説明

画像処理装置及び方法

【目的】カラー画像の濃度レンジによる彩度変動が少なく、また絵柄に応じて自動的に良好な色再現を実現可能にする。
【構成】画像信号の最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように階調補正した後、ガンマ補正して赤、緑、青を示すデジタル画像信号R,G,Bを得る画像処理系において、予め3×3行列(A11〜A33)を1セットとする複数セットの彩度補正係数を準備し、この複数セットの彩度補正係数から最小輝度と最大輝度との輝度比に応じて適宜の彩度補正係数を選択する。そして、前記デジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいて、次式、│R′│ │A111213││R││G′│=│A212223││G││B′│ │A313233││B│の演算を実行して彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を求めるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は画像処置装置及び方法に係り、特にカラー画像を撮影して得たデジタル画像信号R,G,Bをデジタル処理する画像処理装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ネガフイルムのカラー画像をイメージセンサで撮像し、そのカラー画像を示す映像信号をモニタTVやビデオプリンタに出力することができるフイルムスキャナが提案されている。この種のフイルムスキャナでは、イメージセンサから出力されるR,G,B信号に対して白バランス、黒バランス、ネガポジ反転、ガンマ補正等の画像処理が行われ、またガンマ補正されたR,G,B信号はYCC変換回路によって輝度信号Yとクロマ信号CR,B に変換する処理が行われている。
【0003】ところで、上記R,G,B信号の白バランス、黒バランスを調整する場合、イメージセンサから出力されるR,G,B信号から各色別に基準最小値及び基準最大値を算出し、これらの基準最小値及び基準最大値がそれぞれ映像信号の最小及び最大の階調を示すようにR,G,B信号別にオフセットするとともに、ゲイン調整するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のようにしてR,G,B信号の階調を調整すると、ネガフイルム上の濃度レンジの広さ(上記基準最小値と基準最大値との輝度比が大きさ)に応じて、後段のガンマ補正におけるトータルガンマが相対的に変化し、輝度比が大きい場合には相対的に小さいトータルガンマが使用され、輝度比か小さい場合には相対的に大きいトータルガンマが使用される。
【0005】これにより輝度比が大きい場合には彩度が低下し、輝度比か小さい場合には彩度が強調されるという問題がある。また、カラー画像には撮影光源、光質により彩度の高い絵柄や、彩度の低い絵柄があるが、従来、絵柄によって自動的に彩度を補正して好ましい色調になるように色再現するようにしたものがなかった。
【0006】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、カラー画像の濃度レンジによる彩度変動が少なく、また絵柄に応じて自動的に良好な色再現を実現することができる画像処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、カラー画像を撮影して得た画像信号から最大輝度及び最小輝度を求め、該最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように前記画像信号を補正した後、ガンマ補正して赤、緑、青を示すデジタル画像信号R,G,Bを得る画像処理手段と、予め3×3行列(A11〜A33)を1セットとする複数セットの彩度補正係数を記憶する記憶手段と、前記複数セットの彩度補正係数から前記最大輝度と最小輝度との輝度比が大きい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択し、輝度比が小さい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択する選択手段と、前記デジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいて、次式、│R′│ │A111213││R││G′│=│A212223││G││B′│ │A313233││B│の演算を実行して彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を算出する演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】また、本発明は、カラー画像を撮影して得た画像信号から最大輝度及び最小輝度を求め、該最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように前記画像信号を補正した後、ガンマ補正して赤、緑、青を示すデジタル画像信号R,G,Bを得る画像処理手段と、予め4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを1セットとする複数セットの彩度補正係数を記憶する記憶手段と、前記複数セットの彩度補正係数から前記最大輝度と最小輝度との輝度比が大きい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択し、輝度比が小さい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択する選択手段と、前記デジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいてクロマ信号CR ,CB を、次式、CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
から算出する演算手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】更に、前記画像処理手段のかわりに、カラー画像を撮影して得た画像信号から該カラー画像の彩度の大きさを検出する検出手段を設け、且つ前記選択手段は、前記複数セットの彩度補正係数から前記検出したカラー画像の彩度が大きい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択し、彩度が小さい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択することを特徴としている。
【0010】更にまた、カラー画像を撮像して得られる赤、緑、青を示すデジタル信号R,G,Bを輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB に変換する画像処理方法において、前記デジタル信号R,G,Bに基づいて前記輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB を、次式、Y ={(R/2+R/8)+(G+G/8)+B/4}/2CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
によって算出するとともに、上式の4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを、それぞれ次式、KRR=NRR/2N1, −KRB=NRB/2N2−KBR=NBR/2N3, KBB=NBB/2N4(但し、NRR〜NBB及びN1〜N4は整数)で表現したことを特徴としている。
【0011】
【作用】本発明によれば、画像信号の最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように階調補正した後、ガンマ補正して赤、緑、青を示すデジタル画像信号R,G,Bを得る画像処理系において、最小輝度と最大輝度との輝度比が大きい場合には、彩度を強調する彩度補正係数を使用し、輝度比か小さい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択し、この選択した彩度補正係数を使用して前記デジタル画像信号R,G,Bから彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を算出するようにしている。即ち、予め3×3行列(A11〜A33)を1セットとする複数セットの彩度補正係数を準備し、この複数セットの彩度補正係数から前記輝度比に応じて適宜の彩度補正係数を選択する。そして、前記デジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいて、次式、│R′│ │A111213││R││G′│=│A212223││G││B′│ │A313233││B│の演算を実行して彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を求めるようにしている。
【0012】本発明の他の態様によれば、デジタル画像信号R,G,Bと4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを1セットとする彩度補正係数とに基づいてクロマ信号CR ,CB を、次式、CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
から算出する際に、上記と同様にして輝度比の大きさによって彩度補正係数を可変にしている。
【0013】本発明の更に他の態様によれば、上記輝度比の代わりに、カラー画像を撮影して得た画像信号から該カラー画像の彩度の大きさを検出し、この検出したカラー画像の彩度が大きい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択し、彩度が小さい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択するようにしている。本発明の他の態様によれば、カラー画像を撮像して得られる赤、緑、青を示すデジタル信号R,G,Bを輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB に変換する画像処理方法において、前記デジタル信号R,G,Bに基づいて前記輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB を、次式、Y ={(R/2+R/8)+(G+G/8)+B/4}/2CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
によって算出するとともに、上式の4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを、それぞれ次式、KRR=NRR/2N1, −KRB=NRB/2N2−KBR=NBR/2N3, KBB=NBB/2N4(但し、NRR〜NBB及びN1〜N4は整数)で表現し、これによりYCC変換を行う回路の簡略化を図るようにしている。
【0014】
【実施例】以下添付図面に従って本発明に係る画像処理装置及び方法の好ましい実施例を詳説する。図1は本発明が適用されるフイルムスキャナの一実施例を示す要部ブロック図である。このフイルムスキャナは、主として照明用の光源10、撮影レンズ12、CCDラインセンサ14、アナログアンプ16、A/Dコンバータ18、デジタル信号処理回路20、モータ31、キャプスタン32及びピンチローラ33を含むフイルム駆動装置、中央処理装置(CPU)40等を備えている。
【0015】光源10は、フイルムカートリッジ50内から引き出される現像済みのネガフイルム52を図示しない赤外カットフィルタを介して照明し、フイルム52を透過した透過光は、撮影レンズ12を介してCCDラインセンサ14の受光面に結像される。CCDラインセンサ14は、フイルム搬送方向と直交する方向に1024画素分の受光部が配設されており、CCDラインセンサ14の受光面に結像された画像光は、R,G,Bフィルタが設けられて各受光部で電荷蓄積され、光の強さに応じた量のR,G,Bの信号電荷に変換される。このようにして蓄積されたR,G,Bの電荷は、CCD駆動回路15から加えられる1ライン周期のリードゲートパルスが加えられると、シフトレジスタに転送されたのちレジスタ転送パルスによって順次電圧信号として出力される。また、このCCDラインセンサ14は、各受光部に隣接してシャッターゲート及びシャッタードレインが設けられており、このシャッターゲートをシャッターゲートパルスによって駆動することにより、受光部に蓄積された電荷をシャッタードレインに掃き出すことができる。即ち、このCCDラインセンサ14は、CCD駆動回路15から加えれるシャッターゲートパルスに応じて受光部に蓄積する電荷を制御することができる、いわゆる電子シャッター機能を有している。
【0016】上記CCDラインセンサ14から読み出されたR,G,B電圧信号は、図示しないCDSクランプによってクランプされてアナログアンプ16に加えられ、ここで後述するようにゲインが制御される。アナログアンプ16から出力される1コマ分のR,G,B電圧信号はA/Dコンバータ18によって点順次のR,G,Bデジタル画像信号に変換されたのち、デジタル信号処理回路20によって後述する白バランス、黒バランス、ネガポジ反転、ガンマ補正等が行われ、YCC変換回路35によって輝度信号Yとクロマ信号CR,B に変換される。そして、輝度信号Yとクロマ信号CR,B は、図示しない画像メモリに記憶される。
【0017】尚、画像メモリに記憶された1コマ分の輝度信号Yとクロマ信号CR,B は、繰り返し読み出され、D/Aコンバータによってアナログ信号に変換されたのち、エンコーダでNTSC方式の複合映像信号に変換されてモニタTVに出力される。これにより、モニタTVよってフイルム画像を見ることができるようになる。
【0018】フイルム駆動装置は、フイルムカートリッジ50のスプール50Aと係合し、そのスプール50Aを正転/逆転駆動するフイルム供給部と、このフイルム供給部から送出されるフイルム52を巻き取るフイルム巻取部と、フイルム搬送路に配設され、フイルム52をモータ31によって駆動されるキャプスタン32とピンチローラ33とで挟持してフイルム32を所望の速度で搬送する手段とから構成されている。尚、上記フイルム供給部は、フイルムカートリッジ50のスプール50Aを図1上で時計回り方向に駆動し、フイルム先端がフイルム巻取部によって巻き取られるまでフイルムカートリッジ50からフイルム52を送り出すようにしている。また、CPU40は、モータ回転数/方向制御回路34を通じてモータ31の正転/逆転、起動/停止、パルス幅変調によるフイルム搬送速度の制御を行うことができる。
【0019】さて、フイルムカートリッジ50がカートリッジ収納部(図示せず)にセットされ、フイルムカートリッジ50からフイルム52が送り出されてフイルム先端がフイルム巻取部の巻取軸に巻き付けられると(フイルムローディングが完了すると)、フイルム52が一定速度で搬送される。これにより、フイルム画像のスキャンが行われ、CCDラインセンサ14、アナログアンプ16及びA/Dコンバータ18を介して積算ブロック41に点順次のR,G,Bデジタル画像信号が取り込まれる。
【0020】積算ブロック41は、R,G,Bデジタル画像信号毎に所定の積算エリアのデジタル画像信号の階調(本実施例では、9ビット(0〜511)の階調)を積算し、その積算エリアの平均階調を求め、1画面に付き5000〜10000点数の積算エリアの各階調データを作成する。更に、積算ブロック41は、順次作成される階調データに基づいて各階調毎の度数をカウントし、この度数が階調データの総点数に対して設定された閾値TH(本実施例では総点数の1%)を越えた場合にはカウントを停止する。即ち、積算ブロック41は、図2に示すように0〜511までの全ての階調に対して最大閾値THまでカウントした簡易ヒストグラム(図2中の斜線で示すヒストグラム)を作成し、CPU40に出力する。尚、上記閾値THを越える度数をカウントしないことにより、カウンタのビット数を大幅に低減することができる。また、図2上で2点鎖線は、総点数をカウントした場合の本来のヒストグラムである。
【0021】CPU40は、図2に示した簡易ヒストグラムの階調の小さい方から度数を順次累算し、その累算度数が前記閾値THと一致又は最初に越えたときの階調を基準最小値としてR,G,B毎に求めるとともに、簡易ヒストグラムの階調の大きい方から度数を順次累算し、その累算度数が前記閾値THと一致又は最初に越えたときの階調を基準最大値としてR,G,B毎に求める。
【0022】次に、白バランス、黒バランス、ネガポジ反転、ガンマ補正等を行うデジタル信号処理回路20について説明する。先ず、白バランス及び黒バランスを合わせるために使用するオフセット値、ゲイン量の算出方法について説明する。CPU40は、前記R,G,B毎に求めた基準最大値に基づいてR,G,B毎のオフセット値を算出するとともに、基準最大値及び基準最小値に基づいてR,G,B毎のゲイン量を算出する。即ち、Rの基準最大値をRref max 、基準最小値をRref min とすると、上記オフセット値及びゲイン量は、次式、 オフセット値=511−Rref max …(1)
ゲイン量=511/(Rref max −Rref min ) …(2)
により算出する。
【0023】尚、式(1)、(2)は、Rに関するものであるが、他の色チャンネルも同様にして算出する。また、ここでは、R,G,Bのデジタル画像信号は9ビットとして表しており、511はその最大値である。そして、スキャン時にA/Dコンバータ18から出力されるオリジナルRorgに対して、次式、 R1=Rorg +オフセット値 …(3)
に示すようにRのオフセット値を加算することによって黒点オフセットされたデジタル画像信号R1を得ることができる。G,Bのオリジナルについても同様の処理を行うことににより、R,G,Bデジタル画像信号のピーク値(ポジ画像の黒)が一致させられる(図3(A)参照)。
【0024】続いて、上記オフセットされたデジタル画像信号R1に対して、次式、 R2=511−R1 …(4)
の演算を実行することにより、ネガポジ反転が行われる(図3(B)参照)。次に、ネガポジ反転されたデジタル画像信号R2に対して、式(2)で求めたゲイン量を、次式に示すように乗算することにより、 R3=R2×ゲイン量 …(5)
デジタル画像信号R,G,Bの他方のピーク値(ポジ画像の白)が一致させられる(図3(C)参照)。
【0025】最後に、ゲイン量が乗算されたデジタル画像信号R,G,Bにそれぞれ異なるガンマ補正を行うことにより、グレーが合わせられる(図3(D)参照)。次に、上記ガンマ補正について更に詳細に説明する。先ず、図4に示すようにガンマ補正をする際の基準となるルックアップテーブル(以下、ベースLUTという)を準備する。
【0026】このベースLUTは、ネガフイルムがもっているガンマの曲線とブラウン管に出力される映像信号がもっているガンマ(一般的にはγ=0.45)の曲線との差分を示すガンマ補正値が各階調毎に記憶されている。尚、入出力特性を示す実際のルックアップテーブル(以下、実際のLUTという)は、図4(A)に示すように関数y=xからベースLUT(ガンマ補正値)を差し引いたものである。
【0027】また、ベースLUTに対して、ガンマゲインを乗算することにより、ベースLUTを変化させることができる(図4(B)参照)。これにより1つのベースLUTから適宜のガンマゲインを乗算することにより、R,G,B毎にガンマ補正値が伸長又は圧縮されたLUTを得ることができる。尚、図4(C)は、関数y=xからそれぞれR,G,B毎にガンマ補正値が伸長又は圧縮されたLUTを差し引くことにより得られるR,G,B毎の実際のLUTである。
【0028】従って、前述した式(3)〜(5)によって白バランス及び黒バランスが合わされ、ネガポジ反転された点順次のデジタル画像信号R,G,Bに対してガンマ補正を行う場合には、点順次のデジタル画像信号R,G,Bに基づいて前記ベースLUTから順次ガンマ補正値を読み出し、そのガンマ補正値にR,G,B毎のガンマゲインを乗算して適宜伸長又は圧縮したガンマ補正値を求め、点順次のR,G,Bデジタル画像信号から色別に伸長又は圧縮したガンマ補正値を減算することにより点順次で各色別にガンマ補正を行うことができる。
【0029】図5は図1に示したデジタル信号処理回路20の内部構成を含むブロック図である。このデジタル信号処理回路20は上述したデジタル信号処理を行うもので、主として加算器21、22、24、乗算器23、26、及びベースLUT25から構成されている。加算器21には、A/Dコンバータ18から点順次のR,G,Bデジタル画像信号CMPAD が入力している。尚、デジタル画像信号CMPAD は、所定のクロックにしたがって時系列的にR,G,B,Gと流れている。
【0030】一方、CPU40は、式(1)及び(2)に示したようにR,G,B毎にオフセット値(Roffset, offset,Boffset)及びゲイン量(Rwbgain, wbgain,Bwbgain)を算出して記憶するとともに、R,G,B毎にガンマゲイン(Rgamgain,gamgain,gamgain )を記憶している。また、これらのオフセット値等は、各コマ毎に記憶されている。そして、アドレスデコーダ42によってスキャンしようとするコマに対応するオフセット値等が選択され、図5中のINTDATA によってR,G,Bのオフセット値はレジスタ43R,43G,43Bに格納され、R,G,Bのゲイン量はレジスタ44R,44G,44Bに格納され、R,G,Bのガンマゲインはレジスタ45R,45G,45Bに格納される。尚、これらのレジスタには、1コマ分のデジタル画像信号R,G,Bが処理されるまで保持される。
【0031】レジスタ43R,43G,43Bに格納されたオフセット値(Roffset, offset,Boffset)はマルチプレクサ46に加えられており、マルチプレクサ46の他の入力には、前記所定のクロックを分周して作成されたタイミング信号INTCOLSL0,1が加えられている。マルチプレクサ46は、タイミング信号INTCOLSL0,1によって3つのオフセット値からいずれか1つのオフセット値を選択し、この選択したオフセット値をデジタル信号処理回路20の加算器21の他の入力に出力する。
【0032】同様にして、マルチプレクサ47は、レジスタ44R,44G,44Bから入力する3つのゲイン量(Rwbgain, wbgain,Bwbgain)のうちの1つのゲイン量を選択し、この選択したゲイン量を乗算器23に出力し、また、マルチプレクサ48は、レジスタ45R,45G,45Bから入力する3つのガンマゲイン(Rgamgain,gamgain,gamgain )からいずれか1つのガンマゲインを選択し、この選択したガンマゲインを乗算器26に出力する。
【0033】一方、加算器21には前述したようにデジタル画像信号CMPAD が入力しており、加算器21はデジタル画像信号CMPAD とオフセット値とを加算する。これにより、黒点オフセットされたデジタル画像信号が得られる(式(3)、図3(A)参照)。加算器21から出力される黒点オフセットされたデジタル画像信号は、加算器22の負入力に加えられ、加算器22の正入力には白ピークレベルを示す値(511)が加えられており、加算器22は511から黒点オフセットされたデジタル画像信号を減算する。これによりネガポジ反転されたデジタル画像信号が得られる(式(4)、図3(B)参照)。
【0034】続いて、ネガポジ反転されたデジタル画像信号は、乗算器23に加えられる。乗算器23の他の入力にはマルチプレクサ47からゲイン量が加えられており、乗算器23は2入力を乗算することにより、デジタル画像信号R,G,Bのポジ画像の白を合わせる(式(5)、図3(C)参照)。次に、乗算器23から出力されるデジタル画像信号は、加算器24及びベースLUT25に加えられる。ベースLUT25は、図4(A)に示したように入力信号の階調に応じたガンマ補正値を有しており、入力するデジタル画像信号の階調に応じたガンマ補正値を読み出し、このガンマ補正値を乗算器26に出力する。乗算器26の他の入力にはマルチプレクサ48からガンマゲインが加えられており、乗算器23は2入力を乗算することにより、デジタル画像信号R,G,Bの色別のガンマ補正値を生成し、これを加算器24の負入力に出力する。
【0035】加算器24は入力するデジタル画像信号R,G,Bから各色別に伸長又は圧縮されたガンマ補正値を減算する。これによりガンマ補正された正規のR,G,Bのデジタル画像信号RGBGgam が得られる。さて、図1のデジタル信号処理回路20から出力されるガンマ補正されたデジタル画像信号R,G,Bは、YCC変換回路35に加えられる。YCC変換回路35は、デジタル画像信号R,G,Bを同時化するとともに、同時化したデジタル画像信号R,G,Bを輝度信号Yとクロマ信号CR,B に変換する。
【0036】ここで、例えば国際無線通信諮問委員会のRec601−2のYCC変換式は、 Y =0.299 R+0.587 G+0.114 G …(6)
R =0.713 (R−Y) …(7)
B =0.564 (B−Y) …(8)
を使用しているが、本発明では、回路構成の簡略化を図るために、YCC変換回路35は、同時化したデジタル画像信号R,G,Bに基づいて輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB を、次式、 Y ={(R/2+R/8)+(G+G/8)+B/4}/2 …(9)
R =KRR(R−G)+KRB(B−G) …(10)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G) …(11)
によって算出するようにしている。ここで、上式の4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBは、それぞれ次式、KRR=NRR/2N1, −KRB=NRB/2N2−KBR=NBR/2N3, KBB=NBB/2N4(但し、NRR〜NBB及びN1〜N4は整数)で近似表現されている。
【0037】上式からも明らかなように、輝度信号Yは、デジタル画像信号R,G,Bのビットシフトと加算によって求めることができ、また、クロマ信号CR ,CB の算出時における係数の乗算もビットシフトによって行うことができ、YCC変換回路35を簡単なハードウエアで構成することができる。また、YCC変換回路35は、上記4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを1セットとして予め複数セットの彩度補正係数を有しており、CPU40は彩度を適正レベルに制御するために適正な彩度補正係数を選択する。そして、YCC変換回路35は、CPU40によって選択された彩度補正係数を使用してYCC変換を行う。
【0038】即ち、フイルム画像の基準最小値と基準最大値の輝度比が大きい場合には、撮影されたネガ上の濃度レンジが広く、デジタル信号処理回路20から出力されるR,G,Bデジタル画像信号は、輝度比に対し相対的に小さいトータルガンマが使用され彩度が低下しており、逆に、輝度比が小さい場合には、デジタル信号処理回路20から出力されるデジタル画像信号R,G,Bは、輝度比に対し相対的に大きいトータルガンマが使用され彩度が強調されている。そこで、CPU40は基準最小値と基準最大値の輝度比を検出し、その輝度比が大きい場合には、彩度を強調する彩度補正係数を選択するための指令をYCC変換回路35に出力し、輝度比が小さい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択するための指令をYCC変換回路35に出力する。
【0039】尚、上記実施例では、輝度比によって適正な彩度補正係数を選択するようにしているが、これに限らず、絵柄を解析して適正な彩度補正係数を選択するようにしてもよい。即ち、彩度の高い色が多い絵柄の場合には、彩度を低減する彩度補正係数を選択し、彩度の低い色が多い絵柄の場合には、彩度を強調する彩度補正係数を選択する。ここで、彩度の解析方法としては、例えば、(R−G),(B−G)信号の分布を解析し、(R−G),(B−G)信号の分布幅が小さい場合には彩度が低く、(R−G),(B−G)信号の分布幅が大きい場合には彩度が高いと判断する。
【0040】また、上記実施例では、YCC変換時に彩度補正を行うようにしているが、これに限らず、デジタル画像信号R,G,Bから直接的に彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を得るようにしてもよい。次に、デジタル画像信号R,G,Bから彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を算出するカラーマトリックスの導出について説明する。
【0041】デジタル画像信号R,G,Bを前述した式(9)、(10)、(11)によってYCC変換された輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB を、YCCデコーダで式(6)、(7)、(8)の関係を使ってデジタル画像信号R′,G′,B′に変換すると、デジタル画像信号R′,G′,B′は、次式、 R′=CR /0.713 +Y …(12)
B′=CB /0.564 +Y …(13)
G′=(Y−0.299 R′−0.114 B′)/0.587 …(14)
で表すことができる。
【0042】式(14)に式(12)、式(13)を代入すると、 G′=(0.587 Y−0.299 CR /0.713 −0.114 CB /0.564 )/0.587 …(15)
となり、更に、式(12)、(13)、(15)に前述した式(9)、(10)、(11)を代入すると、以下に示すようにデジタル画像信号R,G,Bと、デジタル画像信号R′,G′,B′との入出力関係を示す関係式が得られる。
【0043】
R′=R(KRR/0.713 +5/16)+G(9/16−KRR/0.713 −KRB/0.71 3 )+B(2/16+KRB/0.713 ) …(16)
B′=R(KBR/0.564 +5/16)+G(9/16−KBR/0.564 −KBB/0.56 4 )+B(2/16+KBB/0.564 ) …(17)
G′=R{5/16−0.299 KRR/(0.713 ×0.587 )−0.114 KBR/(0.564 ×0.587 )}
+G{9/16−0.299 (KRR+KRB)/(0.713 ×0.587 )+0.114(KBR +KBB)/(0.564 ×0.587 )}
+B{2/16−0.299 KRB/(0.713 ×0.587 )−0.114 KBB/(0.564 ×0.587 )} …(18)
上式(16)、(17)、(18)は、行列式、 │R′│ │A111213││R│ │G′│=│A212223││G│ …(19)
│B′│ │A313233││B│で表現できる。この式(19)における3×3行列(A11〜A33)の係数(彩度補正係数)は、式(16)、(17)、(18)により求めることができる。
【0044】式(19)は、入力信号R,G,Bを出力信号R′,G′,B′に変換する式になっており、上記3×3行列の彩度補正係数を変更することによって彩度補正することができる。3×3行列の彩度補正係数は9個あるが、これらは4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBによって可変することができる。さて、式(19)において、R=G=B(即ち、入力がグレー)の場合には、R′=G′=B′(出力もグレー)となり、グレー条件が保存されることが分かる。これは、式(9)、(10)、(11)において、R=G=Bのとき、CR =CB=0となることからも明らかである。
【0045】次に、彩度補正係数の具体例について説明する。行列式で表される彩度補正係数によって彩度が強調されるか低減されるかは、行列式の対角項の大きさで決まる。ここで、対角項を0.7 〜1.3 まで0.1 刻みで変更したとのNRR,NRB,NBR,NBBの値(2N =128 の場合)と、そのときの3×3行列の彩度補正係数の一例を次表に示す。


そして、上記と同様にして輝度比が大きい場合には、輝度比に対して相対的に小さいトータルガンマが使用されるため、彩度を強調するために少し大きめの対角項をもった彩度補正係数を選択し、一方、輝度比が小さい場合には、輝度比に対して相対的に大きいトータルガンマが使用されるため、彩度を低減するために少し小さめの対角項をもった彩度補正係数を選択する。
【0046】また、上記と同様にして絵柄を解析し、適正な対角項をもった彩度補正係数を選択するようにしてもよい。即ち、彩度の高い色が多い絵柄の場合には、対角項の小さい彩度補正係数を選択して彩度を低減し、一方、彩度の低い色が多い絵柄の場合には、対角項の大きい彩度補正係数を選択して彩度を強調する。更に、上記実施例では、彩度補正係数の対角項のみについて説明したが、肌色・緑等の記憶色を好ましく仕上げるために非対角項の係数を最適に選択することにより所望の色再現を実現することができる。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る画像処理装置及び方法によれば、カラー画像の最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように階調変換する画像処理系において、最大輝度と最小輝度との輝度比に応じた適正な彩度補正係数を選択して彩度補正を実施するようにしたため、カラー画像の濃度レンジの相違による彩度変動を少なくすることができ、安定した良好な色再現を実現することができる。また、カラー画像の彩度が大きい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択し、彩度が小さい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択して彩度補正を行うようにしたため、絵柄に適した色再現を実現することができる。更に、本発明によれば、YCC変換における乗算をビットシフトで置換できるようにYCC変換係数を好適な数値で表現したため、回路構成の簡略化を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明が適用されるフイルムスキャナの一実施例を示す要部ブロック図である。
【図2】図2は基準最大値及び基準最小値の求め方を説明するために用いたヒストグラムである。
【図3】図3(A)乃至(D)はそれぞれ図1のデジタル信号処理回路の各部における処理内容を示すグラフである。
【図4】図4(A)乃至(C)はそれぞれガンマ補正方法を説明するために用いたグラフである。
【図5】図5は図1のデジタル信号処理回路の詳細な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10…光源
12…撮影レンズ
14…CCDラインセンサ
15…CCD駆動回路
18…A/Dコンバータ
20…デジタル信号処理回路
21、22、24…加算器
23、26…乗算器
25…ベースLUT
31…モータ
40…中央処理装置(CPU)
41…積算ブロック
42…アドレスデコーダ
43R〜45B…レジスタ
46、47、48…マルチプレクサ
50…フイルムカートリッジ
52…ネガフイルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カラー画像を撮影して得た画像信号から最大輝度及び最小輝度を求め、該最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように前記画像信号を補正した後、ガンマ補正して赤、緑、青を示すデジタル画像信号R,G,Bを得る画像処理手段と、予め3×3行列(A11〜A33)を1セットとする複数セットの彩度補正係数を記憶する記憶手段と、前記複数セットの彩度補正係数から前記最大輝度と最小輝度との輝度比が大きい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択し、輝度比が小さい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択する選択手段と、前記デジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいて、次式、│R′│ │A111213││R││G′│=│A212223││G││B′│ │A313233││B│の演算を実行して彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を算出する演算手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 カラー画像を撮影して得た画像信号から該カラー画像の彩度の大きさを検出する検出手段と、予め3×3行列(A11〜A33)を1セットとする複数セットの彩度補正係数を記憶する記憶手段と、前記複数セットの彩度補正係数から前記検出したカラー画像の彩度が大きい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択し、彩度が小さい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択する選択手段と、前記カラー画像を撮影した得られるデジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいて、次式、│R′│ │A111213││R││G′│=│A212223││G││B′│ │A313233││B│の演算を実行して彩度補正したデジタル画像信号R′,G′,B′を算出する演算手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】 カラー画像を撮影して得た画像信号から最大輝度及び最小輝度を求め、該最大輝度及び最小輝度がそれぞれ所定の階調となるように前記画像信号を補正した後、ガンマ補正して赤、緑、青を示すデジタル画像信号R,G,Bを得る画像処理手段と、予め4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを1セットとする複数セットの彩度補正係数を記憶する記憶手段と、前記複数セットの彩度補正係数から前記最大輝度と最小輝度との輝度比が大きい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択し、輝度比が小さい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択する選択手段と、前記デジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいてクロマ信号CR ,CB を、次式、CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
から算出する演算手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】 カラー画像を撮影して得た画像信号から該カラー画像の彩度の大きさを検出する検出手段と、予め4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを1セットとする複数セットの彩度補正係数を記憶する記憶手段と、前記複数セットの彩度補正係数から前記検出したカラー画像の彩度が大きい場合には彩度を低減する彩度補正係数を選択し、彩度が小さい場合には彩度を強調する彩度補正係数を選択する選択手段と、前記カラー画像を撮影した得られるデジタル画像信号R,G,Bと前記選択した彩度補正係数とに基づいてクロマ信号CR ,CB を、次式、CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
から算出する演算手段と、を備えたことを特徴とする画像処置装置。
【請求項5】 カラー画像を撮像して得られる赤、緑、青を示すデジタル信号R,G,Bを輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB に変換する画像処理方法において、前記デジタル信号R,G,Bに基づいて前記輝度信号Y及びクロマ信号CR ,CB を、次式、Y ={(R/2+R/8)+(G+G/8)+B/4}/2CR =KRR(R−G)+KRB(B−G)
B =KBR(R−G)+KBB(B−G)
によって算出するとともに、上式の4つの係数KRR,KRB,KBR,KBBを、それぞれ次式、KRR=NRR/2N1, −KRB=NRB/2N2−KBR=NBR/2N3, KBB=NBB/2N4(但し、NRR〜NBB及びN1〜N4は整数)で表現したことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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