間として、該基準期間の給湯用途の割合に対する残りの単位期間の給湯用途の比率を規定した比率テーブルと、を準備するテーブル準備工程と、
実際に前記環境で使用された総電力量を前記単位期間ごとに一年に亘って記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記記憶工程で記憶された各単位期間の総電力量の用途を電力分解部の演算によって分解する電力分解工程と、を備え、
前記電力分解工程は、
前記比率テーブルに規定された比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途と照明家電用途とを概算する第1概算工程と、
前記三用途分解テーブルに規定された割合に基づいて、前記記憶工程で記憶された各単位期間の総電力量から給湯用途と厨房用途と照明家電用途とを概算する第2概算工程と、
前記第1概算工程と前記第2概算工程とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断工程と、
該判断工程の結果に基づいて、各単位期間の暖冷房用途を概算する第3概算工程と、
を備えていることを特徴とする用途分解方法。
【請求項14】
1年を複数の単位期間に分け、該単位期間ごとに、いわゆる全電化の環境に供給される総電力量を当該環境における給湯用途と、厨房用途と、家電用途のうち暖冷房の用途を除いた照明家電用途と、暖冷房用途と、の各用途の消費電力量のそれぞれに用途分解する電力用途分解処理をコンピュータに実行させる用途分解プログラムであって、
コンピュータに、
各単位期間における前記給湯用途と前記厨房用途と前記照明家電用途との割合を規定した三用途分解テーブルと、暖房及び冷房を使用しない中間期に属する1つの単位期間を基準期間として、該基準期間の給湯用途の割合に対する残りの単位期間の給湯用途の比率を規定した比率テーブルと、を利用し、
実際に前記環境で使用された総電力量を前記単位期間ごとに一年に亘って記憶する記憶処理と、
前記記憶処理で記憶された各単位期間の総電力量の用途を分解する電力分解処理と、を実行させ、
前記電力分解処理は、
前記比率テーブルに規定された比率に基づいて各単位期間の給湯用途を概算すると共に、前記三用途分解テーブルに規定された基準期間の割合に基づいて各単位期間の厨房用途と照明家電用途とを概算する第1概算処理と、
前記三用途分解テーブルに規定された割合に基づいて、前記記憶処理で記憶された各単位期間の総電力量から給湯用途と厨房用途と照明家電用途とを概算する第2概算処理と、
前記第1概算処理と前記第2概算処理とのいずれの概算の結果を採用するかを判断する判断処理と、
該判断処理の結果に基づいて、各単位期間の暖冷房用途を概算する第3概算処理と、
を備えていることを特徴とする用途分解プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−108173(P2011−108173A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265193(P2009−265193)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)