説明

用途別圧縮メラミン樹脂発泡体使用の歯面清掃具とその製造方法。

【課題】 メラミン樹脂発泡体は組織構造上気泡部が多く存在し、引張り等外部からの力に対して脆く弱い物性を示す。このメラミン樹脂発泡体の強度を上昇させ口腔内において安心して使用できる製品を作ることと、歯面形状に合い歯間部の歯垢除去にも効果があるメラミン樹脂発泡体と歯面清掃具開発を課題とした。
【解決手段】 メラミン樹脂発泡体を圧縮加工することで引張り強度が上昇することは公知である。この物性を利用して用途別に外力のかかる部分の圧縮比を変更することで、使用感が良く取り付け部分からのメラミン樹脂発泡体の破損を防止すると共に歯垢除去力の高い歯面清掃具を開発した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
用途別圧縮メラミン樹脂発泡体使用の歯面清掃具とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン樹脂発泡体は多くの気泡を有する組織構造から防音及び、保温材として建築関連で広く使用されてきた。
【0003】
その後、気泡間を隔離する構成壁(通常使用されるメラミン樹脂発泡体においては平均2〜4マイクロメートルである。)を利用して細部に侵入した汚れを除去する清掃具として使用されている。ただし、前記したように多くの気泡を有する組織構造のうえ、それを結ぶ構成壁の寸法が極端に細いため使用中に破損し次々と剥離することから実用性の面から考えると清掃具としては疑問があった。それを解決する手段として特許文献1に示された圧縮メラミン樹脂発泡体技術が照会されている。
【0004】
又、生体外由来のタバコのヤニやコーヒー、紅茶、緑茶等による着色つまり天然歯面エナメル質凹部(直径約1マイクロメートルの小孔)に入り込んだ前記汚れを清掃することを目的とした気泡間を隔離する構成壁の厚さが平均0.2〜0.5マイクロメートルとする特殊メラミン樹脂発泡体を照会する特許文献2がある。
【0005】
その他にも、特許文献2の発明者により平成18年2月、一般で使用されるメラミン樹脂発泡体を利用し圧縮することにより引張り強度の上昇を計り口腔内使用を考えた特許文献3が照会されている。
【0006】
【特許文献1】 特許第 3674907号公報
【特許文献2】 特許第 3783039号公報
【特許文献3】 特開 2007−202809公報
【発明の開示】

【発明者が解決しようとする課題】
【0007】
前記した従来のメラミン樹脂発泡体及び、圧縮メラミン樹脂発泡体においては次に上げるような課題がありその解決手段を考えた。
【0008】
従来のメラミン樹脂発泡体においてはJIS K6301によるように引張り強度が0.6〜1.6kg/mと低く清掃具として口腔内で使用した場合、歯面を磨く摩擦力により剥離破損し使用途中で使用不可能な状態となる。又、圧縮比を2とした圧縮メラミン樹脂発泡体においては前記メラミン樹脂発泡体に比べ引張り強度は約2倍の数値となるが実験の結果1回の使用が限界となった。
【0009】
次に圧縮比を4とした圧縮メラミン樹脂発泡体においては、引張り強度は約3倍の数値となり2〜3回の使用が可能であることが確認できた。しかし2〜3回の使用が限度でありその際の圧縮メラミンン樹脂発泡体の破損部分の80%以上が圧縮メラミン樹脂発泡体を取り換え自由に取り付ける部分であった。かと言って、圧縮比を4以上とした場合(たとえば圧縮比8の場合、引張り強度は約5.5倍となる。)強度は上昇するがその半面、歯面に付着した生体外由来のタバコのヤニやコーヒー、紅茶、緑茶等の着色や歯垢除去力の低下につながった。その理由として考えられることは、メラミン樹脂発泡体を高圧力で圧縮することにより、気泡間の空間が潰れ密度が過度に上昇することと同時に、気泡間を隔離する構成壁が平面化することにより歯面エナメル質表面の凹部に入り込みにくくなるためと考えられる。それに加え歯間の凹部や個人別に色々な形状の口腔内における清掃効率を上昇させる歯面形状に適合しかつ、生体外由来のタバコのヤニやコーヒー、紅茶、緑茶等の着色や歯垢除去力に最も優れた歯面清掃具の開発を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る歯面清掃具の圧縮メラミン樹脂発泡体は、最も強度の必要な取り付け部分の圧縮比を高くし引張り強度を上昇させることにより破損率を軽減し繰り返し使用できることを考えた。又、歯面に付着した生体外由来のタバコのヤニやコーヒー、紅茶、緑茶等の着色や歯垢を効率よく除去するためと、個人差がある歯面、口腔内形状及び、ブラッシング感覚の違いを考え圧縮メラニン樹脂発泡体一物体内に初期磨き部(低圧縮部)圧縮比1〜3の部分と仕上げ磨き部(高圧縮部)圧縮比4〜8の部分を製造し効率よく歯面の清掃を進めることと同時に、繰り返し使用できる構造とした。
【0011】
前記した初期磨き部(低圧縮部)と仕上げ磨き部(高圧縮部)においては圧縮比が重複することはない。たとえば初期磨き部(低圧縮部)が圧縮比1の場合、仕上げ磨き部(高圧縮比)の圧縮比は2〜8とし、取り付け部分の圧縮比は8以上とした。
【0012】
前記圧縮と同時に歯面形状に適合した凹凸を圧縮工程と同時に製造することにより使用感の上昇も考えた。
【発明の効果】
【0013】
前記したようにメラミン樹脂発泡体一物体内に圧縮比の異なる部分を同時に製造することにより、取り付け部分の強度上昇につながり数回の使用が可能となった。
【0014】
歯面清掃部においても前記したように初期磨き部(低圧縮部)を歯面の複雑な形状部に押し当てることにより歯間部奥の着色汚れや歯垢を除去できる。又、仕上げ磨き部(高圧縮部)により歯表面の頑固な着色や歯垢除去力にも優れ、歯面形状に近い山形状に圧縮加工することでより歯間部分の清掃にも効果があることが分かった。
【0015】
一見するとスポンジ形状のため従来の歯ブラシと比較して清掃効果に疑問な点があるが、各歯科大学における実験や本発明者による研究開発結果から有効であることが分かった。従来の歯ブラシに使用される糸径は、やわらかい使用感の商品においては約0.13ミリメートル、ふつうの使用感の商品においては約0.16ミリメートル、かたい使用感の商品においては約0.20ミリメートル位である。それと比較しメラミン樹脂発泡体の電子顕微鏡による計測結果から歯面清掃に重要な構成壁の厚さは平均2〜3マイクロメートルであり、従来の歯ブラシの糸径と比べ約1/100の細さでありこの物性により歯面に付着した着色や歯垢を正確に除去することが確認できた。
【0016】
安全性に関しても本発明者の研究と専門機関の各種分析結果により、後記するような良好な結果となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図を基に詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明者が以前出願した実用新案文献に示される圧縮メラミン樹脂発泡体2を歯面清掃具先端凸部1に巻き付け固定した形状を示す正面図である。図2は前記歯面清掃具に現在取り付け使用される一物体内を一定圧力により圧縮した圧縮メラミン樹脂発泡体を示す斜指図である。
【0019】
図3は今回本発明者が開発した圧縮メラミン樹脂発泡体を前記同形状の歯面清掃具先端凸部1に巻き付けた形状を示す正面図である。この圧縮メラミン樹脂発泡体は一物体内に低圧縮部2aと中圧縮部2bと高圧縮部2cを有する。この製造方法はメラミン樹脂発泡体2を金型の内に正確に挿入した後、表面にテフロンコーティング又は、フッソコーティングした凹凸成形型を押し付け圧縮して図4に示すような形状の圧縮メラミン樹脂発泡体2を製造する。
【0020】
前記圧縮時において圧縮成形型を160℃〜200℃位に加熱することにより作業を短時間で終了できると同時に作業後放置しても形状の変化を最小限に抑えることができた。歯間部の清掃効果を上昇させる目的から歯面形状に適合した凹凸形状を成形することも前記方法を使用すれば同時にできる。
【0021】
又、図5、図6において歯科医で使用されるハンドピース先端部分に取り付けるハンドピース用メラミン樹脂発泡体3を示し、その先端形状においての代表例である、半球形状部3a、逆半球形状部3bと取り付け部分の強度上昇のためハンドピース用高圧縮部3cを設けた。
【0022】
ハンドピース用メラミン樹脂発泡体3の取り付け方法を示すものが図7でありその詳細は、ハンドピース用メラミン樹脂発泡体3をキャップ4に後方より挿入し軸部5を差し込んで固定する。その固定方法はキャップネジ部4aと軸ネジ部5aによって取り替え自由に固定される。又、歯面清掃の際同時に水等の液体を使用する場合のためハンドピース用メラミン樹脂発泡体3の中央付近に貫通小孔3dを設け、軸部5の中央付近にも軸貫通小孔5bを設けた。
【0023】
安全性に関しての専門機関の分析結果は、材質試験項目においては鉛、カドミウム共に食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)フェノール樹脂、メラミン樹脂又はユリア樹脂を主成分とする合成樹脂製の器具又は容器包装(平成18年厚生労働省告示第201号)に適合し、溶出試験においても、重金属、フェノール、ホルムアルデヒド、蒸発残留物においても、水、ヘプタン全てにおいて適合するの結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 先端部にメラミン発泡体を巻き付け固定した形状の歯面清掃具の正面図。
【図2】 メラミン樹脂発泡体を示す斜指図。
【図3】 本発明による各部圧縮比の違うメラミン樹脂発泡体を巻き付け固定した形状の歯面清掃具の正面図。
【図4】 本発明による各部圧縮比の違うメラミン樹脂発泡体を示す斜指図。
【図5】 本発明による各部圧縮比の違うメラミン樹脂発泡体を、先端凸形状に圧縮成形したハンドピース用歯面清掃具を示す正面図。
【図6】 本発明による各部圧縮比の違うメラミン樹脂発泡体を、先端凹形状に圧縮成形したハンドピース用歯面清掃具を示す正面図。
【図7】 本発明による各部圧縮比の違うメラミン樹脂発泡体を、先端凸形状に圧縮成形したハンドピース用歯面清掃具を取り替え式キャップ及び軸に装着した形状を示す断面図。
【符号の説明】
【0024】
1. 歯面清掃具先端凸部
2. メラミン樹脂発泡体
2a.低圧縮部
2b.中圧縮部
2c.高圧縮部
2d.歯面形状部
3. ハンドピース用メラミン樹脂発泡体
3a.半円形状部
3b.逆半円形状部
3c.ハンドピース用高圧縮部
3d.貫通小孔
4. キャップ
4a.キャップネジ部
5. 軸部
5a.軸ネジ部
5b.軸貫通小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体外由来のタバコのヤニやコーヒー、紅茶、緑茶による後天的な着色を歯面形状に関係なく効率良く除去するメラミン樹脂発泡体において、柔らかい使用感の低圧縮初期磨き部メラミン樹脂発泡体圧縮比1乃至3と硬い使用感の中圧縮仕上げ磨き部メラミン樹脂発泡体圧縮比4乃至8の特性を一物体内に共有することを特徴とする歯面清掃使用目的のメラミン樹脂発泡体。
【請求項2】
請求項1記載のメラミン樹脂発泡体を、中板一方端面に二つ折りにした状態で巻き付けた後、反対側面部を上板と下板によるハンドル部により挟み込み固定したことを特徴とする歯面清掃具。
【請求項3】
請求項1記載のメラミン樹脂発泡体を、長方形状の薄板中央付近に二つ折りするためのヒンジを設け、一方端部長手垂直方向に円筒形状の軸部と隣接する長方形状の貫通小孔を有する中板の前記貫通小孔にメラミン樹脂発泡体を下方向より挿入、円筒形状の軸部に巻き付け二つ折りにし両端部分を合わせ中板他方端面をヒンジにより折り重ねた歯面清掃部を、一方端面長手方向に中板挿入用長穴を設け握り手部分が円形に太く加工された短形状の本体部に中板をヒンジ部より挿入、メラミン樹脂発泡体を取り替え自由としたことを特徴とする歯面清掃具。
【請求項4】
請求項1記載のメラミン樹脂発泡体の圧縮表面に歯面形状凹凸部を設け歯間凹部の歯垢を効率良く除去することを特徴とする圧縮メラミン樹脂発泡体。
【請求項5】
請求項1及び4記載のメラミン樹脂発泡体において、歯面清掃具取り付け面の強度を上昇させる目的からメラミン樹脂発泡体圧縮比が8以上である高圧縮部を設けることを特徴とする圧縮メラミン樹脂発泡体。
【請求項6】
請求項1・4・5に記載の圧縮メラミン樹脂発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−41788(P2011−41788A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213714(P2009−213714)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591287587)株式会社広栄社 (1)
【Fターム(参考)】