画像処理装置、表示装置及び画像処理方法
【課題】4色のサブ画素によって色表示を行う場合において、白色に対応するサブ画素の色及び位置を利用して視感上の画質の向上を図る。
【解決手段】表示装置は、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の4色のサブ画素によって画像を表示する。サブ画素Gは、サブ画素Wに対して対角線方向に位置する。また、サブ画素Rは、サブ画素WとX方向(図中の横方向)に対して隣り合い、サブ画素Bは、サブ画素WとY方向(図中の縦方向)に対して隣り合う。この構成において、Rの画像信号は、Y方向の高周波成分が制限され、Bの画像信号は、X方向の高周波成分が制限される。また、Gの画像信号とWの画像信号は、それぞれのサブ画素を同色のサブ画素であるとみなし、それぞれに対して同じような帯域制限を行う。
【解決手段】表示装置は、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の4色のサブ画素によって画像を表示する。サブ画素Gは、サブ画素Wに対して対角線方向に位置する。また、サブ画素Rは、サブ画素WとX方向(図中の横方向)に対して隣り合い、サブ画素Bは、サブ画素WとY方向(図中の縦方向)に対して隣り合う。この構成において、Rの画像信号は、Y方向の高周波成分が制限され、Bの画像信号は、X方向の高周波成分が制限される。また、Gの画像信号とWの画像信号は、それぞれのサブ画素を同色のサブ画素であるとみなし、それぞれに対して同じような帯域制限を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4色のサブ画素によって色表示を行う場合の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
3原色を用いた表示装置における画素の配置には、ストライプ配列やデルタ配列がある(例えば、特許文献1参照)。このような表示装置においては、3個のサブ画素によって1画素が構成される。また、ベイヤー(Bayer)配列は、色数は3色であるが、4個のサブ画素によって1画素を構成するものであり、G(緑)のサブ画素を2個、R(赤)、B(青)のサブ画素をそれぞれ1個用い、これらのサブ画素を縦方向及び横方向に2個ずつ配置したものである。
【0003】
画素がベイヤー配列によって構成された表示装置においては、一般に、入力された画像データの画素数の1/4の画素数の画像データによって色表示が行われる。この場合、入力された画像データの解像度よりも実際に用いられる画像データの解像度の方が低くなるため、画像信号の周波数帯域を制限するフィルター処理を実行し、折り返し雑音に起因するモアレを抑制することが行われる。例えば、RやBの画像信号の場合、高周波成分に起因するモアレを防ぐためには、縦方向及び横方向のいずれの周波数帯域も半分(すなわち1/2)に制限する必要がある。なお、Gの画像信号は、サブ画素の数がRやBのサブ画素に比べて2倍であるため、帯域の制限幅はこれらよりも少なくて済む。
【0004】
一方、色再現性や明るさの向上を目的に、4原色(ないしそれ以上の原色)を用いて色表示を行う場合がある。例えば、特許文献2には、ベイヤー配列におけるGのサブ画素の一方をW(白)やC(シアン)に置き換え、4色のサブ画素によって色表示を行う画像表示装置が開示されている。また、特許文献3には、4原色以上のカラー画像表示手段を有する場合において各色のカラー画像信号を算出するための技術が開示されている。なお、ここでいう「原色」は、(加法)混色の元となる色のことであり、光の3原色に限定されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−006703号公報
【特許文献2】特開2006−267541号公報
【特許文献3】特開2000−338950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
4色のサブ画素によって色表示を行う場合において、それぞれの色毎に独立に画像信号の帯域を制限すると、いずれのサブ画素の画像信号も縦方向及び横方向双方の周波数帯域が半分に制限される。しかし、このような帯域制限を行うと、元の画像から失われてしまう情報が多くなってしまう。
そこで、本発明は、4色のサブ画素によって色表示を行う場合において、白色に対応するサブ画素の色及び位置を利用して視感上の画質の向上を図ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る画像処理装置は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に画像信号を供給するための画像処理装置であって、白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第1フィルター処理部と、前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第2フィルター処理部と、前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第3フィルター処理部と、前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第4フィルター処理部とを備える。
この画像処理装置によれば、白色表示に対応する第1サブ画素と他のサブ画素との配置に応じて画像信号の周波数帯域が制限され、視感上の画質の向上を図ることが可能である。
【0008】
好ましい態様において、前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部の少なくとも一方は、入力される画像信号の周波数帯域のうちの通過させる帯域以外の帯域であって、かつ前記第1フィルタ処理部が通過させる帯域を、位相を反転させて通過させる。
この態様によれば、第1サブ画素の表示に起因するモアレや偽色を抑制することが可能である。
【0009】
別の好ましい態様において、前記画像処理装置は、位相が反転されて通過される前記帯域の周波数応答が、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素の輝度に応じて定まる。
この態様によれば、モアレや偽色の抑制をサブ画素の特性に応じて行うことが可能である。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、前記第2フィルター処理部は、緑色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行し、前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部は、各々が赤色又は青色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行する。
この態様によれば、(人間の目の分光感度が高い)緑色の画像の解像度を赤色や青色よりも高めることが可能である。
【0011】
本発明の他の態様に係る表示装置は、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素によって構成され、マトリクス状に配置される複数の画素を有する表示パネルと、前記画像処理装置とを備える。
この表示装置によれば、白色表示に対応する第1サブ画素と他のサブ画素との配置に応じて画像信号の周波数帯域が制限され、視感上の画質の向上を図ることが可能である。
【0012】
本発明の他の態様に係る画像処理方法は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に供給される画像信号に対して、白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の双方の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と、前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と実行する。
この画像処理方法によれば、白色表示に対応する第1サブ画素と他のサブ画素との配置に応じて画像信号の周波数帯域が制限され、視感上の画質の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】表示システムの構成を示すブロック図。
【図2】液晶パネルの画素の配置を示す図。
【図3】画像処理部の構成を示すブロック図。
【図4】各色のフィルターの特性を示す図。
【図5】比較例として示すフィルターの特性を示す図。
【図6】比較例として示すフィルターの特性を示す図。
【図7】ベイヤー配列のサブ画素によって形成される格子を示す図。
【図8】モアレの原因となる周波数帯域を説明するための図。
【図9】R及びBのフィルターとその周波数特性とを説明するための図。
【図10】R及びBのフィルターを例示する図。
【図11】サブ画素の配置を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である表示システム10の構成を示すブロック図である。同図に示す表示システム10は、画像処理装置100と、プロジェクター200と、スクリーン300とを備え、外部装置から供給された画像データに応じた画像をスクリーン300に投写するものである。外部装置は、例えばパーソナルコンピューターであるが、デジタルスチルカメラなどであってもよい。なお、外部装置が供給する画像データは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色成分の画像信号によって各画素が表現されたデータである。
【0015】
プロジェクター200は、単板型のプロジェクターであって、光源210と、1つの液晶パネル220と、投写レンズ230とを備える。液晶パネル220は、入射する光を変調する光変調器として機能し、画像処理装置100から供給される画像データに応じた態様で光の透過状態を変化させることによって、光源210から照射された光の透過の度合いを制御する。投写レンズ230は、液晶パネル220を透過した光をスクリーン300に投写する。
【0016】
液晶パネル220は、4個のサブ画素によって1画素を構成し、カラーフィルターなどによって各サブ画素の光の透過状態が異なる平板状の表示パネルである。それぞれのサブ画素は、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の4色の表示に対応する。液晶パネル220の画素の配置は、ベイヤー配列における2個のGのサブ画素のうちの1個をWのサブ画素に置き換えたものである。なお、ここでいう白(白色)とは、R、G、Bのすべての色成分を適当な割合で含むものであれば、多少黄色がかっていたりグレーがかっていたりしてもよい。ただし、R、G、B、Wのサブ画素の輝度をそれぞれYR、YG、YB、YWとした場合に、これらがYW=YR+YG+YBという関係を満たすのが理想的であるため、本実施形態においてはこのような関係が満たされているものとする。
【0017】
図2は、液晶パネル220の画素の配置を示す図である。液晶パネル220は、図中のX方向と、これに直交するY方向とにサブ画素が並んで配置されており、X方向に隣り合う2個のサブ画素と、この2個のサブ画素とY方向に隣り合う2個のサブ画素とによって1画素が構成されるものである。液晶パネル220は、X方向に沿った奇数行にはGとBに対応するサブ画素が順番に並んでおり、X方向に沿った偶数行にはRとWに対応するサブ画素が順番に並んでいる。また、液晶パネル220は、Y方向に沿った奇数列にはGとRに対応するサブ画素が順番に並んでおり、Y方向に沿った偶数列にはBとWに対応するサブ画素が順番に並んでいる。なお、ここにおいて、X方向が本発明における第1方向に相当し、Y方向が本発明における第2方向に相当する。
【0018】
ここでは、各サブ画素は同サイズの正方形であり、それぞれの間隔がX方向及びY方向のいずれにも等しいとする。このようにすると、1画素を構成する4個のサブ画素は、正方形状に配置されていることになる。液晶パネル220は、このような正方形状の画素がX方向及びY方向にマトリクス状に配置されて構成される。ここにおいて、Gのサブ画素は、Wのサブ画素からみて対角線方向に位置し、Bのサブ画素とX方向に隣り合うとともに、Rのサブ画素とY方向に隣り合う。また、Rのサブ画素は、Wのサブ画素とX方向に隣り合うとともに、Gのサブ画素とY方向に隣り合う。また、Bのサブ画素は、Wのサブ画素とY方向に隣り合うとともに、Gのサブ画素とX方向に隣り合う。
【0019】
Wのサブ画素は、白色表示に対応するサブ画素であり、白色表示に対応する画像信号に応じて光の透過状態を変化させる。同様に、R、G、Bのサブ画素は、それぞれ赤色表示、緑色表示、青色表示に対応するサブ画素であり、それぞれの色の表示に対応する画像信号に応じて光の透過状態を変化させる。液晶パネル220のこれらのサブ画素は、図示せぬ駆動回路によって駆動されて光の透過状態を変化させる。
【0020】
以下においては、白色表示に対応するサブ画素のことを「サブ画素W」、サブ画素Wを表示させる画像信号のことを「W信号」、というように、対応する色を付記することによって各色に対応するサブ画素及び画像信号を区別するものとする。ここにおいて、サブ画素Wは、第1サブ画素に相当し、サブ画素Gは、第2サブ画素に相当する。また、サブ画素Rは、第3サブ画素に相当し、サブ画素Bは、第4サブ画素に相当する。
【0021】
画像処理装置100は、外部装置から画像データを取得し、これをプロジェクター200での表示に適した画像データに変換して供給する。すなわち、画像処理装置100は、R、G、Bの3色の画像信号を含んだ画像データからR、G、B、Wの4色の画像信号を含んだ画像データを生成し、これをプロジェクター200に供給する。
【0022】
画像処理装置100は、より詳細には、入力部110と、画像処理部120と、出力部130とを備える。入力部110は、R、G、Bの3色の画像信号を含む画像データを外部装置から取得し、画像処理部120に入力する。画像処理部120は、画像信号に対して後述する画像処理を実行することによってR、G、B、Wの4色の画像信号を生成し、これを画像データとして出力部130に供給する。出力部130は、画像処理部120によって生成された画像データをプロジェクター200に供給する。
【0023】
図3は、画像処理部120の構成を示すブロック図である。画像処理部120は、同図に示すように、色変換処理部121と、フィルター処理部122と、間引き処理部123とを備える。また、フィルター処理部122は、より詳細には、フィルター処理部122R、フィルター処理部122G、フィルター処理部122B及びフィルター処理部122Wを含んで構成される。
【0024】
色変換処理部121は、R、G、Bの3色の画像信号をR、G、B、Wの4色の画像信号に変換する。色変換処理部121は、周知の方法(例えば、特許文献3に開示された方法)で画像信号を変換することが可能である。画像信号は、例えば、輝度(すなわち明るさ)を256階調で表現する8ビットのデータであるが、階調数がこれに限定されるわけではない。
【0025】
フィルター処理部122は、R、G、B、Wの4色の画像信号に対してフィルター処理を実行する。フィルター処理部122は、より詳細には、フィルター処理部122R、122G、122B及び122Wを含む。フィルター処理部122R、122G、122B及び122Wは、それぞれ、符号に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行する。例えば、フィルター処理部122Rは、R信号に対してフィルター処理を実行する。フィルター処理部122Wは、第1フィルター処理部に相当し、フィルター処理部122Gは、第2フィルター処理部に相当する。また、フィルター処理部122Rは、第3フィルター処理部に相当し、フィルター処理部122Bは、第4フィルター処理部に相当する。
【0026】
フィルター処理部122は、輝度リニアな信号(信号の値の変化に対して実際の輝度の変化が線形な信号)に対してフィルター処理を実行する。入力される画像信号が輝度リニアでない場合、フィルター処理部122は、画像信号が輝度リニアになるようにこれを変換してからフィルター処理を実行し、フィルター処理の実行後に逆変換を行ってガンマ値を元に戻す。例えば、画像信号の色空間がsRGBで定義されている場合、そのガンマ値は「2.2」であるため、画像信号が輝度リニアではない。この場合、フィルター処理部122は、画像信号のガンマ値が「2.2」から「1.0」になるようにガンマ変換を実行し、その後、フィルター処理を実行した画像信号に対して、ガンマ値が「1.0」から「2.2」になるようにガンマ変換を再度実行する。
【0027】
間引き処理部123は、フィルター処理部122によって帯域制限された各色の画像信号の画素数を減じる間引き処理を実行する。間引き処理部123は、各色の画像信号の画素数を、X方向及びY方向のそれぞれについて1/4に減じる。すなわち、間引き処理部123は、1面が4M×4N画素の画像データをM×N画素の画像データに変換する。ただし、間引き処理部123による変換後の画像データは、1画素が4個のサブ画素によって構成されるデータである。つまり、変換前の画像データの画素数と変換後の画像データのサブ画素の総数とを比較すると、前者は後者の4倍(X方向に2倍、Y方向に2倍)である。
【0028】
表示システム10の構成は、以上のとおりである。表示システム10は、この構成のもと、画像処理装置100によって3色(RGB)の4M×4N画素の画像データを4色(RGBW)のM×N画素の画像データに変換し、プロジェクター200によって画像データに応じた画像をスクリーン300に表示する。このとき、フィルター処理部122は、プロジェクター200における液晶パネル220の構成に基づいてフィルター処理を実行する。
【0029】
フィルター処理部122R、122G、122B及び122Wにより実行されるフィルター処理は、サブ画素の配置に応じて決められている。具体的には、各色のフィルター処理は、当該色のサブ画素のX方向及びY方向の間隔に応じた態様で、それぞれの方向の周波数帯域を制限し、制限されるべき帯域においてゲインを0にするものである。なお、ここでいう周波数とは、画像の空間周波数のことである。本実施形態のフィルター処理は、特に、サブ画素Wによる表示(すなわち白色表示)がRGB各色の色成分を含んでいることを利用している点に特徴を有する。
【0030】
図4は、本実施形態の各色のフィルターの特性を示す図である。また、図5及び図6は、本実施形態の比較例として示すフィルターの特性であり、図5がベイヤー配列(本実施形態のサブ画素Wをサブ画素Gに置き換えたもの)において想定される一般的なフィルターの特性を示し、図6が本実施形態と同様の配置のサブ画素を用いた場合の他のフィルターの特性を示すものである。なお、同図において、横軸(fx)は、X方向の周波数を表し、縦軸(fy)は、Y方向の周波数を表している。また、同図において、実線で示される正方形は、入力される画像信号の周波数帯域を表し、ハッチングで示された部分は、フィルターが通過させる帯域を表している。
【0031】
図5に示すように、ベイヤー配列においては、サブ画素Rとサブ画素BについてはX方向とY方向の双方の帯域が低域側の半分に制限されるのが一般的である。なぜならば、サブ画素Rとサブ画素Bは、いずれも、X方向とY方向のいずれにも1個おきに配置されており、入力された画像信号の半分の解像度でしか画像を表現できないからである。一方、サブ画素Gに対するフィルターは、サブ画素Gが1画素内に2個あるため、制限する帯域をサブ画素R又はサブ画素Bの半分にすることができる。具体的には、G信号に対して適用されるフィルターは、X方向とY方向の双方の周波数が高くなる領域をカットするように構成される。
【0032】
図7は、ベイヤー配列のサブ画素によって形成される格子を示す図である。同図に示すように、サブ画素Gにより構成される格子は、サブ画素R(又はサブ画素B)により構成される格子よりも1辺が短い正方形となり、かつ、サブ画素R(又はサブ画素B)により構成される格子に対して45°傾いた形状となる。また、各格子の辺の長さを、サブ画素Gの場合とサブ画素R(又はサブ画素B)の場合とで比較すると、前者は後者の√2/2(2の平方根を2で除した数)倍である。したがって、ベイヤー配列においては、G信号ではより高解像度の表示が可能であり、G信号の通過帯域をR信号又はB信号の通過帯域よりも広くすることが可能である。
【0033】
一方、本実施形態においては、図4に示すように、G信号及びW信号に対して適用されるフィルターを図7のベイヤー配列におけるG信号に対して適用されるフィルターと同一のものとしている。このような帯域制限を行う理由は、サブ画素Wによる表示がG成分を含んでいるためである。本実施形態においては、サブ画素Wをサブ画素Gとみなして、G信号及びW信号に対して適用されるフィルターが決められている。
【0034】
同様に、サブ画素Wによる表示は、R成分やB成分をも含んでいる。本実施形態においては、R信号及びB信号に対して適用されるフィルターの特性についても、このことを利用して決められている。具体的には、サブ画素Wをサブ画素Rとみなした場合、サブ画素RはX方向には隙間なく(他のサブ画素を挟むことなく)配置されることになり、入力された画像信号と同様の解像度で再現可能であるため、当該方向の帯域制限を行わないようにフィルターが構成されている。一方、サブ画素Wをサブ画素Rとみなした場合であっても、サブ画素RはY方向には1画素おきに配置されるため、当該方向の帯域は図5の場合と同様に制限される。
【0035】
なお、サブ画素Wをサブ画素Bとみなした場合のサブ画素Bの配置は、サブ画素Wをサブ画素Rとみなした場合のサブ画素Rの配置を90°回転させたものと同様になる。そのため、本実施形態においてB信号に対して適用されるフィルターは、R信号に対して適用されるフィルターの特性のX方向とY方向を入れ替えた特性となっている。
【0036】
このように、本実施形態の各色のフィルターは、R信号についてはY方向の帯域のみをサブ画素Rの間隔に応じた態様で制限し、B信号についてはX方向の帯域のみをサブ画素Bの間隔に応じた態様で制限する。また、G信号及びW信号に対するフィルターは、サブ画素G及びサブ画素Wの双方を同一視して組み合わせた場合のサブ画素の配置に応じた態様で各信号の帯域を制限する。つまり、本実施形態においては、サブ画素Wがサブ画素R、サブ画素G及びサブ画素Bのいずれとも光学的性質を共通にする要素が含まれることを利用し、各色の画像信号の周波数帯域を図5や図6の比較例の場合よりも広く確保できるようにしているのである。
【0037】
本実施形態のフィルターを図6のフィルターと比較すると、帯域の制限幅に相違がある。具体的には、R信号とB信号は、サブ画素Wをサブ画素R又はサブ画素Bとみなすことによって、X方向又はY方向のいずれかの制限が不要になるため、通過する帯域幅が2倍になる。また、G信号とW信号は、サブ画素Wをサブ画素Gとみなすことによって、それぞれを別のサブ画素として扱わなくてもよくなるため、図5のベイヤー配列の場合と同様の帯域制限にすることができる。
【0038】
したがって、本実施形態の表示システム10によれば、各色の画像信号に対して独立に(すなわち、他色のサブ画素の位置を考慮せずに)帯域制限を施す場合に比べ、帯域の制限幅を少なくすることが可能であるとともに、サブ画素Wに代えてサブ画素Gを用いる場合に比べ、投写される画像の輝度を向上させることが可能である。よって、表示システム10によれば、図5及び図6のいずれの比較例の場合よりも視感上の画質を向上させることが可能である。
【0039】
[第2実施形態]
本実施形態は、画像信号に対するフィルター処理が異なる点を除き、上述した第1実施形態と共通の構成を有するものである。そこで、本実施形態においては、第1実施形態と共通する構成要素については第1実施形態で用いた符号を用いることとし、重複する説明を適宜省略するものとする。
【0040】
本実施形態は、第1実施形態の構成において発生する可能性があるモアレや偽色を抑制することによって、いわゆる解像感を向上させ、視感上の画質をさらに向上させるものである。第1実施形態の構成においてモアレや偽色が発生する原理は、具体的には以下のとおりである。
【0041】
フィルター処理後のR信号又はB信号は、W信号において制限されていない周波数帯域の情報が失われていたり、あるいはW信号において制限されている周波数帯域の情報が含まれていたり、というように、情報として含まれている周波数帯域がW信号と相違している。W信号に含まれ、R信号又はB信号に含まれない周波数帯域の情報は、ある観点からみれば余分な情報ともいえる。かかる情報は、その周波数帯域がナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)を超えているため、折り返し雑音となってモアレを生じさせる。ここにおいて、サンプリング周波数は、入力された画像信号の1画素のサイズを基準にして定められる。なお、フィルター処理後のG信号は、情報として含まれている周波数帯域がW信号と同様であるため、モアレの原因にはならない。
【0042】
また、第1実施形態の構成において、このようなモアレは、R又はBの色成分のみに発生する。すなわち、第1実施形態の構成において生じるモアレは、色付きのモアレである。それゆえ、第1実施形態の構成において、特に高周波成分を含む画像を表示させようとした場合には、いわゆるエッジ(輪郭)部分などにおいて、画像に本来ある色とは異なる色、すなわち偽色が発生する。
【0043】
図8は、モアレの原因となる周波数帯域を説明するための図である。なお、同図においては、W信号において制限されずにR信号又はB信号において制限されている帯域をハッチングで示し、フィルターによる通過帯域(図4参照)は破線で示している。
【0044】
図8に示すように、Rのフィルターの特性とWのフィルターの特性とを比較すると、Y方向の高周波側(具体的には、入力される画像信号の周波数帯域の半分よりも高周波側)に、W信号においては通過し、R信号においては通過しない帯域が存在する。一方、Bのフィルターの特性とWのフィルターの特性とを比較すると、X方向の高周波側に、W信号においては通過し、B信号においては通過しない帯域が存在する。
【0045】
そこで、本実施形態においては、R及びBの少なくとも一方(望ましくは双方)のフィルターにおいて、かかる帯域の影響を相殺するように周波数応答が調整される。具体的には、フィルター処理部122R及び122Bは、自らが通過させる帯域以外の帯域であって、かつフィルター処理部122Wが通過させる帯域の位相が反転するようにフィルター処理を実行することにより、W信号による影響を打ち消す。なお、ここでいう「相殺」とは、互いが完全に打ち消し合うことのみを指すものではなく、一方によって他方の影響が低減されることをいうものである。
【0046】
図9は、本実施形態のR及びBのフィルターとその周波数特性とを説明するための図である。本実施形態のR及びBのフィルターは、通過帯域B1と位相反転帯域B2とが設定される。通過帯域B1は、画像信号を通過させる帯域であり、第1実施形態のそれと同様のものである。一方、位相反転帯域B2は、画像信号の位相を反転させて通過させる帯域であり、Wのフィルターの特性に応じて定まる。具体的には、位相反転帯域B2は、入力される画像信号の周波数帯域の高周波側の半分の帯域であって、フィルター処理部122Wが通過させる帯域を少なくとも含む帯域である。通過帯域B1は、第1帯域に相当し、位相反転帯域B2は、第2帯域に相当する。
【0047】
R信号の場合、位相反転帯域B2は、Y方向の周波数帯域の高周波側にある。一方、B信号の場合、位相反転帯域B2は、X方向の周波数帯域の高周波側にある。つまり、本実施形態のR及びBのフィルターも、第1実施形態と同様、X方向とY方向を逆転させた関係にある。また、通過帯域B1の周波数応答は「1」であるが、位相反転帯域B2の周波数応答は、図9の例では「−1」である。周波数応答が負であるということは、画像信号は位相反転帯域B2の位相が反転されて出力されるということを意味する。
【0048】
本実施形態のフィルター処理によれば、有彩色のモアレや偽色を抑制することが可能である。また、モアレや偽色を抑制する効果は、有彩色の画像よりも無彩色の画像においてより顕著となる(人間の視覚的にも、無彩色の画像の中に生じる有彩色の偽色の方が、有彩色の画像の中に生じる有彩色の偽色よりも知覚しやすいといえる。)。
【0049】
なお、モアレや偽色は、発生しているもののすべてが人間の目に知覚されるわけではない。それゆえ、フィルター処理部122R及び122Bによるフィルター処理は、人間が視覚的に認識できない(あるいは認識しにくい)程度にW信号の影響を抑制できれば、一定の効果を奏するといえる。したがって、フィルター処理部122R及び122Bが位相を反転させる場合の周波数応答は、負の値であればよく、必ずしも「−1」である必要はない。
【0050】
また、位相反転帯域B2は、フィルター処理部122Wが通過させる帯域を含んでいればよいため、必ずしも図9に示した帯域に限定されるわけではない。
図10は、本実施形態のR及びBのフィルターの他の例を示す図である。同図に示すフィルターは、図9に示すフィルターよりも位相反転帯域B2が少なくなっているが、当該帯域はフィルター処理部122Wが通過させる帯域を含んでいるため、モアレや偽色を抑制する作用を奏する。
【0051】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限らず、以下に例示するさまざまな形態でも実施可能である。なお、以下に示す変形例は、必要に応じて、各々を適宜組み合わせてもよいものである。
【0052】
(1)本発明の画素の配置は、上述した実施形態のように正方形状でなくてもよい。例えば、サブ画素が長方形である場合には、画素全体の配置も長方形状になる。また、第1方向と第2方向は、必ずしも直交する関係になくてもよく、交差する関係にあれば十分である。すなわち、本発明の画素は、2行2列の4個のサブ画素が四辺形状に並んだ形状で構成されるものであれば、その具体的な形状は問わないものである。
【0053】
また、画素内のサブ画素の位置関係も、上述した実施形態のものに限定されない。本発明の画素は、サブ画素Wと同様の帯域制限を施すサブ画素(実施形態ではサブ画素W)がサブ画素Wからみて四辺形の対角線方向に位置していれば、隣り合うサブ画素が実施形態と異なっていてもよい。
【0054】
図11は、サブ画素の配置の他の例を示す図である。図11(a)に示す配置は、上述した実施形態(図2参照)の配置からサブ画素Rとサブ画素Bの位置を入れ替えたものである。この場合、R信号に対するフィルター処理は、実施形態においてB信号に対して実行したフィルター処理と同様のものとし、B信号に対するフィルター処理は、実施形態においてR信号に対して実行したフィルター処理と同様のものとすればよい。また、図11(b)に示す配置は、上述した実施形態の配置からサブ画素Gとサブ画素Wの位置を入れ替えたものである。この場合、各色の画像信号に対するフィルター処理は、実施形態のものと同様である。加えて、サブ画素の配置は、図11(c)や図11(d)に示す例のように、各々の配置を点対称又は線対称に回転させた配置であってもよい。
【0055】
さらに、各色のサブ画素の位置関係は、サブ画素Wとサブ画素Gとが対角線方向に対向する配置でなくてもよい場合がある。例えば、表示装置が赤味の強い画像や赤色を多く含む画像を表示する場合や、赤色を他色よりも見やすく表示させたい場合などにおいては、サブ画素Wと対角線方向に対向するサブ画素をサブ画素Rとしてもよい。すなわち、サブ画素の配置は、表示装置が表示する画像や表示装置に要求される画質を考慮して決められてもよい。
【0056】
(2)上述した実施形態は、YW=YR+YG+YBという関係を満たす場合の例である。しかし、実際の液晶パネルは、このような関係を必ずしも満たさず、YWがYR、YG、YBの総和と等しくならない場合もある。このような場合において、R信号又はB信号に対するフィルター処理によって位相を反転させるときには、位相反転領域B2の周波数応答をサブ画素の実際の輝度に応じて定め、各色のサブ画素の輝度とのバランスを取るようにすることも可能である。すなわち、フィルター処理部122によるフィルター処理は、実際に使用する液晶パネル220の特性に基づいて決められてもよい。それゆえ、フィルター処理部122は、ユーザーが液晶パネル220の特性を考慮してフィルターの特性を調整できるように構成されてもよい。
【0057】
(3)本発明は、上述した実施形態のように、光変調器が透過型の画素で構成されていることを必要とするものではなく、上述した実施形態と同様の画素配列を有するものであれば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイやプラズマディスプレイなどのような自発光型の画素を有する表示パネルに対しても適用可能である。したがって、本発明に係る表示装置は、プロジェクターに限定されることもない。また、光変調器が液晶パネルである場合においても、これが透過型に限定されることはなく、反射型であってもよい。
【0058】
また、本発明に係る画像処理装置は、表示装置に内蔵された画像処理回路によって実現されてもよいし、パーソナルコンピューターなどのコンピューター装置が実行するソフトウェア処理によって実現されてもよい。さらに、本発明は、4色のそれぞれに応じた画像処理を実行する画像処理方法、かかる画像処理をコンピューター装置に実行させるためのプログラム、かかるプログラムを記録した記録媒体といった態様での提供も可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…表示システム、100…画像処理装置、110…入力部、120…画像処理部、121…色変換処理部、122、122R、122G、122B、122W…フィルター処理部、123…間引き処理部、130…出力部、200…プロジェクター、210…光源、220…液晶パネル、230…投写レンズ、300…スクリーン、B1…通過帯域、B2…位相反転帯域
【技術分野】
【0001】
本発明は、4色のサブ画素によって色表示を行う場合の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
3原色を用いた表示装置における画素の配置には、ストライプ配列やデルタ配列がある(例えば、特許文献1参照)。このような表示装置においては、3個のサブ画素によって1画素が構成される。また、ベイヤー(Bayer)配列は、色数は3色であるが、4個のサブ画素によって1画素を構成するものであり、G(緑)のサブ画素を2個、R(赤)、B(青)のサブ画素をそれぞれ1個用い、これらのサブ画素を縦方向及び横方向に2個ずつ配置したものである。
【0003】
画素がベイヤー配列によって構成された表示装置においては、一般に、入力された画像データの画素数の1/4の画素数の画像データによって色表示が行われる。この場合、入力された画像データの解像度よりも実際に用いられる画像データの解像度の方が低くなるため、画像信号の周波数帯域を制限するフィルター処理を実行し、折り返し雑音に起因するモアレを抑制することが行われる。例えば、RやBの画像信号の場合、高周波成分に起因するモアレを防ぐためには、縦方向及び横方向のいずれの周波数帯域も半分(すなわち1/2)に制限する必要がある。なお、Gの画像信号は、サブ画素の数がRやBのサブ画素に比べて2倍であるため、帯域の制限幅はこれらよりも少なくて済む。
【0004】
一方、色再現性や明るさの向上を目的に、4原色(ないしそれ以上の原色)を用いて色表示を行う場合がある。例えば、特許文献2には、ベイヤー配列におけるGのサブ画素の一方をW(白)やC(シアン)に置き換え、4色のサブ画素によって色表示を行う画像表示装置が開示されている。また、特許文献3には、4原色以上のカラー画像表示手段を有する場合において各色のカラー画像信号を算出するための技術が開示されている。なお、ここでいう「原色」は、(加法)混色の元となる色のことであり、光の3原色に限定されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−006703号公報
【特許文献2】特開2006−267541号公報
【特許文献3】特開2000−338950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
4色のサブ画素によって色表示を行う場合において、それぞれの色毎に独立に画像信号の帯域を制限すると、いずれのサブ画素の画像信号も縦方向及び横方向双方の周波数帯域が半分に制限される。しかし、このような帯域制限を行うと、元の画像から失われてしまう情報が多くなってしまう。
そこで、本発明は、4色のサブ画素によって色表示を行う場合において、白色に対応するサブ画素の色及び位置を利用して視感上の画質の向上を図ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る画像処理装置は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に画像信号を供給するための画像処理装置であって、白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第1フィルター処理部と、前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第2フィルター処理部と、前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第3フィルター処理部と、前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第4フィルター処理部とを備える。
この画像処理装置によれば、白色表示に対応する第1サブ画素と他のサブ画素との配置に応じて画像信号の周波数帯域が制限され、視感上の画質の向上を図ることが可能である。
【0008】
好ましい態様において、前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部の少なくとも一方は、入力される画像信号の周波数帯域のうちの通過させる帯域以外の帯域であって、かつ前記第1フィルタ処理部が通過させる帯域を、位相を反転させて通過させる。
この態様によれば、第1サブ画素の表示に起因するモアレや偽色を抑制することが可能である。
【0009】
別の好ましい態様において、前記画像処理装置は、位相が反転されて通過される前記帯域の周波数応答が、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素の輝度に応じて定まる。
この態様によれば、モアレや偽色の抑制をサブ画素の特性に応じて行うことが可能である。
【0010】
さらに別の好ましい態様において、前記第2フィルター処理部は、緑色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行し、前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部は、各々が赤色又は青色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行する。
この態様によれば、(人間の目の分光感度が高い)緑色の画像の解像度を赤色や青色よりも高めることが可能である。
【0011】
本発明の他の態様に係る表示装置は、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素によって構成され、マトリクス状に配置される複数の画素を有する表示パネルと、前記画像処理装置とを備える。
この表示装置によれば、白色表示に対応する第1サブ画素と他のサブ画素との配置に応じて画像信号の周波数帯域が制限され、視感上の画質の向上を図ることが可能である。
【0012】
本発明の他の態様に係る画像処理方法は、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に供給される画像信号に対して、白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の双方の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と、前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と実行する。
この画像処理方法によれば、白色表示に対応する第1サブ画素と他のサブ画素との配置に応じて画像信号の周波数帯域が制限され、視感上の画質の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】表示システムの構成を示すブロック図。
【図2】液晶パネルの画素の配置を示す図。
【図3】画像処理部の構成を示すブロック図。
【図4】各色のフィルターの特性を示す図。
【図5】比較例として示すフィルターの特性を示す図。
【図6】比較例として示すフィルターの特性を示す図。
【図7】ベイヤー配列のサブ画素によって形成される格子を示す図。
【図8】モアレの原因となる周波数帯域を説明するための図。
【図9】R及びBのフィルターとその周波数特性とを説明するための図。
【図10】R及びBのフィルターを例示する図。
【図11】サブ画素の配置を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である表示システム10の構成を示すブロック図である。同図に示す表示システム10は、画像処理装置100と、プロジェクター200と、スクリーン300とを備え、外部装置から供給された画像データに応じた画像をスクリーン300に投写するものである。外部装置は、例えばパーソナルコンピューターであるが、デジタルスチルカメラなどであってもよい。なお、外部装置が供給する画像データは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色成分の画像信号によって各画素が表現されたデータである。
【0015】
プロジェクター200は、単板型のプロジェクターであって、光源210と、1つの液晶パネル220と、投写レンズ230とを備える。液晶パネル220は、入射する光を変調する光変調器として機能し、画像処理装置100から供給される画像データに応じた態様で光の透過状態を変化させることによって、光源210から照射された光の透過の度合いを制御する。投写レンズ230は、液晶パネル220を透過した光をスクリーン300に投写する。
【0016】
液晶パネル220は、4個のサブ画素によって1画素を構成し、カラーフィルターなどによって各サブ画素の光の透過状態が異なる平板状の表示パネルである。それぞれのサブ画素は、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)の4色の表示に対応する。液晶パネル220の画素の配置は、ベイヤー配列における2個のGのサブ画素のうちの1個をWのサブ画素に置き換えたものである。なお、ここでいう白(白色)とは、R、G、Bのすべての色成分を適当な割合で含むものであれば、多少黄色がかっていたりグレーがかっていたりしてもよい。ただし、R、G、B、Wのサブ画素の輝度をそれぞれYR、YG、YB、YWとした場合に、これらがYW=YR+YG+YBという関係を満たすのが理想的であるため、本実施形態においてはこのような関係が満たされているものとする。
【0017】
図2は、液晶パネル220の画素の配置を示す図である。液晶パネル220は、図中のX方向と、これに直交するY方向とにサブ画素が並んで配置されており、X方向に隣り合う2個のサブ画素と、この2個のサブ画素とY方向に隣り合う2個のサブ画素とによって1画素が構成されるものである。液晶パネル220は、X方向に沿った奇数行にはGとBに対応するサブ画素が順番に並んでおり、X方向に沿った偶数行にはRとWに対応するサブ画素が順番に並んでいる。また、液晶パネル220は、Y方向に沿った奇数列にはGとRに対応するサブ画素が順番に並んでおり、Y方向に沿った偶数列にはBとWに対応するサブ画素が順番に並んでいる。なお、ここにおいて、X方向が本発明における第1方向に相当し、Y方向が本発明における第2方向に相当する。
【0018】
ここでは、各サブ画素は同サイズの正方形であり、それぞれの間隔がX方向及びY方向のいずれにも等しいとする。このようにすると、1画素を構成する4個のサブ画素は、正方形状に配置されていることになる。液晶パネル220は、このような正方形状の画素がX方向及びY方向にマトリクス状に配置されて構成される。ここにおいて、Gのサブ画素は、Wのサブ画素からみて対角線方向に位置し、Bのサブ画素とX方向に隣り合うとともに、Rのサブ画素とY方向に隣り合う。また、Rのサブ画素は、Wのサブ画素とX方向に隣り合うとともに、Gのサブ画素とY方向に隣り合う。また、Bのサブ画素は、Wのサブ画素とY方向に隣り合うとともに、Gのサブ画素とX方向に隣り合う。
【0019】
Wのサブ画素は、白色表示に対応するサブ画素であり、白色表示に対応する画像信号に応じて光の透過状態を変化させる。同様に、R、G、Bのサブ画素は、それぞれ赤色表示、緑色表示、青色表示に対応するサブ画素であり、それぞれの色の表示に対応する画像信号に応じて光の透過状態を変化させる。液晶パネル220のこれらのサブ画素は、図示せぬ駆動回路によって駆動されて光の透過状態を変化させる。
【0020】
以下においては、白色表示に対応するサブ画素のことを「サブ画素W」、サブ画素Wを表示させる画像信号のことを「W信号」、というように、対応する色を付記することによって各色に対応するサブ画素及び画像信号を区別するものとする。ここにおいて、サブ画素Wは、第1サブ画素に相当し、サブ画素Gは、第2サブ画素に相当する。また、サブ画素Rは、第3サブ画素に相当し、サブ画素Bは、第4サブ画素に相当する。
【0021】
画像処理装置100は、外部装置から画像データを取得し、これをプロジェクター200での表示に適した画像データに変換して供給する。すなわち、画像処理装置100は、R、G、Bの3色の画像信号を含んだ画像データからR、G、B、Wの4色の画像信号を含んだ画像データを生成し、これをプロジェクター200に供給する。
【0022】
画像処理装置100は、より詳細には、入力部110と、画像処理部120と、出力部130とを備える。入力部110は、R、G、Bの3色の画像信号を含む画像データを外部装置から取得し、画像処理部120に入力する。画像処理部120は、画像信号に対して後述する画像処理を実行することによってR、G、B、Wの4色の画像信号を生成し、これを画像データとして出力部130に供給する。出力部130は、画像処理部120によって生成された画像データをプロジェクター200に供給する。
【0023】
図3は、画像処理部120の構成を示すブロック図である。画像処理部120は、同図に示すように、色変換処理部121と、フィルター処理部122と、間引き処理部123とを備える。また、フィルター処理部122は、より詳細には、フィルター処理部122R、フィルター処理部122G、フィルター処理部122B及びフィルター処理部122Wを含んで構成される。
【0024】
色変換処理部121は、R、G、Bの3色の画像信号をR、G、B、Wの4色の画像信号に変換する。色変換処理部121は、周知の方法(例えば、特許文献3に開示された方法)で画像信号を変換することが可能である。画像信号は、例えば、輝度(すなわち明るさ)を256階調で表現する8ビットのデータであるが、階調数がこれに限定されるわけではない。
【0025】
フィルター処理部122は、R、G、B、Wの4色の画像信号に対してフィルター処理を実行する。フィルター処理部122は、より詳細には、フィルター処理部122R、122G、122B及び122Wを含む。フィルター処理部122R、122G、122B及び122Wは、それぞれ、符号に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行する。例えば、フィルター処理部122Rは、R信号に対してフィルター処理を実行する。フィルター処理部122Wは、第1フィルター処理部に相当し、フィルター処理部122Gは、第2フィルター処理部に相当する。また、フィルター処理部122Rは、第3フィルター処理部に相当し、フィルター処理部122Bは、第4フィルター処理部に相当する。
【0026】
フィルター処理部122は、輝度リニアな信号(信号の値の変化に対して実際の輝度の変化が線形な信号)に対してフィルター処理を実行する。入力される画像信号が輝度リニアでない場合、フィルター処理部122は、画像信号が輝度リニアになるようにこれを変換してからフィルター処理を実行し、フィルター処理の実行後に逆変換を行ってガンマ値を元に戻す。例えば、画像信号の色空間がsRGBで定義されている場合、そのガンマ値は「2.2」であるため、画像信号が輝度リニアではない。この場合、フィルター処理部122は、画像信号のガンマ値が「2.2」から「1.0」になるようにガンマ変換を実行し、その後、フィルター処理を実行した画像信号に対して、ガンマ値が「1.0」から「2.2」になるようにガンマ変換を再度実行する。
【0027】
間引き処理部123は、フィルター処理部122によって帯域制限された各色の画像信号の画素数を減じる間引き処理を実行する。間引き処理部123は、各色の画像信号の画素数を、X方向及びY方向のそれぞれについて1/4に減じる。すなわち、間引き処理部123は、1面が4M×4N画素の画像データをM×N画素の画像データに変換する。ただし、間引き処理部123による変換後の画像データは、1画素が4個のサブ画素によって構成されるデータである。つまり、変換前の画像データの画素数と変換後の画像データのサブ画素の総数とを比較すると、前者は後者の4倍(X方向に2倍、Y方向に2倍)である。
【0028】
表示システム10の構成は、以上のとおりである。表示システム10は、この構成のもと、画像処理装置100によって3色(RGB)の4M×4N画素の画像データを4色(RGBW)のM×N画素の画像データに変換し、プロジェクター200によって画像データに応じた画像をスクリーン300に表示する。このとき、フィルター処理部122は、プロジェクター200における液晶パネル220の構成に基づいてフィルター処理を実行する。
【0029】
フィルター処理部122R、122G、122B及び122Wにより実行されるフィルター処理は、サブ画素の配置に応じて決められている。具体的には、各色のフィルター処理は、当該色のサブ画素のX方向及びY方向の間隔に応じた態様で、それぞれの方向の周波数帯域を制限し、制限されるべき帯域においてゲインを0にするものである。なお、ここでいう周波数とは、画像の空間周波数のことである。本実施形態のフィルター処理は、特に、サブ画素Wによる表示(すなわち白色表示)がRGB各色の色成分を含んでいることを利用している点に特徴を有する。
【0030】
図4は、本実施形態の各色のフィルターの特性を示す図である。また、図5及び図6は、本実施形態の比較例として示すフィルターの特性であり、図5がベイヤー配列(本実施形態のサブ画素Wをサブ画素Gに置き換えたもの)において想定される一般的なフィルターの特性を示し、図6が本実施形態と同様の配置のサブ画素を用いた場合の他のフィルターの特性を示すものである。なお、同図において、横軸(fx)は、X方向の周波数を表し、縦軸(fy)は、Y方向の周波数を表している。また、同図において、実線で示される正方形は、入力される画像信号の周波数帯域を表し、ハッチングで示された部分は、フィルターが通過させる帯域を表している。
【0031】
図5に示すように、ベイヤー配列においては、サブ画素Rとサブ画素BについてはX方向とY方向の双方の帯域が低域側の半分に制限されるのが一般的である。なぜならば、サブ画素Rとサブ画素Bは、いずれも、X方向とY方向のいずれにも1個おきに配置されており、入力された画像信号の半分の解像度でしか画像を表現できないからである。一方、サブ画素Gに対するフィルターは、サブ画素Gが1画素内に2個あるため、制限する帯域をサブ画素R又はサブ画素Bの半分にすることができる。具体的には、G信号に対して適用されるフィルターは、X方向とY方向の双方の周波数が高くなる領域をカットするように構成される。
【0032】
図7は、ベイヤー配列のサブ画素によって形成される格子を示す図である。同図に示すように、サブ画素Gにより構成される格子は、サブ画素R(又はサブ画素B)により構成される格子よりも1辺が短い正方形となり、かつ、サブ画素R(又はサブ画素B)により構成される格子に対して45°傾いた形状となる。また、各格子の辺の長さを、サブ画素Gの場合とサブ画素R(又はサブ画素B)の場合とで比較すると、前者は後者の√2/2(2の平方根を2で除した数)倍である。したがって、ベイヤー配列においては、G信号ではより高解像度の表示が可能であり、G信号の通過帯域をR信号又はB信号の通過帯域よりも広くすることが可能である。
【0033】
一方、本実施形態においては、図4に示すように、G信号及びW信号に対して適用されるフィルターを図7のベイヤー配列におけるG信号に対して適用されるフィルターと同一のものとしている。このような帯域制限を行う理由は、サブ画素Wによる表示がG成分を含んでいるためである。本実施形態においては、サブ画素Wをサブ画素Gとみなして、G信号及びW信号に対して適用されるフィルターが決められている。
【0034】
同様に、サブ画素Wによる表示は、R成分やB成分をも含んでいる。本実施形態においては、R信号及びB信号に対して適用されるフィルターの特性についても、このことを利用して決められている。具体的には、サブ画素Wをサブ画素Rとみなした場合、サブ画素RはX方向には隙間なく(他のサブ画素を挟むことなく)配置されることになり、入力された画像信号と同様の解像度で再現可能であるため、当該方向の帯域制限を行わないようにフィルターが構成されている。一方、サブ画素Wをサブ画素Rとみなした場合であっても、サブ画素RはY方向には1画素おきに配置されるため、当該方向の帯域は図5の場合と同様に制限される。
【0035】
なお、サブ画素Wをサブ画素Bとみなした場合のサブ画素Bの配置は、サブ画素Wをサブ画素Rとみなした場合のサブ画素Rの配置を90°回転させたものと同様になる。そのため、本実施形態においてB信号に対して適用されるフィルターは、R信号に対して適用されるフィルターの特性のX方向とY方向を入れ替えた特性となっている。
【0036】
このように、本実施形態の各色のフィルターは、R信号についてはY方向の帯域のみをサブ画素Rの間隔に応じた態様で制限し、B信号についてはX方向の帯域のみをサブ画素Bの間隔に応じた態様で制限する。また、G信号及びW信号に対するフィルターは、サブ画素G及びサブ画素Wの双方を同一視して組み合わせた場合のサブ画素の配置に応じた態様で各信号の帯域を制限する。つまり、本実施形態においては、サブ画素Wがサブ画素R、サブ画素G及びサブ画素Bのいずれとも光学的性質を共通にする要素が含まれることを利用し、各色の画像信号の周波数帯域を図5や図6の比較例の場合よりも広く確保できるようにしているのである。
【0037】
本実施形態のフィルターを図6のフィルターと比較すると、帯域の制限幅に相違がある。具体的には、R信号とB信号は、サブ画素Wをサブ画素R又はサブ画素Bとみなすことによって、X方向又はY方向のいずれかの制限が不要になるため、通過する帯域幅が2倍になる。また、G信号とW信号は、サブ画素Wをサブ画素Gとみなすことによって、それぞれを別のサブ画素として扱わなくてもよくなるため、図5のベイヤー配列の場合と同様の帯域制限にすることができる。
【0038】
したがって、本実施形態の表示システム10によれば、各色の画像信号に対して独立に(すなわち、他色のサブ画素の位置を考慮せずに)帯域制限を施す場合に比べ、帯域の制限幅を少なくすることが可能であるとともに、サブ画素Wに代えてサブ画素Gを用いる場合に比べ、投写される画像の輝度を向上させることが可能である。よって、表示システム10によれば、図5及び図6のいずれの比較例の場合よりも視感上の画質を向上させることが可能である。
【0039】
[第2実施形態]
本実施形態は、画像信号に対するフィルター処理が異なる点を除き、上述した第1実施形態と共通の構成を有するものである。そこで、本実施形態においては、第1実施形態と共通する構成要素については第1実施形態で用いた符号を用いることとし、重複する説明を適宜省略するものとする。
【0040】
本実施形態は、第1実施形態の構成において発生する可能性があるモアレや偽色を抑制することによって、いわゆる解像感を向上させ、視感上の画質をさらに向上させるものである。第1実施形態の構成においてモアレや偽色が発生する原理は、具体的には以下のとおりである。
【0041】
フィルター処理後のR信号又はB信号は、W信号において制限されていない周波数帯域の情報が失われていたり、あるいはW信号において制限されている周波数帯域の情報が含まれていたり、というように、情報として含まれている周波数帯域がW信号と相違している。W信号に含まれ、R信号又はB信号に含まれない周波数帯域の情報は、ある観点からみれば余分な情報ともいえる。かかる情報は、その周波数帯域がナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)を超えているため、折り返し雑音となってモアレを生じさせる。ここにおいて、サンプリング周波数は、入力された画像信号の1画素のサイズを基準にして定められる。なお、フィルター処理後のG信号は、情報として含まれている周波数帯域がW信号と同様であるため、モアレの原因にはならない。
【0042】
また、第1実施形態の構成において、このようなモアレは、R又はBの色成分のみに発生する。すなわち、第1実施形態の構成において生じるモアレは、色付きのモアレである。それゆえ、第1実施形態の構成において、特に高周波成分を含む画像を表示させようとした場合には、いわゆるエッジ(輪郭)部分などにおいて、画像に本来ある色とは異なる色、すなわち偽色が発生する。
【0043】
図8は、モアレの原因となる周波数帯域を説明するための図である。なお、同図においては、W信号において制限されずにR信号又はB信号において制限されている帯域をハッチングで示し、フィルターによる通過帯域(図4参照)は破線で示している。
【0044】
図8に示すように、Rのフィルターの特性とWのフィルターの特性とを比較すると、Y方向の高周波側(具体的には、入力される画像信号の周波数帯域の半分よりも高周波側)に、W信号においては通過し、R信号においては通過しない帯域が存在する。一方、Bのフィルターの特性とWのフィルターの特性とを比較すると、X方向の高周波側に、W信号においては通過し、B信号においては通過しない帯域が存在する。
【0045】
そこで、本実施形態においては、R及びBの少なくとも一方(望ましくは双方)のフィルターにおいて、かかる帯域の影響を相殺するように周波数応答が調整される。具体的には、フィルター処理部122R及び122Bは、自らが通過させる帯域以外の帯域であって、かつフィルター処理部122Wが通過させる帯域の位相が反転するようにフィルター処理を実行することにより、W信号による影響を打ち消す。なお、ここでいう「相殺」とは、互いが完全に打ち消し合うことのみを指すものではなく、一方によって他方の影響が低減されることをいうものである。
【0046】
図9は、本実施形態のR及びBのフィルターとその周波数特性とを説明するための図である。本実施形態のR及びBのフィルターは、通過帯域B1と位相反転帯域B2とが設定される。通過帯域B1は、画像信号を通過させる帯域であり、第1実施形態のそれと同様のものである。一方、位相反転帯域B2は、画像信号の位相を反転させて通過させる帯域であり、Wのフィルターの特性に応じて定まる。具体的には、位相反転帯域B2は、入力される画像信号の周波数帯域の高周波側の半分の帯域であって、フィルター処理部122Wが通過させる帯域を少なくとも含む帯域である。通過帯域B1は、第1帯域に相当し、位相反転帯域B2は、第2帯域に相当する。
【0047】
R信号の場合、位相反転帯域B2は、Y方向の周波数帯域の高周波側にある。一方、B信号の場合、位相反転帯域B2は、X方向の周波数帯域の高周波側にある。つまり、本実施形態のR及びBのフィルターも、第1実施形態と同様、X方向とY方向を逆転させた関係にある。また、通過帯域B1の周波数応答は「1」であるが、位相反転帯域B2の周波数応答は、図9の例では「−1」である。周波数応答が負であるということは、画像信号は位相反転帯域B2の位相が反転されて出力されるということを意味する。
【0048】
本実施形態のフィルター処理によれば、有彩色のモアレや偽色を抑制することが可能である。また、モアレや偽色を抑制する効果は、有彩色の画像よりも無彩色の画像においてより顕著となる(人間の視覚的にも、無彩色の画像の中に生じる有彩色の偽色の方が、有彩色の画像の中に生じる有彩色の偽色よりも知覚しやすいといえる。)。
【0049】
なお、モアレや偽色は、発生しているもののすべてが人間の目に知覚されるわけではない。それゆえ、フィルター処理部122R及び122Bによるフィルター処理は、人間が視覚的に認識できない(あるいは認識しにくい)程度にW信号の影響を抑制できれば、一定の効果を奏するといえる。したがって、フィルター処理部122R及び122Bが位相を反転させる場合の周波数応答は、負の値であればよく、必ずしも「−1」である必要はない。
【0050】
また、位相反転帯域B2は、フィルター処理部122Wが通過させる帯域を含んでいればよいため、必ずしも図9に示した帯域に限定されるわけではない。
図10は、本実施形態のR及びBのフィルターの他の例を示す図である。同図に示すフィルターは、図9に示すフィルターよりも位相反転帯域B2が少なくなっているが、当該帯域はフィルター処理部122Wが通過させる帯域を含んでいるため、モアレや偽色を抑制する作用を奏する。
【0051】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限らず、以下に例示するさまざまな形態でも実施可能である。なお、以下に示す変形例は、必要に応じて、各々を適宜組み合わせてもよいものである。
【0052】
(1)本発明の画素の配置は、上述した実施形態のように正方形状でなくてもよい。例えば、サブ画素が長方形である場合には、画素全体の配置も長方形状になる。また、第1方向と第2方向は、必ずしも直交する関係になくてもよく、交差する関係にあれば十分である。すなわち、本発明の画素は、2行2列の4個のサブ画素が四辺形状に並んだ形状で構成されるものであれば、その具体的な形状は問わないものである。
【0053】
また、画素内のサブ画素の位置関係も、上述した実施形態のものに限定されない。本発明の画素は、サブ画素Wと同様の帯域制限を施すサブ画素(実施形態ではサブ画素W)がサブ画素Wからみて四辺形の対角線方向に位置していれば、隣り合うサブ画素が実施形態と異なっていてもよい。
【0054】
図11は、サブ画素の配置の他の例を示す図である。図11(a)に示す配置は、上述した実施形態(図2参照)の配置からサブ画素Rとサブ画素Bの位置を入れ替えたものである。この場合、R信号に対するフィルター処理は、実施形態においてB信号に対して実行したフィルター処理と同様のものとし、B信号に対するフィルター処理は、実施形態においてR信号に対して実行したフィルター処理と同様のものとすればよい。また、図11(b)に示す配置は、上述した実施形態の配置からサブ画素Gとサブ画素Wの位置を入れ替えたものである。この場合、各色の画像信号に対するフィルター処理は、実施形態のものと同様である。加えて、サブ画素の配置は、図11(c)や図11(d)に示す例のように、各々の配置を点対称又は線対称に回転させた配置であってもよい。
【0055】
さらに、各色のサブ画素の位置関係は、サブ画素Wとサブ画素Gとが対角線方向に対向する配置でなくてもよい場合がある。例えば、表示装置が赤味の強い画像や赤色を多く含む画像を表示する場合や、赤色を他色よりも見やすく表示させたい場合などにおいては、サブ画素Wと対角線方向に対向するサブ画素をサブ画素Rとしてもよい。すなわち、サブ画素の配置は、表示装置が表示する画像や表示装置に要求される画質を考慮して決められてもよい。
【0056】
(2)上述した実施形態は、YW=YR+YG+YBという関係を満たす場合の例である。しかし、実際の液晶パネルは、このような関係を必ずしも満たさず、YWがYR、YG、YBの総和と等しくならない場合もある。このような場合において、R信号又はB信号に対するフィルター処理によって位相を反転させるときには、位相反転領域B2の周波数応答をサブ画素の実際の輝度に応じて定め、各色のサブ画素の輝度とのバランスを取るようにすることも可能である。すなわち、フィルター処理部122によるフィルター処理は、実際に使用する液晶パネル220の特性に基づいて決められてもよい。それゆえ、フィルター処理部122は、ユーザーが液晶パネル220の特性を考慮してフィルターの特性を調整できるように構成されてもよい。
【0057】
(3)本発明は、上述した実施形態のように、光変調器が透過型の画素で構成されていることを必要とするものではなく、上述した実施形態と同様の画素配列を有するものであれば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイやプラズマディスプレイなどのような自発光型の画素を有する表示パネルに対しても適用可能である。したがって、本発明に係る表示装置は、プロジェクターに限定されることもない。また、光変調器が液晶パネルである場合においても、これが透過型に限定されることはなく、反射型であってもよい。
【0058】
また、本発明に係る画像処理装置は、表示装置に内蔵された画像処理回路によって実現されてもよいし、パーソナルコンピューターなどのコンピューター装置が実行するソフトウェア処理によって実現されてもよい。さらに、本発明は、4色のそれぞれに応じた画像処理を実行する画像処理方法、かかる画像処理をコンピューター装置に実行させるためのプログラム、かかるプログラムを記録した記録媒体といった態様での提供も可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…表示システム、100…画像処理装置、110…入力部、120…画像処理部、121…色変換処理部、122、122R、122G、122B、122W…フィルター処理部、123…間引き処理部、130…出力部、200…プロジェクター、210…光源、220…液晶パネル、230…投写レンズ、300…スクリーン、B1…通過帯域、B2…位相反転帯域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に画像信号を供給するための画像処理装置であって、
白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第1フィルター処理部と、
前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第2フィルター処理部と、
前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第3フィルター処理部と、
前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第4フィルター処理部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部の少なくとも一方は、
入力される画像信号の周波数帯域のうちの通過させる帯域以外の帯域であって、かつ前記第1フィルタ処理部が通過させる帯域を、位相を反転させて通過させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
位相が反転されて通過される前記帯域の周波数応答が、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素の輝度に応じて定まる
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2フィルター処理部は、緑色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行し、
前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部は、各々が赤色又は青色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素によって構成され、マトリクス状に配置される複数の画素を有する表示パネルと、
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置と
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に供給される画像信号に対して、
白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の双方の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、
前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、
前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と、
前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と
を実行することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に画像信号を供給するための画像処理装置であって、
白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第1フィルター処理部と、
前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第2フィルター処理部と、
前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第3フィルター処理部と、
前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理を実行する第4フィルター処理部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部の少なくとも一方は、
入力される画像信号の周波数帯域のうちの通過させる帯域以外の帯域であって、かつ前記第1フィルタ処理部が通過させる帯域を、位相を反転させて通過させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
位相が反転されて通過される前記帯域の周波数応答が、前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素の輝度に応じて定まる
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2フィルター処理部は、緑色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行し、
前記第3フィルター処理部及び前記第4フィルター処理部は、各々が赤色又は青色に対応する画像信号に対してフィルター処理を実行する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1サブ画素、前記第2サブ画素、前記第3サブ画素及び前記第4サブ画素によって構成され、マトリクス状に配置される複数の画素を有する表示パネルと、
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像処理装置と
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに2個ずつ並んだ4個のサブ画素によって構成される各画素をマトリクス状に配置し、1画素を構成するサブ画素の1個が白色に対応する表示装置に供給される画像信号に対して、
白色に対応する第1サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第1サブ画素に対して対角線方向に位置する第2サブ画素の双方の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、
前記第2サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向及び前記第2方向の周波数帯域を、前記第1サブ画素及び前記第2サブ画素の配置に応じた態様で制限するフィルター処理と、
前記第1サブ画素と前記第1方向に隣り合う第3サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第2方向の周波数帯域を当該第3サブ画素の当該第2方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と、
前記第1サブ画素と前記第2方向に隣り合う第4サブ画素を表示させる画像信号に対して、前記第1方向の周波数帯域を当該第4サブ画素の当該第1方向の間隔に応じた態様で制限するフィルター処理と
を実行することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−25140(P2013−25140A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160723(P2011−160723)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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