説明

画像処理装置

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、空間光変調素子を用いた画像処理装置に関する。
[従来の技術]
フルカラー画像を作成、編集、複写する装置として、カラー複写機が知られている。
カラー複写機には、一般に、アナログ方式のものとデジタル方式のものとがあり、それぞれに長所、短所が存在する。
アナログ方式のカラー複写機は、光学像のまま露光、現像してカラーコピーを作成するため、色補正、階調処理等の画像処理を加えることが難しい。これに対してデジタル方式のカラー複写機は、原画像をイメージスキャナでデジタル信号に変換しこのデジタル信号に応じてプリンタによってカラーコピーを作成するようにしているため、色補正、階調処理等の画像処理等を容易に行うことができる。
なお、本明細書において、画像処理なる用語は、階調処理(ガンマ補正、シェーディング補正)、鮮鋭化(シャープネス強調)、エリア指定(トリミング、マスキング)、色処理(色再現、ペイント機能、色による切り出し)、移動(回転)、編集処理(はめ込み合成、文字合成)等の処理を含む広義の意味で用いている。
作成されるカラーコピーについて比較してみると、アナログ方式のカラー複写機は、画室が滑らか(解像度が800DPI程度)であるが、カラーマスキング(黒色と有彩色との分離)が容易でなく色再現性があまり良くない。具体的には、黒色の線画が色付いたりする。一方、デジタル方式のカラー複写機は、カラーマスキングが容易であり色再現性が優れているが、高精細化が困難である。高精細化して読み取り画素数を増大させるとデータ量が増え、高速処理プロセッサや大容量メモリが必要となることからアナログ方式に比してコストの点で大幅に不利となる。
このような点から、アナログ方式のカラー複写機は大量のコピー処理を行う場合に有利であり、また、デジタル方式のカラー複写機は色再現性が重要なデザイン原稿の作成、簡単な印刷等に有利となる。
アナログ方式のカラー複写機とデジタル方式のカラー複写機との以上述べた比較内容をまとめると第1表の如くなる。


[発明が解決しようとする課題]
上述したように、アナログ方式、デジタル方式にはそれぞれ長所、短所があるため、画像の種類、処理目的、用途等に応じて使い分けすることが行われる。
しかしながら、従来は、1つの装置でアナログ方式及びデジタル方式の両方の処理を可能とするものが存在せず、このように使い分けする場合は少なくとも2台の装置を用意する必要があった。
さらに、従来は、アナログ方式による優れた処理とデジタル方式による優れた処理とを組み合わせて実行できる装置が存在しなかった。このため、高精細化された画質を色再現性良く作成するためにはデジタル方式による非常に高価な装置を用いる必要があった。
さらにまた、従来は、アナログ画像とデジタル画像とを1つの画面中に混在させることが可能な装置が全く存在しなかった。
従って本発明の目的は、アナログ画像とデジタル画像とが混在、融合した画像を扱うことのできる画像処理装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、高解像度で色再現性が優れており、しかも低コストで実現できる画像処理装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
上述の目的を達成する本発明の特徴は、画像書き込み平面を構成する光伝導体、該光伝導体に積層され記憶作用を有する強誘電性液晶、及び該光伝導体と液晶とを挟む電極を具備する空間光変調素子と、原画像をこの空間光変調素子にアナログ的に書き込むアナログ書き込み系と、空間光変調素子上でレーザビームを2次元走査させることにより空間光変調素子に書き込まれている画像をデジタル的に読み出すデジタル読み出し系と、読み出した画像データについて画像処理を行う処理部と、レーザビームを2次元走査させることにより前述の処理を行った画像データを空間光変調素子にデジタル的に書き込むデジタル書き込み系と、空間光変調素子に書き込まれている画像をアナログ的に読み出すアナログ読み出し系とを備えたことにある。
[作用]
最初に空間光変調素子に原画像をアナログ的に書き込み、このようにして空間光変調素子に書き込まれた画像は、2次元走査されるレーザビームによって各画素毎にデジタル的に読み出される。そして、読み出された画像データは、所望の画像処理された後、2次元走査されるレーザビームによって空間光変調素子にデジタル的に再び書き込まれる。そして最終的に空間光変調素子から画像がアナログ的に読み出される。
空間光変調素子の液晶として、記憶作用を有する強誘電性液晶を用いているため、空間光変調素子のどちら側からでも読み出し用の光を照射することができる。このため、書き込み処理と読み出し処理とを空間光変調素子に対して同一の側から行うことができる。
[実施例]
以下図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
第2図は本発明の一実施例としてカラー画像編集・出力装置の基本構造を概略的に示す構成図である。
同図において、10は画像書き込み平面を有する空間光変調素子、11は空間光変調素子10への画像のアナログ書き込み系、12はアナログ読み出し系、13はデジタル読み出し系、14はデジタル書き込み系をそれぞれ示している。
デジタル読み出し系13及びデジタル書き込み系14は、種々の画像処理を行う処理部15に電気的に接続されている。処理部15には、ディスプレイ16と制御部17とが接続されている。
制御部17は、主としてコンピュータで構成されており、上述のアナログ書き込み系11、アナログ読み出し系12、デジタル読み出し系13、及びデジタル書き込み系14に電気的に接続されている。なお第2図において、白矢印はアナログによる光学像、黒矢印はデジタルによる光学像を表しており、破線は電気的信号を表している。
空間光変調素子10は、透過率分布、反射率分布、又は位相分布が、入力される空間的な光の強度分布(光画像)に応じて変化することからその光の強度分布、即ち画像を一時的に記憶させることができる。画像を記憶させた空間光変調素子に他の光を照射すると、その記憶された2次元(空間)画像情報に応じて透過光、反射光、又は散乱光が変調を受ける。この変調された透過光、反射光、又は散乱光を検出又は露光することによって、書き込まれている画像が読み出されることとなる。
空間光変調素子10に入力される空間的な光の強度分布は、光学像であるアナログ画像であってもよいし、変調したレーザビームを2次元走査させて得られるデジタル画像であってもよい。また、空間光変調素子10からの読み出しも、一様な光をこの空間光変調素子10に照射してアナログ画像を得てもよいし、一定の強さのレーザビームを2次元走査させて照射することにより得られるデジタル画像であってもよい。
アナログ書き込み系11は、原稿18上の原画の光学像を空間光変調素子10に書き込む機能を有しており、原稿18を照明する光源とこれによって得られる原画の光学像を空間光変調素子10上に結像させる光学系とから主として構成されている。
アナログ読み出し系12は、空間光変調素子10に書き込まれている光学像を例えば感光紙等の記録紙19に投影する機能を有しており、空間光変調素子10を照明する光源とこれによって得られる空間光変調素子10の像を記録紙19上に結像させる光学系とから主として構成されている。
デジタル読み出し系13は、空間光変調素子10に書き込まれている像をレーザビームを2次元走査して照射することにより画像信号として時系列的に読み出す機能を有しており、レーザ光源とレーザビーム走査系と受光系とから主として構成されている。
デジタル書き込み系14は、処理部15から与えられる画像信号に基づいてデジタル画像を空間光変調素子10に書き込む機能を有しており、レーザ光源とレーザビーム走査系とレーザビーム変調部とから主として構成されている。
処理部15は、デジタル読み出し系13から印加される画像信号についてデジタル画像処理を施し、処理後の画像信号をデジタル書き込み系14へ出力する。この処理部15で処理された結果は、ディスプレイ16に表示される。
上述した構成を全て組み合わせることにより画像編集・出力機能が得られる。さらに、空間光変調素子10、デジタル読み出し系13、処理部15、及びデジタル書き込み系14を組み合わせることによって画像編集機能が得られる。また、アナログ書き込み系11、空間光変調素子10、及びデジタル読み出し系13を組み合わせることによってイメージスキャナ機能が得られる。またさらに、デジタル書き込み系14、空間光変調素子10、及びアナログ読み出し系12を組み合わせることによってプリンタ機能が得られる。そして、アナログ書き込み系11、空間光変調素子10、及びアナログ読み出し系12を組み合わせることによってアナログ複写機能が得られる。これらの各機能モードは、制御部17のコンピュータによって実現される。
第1図は、第2図の実施例の構成をより具体的に表したものである。
第2図に示したアナログ書き込み系11は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3つの光源(例えば蛍光ランプ)11a、11b、11cとレンズ11dで示された光学系とによって表されている。原稿18が光源11a、11b、11cからの一様な光で順次照明されることにより、その原画の光学像がレンズ11dによって空間光変調素子10の書き込み平面上に縮小投影される。
カラー画像を色分解するには面順次で処理する。1つの原画に対してまずRの光源11aを点灯してその光学像を空間光変調素子10に書き込み、その像の読み出し処理を行った後、Gの光源11bを点灯してその光学像を空間光変調素子10に書き込み、その像の読み出し処理を行った後、同様な処理をBの光源11cについても行う。
色分解画像を得るには、上述の光源切換え方式の他に、カラーフィルタ方式がある。
このカラーフィルタ方式は、レンズ11dと空間光変調素子10との間にR、G、Bのカラーフィルタを設けこれらを順次切換えて色分解画像を得る方式である。具体的には、R、G、Bのカラーフィルタを例えば回転体に貼着してこれを回転させることにより順次切換える。カラーフィルタ方式においては光源としてハロゲン電球のような白色光源を用いる。
なお、光源切換え方式及びカラーフィルタ方式において、R、G、Bの3色の代りにシアン、イエロー、マゼンタの3色を用いてもよい。
デジタル読み出し系13は、レーザ光源13a、レーザビーム走査系13b、集光レンズ13c、及び受光素子13dとを有している。レーザ光源13aから出射された光強度一定のレーザビームがレーザビーム走査系13bに印加されて上下左右方向に偏向される。これにより、レーザビームが空間光変調素子10上を2次元的に走査されることとなる。レーザビームスポットに対応した画素の画像情報に応じて変調された透過光、反射光、又は散乱光がレンズ13cを介して受光素子13dに印加された光電変換される。このようにして、空間光変調素子10上に書き込まれている画像情報を時系列的に読み出すことができる。カラー画像情報を得るには、このような読み出し動作はR、G、Bの各色分解画像について行う。読み出された画像情報は、処理部15に送り込まれる。
レーザ光源13aは、半導体レーザ、又はHe−Ne(ヘリウム−ネオン)等のザスレーザが用いられる。半導体レーザは、小型であるため装置全体をコンパクトに構成することができる。またガスレーザは、干渉性が良いためレーザビームのスポット径を小さくすることができ、これによって読み出しの解像度をより高めることができる。
レーザビーム走査径13bは、主走査部と副走査部とから主として構成される。主走査部は、レーザビームスポットについて空間光変調素子10上を1行走査させる。副走査部は、主走査方向と直交する方向にレーザビームスポットを走査させる。即ち、1行の主走査が終了すると、次の行へスポットを移動させる。このように、主走査部と副走査部とによって空間光変調素子10上をレーザビームスポットが2次元的に走査せしめられる。
主走査部は、ホログラムスキャナ、回転多面鏡、超音波偏向器、又はガルバノメータ等で構成される。また、副走査部は、ホログラムスキャナ、又はガルバノメータ等で構成される。この副走査は、空間光変調素子10を機械的に移動させて行うようにしてもよい。
受光素子13dは、高速のホトダイオードで構成できる。数行分(副走査方向)の画像情報を1度に読み出すためにレーザビームを副走査方向に伸びるスリット状とした場合は、受光素子としてダイオードアレイ又はCCD(電荷結合素子)を用いることがある。
デジタル書き込み系14は、デジタル読み出し系13と共用のレーザ光源14a(13a)及びレーザビーム走査系14b(13b)を有しており、さらにレーザ変調回路14cとを有している。
レーザ変調回路14cには処理部15から信号が印加され、この信号に応じてレーザ光源14a(13a)から発生するレーザビームの強度が変調せしめられる。レーザ光源14a(13a)として半導体レーザを用いた場合は、その駆動電流を変調することにより直接変調できるが、ガスレーザを用いた場合は、出射されたレーザビームを外部で変調する変調器(図示なし)が必要である。
変調されたレーザビームは、レーザビーム走査系14b(13b)に印加されて上下左右方向に偏向される。これにより、レーザビームが空間光変調素子10上を2次元的に走査することとなる。空間光変調素子10上のレーザビームスポットが1画素に対応し、その光強度が画素の階調を表している。
レーザ変調回路14cとレーザビーム走査系14b(13b)とは互いに同期して動作し、処理部15から与えられた信号に基づいてデジタル画像を空間光変調素子10に書き込む。カラー画像情報について扱うには、このような書き込み動作をR、G、Bの各色について行う。
アナログ読み出し系12は、R、G、Bの3つの光源(例えば蛍光ランプ)12a、12b、12cとレンズ12dで示される光学系とを有している。空間光変調素子10に書き込まれている像が光源12a、12b、12cからの一様な光で順次照明されることにより、レンズ12dによって記録紙19上に拡大投影される。
Rの画像が空間光変調素子10に書き込まれているときに、Rの光源12aを点灯して空間光変調素子10を照射し、その反射光で記録紙19を露光する。同様の処理をG、Bの色分解画像についても順次繰り返して行う。このようにしてR、G、Bの画像が露光された記録紙19が、現像処理されることによってカラーハードコピーが得られる。
アナログ読み出し系12も、アナログ書き込み系11と同様に光源切換え方式の他にカラーフィルタ方式を用いることがある。また、R、G、Bの代りにシアン、イエロー、マゼンタの3色を用いてもよい。
処理部15は、マイクロプロセッサ、メモリ等を含むコンピュータから主として構成されており、受光素子13dで光電変換された画像信号を受け取って画像処理、即ち、階調処理(ガンマ補正、シェーディング補正)、鮮鋭化(シャープネス強調)、エリア指定(トリミング、マスキング)、色処理(色再現、ペイント機能、色により切り出し)、移動(回転)、編集処理(はめ込み合成、文字合成)等の一部又は全部のデジタル処理を行う。なお処理部15において、特別の処理を必ずしも行なわなくともよい。処理結果はディスプレイ16に表示され、結果を確認しながら対話的に処理を行うことができる。処理後の画像信号は、レーザ変調回路14cへ出力される。
なお、第1図においては、第2図に示した制御部17の図示が省略されている。
第3図は、本発明の主構成要素である空間光変調素子10の一構成例を示す断面図である。
同図において、10a、10bは両側端に配置したガラス板であり、一方のガラス板10aの内側の全面には電極10cが積層され、さらにこの電極10cの内側には光伝導体10dが積層されている。他方のガラス板10bの内側の全面には、薄膜ヒータ10e及び絶縁膜10fが積層され、さらにこの絶縁膜10fの内側には電極10gが積層されている。
電極10gと伝導体10dとの間にはスペーサ10hが挿入されており、電極10gと伝導体10dとスペーサ10hとによって形成される空間に液晶10iが注入され封止されている。電極10c及び10gには、電源10jが接続されている。
電極10c及び10gは、透明電極であり、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)膜で構成することが好ましい。
光伝導体10dとしては、硫化カドミウム(CdS)、テルル化カドミウム(CdTe)、セレン(Se)、硫化亜鉛(ZnS)、ケイ酸ビスマス結晶(BSO)、アモルファスシリコン、又は有機光伝導体等が用いられる。なおカラー画像を扱う場合、光伝導体としてアモルファスシリコンを用いることが最良である。これは、アモルファスシリコンの波長感度が可視光全体で平坦なためである。
光伝導体10dは入力された光によって液晶の分子配向を変化させるもので、光によって抵抗が変化する光伝導体の他の材料を使うことができる。例えば、光によって電圧を発生させる材料(例えば太陽電池)、光によって熱を発生させる材料、光によって構造が変化する材料(例えばホトクロミック化合物)等である。光によって熱を発生させる材料及び光によって構造が変化する材料は、電気を介さずに直接液晶の分子配向を変える働きがある。
ガラス板10a、10bは、透明でありかつ液晶10iを封止するための基板となるように機能する。このため、ガラス板の代りに、透明プラスチック板又は透明セラミックス板を用いてもよい。
空間光変調素子を透過型に構成する場合には、薄膜ヒータ10eとしてITO膜等が用いられる。また、絶縁膜10fには酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)等の透明膜が用いられる。
液晶10gには、記憶作用のある強誘電性液晶が用いられる。
強誘電性液晶は、一般的な特性として、自発分極Psに電界Eの及ぼすトルクPsEを利用しているため、応答速度が非常に速い(例えばμsecの桁)。
強誘電性液晶材料としては、カイラルスメクチックC液晶(SmC)、カイラルスメクチックC液晶と非カイラルスメクチックC液晶(SmC)との混合液晶、又はカイラルスメクチックC液晶と光学活性物質との混合液晶がある。
カイラルスメクチックC液晶は液晶分子が層状構造をなしていて、その分子の長軸は層の垂線に対してある一定の角度傾いている。バルク状態では、分子の長軸はこの角度を保ちながら螺旋に回転している。
まず、厚いセルの場合について説明する。
強誘電性液晶をホモジニアス配向させて、10μm以上という比較的厚いセル厚として電極間に挿設する。このような電極間にパルス状電圧を印加すると、液晶は不透明状態から透明状態に変化する。これは、電界によって螺旋構造が壊れてドメインの形状が大きくなり、散乱が減少するためである。
この場合の電気光学特性は比較的なだらかな曲線であり、その中間値を利用することができる。
液晶材料として粘度の少し高いものを選べば、応答速度は遅くなるが記憶効果を持たせることができる。記憶内容を消去するためには、高周波電圧を電極間に印加すればよい。これによって元の螺旋構造に戻る。
このようにして、厚いセルの場合、記憶効果を持たせつつ階調表現可能な空間光変調素子を構成することができる。なおこの場合、第3図における薄膜ヒータ10e及び絶縁膜10fは不要となる。
上述の如き厚い液晶セルの空間光変調素子を用いる場合、以下のように制御される。
空間光変調素子10への書き込みは、画像書き込み平面を構成する光伝導体10dへ平面画像光の投影又は強度変調されたレーザビームの照射により光画像を入射すると、その光強度分布に応じて光伝導体10dに抵抗の分布が生じる。即ち、光の当たった部分の光伝導体10dの抵抗が下がり、光の当たらなかった部分の光伝導体10dは高抵抗のままとなる。
この状態で、電極10c及び10g間にパルス状の電圧を印加すると、入射された光強度分布と同じ分布の電圧が液晶10iに印加されることとなり、透明状態がそれに応じて変化する。このようにして液相10iに書き込まれた光画像は、記憶せしめられる。
空間光変調素子10からの読み出しは、一様な光をこの空間光変調素子10の全面に照射すると、各点に書き込まれている情報に応じて変調された散乱光又は反射光が得られ、これをレンズで結像させることによりアナログ画像を読み出すことができる。また、レーザビーム等のスポット光を照射すると、そのスポットの画素情報を読み出すことができる。
なお、空間光変調素子10に書き込まれた画像を全面消去するには、電極10c及び10g間に高周波の交流電圧を印加した状態で光伝導体10d全面に一様な光を照射すればよい。
空間光変調素子10に書き込まれた画像を部分消去するには、電極10c及び10g間に高周波の交流電圧を印加した状態で光伝導体10dの消去すべき部分に一定の光強度のレーザビームを2次元走査して均一に照射する。
次に、薄いセルの場合について説明する。
強誘電性液晶を極薄いセル厚として電極間に挿設すると、記憶効果を有すると共に双安定動作する。
即ち、SmC液晶をホモジニアス配向させて、5μm以下(一般的には3μm以下)という極薄いセル厚として電極間に挿設する。このように構成すると、平面配向の影響で螺旋構造をとることができなくなり、分子長軸の傾斜角は2つの値(+θ、−θ)しかとれなくなる。
この状態のセルに直流電界+Eを印加すると、液晶の自発分極Psは電界+Eの向きに一致し、液晶分子は全て+θの方向に揃い、電界−Eを印加すると、液晶分子は全て−θの方向に揃う。つまり、電界の極性を切り換えることで、液晶分子が+θと−θとの2つの方向のどちらかに向くため、双安定状態を作り出すことができる。また、分子配向状態は、電界を取り去っても平面配向の影響で記憶効果を有しているため、変化しない。
このような薄いセルは、表示容量の大きい大型表示素子への応用が期待されている。
空間光変調素子へ応用するためには、中間調を表現する必要がある。即ち、記憶効果を持たせつついかに中間調を表現するかが重要となる。
第4図は、薄いセルにおける強誘電性液晶の電気光学特性を示している。
同図に示すように、曲線が急峻であり従って双安定動作を行う。このような電気光学特性を有する強誘電性液晶について、しきい値電圧を制御することにより面積階調で中間調を表現する方法を以下に説明する。
しきい値電圧は、トルクPsEとSmC液晶の粘度とに依存している。即ち、粘度が小さくなれば、液晶分子が動きやすくなるため、当然に粘度が小さくなる。一方、自発分極Psが大きくなると駆動力が増すので、液晶分子は小さいしきい値電圧で反転する。
液晶材料の中には、自発分極P4に温度依存性を有するものがある。このような液晶材料を用い、温度勾配を与えることにより、しきい値電圧を変化させることができる。
実際に面積階調を与えるためには、液晶セル中でマトリクス状の温度分布を持たせてしきい値電圧に分布を与える。これは、薄膜ヒータ10eによって行われる。
第5図に例えば示すように、薄膜ヒータ10eは、複数のマイクロヒータ20を並列に設けたパターンで形成される。これらの各マイクロヒータ20はそれぞれ1画素に対応しており、そのピッチは解像度に影響を与えるものであるから小さい方が好ましい。各マイクロヒータ20の径が10μm以下であり、そのピッチが20μm以下であることが適切である。
このように、薄膜ヒータ10eによって液晶にマトリクス状の温度分布を与えることによりしきい値電圧分布を与え、液晶の両面に印加される電圧に応じて液晶分子の反転する領域の大きさが変化することとなる。
上述の如き薄い液晶セルの空間光変調素子を用いる場合、以下のように制御される。
空間光変調素子10への書き込みは、画像書き込み平面を構成する光伝導体10dへ平面画像光の投影により光画像を入射すると、その光強度分布に応じて光伝導体10dに抵抗の分布が生じる。即ち、光の当たった部分の光伝導体10dの抵抗が下がり、光の当たらなかった部分の光伝導体10dは高抵抗のままとなる。
薄膜ヒータ10eには図示しない電源から通電されており、これによって液晶セルに温度分布が与えられている。
この状態で、電極10c及び10g間にパルス状の電圧+Vを印加する。この場合、直流電圧を印加してもよいが、液晶の寿命を考慮するとパルス状電圧の方がよい。この電圧値+Vは、光が強く照射されている部分の液晶分子を反転させるのに必要な電圧である。
これにより、光伝導体10dの抵抗分布と液晶セルの温度分布とに依存して、液晶分子に反転が生じる。一般に、光の強く照射された部分は液晶の反転領域が大きく、光の弱い部分は液晶の反転領域が小さい。このようにして、液晶10iに光画像が書き込まれ、記憶せしめられる。
レーザビームによる書き込みも同様であり、電極10c及び10g間にパルス状電圧+Vを印加した状態で強度変調されたレーザビームを照射して1画素の書き込みを行う。そしてレーザビームを2次元的に走査して画像を書き込んでいく。ただし、階調を面積階調で表すため、1画素はマイクロヒータ20のピッチに相当させる必要があり、レーザビームのスポットの大きさもこれに合わされる。
空間光変調素子10からの読み出しは、次のようにして行われる。
この方法は、液晶分子の配向を反転させ偏光状態を変化させて変調するものである。そのため、図示しないポラライザ及びアナライザを用いる。ポラライザを通った読み出し用の直線偏光を、電極10c及び10g間に電圧を印加しない状態で空間光変調素子10の全面に照射し、その散乱光又は反射光をアナライザを通して光量変化に変換し、読み出しを行う。ポラライザ及びアナライザの偏光の方向は直角又は平行方向である。
なお、液晶10iに記憶効果があるため、光伝導体10dに読み出し用の光が照射されても書き込まれている画像が消去されることはない。
このように偏光された一様な光を空間光変調素子10の全面に照射すると、各点に書き込まれている情報に応じて変調された散乱光又は反射光が得られ、これをアナライザを通してレンズで結像させることによりアナログ画像を読み出すことができる。また、レーザビーム等のスポット光を同様に照射すると、そのスポットの画素情報を読み出すことができる。
本発明の如く記憶作用を有する液晶を用いた場合、光伝導体に光と電圧の両方を同時に印加しない限り書き込みは行われない。即ち、読み出し用のレーザビーム又は一様な光が光伝導体に照射されても書き込まれた像が変化することはない。このため、液晶と光伝導体との間に遮光膜を設けて読み出し時に光伝導体に光が印加されないようにする必要はなくなり、読み出し光学系を透過型とすることができる。しかも、読み出し用のレーザビームはガラス板10a側から印加しても、又はガラス板10b側から印加してもよい。また、遮光膜を設けて反射型としてもよい。
特に、第1図に示すように、書き込み用と同じ側から読み出し用のレーザビームを印加するように構成すれば、デジタル書き込み系とデジタル読み出し系とで大部分の光学系を共用することができる。
なお、空間光変調素子10に書き込まれた画像を全面消去するには、電極10c及び10g間にパルス状電圧−Vを印加した状態で光伝導体10d全面に比較的光強度の強い一様な光を照射すればよい。その結果、液晶分子は全て−θの方向に配向される。なお、この場合の電圧−Vは、液晶分子を反転させるのに十分な電圧である。
空間光変調素子10に書き込まれた画像を部分消去するには、電極10c及び10g間にパルス状電圧−Vを印加した状態で光伝導体10dの消去すべき部分に一定の比較的光強度の強いレーザビームを1画素ずつ2次元走査して均一に照射する。
次に、アナログ書き込みによる画像とデジタル書き込みによる画像との重ね書き込み動作について説明する。
デジタル画像が階調を有しておらず、R、G、Bがそれぞれ2値程度(8色)で表される画像の場合は、アナログ画像を書き込んだ上にそのままデジタル画像を重ねて書き込めばよい。又は逆に、デジタル画像を書き込んだ上にそのままアナログ画像を重ねて書き込めばよい。
一方、階調を有するデジタル画像を書き込む場合は、まずアナログ画像を書き込み、次いでデジタル画像を書き込む部分の消去を行った後にデジタル画像の書き込みを行う。デジタル画像の書き込みを行う前に、デジタル画像を書き込む部分を初期状態に戻すため上述の如き部分消去が必要となる。
この部分消去により、レーザビームの当たっている1画素分の液晶分子が−θの方向に配向されて初期状態に戻る。
その後、前述の場合と同様に、電極10c及び10g間にパルス状電圧+Vを印加した状態で強度変調されたレーザビームを照射して1画素ずつ書き込みを行う。
第6図は、第2図に示した制御部17に設けられたコンピュータの制御プログラムの一部を概略的に表すフローチャートである。このプログラムは、カラー画像編集・出力機能モードを実行するためのものであり、このモードが指示されると、コンピュータは以下の如く動作する。
まずステップS1において、R、G、Bの切換えを行うためのフラグnをn←0に初期設定する。次いでステップS2において、n=0であるかどうかを判定する。
n=0の場合は、ステップS3でアナログ書き込み系11のRの光源11aを点灯させ、次のステップS4で、原稿18のRの光源11aからの一様な光による光学像をレンズ11dを介して空間光変調素子10に書き込む。
ステップS2でn=0ではない場合は、ステップS5において、n=1であるかぞうかを判別する。n=1の場合は、ステップS6でGの光源11bを点灯させ、次のステップS4で、原稿18のGの光源11bからの一様な光による光学像をレンズ11dを介して空間光変調素子10に書き込む。n=1ではない場合は、ステップS7でBの光源11cを点灯させ、次のステップS4で、原稿18のBの光源11cからの一様な光による光学像をレンズ11dを介して空間光変調素子10に書き込む。
次のステップS8においては、デジタル読み出し系13を作動させる。即ち、レーザ光源13aから出射されたレーザビームを空間光変調素子10上で2次元的に走査させ、その透過光、反射光、又は散乱光を受光素子13dに印加することにより空間光変調素子10上に書き込まれている画像情報を読み出す。
次いでステップS9において、処理部15を作動させ、読み出した画像情報について種々の画像処理を施す。
次のステップS10では、デジタル書き込み系14を作動させる。即ち、処理部15からの信号をレーザ変調回路14cに印加し、レーザビームを変調させて空間光変調素子10上を2次元的に走査し書き込みを行う。このデジタル書き込み時に、空間光変調素子10の全体にデジタル画像を書き込んでもよいし、その一部にデジタル画像を書き込むようにしてもよい。これによって、アナログ画像とデジタル画像とが混在、融合した画像を得ること可能となる。
ステップS11では、処理部15による画像処理が全て終了したかどうかを判別し、否の場合はステップS8〜S10の処理を繰り返して実行する。
次のステップS12では、n=0であるかどうかを判別する。n=0の場合は、ステップS13へ進んでアナログ読み出し系12のRの光源12aを点灯させる。そして次のステップS14において、空間光変調素子10上に書き込まれている画像情報をこのRの光源12aからの一様な光で読み出し、その光学像をレンズ12dを介して記録紙19に露光させる。
ステップS12でn=0ではない場合は、ステップS15において、n=1であるかどうかを判別する。n=1の場合は、ステップS16でGの光源12bを点灯させ、次のステップS14で、空間光変調素子10上に書き込まれている画像情報をこのGの光源12bからの一様な光で読み出し、その光学像をレンズ12dを介して記録紙19に露光する。n=1ではない場合は、ステップS17でBの光源12cを点灯させ、次のステップS14で、空間光変調素子10上に書き込まれている画像情報をこのBの光源12cからの一様な光で読み出し、その光学像をレンズ12dを介して記録紙19に露光する。
次いでステップS18においてnをn←n+1と歩進させた後、ステップS19においてn=3であるかどうかを判別する。n=3の場合は、R、G、Bの全ての色の処理が終了したとしてこのプログラムを終了する。n=3でない場合はステップS2へ戻り、前述の処理を繰り返す。
カラー画像編集機能モードが指示された場合、コンピュータは、第6図のプログラムのステップS8〜S11の処理のみを実行する。ただし、ステップS8〜S11の処理はR、G、Bの全ての色について繰り返して実行される。
イメージスシャナ機能モードが指示された場合は、第6図6図のプログラムのステップS1〜S8の処理のみが実行される。この場合もR、G、Bの全ての色について蒸り返して実行される。即ち、n=3となるまで行われる。
プリンタ機能モードが指示された場合は、第6図のプログラムのステップS20がまず実行され、制御部17又はその他の外部装置から画像情報が入力される。次いでステップS10以降の処理が実行される。ただし、これらの処理はR、G、Bの全ての色について繰り返して実行される。
アナログ複写機能モードが指示された場合は、第6図のプログラムのステップS4からステップS12へ常にジャンプするようにして処理が実行される。
本実施例によれば、画像の種類等により、アナログ処理又はデジタル処理を使い分けることができる。例えば、線画又は文字中心の画像ではアナログ複写機能モードを指示してアナログ処理を行うことにより滑らかな線を再現することができる。また、色を重視する画像はカラー画像編集・出力機能モードを指示して色補正等を行い忠実に色再現することができる。
アナログ処理では困難な像の領域分離もカラー画像編集・出力機能モード、カラー画像編集機能モードを指示して部分消去等のデジタル処理を行うことによって容易に処理可能である。また、デジタル画像にアナログ画像をはめ込んだり、アナログ画像にデジタル画像をはめ込んだり、アナログ画像にデジタル画像を重ね書きする等アナログ画像とデジタル画像とが混在、融合した画像を得ることも可能である。
また、空間光変調素子からの読み出し走査時に、走査間隔又は受光素子のサンプリング間隔を粗くすることにより、解像度を段階的に低下させることも可能である。また、走査間隔を通常より密にし画像表示時に通常の間隔で表示すれば、ズームアップした画像を得ることができる。空間光変調素子の面積を充分大きくすることによってズームアップした画像の画質低下を避けることができる。このズームアップ機能は、任意の場所の任意の倍率のズームアップ像を得るのに、原稿を動かしたり、光学レンズを動かしたりすることなく行うことができる。
[発明の効果]
以上詳細に説明したように本発明によれば、画像書き込み平面を構成する光伝導体、該光伝導体に積層され記憶作用を有する強誘電性液晶、及び該光伝導体と液晶とを挟む電極を具備する空間光変調素子と、原画像をこの空間光変調素子にアナログ的に書き込むアナログ書き込み系と、空間光変調素子上でレーザビームを2次元走査させることにより空間光変調素子に書き込まれている画像をデジタル的に読み出すデジタル読み出し系と、読み出した画像データについて画像処理を行う処理部と、レーザビームを2次元走査させることにより前述の処理を行った画像データを空間光変調素子にデジタル的に書き込むデジタル書き込み系と、空間光変調素子に書き込まれている画像をアナログ的に読み出すアナログ読み出し系とを備えているため、アナログ画像とデジタル画像とが混在、融合した画像を扱うことのでき、しかも高解像度でかつ色再現性良く画像を再生することができかつ低コストな画像処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例としてカラー画像編集・出力装置の基本構造を示す構成図、第2図は第1図の実施例の構成を概略的に表したブロック図、第3図は空間光変調素子の一構成例を示す断面図、第4図は薄いセルにおける強誘電性液晶の電気光学特性図、第5図は第3図の空間光変調素子における薄膜ヒータの平面図、第6図は第1図の実施例のコンピュータの制御プログラムの一部を概略的に表すフローチャートである。
10……空間光変調素子、10a、10b……ガラス板、10c、10g……電極、10d……光伝導体、10e……薄膜ヒータ、10f……絶縁膜、10h……スペーサ、10i……液晶、10j……電源、11……アナログ書き込み系、11a、11b、11c、12a、12b、12c……光源、11d、12d、13d……レンズ、12……アナログ読み出し系、13……デジタル読み出し系、13a、14a……レーザ光源、13b、14b……レーザビーム走査系、13d……受光素子、14……デジタル書き込み系、14c……レーザ変調回路、15……処理部、16……ディスプレイ、17……制御部、18……原稿、19……記録紙、20……マイクロヒータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】画像書き込み平面を構成する光伝導体、該光伝導体に積層され記憶作用を有する強誘電性液晶、及び該光伝導体と液晶とを挟む電極を具備する空間光変調素子と、原画像を該空間光変調素子にアナログ的に書き込むアナログ書き込み系と、該空間光変調素子上でレーザビームを2次元走査させることにより該空間光変調素子に書き込まれている画像をデジタル的に読み出すデジタル読み出し系と、読み出した画像データについて画像処理を行う処理部と、レーザビームを2次元走査させることにより前記処理を行った画像データを前記空間光変調素子にデジタル的に書き込むデジタル書き込み系と、該空間光変調素子に書き込まれている画像をアナログ的に読み出すアナログ読み出し系とを備えたことを特徴とする画像処理装置。

【第3図】
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【第1図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【特許番号】第2534568号
【登録日】平成8年(1996)6月27日
【発行日】平成8年(1996)9月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−42093
【出願日】平成2年(1990)2月22日
【公開番号】特開平3−243936
【公開日】平成3年(1991)10月30日
【出願人】(999999999)シャープ株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭62−131244(JP,A)
【文献】特開昭61−198862(JP,A)
【文献】特開昭57−13458(JP,A)
【文献】特開昭62−154845(JP,A)