説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できる画像処理装置および画像処理プログラムを提供すること。
【解決手段】図6(b1)の元画像と、その元画像を図中右端を境に反転した画像とを連結して図6(b2)の画像を生成する。次に、図6(b2)の画像と、その図6(b2)の画像を図中下端を境に反転した画像とを連結して図6(b3)の画像を生成する。図6(b3)の画像は、図6(a2)の画像と比べ繋ぎ目Kにおいて濃度が連続的に変化している。よって、図6(b3)の画像を2次元離散フーリエ変換することで、エッジ効果を抑制できる。従って、2次元離散フーリエ変換したスペクトルから濃度ムラを示す低周波成分を適切に抽出でき、抽出した低周波成分を元画像から減算することで、元画像から低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像の濃度ムラを除去する画像処理方式に関し、処理対象となる画像に直交変換(例えば、離散フーリエ変換、離散コサイン変換、離散サイン変換、KL変換など)を施して直交変換画像を生成し、その直交変換画像から低周波成分を除去することで、画像の濃度ムラを除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−189134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、エッジ効果に対して何ら対処されていないので、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できないという問題点があった。
【0005】
ここで、エッジ効果について説明する。直交変換は、有限長の情報を、無限長の情報として処理する。すなわち、処理対象となる有限長の画像は、その有限長の画像を縦にも横にも無限に繋げた無限長の画像として処理される。そのため、繋げられる端部同士に濃度差があると、その繋ぎ目で極端な濃度変化が生じ、その影響で、変換後のスペクトルには、変換前の画像に本来含まれない周波数成分が出現する。この現象が、エッジ効果である。エッジ効果が発生すると、変換前の画像に本来含まれていた低周波成分は、変換後のスペクトルでは拡散して出現してしまい、もはや変換後のスペクトルからは、変換前の画像に本来含まれていた低周波成分を適切に抽出できない。そのため、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できる画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、画像データを取得する第1の取得手段と、前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いて得られるミラーデータを生成するミラーリング手段と、前記ミラーデータを、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換手段と、前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を抽出する第1の抽出手段であって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記第1の抽出手段と、抽出された前記低周波成分のスペクトルを逆変換することによって、前記低周波成分を示す低周波画像データを取得する第2の取得手段と、前記画像データと前記低周波画像データとを用いて、前記画像から前記低周波成分が除外された補正画像データを生成する生成手段とを備えている。
【0008】
上記の画像処理装置において、第1の取得手段によって取得した画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いてミラーデータが生成されるため、取得した画像データの端部の濃度差が喪失される。よって、ミラーデータをスペクトルに変換することでエッジ効果を抑制できる。また、エッジ効果が抑制されるので、変換されたスペクトルに、変換前の画像に本来含まれる低周波数成分を適切に出現させることができる。従って、画像の低周波成分を適切に抽出できる。そして、抽出された低周波成分のスペクトルは、逆変換され、低周波成分を示す低周波画像データとして取得され、その低周波画像データと、取得した画像データとを用いて、補正画像データが生成される。このように、画像の低周波成分を適切に抽出できるので、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できるという効果がある。
【0009】
上記の画像処理装置において、低周波成分のスペクトル強度が0%より大きく100%以下の範囲に補正され、抽出されてもよい。よって、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去しつつ、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0010】
上記の画像処理装置において、低周波成分のスペクトル強度を補正する場合には、画像データの種類に応じた補正強度で補正される。よって、画像データの種類に応じて、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0011】
上記の画像処理装置において、画像データの種類がイメージである場合、テキストよりも、補正強度を小さくして補正されてもよい。イメージは、テキストよりも、低周波成分のスペクトルが、取得した画像データの特性を示している可能性が高い。よって、かかる補正強度で補正することで、イメージは、テキストよりも取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。尚、イメージには、グラフッィク(図形、線図)、写真等を含む。
【0012】
上記の画像処理装置において、抽出される低周波成分は、低周波成分のスペクトル強度を小さくする補正がされて抽出されるが、この場合、空間周波数が低いものよりも、高いものの方が補正強度を小さくして補正されてもよい。低周波成分のうち、空間周波数が低いものは、高いものよりも濃度ムラを示している可能性が高い。よって、かかる補正をすることで、取得した画像データの特性維持と、濃度ムラ除去とのバランスを、正確にとることができるという効果がある。
【0013】
上記の画像処理装置において、低周波成分の周波数帯は、画像データの種類に応じて変更され、その変更された周波数帯に含まれる低周波成分が抽出されてもよい。よって、画像データの種類に応じて、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0014】
上記の画像処理装置において、第1の取得手段によって取得した画像データに対応する画像と、その画像をX方向に反転した第1反転画像とを連結した第1ミラー画像が第1生成手段によって生成され、その第1ミラー画像と、その第1ミラー画像をX方向と直交するY方向に反転した第2反転画像とを連結した第2ミラー画像が第2生成手段によって生成され、その第2ミラー画像がミラーリング手段によって生成されるミラーデータとされてもよい。即ち、ミラーデータは、X方向とY方向との2次元データとして生成され、濃度ムラが2次元に発生している場合でも、その濃度ムラを適切に除去できるという効果がある。
【0015】
上記の画像処理装置において、第1の取得手段によって取得した画像データから抽出されるものであって、画像データの画素値をX方向に平均化してX方向と直交するY方向に1次元化したY方向データと、画像データの画素値をY方向に平均化してX方向に1次元化したX方向データとのうち、何れか一方が1次元画像データとして抽出手段によって抽出されてもよい。そして、抽出された1次元画像データと、前記1次元画像データを前記1次元画像データに対称に反転した反転データとを連結したものが、ミラーリング手段によって生成されるミラーデータとされてもよい。即ち、ミラーデータは、X方向またはY方向の1次元データとして生成されてもよい。従って、例えば、ミラーデータがX方向とY方向との2次元データとして生成され処理される場合に比べ、処理すべきデータ量が少なく、高速に補正画像データを生成できるという効果がある。
【0016】
上記の画像処理装置において、1次元化する方向は、読取装置の特性に起因して濃度ムラが発生する方向と一致する方向であるとよい。よって、ミラーデータをX方向またはY方向の1次元データとして生成し処理する場合でも、濃度ムラを適切に除去できるという効果がある。
【0017】
本発明の画像処理装置は、画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いて得られるミラーデータを生成するミラーリング手段と、前記ミラーデータを、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換手段と、前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を除去する除去手段であって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記除去手段と、前記低周波成分が除去された前記スペクトルを用いて、前記画像に含まれるバンディングを示すバンディング評価値を算出する評価値算出手段とを備えている。
【0018】
上記の画像処理装置において、取得手段によって取得した画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いてミラーデータが生成されるため、取得した画像データの端部の濃度差が喪失される。よって、ミラーデータをスペクトルに変換することでエッジ効果を抑制できる。また、エッジ効果が抑制されるので、変換された空間周波数のスペクトルに、本来含まれる周波数成分を適切に出現させることができる。従って、画像の低周波成分を適切に除去できる。そして、低周波成分が除去されたスペクトルを用いて、前記画像に含まれるバンディングを示すバンディング評価値が算出される。即ち、バンディング評価では、低周波成分の影響は無視できるので、バンディング評価値を算出するにあたり、低周波成分を適切に除去しておくことで、低周波成分に影響されない適切なバンディング評価値を算出できるという効果がある。
【0019】
本発明の画像処理プログラムは、上記の画像処理装置と同様の効果を奏することができる。なお、本発明は、画像処理装置を制御する制御装置、画像処理方法、画像処理装置を制御する画像処理プログラム、該プログラムを記録する記録媒体等の種々の態様で実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は複合機の電気的構成を示すブロック図である。(b)は補正関数テーブルを示す図である。
【図2】元画像から面内ムラを除去した補正画像を生成する過程を実信号を使って説明する図である。
【図3】第1実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。
【図4】(a)は高周波成分除去処理を示すフローチャートである。(b)は補正関数を示すグラフである。
【図5】(a)は面内ムラ情報減算処理を示すフローチャートである。(b)は面内ムラを含む画像を示す図である。(c)は面内ムラ情報を示すグラフである。
【図6】2次元離散フーリエ変換を施す画像について、従来の手法と、本発明の手法とを比較して説明する図である。
【図7】(a)は従来の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトル、(b)は本発明の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルを示す図である。
【図8】第2実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。
【図9】(a)はバンディング評価処理を示すフローチャートである。(b)はテスト画像を示す図である。
【図10】バンディング評価値算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の画像処理装置の一実施形態である複合機1の電気的構成を示すブロック図である。複合機1は、スキャナ機能、コピー機能、プリンタ機能を有し、特に、スキャナの特性に起因する濃度ムラ(以下、「面内ムラ」と称す)を適切に除去できるものである。
【0022】
複合機1には、CPU11、ROM12、RAM13、フラッシュメモリ14が設けられ、これらは、バス16を介してASIC15に接続されている。ASIC15には、スキャナ15、操作パネル16、印刷ヘッド17、キャリッジモータ(CRモータ18)、用紙搬送モータ(LFモータ19)、インターフェース(I/F20)が接続され、これらは、ASIC15、バス16を介してCPU11によって制御される。
【0023】
CPU11は、ROM12やフラッシュメモリ14に記憶される固定値やプログラムに従って、複合機1が有している各機能の制御や、ASIC15と接続された各構成を制御する。ROM12は、書換不能なメモリであり、画像補正プログラム12aと、バンディング評価プログラム12bとが記憶されている。CPU11は、画像補正プログラム12aに従い、後述する画像補正処理(図3,図8)を実行する。また、CPU11は、バンディング評価プログラム12bに従い、後述するバンディング評価処理(図9(a))を実行する。RAM13は、書換可能な揮発性のメモリであり、画像データメモリ13aが設けられている。画像データメモリ13aには、スキャナ15で読み取った画像データ、I/F20を介して取得した画像データ等が記憶される。フラッシュメモリ14は、書換可能な不揮発性のメモリであり、補正関数テーブル14aが記憶されている。図1(b)は、補正関数テーブル14aを示す図である。補正関数テーブル14aには、画像種別(テキスト、グラフィック、写真、その他)に応じて、補正関数(n1(f)〜n4(f))が記憶されている。CPU11は、後述する高周波成分除去処理(図4(a))において、補正対象となる画像種別に応じて、対応する補正関数を補正関数テーブル14aから読み出し、その補正関数に従って、補正対象となる画像から高周波成分を除去する。
【0024】
スキャナ15は、フラットベッドタイプのイメージスキャナであり、原稿台に置かれ原稿カバーで覆われた原稿に対し、撮像素子を移動させて原稿を読み取る。また、複合機1は、図示しない自動原稿送り装置(ADF)を搭載し、スキャナ15は、撮像素子を固定したまま、ADFによって自動搬送される原稿を読み取ることもできる。尚、本実施形態では、スキャナ15の移動方向を副走査方向、その副走査方向と直交する方向を主走査方向とする。操作パネル16には、各種操作ボタンや液晶表示装置(例えば、LCD)が設けられている。ユーザは、操作パネル16を操作することで、各種機能の設定や、LCDに表示される画面に従って画像種別を入力できる。印刷ヘッド17は、主走査方向に往復移動しながら、副走査方向に搬送される用紙に対してインクを吐出して用紙に画像を印刷するシリアルヘッドである。印刷ヘッド17を副走査に挟む上流側と下流側との各々には搬送ローラが配設されている。各搬送ローラは、用紙の表面側と裏面側とから用紙を挟んだ状態で用紙を副走査方向の上流側から下流側に搬送し、印刷ヘッド17は、各搬送ローラの間で主走査方向に往復移動しながら用紙に画像を印刷する。CRモータ18は、印刷ヘッド17を搭載したキャリッジを、主走査方向に移動させるモータである。LFモータ19は、副走査方向に用紙を搬送するモータである。I/F20は、例えば、複合機1をインターネットやLAN回線に接続するネットワークインタフェース、複合機1をUSB装置に接続するUSBインターフェースである。
【0025】
図2は、元画像から面内ムラを除去した補正画像を生成する過程を実信号を使って説明する図である。図2(a)は、面内ムラを含む元画像を示している。元画像はA4サイズの原稿(210[mm]×297[mm])から読み取ったものである。面内ムラは、スキャナ15の特性に起因して発生するものであり、図2(a)に示す場合は、スキャナ15の副走査方向(矢印Y方向)に沿って発生している。面内ムラは、例えば、原稿カバーの一端側に何かしらの圧力が生じている場合や、ADFによって自動搬送される場合の原稿のカール癖等の影響により発生する。また、本実施形態では、画像種別がテキスト、グラフッィクである場合、面内ムラを示す低周波成分は±0.003[cycle/mm]の範囲、写真、その他の場合、面内ムラを示す低周波成分は±0.002[cycle/mm]の範囲とする。即ち、本実施形態では、面内ムラの周期が、297[mm]×0.003[cycle/mm]=0.891[周期]、297[mm]×0.002[cycle/mm]=0.594[周期]という、画像の長さ(297[mm])の1周期以内で発生するものを除去対象とする。
【0026】
図2(b)は、元画像をY方向に1次元化した1次元信号を示している。1次元信号は、スキャナ15で読み取った元画像(RGB値)を輝度値Lに変換し、X方向に並ぶ各輝度値Lを1列毎に平均化して、Y方向に1次元化したものである。1次元信号の一端と、他端とで輝度値Lに差があることが分かる。図2(c)は、ミラー信号を示している。ミラー信号は、1次元信号と、1次元信号を図中の右端で反転させた反転信号とを連結して生成される。ミラー信号では、Y座標の両端で輝度値Lが一致しているのが分かる。そのため、ミラー信号を離散フーリエ変換することでエッジ効果を抑制できる。図2(d)は、ミラー信号を離散フーリエ変換した信号を示している。この信号から、低周波成分のスペクトルが、高周波成分のスペクトルよりも際立って高いことが分かる。これは、ミラー信号を離散フーリエ変換した結果、エッジ効果が抑制され、低周波成分が拡散せずに適切に出現していることを示している。尚、離散フーリエ変換に代えて、離散コサイン変換、離散サイン変換、KL変換などによってミラー信号を複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換しても良い。
【0027】
図2(e)は、離散フーリエ変換した信号から、高周波成分を除去した信号を示している。高周波成分を除去するのは、離散フーリエ変換した信号から高周波成分を除去することで、面内ムラを示す低周波成分を高周波成分から分離し、残った低周波成分を元画像から減算することで、面内ムラが除去された補正画像を生成するためである。図2(f)は、高周波成分が除去された信号を、逆離散フーリエ変換した信号を示している。図2(g)は、逆離散フーリエ変換した信号から、予め算出しておいた全画素の輝度値Lの平均値μを減算した信号を示している。平均値μを減算するのは、逆離散フーリエ変換した信号から、高周波成分を除去したので、それを補間するためである。
【0028】
図2(h)は、逆離散フーリエ変換した信号から、不必要な信号領域をカットした信号を示している。図2(b)に示す1次元信号から、図2(c)に示すミラー信号を生成しているので、逆離散フーリエ変換した信号には、不必要な信号領域が含まれている。そのため、不必要な信号領域をカットしている。これにより、面内ムラを示す低周波成分を示す信号が生成される。図2(i)は、図2(h)に示す信号を元画像から減算することで、元画像から面内ムラが除去され補正画像を示している。図2(h)に示す信号が、面内ムラを示す信号なので、かかる信号を、元画像から減算することで、元画像から面内ムラが除去され補正画像を生成できる。
【0029】
図3は、第1実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。画像補正処理は、元画像から面内ムラを除去した補正画像を生成する処理である。この処理は、使用者の指示があった場合にCPU11によって画像補正プログラム12aに従って実行される。CPU11は、原稿をスキャナ15で読み取った画像データを取得し(S301)、取得した画像データのカラープレーン(RGB値)を分解し(S302)、一つのカラープレーンを選択し(S303)、全画素値の平均値μを算出する(S304)。S301の処理で取得した画像データが、図2(a)に示す元画像に相当する。CPU11は、画像データを取得すると、図2で説明した方法で1次元信号を生成し(S305)、生成した1次元信号と、その生成した1次元信号をX方向の端を境に反転した信号とを連結してミラー信号を生成する(S306)。尚、S305の処理で生成する1次元信号が図2(b)、S306の処理で生成するミラー信号が図2(c)に示す信号に相当する。そして、CPU11は、生成したミラー信号を離散フーリエ変換し(S307)、離散フーリエ変換した信号から高周波成分を除去する処理を行う(S308)。尚、S307の処理で離散フーリエ変換した信号が図2(d)、S307の処理で高周波成分を除去した信号が図2(e)に示す信号に相当する。
【0030】
図4は、高周波成分除去処理を示すフローチャートである。この処理は、図3のS307の処理で変換した離散フーリエ信号から高周波成分を除去する処理である。換言すれば、図3のS307の処理で変換した離散フーリエ信号から面内ムラを示す低周波成分を残す処理である。CPU11は、図3のS307で変換した離散フーリエ信号を取得し(S401)、処理対象となる画像の種別を取得する(S402)。画像種別は、その都度、LCDを介してユーザに入力を求めても良いし、取得した画像データを原稿解析により自動判別しても良い。
【0031】
次に、CPU11は、画像種別がテキストかを判断し(S403)、テキストであれば(S403:Yes)、補正関数テーブル14aに基づいて、補正関数をn1(f)に設定し(S404)、テキストでなければ(S403:No)、グラフィックかを判断し(S405)、グラフィックであれば(S405:Yes)、補正関数をn2(f)に設定し(S406)、グラフィックでなければ(S405:No)、写真かを判断し(S407)、写真であれば(S407:Yes)、補正関数をn3(f)に設定し(S408)、写真でなければ(S407:No)、補正関数をn4(f)に設定する(S409)。こうして、各画像種別毎に、補正関数n1(f)〜n4(f)を設定すると、高周波成分を除去すると共に、設定した補正関数1(f)〜n4(f)に従って、残すことになる低周波成分のスペクトル強度を補正し(S410)、本処理を終了する。
【0032】
図4(b)を参照して、補正関数n1(f)〜n4(f)について説明する。図4(b)は、補正関数n1(f)〜n4(f)を示すグラフであり、縦軸が低周波成分として残す割合いn(f)[%]、横軸が周波数f[cycle/mm]を示している。
【0033】
補正関数n1(f)〜n4(f)は、画像種別に応じて、低周波数成分とする範囲を設定する。例えば、補正関数n1(f),n2(f)は、±0.003[cycle/mm]の範囲、補正関数n3(f),n4(f)は、±0.002[cycle/mm]の範囲を低周波数成分とする。換言すれば、補正関数n1(f),n2(f)は、画像種別に応じて、高周波数成分の範囲を設定する。具体的には、補正関数n1(f),n2(f)が設定されている場合、±0.003[cycle/mm]を超える範囲を、補正関数n3(f),n4(f)が設定されている場合は、±0.002[cycle/mm]の範囲を超える範囲を、高周波成分とし、高周波成分を、図4のS410の処理において、S401で取得した画像データから除去する。このように、画像種類に応じて、除去する高周波数成分の範囲を変更することで、画像種類に応じて、面内ムラを示す低周波成分の除去と、取得した画像データの特性維持とのバランスを正確にとることができる。例えば、補正関数n3(f)が設定される写真は、補正関数n1(f)が設定されるテキストよりも低周波成分が低く狭く設定される。即ち、写真はテキストよりも元画像の影響をテキストよりも大きく残すことができ、取得した画像データの特性を維持することができる。
【0034】
また、補正関数n1(f)〜n4(f)は、低周波数成分のうち、低周波成分として残すスペクトル強度の割合いを規定する。補正関数n1(f)〜n4(f)は、何れも上に凸の2次関数によって構成されているので、低周波数成分のうち、空間周波数が小さくなる程、低周波成分として残すスペクトル強度の割合いを大きくする。但し、0[cycle/mm](直流成分)は、完全に残るよう、何れもn(0)=100%とする。このように、低周波数成分であっても、空間周波数が小さくなる程、面内ムラを示す可能性が高いので、空間周波数が小さくなる程、残すスペクトル強度の割合いを大きくすることで、面内ムラを示す低周波成分の除去と、取得した画像データの特性維持とのバランスを正確にとることができる。
【0035】
再び、図3に戻り、説明を続ける。CPU11は、離散フーリエ変換した信号から高周波成分を除去すると(S308)、高周波成分が除去された離散フーリエ変換した信号を、逆離散フーリエ変換する(S309)。逆離散フーリエ変換した値は、虚数値なので、絶対値に変換し(S310)、更に、整数値に変換する(S311)。尚、S309の逆離散フーリエ変換した信号が図2(f)に示す信号に相当する。そして、CPU11は、S311の出力信号の各値に対し、S304で算出した全画素の輝度値の平均値μを減算し(S312)、元の信号領域を切り出し(S313)、切り出した信号を面内ムラ情報として、元画像の各画素から減算する面内ムラ情報減算処理を行う(S314)。尚、S312の処理で平均値μを減算した信号が図2(g)、S313の処理で元の信号領域を切り出した信号が図2(h)に示す信号に相当する。
【0036】
図5(a)は、面内ムラ情報減算処理を示すフローチャートである。この処理は、図3のS313の処理で得られた信号を1次元面内ムラ情報e(x)とし、その1次元面内ムラ情報e(x)を、元画像の各画素から減算することで、元画像から面内ムラを除去した補正画像を生成する処理である。尚、図5(b)は、S501で取得する画像データの一例を示し、図5(c)は、S502で取得する1次元面内ムラ情報e(x)の一例を示している。
【0037】
CPU11は、画像データl(x,y)を取得し(S501)、図3のS313で得られた信号を1次元面内ムラ情報e(x)として取得し(S502)、初期値としてx=1(S503)、y=1に設定し(S504)、画像データl(x,y)から1次元面内ムラ情報e(x)を減算する(S505)。これにより、画像データl(x,y)について面内ムラを除去することができる。以後は、全画像データl(x,y)に同様の処理を行うべく、CPU11は、yに「1」を加算し(S506)、yが画像の縦幅に到達したかを判断し(S507)、到達していない場合(S507:No)、S505からの処理を繰り返す。一方、CPU11は、yが画像の縦幅に到達している場合(S507:Yes)、次の列に移行すべく、xに「1」を加算し(S508)、xが画像の横幅に到達したかを判断し(S509)、到達していない場合(S509:No)、S504からの処理を繰り返し、到達している場合(S509:Yes)、本処理を終了する。こうして、全画像データl(x,y)から面内ムラを除去することができる。
【0038】
再び、図3に戻り、説明を続ける。S303の処理において選択した一つのプレーンについて、S304〜S314までの処理が行われ、面内ムラが除去されると、CPU11は、全プレーンを処理したかを判断し(S315)、処理していないと判断した場合には(S315:No)、S303からの処理を繰り返し、全プレーンを処理した場合には(S315:Yes)、S303〜S314までの処理が行われた各プレーンを合成し(S316)、本処理を終了する。
【0039】
次に、図6〜図8を参照して第2実施形態の画像補正処理について説明する。上述した第1実施形態は、元画像を1次元化して補正する場合ついて説明したが、第2実施形態は、2次元離散フーリエ変換を使って元画像を補正する。図6は、2次元離散フーリエ変換を施す画像について、従来の手法と、本発明の手法とを比較して説明する図である。図6(a1)および(a2)が従来の手法、図6(b1)〜(b3)が本発明の手法を示している。尚、図6(a1)と図6(b1)とは、面内ムラを含む同じ元画像を示し、図6(a2)、(b2)、(b3)に示す線分は、繋ぎ目Kを示すものであり、各画像に本来的に含まれるものではない。また、2次元離散フーリエ変換に代えて、2次元離散コサイン変換、2次元離散サイン変換、2次元KL変換などのいずれかを使って元画像を変換するようにしても良い。
【0040】
従来の手法において、2次元離散フーリエ変換を施す画像は、図6(a1)に示す元画像である。元画像は、第1実施形態と同様にスキャナ15により原稿が読み取られた画像であり、右下角部から放射状に濃度が段々と濃くなるような、面内ムラが含まれている。この元画像について、2次元離散フーリエ変換を施すと、2次元離散フーリエ変換の性質上、元画像は、元画像を縦横に無限に繋げた画像として処理される。その様子を図6(a2)に示すが、図6(a2)では、その一部として、元画像を縦横に2つずつ繋げた画像だけを図示している。この場合、図6(a2)に示すように、濃度が薄い部分と、濃い部分とが繋がる部分では、繋ぎ目Kおいて、急激な濃度変化が生じ、その影響で、2次元離散フーリエ変換された画像には、本来含まれない周波数成分が出現する、というエッジ効果が発生する。一方、本発明の手法によれば、エッジ効果を抑制することができる。
【0041】
本発明の手法において、2次元離散フーリエ変換を施す画像は、図6(b1)に示す元画像でなく、図6(b3)に示すミラー画像である。図6(b3)に示すミラー画像は次の通り、生成される。まず、図6(b1)に示す元画像から、図6(b2)に示す画像を生成する。即ち、元画像と、その元画像を図中左端を境に反転した画像とを連結して、図6(b2)に示す画像を生成する。次に、図6(b3)に示すミラー画像を生成する。即ち、図6(b2)に示す画像と、その図6(b2)に示す画像を図中下端を境に反転した画像とを連結して、図6(b3)に示すミラー画像を生成する。図6(b3)に示すミラー画像は、図6(a2)に示す画像と比べ、繋ぎ目Kにおいて、濃度が連続的に変化していることが分かる。よって、この図6(b3)に示すミラー画像に、2次元離散フーリエ変換を施すことで、本発明の手法では、エッジ効果を抑制できる。
【0042】
図7(a)は、従来の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトル、図7(b)は本発明の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルを示す図である。即ち、図7(a)は、図6(a1)に示す元画像を、2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトル、図7(b)は、図6(b3)に示すミラー画像を、2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルを示している。
【0043】
図7(a)と図7(b)とに示すフーリエスペクトルを比較すると明らかなように、図7(a)は、エッジ効果により、低周波成分(0[cycle/mm]付近の周波数)がX方向にもY方向にも拡散して出現しているのが分かる。これに対し、図7(b)は、図6(b3)に示すミラー画像を2次元離散フーリエ変換しているので、エッジ効果が抑制されている。即ち、元画像の低周波成分が拡散せず、適切な位置に集中して出現していることが分かる。そのため、従来の手法では、図7(a)に示すフーリエスペクトルから、X方向にもY方向にも拡散している元画像の低周波数成分を適切に分離することはできない。これに対し、本発明の手法であれば、元画像の低周波数成分が適切な位置に集中して出現しているので、図7(b)に示すフーリエスペクトルから低周波成分を適切に分離することができる。従って、本発明の手法によれば、図7(b)に示すフーリエスペクトルから適切に分離した低周波成分を、元画像から減算することで、面内ムラを示す低周波成分を適切に除去した補正画像を生成できる。
【0044】
図8は、第2実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。CPU11は、原稿をスキャナ15で読み取った画像データを取得し(S801)、取得した画像データのカラープレーン(RGB値)を分解し(S802)、一つのカラープレーンを選択し(S803)、全画素値の平均値μを算出する(S804)。尚、S801で取得した画像データが、例えば、図6(b1)に示す元画像に相当する。次に、CPU11は、取得した画像と、取得した画像をX方向の端を境に反転した画像とを連結した画像を生成し(S805)、更に、S805で生成した画像と、そのS805で生成した画像をY方向の端を境に反転した画像とを連結したミラー画像を生成し(S806)、そのミラー画像に2次元離散フーリエ変換を施す(S807)。尚、S805で生成される画像が図6(b2)、S806で生成されるミラー画像が図6(b3)に示す画像に相当し、S807の処理で生成される2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルが図7(b)に示すフーリエスペクトルに相当する。
【0045】
次に、CPU11は、2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルから、低周波成分(例えば、±0.003[cycle/mm]の範囲)以外の範囲である高周波成分を除去する(S808)。尚、この場合も、第1実施形態と同様に、画像種別毎に補正関数を設定し、その補正関数に従って高周波成分を除去すると共に、低周波成分のスペクトル強度を補正しても良い。そして、高周波成分を除去した画像を、逆離散フーリエ変換し(S809)、絶対値に変換し(S810)、更に、整数値に変換する(S811)。次に、CPU11は、S811の出力信号の各値に対し、S804で算出した輝度値の平均値μを減算し(S812)、元の信号領域を切り出し(S813)、面内ムラ情報減算処理を行う(S814)。面内ムラ情報減算処理は、第1実施形態の場合と同様に、S813で得られた画像を2次元面内ムラ情報として、その2次元面内ムラ情報を、元画像の各画素から減算する。こうして、S803の処理において選択した一つのプレーンについて、S803〜S814までの処理が行われ、面内ムラが除去されると、CPU11は、全プレーンを処理したかを判断し(S815)、処理していないと判断した場合には(S815:No)、S803からの処理を繰り返し、全プレーンを処理した場合には(S815:Yes)、S803〜S814までの処理が行われた各プレーンを合成し(S816)、本処理を終了する。
【0046】
次に、図9,10を参照して、評価対象画像に発生しているバンディングの評価値を算出する方法について説明する。図9(a)は、バンディング評価処理を示すフローチャートである。バンディング評価処理は、印刷ヘッド17によって原稿に印刷された画像を、スキャナ15で読み取り、画像に発生しているバンディングを評価するためのバンディング評価値を算出する処理である。この処理は、ユーザからの指示があった場合に開始される。CPU11は、評価対象となる画像データを取得する(S901)。具体的には、ユーザからの指示があると、フラッシュメモリ14に記憶されているテスト画像を印刷ヘッド17によって印刷する。テスト画像が印刷された原稿をスキャナ15で読み取り、その読み取った画像データを画像データメモリ13aに記憶する。尚、原稿サイズはA4として、スキャナ15の特性として、スキャナ15の副走査方向に面内ムラが発生するものとする。
【0047】
図9(b)は、テスト画像を示す図である。図9(b)に示す通り、原稿Gに印刷されるテスト画像100は、スキャナ15の副走査方向Yに沿って延びる5本の帯状のパターン画像100a〜100eを、スキャナ15の主走査方向Xに並べて構成されている。また、パターン画像100aからパターン画像100eの順番で濃度が薄くなるように構成されている。このようにテスト画像を構成することで、複数濃度を含んだ状態のバンディング評価値を得ることができる。また、適切な1次元信号を抽出できる。尚、テスト画像100としては、単一濃度で原稿Gの一面を印刷しても良いし、任意な画像としても良い。
【0048】
CPU11は、評価対象となる画像データを取得すると、取得した画像データ(RGB値)を、輝度値Lに変換し(S902)、輝度値Lの1次元信号を生成する(S903)。1次元信号は、第1実施形態で説明したのと同様に、X方向に並ぶ各輝度値Lを1行毎に平均化して、Y方向に1次元化して生成する。CPU11は、生成した1次元信号と、その生成した1次元信号をX方向の端を境に反転した信号とを連結してミラー信号を生成し(S904)、生成したミラー信号を離散フーリエ変換する(S905)。このように、ミラー信号を離散フーリエ変換することで、上述した通り、エッジ効果を抑制できる。
【0049】
そして、CPU11は、離散フーリエ変換した信号から、低周波成分を除去する(S906)。例えば、±0.003[cycle/mm]の範囲を低周波成分として除去する。この場合、離散フーリエ変換した信号は、エッジ効果が抑制されているので、面内ムラを示す低周波成分は拡散しておらず、適切に出現しているので、面内ムラを示す低周波成分を離散フーリエ変換した信号から適切に除去できる。そして、CPU11は、低周波成分が除去された離散フーリエ変換した信号に基づいて、バンディング評価値を算出するためのバンディング評価値算出処理を実行し(S907)、本処理を終了する。このように、低周波成分が適切に除去された離散フーリエ変換した信号に基づいて、バンディング評価値を算出しているので、低周波成分に影響されない適切なバンディング評価値を算出できる。
【0050】
図10は、バンディング評価値算出処理を示すフローチャートである(S907)。CPU11は、図9(a)に示すS906の処理で、低周波成分が除去された離散フーリエ変換した信号から、スペクトルX(u)を取得し(S1001)、そのスペクトルX(u)を絶対値|X(u)|に変換する(S1002)。尚、この変換した絶対値|X(u)|が、ウィナースペクトルの平方根に相当する。そして、CPU11は、絶対値に変換したスペクトル|X(u)|に、次式に示す、VTF(Visual Transfer Function、視覚伝達関数)を乗算(S1003)する。尚、次式では、視間距離l[mm]を500[mm]、u[cycle/mm]は空間周波数を示している。
【0051】
視間距離l[mm]を500[mm]にすることで、粒状性評価よりもバンディング評価に適した評価値を算出することができる。即ち、一般的に、粒状性評価においては、視間距離l[mm]は、100〜500[mm]に設定されるが、バンディング評価としては接近しすぎであり、適切なバンディング評価値を算出できない。そこで、視間距離l[mm]を、粒状性消失距離よりも長い500[mm]〜1800[mm]の範囲にすることで、粒状性評価よりもバンディング評価に適した評価値を算出できる。
【0052】
【数1】

CPU11は、S1003の処理で得られるスペクトルのうち、スペクトル強度が高い上位N個(例えば、1〜100個)のスペクトル値を抽出し(S1004)、その抽出した上位N個のスペクトル値の総和を算出する(S1005)。このように、S1003の処理で得られたスペクトルの全部でなく、上位N個の周波数スペクトルの総和を算出することで、スペクトル強度が小さく、バンディングとは無関係なノイズ成分を除外してバンディング評価値を算出することができる。そして、CPU11は、S1005で算出した総和を、切り出した画像の長さで割って正規化し(S1006)、S1006の処理で算出した値を、バンディング評価値として取得し(S1007)、本処理を終了する。
【0053】
上記の実施形態において、複合機1が画像処理装置の一例である。CPU11が実行する図3,8の画像補正処理が画像処理プログラムの一例である。CPU11が実行する図3のS301の処理、図8のS801の処理が第1の取得手段、第1の取得ステップの一例である。CPU11が実行する図3のS306の処理、図8のS805、S806の処理がミラーリング手段、ミラーリングステップの一例である。CPU11が実行する図3のS307の処理、図8のS807の処理が変換手段、変換ステップの一例である。CPU11が実行する図3のS308の処理、図8のS808の処理が第1の抽出手段、第1の抽出ステップの一例である。CPU11が実行する図3のS309〜S313の処理、図8のS809〜S813の処理が第2の取得手段、第2の取得ステップの一例である。CPU11が実行する図3のS314の処理、図8のS814の処理が生成手段、生成ステップの一例である。CPU11が実行する図4(a)のS404,S406,S408,S409,S410の処理が第1補正手段、第2補正手段、変更手段の一例である。CPU11が実行する図4(a)のS402の処理が特定手段の一例である。CPU11が実行する図8のS805の処理が第1生成手段の一例である。CPU11が実行する図8のS806の処理が第2生成手段の一例である。CPU11が実行する図3のS305の処理が第2の抽出手段の一例である。CPU11が実行する図9(a)のS901の処理が画像データ取得手段の一例である。CPU11が実行する図9(a)のS904の処理がミラーリング手段の一例である。CPU11が実行する図9(a)のS905が変換手段の一例である。CPU11が実行する図9(a)のS906が除去手段の一例である。CPU11が実行する図9(a)のS907の処理が評価値算出手段の一例である。
【0054】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0055】
上記第1実施形態では、原稿サイズがA4の場合であって、画像種別がテキスト、グラフッィクである場合には、±0.003[cycle/mm]の範囲を、写真、その他の場合には、±0.002[cycle/mm]の範囲を、低周波成分とする場合について説明した。しかし、低周波成分とするのは、かかる範囲に限定されるものではなく、周期が画像長の1周期以内のものであれば良い。例えば、原稿がA4サイズ(210[mm]×297[mm])であれば、横方向には、1[周期]/210[mm]=0.0047619[cycle/mm]以下を低周波成分とし、縦方向には、1[周期]/297[mm]=0.0033670[cycle/mm]以下を低周波成分としても良い。即ち、原稿の縦、横のサイズに応じて、低周波成分とする範囲を変更しても良く、原稿サイズに応じて、低周波成分とする範囲を変更しても良い。かかる場合には、より正確に、面内ムラを示す低周波成分を除去できる。
【0056】
また、上記第1実施形態では、Y方向に沿って発生している面内ムラを除去する場合について説明したが、面内ムラがX方向とY方向との2次元で発生するような場合、Y方向について図3で説明した画像補正処理を実行した後に、X方向について図3で説明した画像補正処理を再度実行すれば良い。この場合には、2次元で発生する面内ムラを適切に除去できる。
【0057】
また、上記第1実施形態では、画像種別に応じて、低周波成分とする範囲を変更する場合について説明した。しかし、画像種別に拘わらず、低周波成分としては、画像長の1周期以内として固定し、その低周波成分以外の範囲は高周波成分として一律に除去し、低周波成分として残すスペクトル強度を、画像種別に応じて補正しても良い。例えば、テキストであれば、100%残し、グラフッィクであれば75%残し、写真であれば50%残し、その他であれば25%残すように構成しても良い。この場合も、画像種別に応じて、面内ムラ除去と、取得した画像データの特性維持とのバランスを正確にとることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、スキャナ15の特性に起因する面内ムラを除去する場合について説明したが、補正対象となる元画像に、面内ムラを示す低周波成分ではないものの、かかる低周波成分と重複する周波数成分が含まれる場合には、かかる低周波成分が示す濃度ムラも除去される。但し、低周波成分とされるのは、その周期が画像長の1周期以内とされるものであり、かかる周期の低周波成分は、元画像が本来的に持っている濃度ムラである可能性よりも、何らかの外的な要因に基づく濃度ムラである可能性が高い。よって、かかる外的な要因に基づく濃度ムラも適切に除去できる。
【0059】
また、上記実施形態では、複合機1を本発明の画像処理装置として説明したが、本発明の画像処理装置としては、複合機1に限られず、例えば、図2に示すCPU11、ROM12、RAM13、フラッシュメモリ14に相当する構成を備えた制御装置(例えば、PC)を本発明の画像処理装置とし、そのPCによってプリンタ、コピー機、複合機を制御するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 複合機
12a 画像補正プログラム
12b バンディング評価プログラム
15 スキャナ
17 印刷ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する第1の取得手段と、
前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いて得られるミラーデータを生成するミラーリング手段と、
前記ミラーデータを、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換手段と、
前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を抽出する第1の抽出手段であって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記第1の抽出手段と、
抽出された前記低周波成分のスペクトルを逆変換することによって、前記低周波成分を示す低周波画像データを取得する第2の取得手段と、
前記画像データと前記低周波画像データとを用いて、前記画像から前記低周波成分が除外された補正画像データを生成する生成手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の抽出手段は、
前記低周波成分のスペクトル強度を、0%より大きく100%以下の範囲に補正する第1補正手段を備え、
前記第1補正手段によって補正された前記低周波成分を抽出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の抽出手段は、
前記画像データの種類を特定する特定手段を備え、
前記第1補正手段は、前記特定手段によって特定された前記画像データの種類に応じた補正強度を用いて、前記低周波成分のスペクトル強度を補正することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1補正手段は、前記画像データの種類がイメージである場合、前記画像データの種類がテキストである場合よりも、前記補正強度を小さくして補正することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の抽出手段は、
前記低周波成分のうち、空間周波数が低いものよりも、高いものの補正強度を小さくして、前記低周波成分のスペクトル強度を小さくする方向に補正する第2補正手段を備え、
前記第2補正手段によって補正された前記低周波成分を抽出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の抽出手段は、
前記画像データの種類を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記画像データの種類に応じて、前記低周波成分の周波数帯を変更する変更手段とを備え、
前記変更手段によって変更された周波数帯に含まれる前記低周波成分を抽出することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ミラーリング手段は、
前記第1の取得手段によって取得した画像データに対応する画像と、前記画像をX方向に反転した第1反転画像とを連結した第1ミラー画像を生成する第1生成手段と、
前記第1生成手段によって生成された第1ミラー画像と、前記第1ミラー画像を前記X方向と直交するY方向に反転した第2反転画像とを連結した第2ミラー画像を生成する第2生成手段とを備え、
前記第2生成手段によって生成された第2ミラー画像を、前記ミラーデータとして生成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記ミラーリング手段は、
前記第1の取得手段によって取得した画像データから抽出するものであって、前記画像データの画素値をX方向に平均化して前記X方向と直交するY方向に1次元化したY方向データと、前記画像データの画素値を前記Y方向に平均化して前記X方向に1次元化したX方向データとのうち、何れか一方を1次元画像データとして抽出する第2の抽出手段を備え、
前記第2の抽出手段によって抽出された1次元画像データと、前記1次元画像データを前記1次元画像データに対称に反転した反転データとを連結して、前記ミラーデータを生成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の取得手段は、原稿から読取装置によって読み取られた画像データを取得し、
前記第2の抽出手段は、前記読取装置の特性に起因して、前記濃度ムラが発生する方向と一致する方向に、前記第1の取得手段によって取得した画像データの画素値を1次元化することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いて得られるミラーデータを生成するミラーリング手段と、
前記ミラーデータを、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換手段と、
前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を除去する除去手段であって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記除去手段と、
前記低周波成分が除去された前記スペクトルを用いて、前記画像に含まれるバンディングを示すバンディング評価値を算出する評価値算出手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
画像データを取得する第1の取得ステップと、
前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いて得られるミラーデータを生成するミラーリングステップと、
前記ミラーデータを、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換ステップと、
前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を抽出する第1の抽出ステップであって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記第1の抽出ステップと、
抽出された前記低周波成分のスペクトルを逆変換することによって、前記低周波成分を示す低周波画像データを取得する第2の取得ステップと、
前記画像データと前記低周波画像データとを用いて、前記画像から前記低周波成分が除外された補正画像データを生成する生成ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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