説明

画像処理装置

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、画像処理装置に関し、更に詳しくは、X線撮像装置から得た画像のコントラストの強調,鮮明化,平滑化,復元などの画像演算処理を行う画像処理装置に関する。
[従来の技術]
従来の画像処理装置の一例を第7図〜第9図を参照して説明する。
第7図に示す画像処理装置11において、画像メモリ部12は、例えばX線CT装置の如きX線撮像装置Xからの画像を記憶している。
このX線撮像装置Xからの画像は、取り扱いの便宜のために、演算処理部15により適当な画像演算処理を施された上で、画像表示部3で表示される。
例えば、X線撮像装置Xからの画像は、第9図に示す画像OI(以下、原画像という)のようにノイズnを含んでいる場合があり、このノイズnを除去するため、第8図R>図に示す如き平滑化処理が行われる。この平滑化処理は、一般には、ある画素とその周囲の画素の濃度の平均値を求めて、前記ある画素の新しい濃度とする演算である。
平滑化処理により、例えば第9図に示す画像SI(以下、平滑化画素という)のように、ノイズnの目立たない画像が得られる。
なお、第9図に示す画像OI,SIは、頭部の断層画像を模式的に表したものであって、BOは頭蓋骨,BRは脳である。
[発明が解決しようとする課題]
上記従来の画像処理装置は11では、第9図に示すように、平滑化処理によって原画像OIのノイズnを除去した平滑化画像SIを得ているが、このとき頭蓋骨BOの近傍部分Aの画素の濃度が実際とは大きく離れた値になってしまう問題点がある。これは、質の異なる頭蓋骨BOの部分の濃度の影響を大きく受けてしまうからである。
このように、従来の画像処理装置では、質の異なる部分の境界付近の画像が画像処理によって劣化してしまい、処理後の画像の信頼性が低くなる問題点がある。
そこで、実開昭58−174753号公報において、操作者が画像中に対象領域を設定したとき、その対象領域内についてのみ画像演算処理を行う画像処理装置が提案されている。
しかし、関連のある複数の画像に対して対象領域を設定するとき、各画像にそれぞれ対象領域を設定する必要があり、操作が煩わしい問題点がある。また、操作者が対象領域の座標を入力するため、操作が煩わしい問題点がある。
一方、特開昭62−35979号公報において、操作者が第1の画像上に目的部分を含む対象領域を設定したとき、その対象領域を第2の画像以降についても適用して当該部分のみの記録を行う画像記録装置が提案されている。
しかし、複数の画像中で目的部分の位置や大きさが変化するとき、共通に使用できる対象領域を操作者が第1の画像だけを見て設定できるとは限らない問題点がある。また、操作者が表示された画像上に対象領域を入力するため、操作が煩わしい問題点がある。
さらに、特開昭61−7980号公報において、シンチレーションカメラから得た画像を順に加算した加算画像を表示し、操作者が加算画像上に対象領域を設定したとき、その対象領域を元の各画像について適用して当該部分の検出データをカウントするデータ処理装置が提案されている。
しかし、これはシンチレーションカメラでの検出データをカウントする演算処理を行う分野に限定された技術であり、X線撮像装置から得た画像のコントラストの強調,鮮明化,平滑化などの画像処理を行う分野への適用は全く考慮されていない。また、操作者が表示された画像上に対象領域を入力するため、操作が煩わしい問題点がある。
そこで、この発明の目的は、X線撮像装置から得た画像のコントラストの強調,鮮明化,平滑化などの画像処理を行う分野において、X線撮像装置から得た関連のある複数の画像に対して共通して使用できる対象領域を一度の操作で設定できるようにした画像処理装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
第1の観点では、この発明は、X線撮像装置から得た関連のある複数の画像またはそれらの中から選ばれた複数の画像の加算平均画像を操作者に対して表示する領域指定用画像表示手段と、操作者が前記加算平均画像中に対象領域の指定をするための領域指定用入力手段と、加算平均画像中に対象領域が指定されると原画像の対象領域外の値をマスクするためのマスクパターンを生成しこのマスクパターンと前記画像を乗算または加算して当該画像の対象領域内の値のみを有効とした演算領域決定画像を生成する演算領域決定画像生成手段と、前記演算領域決定画像中の対象領域内についてのみ目的の画像演算処理を行う選択的演算処理手段とを具備したことを特徴とする画像処理装置を提供する。
上記構成において、目的の画像演算処理とは、一つの画素の処理に他の画素のもつ情報を利用する画像処理、例えば空間フィルタを用いたコントラストの強調,鮮明化,平滑化,復元などの画像処理をいう。
[作用]
上記第1の観点による画像処理装置では、関連のある複数の画像またはそれらの中から選ばれた複数の画像の加算平均画像を操作者に対して表示し、その加算平均画像に基づいて操作者に対象領域を指定させる。したがって、一連の画像に対して共通して使用できる対象領域を一度の操作で設定することが出来る。
[実施例]
以下、図に示す実施例によりこの発明を更に詳細に説明する。なお、これによりこの発明が限定されるものではない。
第1図はこの発明の一実施例の画像処理装置1のブロック図である。
画像メモリ部2は、X線CT装置の如きX線撮像装置Xからの画像,例えば第3図に示す原画像OIを記憶している。この原画像OIはノイズnを含んでいる。
演算処理部5は、1枚の画像についてのみ画像処理を行うときは、その原画像OIを画像表示部3に表示する(領域指定用画像表示)と共に、対象領域の指定を行うべき旨のメッセージ表示を行う。第2図のステップS1はこれを表している。
そこで、操作者は、領域指定用入力部4から対象領域を指定する入力を行う。例えばライトペン,トラックボール,マウス,その他の手段を用いて第3図に示す如き閉曲線の指定線SLを入力すると共に、その指定線SLのどちら側が対象領域であるかの指示を行う。第2図のステップS2はこれを表している。
演算処理部5は、対象領域が指定されると、第3図に示す如きマスクパターンMPを作成し、そのマスクパターンMPと原画像OIとから、演算領域を明確に識別しうる演算領域決定画像MIを作成する。第2図のステップS3はこれを表している。
具体的を挙げれば、例えば原画像OIの画素の濃度のいずれもが0より充分大きな値を持つものとすれば、マスクパターンMPは、原画像OIの画素配列と同じ配列を持つ行列であって、対象領域外の部分(第3図のマスクパターンMPのハッチング部分)の値が0で,対象領域内の部分(第3図のマスクパターンMPの空白部分)の値が1列の行列が作成される。そして、このマスクパターンMPに原画像をOIを乗算することによって、演算領域決定画像MIが作成される。この演算領域決定画像MIでは、画素の濃度が0のものは対象領域外である。
また、他の具体的を挙げれば、例えば原画像OIの画素の濃度の値が0となりうるが、ある値αより大きな値にはならないものとすれば、マスクパターンMPは、原画像OIの画素配列と同じ配列を持つ行列であって、対象領域外の部分(第3図のマスクパターンMPのハッチング部分)の値がαで,対象領域内の部分(第3図のマスクパターンMPの空白部分)の値が0の行列が作成される。そして、このマスクパターンMPに原画像OIを加算することによって、演算領域決定画像MIが作成される。この演算領域決定画像MIでは、画素の濃度がα以上のものは対象領域外である。
演算領域決定画像MIを作成して後、演算処理部5は、目的の画像演算処理を行う。第2図のステップS4は、目的の画像演算処理が平滑化処理の場合を表している。
上記のように、対象領域とその他の領域を明確に識別できるから、対象領域外の影響を除去して画像演算処理を行うことは容易である。
例えば平滑化処理の一例の場合で説明すると、対象領域内の一つの画素を中心とした3×3の平方領域の各画素の濃度の平均値を求めて前記一つの画素の濃度とする演算を行うが(いわゆる3×3メディアンフィルタ)、3×3の平方領域内の画素の値が0(マスクパターンMPが0,1の行列の場合)またはα以上(マスクパターンMPがα,0の行列の場合)であれば、その画素は含めないで平均計算を行えばよい。
以上により、第3図に示す如き処理画像SIが得られるが、この対象領域内の画像は、対象領域外の画像の影響を受けないで画像処理されたものである。
さて、第4図(a)(b)は、原画像OI1,OI2がそれぞれ胸部の断層画像である場合を示しており、上述のようにして、各原画像OI1,OI2について別個にマスクパターンMP1,MP2を作成し、処理画像SI1,SI2を得ることが出来る。
しかし、呼吸により肺が拡縮しているので、例えば点Qは、第4図(a)では対象領域外であり、第4図(b)では対象領域内になっている。
このため、一連の胸部の断層画像から肺の時系列の変化(例えばCBF,F.I.)を得ようとしても、点Qの部分については得ることが出来ない。したがって、点Qの部分が第4図(b)で対象領域内になっていることは、少なくとも時系列の変化を得ようとするときは意味がない。
そこで、演算処理部5は、一連の画像について画像処理を行うときは、第5図および第6図に示すように、その一連の画像の全てまたは数画像を加算平均した加算平均画像を作成し、これを画像表示部3に表示する。
したがって、操作者は、加算平均画像に基づいて、一連の画像に対して共通して使用できる対象領域を一度で指定することが出来る。第5図のマスクパターンMTはこのような共通のマスクパターンを表している。
このマスクパターンMTを用いて各画像OI1,OI2,…について演算領域を決定し、その領域内で画像演算処理を行えば、無駄な処理時間をなくすことが出来る。
他の実施例としては、例えばX線CT装置において「identify機能」を有しているものの場合、その「identify機能」を利用して所定の領域内の画素の濃度の上限値,下限値を求められるので、その範囲内のものを対象領域として設定するものが挙げられる。この場合、正確性には劣るが、操作性は非常によくなる。
[発明の効果]
この発明の画像処理装置によれば、対象領域内についてのみ画像演算処理を行うため、対象領域外の情報による悪影響を回避でき、処理後の画像の信頼性を向上できるようになる。
また、操作者に対象領域を指定させることが出来るので、繁雑な処理を要さずに正確に対象領域を設定できるようになる。
さらに、複数の画像の加算平均画像に基づいて対象領域の設定を行うことが出来るので、一連の画像に対して共通する対象領域を一度で設定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例の画像処理装置のブロック図、第2図は第1図に示す画像処理装置の演算処理部の作動の要部フローチャート、第3図は第1図に示す画像処理装置の作動を説明するための各画像の模式図、第4図R>図(a)(b)は第1図に示す画像処理装置の作動を説明するための各画像の模式図、第5図は第1図に示す画像処理装置の作動を説明するための各画像の模式図、第6図6図は第1図に示す画像処理装置の演算処理部の作動の要部フローチャート、第7図は従来の画像処理装置の一例のブロック図、第8図は第7図に示す画像処理装置の演算処理部の作動の要部フローチャート、第9図は第7図に示す画像処理装置の作動を説明するための各画像の模式図である。
(符号の説明)
1……画像処理装置
2……画像メモリ部、3……画像表示部、4……領域指定用入力部
5……演算処理部、X……X線撮像装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】X線撮像装置から得た関連のある複数の画像またはそれらの中から選ばれた複数の画像の加算平均画像を操作者に対して表示する領域指定用画像表示手段と、操作者が前記加算平均画像中に対象領域の指定をするための領域指定用入力手段と、加算平均画像中に対象領域が指定されると原画像の対象領域外の値をマスクするためのマスクパターンを生成しこのマスクパターンと前記画像を乗算または加算して当該画像の対象領域内の値のみを有効とした演算領域決定画像を生成する演算領域決定画像生成手段と、前記演算領域決定画像中の対象領域内についてのみ目的の画像演算処理を行う選択的演算処理手段とを具備したことを特徴とする画像処理装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第8図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第9図】
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【特許番号】第2534552号
【登録日】平成8年(1996)6月27日
【発行日】平成8年(1996)9月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−325352
【出願日】昭和63年(1988)12月23日
【公開番号】特開平2−171870
【公開日】平成2年(1990)7月3日
【出願人】(999999999)ジーイー横河メディカルシステム株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭63−170788(JP,A)
【文献】特開昭62−35979(JP,A)
【文献】特開昭61−7980(JP,A)
【文献】特開昭48−24622(JP,A)
【文献】特開昭60−59484(JP,A)
【文献】実開昭58−174753(JP,U)