説明

画像処理装置

【目的】 低解像度のカラー画像情報を、エッジや画質をぼやけたものとせずに、高解像度の画像情報に変換する画像処理装置を提供することを目的とする。
【構成】 RGB−YUV変換回路1により入力色空間を輝度並びに色差成分に分解できる色空間に変換し、色差エッジ作成部3で輝度成分のエッジ情報を基に色差成分のエッジ情報を作成し、または輝度エッジ作成部2で輝度成分のみのエッジ作成を行ない、YUV−RGB変換回路4で元の色空間に変換して出力する。
【効果】 低解像度のカラー画像情報を、エッジ部や画質をぼやけたものとせずに、高解像度の情報に変換することが行なえる。さらに、各色でのエッジ作成次のずれによる色ずれを解消し、良好な高解像度を作成できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は画像処理装置に関し、例えば、入力したカラーの画像情報を拡大変倍して出力するカラープリンタ等の画像出力装置や、解像度の異なる機種間通信において低解像度情報から高解像度情報に解像度変換する際に有効な画像処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、入力された低解像度情報を高解像度情報に解像度変換する方法として、様々な方法が提案されている。提案されている従来方法は、対象となる画像の種類(例えば、各画素ごとに階調情報の持つ多値画像、疑似中間調により2値化された2値画像、固定閾値により2値化された2値画像、文字画像等)によってその変換処理方法が異なっている。
【0003】各画素ごとに階調情報の持つ自然画像等の多値画像を主な対象にした従来の内挿方法は、図6に示すような、内挿点に最も近い同じ画素値を配列する最近接内挿方法や、図7に示すような、内挿点を囲む4点(4点の画素値をA,B,C,Dとする)の距離により、以下の演算によって画素値Eを決定する共1時内挿方法などが一般的に用いられている。
【0004】E=(1−i)(1−j)A+i・(1−j)B+j・(1−i)C+ijD(但し、画素間距離を1とした場合に、Aから横方向にi、縦方向にjの距離があるとする。(i≦1、j≦1))
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来例には、以下に示す欠点がある。内挿点にもっとも近い同じ画素値を配列する最近内挿方法は、構成が簡単であるという利点はあるが、対象画像を自然等に用いた場合には拡大するブロックごとに画素値が決定されるため、視覚的にブロックが目立ってしまい画質的に劣悪である。
【0006】次に内挿点を囲む4点の距離によって計算されると共に1次内挿方法は、自然画像の拡大には一般的に良く用いられている方法であるのだが、この方法では画質が平均化され、スムージングのかかった画質になるが、エッジ部や、シャープな画質が要求される部分には、ぼけた画質になってしまう。さらに、地図等をスキャンした画像や、文字部を含む自然画像の様な場合には、補間によるぼけの為に大切な情報が受け手に伝わらないこともある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決することを目的としてなされたもので、上述の課題を解決する一手段として以下の構成を備える。即ち、入力画像情報の色空間を輝度と色差成分に分解できる色空間に変換する第1の変換手段と、該第1の変換手段での変換色空間において輝度成分のエッジ情報を基に色差成分のエッジ情報を作成するエッジ情報作成手段とを備え、入力画像情報のエッジを推測作成する。
【0008】
【作用】以上の構成において、低解像度のカラー画像情報をエッジ部や画質をぼやけたものとせずに高解像度情報に変換することができる。このため、例えば高解像度の出力装置への出力や、解像度が異なる機種間通信において、出力する装置における解像度で出力することが可能となる。
【0009】さらに、各色でのエッジ作成時のずれによる色ずれを解消し、良好な高解像度画像を作成することができる。
【0010】
【実施例】以下、図面を参照して本発明に係る一実施例を詳細に説明する。
[第1の実施例]本発明の画像処理装置は、主としてカラープリンタ等の画像出力装置内部に具備することが効果的であるが、画像出力装置以外の画像処理装置、ホストコンピュータ内のアプリケーションソフトとして内蔵することも可能である。
【0011】図1は本発明に係る一実施例の構成を表わす全体図である。図中1は第1の色変換手段であるRGB−YUV変換回路であり、入力色空間よりもより冗長度を減らした色空間、特に、輝度、色差に分解した色空間への変換を行なう。即ち、入力画像情報の色空間を輝度と色差成分に分解できる色空間に変換する。例えば、入力したR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の信号から、他の色空間、例えばY(輝度),U,V(色差)の空間に変換する。このRGB−YUV変換回路第1は演算によるものでも良いし、ROM(リードオンリーメモリ)を利用したLUT(ルックアップテーブル)でも良い。
【0012】2は変換した色空間のうち最も視覚的に影響の大きい色成分、例えば、輝度、色差に分解した場合におけるY(輝度)プレーンよりエッジを作成する輝度エッジ作成部、3は輝度エッジ作成部2で得られた輝度成分のエッジ部の情報を基に、他の成分(色差成分)のエッジ部を作成する色差エッジ作成部、4は第2の色変換手段であるYUV−RGB変換回路であり、RGB−YUV変換回路1で変化した色空間を入力した色空間へ変換する。例えばYUV色空間よりRGB色空間へ変換する回路である。
【0013】次に、以上の構成を備える本実施例の動作手順を説明する。RGB−YUV変換回路1にRGBのカラー画像情報が入力されると、RGB−YUV変換回路1において、入力画像をYUVの色空間の情報に変換する。次に輝度エッジ作成部2にて変換されたYUV画像情報の内、Yプレーンの画像情報を基に解像度方向のエッジを作成する。次に、色差エッジ作成部3が輝度エッジ作成部2にて作成されたエッジ情報を基にして、U,Vの画像情報のエッジを作成する。輝度エッジ作成部2及び色差エッジ作成部3で作成されたYUVの画像情報は、YUV−RGB変換回路4によって入力色空間であるRGBの画像情報に変換される。
【0014】次に図2を用いて輝度エッジ作成部2についての説明を行なう。図2において、破線で囲んだ部分が輝度エッジ作成部に相当する。図2中5は入力される低解像度情報を示しており、6はこの低解像度情報の入力端子である。入力端子6を介して入力した輝度成分情報は、線形補間手段7に送信される。この線形補間手段7で線形補間された情報の例を図3に示す。図3において、実線は各低解像度画素を中心としたブロック境界を示し、太線で囲まれた部分が注目画素Eに対するブロックとなる。また、〇印は低解像度情報の画素を、X印は補間画素を示している。線形補間手段7で線形補間された情報は2値化手段10に送られる。
【0015】また、入力端子6から入力した低解像度情報はMAX・MIN検出手段8にも送られ、ここでウインドウ内の最大値及び最小値が検出される。検出された最大値(MAX)、及び最小値(MIN)は閾値決定手段9に送信され、2値に量子化される閾値が決定される。本実施例では閾値(TH)を以下の式により決定している。
【0016】
【数1】TH=(MAX+MIN)/2閾値決定手段9で決定された閾値情報と、MAX・MIN検出手段8で検出された最大値(MAX)、及び最小値(MIN)は2値化手段10に送信される。2値化手段10は、線形補間手段7により線形補間の施された注目画素Eを中心とするブロックの補間情報を、閾値決定手段9で決定された閾値(TH)に従って2値化する。2値化手段10では2値化閾値よりも大きな補間画素には最大値を割り当て、小さい補間画素には最小値を割り当てる。この2値化処理がエッジの作成に相当する。
【0017】2値化手段10で2値化されたY成分のエッジビットマップ情報は13に示した様なブロックの情報であり、図1の色差エッジ作成部3への出力端子14に出力され、色差エッジ作成部3に出力される。色差エッジ作成部3は、この輝度エッジ作成部2より伝えられた2値化されたY成分のエッジビットマップ情報を基にU,Vにおけるエッジの作成を行なう。
【0018】図2に示す11は出力端子を示し、12に示した様な2値化代表値「MAX」及び「MIN」で割り当てたブロックのY成分情報が出力される。次に図1に示す色差エッジ作成部3について図4を用いて説明を行なう。図4において、破線で囲んだ部分が色差エッジ作成部に相当する。図4中15は入力される低解像度情報を示しており、16はこの低解像度情報の入力端子である。入力端子16を介して入力した色差成分情報は、線形補間手段17に送信される。この線形補間手段17で線形補間された情報は上述した輝度エッジ作成部2と同様例えば図3に示す様になる。線形補間手段17で線形補間された情報は誤差判定手段22に送られる。
【0019】また、入力端子16から入力した低解像度情報はMAX・MIN検出手段18にも送られ、ここでウインドウ内の最大値及び最小値が検出される。検出された最大値(MAX)、及び最小値(MIN)はMAX・MIN配置手段21に送信され、19のY成分エッジビットマップ情報入力端子より入力されたY成分エッジビットマップを基に、最大値(MAX)、及び最小値(MIN)を配置する。この時、Y成分エッジビットマップの値が「1」の位置に最大値を、「0」の位置に最小値を入れるブロックのパターンと、その逆の2つのパターンを作成する。作成されたパターンは、誤差判定手段22に送られる。誤差判定手段22は、線形補間手段17において線形補間されたデータとMAX・MIN配置手段21で作られた2つのブロックのパターンの誤差をそれぞれ算出し、誤差の少ない方のブロックのパターンを選択する。
【0020】23は色差情報の出力端子で、24に示した様なMAX,MINを割り当てたブロックの情報が出力される。以上の様にしてエッジを作成したY,U,Vのそれぞれの画像情報を、出力端子23を介してYUV−RGB変換回路4に送り、元のRGBの画像に変換することによって拡大変倍された画像情報となる。
【0021】以上説明した様に本実施例によれば、低解像度のカラー画像情報をエッジ部や画質をぼやけたものとせずに高解像度情報に変換することができる。このため、例えば高解像度の出力装置への出力や、解像度が異なる機種間通信において、出力する装置における解像度で出力することが可能となる。さらに、各色でのエッジ作成時のずれによる色ずれを解消し、良好な高解像度画像を作成することができる。
【0022】[第2実施例]次に、本発明に係る第2実施例を説明する。図5は本発明に係る第2実施例の構成を示す全体図である。図5において、25はRGB−YUV変換回路、26はYプレーンの画像情報よりエッジ部を作成する輝度エッジ作成部、27はU,Vの画像情報より線形補間を行なう線形補間回路、28はYUV−RGB変換回路である。
【0023】以上の第2実施例において、上述した図1に示す第1の実施例と異なっている点は、図1に示す第1の実施例ではYプレーンによって作成されたエッジ情報を基にU,Vプレーンにおけるエッジ情報を作成していたのであるが、第2実施例においてはU,Vプレーンに関してはエッジの作成を行なわずに単に線形補間を行なっている点である。
【0024】これは、カラーの画像情報をYUVに分解した時に、エッジ等の視覚的に重要な情報が主にYプレーンに依存しており、U,Vプレーンにはほとんど依存していないためである。この方法をとることによって、第1の実施例よりも、回路全体が簡略化することができ、かつ第1の実施例と略同様の効果を得ることができる。
【0025】以上に説明した各実施例においては、輝度、色差に分解した色空間をY,U,Vを例にして説明したが、他の輝度、色差分解色空間でも良いことは勿論である。また、入出力色空間もRGBを例にして説明したが、本発明はRGBに限定されるものではない。また、輝度エッジ作成手段も(MAX+MIN)/2により閾値THによる2値化を説明したが、他の方法でも良いことは、勿論である。
【0026】尚、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても1つの機器から成る装置に適用しても良い。また、本発明は、システム或は装置にプログラムを供給することによって達成される場合にも適用できることはいうまでもない。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、入力色空間を輝度並びに色差成分に分解できる色空間に変換し、輝度成分のエッジ情報を基に色差成分のエッジ情報を作成し、または輝度成分のみのエッジ作成を行なうことにより、低解像度のカラー画像情報を、エッジ部や画質をぼやけたものとせずに、高解像度情報に変換することが行なえるので、高解像度の出力装置への出力や、解像度が異なる機種間通信において、大切な情報を、出力する装置における解像度で出力することが可能となる。
【0028】さらに、各色でのエッジ作成時のずれによる色ずれを解消し、良好な高解像度を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例におけるカラー画像解像度変換システムの構成を示す図である。
【図2】本実施例における図1に示す輝度エッジ作成部の詳細構成を示す図である。
【図3】本実施例における線形補間されたデータの構造を示す図である。
【図4】本実施例における図1に示す色差エッジ作成部の詳細構成を示す図である。
【図5】本発明に係る第2実施例におけるカラー画像解像度変換システムの構成を示す図である。
【図6】従来の内挿方法を説明する図である。
【図7】従来の共1次内挿方を説明する図である。
【符号の説明】
1,25 RGB,YUV変換回路
2,26 輝度エッジ作成部
3,27 色差エッジ作成部
4,28 YUV−RGB変換回路
5 低解像度情報
6 低解像情報入力端子
7 線形補間回路
8 MAX,MIN検出回路
9 閾値決定回路
10 2値化回路
11 輝度出力端子
12 輝度ブロック情報
13 Y成分エッジビットマップ情報
14 Y成分エッジビットマップ出力端子
15 低解像情報
16 低解像情報入力端子
17 線形補間回路
18 MAX,MIN検出回路
19 Y成分エッジビットマップ入力端子
20 Y成分エッジビットマップ情報
21 MAX,MIN配置回路
22 誤差判定回路
23 色差情報出力端子
24 色差ブロック情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力画像情報の色空間を輝度と色差成分に分解できる色空間に変換する第1の変換手段と、該第1の変換手段での変換色空間において輝度成分のエッジ情報を基に色差成分のエッジ情報を作成するエッジ情報作成手段とを備え、入力画像情報のエッジを推測作成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 エッジ情報作成手段は、輝度成分のみのエッジ作成を行なうことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】 更にエッジ情報作成手段でエッジを推測作成した画像情報の色空間を入力画像の色空間に変換する第2の変換手段を備えることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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