説明

甲状腺疾患を診断するための手段および方法

本発明は、甲状腺疾患を診断するための方法に関する。本発明はまた、ある化合物が被験体において甲状腺疾患を引き起こす能力を有しているかどうかを判定する方法、ならびに甲状腺疾患を治療するための薬剤を同定する方法に関する。さらに本発明は、甲状腺疾患を診断するためのデバイス、および診断のための使用を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺疾患を診断するための方法に関する。本発明はまた、ある化合物が被験体において甲状腺疾患を引き起こす能力を有しているかどうかを判定する方法、ならびに甲状腺疾患を治療するための薬剤を同定する方法に関する。さらに本発明は、甲状腺疾患を診断するためのデバイス、および診断のための使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺は、内分泌組織の中で最大のものの1つである。組織学的には、甲状腺は主に濾胞上皮細胞からなり、カルシトニンを産生するC細胞、すなわち傍濾胞細胞をわずかな割合で(約1%)有している。カルシトニンは32個のアミノ酸からなるペプチドであって、C細胞により合成されて放出され、副甲状腺ホルモンとともにカルシウムの恒常性を維持する。疾病に関しては、C細胞過形成が自己免疫性甲状腺炎、慢性高カルシウム血症および家族性髄様癌の症例で報告されているが、C細胞の機能不全は比較的まれである。しかしながら、甲状腺への毒性に関しては、C細胞への毒性は重要ではない。ほとんどの毒性学的事象は、甲状腺ホルモン、サイロキシン(3,5,3',5'-テトラヨードサイロニン、T4)および3,5,3'-トリヨードサイロニン(T3)の合成、貯蔵および分泌に関与する濾胞上皮細胞に関連している。
【0003】
甲状腺ホルモンの生合成は、視床下部(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、すなわちTRH)-下垂体(甲状腺刺激ホルモン、すなわちTSH)-甲状腺軸のフィードバック制御下にある。甲状腺ホルモンの阻害作用、およびTRHの刺激作用(視床下部-下垂体門脈系を介する)は、甲状腺ホルモンの最適レベルを維持するためにTSH産生を制御する。TSHは、共有結合した2つのサブユニットαおよびβからなる糖タンパク質である。TSHのαサブユニットの構造は、他の糖タンパク質分子−卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、およびヒト絨毛性ゴナドトロピン[性腺刺激ホルモン](hCG)の構造と類似している。βサブユニットは、上記の糖タンパク質で相違があり、それらの生物学的および免疫学的特異性をもたらす原因となっている。
【0004】
無機ヨウ化物は、大部分が食餌から小腸に吸収されると、ペルオキシダーゼ-H2O2酵素系によってヨウ素分子(I2)に酸化され、サイログロブリンのチロシン残基と結合して、モノヨードチロシン(MIT)またはジヨードチロシン(DIT)残基のいずれかを形成する。2つのDIT残基の酸化カップリングがT4を形成するのに対して、MITおよびDIT残基のカップリングはT3を生成する。T4およびT3は、生成されると、濾胞腔内のコロイド中に貯留され、または血液循環中に分泌される。細胞内で、コロイド液滴はリソソーム体の中に存在するタンパク質分解酵素と融合する。タンパク質分解酵素は基本的にサイログロブリンを消化し、T3およびT4をいずれも、濾胞周辺の毛細血管およびリンパ管に放出する。
【0005】
血液循環時に、甲状腺ホルモンは、サイロキシン結合グロブリン(TBG)、トランスサイレチン(TTR-サイロキシン結合プレアルブミン)もしくはアルブミンなどの、特定の血漿タンパク質と結合する。これらのキャリアタンパク質の存在は、血液中でこうした脂溶性ホルモンを大量に運ぶことを可能にし、ホルモンの排泄および代謝を遅らせる。TBGおよびTTRは甲状腺ホルモンに特異的であり、T4はこれらのタンパク質に対してT3よりも高い親和性を有する。血中ホルモンの99%より多くが血漿タンパク質と結合しており、ヒトでは主としてサイロキシン結合グロブリンと、また齧歯類ではトランスサイレチンおよびアルブミンと結合している。T4は基本的にはプロホルモンと見なすことができるが、これは主に肝臓および腎臓において、段階的な脱ヨード化酵素反応を通じて代謝により活性化され、3,5,3'-トリヨードサイロニン(”活性型T3”)または3,3',5-トリヨードサイロニン(基本的には”不活性型T3”=リバースT3、rT3)となる。3つの脱ヨード酵素ファミリーが知られており、アイソフォームI、IIおよびIII型と呼ばれる。これらの3ファミリーは、それらの組織局在性、基質特異性および疾患への影響に関して異なる。I型脱ヨード酵素は、セレン依存性酵素であって、もっとも大量に存在する脱ヨード酵素(T4からT3への変換)であり、それは主に肝臓、腎臓および甲状腺に見られる。II型酵素は、脳、下垂体および褐色脂肪組織内に見いだされる。この型の特異的脱ヨード酵素は、下垂体細胞でT4からT3への変換が直接起こるので、フィードバック機構に応じたTSHの下垂体からの分泌に特に重要である。III型脱ヨード酵素アイソフォームも中枢神経系に見られ、rT3(不活性型T3)の生成に関与する。
【0006】
ヒトにおいて、T3全体の20%に満たない部分が甲状腺で産生される。T4の約80%は、脱ヨード化により代謝され、35%がT3に、45%がrT3となる。残りは、主に、肝臓でのグルクロン酸化および胆汁中への分泌によって、あるいは、それほどではないが、肝臓もしくは腎臓におけるスルホン化および脱ヨード化によって、不活化される。細胞がT4を「活性型」もしくは「不活性型」T3のいずれかに代謝するこうした能力は、甲状腺ホルモンの局所的制御のためのメカニズムを提供する。血漿中のT4およびT3は、周辺の細胞組織により代謝され、その後、胆汁により排泄される。甲状腺ホルモンの生成、代謝および排泄
の流れは、さまざまな作用様式で示される。毒性研究においては、さまざまな作用様式のそれぞれについて、複数回投与による動物実験のために、一般的に認められたモデル化学物質を選択し、徹底した文献検索を行った。こうした実験研究は、次に、甲状腺依存性パラメーター、特に甲状腺重量、甲状腺ホルモンレベル(T3、T4およびTSH)および組織病理の、治療に関連する変化について評価した。(総説として、Coelho-Palermo Cunha, G.; van Ravenzwaay, B. (2005) Evaluation of mechanisms inducing thyroid toxicity and the ability of the enhanced OECD Test Guideline 407 to detect these changes. Ach Toxicol, 79, 390-405を参照されたい)。
【0007】
上記から、さまざまなレベルで、さまざまな刺激によって、甲状腺ホルモンの作用が影響を受け、損なわれる可能性があることは明らかである。遺伝的な影響の他に、生体異物である化学物質などの外因性の刺激が、甲状腺ホルモンのホメオスタシスを損なう可能性がある。たとえば、甲状腺ホルモンの合成もしくは分泌が損なわれる可能性がある。他の障害としては、甲状腺への毒性、または甲状腺の色素沈着が挙げられる。あるいはまた、甲状腺ホメオスタシスは、下垂体におけるTSGの合成および放出に影響を及ぼし、ひいては甲状腺のフィードバック制御に影響を及ぼす化合物によって、障害される可能性がある。さらに、甲状腺ホルモン結合タンパク質による甲状腺ホルモンの輸送は、たとえば競合により損なわれる可能性があり、甲状腺ホルモンの分解が変化する可能性もある。こうした影響はすべて、結果的に甲状腺ホルモンホメオスタシスの障害をもたらし、その結果として、濾胞上皮細胞過形成および肥大、新生組織形成ならびに甲状腺腫瘍を含めた甲状腺疾患をもたらすことになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Coelho-Palermo Cunha, G.; van Ravenzwaay, B. (2005) Evaluation of mechanisms inducing thyroid toxicity and the ability of the enhanced OECD Test Guideline 407 to detect these changes. Ach Toxicol, 79, 390-405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
甲状腺疾患を、特にその早期発症を、効率よく確実に判定するための高感度で特異的な方法は提供されていないが、それでもなお、高く評価されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は甲状腺疾患を診断するための方法に関するものであって、その方法は:
(a) 甲状腺疾患に罹患していることが疑われる被験体のテストサンプルにおいて、表1から4までのいずれか1つから選択された、少なくとも1つのアナライトの量を測定すること、ならびに
(b) ステップ(a)で測定された量を基準と比較すること、これにより甲状腺疾患が診断されることとなる、
を含んでなる。
【0011】
本発明にしたがって言及される「診断するための方法」という表現は、その方法が基本的に前記ステップからなること、または他のステップを含んでいてもよいことを意味する。また一方、当然のことながらその方法は、好ましい実施形態において、ex vivoで実施され、すなわちヒトもしくは動物体では実行されない方法である。本明細書で使用される「診断する」とは、被験体が疾患にかかっている可能性を評価することを意味する。当業者には当然のことであるが、こうした判断は、好ましくはあるが、通常、診断すべき被験体の100%について正しいとは限らない可能性がある。しかしながらこの用語は、被験体の統計的に有意な部分が、その疾患にかかっている、またはそれによる傾向を有すると確認できることを必要とする。部分が統計上有意であるかどうかは、さしたる面倒もなく、当業者が、さまざまな周知の統計学的評価ツール、たとえば信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー(Mann-Whitney)検定などを用いて判断することができる。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983にある。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は好ましくは、0.2、0.1、0.05である。
【0012】
本発明による診断には、当該疾患もしくはその症状のモニタリング、確認および分類が含まれる。モニタリングは、すでに診断された疾患の経過を追うこと、たとえば、疾患の進行、疾患の進行に及ぼす特定の治療の影響、または疾患にかかっている間もしくは疾患の治療に成功した後に起こる合併症を解析することに関する。確認は、他の指標もしくはマーカーを用いてすでになされた診断を補強または実証することに関する。分類は、症状の強さもしくは種類に応じて、診断をさまざまなクラスに割り当てることに関する。
【0013】
「甲状腺疾患」という用語は、甲状腺機能障害を特徴とする被験体における病態生理学的状態を指す。前記の病態生理学的状態は毒性学において、血液中の甲状腺ホルモンの減少、ならびに甲状腺刺激ホルモン(TSH)の増加を特徴とする。さらに、前記状態は、甲状腺体積および/または重量の増加、ならびに濾胞上皮細胞過形成および肥大によって特徴付けられる。甲状腺ホルモンもしくはTSHの増減は、当業者が容易に測定することができる。上記ホルモンの正常値は、被験体の種によって決まり、しかも生理的影響にも左右されうる。しかしながら、被験体の個別のホルモンレベルが上昇しているか低下しているかを判定するための閾値として使用することができる、正常の上限または下限は、特に甲状腺疾患に関して外見上健康な被験体を代表する集団に基づいて、統計的尺度によって得ることができる。さまざまな種に関する正常の上限および下限の推奨値は次の通りである:

参考文献:
1. Thomas, L. (ed.;1998): Clinical Laboratory Diagnostics, 5th edition, TH-Books, Frankfurt/Main, Germany
2. Experimental Toxicology and Ecology, BASF SE (2009). Normal ranges of thyroid hormones, 未刊行
3. York, R. G., Brown, W. R., Girard, M. F., Dollarhide, J. S. (2001). Two-Generation Reproduction Study of Ammonium Perchlorate in Drinking Water in Rats Evaluates Thyroid Toxicity. International Journal of Toxicology, 20, 183-197。
【0014】
本明細書で使用される甲状腺疾患には、好ましくは濾胞上皮細胞過形成および肥大、新生組織形成および甲状腺腫瘍が含まれる。しかしながら、本明細書に記載の甲状腺疾患は、肝臓による甲状腺ホルモンの分解が損なわれる(たとえば増加する)ことによって引き起こされ、またはそれを伴うことがある。
【0015】
本明細書で使用される「アナライト」という用語は化学分子を指しているが、この化学分子は、被験体において生成される代謝産物であり、またはサンプリング手順、サンプル調製法、もしくは本発明の方法において使用される測定技術の実際の適用の結果として、代謝産物から生じる化学分子である。また一方、当然のことながら、天然に存在する代謝産物に由来するアナライトは、本明細書に記載の方法によって測定したとき、定性的および定量的にその代謝産物と対応する。基準に対して変化した量で存在する場合に甲状腺疾患の指標となることが判明しているアナライトを、下記の表1〜4のいずれかに記載する。さらに、前記の表において、好ましい制御の方向(すなわち、"up"は基準に対する増加、ならびに"down"は基準に対する減少)を示し、もちろん増加もしくは減少の程度に関する好ましい相対値(すなわち、たとえば1.5の値は正常(基準)値の1.5倍を意味する)も示す。
【0016】
原則として、代謝産物は、小分子化合物、たとえば、代謝経路の酵素の基質、そうした経路の中間体、または代謝経路で得られた産物である。代謝経路は当業者によく知られており、種によって異なることもある。好ましくは、前記経路には少なくとも、クエン酸回路、呼吸鎖、甲状腺ホルモン合成、解糖、糖新生、ヘキソース一リン酸経路、酸化的ペントースリン酸経路、脂肪酸の生成およびβ酸化、尿素サイクル、アミン産生合成経路、タンパク質分解経路(プロテアソーム分解など)、アミノ酸分解経路、下記の生合成もしくは分解が含まれる:脂質、ポリケチド(たとえば、フラボノイドおよびイソフラボノイドなど)、イソプレノイド(たとえば、テルペン、ステロール、ステロイド、カロテノイド、キサントフィルなど)、炭水化物、フェニルプロパノイドおよび誘導体、アルカロイド、ベンゼノイドインドール、インドール-硫黄化合物、ポルフィリン、アントシアン、ホルモン、ビタミン、補因子(たとえば補欠分子族もしくは電子伝達体)、リグニン、グルコシノレート、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび関連分子(たとえばtRNA、マイクロRNA(miRNA)もしくはmRNA)。したがって、小分子化合物である代謝産物は、以下の化合物群からなることが好ましい:アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミン、イミン、アミド、シアン化合物、アミノ酸、ペプチド、チオール、チオエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、チオエーテル、スルホキシド、エーテル、または前記化合物の組み合わせもしくは誘導体。小分子は、代謝産物の中で、正常な細胞機能、臓器機能、または動物の成長、発達もしくは健康に必要とされる一次代謝産物とすることができる。その上、小分子代謝産物はさらに、必須の生態学的機能を有する二次代謝産物、たとえば、生物がその環境に適応することを可能にする代謝産物を含んでいる。さらに、代謝産物は、前記の一次および二次代謝産物に限定されず、ほかにも人工小分子化合物を含んでいる。前記の人工小分子化合物は、投与され、または生物に取り込まれた、外から供給された小分子に由来するが、上記の一次もしくは二次代謝産物ではない。たとえば、人工小分子化合物は、薬物から動物の代謝経路によって得られる代謝産物とすることができる。さらに、代謝産物には、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、たとえばRNAまたはDNAも含まれる。より好ましくは、代謝産物は、50 Da(ダルトン)から30,000 Daまで、もっとも好ましくは30,000 Da未満、20,000 Da未満、15,000 Da未満、10,000 Da未満、8,000 Da未満、7,000 Da未満、6,000 Da未満、5,000 Da未満、4,000 Da未満、3,000 Da未満、2,000 Da未満、1,000 Da未満、500 Da未満、300 Da未満、200 Da未満、100 Da未満の分子量を有する。しかしながら、代謝産物は、少なくとも50 Daの分子量を有することが好ましい。もっとも好ましいのは、本発明の代謝産物が50 Daから1,500 Daまでの分子量を有することである。
【0017】
「少なくとも1つのアナライト」という表現は、同一分子種の1つもしくは複数のアナライトを表す。したがって、本明細書において、概して、単数形が使用されているにもかかわらず、少なくとも1つのアナライトという表現は、少なくとも1つのアナライト種の複数の分子のことを言っていることになる。しかしながら、この表現は、本発明にしたがって測定することができる、化学的に異なるアナライト群、すなわち、第1の分子種の第1のアナライト、第2の分子種の第2のアナライトなども指している。好ましくは、表1から4のいずれか1つに記載のアナライトのうち、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、もしくは少なくとも6個の異なるアナライトからなる一群が、少なくとも1つのアナライトとして測定されるべきである。当然のことながら、統計的理由で、2個以上のアナライトを測定すると、本明細書で言及される本発明の方法によって、より信頼性のある結果が得られることになる。
【0018】
本明細書で使用される「テストサンプル」という用語は、本発明の方法で甲状腺疾患を診断するために使用されるサンプルのことをいう。こうしたテストサンプルは生物試料である。本発明の方法で使用される好ましい生物試料は、体液、好ましくは血液、血漿もしくは血清由来の試料、または甲状腺組織から得られる試料である。より好ましくは、サンプルは血液、血漿もしくは血清試料であり、もっとも好ましくは血漿試料である。生物試料は、本明細書の他の箇所で詳細に記述される被験体から得られる。前記のさまざまなタイプの生物試料を得るための技術は、当技術分野でよく知られている。たとえば、血液試料は採血で得ることができるが、組織もしくは臓器検体は、たとえば生検によって採取しなければならない。
【0019】
前記サンプルは、本発明の方法に使用する前に前処理することが好ましい。下記でより詳細に説明するように、上記の前処理には、化合物を遊離もしくは分離するために必要な処理、または過剰な物質もしくは老廃物を取り除く処理を含めることができる。適当な技術としては、遠心分離、抽出、分画、限外濾過、タンパク質沈殿とそれに続く濾過および精製、ならびに/または化合物の濃縮がある。さらに、化合物分析に適した形もしくは濃度の化合物を提供するために、他の前処理が行われる。たとえば、本発明の方法においてガスクロマトグラフィー質量分析法が用いられるならば、前記ガスクロマトグラフィーに先だって化合物を誘導体化することが必要となる。適切かつ必要な前処理は、本発明の方法を実行するために使用される手段によって決まるが、当業者によく知られている。上記の前処理されたサンプルも、本発明にしたがって使用される「サンプル」という用語に含まれる。
【0020】
本明細書で使用される「被験体」という用語は、動物、好ましくは哺乳類、たとえばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サルもしくはウシに関するが、やはり好ましくはヒトに関する。より好ましくは、被験体は齧歯類であり、もっとも好ましくはラットである。本発明の方法を適用して診断される可能性のある他の動物は、魚類、鳥類もしくは爬虫類である。好ましくは、前記被験体は、甲状腺疾患を引き起こす能力を有することが疑われる化合物と接触していた、または接触させられたことがある。甲状腺疾患を引き起こすことが疑われる化合物と接触させられた被験体は、たとえば化合物の甲状腺毒性をスクリーニングするアッセイで使用される、たとえば、ラットなどの実験動物とすることができる。
【0021】
本明細書で使用される「量を測定する」という表現は、本明細書で言及されるサンプルに含まれる、前記の少なくとも1つのアナライトの、少なくとも1つの特徴的な特性を測定することを指している。本発明に基づく特徴的な特性とは、アナライトの生化学的特性を含めて、物理的および/または化学的特性を明らかにする特徴である。こうした特性には、たとえば、分子量、粘度、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他の分子と反応する能力、生物学的読み出し系(たとえば、レポーター遺伝子の導入)において反応を引き出す能力、などがある。前記の特性に関する値は、特性を特徴付けるものとしての役割を果たし、当技術分野で周知の技術によって決定することができる。その上、特徴的な特性は、標準的な操作、たとえば、数学の計算(乗法、除法または対数計算など)によって、代謝産物の物理的および/または化学的特性の値から導き出される、任意の特徴であるとすることができる。もっとも好ましいのは、少なくとも1つの特徴的な特性が、前記の少なくとも1つの代謝産物およびその量の測定および/または化学的な同定を可能にすることである。したがって、特性値は、その特性値の由来する代謝産物の存在量に関する情報も含んでいることが好ましい。たとえば、代謝産物の特性値はマススペクトルのピークとすることができる。こうしたピークは、代謝産物の特性に関する情報、すなわち質量対電荷比(m/z)情報、ならびにサンプル中の前記代謝産物の存在量(すなわちその量)に関する強度値を含む。
【0022】
上記で検討したように、テストサンプルに含まれる前記の少なくとも1つのアナライトは、好ましくは、本発明にしたがって定量的に、または半定量的に測定することができる。定量のために、アナライトの絶対量または正確な量が測定され、またはアナライトの相対量が、本明細書の上記で言及された特徴的な特性について測定された値に基づいて決定される。相対量は、アナライトの正確な量を測定できない、または測定すべきでない場合に決定することができる。この場合、アナライトの存在量が、前記アナライトを第2の量で含有する第2のサンプルに対して増えているのか減っているのかを判定することができる。したがって、代謝産物の定量分析には、場合によっては代謝産物の半定量分析と呼ばれるものも含まれる。
【0023】
さらに、本発明の方法で使用される測定には、好ましくは、前記の分析ステップの前に化合物分離ステップを用いることが含まれる。好ましくは、前記の化合物分離ステップは、サンプルに含まれる代謝産物の時間分解された分離をもたらす。したがって、本発明にしたがって進んで使用されるべき好適な分離技術には、あらゆるクロマトグラフィー分離技術が含まれ、これにはたとえば、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー、サイズ排除またはアフィニティクロマトグラフィーがある。こうした技術は当技術分野でよく知られており、当業者は容易に応用することができる。もっとも好ましくは、LCおよび/またはGCが本発明の方法によって想定されるクロマトグラフィー技術である。このような代謝産物の測定に適したデバイスは当技術分野でよく知られている。質量分析法を用いることが好ましいが、なかでもガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)、直接注入質量分析法すなわちフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析法(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィー質量分析法(HPLC-MS)、四重極型質量分析法、順次連結された質量分析法(MS-MSまたはMS-MS-MSなど)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、熱分解質量分析法(Py-MS)、イオン移動度質量分析法、または飛行時間型質量分析法(TOF)が好ましい。もっとも好ましいのは、下記に詳細に記載するようにLC-MSおよび/またはGC-MSを使用することである。前記の技術は、たとえばにNissen, Journal of Chromatography A, 703, 1995: 37-57, US 4,540,884 or US 5,397,894おいて明らかにされており、その開示内容は参考として本明細書に含められる。質量分析技術の代わりに、またはそれに加えて、次の技術を化合物測定のために使用することができる:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴映像法(MRI)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、紫外(UV)分光法、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散型ラマン分光法、または炎イオン化検出(FID)。これらの技術は当業者によく知られており、容易に適用することができる。本発明の方法は、好ましくは、自動化によってアシストされるべきである。たとえば、試料処理もしくは前処理は、ロボット工学により自動化することができる。データ処理および比較は、好ましくは適当なコンピュータープログラムおよびデータベースによってアシストされる。上記のような自動化は、本発明の方法をハイスループットアプローチで使用することを可能にする。
【0024】
その上、前記の少なくとも1つのアナライトは、特異的な化学的もしくは生物学的アッセイによっても測定することができる。前記アッセイは、サンプル中の少なくとも1つのアナライトを特異的に検出することを可能にする手段を含んでいなければならない。前記手段は、アナライトの化学構造を特異的に認識する能力、またはアナライトを特異的に同定する能力を有することが好ましく、それはアナライトの、他の化合物と特異的に反応する能力、もしくは生物学的読み出し系(たとえばレポーター遺伝子の導入)で応答を引き出す能力に基づく。アナライトの化学構造を特異的に認識することができる手段は、好ましくは、抗体であり、または化学的構造物と特異的に相互作用する、受容体もしくは酵素などの他のタンパク質である。特異的な抗体は、当技術分野で周知の方法により、たとえば、アナライトを抗原として使用して得ることができる。本明細書に記載の抗体は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体をいずれも含み、そのフラグメント、たとえば、抗原もしくはハプテンと結合する能力を持つFv、FabおよびF(ab)2も含んでいる。本発明は、ヒト化ハイブリッド抗体も含んでいるが、これは望ましい抗原特異性を示す非ヒト ドナー抗体のアミノ酸配列をヒトのアクセプター抗体の配列と組み合わせたものである。さらに一本鎖抗体も含まれる。ドナー配列には通常、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基が含まれるが、ドナー抗体の他の構造および/または機能関連アミノ酸残基も同様に含まれていてもよい。こうしたハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法によって調製することができる。アナライトを特異的に認識することができる適当なタンパク質は、好ましくは、アナライトとそれに対応する代謝産物の代謝変換にそれぞれ関与する酵素である。前記酵素はアナライトを基質として用いることもあるが、基質をアナライトに変換することもある。さらに、前記抗体は、アナライトを特異的に認識するオリゴペプチドを生成させるための基礎として使用されることがある。こうしたオリゴペプチドには、たとえば、酵素の結合ドメイン、または当該アナライトのためのポケットが挙げられる。適当な抗体および/または酵素に基づくアッセイは、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素免疫測定法)、サンドイッチ酵素免疫測定法、電気化学発光サンドイッチ免疫測定法(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光免疫測定法(dissociation-enhanced lanthanide fluoro immuno assay)(DELFIA)、または固相免疫測定法とすることができる。その上、アナライトは、他の化合物との反応能力に基づいて、すなわち特異的な化学反応によって、同定することもできる。さらにアナライトは、サンプル中で、生物学的読み出し系において応答を引き出す能力により測定することができる。生物学的応答は、サンプルに含まれるアナライトの存在および/または量を示す読み出し情報として検出されるはずである。生物学的応答は、たとえば、遺伝子発現の誘導、または細胞もしくは生物の表現型応答とすることができる。
【0025】
「基準値」という用語は、甲状腺疾患と相関があると考えられるアナライトの特徴的な特性に関する値を意味する。こうした基準結果は、好ましくは、甲状腺疾患にかかっている被験体に由来するサンプルから得られる。こうした被験体は、甲状腺疾患を引き起こすことができる化合物と接触させられていることが好ましい。被験体は、甲状腺疾患を引き起こすことができる化合物が生物学的に利用可能でさえあれば、局所もしくは全身投与法によって、その化合物と接触させることができる。基準結果は、アナライトの量について上記で説明するように決定することができる。当然のことながら、基準値は、このような多数のサンプルから、平均値もしくは中央値または関連パラメーターとして得ることもできる。甲状腺疾患を引き起こすことがわかっている化合物は当技術分野でよく知られており、エチレンチオ尿素、メタフルミゾン、メチマゾール、6-プロピル-2-チオウラシル、2-メチルイミダゾール、ジメチルピラゾールリン酸塩、アロクロール、ボスカリド、フィプロニル、ペンジメタリン、メタザクロルまたはフェノバルビタールナトリウムがある。
【0026】
その代わりに、しかしそれもやはり好ましいが、基準結果は、甲状腺疾患を引き起こすことが判明している化合物と接触させられていない被験体、すなわち甲状腺疾患について、ならびに、より好ましくは同様に他の疾患についても外見上健康な被験体に由来するサンプルから得ることができる。さらに、当然のことながら、基準値は、このような多数のサンプルから、平均値もしくは中央値または関連パラメーターとして得ることもできる。
【0027】
その上、基準値は、計算された基準値であれば好ましいが、調べられるべき被験体を含んでなる個体の集団もしくはコホートから得られる、アナライトの相対量もしくは絶対量の平均値または中央値であればもっとも好ましい。また一方、当然のことながら、計算された基準値の算出のために調べられるべき被験体の集団は、外見上健康な被験体(たとえば未処理)からなるか、または、多数の外見上健康な被験体を含んでなるか、のいずれかであるが、この集団は、集団内にテスト被験体(1つもしくは複数)が存在することに起因する平均値もしくは中央値の有意な変化に対して、統計的に抵抗性となるのに十分な大きさの集団である。集団に属する前記個体の代謝産物の絶対量もしくは相対量は、本明細書の他の箇所に記載のように測定することができる。適当な基準値、好ましくは平均値もしくは中央値、を計算する方法は、当技術分野でよく知られている。前記の被験体の集団は、多数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000、または10,000個体の被験体を含んでなる。当然のことながら、本発明の方法で診断されるべき被験体、および前記の多数の被験体の中の被験体は、同種であり、好ましくは性別および/または年齢も一致する。
【0028】
より好ましくは、基準結果、すなわち少なくとも1つのアナライトの特徴的な特性に関する値は、データベースなどの適当なデータ記憶媒体に保存されるので、その後の診断にも利用可能である。対応する基準サンプルを(実際に)得たもとの被験体が、ひとたび甲状腺疾患を発症したことが(将来において)確認されたならば、データベースにおいて適当な基準結果を特定することができるので、これによって甲状腺疾患の素因を効率的に診断することが可能になる。
【0029】
「比較する」という用語は、上記で詳細に説明した測定結果、すなわちアナライトの定性的もしくは定量的測定結果が、基準結果と本質的に同一であるか異なっているかを評価することである。
【0030】
基準結果が、甲状腺疾患の誘発物質である化合物と接触させられた被験体に由来する1つもしくは複数のサンプルから得られる場合、当該疾患はテストサンプルから得られたテスト結果と前記の基準結果の同一性の程度に基づいて、すなわち前記アナライト(1つもしくは複数)に関する定性的または定量的組成の同一性もしくは類似性に基づいて診断することができる。特徴的な特性に関する値、および、定量的な測定の場合、強度値が同一であるならば、テストサンプルの結果および基準結果は同一である。特徴的な特性に関する値は同一であるが強度値は異なるならば、前記の結果は類似である。こうした違いは、好ましくは有意でなく、強度値が少なくとも、基準値の1から99パーセンタイル、5から95パーセンタイル、10から90パーセンタイル、20から80パーセンタイル、30から70パーセンタイル、40から60パーセンタイルまでの間の区間に含まれ、基準値の50、60、70、80、90または95パーセンタイルであるという特徴を有するものとする。
【0031】
基準結果が、甲状腺疾患の誘発物質である化合物と接触させられていない被験体、または外見上健康な被験体に由来する1つもしくは複数のサンプルから得られる場合、甲状腺疾患はテストサンプルから得られたテスト結果と前記基準結果との相違に基づいて、すなわち前記アナライト(1つもしくは複数)に関する定性的または定量的組成の相違に基づいて、診断することができる。上記の計算された基準値が使用されても、同じことが当てはまる。この相違は、代謝産物の絶対量もしくは相対量の増加(場合によって、代謝産物のアップレギュレーションと呼ばれることもある;実施例も参照されたい)であっても、前記の量のいずれかの減少であっても、検出可能な量の代謝産物が存在しない状態であってもよい(場合によっては、代謝産物のダウンレギュレーションと呼ばれることもある;実施利も参照されたい)。好ましくは、相対量もしくは絶対量の相違は有意であって、すなわち基準値の45から55パーセンタイル、40から60パーセンタイル、30から70パーセンタイル、20から80パーセンタイル、10から90パーセンタイル、5から95パーセンタイル、1から99パーセンタイルまでの間の区間外にある。
【0032】
本明細書に記載の具体的な代謝産物について、相対量の変化に関する好ましい値(すなわち「倍」変化)または、変化の方向(すなわち、相対量および/または絶対量の増加または低下の結果として生じる「アップ」または「ダウン」レギュレーション)を下記の表1から4に示す。
【0033】
比較は、自動化の助けを借りることが好ましい。たとえば、2つの異なるデータセット(たとえば、特徴的な特性(1つもしくは複数)に関する値を含むデータセット)を比較するためのアルゴリズムを含む適当なコンピュータープログラムを使用することができる。こうしたコンピュータープログラムおよびアルゴリズムは当技術分野でよく知られている。上記にもかかわらず、比較は手動で行うこともできる。
【0034】
アナライトを測定するための前記方法をデバイスに組み入れることができる。本明細書で使用されるデバイスは、少なくとも前記の手段、すなわち、少なくとも1つのアナライトの量を測定するための分析ユニット、ならびに測定された量と基準値との比較を可能にする評価ユニットを含んでいなければならない。デバイスのユニットは、相互に機能するように結合されていることが好ましい。ユニットを機能するように結合する方法は、デバイスに含められる手段のタイプによって決まってくる。たとえば、アナライトを自動的に定性測定もしくは定量測定するためのユニットが使用される場合、前記の自動的に作動するユニットにより得られるデータは、診断を容易にするために、たとえばコンピュータープログラムで処理することができる。こうした場合、これらのユニットは1つのデバイスに含まれることが好ましい。したがって、前記のデバイスは、分析ユニット、および結果として得られたデータを診断用に処理するためのコンピューターユニットを含むことができる。あるいはまた、アナライトの測定のためにたとえば試験紙のようなユニットを用いる場合、診断用ユニットは、測定結果のデータを、甲状腺疾患を伴うことが判明している結果データに割り当てる、または上記の健康な被験体を示す結果データに割り当てる、コントロールストリップまたはコントロールテーブルを含んでいてもよい。
【0035】
あるいはまた、アナライト(1つもしくは複数)を測定するための方法は、好ましくは互いに機能するように連結された、いくつかのデバイスを含んでなるシステムに組み入れられていてもよい。具体的には、デバイスは、上記で詳細に説明したとおり本発明の方法を実行することを可能にするように、連結されていなければならない。したがって、本明細書に記載の「機能するように連結される」は、好ましくは、機能的に連結されることを意味する。本発明のシステムに使用されるデバイスに応じて、前記デバイス、たとえばガラス繊維ケーブルと他のハイスループットデータ伝送用ケーブルとの間のデータ伝送を可能にする手段によって、各デバイスを他のデバイスと結びつけることにより、前記デバイスを機能的に連結することができる。それにもかかわらず、たとえばLAN(ワイヤレスLAN、W-LAN、インターネット)を介した、デバイス間のワイヤレスデータ転送も本発明に含まれる。好ましいシステムは、アナライトを測定するためのデバイスを含んでなる。そうしたデバイスには、アナライトを分離するためのユニット、たとえばクロマトグラフィーデバイス、およびアナライトを測定するためのユニット、たとえば質量分析デバイスが含まれる。適当なデバイスは上記で詳細に説明した。本発明のシステムにおいて使用される、化合物分離のための好ましいユニットには、クロマトグラフィーデバイス、より好ましくは、液体クロマトグラフィー、HPLC、および/またはガスクロマトグラフィーのためのデバイスがある。化合物測定のための好ましいデバイスには、質量分析デバイス、より好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析法、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析法、順次連結された質量分析法(たとえばMS-MSまたはMS-MS-MS)、ICP-MS、Py-MSまたはTOFがある。分離および測定ユニットは、好ましくは相互に連結されている。本明細書の他の箇所で詳細に説明されるように、本発明のシステムにおいてLC-MSおよび/またはGC-MSが使用されることがもっとも好ましい。さらに、アナライトを測定するためのユニットから得られた結果を比較および/または評価するためのユニットが含まれるべきである。同ユニットは、少なくとも1つのデータベース、ならびに結果を比較するために実行されるコンピュータープログラムを含んでなるとすることができる。上記システムおよびデバイスの好ましい実施形態は、下記においても詳細に説明される。
【0036】
本発明の方法の好ましい実施形態において、少なくとも1つのアナライトを表1に記載のアナライト群から選択する。より好ましくは、被験体は雌である。よりいっそう好ましくは、甲状腺疾患は甲状腺における甲状腺ホルモン合成の障害を伴う。
【0037】
本発明の方法のもう一つの好ましい実施形態において、表2に記載のアナライト群から少なくとも1つのアナライトが選択される。より好ましくは被験体は雄である。よりいっそう好ましくは、甲状腺疾患は甲状腺における甲状腺ホルモン合成の障害を伴う。
【0038】
本発明の方法の好ましい実施形態において、表3に記載のアナライト群から少なくとも1つのアナライトが選択される。より好ましくは、被験体は雌である。よりいっそう好ましくは、甲状腺疾患は、肝臓における甲状腺ホルモン分解の障害を伴う。このような甲状腺ホルモン分解の障害は、結果として、肝ミクロソーム酵素の誘導もしくは活性が損なわれたことに起因する甲状腺機能低下状態をもたらす可能性がある。
【0039】
本発明の方法のまた別の好ましい実施形態において、少なくとも1つのアナライトが表4に記載のアナライト群から選択される。より好ましくは、被験体は雄である。よりいっそう好ましくは、甲状腺疾患は、たとえば上記のような、肝臓における甲状腺ホルモン分解の障害を伴う。
【0040】
好都合なことに、本発明の基礎となる研究において、表1から4のいずれか1つに記載のアナライトもしくはアナライト群の量が甲状腺疾患を診断するためのバイオマーカーとしての役割を果たすことが見出された。本発明のおかげで、甲状腺疾患をより効率よく確実に診断することができ、さらに、その原因を、より正確に、すなわち甲状腺ホルモン合成の障害であるか、肝臓に起因する甲状腺ホルモン分解の変化であるか、判定することができる。その上、前記知見に基づいて、甲状腺疾患を引き起こす能力を有することが疑われる化合物のスクリーニングが、たとえば、毒性学的評価との関連で、可能となった。さらに、この知見は、甲状腺疾患の治療に有用な薬剤のスクリーニングアッセイのための基礎となる。
【0041】
したがって、本発明はまた、化合物が被験体において甲状腺疾患を引き起こす能力を有するかどうかを判定するための方法に関するが、その方法は下記を含んでなる:
(a) 甲状腺疾患を引き起こす能力を有することが疑われる化合物と接触させられた被験体のサンプルにおいて、表1から4のいずれか1つの、少なくとも1つのアナライトの量を測定すること;ならびに
(b) ステップ(a)で測定された量を基準値と比較すること、これにより化合物の甲状腺疾患を引き起こす能力が判定されることとなる。
【0042】
さらに本発明はまた、甲状腺疾患を治療するための物質を同定する方法に関するが、その方法は次のステップを含んでなる:
(a) 甲状腺疾患を治療するための候補物質と接触させられた、甲状腺疾患に罹患している被験体のサンプルにおいて、表1から4のいずれか1つの、少なくとも1つのアナライトの量を測定するステップ;ならびに
(b) ステップ(a)で測定された量を基準値と比較するステップ、これにより前記物質が同定される。
【0043】
用語について上記でなされた定義および説明はすべて、以下において特に指定のない限り、必要な変更を加えて、前記方法、および下記でさらに説明されるあらゆる他の実施形態に適用される。具体的には、甲状腺疾患を治療するために有用な物質を同定する方法の場合、前記の基準値は、好ましくは、甲状腺疾患を引き起こす化合物と接触させた被験体、またはそうした被験体群から導き出される。より好ましくは、テストサンプルと基準で異なるアナライトの量は、前記甲状腺疾患の治療に有用な物質の指標となる。あるいはまた、前記の基準は好ましくは、甲状腺疾患を引き起こす化合物と接触させたことのない被験体もしくはそうした被験体群から(できれば、見かけ上健康な被験体から)導き出してもよく、被験体の集団もしくはコホートにおけるアナライトに関する計算された基準値であってもよい。そうした基準を使用する場合、テストサンプルおよび基準におけるアナライトについての基本的に同一な量は、甲状腺疾患の治療に有用な物質の指標となる。
【0044】
「甲状腺疾患を治療するための物質」という表現は、甲状腺ホルモン合成の障害、および/または肝臓における甲状腺ホルモン分解の変化に、直接干渉することができる化合物を意味する。本発明の方法でスクリーニングされるべき物質は、有機および無機化学物質であって、たとえば小分子、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、抗体などのポリペプチド、または他の人工高分子もしくは生体高分子とすることができる。好ましくは、上記物質は、薬剤、プロドラッグ、または薬剤もしくはプロドラッグ開発のためのリード物質として好適である。
【0045】
当然のことながら、本発明の方法が甲状腺疾患の治療用の薬剤を同定するために、または化合物の毒性学的評価のために(すなわち化合物が甲状腺疾患を引き起こす能力を有するかどうか判定するために)使用されるならば、統計上の理由で、多数の被験体のテストサンプルを調べることができる。好ましくは、テスト被験者からなる上記コホートにおけるメタボロームは、検討すべき化合物以外のファクターに起因する差異を回避するために、できる限り同様であるべきである。前記方法に使用される被験体は、好ましくは齧歯類などの実験動物であるが、より好ましくはラットである。当然のことながら、前記実験動物は、好ましくは本発明の方法が終了した後屠殺されるものとする。コホートテストのすべての被験体および基準動物は、他と異なる環境の影響を回避するために、同一条件下に維持されるものとする。基本的に同じメタボロームを有するラットに好ましい条件は、WO 2007/014825に記載されており、その開示内容は参考として本明細書に含められる。
【0046】
また、本発明は、表1、2、3および/または4に記載のアナライトに関する特徴的な値を含んでなるデータ集に関する。
【0047】
「データ集」という用語は、物理的および/または論理的にグループ化することができるデータの集合体を意味する。したがって、データ集は、1つのデータ記憶媒体に組み入れられていてもよいが、相互に機能するように連結された、物理的に分離された複数のデータ記憶媒体に組み入れられていてもよい。好ましくは、データ収集はデータベースを用いて実行される。したがって、本明細書で使用されるデータベースは、適当な記憶媒体上にデータ集を含んでいる。その上、データベースは好ましくは、データベース管理システムをさらに含んでなる。データベース管理システムは、好ましくは、ネットワークベースの、階層型の、またはオブジェクト指向のデータベース管理システムである。さらに、データベースは、連邦型または統合型データベースとすることができる。より好ましくは、データベースは分散(連邦型)システム、たとえばクライアントサーバーシステムとして実行される。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムがテストデータセットとデータ集に含まれるデータセットとの比較を可能にするように構築される。具体的には、上記のようなアルゴリズムを使用することで、甲状腺疾患の指標となる、類似した、または同一のデータセットを求めてデータベースを検索することができる(たとえば、クエリ検索)。したがって、同一の、もしくは類似したデータセットを、データ集の中で同定することができれば、テストデータセットは、甲状腺疾患と関連付けられることになる。その結果として、データ集から得られた情報を用いて、被験体から得られたテストデータセットに基づいて甲状腺疾患を診断することができる。
【0048】
本発明の前記データ集を含んでなるデータ記憶媒体も本発明によって想定される。
【0049】
本明細書で使用される「データ記憶媒体」という用語は、単一の物理的実体に基づくデータ記憶媒体、たとえばCD、CD-ROM、ハードディスク、光学式記憶媒体、またはディスケットを含んでいる。その上、その用語はさらに、物理的に分離された実体からなるデータ記憶媒体を含んでおり、この分離された実体は、好ましくはクエリ検索に適した方法で前記データ集を提供するような方式で、相互に機能するように連結されている。
【0050】
本発明はさらに上記のデータ記憶媒体(b)に、機能するように連結された、サンプルのアナライトの特徴的な値を比較するユニット(a)を含んでなるシステムに関する。
【0051】
本明細書で使用される「システム」という用語は、相互に機能するように連結された異なる実体もしくはユニットに関する。前記の実体もしくはユニットは、1つのデバイスに組み入れられていてもよいが、互いに機能するように連結された、物理的には分離されているデバイスに組み入れられていてもよい。代謝産物の特徴となる値を比較するためのユニットは、好ましくは、前記の比較用アルゴリズムに基づいて作動する。データ記憶媒体は、好ましくは、前記のデータ集もしくはデータベースを含んでおり、そのデータセットのそれぞれが甲状腺疾患の指標となる。したがって、本発明のシステムは、テストデータセットが、データ記憶媒体に記憶されたデータ集に含まれているかどうか識別することを可能にする。その結果として、本発明のシステムは、甲状腺疾患の診断において診断デバイスとして用いることができる。
【0052】
システムの好ましい実施形態において、サンプルのアナライトの特徴的な値を測定するための分析ユニットが含まれる。
【0053】
「アナライトの特徴的な値を測定するための分析ユニット」という表現は、好ましくは、アナライトを測定するための前記デバイス、たとえば、質量分析デバイス、NMRデバイス、またはアナライトについて化学的もしくは生物学的アッセイを行うためのデバイスに関する。本明細書で用いられる検出は二段階プロセスであって、すなわち、化合物はまず検出すべきアナライトと特異的に結合した後、検出可能なシグナル、たとえば蛍光シグナル、化学発光シグナル、放射性シグナルなどを生じることができる。検出可能なシグナルを生じるために、他の化合物が必要になることもあるが、そうした化合物はすべてこの表現に含まれる。アナライトに特異的に結合する化合物は、本明細書の他の箇所で詳細に記載されているが、好ましくは酵素、抗体、リガンド、受容体、またはアナライトに特異的に結合する他の生物学的分子もしくは化学物質などである。
【0054】
本発明はまた、表1から4のいずれか1つから少なくとも1つのアナライト、またはそれを測定するための手段を含んでなる、診断用組成物に関する。
【0055】
さらに、本発明に含まれるのは、甲状腺疾患を診断するためのデバイスであって、下記を含んでなる:
(a) 表1から4のいずれか1つから選択される少なくとも1つのアナライトの、特徴的な値を測定するための分析ユニット;ならびに
(b) 分析ユニットにより測定された特徴的な値と、甲状腺疾患の指標となる基準値との比較に基づいて、甲状腺疾患を考慮する評価ユニット。
【0056】
概して、本発明は、表1から4のいずれか1つに記載の少なくとも1つのアナライト、もしくはそれを測定するための手段を、被験体において甲状腺疾患を診断するための診断用デバイスもしくは組成物を作製するために使用すること、または被験体のサンプル中のそうしたアナライトを、甲状腺疾患を診断するために使用することに関する。
【0057】
前記使用に関する好ましい実施形態において、表1のアナライトは雌の被験体用であり、より好ましくは、甲状腺疾患は甲状腺ホルモン合成の障害に起因する。
【0058】
前記使用に関する好ましい実施形態において、表2のアナライトは雄の被験体用であり、より好ましくは、甲状腺疾患は甲状腺ホルモン合成の障害に起因する。
【0059】
前記使用に関する好ましい実施形態において、表3のアナライトは雌の被験体用であり、より好ましくは、甲状腺疾患は肝臓における甲状腺ホルモン分解の障害に起因する。
【0060】
前記使用に関する好ましい実施形態において、表4のアナライトは雄の被験体用であり、より好ましくは、甲状腺疾患は肝臓における甲状腺ホルモン分解の障害に起因する。
【0061】
上記の参考文献はいずれも、それらの開示内容の全体、ならびに上記で明確に記載されたそれらの具体的な開示内容について、参考として本明細書に組み入れられる。
【0062】
以下の実施例は、単に本発明を説明するためだけのものである。それらは、いかなる点においても決して本発明の範囲を制限するとみなされるべきでない。
【実施例】
【0063】
化合物によって引き起こされる甲状腺疾患のためのバイオマーカー
Wistar (CrI:WI(Han)) ラット(Charles River Laboratories、ドイツ、より供給)は、Strauss et al., 2009に記載の環境順応条件下で飼育した。実験開始時に、動物は10-11週齢であった。この研究のそれぞれの用量群は、性別ごとに5匹で構成され、対照(性別ごとに10匹)と比較した。テスト物質は、なるべく餌もしくは強制飼養により投与したが、化合物の製剤に応じて、腹腔内、皮下および筋肉内注射も使用した。用量レベルは、文献もしくはBASF社内研究報告に記載の通り、その物質について典型的で明白な(高用量)毒性学的症状、および軽度の(低用量)症状を示すように選択された。
【0064】
血液サンプルは、実験第7、14および28日に、16 - 20時間絶食後、イソフルラン麻酔下で全ラットの後眼窩洞から採取した。血漿サンプルを調製し(Strausz et al., 2009)分析に使用した。
【0065】
質量分析法に基づく代謝産物プロファイリング分析のために、血漿サンプルを、極性および非極性画分を与える独自の方法により抽出した。GC-MS分析のために、非極性画分を酸性条件下、メタノールで処理し、脂肪酸メチルエステルを生成させた。二つの画分をさらに、O-メチル-ヒドロキシルアミン塩酸塩およびピリジンで誘導体化して、オキソ基をO-メチルオキシムに変換した後、分析前にシリル化剤で処理した。
【0066】
LC-MS/MS分析では、二つの画分を適当な溶媒混合物中で再構成した。逆相分離カラムで濃度勾配溶出によりHPLCを行った。質量分析法による検出のために、メタノミクス(Metanomics)社の独自技術を適用したが、それは標的および高感度MRM(多重反応モニタリング)プロファイリングをフルスクリーン分析と並行して可能にするものである。この方法は結果として、半定量分析について269個のユニークなアナライトをもたらし、そのうち187個は化学的に同定されたが、82個は未知であった。その上、その方法において、サンプルの識別特徴をもたらす数百個の追加的なアナライトが含まれていた。
【0067】
総合的な分析的検証の後、各アナライトに関するデータを、プールサンプルから得られたデータに対して標準化した。プロセスの変動性を説明するために、これらのサンプルは、全プロセスで並行して処理した。
【0068】
性別および日数で階層化された異分散t-検定(「ウェルチ検定」)を適用し、処理群とそれぞれの対照とを比較した。p値、および対応する群の中央値の比は、代謝プロファイルとして集められ、データベースに入力された。
【0069】
ラットを指定の既知の甲状腺機能障害誘発物質で処理した後の、甲状腺疾患の指標となる血漿アナライト(代謝産物)群の変化を、下記の表1から4に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲状腺疾患を診断するための方法であって:
(a) 甲状腺疾患に罹患していることが疑われる被験体のテストサンプルにおいて、表1から4のいずれか1つから選択される少なくとも1つのアナライトの量を測定すること、ならびに
(b) ステップ(a)で測定された量を基準と比較すること、これにより甲状腺疾患が診断されるべきものとなる、
を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記被験体が、甲状腺疾患を引き起こす能力を有すると思われている化合物と接触させられた被験体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が被験体において甲状腺疾患を引き起こす能力を有するかどうかを判定する方法であって:
(a) 甲状腺疾患を引き起こす能力を有すると思われている化合物と接触させられた被験体のサンプルにおいて、表1から4のいずれか1つから選択される、少なくとも1つのアナライトの量を測定すること;ならびに
(b) ステップ(a)で測定された量を基準値と比較すること、これにより該化合物の甲状腺疾患を引き起こす能力が判定される、
を含んでなる前記方法。
【請求項4】
前記基準値が、甲状腺疾患に罹患している被験体から導き出されたものである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記のテストサンプル中の少なくとも1つのアナライトおよび基準値について基本的に同一量であることが、甲状腺疾患の指標となる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基準値が、(i)甲状腺疾患に罹っていないことが判明している被験体から導き出されたものである、または(ii)被験体集団に関する前記の少なくとも1つのアナライトについて計算された基準値である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのアナライトについて、基準値と比較してテストサンプルで量が異なることが、甲状腺疾患の指標となる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
甲状腺疾患を治療するための物質を同定する方法であって、
(a) 甲状腺疾患を治療するための候補物質と接触させられた、甲状腺疾患に罹患した被験体のサンプルにおいて、表1〜4のいずれか1つから選択される少なくとも1つのアナライトの量を測定するステップ;ならびに
(b) ステップ(a)で測定された量を基準値と比較するステップ、これにより甲状腺疾患を治療するための物質が同定されることとなる、
を含んでなる前記方法。
【請求項9】
前記基準値が、甲状腺疾患に罹患した被験体から導き出されたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の少なくとも1つのアナライトについて、テストサンプルと基準値で異なる量が、甲状腺疾患を治療するための物質の指標となる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基準値が、(i)甲状腺疾患に罹っていないことが判明している被験体から導き出されたものである、または(ii)被験体集団に関する前記の少なくとも1つのアナライトについて計算された基準値である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
テストサンプル中の少なくとも1つのアナライトおよび基準値について基本的に同一量であることが、甲状腺疾患を治療するための物質の指標となる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記甲状腺疾患が、濾胞上皮細胞過形成および肥大、新生組織形成、甲状腺腫瘍からなる一群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a) 表1から4のいずれか1つから選択される少なくとも1つのアナライトの、特徴的な値を測定するための分析ユニット;ならびに
(b) 分析ユニットにより測定された特徴的な値と、甲状腺疾患の指標となる基準値との比較に基づいて、甲状腺疾患を考慮する評価ユニット
を含んでなる、甲状腺疾患を診断するためのデバイス。
【請求項15】
被験体における甲状腺疾患診断のための、被験体のサンプル中の、表1から4のいずれか1つから選択される少なくとも1つのアナライトの使用。

【公表番号】特表2013−501926(P2013−501926A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524171(P2012−524171)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060086
【国際公開番号】WO2011/018288
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】