説明

田植機

【課題】 従来の苗床浮上防止装置は、苗床が浮き上る場合に支持軸とは反対側の苗床浮上防止杆部分が自由端になっているために苗床の浮上力で変形してしまい的確な浮上防止ができない欠点があった。
【解決手段】 複数の苗浮上防止装置17は上端側に設けた上軸19と下端側に設けた下軸18とを備え、前記下軸18に下部直線部と下部直線部の端部から立上る傾斜部とを備える苗床浮上防止杆を固着して構成し、苗載置台1の左右端の側壁と各仕切り壁とに各々立設した上側支柱22及び下側支柱21を備え、該下側支柱21の上部に切り欠いた開口(イ)を有した軸係止体23を設け、該軸係止体23の開口(イ)に複数の苗浮上防止装置17の下軸18を苗浮上防止装置17を変形させて各々各別に着脱自在に装着すると共に、苗床浮上防止杆の下部直線部の長さを前記上側支柱22と下側支柱21との距離と略同じに構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台にマット状苗の浮上防止装置を設けた田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、苗床浮上防止装置はその上側あるいは下側を横方向に延びる支持軸に固着した片側支持になっており、苗供給時には、この支持軸側を支点に上方回動させていた。また、上下両側を固着することは苗補給が困難になることから実施されていなかった(特許文献1乃至3参照。)。
【特許文献1】特開昭55−141112号公報
【特許文献2】特開昭56−81616号公報
【特許文献3】特開昭56−151415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の従来技術のものでは、苗床が浮き上る場合に支持軸とは反対側の苗床浮上防止杆部分が自由端になっているために苗床の浮上力で変形してしまい的確な浮上防止ができない欠点があった。また、この変形を防止するには杆を太くしなければならず、大径な杆にすると苗茎の移送抵抗が大きくなる欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解消するために、請求項1記載の発明は、左右往復移動しながら複数の移植装置(7)へ各々苗を供給する左右端の側壁(3)と仕切り壁(2)と苗床受底板(4)とで構成された苗載置台(1)に載せた複数のマット状苗(N)の浮き上がりを防止する複数の苗浮上防止装置(17)を設けた田植機において、該各苗浮上防止装置(17)は上端側に設けた上軸(19)と下端側に設けた下軸(18)とを備え、前記下軸(18)に下部直線部と下部直線部の端部から立上る傾斜部とを備える苗床浮上防止杆(20)を固着して構成し、苗載置台(1)の左右端の側壁(3)と各仕切り壁(2)とに各々立設した上側支柱(22)及び下側支柱(21)を備え、該下側支柱(21)の上部に切り欠いた開口(イ)を有した軸係止体(23)を設け、該軸係止体(23)の開口(イ)に複数の苗浮上防止装置(17)の下軸(18)を苗浮上防止装置(17)を変形させて各々各別に着脱自在に装着すると共に、苗床浮上防止杆(20)の下部直線部の長さを前記上側支柱(22)と下側支柱(21)との距離と略同じに構成したことを特徴とする田植機とした。
【発明の効果】
【0005】
よって、苗浮上防止装置17を変形させて下軸18を切り欠いた開口(イ)に装着することにより、苗浮上防止装置17を簡単に且つしっかりと装着することができ、簡潔な構成で、複数の苗浮上防止装置17のうち必要なものを移動させることができて苗植え作業完了時の残り苗を取り出すことが簡単にでき、また、作業中においては、マット状苗Nのマットの浮上を良好に防止できる。
【0006】
また、苗浮上防止装置17を移動させるだけでは苗の残りが多い場合等で残り苗を取り出すことが容易に行えない時には、複数の苗浮上防止装置17のうち必要なものを変形させて簡単に取り外して、残り苗を取り出すことが容易に行えて、能率よく作業が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
1は田植機に装備された苗載置台である。この苗載置台1は、田植機の植付け条の多、少に応じてその大きさがことなるが、図例では4条植えの事例について説明する。即ち、4条植え田植機の苗載置台1は、左右に仕切り壁2で仕切られて左右端の側壁3、3と仕切り壁2、2及び苗床受底板4とで4個のマット状苗Nが載置可能になっている。また、各別の4個の底板部分には苗床送りベルト5が底板を開口して張設されている。一般には、この苗載置台1は合成樹脂によって構成される。
【0008】
この苗載置台1は、田植機の移植部伝動ケ−ス6の上部側に配設され、植付装置7の側が下位となるよう傾斜させて田植機のフレ−ムを構成した前記伝動ケ−ス6側に左右移動自由に支持体8、8を介して装着されている。この下端側の支持体8は、苗受止枠9を一体的になしていて、載置されるマット状苗Nのマット部の下端面及びその裏面を受け止めるように側面視がL字状に構成されている。また、この苗受止枠9には、前記植付装置7の植付具の爪7aが上側から介入する苗分離口10が穿たれている。図中6aは伝動ケ−ス6から後方側へ分かれて延びる植付装置7を装着する分岐伝動ケ−スである。
【0009】
11は左右横移動軸で、前記移植部伝動ケ−ス6内の左右往復横移動機構(図示せず。)によって作動される軸であり、ケ−ス6の左右両側に突出して左右横移動する。そして、この移動軸11と前記苗載置台1の裏面側とを連動杆12及び金具13を介して連結している。
【0010】
したがって、この苗載置台1に搭載されたマット状苗Nは、そのマットの下端が苗受止枠9で受けられた状態で左右に往復横移動され、苗Nが苗分離口10に順次繰り出される。そして、この繰り出された苗Nは植付装置7による植付具の爪7aによって1株づつ分離されて下位側の圃場面に植え付けられる。
【0011】
図中符号14は走行車体(図示せず。)側に田植機を取り付けるリンク機構である。15は整地フロ−ト16を装着させるフロントア−ムである。
【0012】
このように構成された苗載置台1においては、マット状苗Nのマットが浮き上がったり、めくり上がったりするのを防止する苗マット上面を押さえる苗浮上防止装置17を装備させる。
【0013】
この苗浮上防止装置17は、図3で示す通り、上下方向に所定の平行間隔を保持させた下軸18と上軸19に、略U字形に上下中間部を下方へ凹ませた複数本の浮上防止杆20,20・・を取り付けた形態にしている。尚、この実施例では、2個のマット状苗Nの浮上を防止するものであり、実施例の4条植付けタイプの苗載置台1ではこの苗浮上防止装置17が2個必要になる。
【0014】
一方、前記苗載置台1側には、この苗浮上防止装置17,17を保持させる支持機構が構成される。その一実施例は、前記仕切り壁2の上面及び左右の側壁3の上面に上側支柱22及び下側支柱21を立設させ、これに上下相対向側が前記苗浮上防止装置17の上下軸19、18を嵌入させる開口(ロ)(イ)を有した軸係止体24、23を取り付けている。そして、この上下の軸係止体24と軸係止体23との間隔Lを前記上軸19と下軸18との間隔Mよりも若干広くし、軸係止体23及び軸係止体24の開口(イ)、(ロ)に下軸18及び上軸19を係合させて装着する場合に、浮上防止杆20、20…を上下に歪ませて係合させ、弾発状態で係止させる。したがって該苗浮上防止装置17はガタづくことなく安定保持され、しかも、該苗浮上防止装置17の全体を簡単に着脱できる。尚、軸係止体23及び24は樹脂材で構成し、その開口(イ)、(ロ)の形状を湾状の入り口部分を軸18、19の径よりやや小さくして変形させながら嵌入するよう構成すれば脱落防止になる。
【0015】
上例の構成によれば、苗浮上防止装置17を極めて容易に苗載置台1から取り外すことができて、田植え作業完了時の残り苗を取り出すことが簡単にでき、また、作業中においては、マット状苗Nのマットの浮上を確実に防止できる。
【0016】
この発明の別の実施例について詳述すれば、図5のように上側支柱22及び下側支柱21の少なくとも一方側を弾性変形できる状態にすれば、苗浮上防止装置17を弾性変形させて脱着させなくとも支柱側変形で対応させることが可能である。
【0017】
また、図6のように軸係止体23及び軸係止体24の開口(イ)、(ロ)の向きを反対側に向けるときには、支柱21、22を弾性変形させるか、或いは図7のように浮上防止杆20と軸18あるいは軸19との繋ぎア−ム部を変形させて係合させるとよい。
【0018】
また、図8のように軸係止体23、24は、支柱21、22に対し、上下に複数段構成して浮上防止機能をさせない状態にセットさせておくよう設けると、苗載置台1に苗を後方から供給する場合に便利である。
【0019】
また、図9の通り、下側の軸係止体23を上下調節式にしておくと、軸部が苗茎の抵抗棒を兼ねさせることができ、図示の通り苗茎aを苗分割口とは反対側に向けて保持させることが可能になり苗丈に適した調節ができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】要部の側面図
【図2】要部の平面図
【図3】要部の斜面図
【図4】要部の斜面図
【図5】別例の要部の側面図
【図6】別例の要部の側面図
【図7】別例の要部の側面図
【図8】別例の要部の側面図
【図9】別例の要部の側面図
【符号の説明】
【0021】
1…苗載置台、2…仕切り壁、3…側壁、4…苗床受底板、7…移植装置、17…苗浮上防止装置、18…下軸、19…上軸、20…苗床浮上防止杆、21…下側支柱、22…上側支柱、23…軸係止体、(イ)…開口、N…マット苗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右往復移動しながら複数の移植装置(7)へ各々苗を供給する左右端の側壁(3)と仕切り壁(2)と苗床受底板(4)とで構成された苗載置台(1)に載せた複数のマット状苗(N)の浮き上がりを防止する複数の苗浮上防止装置(17)を設けた田植機において、該各苗浮上防止装置(17)は上端側に設けた上軸(19)と下端側に設けた下軸(18)とを備え、前記下軸(18)に下部直線部と下部直線部の端部から立上る傾斜部とを備える苗床浮上防止杆(20)を固着して構成し、苗載置台(1)の左右端の側壁(3)と各仕切り壁(2)とに各々立設した上側支柱(22)及び下側支柱(21)を備え、該下側支柱(21)の上部に切り欠いた開口(イ)を有した軸係止体(23)を設け、該軸係止体(23)の開口(イ)に複数の苗浮上防止装置(17)の下軸(18)を苗浮上防止装置(17)を変形させて各々各別に着脱自在に装着すると共に、苗床浮上防止杆(20)の下部直線部の長さを前記上側支柱(22)と下側支柱(21)との距離と略同じに構成したことを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−262909(P2006−262909A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152037(P2006−152037)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【分割の表示】特願平5−96037の分割
【原出願日】平成5年4月22日(1993.4.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】