説明

男子用超節水小便器

【課題】普通の水洗便器同様に使えしかも1回当たりの洗浄水が200〜300ミリリットルで、1回当たりの尿が倍に稀釈されて、且つ十分にボウル面の洗浄、下からの臭気の水封を可能にし、尿の硝化に適する尿水を得られるようにした超節水男子用小便器の提供。
【解決手段】小便器ボウル面1下位の尿落口に直管状の尿収集管を備え、その管の下面開口部に一定量の負荷により自動開閉可能な遮蔽体3を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗便器であって、極めて少量の水で便器ボウル面を洗浄する男子用超節水小便器で節水と共にこの便器を利用して尿と少量の水を集めることも目的としている。
【技術背景】
【0002】
近年屎尿の処理研究は進歩し、浄化槽や処理装置から排出される排水からチッソリンを除去するシステムが考えられている。その中でもチッソ含有の率の高い小便を分離してその中のチッソ分を、アンモニア性チッソから硝酸性チッソに変えて再び、浄化槽や処理装置に戻してやると、硝酸化したチッソは該槽内にあるBODを炭素源として反応し、自らをチッソガスに変えると共に該槽内のBOD値も引き下げることは広く知られている。尿素→アンモニア性チッソ→硝酸性チッソの変化も極めて容易で、好気状態で流動させることによって比較的簡単に反応を進められる。
【0003】
しかし尿を集める便器がないと実用化も進展しない。尿を集めるには大小便器共に開発しなければならない。北欧で実用化されている大便のコンポスト化のためや、尿の肥料利用のための尿分離大便器は、腰掛式の洋式便器の前半部分を区切り、尿のみを集める形式のものである。この型は、女性及び男性の大便使用の場合は良いが、日本のように家庭で、男子が座って小便をしない場合には不向きであった。本発明者も山岳でのヘリコプター輸送や山岳用コンポストトイレ用に和洋の大便器で尿分離便器を特許文献1で提案している。しかしながら浄化槽や処理装置で少しでも放流水質を良くするために尿分離を行うのであれば、男子用小便器で尿分離を行うのが一番効果的である。例えば鉄道の駅や、高速道路のパーキングエリヤのトイレ等は使用者の60〜70%が男子小便器の利用者であり、公衆トイレでは、この便器の尿分離が一番効果のある方法と思われる。
【0004】
先行する技術として無水小便器がある。この便器は男子小便器の排出口にカートリッジに入った、尿より比重の小さい有機性油脂を入れ、小便の度毎に尿と入れ替り、油脂が表面を被覆し、臭気を遮断する仕組みである。防臭油脂が少しずつ流出したり、カートリッジ内の回路が、つまった時にカートリッジを取り替えるというもので、技術的にも評価され、実用化の道を進んでいる。しかし、便器の洗浄に全く水を使わないで指定の洗剤で拭き取るだけであるが、掃除の回数は多くなり、メンテナンスに少し負担がかかるようである。この便器はカートリッジ取替時の掃除以外には完全に水を使わないので、採用企業としての節水効果は大きく、注目される商品の一つである。但し、全く水を流さないため排水路の勾配が従来の水洗便器用の場合には流動し難しく、前述のカートリッジ交換時に大量(バケツ2〜3杯)の水を流しているようである。100分の1〜2勾配の管路に滞留して、いつもゲル化状であるという。この便器も現在は超節水による経費節減と、システムのトータルとしてのCO2削減を目的とし、尿分離は考えていない。一定の水で稀釈し流動性を良くしないと安定した尿の収集が出来ない。5000人〜10000人分に1回のカートリッジ取替時に大量の水を流して管路を洗うようでは尿分離収集には不向きである。
【0005】
これとは別のもう一つの尿分離の方法がある。本発明者が実案文献2に開示している。大便器の洗浄水を大便、小便と共にごく少量を便槽又は浄化槽、処理装置に落とし、その直後に流す洗浄水を便器便落口下に設けた遮蔽体により別流させ、その水を再生し循環利用する超節水大便器であるが、屎尿は一体になって排便管から落下するため、尿分離は出来ていない。
【0006】
この方式を男子小便器に応用して、小便と少量の水を排水路に流してから男子小便器のボウル面を洗浄した水は別流してボウル面の循環洗浄に当てる男子小便器を特許文献3に開示している。
この男子小便器は小便と少量の水を浄化槽への搬送路に落とし、その後男子小便器ボウル面を洗った洗浄水は、実案文献2の方式を利用して循環洗浄水としている。本発明者は古くから少量の水で便器を洗う簡易水洗便器を開発してきた。実案文献4に開示された少量の水でストール型男子小便器の下面小便たれ受部まで良く洗い且つ、従来の小便器ボウル面を薄い水膜で洗うように工夫された特殊ノズルも提案している。
【0007】
公衆トイレ等にあっては、複雑な設備を避け、簡単で管理し易く、且つ節水効果もあり、使用者にとっては水洗便器と同様の使いごごちであり、管理者にとっては掃除し易い便器を提供することである。このような見地から本発明者は公衆トイレに向く新しい男子用節水小便器を提案する。
【0008】
簡易水洗便器は建築基準法上汲取便器に属しておりその防臭方法は独自のものを許された大臣認定製品を出発点としている。平成12年に大臣認定は廃止され一般汲取便器となった。これを水洗便器として製造する場合、陶器で作ると衛生陶器JIS規格なるものが存在し、今尚小便器の水封深さを5センチと図3に規定している。防臭方法はこれに拘束されることはないが、陶器で現在の水封方式を採用する場合には陶器メーカーがこのJIS規格にこだわっている。
【0009】
本発明者は実案文献5で水封深1センチ程度の水洗便器の水封構造そのままの簡易水洗男子小便器を提案した。これは汲取便器だから許された寸法であって衛生陶器のJIS規格には合っていない。そこで規格上の混乱を避けるために従来の陶器便器にならった水封構造をやめて、簡易水洗大便器と同じく尿落口に便皿状の遮蔽体を使った水封機構を採用し、超節水を図った。陶器製男子小便器が最高の節水をしても1.5リットル以下にならないのはこの構造によって5センチの水封深の小便を水と入れ替えるために必要とする水量も大きい。
特許文献1 特許第4051404号
実案文献2 実願2005−009945
特許文献3 特願2008−336006
実案文献4 実願昭61−82910
実案文献5 実願昭61−59233
特許文献6 特願昭62−204461
実案文献7 実願昭63−121379
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする第一の課題は男子用小便器のボウル面の下面と排水管の間に従来の陶器便器の水封構造によらない遮蔽体による防臭構造を作り、第二には、その防臭構造物をセット化し便器ボウル面から容易に着脱出来るような男子用小便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では前記の課題を達成するために、以下の構成にしたことを特徴とする。
1、 給水装置から洗浄水を給水可能なボウル面下位の尿落口に直管状の尿収集管を備え、その管の下面開口部に、一定の重量負荷により自動開閉可能な遮蔽体を備えることを特徴とする。
2、 前記した1に於いて尿収集管及びその下面を塞ぐ遮蔽体とを一体化して形成し、これにカバーケースをつけ遮蔽体ユニットとなし、そのユニットをボウル面側から取り外し自在に嵌めこむように形成してあることを特徴とする。
【0012】
本発明に於ける尿収集管は小便器の尿や洗浄水の集まり易い凹面の最低部に位置させる。尿収集管の下端を遮蔽する遮蔽体は通常皿状で皿の縁の高さは1センチ位で洗浄水の残水が溜まり下方からの臭気を水封遮断するようになっている。尿収集管下端部にはパッキングがつきそれだけでも防水が可能なようになっている。皿状の遮蔽体の一部を延長し、そこに重錘をつけ、途中の支点を中心に開動自在にしている。通常時、閉鎖状の便皿は水封状態でバランスされ、これに尿又は洗浄水が少しでも加わるとバランスが崩れ開弁し下方に尿や水を流すようになっている。
尿収集管の内経は3センチ位で便皿もそれに合わせた大きさである。不使用時には洗浄残水が溜りいつもわずかな水で水封されている。
【0013】
便器の上面部には実案文献4にあるようなボウル面全面に薄い水膜を作るノズルが取り付けられており200〜300ミリリットルの水で便器の全面を洗うようになっている。洗浄水の操作は、特許文献6に開示している一押し200〜300リットルに設定された少水量フラッシュバルブでも良いが用便者が便器前に立った時に感知し、立ち去った直後に200〜300ミリリットルの洗浄水を流す、赤外線感知式の自動給水システムが望ましい。又小便器ボウル面の流水面設計は薄膜状の流水が、小便器の尿垂れ部まで洗うようになっている。
【発明の効果】
【0014】
A請求項1により一般の水洗便器より極めて少ない水封量(5cc程度)であり且つ1回に流れる洗浄水は男子1回の小便量250〜300ミリリットルとほぼ同量なので小便が2倍に稀釈された形で排便管に流れる。従って尿分離収集の場合はそのまま便器から排便管に流し、何台か連結して流れるように配置された小便配管の末端で収集すれば、約2倍に稀釈された尿が得られるわけである。既設のトイレを改造した場合は直列に数個配置されている便器のみを取り替え従来の排水管に接続し、その末端で、大便器配管と合流させずに切替路を作れば2倍稀釈の小便が得られる。尿硝化には丁度良い濃度になる。
B請求項2によりバランス便皿がカートリッジとして取り外せるため洗浄し易い。洗浄の目的は尿石の除去にあるので、このまま酸性の尿石除去剤の容器に入れるだけで良い。又取り外した時開閉自在な便皿部分を保護するためにカバーケースが一体に成型されており取り出して床に置いても要部を損傷しないようにしている。
C尿分離を目的としない場合でも、本便器を設置することにより、1回の洗浄水量が200〜300ミリリットルなので、1回1500ミリリットルの節水型男子小便器の1/3〜1/5の水量まで節水出来る。又使用者にとっては水洗同様の流れなので違和感もなく、掃除にも特別な注意はいらない。防臭ユニットの尿石除去作業は使用人数によって変化するが通常は1ヶ月に一度程度である。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は請求項1の実施の1形態を示す。1は小便器ボウル面の下部を示しその一番低い所にロート形状の集水部材2がありその下端に直管状の尿収集部が一体成形されている。3は遮蔽体になる便皿でロート状集水部材2に一体成型された支点4によって回動自在に軸枢させており、皿部3に溜まる水の重量とバランスする重錘部5を支点4の反対側に持っている。6は尿収集部と遮蔽体を包む通水路であって、下端は床面に配設された排水路に挿着されている。上端はロート状集水部材2が載置されるような支持部を持ち、便器ボウル面下面と水密に装着されている。ロート状集水部材2の上面には目皿7がはめ込まれている。8はパッキングである。
【0016】
便皿状遮蔽体3はプラスチック又はステンレスから成り、皿状部分に洗浄残水を溢えて水封をするが尿収集管下部には薄いシリコンゴム製のやわらかいパッキングが着いており、水が無くなっても、便皿が密着し防臭機能を果たすようになっている。
【0017】
ボウル面の上縁に吐水ノズル9を設ける。このノズルは給水装置10に接続している。この給水装置10は同じ箱内に内蔵された処理装置11のプログラムに従って自動運転される電磁弁又は電池弁(電池で動く電磁弁)であって、赤外線センサー12が小便器の前に立った使用者を感知し、次に小便器前を離れた時に吐水ノズル9から少量の洗浄水をボウル面に自動給水運転する。その水は当然のことながら便皿3を動かし尿と共に尿回収管路に入る。吐水ノズル9は従来簡易水洗便器で研究達成され、現在も使用されている実案文献4記載のものを採用しているが、本図のような特殊ノズルも工夫されている。小便器本体として最も少水量の薄い水膜で洗浄出来るよう上部配水部と下部集水部が狭くなった実願文献7の形状を採することも考えられる。
【0018】
請求項2に示される着脱可能な防臭部は図2に示している6は便器と一体になった筒状体で通水路をなし上面は便器と水密に密結し、下面は床部に開口した排水管に接続している。21は筒状のケース体で、集水部と便皿回動軸支持部をその内部に包み込み保護している。材質は酸に強いポリプロピレンや塩化ビニール等プラスチックを使用する。22の尿収集用部材と便皿部とは一体で組み立てられている。21の筒状ケース体は便皿部とは別体であるが筒体20の上縁支持部に着脱自在にはまり込んでいる。尿収集管の上面はプラスチックで一体成型されているが、尿や洗浄水の通過する穴が上面にあいている。取り外しはカバーケース21も一緒に行い21の底面は平らなので取り外し後床に置くことも出来る。
【0019】
この男子小便器システムは処理装置11に組み込まれたマイコンプログラムによって、自動的に200〜300ccに設定された洗浄水以外は水を流さないようになっている。又水封水は30ミリリットルと極めて少ない水量で使用者の用便時には使用と同時に排水路に流れる。成人の1回の尿量は250〜300ミリリットルでほぼ洗浄水と同量である。便器の排出口から直接取るか数台の便器を連結した排水路から集めても良い。2倍位に薄められていることが、流れ状態を良くし、小便がゲル化することも無く、100分の1の勾配で10mを流れて採取出来る。従って使用者は水洗便器として違和感無く使え、又使用の度に水が流れるのでボウル面からの臭気も上がらず、排水路からの臭気も便皿により遮断されていて心配ない。管理者の掃除の水洗便器と変わらない。
【0020】
流れている尿は洗浄水によって2倍程度に稀釈されて、流れている間に空気中のウレアーゼ酵素の作用によりアンモニア態のチッソに変わっている。この尿は臭気も相当にあるので土壌中に埋設された溜槽に貯溜し、そこから必要量をポンプアップして硝酸化装置に送ることが望ましい。この際溜槽の上に土壌が10センチもあれば、蓋の隙間から上がるアンモニアガスやチッソガスの臭気は土壌によって消滅し、臭気、ガス充満の心配なく尿硝化の目的に尿を使用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の1形態を例示している縦断面図
【図2】便皿ユニット取り外し型の拡大縦断面図
【図3】JIS規格水封部縦断面図
【符号の説明】
【0022】
1 小便器ボウル面
2 集水部材
3 遮蔽体
4 遮蔽体回転支点
5 重錘部
6 通水路
7 目皿
8 パッキング
9 吐水ノズル
10 給水装置
11 処理装置
12 赤外線センサー
21 筒状ケース体
22 集水部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水装置から洗浄水を給水可能なボウル面下位の尿落口に直管状の尿収集管を備え、その管の下面開口部に一定量の負荷により自動開閉可能な遮蔽体を備えることを特徴とする男子用超節水小便器。
【請求項2】
請求項1に於いて尿収集管及びその下面を塞ぐ遮蔽体とを一体化して形成し、これにカバーケースをつけ遮蔽体ユニットとなしそのユニットをボウル面側から取り外し自在に嵌め込むように形成したことを特徴とする男子用超節水小便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−252372(P2011−252372A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137704(P2010−137704)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000115865)リンフォース工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】