説明

画像ムラ見本データの作成方法、画像ムラの検査方法および画像ムラ見本データ作成システム

【課題】画像ムラ限度見本パネルの選定等に費やされる時間と労力を削減する。
【解決手段】画像ムラ見本データ作成方法ST100は、所定の良品基準に適合した液晶パネルを良品パネルとして準備するステップST101と、所定の画像ムラ基準に則って画像ムラが発生すると判定された液晶パネルを参考パネルとして準備するステップST102と、参考パネルの画像ムラをカメラで撮影するステップST103と、撮影画像を画像加工ソフトウェアで加工するステップST104と、加工画像を良品パネルに表示させるステップST105とを含む。ステップST104,ST105によって、良品パネルに表示される画像が所望の画像ムラを表現する画像になるように撮影画像を加工し、所望の画像ムラを表現するように加工された加工画像の画像データを画像ムラ見本データに採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルに発生する画像ムラの見本データを作成する方法およびシステムに関し、また、作成された画像ムラ見本データを利用した液晶パネルの画像ムラの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの表示品質を表す指標の一つとして、画像の表示ムラ(以下、画像ムラとも称する)がある。一般に、画像ムラの評価は、評価対象の液晶パネルを、許容限度の画像ムラを呈する見本用の液晶パネル(以下、画像ムラ限度見本パネル等とも称する)と比較することによって行われる。この比較は目視で行われることが多い。そして、画像ムラ限度見本パネルに比べて画像ムラのレベルが良好であれば、その評価対象の液晶パネルは良品として判定され、そうでなければ不良品として判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−201516号公報
【特許文献2】特開平2−93871号公報
【特許文献3】特開平3−160309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、画像ムラ限度見本パネルを設定するのは、煩わしいものである。具体的には、画像ムラ限度見本パネルは、製造された液晶パネルの中から当該見本にふさわしい液晶パネルを抽出することによって、決められる。したがって多数の製造品を選定する必要があり、この選定作業は時間と労力がかかるものである。
【0005】
また、一般に、液晶パネルを製造するメーカー(以下、パネルメーカー、パネル供給元メーカー等とも称する)と、当該液晶パネルを搭載した装置を製造するメーカー(以下、装置メーカー、パネル供給先メーカー等とも称する)との間で、画像ムラの判定基準の共通化、換言すれば共有化が行われる。この場合、両者が合意する画像ムラ限度見本パネルを選定しなければならず、時間と労力がかかる。
【0006】
ここで、特許文献1には、欠陥画素を全く含んでいない正常品である液晶パネルに、表示欠陥と同等の状態を疑似的に作り出すための電気信号を入力することによって、当該正常な液晶パネルに表示欠陥を表示させ、この擬似的な表示欠陥を見本にして検査を行う技術が開示されている。しかし、特許文献1の技術は、限度見本を必要とする液晶パネルの画面不良のうちで、欠陥の位置を画素のアドレスで特定可能な不良(例えば輝点欠陥等)にしか適用できない。したがって、特許文献1の技術は画像ムラの検査に利用するのは困難である。
【0007】
また、特許文献2,3には、液晶パネルの画質を定量的にかつ自動で検査しようとする技術が開示されている。しかし、特許文献2,3の技術は、液晶パネルの製造工程には適用可能と考えられるが、パネルメーカーと装置メーカーとの間で限度見本パネルを取り交わす場合には適用が困難である。これは、例えば輝度ムラ不良の場合、輝度やコントラスト等の数値で不良限度を決めても、そのような不良限度は実際の不具合映像と合致しない場合が多いからである。
【0008】
ここで、図5〜図7に、液晶パネルの画像ムラを例示する。
【0009】
図5は、コーナー光漏れを例示する概略図である。このような光漏れは液晶パネルのコーナー部分とその周辺との温度差で偏向板が歪むことによって発生する。
【0010】
図6は、LED輝度ムラを例示する概略図である。このような輝度ムラは、いわゆるエッジライト方式(サイドライト方式等とも称される)のLEDバックライトを採用した場合に、LEDの輝度ムラに起因して発生する。具体的には、LEDが配列された辺部の付近において、各LEDの正面付近は明るく視認され、隣接するLED間の領域は暗く視認される。
【0011】
図7は、液晶パネルの製造工程に起因する露光ムラを例示する概略図である。このような露光ムラは、液晶パネルのセルのパターン形成に使用する露光機の数等に起因して発生する。
【0012】
パネル供給元メーカーでは、このような画像ムラの不良判定は通常、次のように行われる。すなわち、画像ムラをカメラで撮影し、撮影画像をパソコンに取り込んで画像パターンまたは輝度パターンに変換し、変換したパターンを予め設定された不良判定のしきい値と比較することによって、不良判定が自動的に行われる。
【0013】
しかし、画像ムラは感覚的(すなわち視覚的)な特性であるので、画一的な数値判定では、その判定結果に疑義が生じる場合が多い。そのため自動判定だけではなく、パネルメーカーにおける最終検査工程では人による目視検査(換言すれば官能検査)を実施しているのが現状である。
【0014】
また、パネルメーカーと装置メーカーのそれぞれが同程度の画像ムラの限度見本パネルを利用することによって、両メーカーでの不良判定基準の共通化を図っている。
【0015】
限度見本パネルの共通化は一般に次のように行われる。まず、パネルメーカーが、製造品の中から不良限界に近いパネルを数枚選定し、さらにこの数枚のパネルの中から限度見本パネルを決定し、決定した限度見本パネルを装置メーカーに提供する。しかし、装置メーカーが、提供した限度見本パネルに合意しない場合、パネルメーカーは限度見本パネルを選び直して装置メーカーに提供する。このやりとりは装置メーカーの合意が得られるまで繰り返される。
【0016】
しかも、製造される多数の液晶パネルの中から、所望の限度見本パネルが必ず得られるとも限らない。
【0017】
本発明は、画像ムラ限度見本パネルの選定等に費やされる時間と労力を削減可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、所定の良品基準に適合した液晶パネルを良品パネルとして準備する良品パネル準備ステップと、所定の画像ムラ基準に則って画像ムラが発生すると判定された液晶パネルを参考パネルとして準備する参考パネル準備ステップと、前記参考パネルの前記画像ムラをカメラで撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップで取得した撮影画像を画像加工ソフトウェアで加工する画像加工ステップと、前記画像加工ステップで加工した加工画像を前記良品パネルに表示させる表示ステップとを備え、前記画像加工ステップおよび前記表示ステップによって、前記良品パネルに表示される画像が所望の画像ムラを表現する画像になるように前記撮影画像を加工し、前記所望の画像ムラを表現するように加工された前記加工画像の画像データを画像ムラ見本データに採用することを特徴とする、画像ムラ見本データの作成方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
上記の一態様によれば、画像ムラについての良品レベルと不良品レベルとの境界を例示する画像ムラ見本を画像加工によって作成するので、画像ムラ限度見本用の液晶パネルそのもの(すなわち実物)を選定する必要がない。したがって、そのような選定作業に費やす時間と労力を削減することができる。また、画像ムラ見本データは修正が容易であるので、パネルメーカーと装置メーカーとの間で判定基準の合意を得るための作業においても、時間と労力を削減することができる。その結果、迅速かつ正確に判定基準の合意に達することができる。
【0020】
本発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1に係る画像ムラ見本データの作成方法を概説するフローチャートである。
【図2】実施の形態1に係る画像ムラの検査方法を概説するフローチャートである。
【図3】実施の形態2に係る画像ムラ見本データの作成方法を概説するフローチャートである。
【図4】実施の形態3に係る画像ムラ見本データ作成システムを概説するブロック図である。
【図5】画像ムラの一例であるコーナー光漏れを示す概略図である。
【図6】画像ムラの一例であるLED輝度ムラを示す概略図である。
【図7】画像ムラの一例である露光ムラを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施の形態1>
図1に、実施の形態1に係る画像ムラ見本データの作成方法を概説するフローチャートを示す。図1に例示の方法ST100はステップST101〜ST107に大別される。
【0023】
ステップST101では良品パネルを準備し、ステップST102では参考パネルを準備する。ここでは良品パネル準備ステップST101を参考パネル準備ステップST102よりも先に行う場合を例示するが、ステップST101,ST102はいずれを先に実行しても構わない。また、良品パネル準備ステップST101は後述のステップST105までに行われればよく、参考パネル準備ステップST102は後述のステップST103までに行われればよい。
【0024】
ここで、良品パネルとは、予め規定された良品基準に則って良品であると判定された液晶パネルのことである。また、参考パネルは、予め規定された画像ムラ基準に則って画像ムラが発生すると判定された液晶パネルのことである。良品パネルと参考パネルは同じ画面仕様(解像度、画素配列等)を有するものとするが、画面仕様が同じであれば両パネルの画面サイズ、モデル等は同じであっても異なっていても構わない。
【0025】
良品パネルおよび参考パネルの選定は例えば目視判定によって行われる。後の説明から明らかになるが、参考パネルは、画像ムラについての良品レベルと不良品レベルとの境界を例示する、いわゆる画像ムラ限度見本パネルである必要はない。すなわち、画像ムラの視認具合には関係なく、例えばムラの種類、形状等の観点から見本として採用したい画像ムラが発生する液晶パネルを、参考パネルとして選定すればよい。かかる点に鑑みると、参考パネル準備ステップST102で利用する画像ムラ判定基準は、液晶パネルの製造工程における画像ムラ検査基準(すなわち出荷可能な品質か否かに関わる検査の基準)と異なっていてもよい。
【0026】
また、良品パネル準備ステップST101で利用する良品基準は、画像ムラに関する基準を少なくとも含むものとする。すなわち、当該良品基準は、本例では画像ムラに関する基準だけでもよいが、実際的には画像ムラだけでなく表示品質に関する全般的な基準を含むことが好ましい。また、後述する良品パネルの利用形態に鑑み、ここでは、ステップST101での良品基準が、液晶パネルの製造工程における良品検査基準(すなわち出荷可能な品質か否かに関わる検査の基準)と同レベルに設定される場合を例示する。
【0027】
ステップST103では、上記ステップST102で準備した参考パネルの画像ムラを、例えばCCDカメラで撮影する。撮影した画像はデジタル画像データとしてパーソナルコンピュータ(以下、PCとも称する)へ取り込まれる。ここでは汎用のPCを例示するが、本方法ST100で必要な機能を実現可能に構築された専用の装置を利用してもよい。
【0028】
撮影ステップST103では、参考パネルは適宜、駆動される。例えば、光漏れによる画像ムラ(図5参照)の撮影において、参考パネルがノーマリ・ホワイト型の液晶パネルである場合には全面黒表示になるように参考パネルを駆動する。これに対し、参考パネルがノーマリ・ブラック型の液晶パネルである場合、駆動をしなくても全面黒表示状態を得ることが可能である。また、画像ムラの種類によっては、全面黒表示、全面白表示、全面中間調表示、所定のテストパターン表示等を選択することで画像ムラを顕在化させることができる。
【0029】
ステップST104では、PCへ取り込んだ撮影画像(すなわち参考パネルの画像ムラの画像)を、PC上で作業者が加工する。具体的には、画像加工ソフトウェアをPCで実行し、作業者がPCの入力手段(キーボード、マウス等)によって加工内容等を入力し、作業者がPCの表示手段において加工状態等を確認することによって、画像加工ステップST104を行うことが可能である。画像加工ソフトウェアは、画像加工機能を有した一般的な画像編集ソフトウェア(Photoshop(登録商標)、Paint Shop Pro(登録商標)等)を利用してもよいし、あるいは、本方法ST100のために開発した専用のソフトウェアを利用してもよい。
【0030】
画像加工ステップST104では作業者が、撮影画像の全体または一部分について輝度または特定の色の階調(換言すれば重み付け)を増減させて、撮影画像から画像ムラの限度見本に相当する画像を作成する。具体的には、撮影画像に映し出された画像ムラが、所望の程度、すなわち画像ムラの限度見本として設定したい程度よりも軽い場合、輝度または特定の色の階調を増加させる。逆に、撮影された画像ムラが所望程度よりも悪ければ、上記階調を減少させる。また、露光ムラ(図7参照)のように階調差がある程度明確な画像ムラについては、画像の加工によって、輝度差の境界部が強調されてしまう場合がある。そのような場合は境界付近の階調データに間引き処理を行えばよい。
【0031】
ステップST105では、加工後の画像を、上記ステップST101で準備した良品パネルにおいて表示する。具体的には、加工後の画像のデジタルデータをPCから、液晶パネルの駆動装置へ供給し、当該パネル駆動装置が、受け取った画像データに従って液晶パネル(ここでは良品パネル)を駆動することによって、加工済み画像が良品パネルに表示される。
【0032】
ステップST106では、作業者が、良品パネルに表示される画像が、画像ムラの限度見本としたい画像を表現しているか否かを目視で確認する。その結果、所望の画像ムラが表現されていると判断した場合、その加工済みの画像のデータを画像ムラ見本データとして採用し、当該画像ムラ見本データを外部記憶媒体(USBメモリ、光ディスク、磁気ディスク等)に保存する(ステップST107)。これに対し、作業者は、加工判断ステップST106において所望の画像ムラが表現されていないと判断した場合、再度、画像加工を行う。すなわち、画像ムラの限度見本としたい画像が良品パネル上で得られるまで、作業者はステップST104〜ST106を繰り返す。
【0033】
なお、CCDカメラから出力される画像信号における画像データの形式と、画像加工ソフトウェアで取り扱い可能なデータ形式と、液晶パネル駆動用の画像データの形式とは、異なる場合がある。例えば液晶パネル駆動用の画像データは液晶パネルの画面仕様(解像度、画素配列等)に応じて決まり、例えばビットマップ形式が用いられる。上記各種データ形式は既知であるため、データ形式を相互に変換可能である。例えばそのような変換の処理内容をPCが実行するプログラムに記述することによって、当該変換をソフトウェア的に実行可能である。
【0034】
当該方法ST100で作成された画像ムラ見本データは、パネルメーカーにおける画像ムラ検査用に利用できるだけでなく、パネルメーカーと装置メーカーとの間で取り交わす画像ムラ判定基準用に利用することもできる。
【0035】
図2に、上記方法ST100で作成された画像ムラ見本データを利用した、液晶パネルの画像ムラの検査方法を概説するフローチャートを示す。図2に例示の検査方法ST200はステップST201〜ST203に大別される。
【0036】
ステップST201では、上記方法ST100で作成された画像ムラ見本データが保存されている外部記憶媒体を準備し、当該画像ムラ見本データをPCに読み込む。ここでは汎用のPCを例示するが、本方法ST200で必要な機能を実現可能に構築された専用の装置を利用してもよい。
【0037】
ステップST202では、見本データ取得ステップST201で読み込んだ画像ムラ見本データによって提供される画像(以下、見本画像とも称する)を液晶パネルに表示させる。具体的には、画像ムラ見本データをPCからパネル駆動装置へ供給し、当該パネル駆動装置が画像ムラ見本データに従って液晶パネルを駆動することによって、見本画像が表示される。
【0038】
なお、見本画像を表示させる液晶パネルは、上記の良品パネル準備ステップST101で準備された良品パネルそのものであってもよいし、あるいは、当該良品パネルと同じ画面仕様を有する他の良品の液晶パネルであってもよい。なお、当該他の液晶パネルの画面サイズ、モデル等は、上記ステップST101で準備された良品パネルと同じであっても異なっていても構わない。但し、見本表示ステップST202で見本画像を表示させる液晶パネルは、少なくとも画像ムラの発生が無いことが求められる。
【0039】
ステップST203では、表示された見本画像と、検査対象の液晶パネルの表示状態とを比較することによって、検査対象の液晶パネルの画像ムラを評価する。本評価ステップST203では、検査対象の液晶パネルは適宜、画像ムラの撮影時における参考パネルと同様に駆動される。
【0040】
なお、上記方法ST100,ST200では画像ムラ見本データの受け渡しを外部記憶媒体で行うものとしたが、LAN、WAN等のネットワーク通信によって画像ムラ見本データを送受信してもよい。
【0041】
また、上記方法ST100,ST200は画像ムラの種類に関係なく実施可能である。
【0042】
上記の画像ムラ見本データ作成方法ST100によれば、画像ムラについての良品レベルと不良品レベルとの境界を例示する画像ムラ限度見本を画像加工によって作成するので、画像ムラ限度見本用の液晶パネルそのもの(すなわち実物)を選定する必要がない。したがって、そのような選定作業に費やす時間と労力を削減することができる。
【0043】
また、実物の液晶パネルで画像ムラ限度見本を設定する場合、所望の画像ムラを有した液晶パネルが見つからないこともある。しかし、画像ムラ見本データ作成方法ST100によれば、そのような状況を回避することができる。
【0044】
また、画像ムラ見本データは修正が容易であるので、パネルメーカーと装置メーカーとの間で判定基準の合意を得るための作業においても、時間と労力を削減することができる。その結果、迅速かつ正確に判定基準の合意に達することができる。
【0045】
また、画像ムラ見本を液晶パネルではなく画像データで設定することにより、画像ムラ見本データ作成方法ST100で画像ムラ見本データの確認に用いる液晶パネルと、画像ムラ検査方法ST200で画像ムラ見本データを表示させる液晶パネルとは、同一である必要性が無い。
【0046】
このため、例えば、パネルメーカーは画像ムラ見本データだけを装置メーカーに提供すれば済む。仮に、パネルメーカー側で利用する液晶パネルと、装置メーカー側で利用する液晶パネルとで、画像ムラの再現性に差異が生じる場合であっても、上記のように画像ムラ見本データは修正が容易である。このため、限度見本パネルの実物の選定および送付を繰り返すよりも、迅速で安価に対処可能である。
【0047】
また、画像ムラ見本データによれば、複数の検査ライン(パネルメーカー、装置メーカーのいずれの検査ラインであってもよい)で同じ限度見本を共有できる。したがって、複数の検査ラインで数少ない限度見本の液晶パネルを利用する場合に比べて、検査の均質化、効率化等を図ることができる。
【0048】
<実施の形態2>
実施の形態1では、カメラで撮影した画像を利用して画像ムラ見本データを作成する方法を説明した。これに対し、実施の形態2では、カメラ撮影をせずに画像ムラ見本データを作成する方法を説明する。実施の形態2に係る画像ムラ見本データ作成方法は、例えば液晶パネルの製造工程に起因する画像ムラに対して適用可能である。
【0049】
例えば図7に例示の画像ムラは、液晶パネルのセルのパターン形成における露光ムラに起因する。液晶パネル用基板のセルパターンの形成工程では、液晶パネル1枚分の領域に対して、複数台の露光機が利用される場合がある。この場合、液晶パネル1枚分の領域当たりの露光機の数、それらの露光機の間隔、露光機1台当たりの露光範囲の寸法等の要因に応じて、図7に例示するような特徴的な形状の画像ムラ(ここでは繰り返しパターンの画像ムラ)が発生する。
【0050】
つまり、露光機の数等の要因は製造設備から既知であるため、そのような既知の要因から1枚の液晶パネルに現れる露光ムラの形状を表示ドット単位で特定することが可能である。
【0051】
図3に、上記観点に基づいた画像ムラ見本データ作成方法を概説するフローチャートを示す。図3に例示の方法ST300は、実施の形態1で説明したステップST101,ST104〜ST107と、描画ステップST301とを含んでいる。図3に例示のフローでは、描画ステップST301はステップST101,ST104の間に行われ、ステップST104〜ST107は実施の形態1と同様に行われる。
【0052】
描画ステップST301では、例えば、作業者が画像描画ソフトウェアを使ってPC上で画像ムラをビットマップ形式で描画する。具体的には、液晶パネルの製造工程に起因する画像ムラを、製造工程において当該画像ムラを発生させる既知の要因に基づいて、描画する。
【0053】
なお、描画ステップST301は、画像加工ステップST104と同様に、PCの入力手段、表示手段等を利用して実施可能である。画像描画ソフトウェアは、描画機能を有した一般的な画像編集ソフトウェアを利用してもよいし、あるいは、本方法ST300のために開発した専用のソフトウェアを利用してもよい。また、描画ステップST301で利用するソフトウェアと、画像加工ステップST104で利用するソフトウェアとは、同じソフトウェアであってもよいし、別のソフトウェアであってもよい。
【0054】
描画ステップST301で作成した画像は、画像加工ステップST104に供される。つまり、当該方法ST300では、カメラで撮影した画像の代わりに、作業者が描画した画像を出発画像として画像加工ステップST104が行われる。
【0055】
画像ムラ見本データ作成方法ST300によれば、実施の形態1の画像ムラ見本データ作成方法ST100と同様の効果を得ることができる。特に、本方法ST300によれば、参考パネルを利用しないので、参考パネルの選定作業に費やす時間と労力を削減することができる。
【0056】
なお、本方法ST300によって作成された画像ムラ見本データは、既述の画像ムラ検査方法ST200(図2参照)に利用可能である。
【0057】
<実施の形態3>
実施の形態3では、実施の形態1で説明した画像ムラ見本データの作成方法ST100を実現可能なシステムを説明する。図4に、実施の形態3に係る画像ムラ見本データ作成システムを概説するブロック図を示す。図4に例示の画像ムラ見本データ作成システム30は、カメラ31と、画像加工装置32と、パネル駆動装置33とを含んでいる。なお、図4には、説明のために、参考パネル10と、参考パネル10を駆動するためのパネル駆動装置11と、良品パネル20と、外部記憶媒体40も図示している。
【0058】
カメラ11は、参考パネル10の画像ムラの撮影に利用される。すなわち、カメラ11によって、実施の形態1で例示した撮影ステップST103が行われる。カメラ11によって撮影された画像のデータ51は、画像加工装置32へ送られる。
【0059】
画像加工装置32は、カメラ11から取得した画像51を加工する手段を提供する装置であり、実施の形態1で例示した画像加工ステップST104を実行可能な機能を有している。
【0060】
また、画像加工装置32は、加工した画像のデータ52を出力可能に構成されている。具体的には、加工画像データ52が画像加工装置32からパネル駆動装置33へ出力され良品パネル20の駆動に供されることによって、実施の形態1で例示した表示ステップST105が行われる。また、画像ムラ見本データ54として決定された加工画像データ52が外部記憶媒体40へ出力されることによって、実施の形態1で例示したデータ保存ステップST107が行われる。
【0061】
画像加工装置32は、例えば、実施の形態1で例示したようにPCと画像加工ソフトウェアによって構成可能である。あるいは、汎用のPCを利用するのではなく、画像ムラ見本データの作成のために、画像加工機能を搭載した専用機を準備してもよい。
【0062】
パネル駆動装置33は、良品パネル20を駆動するために設けられている。すなわち、パネル駆動装置33は、画像加工装置32から取得した加工済み画像データ52に従って良品パネル20用の駆動信号53を生成し、生成したパネル駆動信号53を良品パネル20に供給する。これにより、画像データ52によって提供される画像が良品パネル20に表示される。すなわち、パネル駆動装置33は、実施の形態1で例示した表示ステップST105に利用される。
【0063】
なお、参考パネル10用に設けられたパネル駆動装置11を、画像ムラ見本データ作成システム30に含めても構わない。
【0064】
画像ムラ見本データ作成システム30によれば、画像ムラ見本データの作成方法ST100を実現することができ、その結果、当該方法ST100による効果を奏することができる。
【0065】
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0066】
10 参考パネル、11 パネル駆動装置、20 良品パネル、30 画像ムラ見本データ作成システム、31 カメラ、32 画像加工装置、33 パネル駆動装置、40 外部記憶媒体、51 撮影画像(撮影画像データ)、52 加工画像(加工画像データ)、53 パネル駆動信号、54 画像ムラ見本データ、ST100,ST300 画像ムラ見本データの作成方法、ST101 良品パネル準備ステップ、ST102 参考パネル準備ステップ、ST103 撮影ステップ、ST104 画像加工ステップ、ST105 表示ステップ、ST106 加工判断ステップ、ST107 保存ステップ、ST200 画像ムラの検査方法、ST201 見本データ取得ステップ、ST202 見本表示ステップ、ST203 評価ステップ、ST301 描画ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の良品基準に適合した液晶パネルを良品パネルとして準備する良品パネル準備ステップと、
所定の画像ムラ基準に則って画像ムラが発生すると判定された液晶パネルを参考パネルとして準備する参考パネル準備ステップと、
前記参考パネルの前記画像ムラをカメラで撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで取得した撮影画像を画像加工ソフトウェアで加工する画像加工ステップと、
前記画像加工ステップで加工した加工画像を前記良品パネルに表示させる表示ステップと
を備え、
前記画像加工ステップおよび前記表示ステップによって、前記良品パネルに表示される画像が所望の画像ムラを表現する画像になるように前記撮影画像を加工し、
前記所望の画像ムラを表現するように加工された前記加工画像の画像データを画像ムラ見本データに採用することを特徴とする、画像ムラ見本データの作成方法。
【請求項2】
所定の良品基準に適合した液晶パネルを良品パネルとして準備する良品パネル準備ステップと、
前記液晶パネルの製造工程に起因する画像ムラを画像描画ソフトウェアで描画する描画ステップと、
前記描画ステップで取得した描画画像を画像加工ソフトウェアで加工する画像加工ステップと、
前記画像加工ステップで加工した加工画像を前記良品パネルに表示させる表示ステップと
を備え、
前記画像加工ステップおよび前記表示ステップによって、前記良品パネルに表示される画像が所望の画像ムラを表現する画像になるように前記描画画像を加工し、
前記所望の画像ムラを表現するように加工された前記加工画像の画像データを画像ムラ見本データに採用することを特徴とする、画像ムラ見本データの作成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作成方法によって作成された画像ムラ見本データを利用した液晶パネルの画像ムラの検査方法であって、
前記画像ムラ見本データを取得する見本データ取得ステップと、
請求項1または請求項2に記載の前記良品パネル準備ステップで準備された前記良品パネルまたは他の良品の液晶パネルに前記画像ムラ見本データよる画像を見本画像として表示させる見本表示ステップと、
前記見本画像と検査対象の液晶パネルの表示状態とを比較することによって前記検査対象の液晶パネルの画像ムラを評価する評価ステップと
を備えることを特徴とする、画像ムラの検査方法。
【請求項4】
液晶パネルに発生する画像ムラを撮影するために設けられたカメラと、
前記カメラによって撮影された画像を加工する手段を作業者に提供し、加工後の画像の画像データを出力する画像加工装置と、
所定の良品基準に適合した良品の液晶パネルを駆動するために設けられており、前記画像加工装置から出力される前記画像データに従って前記良品の液晶パネルを駆動するパネル駆動装置と
を備えることを特徴とする、画像ムラ見本データ作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233709(P2012−233709A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100523(P2011−100523)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】