説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】エッジ効果を抑制することで、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できる、または、低周波成分に影響されない適切なバンディング評価値または適切な粒状性評価値を算出できる画像処理装置および画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】元画像b1と、その元画像を図中左端を境に反転した画像とを連結して画像b2を生成する。次に、画像b2と、画像b2を図中下端を境に反転した画像とを連結して、ミラー画像b3を生成する。ミラー画像は、画像a2と比べ繋ぎ目Kにおいて、濃度が連続的に変化している。よって、ミラー画像を2次元離散フーリエ変換することで、エッジ効果を抑制できる。従って、2次元離散フーリエ変換したスペクトルから低周波成分を適切に除去でき、元画像から濃度ムラを適切に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像の濃度ムラを除去する画像処理方式に関し、処理対象となる画像に直交変換(例えば、離散フーリエ変換、離散コサイン変換、離散サイン変換、KL変換など)を施して直交変換画像を生成し、その直交変換画像から低周波成分を除去することで、画像の濃度ムラを除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−189134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、エッジ効果に対して何ら対処されていないので、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できないという問題点があった。
【0005】
ここで、エッジ効果について説明する。直交変換は、有限長の情報を、無限長の情報として処理する。すなわち、処理対象となる有限長の画像は、その有限長の画像を縦にも横にも無限に繋げた無限長の画像として処理される。そのため、繋げられる端部同士に濃度差があると、その繋ぎ目で極端な濃度変化が生じ、その影響で、変換後のスペクトルには、変換前の画像に本来含まれない周波数成分が出現する。この現象が、エッジ効果である。
【0006】
エッジ効果が発生すると、変換前の画像に本来含まれていた低周波成分は、変換後のスペクトルでは拡散して出現してしまい、もはや変換後のスペクトルからは、変換前の画像に本来含まれていた低周波成分を適切に抽出できない。そのため、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できないという問題点があった。
【0007】
また、従来から、画像を直交変換することによりバンディングに関する評価値や粒状性に関する評価値を算出することが行われている。しかしながら、上述した通り、直交変換画像において、エッジ効果により、変換前の画像に本来含まれない周波数成分が出現すると、その影響でバンディングに関する評価値や粒状性に関する評価値を適切に算出できないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、エッジ効果を抑制することで、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できる、または、低周波成分に影響されない適切なバンディング評価値または適切な粒状性評価値を算出できる画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、画像データを取得する取得手段と、前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを連結したミラー画像を生成するミラーリング手段と、前記ミラー画像を、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換手段と、前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を除去する除去手段であって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記除去手段とを備えている。
【0010】
上記の画像処理装置において、取得手段によって取得した画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを用いてミラーデータが生成されるため、取得した画像データの端部の濃度差が喪失される。よって、ミラーデータをスペクトルに変換することでエッジ効果を抑制できる。また、エッジ効果が抑制されるので、変換されたスペクトルに、変換前の画像に本来含まれる低周波数成分を適切に出現させることができる。従って、画像の低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去できるという効果がある。または、画像の低周波成分が適切に除去されたスペクトルを用いて、前記画像に含まれるバンディングを示すバンディング評価値を算出することで、低周波成分に影響されない適切なバンディング評価値を算出できるという効果がある。また、画像の低周波成分が適切に除去されたスペクトルを用いて、前記画像に含まれる粒状性を示す粒状性評価値を算出することで、低周波成分に影響されない適切な粒状性評価値を算出できるという効果がある。
【0011】
上記の画像処理装置において、低周波成分が除去されたスペクトルを逆変換し、画像から低周波成分が除去された補正画像データが生成されてもよい。よって、取得した画像データから低周波成分で構成される濃度ムラが適切に除去された補正画像データを生成できるという効果がある。
【0012】
上記の画像処理装置において、低周波成分のスペクトル強度が0%より大きく100%以下の範囲に補正され、除去されてもよい。よって、低周波成分で構成される濃度ムラを適切に除去しつつ、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0013】
上記の画像処理装置において、低周波成分のスペクトル強度を補正する場合には、画像データの種類に応じた補正強度で補正されてもよい。よって、画像データの種類に応じて、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0014】
上記の画像処理装置において、画像データの種類がイメージである場合、テキストよりも、補正強度を小さくして補正されてもよい。イメージは、テキストよりも、低周波成分のスペクトルが、取得した画像データの特性を示している可能性が高い。よって、かかる補正強度で補正することで、イメージは、テキストよりも取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。尚、イメージには、グラフッィク(図形、線図)、写真等を含む。
【0015】
上記の画像処理装置において、低周波成分は、スペクトル強度を小さくする補正がされて除去されるが、この場合、空間周波数が低いものよりも、高いものの方が補正強度を小さくして補正されてもよい。低周波成分のうち、空間周波数が低いものは、高いものよりも濃度ムラを示している可能性が高い。よって、かかる補正をすることで、取得した画像データの特性維持と、濃度ムラ除去とのバランスを正確にとることができるという効果がある。
【0016】
上記の画像処理装置において、低周波成分の周波数帯は、画像データの種類に応じて変更され、その変更された周波数帯に含まれる低周波成分が除去されてもよい。よって、画像データの種類に応じて、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0017】
上記の画像処理装置において、低周波成分は直流成分を含み、補正画像データは、取得手段によって取得した画像データを構成する画素値の平均値を、低周波成分が除去された空間周波数のスペクトルを逆変換して得られる逆変換画像データに加算して生成されてもよい。よって、低周波成分として除去した直流成分を生成する補正画像データに補間できる。従って、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0018】
上記の画像処理装置において、低周波成分には、直流成分が含まれなくてもよい。即ち、直流成分は低周波成分として除去されないので、補正画像データを生成する場合に直流成分を補間する必要がない。従って、処理工程を削減しつつ、取得した画像データの特性を維持できるという効果がある。
【0019】
本発明の画像処理プログラムは、上記の画像処理装置と同様の効果を奏することができる。なお、本発明は、画像処理装置を制御する制御装置、画像処理方法、画像処理装置を制御する画像処理プログラム、該プログラムを記録する記録媒体等の種々の態様で実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は複合機の電気的構成を示すブロック図である。(b)は補正関数テーブルを示す図である。
【図2】2次元離散フーリエ変換を施す画像について、従来の手法と、本発明の手法とを比較して説明する図である。
【図3】(a)は従来の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトル、(b)は本発明の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルを示す図である。
【図4】第1実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。
【図5】(a)は低周波成分除去処理を示すフローチャートである。(b)は補正関数を示すグラフである。
【図6】第2実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。
【図7】(a)は粒状性評価処理を示すフローチャートである。(b)はテスト画像を示す図である。
【図8】粒状性評価値算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の画像処理装置の一実施形態である複合機1の電気的構成を示すブロック図である。複合機1は、スキャナ機能、コピー機能、プリンタ機能を有し、特に、スキャナの特性に起因する濃度ムラ(以下、「面内ムラ」と称す)を適切に除去できるものである。
【0022】
複合機1には、CPU11、ROM12、RAM13、フラッシュメモリ14が設けられ、これらは、バス16を介してASIC15に接続されている。ASIC15には、スキャナ15、操作パネル16、印刷ヘッド17、キャリッジモータ(CRモータ18)、用紙搬送モータ(LFモータ19)、インターフェース(I/F20)が接続され、これらは、ASIC15、バス16を介してCPU11によって制御される。
【0023】
CPU11は、ROM12やフラッシュメモリ14に記憶される固定値やプログラムに従って、複合機1が有している各機能の制御や、ASIC15と接続された各構成を制御する。ROM12は、書換不能なメモリであり、画像補正プログラム12aと、粒状性評価プログラム12bとが記憶されている。CPU11は、画像補正プログラム12aに従い、後述する画像補正処理(図4,図6)を実行する。また、CPU11は、粒状性評価プログラム12bに従い、後述する粒状性評価処理(図7(a))を実行する。RAM13は、書換可能な揮発性のメモリであり、画像データメモリ13aが設けられている。画像データメモリ13aには、スキャナ15で読み取った画像データ、I/F20を介して取得した画像データ等が記憶される。フラッシュメモリ14は、書換可能な不揮発性のメモリであり、補正関数テーブル14aが記憶されている。
【0024】
図1(b)は、補正関数テーブル14aを示す図である。補正関数テーブル14aには、画像種別(テキスト、グラフィック、写真、その他)に応じて、補正関数(n1(f)〜n4(f))が記憶されている。CPU11は、後述する低周波成分除去処理(図5(a))において、補正対象となる画像種別に応じて、対応する補正関数を補正関数テーブル14aから読み出し、その補正関数に従って補正した低周波成分を除去する。
【0025】
スキャナ15は、フラットベッドタイプのイメージスキャナであり、原稿台に置かれ原稿カバーで覆われた原稿に対し、撮像素子を移動させて原稿を読み取る。また、複合機1は、図示しない自動原稿送り装置(ADF)を搭載し、スキャナ15は、撮像素子を固定したまま、ADFによって自動搬送される原稿を読み取ることもできる。尚、本実施形態では、スキャナ15の移動方向を副走査方向、その副走査方向と直交する方向を主走査方向とする。操作パネル16には、各種操作ボタンや液晶表示装置(例えば、LCD)が設けられている。ユーザは、操作パネル16を操作することで、各種機能の設定や、LCDに表示される画面に従って画像種別を入力できる。
【0026】
印刷ヘッド17は、主走査方向に往復移動しながら、副走査方向に搬送される用紙に対してインクを吐出して用紙に画像を印刷するシリアルヘッドである。印刷ヘッド17を副走査に挟む上流側と下流側との各々には搬送ローラが配設されている。各搬送ローラは、用紙の表面側と裏面側とから用紙を挟んだ状態で用紙を副走査方向の上流側から下流側に搬送し、印刷ヘッド17は、各搬送ローラの間で主走査方向に往復移動しながら用紙に画像を印刷する。CRモータ18は、印刷ヘッド17を搭載したキャリッジを、主走査方向に移動させるモータである。LFモータ19は、副走査方向に用紙を搬送するモータである。I/F20は、例えば、複合機1をインターネットやLAN回線に接続するネットワークインタフェース、複合機1をUSB装置に接続するUSBインターフェースである。
【0027】
次に、図2〜図5を参照して第1実施形態の画像補正処理について説明する。画像補正処理は、2次元離散フーリエ変換を使って元画像から面内ムラが除去された補正画像を生成する処理である。図2は、2次元離散フーリエ変換を施す画像について、従来の手法と、本発明の手法とを比較して説明する図である。図2(a1)および(a2)が従来の手法、図2(b1)〜(b3)が本発明の手法を示している。尚、図2(a2)、(b2)、(b3)に示す線分は、繋ぎ目Kを示すものであり、各画像に本来的に含まれるものではない。また、2次元離散フーリエ変換に代えて、2次元離散コサイン変換、2次元離散サイン変換、2次元KL変換などのいずれかを使って元画像を変換するようにしても良い。
【0028】
図2(a1)と図2(b1)とは、面内ムラを含む同じ元画像を示している。元画像はA4サイズの原稿(210[mm]×297[mm])から読み取ったものである。面内ムラは、スキャナ15の特性に起因して発生するものであり、図2(a1)と図2(b1)に示す場合は、右下角部から放射状に濃度が段々と濃くなるように発生している。面内ムラは、例えば、原稿カバーの一端側に何かしらの圧力が生じている場合や、ADFによって自動搬送される場合の原稿のカール癖等の影響により発生する。
【0029】
本実施形態では、画像種別がテキスト、グラフッィクである場合、面内ムラを示す低周波成分は±0.003[cycle/mm]の範囲、写真、その他の場合、面内ムラを示す低周波成分は±0.002[cycle/mm]の範囲とする。即ち、本実施形態では、面内ムラの周期が、297[mm]×0.003[cycle/mm]=0.891[周期]、297[mm]×0.002[cycle/mm]=0.594[周期]という、画像の長さ(297[mm])の1周期以内で発生するものを低周波成分とする。
【0030】
従来の手法において、2次元離散フーリエ変換を施す画像は、図2(a1)に示す元画像である。この元画像について、2次元離散フーリエ変換を施すと、2次元離散フーリエ変換の性質上、元画像は、元画像を縦横に無限に繋げた画像として処理される。その様子を図2(a2)に示すが、図2(a2)では、その一部として、元画像を縦横に2つずつ繋げた画像だけを図示している。この場合、図2(a2)に示すように、濃度が薄い部分と、濃い部分とが繋がる部分では、繋ぎ目Kおいて、急激な濃度変化が生じ、その影響で、2次元離散フーリエ変換された画像には、本来含まれない周波数成分が出現する、というエッジ効果が発生する。一方、本発明の手法によれば、エッジ効果を抑制することができる。
【0031】
本発明の手法において、2次元離散フーリエ変換を施す画像は、図2(b1)に示す元画像でなく、図2(b3)に示すミラー画像である。図2(b3)に示すミラー画像は次の通り、生成される。まず、図2(b1)に示す元画像から、図2(b2)に示す画像を生成する。即ち、元画像と、その元画像を図中右端を境に反転した画像とを連結して、図2(b2)に示す画像を生成する。次に、図2(b3)に示すミラー画像を生成する。即ち、図2(b2)に示す画像と、その図2(b2)に示す画像を図中下端を境に反転した画像とを連結して、図2(b3)に示すミラー画像を生成する。図2(b3)に示すミラー画像は、図2(a2)に示す画像と比べ、繋ぎ目Kにおいて、濃度が連続的に変化していることが分かる。よって、この図2(b3)に示すミラー画像に、2次元離散フーリエ変換を施すことで、本発明の手法では、エッジ効果を抑制できる。
【0032】
図3(a)は、従来の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトル、図3(b)は本発明の手法で2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルを示す図である。即ち、図3(a)は、図2(a1)に示す元画像を、図3(b)は、図2(b3)に示すミラー画像を、それぞれ2次元離散フーリエ変換したフーリエスペクトルを示している。
【0033】
図3(a)と図3(b)とに示すスペクトルを比較すると明らかなように、図3(a)は、エッジ効果により、元画像の低周波成分がX方向にもY方向にも拡散して出現しているのが分かる。これに対し、図3(b)は、図2(b3)に示すミラー画像を2次元離散フーリエ変換しているので、エッジ効果が抑制されている。即ち、元画像の低周波成分が拡散せず、本来の位置に集中して出現していることが分かる。従来の手法では、図3(a)に示すフーリエスペクトルから、X方向にもY方向にも拡散している元画像の低周波数成分を適切に除去することはできない。これに対し、本発明の手法であれば、元画像の低周波成分が本来の位置に集中して出現しているので、図3(b)に示すフーリエスペクトルから低周波成分を適切に除去することができる。従って、本発明の手法によれば、図3(b)に示すフーリエスペクトルから適切に元画像の低周波成分を除去できるので、面内ムラを示す低周波成分を適切に除去した補正画像を生成できる。
【0034】
図4は、第1実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。この処理は、使用者の指示があった場合にCPU11によって画像補正プログラム12aに従って実行される。CPU11は、原稿をスキャナ15で読み取った画像データを取得し(S401)、取得した画像データのカラープレーン(RGB値)を分解し(S402)、一つのカラープレーンを選択し(S403)、全画素値の平均値μを算出する(S404)。尚、S401の処理で取得した画像データが、図2(b1)に示す元画像に相当する。そして、CPU11は、取得した画像と、取得した画像をX方向の端を境に反転した画像とを連結した画像を生成し(S405)、更に、S405で生成した画像と、そのS405で生成した画像をY方向の端を境に反転した画像とを連結したミラー画像を生成し(S406)、そのミラー画像に2次元離散フーリエ変換を施す(S407)。尚、S405で生成される画像が図2(b2)に示す画像、S406で生成されるミラー画像が図2(b3)に示すミラー画像に相当し、S407の処理で生成される2次元離散フーリエ変換したスペクトルが図3(b)に示すフーリエスペクトルに相当する。そして、CPU11は、2次元離散フーリエ変換した信号から低周波成分を除去する処理を行う(S408)。
【0035】
図5は、低周波成分除去処理を示すフローチャートである。この処理は、図4のS407の処理で変換した2次元離散フーリエ変換した信号から低周波成分を除去する処理である。CPU11は、図4のS407で変換した2次元離散フーリエ変換した信号を取得し(S501)、処理対象となる画像の種別を取得する(S502)。画像種別は、その都度、LCDを介してユーザに入力を求めても良いし、取得した画像データを原稿解析により自動判別しても良い。
【0036】
次に、CPU11は、画像種別がテキストかを判断し(S503)、テキストであれば(S503:Yes)、補正関数テーブル14aに基づいて、補正関数をn1(f)に設定し(S504)、テキストでなければ(S503:No)、グラフィックかを判断し(S505)、グラフィックであれば(S505:Yes)、補正関数をn2(f)に設定し(S506)、グラフィックでなければ(S505:No)、写真かを判断し(S507)、写真であれば(S507:Yes)、補正関数をn3(f)に設定し(S508)、写真でなければ(S507:No)、補正関数をn4(f)に設定する(S509)。こうして、各画像種別毎に、補正関数n1(f)〜n4(f)を設定すると、設定した補正関数1(f)〜n4(f)に従って低周波成分を補正し、補正された低周波成分を除去し(S510)、本処理を終了する。
【0037】
図5(b)を参照して、補正関数n1(f)〜n4(f)について説明する。図5(b)は、補正関数n1(f)〜n4(f)を示すグラフであり、縦軸が除去率n(f)[%]、横軸が周波数f[cycle/mm]を示している。補正関数n1(f)〜n4(f)は、画像種別に応じて、低周波数成分とする範囲を設定する。例えば、補正関数n1(f),n2(f)は、±0.003[cycle/mm]の範囲、補正関数n3(f),n4(f)は、±0.002[cycle/mm]の範囲を低周波数成分とする。このように、画像種類に応じて、除去する低周波数成分の範囲を変更することで、画像種類に応じて、面内ムラを示す低周波成分の除去と、取得した画像データの特性維持とのバランスを正確にとることができる。例えば、補正関数n3(f)が設定される写真は、補正関数n1(f)が設定されるテキストよりも低周波成分が低く狭く設定される。即ち、写真はテキストよりも元画像の影響をテキストよりも大きく残すことができ、取得した画像データの特性を維持することができる。
【0038】
また、補正関数n1(f)〜n4(f)は、低周波数成分のうち、低周波成分として除去するスペクトル強度の割合いを規定する。補正関数n1(f)〜n4(f)は、何れも上に凸の関数によって構成されているので、低周波数成分のうち、空間周波数が小さくなる程、低周波成分として除去するスペクトル強度の割合いを大きくする。空間周波数が小さくなる程、面内ムラを示す可能性が高いからである。よって、低周波数成分であっても、空間周波数が小さくなる程、除去するスペクトル強度の割合いを大きくすることで、面内ムラを示す低周波成分の除去と、取得した画像データの特性維持とのバランスを正確にとることができる。但し、0[cycle/mm](直流成分)は、完全に除去するよう、何れもn(0)=100%とする。これは、後述のS412の処理により直流成分が加算されるためである。尚、直流成分とは、周波数が0である成分であり、平均値に対応する。
【0039】
再び、図4に戻り、説明を続ける。CPU11は、2次元離散フーリエ変換した信号から低周波成分を除去すると(S408)、低周波成分が除去された2次元離散フーリエ変換した信号を、2次元逆離散フーリエ変換する(S409)。2次元逆離散フーリエ変換した値は、虚数値として得られるので、絶対値に変換し(S410)、更に、整数値に変換する(S411)。そして、CPU11は、S411の出力信号の各値に対し、S404で算出した全画素の平均値μを加算し(S412)、S408で直流成分を除去したことを補間する。次に、CPU11は、S412の処理で生成された信号から元の信号領域を切り出す(S413)。即ち、S406の処理で取得した画像データからミラー画像を生成し、そのミラー画像をS407の処理で2次元離散フーリエ変換しているので、2次元逆離散フーリエ変換した信号にも、本来含まれていない信号領域が含まれている。そのため、元の信号領域を切り出すのである。
【0040】
こうして、S413の処理が終了すると、S403で選択した一つのプレーンについて、面内ムラを示す低周波成分が除去された画像を得ることができる。そして、CPU11は、全プレーンを処理したかを判断し(S314)、処理していないと判断した場合には(S414:No)、S403からの処理を繰り返し、全プレーンを処理した場合には(S414:Yes)、S403〜S414までの処理が行われた各プレーンを合成し(S415)、本処理を終了する。
【0041】
図6は、第2実施形態の画像補正処理を示すフローチャートである。第1実施形態の画像補正処理は、図4に示す通り、S404の処理で、全画素値の平均値μを算出し、S408では、直流成分(0[cycle/mm]のスペクトル)は完全に除去し、S412の処理で、S404の処理で算出した平均値μを、2次元逆離散フーリエ変換した信号に加算する処理を行っていた。
【0042】
これに対し、第2実施形態の画像補正処理では、第1実施形態における図4に示すS404の処理と、S412の処理とに相当する処理は行わず、S606の処理で2次元離散フーリエ変換した2次元離散フーリエ信号から、S607の処理において、直流成分(0[cycle/mm]のスペクトル)を除去せず、直流成分以外の低周波成分を除去する点で、第1実施形態の画像補正処理と異なる。
【0043】
このように、第2実施形態の画像補正処理を構成しても、第1実施形態の画像補正処理と同様に、面内ムラが適切に除去された補正画像を生成できる上、第1実施形態における図4に示すS404の処理と、S412の処理とに相当する処理とは、行わない分、第1実施形態の画像補正処理よりも、高速に、画像補正処理を行うことができる。尚、図6に示すその他の処理は、図4で示す処理と同様なので、その説明は省略する。
【0044】
次に、図7,8を参照して、評価対象画像に発生している粒状性の評価値を算出する方法について説明する。図7(a)は、粒状性評価処理を示すフローチャートである。粒状性評価処理は、印刷ヘッド17によって原稿に印刷された画像を、スキャナ15で読み取り、画像に発生している粒状性を評価するための粒状性評価値を算出する処理である。この処理は、ユーザからの指示があった場合に開始される。CPU11は、評価対象となる画像データを取得する(S701)。具体的には、ユーザからの指示があると、フラッシュメモリ14に記憶されているテスト画像を印刷ヘッド17によって印刷する。テスト画像が印刷された原稿をスキャナ15で読み取り、その読み取った画像データを画像データメモリ13aに記憶する。尚、原稿サイズはA4として、スキャナ15の特性として、スキャナ15の副走査方向に面内ムラが発生するものとする。
【0045】
図7(b)は、テスト画像を示す図である。図7(b)に示す通り、原稿Gに印刷されるテスト画像100は、副走査方向Yに沿って延びる5本の帯状のパターン画像100a〜100eを、主走査方向Xに並べて構成されている。また、パターン画像100aからパターン画像100eの順番で濃度が薄くなるように構成されている。このようにテスト画像を構成することで、複数濃度を含んだ状態の粒状性評価値を得ることができる。また、適切な1次元信号を抽出できる。尚、テスト画像100としては、単一濃度で原稿Gの一面を印刷しても良いし、任意な画像としても良い。
【0046】
CPU11は、評価対象となる画像データを取得すると、取得した画像データ(RGB値)を、輝度値Lに変換し(S702)、その輝度値Lに変換した画像と、その画像をX方向の端を境に反転した画像とを連結し(S703)、更に、その連結した画像と、その連結した画像をY方向の端を境に反転した画像とを連結したミラー画像を生成し(S704)、その生成したミラー画像を、2次元離散フーリエ変換する(S705)。このように、ミラー画像を2次元離散フーリエ変換することで、上述した通り、エッジ効果を抑制できる。そして、CPU11は、2次元離散フーリエ変換した信号から、低周波成分を除去する(S706)。例えば、±0.003[cycle/mm]の範囲を低周波成分として除去する。この場合、2次元離散フーリエ変換した信号は、エッジ効果が抑制されているので、面内ムラを示す低周波成分は拡散しておらず、本来の位置に出現しているので、面内ムラを示す低周波成分を適切に除去できる。そして、CPU11は、低周波成分が除去された2次元離散フーリエ変換した信号に基づいて、粒状性評価値を算出するための粒状性評価値算出処理を実行し(S707)、本処理を終了する。このように、低周波成分が適切に除去された2次元離散フーリエ変換した信号に基づいて、粒状性評価値を算出しているので、低周波成分に影響されない適切な粒状性評価値を算出できる。
【0047】
図8は、粒状性評価値算出処理を示すフローチャートである(S707)。CPU11は、図7(a)に示すS706の処理で、低周波成分が除去された2次元離散フーリエ変換した信号から、スペクトルX(u)を取得し(S801)、そのスペクトルX(u)を絶対値|X(u)|に変換する(S802)。尚、この変換した絶対値|X(u)|が、ウィナースペクトルの平方根に相当する。そして、CPU11は、絶対値に変換したスペクトル|X(u)|に、次式に示す、VTF(Visual Transfer Function、視覚伝達関数)を乗算(S803)する。尚、次式では、視間距離l[mm]を300[mm]、u[cycle/mm]は空間周波数を示している。一般的に、粒状性評価においては、視間距離l[mm]は、100〜500[mm]に設定されるためである。
【0048】
【数1】

CPU11は、S803の処理で得られるスペクトルのうち、スペクトル強度が高い上位N個(例えば、1〜100個)のスペクトル値を抽出し(S804)、その抽出した上位N個のスペクトル値の総和を算出する(S805)。このように、S803の処理で得られたスペクトルの全部でなく、上位N個の周波数スペクトルの総和を算出することで、スペクトル強度が小さく、粒状性とは無関係なノイズ成分を除外して粒状性評価値を算出することができる。そして、CPU11は、S805で算出した総和を、切り出した画像の長さで割って正規化し(S806)、S806の処理で算出した値を、粒状性評価値として取得し(S807)、本処理を終了する。
【0049】
上記の実施形態において、複合機1が画像処理装置の一例である。CPU11が実行する図4,6の画像補正処理が画像処理プログラムの一例である。CPU11が実行する図4のS401の処理、図6のS601の処理、図7(a)S701の処理が取得手段、取得ステップの一例である。CPU11が実行する図4のS405,S406の処理、図6のS604,S605の処理、図7(a)のS703,S704の処理がミラーリング手段、ミラーリングステップの一例である。CPU11が実行する図4のS407の処理、図6のS606の処理、図7(a)のS705の処理が変換手段、変換ステップの一例である。CPU11が実行する図3のS408の処理、図6のS607の処理、図7(a)のS706が除去手段、除去ステップの一例である。CPU11が実行する図4のS409〜S415の処理、図6のS608〜S613の処理が生成手段の一例である。CPU11が実行する図5(a)のS504,S506,S508,S509,S510の処理が第1補正手段、第2補正手段、変更手段の一例である。CPU11が実行する図5(a)のS502の処理が特定手段の一例である。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0051】
上記実施形態では、原稿サイズがA4の場合であって、画像種別がテキスト、グラフッィクである場合には、±0.003[cycle/mm]の範囲を、写真、その他の場合には、±0.002[cycle/mm]の範囲を、低周波成分とする場合について説明した。しかし、低周波成分とするのは、かかる範囲に限定されるものではなく、周期が画像長の1周期以内のものであれば良い。例えば、原稿がA4サイズ(210[mm]×297[mm])であれば、横方向には、1[周期]/210[mm]=0.0047619[cycle/mm]以下を低周波成分とし、縦方向には、1[周期]/297[mm]=0.0033670[cycle/mm]以下を低周波成分としても良い。即ち、原稿の縦、横のサイズ、または、原稿サイズに応じて、低周波成分とする範囲を変更しても良い。かかる場合には、より正確に、面内ムラを示す低周波成分を除去できる。
【0052】
また、上記実施形態では、画像種別に応じて、低周波成分とする範囲を変更する場合について説明した。しかし、画像種別に拘わらず、低周波成分としては、画像長の1周期以内として固定しておき、低周波成分として除去するスペクトル強度を、画像種別に応じて補正しても良い。例えば、テキストであれば、100%除去し、グラフッィクであれば75%除去し、写真であれば50%除去し、その他であれば25%除去ように構成しても良い。この場合でも、画像種別に応じて、面内ムラ除去と、取得した画像データの特性維持とのバランスを正確にとることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、スキャナ15の特性に起因する面内ムラを除去する場合について説明したが、補正対象となる元画像に、面内ムラを示す低周波成分ではないものの、かかる低周波成分と重複する周波数成分が含まれる場合には、かかる低周波成分が示す濃度ムラも除去される。但し、低周波成分とされるのは、その周期が画像長の1周期以内とされるものであり、かかる周期の低周波成分は、元画像が本来的に持っている濃度ムラである可能性よりも、何らかの外的な要因に基づく濃度ムラである可能性が高い。よって、かかる外的な要因に基づく濃度ムラも除去することで、適切に濃度ムラを除去できる。
【0054】
また、上記実施形態では、複合機1を本発明の画像処理装置として説明したが、本発明の画像処理装置としては、複合機1に限られず、例えば、図2に示すCPU11、ROM12、RAM13、フラッシュメモリ14に相当する構成を備えた制御装置(例えば、PC)を本発明の画像処理装置とし、そのPCによってプリンタ、コピー機、複合機を制御するように構成しても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、取得した画像データを輝度値Lに変換し、輝度値Lに変換した画像データをX方向の端を境に反転し、さらにその反転画像をY方向の端を境に反転させた、ミラー画像に2次元離散フーリエ変換を行うことにより、粒状性評価値を算出する場合を説明したが、これに限らない。即ち、ミラー画像をX方向およびY方向のいずれか一方に1次元化し、1次元信号をミラーリングする場合には、バンディング評価値を算出し得る。より一般的に説明すると、画像データの輝度値Lの2次元信号を抽出した場合には、粒状性評価値を算出可能であり、画像データの輝度値Lの1次元信号を抽出した場合には、バンディング評価値を算出可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 複合機
12a 画像補正プログラム
12b 粒状性評価プログラム
15 スキャナ
17 印刷ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する取得手段と、
前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを連結したミラー画像を生成するミラーリング手段と、
前記ミラー画像を、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換手段と、
前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を除去する除去手段であって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記除去手段とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記低周波成分が除去された前記スペクトルを逆変換することによって、前記画像から前記低周波成分が除去された補正画像データを生成する生成手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記除去手段は、
前記低周波成分のスペクトル強度を、0%より大きく100%以下の範囲に補正する第1補正手段を備え、
前記第1補正手段によって補正された前記低周波成分を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記除去手段は、
前記画像データの種類を特定する特定手段を備え、
前記第1補正手段は、前記特定手段によって特定された前記画像データの種類に応じた補正強度を用いて、前記低周波成分のスペクトル強度を補正することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1補正手段は、前記画像データの種類がイメージである場合、前記画像データの種類がテキストである場合よりも、前記補正強度を小さくして補正することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記除去手段は、
前記低周波成分の空間周波数のうち、空間周波数が低いものよりも、高いものの補正強度を小さくして、前記低周波成分のスペクトル強度を、小さくする方向に補正する第2補正手段を備え、
前記第2補正手段によって補正された前記低周波成分を除去することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記除去手段は、
前記画像データの種類を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記画像データの種類に応じて、前記低周波成分の周波数帯を変更する変更手段とを備え、
前記変更手段によって変更した周波数帯に含まれる前記低周波成分を除去することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記取得手段によって取得した画像データを構成する画素値の平均値を算出する算出手段を備え、
前記低周波成分は、直流成分を含み、
前記生成手段は、前記算出手段によって算出した平均値を、前記低周波成分が除去された前記スペクトルを逆変換して得られる逆変換画像データに加算して、前記補正画像データを生成することを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記低周波成分には、直流成分が含まれないことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像データを取得する取得ステップと、
前記画像データに対応する画像と、前記画像を前記画像に対称に反転した反転画像とを連結したミラー画像を生成するミラーリングステップと、
前記ミラー画像を、複数の空間周波数に対応する複数の強度を示すスペクトルに変換する変換ステップと、
前記スペクトルに含まれる複数の空間周波数から、低周波成分を除去する除去ステップであって、前記低周波成分は、所定の空間周波数以下の空間周波数であり、前記所定の空間周波数は、前記画像の幅を1周期以下とする空間周波数である、前記除去ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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