説明

画像安定性の改善のための熱転写可能な材料

熱転写可能なポリマーバインダー及び光安定剤を含み、当該光安定剤はヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルであり、当該N−オキシルラジカルが下記式(I):


(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキルからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)により表され、600以下の分子量を有する、熱転写可能な供与体要素を記載する。熱転写可能な材料は、サーマル供与体要素上に1又は2以上のセクション又はパッチで存在して保護オーバーコート材料を提供できる。任意選択的に、供与体要素におけるパッチは色素を含んでもよい。熱転写可能な材料は、サーマル、インクジェット、電子写真又はハロゲン化銀受容体に適用された場合に、良好な画像安定性及びイリデッセンスの改善をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写可能なポリマーバインダー及びN−オキシルラジカルを含む熱転写可能な材料に関する。N−オキシルラジカルは、ヒンダードアミンから誘導され、受容体に適用された場合に画像安定性の改善と彩色の低減をもたらす光安定剤として挙動する。
【背景技術】
【0002】
多くの画像形成方法が存在する。画像は、色素のサーマル転写、インクジェット適用、電子写真再現、及びハロゲン化銀画像現像を通じて形成できる。かかる画像は全て環境要因、特に光退色を受けやすいことも知られている。また、サーマル画像、インクジェット画像及び電子写真画像も、観察者にとって見苦しいイリデッセンスの問題を生じることがある。典型的には、イリデッセンスは、受容体上の材料と、画像を形成するのに受容体に適用された任意の材料との間の相互作用により生じる。
【0003】
印刷画像を形成するために、画像は、フィルムから化学的に現像されるか、又はデジタルキャプチャー装置もしくはフィルムの走査から生成した電子信号から現像される。サーマルプリント、インクジェットプリント及び電子写真プリントの場合、適切な色を示す電子信号を使用してシアン、マゼンタ及びイエローのカラー信号を生成させる。これらの信号は、次にプリンターに送信され、プリンターにおいて着色材料が受容体に転写される。このようにして、原画像に対応するカラーハードコピーが得られる。
【0004】
着色剤が受容体の表面に残るため、サーマルプリント、インクジェットプリント及び電子写真プリントは、隣接する表面への着色剤の再転写及び指紋による変色を受けやすい。着色剤が受容体のより深部に送りこませるために熱を使用できる。これらのタイプのプリント及びハロゲン化銀プリント上に保護オーバーコートを適用することも知られており、画像上に保護ポリマー層を加えることによって、再転写及び変色が有効に低減する。
【0005】
保護オーバーコートは、下側の画像形成着色剤(色素など)に対する光安定性の改善ももたらすことができる。最も一般的なアプローチは、紫外線(UV)を濾過して取り除くことである。なぜなら、紫外線は下側の着色剤に対して有害であるからである。画像安定性の改善は、米国特許第4,522,881号明細書に記載されているように、保護オーバーコートに紫外線吸収色素を添加することにより達成できる。このアプローチは、吸収できる紫外線の量に実際的な限度がある。なぜなら、保護オーバーコートの厚さ及び適用できる紫外線吸収色素の濃度に実際的な限度があるからである。
【0006】
画像安定性の改善は、受容体中の着色剤のすぐ近くに光安定剤を導入することによっても達成できる。光安定剤を含む材料の水性若しくは溶剤コーティング又は熱押出によって、製造時に光安定剤を受容体に添加することができる。熱押出が使用される場合に、典型的には250℃又はそれより高い押出温度のために、非常に高い熱安定性を有する光安定剤のみを使用できる。光安定剤が受容体に適用されたときに着色剤と反応するようなやり方で光安定剤を受容体中に組み込まなければならない。
【0007】
米国特許第5,332,713号明細書には、サーマルプリントへの転写のための供与体要素上の転写可能な保護オーバーコートが開示されている。この転写可能な保護オーバーコートは、少なくとも5モル%のヒドロキシルを含むポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルベンザール)又はポリ(ビニルアセタール)を含む。このオーバーコートは、色素受容層との屈折率のミスマッチのために、劣った光沢及びイリデッセンス(iridescence)性能をもたらす。
【0008】
米国特許第5,387,573号明細書には、熱転写可能な保護オーバーコートの厚さの75%以下の量の粒子を含む保護オーバーコートが開示されている。当該粒子はイリデッセンスの問題を低減するが、当該粒子は画像形成されたプリントの光沢を低下させる。
【0009】
米国特許第5,670,449号明細書には、良好な貯蔵性を得るために保護オーバーコート中にエラストマービーズを使用することが開示されているが、これらの保護オーバーコートの光沢性能は最適でない。
【0010】
米国特許第6,942,956号明細書には、光沢向上剤、及び無機粒子と有機粒子との混合物を含む保護オーバーコートが開示されている。幾つかの実施態様において、保護層は、5質量%〜60質量%の無機粒子と、25質量%〜80質量%のポリマーバインダーと、5質量%〜60質量%の有機粒子と、有効量の少なくとも1種の光沢向上化合物を含む。当該光沢向上化合物は実質的に無色である有機粒子から成り、光を散乱せず、400〜800nmの波長の光を実質的に吸収せず、400nm未満の波長に最大吸収を有する。無機粒子、例えばシリカは、円滑な保護オーバーコートの切り離し(tear−off)をもたらすために必要とされるものであるが、無機粒子は光沢を低下させ、グラビアコーティング品質に対して有害である。有機粒子はイリデッセンスを低減するために必要とされるものであるが、有機粒子は光沢を低下させる。もたらされる光沢改善は適当でない。
【0011】
米国特許第7,301,012号明細書及び米国特許第7,384,138号明細書には、画像色素の安定性をもたらすために受容体中にヒンダードアミン光安定剤(HALS)を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,522,881号明細書
【特許文献2】米国特許第5,332,713号明細書
【特許文献3】米国特許第5,387,573号明細書
【特許文献4】米国特許第5,670,449号明細書
【特許文献5】米国特許第6,942,956号明細書
【特許文献6】米国特許第7,301,012号明細書
【特許文献7】米国特許第7,384,138号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
より高い画像安定性、イリデッセンスの低減をもたらし、低コストで製造できる熱転写可能な保護オーバーコートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ポリマー支持体を含み、当該ポリマー支持体の少なくとも一部が熱転写可能な材料によりコーティングされており、当該熱転写可能な材料が、ポリマーバインダー及び光安定剤を含み、当該光安定剤がヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルであり、当該N−オキシルラジカルが下記式:
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)
により表され、600以下の分子量を有する、熱転写可能な供与体要素に関する。
【0017】
本発明は、本発明の供与体要素から受容体要素に画像様に材料を転写するための集成体も提供する。この熱転写可能な材料は、1又は2以上の保護オーバーコートパッチで存在することができる。保護オーバーコートを転写するのに適切な受容体要素としては、例えば、インクジェット受容体、サーマル受容体、電子写真受容体、又はハロゲン化銀プリントなどの任意の着色剤含有材料が挙げられる。
【0018】
転写可能なポリマーバインダー及び転写可能なN−オキシルラジカル光安定剤を含有する本発明の熱転写可能な供与体要素は、光退色を低減し、イリデッセンスを低減し、しかも、紫外線吸収材料の必要性を減らす又は無くすことにより画像生成のためのコストを低減するという利点を提供する。他の利点は本明細書を十分に検討することで明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、サーマル印刷、インクジェット印刷及び電子写真印刷用の受容体並びにハロゲン化銀プリントと共に使用するための熱転写可能な供与体要素に関する。熱転写可能な材料は、熱転写可能な供与体要素の少なくとも一部の上に存在し、当該供与体要素は、支持体と、当該支持体の少なくとも片面上に配置された熱転写可能なポリマーバインダー及び光安定剤を有し、当該光安定剤はヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルである。しばしば、このN−オキシルラジカルは、「ヒンダードアミン光安定剤」(HALS)として当該技術分野で知られている。このN−オキシルラジカルは、少なくとも140かつ600未満の分子量を有し、下記式:
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)により表される。
【0022】
様々な実施態様によれば、R3 及びR4 は、CH2CH3、CH3 又はHからそれぞれ別々に選択することができる。例えば、R3 及びR4 は、両方とも水素であることができる。様々な実施態様によれば、R1 、R2 、R5 及びR6 は、CH2CH3、CH3 又はHからそれぞれ独立に選択することができる。また、R1 、R2 、R5 及びR6 は、CH3 又はHからそれぞれ独立に選択することができ、典型的には、それぞれCH3 である。有用な化合物は、Evonik/DegussaからTEMPOとして商業的に入手可能である。
【0023】
光安定剤はオキシルラジカルであり、一重項酸素クエンチャーである。光安定剤は活性な形態で存在する。供与体要素上の熱転写可能な材料中に存在する場合に、光安定剤は、印刷によって、供与体要素から無色色素のように転写されるか、受容体要素に転写される。すなわち、光安定剤は、加熱によって、熱転写可能な供与体要素から受容体要素に移行する。この理由から、上記のように低い分子量を有するN−オキシルラジカル光安定剤が望ましく、N−オキシルラジカル光安定剤は、供与体要素と受容体要素の間でより容易に移動することができる。また、移行を可能にするために、R1〜R6の側鎖として立体障害の小さいものが有用である。
【0024】
N−オキシルラジカルが可塑剤の存在下で反応してそれに結合するようであることが観察された。N−オキシルラジカルが転写される受容体層における可塑剤の存在は、N−オキシルラジカルと結合して、他の受容体層中へのいかなる再転写又はさらなる移行も妨げるようである。N−オキシルラジカルを含む熱転写可能な材料における可塑剤の存在は、供与体要素上のパッチ中にHALSを固定するというよりも、受容体要素への光安定剤のを妨げることができる。N−オキシルラジカルを含む熱転写可能な材料中にほとんど又は全く可塑剤が存在しないことが望ましく、例えば、可塑剤の量は熱転写可能な材料の5質量%以下、典型的には3質量%以下、より典型的には0〜2質量%である。多くの実施態様において、熱転写可能な材料中に可塑剤は存在しない。
【0025】
本発明の供与体要素のための支持体として、寸法安定であり、熱転写の熱、例えばサーマルプリントヘッドからの熱に耐えられる限り、いかなる材料も使用できる。適切な材料としては、例えば、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)など;ポリアミド;ポリカーボネート;グラシン紙;コンデンサー紙;セルロースエステル、例えばセルロースアセテートなど;フッ素ポリマー、例えばポリ(フッ化ビニリデン)又はポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン)など;ポリエーテル、例えばポリオキシメチレンなど;ポリアセタール;ポリオレフィン、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はメチルペンテンポリマーなど;並びにポリイミド、例えばポリイミドアミド及びポリエーテルイミドなどが挙げられる。支持体の厚さは2〜30μmであることができるが、特定の用途に対してより厚い又はより薄い支持体を使用できる。高光沢画像が望まれる特定の実施態様によると、支持体は、熱転写可能な材料が付与される支持体の側で18nm以下の表面粗さRaを有することができる。
【0026】
熱転写可能な材料は、供与体要素上の1又は2以上のセクション又はパッチで提供されるか、あるいは単一の熱転写可能な材料を供与体要素の長手方向にコートすることができる。供与体要素は、意図する熱転写装置に適する任意の望ましい幅及び長さのシート又はロールとして提供できる。供与体要素上のパッチは同じ又は異なることができ、必要に応じて反復パターンで存在することができる。パッチは保護オーバーコートを提供する。供与体要素は、1又は2以上の着色色素パッチの次に保護オーバーコートパッチを含むか、あるいは、単一カラーパッチの次に保護オーバーコートパッチを含んでもよい。必要に応じて、この順番を繰り返すことができる。サーマル色素拡散印刷で通常使用されている典型的な順序は、イエロー、マゼンタ、シアン及び保護オーバーコートのパッチの繰り返しである。本発明は、供与体要素において単独で使用できる保護オーバーコートパッチ、あるいは1又は2以上のカラーパッチとともに保護オーバーコートパッチとして使用できる保護オーバーコートパッチに関する。
【0027】
紫外線吸収剤は、熱転写可能な材料中に20質量%以下、又は5質量%以下の量で存在することができる。場合によって、紫外線吸収剤は存在しない。
【0028】
保護オーバーコートパッチの場合、熱転写可能な材料は、N−オキシルラジカル光安定剤の他に、1又は2種以上の熱転写可能なポリマーバインダーを含む。いかなる周知の熱転写可能なポリマーバインダーも使用できる。例えば、本発明は、熱転写可能な材料において使用するための熱転写可能なポリマーバインダーブレンド、例えば、ポリスチレン/アリルアルコールコポリマーとブレンドされたポリビニルアセタール樹脂であって、ヒンダードアミンから誘導された1又は2種以上の熱転写可能なN−オキシルラジカル光安定剤を含むものの使用も包含する。この使用によって、得られる色素拡散熱転写プリントの画像安定性の改善をもたらす。この樹脂ブレンドは、保護オーバーコート層又はパッチで使用できる。保護オーバーコート層は、一般的に、高い光学的特性を有する最終的なプリント中に含まれる。保護オーバーコート層は、下側の色素受容層との屈折率の良好なマッチングをもたらす。色素拡散熱転写システムにおける使用に加えて、当該層を、例えば、インクジェット受容体に適用される熱転写層などの用途で使用できる。
【0029】
保護オーバーコート層又はパッチの適用によって、色素拡散熱転写プリントで一般的に遭遇する問題を解消することができる。さらに、保護オーバーコート層又はパッチは、紫外線や、例えばオゾン及び窒素酸化物などの汚染ガスに対するバリヤーとして機能することによって、色素安定性の改善をもたらすこともできる。必要に応じて、保護オーバーコート層又はパッチは、光沢ハロゲン化銀写真プリントから得られるものよりも光沢のある表面を有し、しかも、イリデッセンスを生じないプリントを提供することもできる。例えば、20°で測定した場合の光沢は、1msのライン時間で転写したときに少なくとも50であり、0.5msのライン時間で転写したときに少なくとも45である。保護オーバーコート層は、転写された保護オーバーコートと転写されていない保護オーバーコートとの間での円滑な切り離しをもたらすことが望ましい。製造上の改善について、保護オーバーコート層又はパッチにおいて使用される材料が低コスト溶剤の使用を可能にするものであることが望ましい。
【0030】
特に、本発明の熱転写可能な供与体要素は、サーマルヘッドを使用して均一に加熱することによりもたらされたサーマルプリント上の保護オーバーコート層パッチ(又は保護材料)である。保護オーバーコート又は保護オーバーコートパッチとも呼ぶことがある保護オーバーコート層は、下記式I:
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、nは10〜100である)
により表される少なくとも1種のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含むことができる。平均分子量は4,000〜100,000、例えば15,000〜80,000の範囲内であることができる。任意選択的に、保護オーバーコート層は、少なくとも1種のスチレン/アリルアルコールコポリマー樹脂、例えばLyondell SAA−100などを含んでもよい。上記のとおり、保護オーバーコート層は、N−オキシルラジカル光安定剤、例えばTEMPOとして知られている下記式III:
【0033】
【化4】

【0034】
により定義されるN−オキシルラジカル光安定剤も含む。
本発明の一実施態様において、保護オーバーコート層は、供与体要素上の唯一の層であり、熱転写可能な画像色素を含む色素供与体要素とともに使用できる。
【0035】
例えば、多くの実施態様において、保護オーバーコート層において使用される熱転写可能なポリマーは、ポリスチレン/アリルアルコール樹脂とブレンドされたポリビニルアセタール樹脂を含む。熱転写システムにおいて使用される場合、ポリスチレン/アリルアルコール樹脂とブレンドされたポリ(ビニルアセタール)樹脂の屈折率は、色素受容層の屈折率に密にマッチし、色素受容層と保護オーバーコート層の間の屈折率のミスマッチからもたらされる現在の保護オーバーコートの低光沢を低減する。典型的には、屈折率は1.50〜1.65の範囲内であり、より典型的には1.54〜1.65の範囲内である。ポリスチレン/アリルアルコール樹脂とブレンドされたポリ(ビニルアセタール)樹脂の使用は、BYK−Gardner micro−TRI−gloss(登録商標)メーターにより測定した場合に、ポリ(ビニルアセタール)保護オーバーコートにより達成される光沢値よりも10〜15単位高い光沢値を与える(実験の章を参照)。
【0036】
一実施態様において、保護オーバーコート層は、架橋エラストマー有機ビーズを含んでもよい。当該ビーズは、45℃以下、例えば10℃以下のガラス転移温度(Tg)を有することができる。当該エラストマービーズは、アクリル系ポリマー又はコポリマー、例えば、ブチルアクリレートもしくはメタクリレート、エチルアクリレートもしくはメタクリレート、プロピルアクリレートもしくはメタクリレート、ヘキシルアクリレートもしくはメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートもしくはメタクリレート、2−クロロエチルアクリレートもしくはメタクリレート、4−クロロブチルアクリレートもしくはメタクリレート、又は2−エトキシエチルアクリレートもしくはメタクリレート;アクリル酸;メタクリル酸;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン系コポリマー、例えばスチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン、スチレン−イソプレンもしくは水素化スチレン−ブタジエン;あるいは、これらの混合物から製造できる。エラストマービーズは、エラストマーコポリマーの一部となり得る様々な架橋剤、例えばジビニルベンゼン;エチレングリコールジアクリレート;1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシエチル)ジメタクリレート;1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシプロピル)ジアクリレート;1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシプロピル)ジメタクリレート;及びエチレングリコールジメタクリレートなど(これらに限定されない)を使用して架橋されたものであることができる。エラストマービーズは、1〜40質量%、例えば5〜40質量%の架橋剤を有することができる。エラストマーマイクロビーズは、意図する目的に対して有効な任意の量で使用できる。一般的に、2〜25mg/m2の被覆量で良好な結果が得られた。エラストマーマイクロビーズは、一般的に、4μm〜10μmの粒径を有する。これらのレベルでは、ビーズは光沢に有害でなく、ウェブ搬送性及びスプール巻き取りを伴う仕上げ作業に有益である。
【0037】
エラストマービーズは、エラストマーコポリマーの一部となり得る様々な架橋剤、例えば、ジビニルベンゼン;エチレングリコールジアクリレート;1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシエチル)ジメタクリレート;1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシプロピル)ジアクリレート;1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシプロピル)ジメタクリレート;及びエチレングリコールジメタクリレートなどを使用して架橋されたものであることができる。
【0038】
ガラス転移温度は、20℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(DSC)法により求めることができ、熱容量の変化の開始をTgとする。
【0039】
以下は、本発明において使用できる典型的なエラストマーマイクロビーズの例である:
ビーズ1) 約4μmの公称直径及び約−31℃のTgを有するポリ(ブチルアクリレート−co−ジビニルベンゼン)(モル比80:20)。
ビーズ2) 約4μmの公称直径及び約45℃のTgを有するポリ(スチレン−co−ブチルアクリレート−co−ジビニルベンゼン)(モル比40:40:20)。
ビーズ3) 約5μmの公称直径及び約−22℃のTgを有するポリ(エチルアクリレート−co−エチレングリコールジアクリレート)(モル比90:10)。
ビーズ4) 約5μmの公称直径及び約20℃のTgを有するポリ(2−エチルヘキシルアクリレート−co−スチレン−co−ジビニルベンゼン)(モル比45:40:15)。
ビーズ5) 約7μmの公称直径及び約−10℃のTgを有するポリ[2−クロロエチルアクリレート−co−1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシプロピル)ジアクリレート](モル比80:20)。
ビーズ6) 約6μmの公称直径及び約29℃のTgを有するポリ(ブチルメタアクリレート−co−ヒドロキシエチルアクリレート−co−ジビニルベンゼン)(モル比65:10:25)。
ビーズ7) 約8μmの公称直径及び約−55℃のTgを有するポリ(スチレン−co−ブタジエン−co−ジビニルベンゼン)(モル比40:50:10)。
ビーズ8) 約4μmの公称直径及び約−5℃のTgを有するポリ(スチレン−co−2−エトキシエチルアクリレート−co−エチレングリコールジアクリレート)(モル比20:45:35)。
ビーズ9) 約4μmの公称直径及び約−15℃のTgを有するポリ(スチレン−co−ヘキシルアクリレート−co−ジビニルベンゼン)(モル比10:70:20)。
【0040】
熱転写可能でないポリマーバインダーが供与体要素中に存在してもよいが、それらはサーマル印刷中に転写されない。かかるポリマーバインダーは当該技術分野でよく知られており、既知の量の熱可塑性樹脂、例えば、アクリル樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)など、ビニル樹脂、例えばポリ(酢酸ビニル)、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルブチラール)など、及びセルロース誘導体、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース及び酢酸セルロース、並びに熱硬化性樹脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びアミノアルキド樹脂(これらに限定されない)を含む。
【0041】
熱転写可能な保護オーバーコート層の配合物は、種々の樹脂、光安定剤及び任意のビーズを、適切な溶剤、例えばトルエンとn−ブタノールの混合物中に溶解又は分散させることにより形成できる。この配合物に紫外線(UV)吸収剤が含まれてもよい。いかなる既知のUV吸収剤も使用できるが、有用なものはTINUVIN(登録商標)460(Ciba)である。いかなる既知のN−オキシルラジカルも使用できるが、有用な化合物は1,1,5,5−テトラメチルペンタメチレンニトロキシド(TEMPO)である。
本発明に必要でないが、架橋エラストマービーズ以外の無機粒子又は有機ビーズを加えてもよい。
【0042】
上記配合物は、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、又はグラビアプレートを使用するリバースコーティングにより支持体シート上にコーティングされ、コーティングを乾燥させる。配合物は、一般的に、少なくとも0.03g/m2 から1.7g/m2 までの乾燥被覆量をもたらすように適用され、1μm未満の乾燥層を得る。必要に応じて、例えば2〜3g/m2 のより厚いコーティングを適用できる。
【0043】
本発明の一実施態様において、保護オーバーコート層は、20〜45質量%、典型的には35〜45質量%のポリ(ビニルアセタール)バインダー、20〜50質量%、典型的には40〜50質量%のポリスチレン/アリルアルコールポリマーバインダー、0.50〜3.0質量%、典型的には1.0〜2.0質量%のN−オキシルラジカル光安定剤、0〜30質量%、典型的には3〜15質量%のUV吸収化合物、及び0.5〜4質量%、典型的には1.0〜3.0質量%の架橋エラストマービーズを含む。
【0044】
実際には、色素供与体要素からイエロー、マゼンタ及びシアン色素が熱転写され、色素受容要素又はシート上に画像を形成する。次に、サーマルヘッドを使用して、熱を均一に適用することによって、色素供与体要素上の透明パッチから又は別の供与体要素から透明保護オーバーコートを色素画像受容シート上に転写させる。透明保護オーバーコート層は、加熱された領域において、プリントに付着し、そして供与体支持体から離れる。
【0045】
転写性および受容体表面に対する付着性を改善するために、熱転写可能な保護オーバーコート層の表面に接着剤層を設けることができる。接着剤層は、40〜80℃のガラス転移温度(Tg)を有するいかなる従来の感圧接着剤又は感熱性接着剤から形成されたものであってもよい。高い光沢を保つため及びイリデッセンスが生じないことを保つために、材料の選択は、屈折率のマッチング要件により決定される。
【0046】
剥離層を介して基材シート上に保護オーバーコート層を設けることができる。剥離層を設けることによって、熱転写シートから受容体上にオーバーコート層をより容易に転写することが可能となる。剥離層は、例えば、ワックス、例えばマイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、フィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsh)ワックス、様々なタイプの低分子量ポリエチレン、木蝋、蜜蝋、鯨蝋、昆虫蝋、ウールワックス、セラックワックス、カンデリラワックス、ペトロラクタム、部分変性ワックス、脂肪エステル及び脂肪アミドなど、並びに熱可塑性樹脂、例えば、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、およびニトロセルロースを含むことができる。さらに、剥離層はバインダー樹脂及び剥離性材料を含む。本発明において使用可能なバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、例えばアクリル樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ビニル樹脂、例えばポリ(酢酸ビニル)、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルブチラール)、及びセルロース誘導体、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース及びセルロースアセテート、並びに熱硬化性樹脂、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びアミノアルキド樹脂が挙げられる。剥離性材料としては、ワックス、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、タルク又はシリカの微粉末、及び界面活性剤又は金属石鹸などの滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
剥離層は、適切な溶剤に上記材料を溶解又は分散させて剥離層用のコーティング液を調製し、このコーティング液を基材シート上に、グラビアプレート又は他の手段を使用してグラビア印刷、スクリーン印刷、リバースコーティングすることによりコーティングし、コーティングを乾燥させることにより形成できる。被覆量は、乾燥量基準で、一般的に、0.1〜10g/m2 である。
本発明の供与体要素は、シート形態で、又は連続ロールもしくはリボン状で使用できる。
【0048】
本発明の幾つかの実施態様において、供与体要素は、イエロー、シアン及びマゼンタ色素の逐次反復領域でコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)支持体と本発明の保護オーバーコート層を含む。このプロセス工程を各色について逐次実施して、最上部に保護層がある3色の色素転写像を得る。
【0049】
供与体層はビーズを含むことができる。ビーズは、0.5〜20μm、典型的には2.0〜15μmの粒径を有することができる。ビーズは、巻き取られた供与体ロールの圧縮力下でスペーサービーズとして機能することができ、促進老化条件下でのセンシトメトリー変化又は保護オーバーコート層における望ましくない色素の出現により求めた場合に、供与体層からスリップ層への材料の移行、又は供与体要素の裏側、例えばスリップ層から供与体層への移行を減らすことで供与体ロールの生保存性を改善する。ビーズの使用は、モトルの減少及び画像品質の改善をもたらすことができる。ビーズは意図する目的に有効な任意の量で使用できる。一般的に、良好な結果は、0.003〜0.20g/m2 の被覆量で得られた。供与体層に適するビーズをスリップ層において使用してもよい。
【0050】
供与体層中のビーズは架橋エラストマービーズであることができる。供与体層中のビーズは、硬質ポリマービーズであることができる。適切なビーズとしては、ジビニルベンゼンビーズ、少なくとも20質量%のジビニルベンゼンにより架橋されたポリスチレンのビーズ、及び少なくとも20質量%のジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシエチル)ジメタクリレート、1,4−シクロヘキシレン−ビス(オキシプロピル)ジメタクリレート、又は当該技術分野で知られている他の架橋性モノマーにより架橋されたポリ(メチルメタクリレート)のビーズが挙げられる。
【0051】
有用なエラストマービーズは低いTgを有し、印刷時にサーマルプリントヘッドの荷重を受けて圧縮され、それによって、供与体要素と色素受容体要素の間で良好な接触が可能となる。高いTgを有するマイクロビーズを使用した場合には、マイクロビーズは、剛性が高すぎて、印刷時に供与体と色素受容体との間の密着を妨げ、その結果、画像モトルと不十分な画像品質をもたらす。低Tgエラストマーマイクロビーズにより達成可能な色素供与体要素と色素受容体要素との接触の改善によって、モトルの低減および画像品質の改善がもたらされる。本発明において使用される架橋エラストマービーズは45℃以下、典型的には10℃以下のTgを有する。
【0052】
供与体要素の供与体層は、支持体上に形成するか、又は支持体上にコートされる。供与体層組成物を、コーティング用途のための溶剤中に溶解させることができる。供与体層は、例えば、グラビア法、スピンコーティング、溶剤コーティング、押出コーティング、又は当業者に知られている他の方法などの方法によって支持体上に形成するか又はコートすることができる。
供与体要素の保護オーバーコート層は、例えばグラビア法などの印刷法によって、支持体上にコートするか、又は支持体上に印刷できる。
【0053】
プリントヘッドが供与体要素に粘着するのを防止するために、本発明の熱転写可能な共用体要素の裏側にスリップ層を使用できる。かかるスリップ層は、固体若しくは液体の滑剤又はそれらの混合物を含む、ポリマーバインダー又は表面活性剤が存在しても存在しなくてもよい。有用な滑剤としては、オイル又は100℃未満で溶融する半結晶性有機固体、例えばポリ(ビニルステアレート)、蜜鑞、ペルフッ素化アルキルエステルポリエーテル、ポリカプロラクトン、シリコーンオイル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カーボワックス、ポリ(エチレングリコール)、又は米国特許第4,717,711号、第4,717,712号、第4,737,485号及び第4,738,950号明細書に開示されている材料が挙げられる。スリップ層に適切なポリマーバインダーとしては、ポリ(ビニルアルコール−co−ブチラール)、ポリ(ビニルアルコール−co−アセタール)、ポリスチレン、ポリ(酢酸ビニル)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテート又はエチルセルロースが挙げられる。
【0054】
例えば、抵抗ヘッドサーマルメディアに最も望ましいスリップ層配合物は、摩擦の観点及びヘッドの摩耗若しくはプリントヘッドのビルドアップの観点から、滑剤の相乗的な組み合わせを含む。このスリップ層は米国特許第7,078,366号明細書に開示されている。主に、この特許明細書には、支持体を含み、当該支持体の片面に熱転写可能な層を有し、反対面に、無水マレイン酸−ポリエチレングラフトコポリマーと少なくとも1種の他の炭化水素ワックスを含む材料から構成されるスリップ層を有する熱色素転写用の供与体要素が記載されている。供与体要素の片面に保護オーバーコート層が存在し、反対面に滑剤を含むスリップ層が存在してもよい。この潤剤は、ポリオレフィンとエチレン不飽和カルボン酸若しくはエステル又はそれらの酸無水物とから誘導された固体ポリマーと、少なくとも1種のワックスを含む。前記ポリマーは、α−オレフィン−無水マレイン酸コポリマー、無水マレイン酸−ポリエチレングラフトコポリマー、α−オレフィンとイソプロピルマレエートのコポリマーであることができる。前記ポリオレフィンは、2〜8個の炭素原子を含むα−オレフィンから誘導され、好ましくは、α−オレフィンはエチレン及び/又はプロピレンである。エチレン系不飽和カルボン酸は3〜12個の炭素原子を有するものである。前記エチレン系不飽和カルボン酸、エステル又は酸無水物は、例えば、マレイン酸、エチルマレイン酸、プロピルマレイン酸、イソプロピルマレイン酸、フマル酸、メチレンマロン酸、グルタコン酸、イタコン酸、メチルイタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸又はそれらの混合物、並びに対応するエステル、酸無水物、あるいは、かかる酸、エステル及び酸無水物の混合物であることができる。他のワックスは、オレフィン系ワックス、飽和炭化水素ポリマー、線状低分子量ポリエチレン、10,000以下の数平均分子量及び120℃以下の融点又は軟化点を有する分岐炭化水素、あるいは、飽和又は不飽和炭化水素を含む合成ワックスであることができる。他のワックスは、例えば、ミネラルワックス、植物ワックス、動物ワックス、又は飽和若しくは不飽和炭化水素ポリマーである合成ワックスから選択することができる。第1のワックスと他のワックスとの比は5:1〜1:10である。典型的には、スリップ層は、少なくとも3種の異なるワックス、すなわち、ポリオレフィンとエチレン系不飽和カルボン酸又はそのエステルもしくは酸無水物と、高度に分岐したα−オレフィンポリマーと、少なくとも1種の他のワックスを含む。抵抗ヘッドサーマルメディア用のこのスリップ層配合物は、摩擦の観点及びヘッド摩耗ビルドアップの観点から、滑剤の相乗的な組み合わせを含む。さらなる利点としては、しわの防止又は低減、特に、比較的速いプリンター、例えば1ライン当り4ミリ秒以下で使用された場合のしわの防止又は低減が挙げられる。さらなる利点は、生成時の色素供与体からの色素の転写の防止である。最後に、スリップ層は、高速度でコーティングできる。
【0055】
スリップ層において使用される滑剤の量は、少なくとも部分的に、滑剤のタイプに依存するが、0.001〜2g/m2 の範囲内であることができ、必要に応じてより少ない又は多い滑剤を使用してもよい。ポリマーバインダーが使用される場合、滑剤は、ポリマーバインダーの0.1〜50質量%、典型的には0.5〜40質量%の範囲内で存在することができる。一実施態様において、スリップ層は、ポリオレフィンとエチレン系不飽和カルボン酸又はそれらのエステル若しくは酸無水物から誘導されたポリマーを10〜80質量%、高度に分岐したα−オレフィンポリマーを10〜80質量%、実質的に線状のワックスを10〜80質量%含む(3種の合計質量を基準とする)。
【0056】
意図する効果に有用である限り、スリップ層にいかなるバインダーを使用してもよい。幾つかの実施態様において、高分子熱可塑性バインダーが使用される。かかる材料の例としては、例えば、ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)(質量比70/30);ポリ(ビニルアルコール−co−ブチラール)(Monsanto Corp.からButvar(登録商標)76(登録商標)として商業的に入手可能);ポリ(ビニルアルコール−co−アセタール);ポリ(ビニルアルコール−co−ベンザール);ポリスチレン;ポリ(酢酸ビニル);セルロースアセテートブチレート;セルロースアセテートプロピオネート;セルロースアセテート;エチルセルロース;セルローストリアセテート;ポリ(メチルメタクリレート);及びメチルメタクリレートのコポリマーが挙げられる。別の実施態様において、熱可塑性バインダーはセルロースアセテートプロピオネート又はポリビニルアセタールである。
本発明のスリップ層に使用される任意のバインダーの量は重要でなく、例えば0.1〜2g/m2 である。
【0057】
本発明の供与体要素とともに使用される色素受容要素は、通常、色素画像受容層を上に有する支持体を含む。画像受容層用の支持体は透明であっても反射性であってもよい。支持体は、透明フィルム、例えばポリ(エーテルスルホン)、ポリイミド、セルロースエステル、例えばセルロースアセテート、ポリ(ビニルアルコール−co−アセタール)、又はポリ(エチレンテレフタレート)などであることができる。不透明な反射性支持体は、普通紙、コート紙、合成紙、写真紙支持体、溶融押出コート紙、及びラミネート紙、例えば二軸延伸支持体積層体を含むことができる。受容体としての使用に適する二軸延伸支持体積層体は、米国特許第5,853,965号、第5,866,282号、第5,874,205号、第5,888,643号、第5,888,681号、第5,888,683号及び第5,888,714号明細書に記載されている。二軸延伸支持体は、紙ベースと、紙ベースの片面又は両面にラミネートされた二軸延伸ポリオレフィンシート、例えばポリプロピレンを含むことができる。支持体は反射性紙、例えばバライタコート紙、白色ポリエステル(白色顔料が組み込まれたポリエステル)、アイボリー紙、コンデンサー紙、又は合成紙、例えばE.I.DuPont de Nemours and Company(デラウェア州ウィルミントン)製のDuPont Tyvek(登録商標)であることができる。支持体は、任意の望ましい厚さ、例えば10μm〜1000μmで使用できる。色素画像受容層用の典型的な支持体は、米国特許第5,244,861号及び第5,928,990号明細書並びに欧州特許第671,281号明細書に開示されている。当業者に知られている他の適切な支持体も使用できる。様々な実施態様によると、支持体は、ベース層と1又は2以上のさらなる層を含む複合又は積層構造体であることができる。ベース層は、1種以上の材料、例えば、ミクロボイド化層、フォーム層、中空粒子を含む層、非ボイド化層、合成紙、天然紙、及びポリマーのうちの1又は2つ以上の組み合わせを含むことができる。色素画像受容層は、例えば、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)、ポリカプロラクトン、ビニル系樹脂、例えばハロゲン化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、又はこれらの混合物を含むことができる。色素画像受容層にラテックスポリマーを使用してもよい。ラテックスポリマーは、例えば、水不溶性の塩化ビニルのモノマー単位を含む疎水性ポリマーが水溶性分散媒体中に微粒子として分散された分散体であることができる。分散状態は、ポリマーが分散媒体中に乳化している状態、ポリマーが乳化重合を受けた状態、ポリマーがミセル分散を受けた状態、ポリマー分子が部分的に親水性構造を有する状態などであることができる。かかるラテックスポリマーの場合、水性タイプのコーティング溶液を適用し、次にそれを乾燥させることにより色素画像受容層を製造することが望ましい。典型的な水性コーティングフォーマットが米国特許出願第2008/0254241号明細書に記載されている。色素画像受容層は、意図する目的に有効である任意の量で存在することができる。一般的に、1〜5g/m2 の濃度で良好な結果が得られた。
【0058】
支持体と色素画像受容層の間にさらなるポリマー層が存在してもよい。さらなる層は、着色、接着、帯電防止特性を付与することができ、色素バリヤーとして機能することができ、色素媒染層として機能することができ、あるいはこれらの組み合わせ実現することができる。例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなどが存在することができる。白色顔料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛などをポリマー層に加えて、反射性を付与することができる。
【0059】
色素画像受容層に対する接着性を高めるために、ポリマー層上に下引き層を使用できる。下引き層を接着層またはタイ層と呼ぶことができる。典型的な下引き層は米国特許第4,748,150号、第4,965,238号、第4,965,239号及び第4,965,241号明細書に開示されている。帯電防止層は、当業者に知られているように、受容体要素においても使用できる。受容体要素はバッキング層を含んでもよい。バッキング層の適切な例としては、米国特許第5,011,814号及び第5,096,875号明細書に開示されているものが挙げられる。
【0060】
色素画像受容層、又はその上にあるオーバーコート層は、当該技術分野で従来知られているように、剥離剤、例えばシリコーン又はフッ素系化合物を含むことができる。様々な典型的な剥離剤が、例えば米国特許第4,820,687号及び第4,695,286号明細書に開示されている。
【0061】
受容体要素は、供与体要素について記載したような粘着防止剤を含むことができる。受容体要素及び色素供与体要素は、同じ粘着防止剤を含むことができる。
【0062】
色素画像受容層は、例えば印刷、溶液コーティング、浸漬コーティング及び押出コーティングなどの当業者に知られているいかなる方法によっても支持体上に形成することができる。色素画像受容層が押出される場合、そのプロセスは、(a)熱可塑性材料を含む溶融物を形成し、(b)溶融物を単層フィルムとして又は複合フィルム(多層又は積層体)の層として押出又は共押出し、(c)押出されたフィルムを受容体要素用の支持体に適用することを含むことができる。典型的な押出受容層フォーマットは、米国特許第7,125,611号、第7,091,157号、第7,005,406号、第6,893,592号及び第6,897,183号明細書に開示されている。
【0063】
本発明の供与体要素は、印刷時に供与体要素と受容体要素の間の粘着を低減するか又はなくすために、粘着防止剤を含んでもよい。粘着防止剤が供与体要素を構成する層を通して熱転写可能な層に拡散することができるか、又はスリップ層から熱転写可能な層に移動することができる限り、粘着防止剤は供与体要素のいずれの層中に存在してもよい。例えば、粘着防止剤は、熱転写可能な層の1又は2以上のパッチ中、支持体中、接着剤層中、色素バリヤー層中、スリップ層中、又はこれらの組み合わせの中に存在することができる。様々な実施態様によると、粘着防止剤はスリップ層、熱転写可能な層、またはこれらの両方の中に存在することができる。粘着防止剤は、それらの1又は2以上のパッチ中に存在することができる。熱転写可能な層に1つ以上の色素パッチが存在する場合には、印刷すべき層、例えばシアン層の最後のパッチ中に粘着防止剤を存在させることができる。しかしながら、色素パッチ及び保護オーバーコートパッチは任意の順序で存在することができる。粘着防止剤はシリコーン含有又はシロキサン含有ポリマーであることができる。適切なポリマーとしては、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、コポリマー、及びポリマーブレンド又は混合物が挙げられる。適切な粘着防止剤は、例えば米国特許第7,067,457号明細書に記載されている。
【0064】
当業者に知られている剥離剤を色素供与体要素、例えば色素供与体層、スリップ層、又はこれらの両方に加えてもよい。適切な剥離剤としては、例えば米国特許第4,740,496号及び第5,763,358号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0065】
本発明の供与体要素から熱転写可能な材料を転写させるために使用できるサーマルプリントヘッドは商業的に入手可能である。例えば、FujitsuサーマルヘッドFTP−040 MCSOO1、TDKサーマルヘッドLV5416又はRohmサーマルヘッドKE 2008−F3を使用できる。
【0066】
本発明の熱転写集成体は、
(a)熱転写可能な供与体要素、及び
(b)色素受容要素、
を含み、色素受容要素は熱転写可能な供与体要素と重なり合う関係にあり、供与体要素の熱転写可能な層は受容要素の色素画像受容層と接触している。
【0067】
これらの2つの要素を含む上記集成体は、一体ユニットとして予め集成されてもよい。これは、2つの要素をそれらのマージンで一時的に接合することにより行うことができる。転写後、色素受容要素を剥離すると、色素転写画像が現れる。
【0068】
3色画像を得ようとする場合、集成体を3回形成し、その時間の間にサーマルプリントヘッドにより熱を加える。第1の色素を転写後、要素を剥離する。第2の色素供与体要素(又は異なる色素領域を有する供与体要素の別の領域)を色素受容要素と見当合わせし、上記プロセスを繰り返す。第3の色を同様に得る。最後に、保護オーバーコート層を最上部に適用する。
【0069】
保護オーバーコート材料を適用するときに、厚さ、ライン時間、プリントエネルギー又はそれらの幾つかの組み合わせを変えることにより保護オーバーコート材料にパターンを付けて艶消し又は光沢仕上げをもたらすことができる。さらに、膨張可能な又は予め膨張したビーズを積層体又は保護オーバーコート層中に使用して、当該ビーズの量及びサイズに応じて光沢又は艶消し仕上げをもたらすことができる。オーバーコートは、パターン化されるにせよパターン化されないにせよ、任意の着色剤含有材料、例えば印刷されたインクジェット受容体、サーマル受容体もしくは電子写真受容体又はハロゲン化銀プリント(これらに限定されない)上に設けることができる。
【0070】
以下に、本発明の実施態様のうちの少なくとも幾つかを示す:
実施態様1: ポリマー支持体を含み、当該支持体の少なくとも一部が、熱転写可能なポリマーバインダー及び光安定剤を含む熱転写可能な材料でコーティングされた熱転写可能な供与体要素であって、光安定剤がヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルであり、当該N−オキシルラジカルが下記式:
【0071】
【化5】

【0072】
(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)
により表され、600以下の分子量を有する、熱転写可能な供与体要素。
実施態様2: 少なくとも1つの保護オーバーコートパッチを含む、実施態様1の要素。
実施態様3: N−オキシルラジカル光安定剤が、
【0073】
【化6】

【0074】
である、実施態様1又は2の要素。
実施態様4: 熱転写可能な材料が、さらに、20質量%以下の量で紫外線吸収材料を含む、実施態様1〜3のいずれかの要素。
実施態様5: 熱転写可能な材料が、さらに、5質量%以下の量で可塑剤を含む、実施態様1〜4のいずれかの要素。
実施体用6: 熱転写可能な材料が、さらに、式I、スチレン/アリルアルコールコポリマー、及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、実施態様1〜5のいずれかの要素。ここで、式Iは、
【0075】
【化7】

【0076】
(式中、nは10〜100である)である。
実施態様7: 熱転写可能な材料が40〜90質量%の式Iの樹脂、及び2〜20%の紫外線吸収材料を含む、実施態様6の要素。
実施態様8: さらに、熱転写可能な材料の表面上に接着剤層を含む、実施態様1〜7のいずれかの要素。
実施態様9: 熱転写可能なポリマーバインダー及び下記式:
【0077】
【化8】

【0078】
(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)
により表され、600以下の分子量を有するN−オキシルラジカル光安定剤を含む熱転写可能なオーバーコート材料。
実施態様10: N−オキシルラジカル光安定剤が、
【0079】
【化9】

【0080】
である、実施態様9のオーバーコート材料。
実施態様11: さらに、20質量%以下の量で紫外線吸収材料を含む、実施態様9又は10のオーバーコート材料。
実施態様12: さらに、0〜2%の量で可塑剤を含む、実施態様9〜11のいずれかのオーバーコート材料。
実施態様13: さらに、式I、スチレン/アリルアルコールコポリマー、及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、実施態様9〜12のいずれかのオーバーコート材料。ここで、式Iは、
【0081】
【化10】

【0082】
(式中、nは10〜100である)である。
実施態様14: 熱転写可能な材料が40〜90質量%の式Iの樹脂、及び2〜20%の紫外線吸収材料を含む、実施態様13のオーバーコート材料。
実施態様15: ポリマー支持体と実施態様9〜12のいずれかのオーバーコート材料を含む供与体要素。
実施態様16: 受容体材料を保護オーバーコート材料でコーティングする方法であって、実施態様15の供与体要素を受容体要素と接触させること、及び
供与体要素から受容体要素に保護オーバーコート材料を転写させるのに十分な熱又は圧力を加えること、
を含む、方法。
実施態様17: 受容体要素がインクジェット受容体、サーマル受容体、電子写真受容体、又はハロゲン化銀プリントから選択される、実施態様16の方法。
実施態様18: 熱転写可能な供与体要素の少なくとも一部と接触している受容体要素を含む熱転写集成体であって、供与体要素がポリマー支持体を含み、ポリマー支持体の少なくとも一部が熱転写可能なポリマーバインダーと光安定剤を含む熱転写可能な材料でコーティングされており、光安定剤がヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルであり、当該N−オキシルラジカルが下記式:
【0083】
【化11】

【0084】
(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)
により表され、600以下の分子量を有する、熱転写可能な集成体。
実施態様19: 供与体要素中の光安定剤が、
【0085】
【化12】

【0086】
である、実施態様18の集成体。
実施態様20: 供与体要素の熱転写可能な材料が、さらに、式I、スチレン/アリルアルコールコポリマー、及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、実施態様18又は19の集成体。ここで、式Iは、
【0087】
【化13】

【0088】
(式中、nは10〜100である)である。
実施態様21: 熱転写可能な材料が40〜90質量%の式Iの樹脂、及び2〜20%の紫外線吸収材料を含む、実施態様20の集成体。
実施態様22: 供与体要素が熱転写可能な材料の2又は3個以上のパッチを含み、少なくとも1つのパッチが色素を含み、少なくとも1つのパッチが保護オーバーコート材料を含む、実施態様18〜21のいずれかの集成体。
実施態様23: 受容体要素が、インクジェット受容体、サーマル受容体、電子写真受容体、又はハロゲン化銀プリントから選択される、実施態様18〜22のいずれかの集成体。
【実施例】
【0089】
本発明を例示するために以下の例を示す。
受容要素:
これらの実験では、全厚が約220μmであり、サーマル色素受容層の厚さが約3μmであるサーマル受容体R−1を使用した。R−1は、紙支持体上にタイ層と色素受容層を溶融押出して下記の構造体を得ることにより作製した:
【0090】
【表1】

【0091】
KODAKプロフェッショナルEKTATHERMリボン(カタログ番号106−7347)を、受容体R−1を装填したKODAKサーマルフォトプリンター(型番6850)で使用して、ニュートラル、単色、及び2つの色から成る二色から構成される記録を有する複数の同じ試験対象プリントを生成させた。各記録は、最低濃度(Dmin)から最大濃度(Dmax)まで15ステップの漸増濃度変化で編成されていた。供与体リボン上の対照又は実験保護オーバーコートパッチを、次に、試験対象プリントに転写させた。これらの保護オーバーコートは、0.8msの転写ライン時間で積層した。
【0092】
対照供与体要素C−1
KODAKプロフェッショナルEKTATHERMリボン(カタログ番号106−7347)を、受容体R−1を装填したKODAKサーマルフォトプリンター(型番6850)で使用した。
供与体要素の保護オーバーコートは、4.5μmのポリ(エチレンテレフタレート)支持体の裏側に、
1)n−プロピルアセテートとn−ブチルアルコールの溶剤混合物(85/15)からチタンアルコキシドTyzor TBT(登録商標)(DuPont Corp.)(0.13g/m2)の下引き層、及び
2)トルエンとメタノールとシクロペンタノンの75/20/5溶剤混合物から、0.02g/m2 のPolywax(登録商標)400、0.02g/m2 のVybar(登録商標)103、0.02g/m2 のCeramer 1608(全てBaker−Petrilite Corp.から入手可能)、及び0.38g/m2 のSekisui Co製のポリ(ビニルアセタール)バインダーKS−1を含むスリップ層、
をコーティングすることにより作製した。
レイダウン0.63g/m2 でポリ(ビニルアセタール)KS−10、レイダウン0.46g/m2 でIPA−ST(Nippon)、及びUV吸収剤TINUVIN(登録商標)460(Ciba Specialtied Co.)から成る転写可能な保護オーバーコート層を、供与体要素の表側にレイダウン0.11g/m2 でコーティングした。この保護オーバーコート層は、4μmのポリ(ジビニルベンゼン)ビーズをレイダウン0.03g/m2 で含んでいた。上記材料は、溶剤3−ペンタノンからコーティングした。
【0093】
発明例1〜20:
発明例1は、要素の表側を以下のように作製したことを除いて、対照の供与体要素C−1と同様に作製した。
226gのトルエン及び25gのn−ブタノールを含むねじ込みキャップ付き磁気攪拌式16オンス透明ジャーに19.8gのSekisui製のポリビニルアセタールKS−10を加えた。溶液が得られるまで、混合物を室温で攪拌した。次に、22.5gのスチレン/アリルアルコールコポリマー(Lyondell SAA−100)を加え、溶液が得られるまで混合物を室温で攪拌した。さらに、4.37gのTinuvin(登録商標)460(Ciba)を加え、溶液が得られるまで混合物を室温で攪拌した。さらに、0.52gのTEMPO(Evonik/Degussa)を加え、溶液が得られるまで混合物を室温で攪拌した。次に、1.30gの4μmポリ(ジビニルベンゼン)ビーズを加え、混合物を24時間攪拌した。得られた混合物を供与体要素の表側にコーティングして、下記表1に示すTEMPO及びTinuvin(登録商標)460のレベルとした。
発明例2〜6を発明例1と同様に作製したが、Tinuvin(登録商標)460は存在せず、TEMPOの量を0.0215g/m2 まで0.0054g/m2 ずつ増加させた。
発明例7〜20を発明例1と同様に作製したが、Tinuvin(登録商標)460の量を0.045g/m2、0.090g/m2及び0.180g/m2 に増加させ、TEMPOの量を0.0054g/m2 ずつ増加させた(0〜0.0215g/m2)。
【0094】
光退色試験方法
試験対象のステータスA濃度を、X−Rite Incorporated製のX−Rite透過/反射濃度計モデル820により測定した。
室温でキセノン光源を使用して試験対象を50キロルクス高強度昼光に曝した。試験対象の色素濃度を1.0で読み取り、始めの濃度からのデルタ濃度変化を計算し、デルタ濃度として記録した。絶対値が小さいほど、元のサンプルからの変化が小さく、結果が良好であることを示す(例えば、色変化がより小さい−0.20が−0.40よりも良好である)。下記表1〜4は、28日間の退色期間の終了時におけるブルー及びレッドのシフトの結果を示す。表5及び6は、21日間の退色期間の終了時におけるブルー及びレッドのシフトの結果を示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表I中のデータは、Tinuvin(登録商標)460と比べて、TEMPOの使用による光退色の改善を示す。
【0097】
【表3】

【0098】
表2中のデータは、保護オーバーコートにTEMPOを添加することによって、Tinuvin(登録商標)460の被覆量を0.0900g/m2 から半分の被覆量である0.0450g/m2 に可能であることを示す。
【0099】
【表4】

【0100】
表3中のデータは、Tinuvin(登録商標)460の被覆量がC−1と等しい場合に、TEMPOの添加により達成された画像安定性の改善を示す。
【0101】
【表5】

【0102】
表4中のデータは、溶剤混合物中のTinuvin(登録商標)460の溶解度を高めることによりもたらされた画像安定性の改善を示す。
【0103】
比較例1:
この例の供与体要素は、発明例1について記載したように作製したが、Tinuvin(登録商標)123をTEMPOに置き換えた。表5中のデータは、低分子量のHALSの重要性を示す。Tinuvin(登録商標)123(下記構造を有する商業的に入手可能なヒンダードアミン光安定剤)は、TEMPO(MW156)よりも大きい分子量(MW737)を有する。また、Tinuvin(登録商標)123は、TEMPOのニトロキシラジカルでなく、アルキルオキシとして存在する。Tinuvin(登録商標)123はCibaから入手可能であり[ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート]、下記構造を有する。
【0104】
【化14】

【0105】
【表6】

【0106】
比較イリデッセンス
画像形成された受容体に保護オーバーコート供与体要素を積層後、0(なし)〜5(重度)のスケールでサンプルをイリデッセンスについて視覚的に評価した。下記表7は、0.8msのライン時間で積層されたサンプルについてのデータを示す。
【0107】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー支持体を含み、当該ポリマー支持体の少なくとも一部が熱転写可能な材料によりコーティングされており、当該熱転写可能な材料が、ポリマーバインダー及び光安定剤を含み、当該光安定剤がヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルであり、当該N−オキシルラジカルが下記式:
【化1】

(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)
により表され、600以下の分子量を有する、熱転写可能な供与体要素。
【請求項2】
少なくとも1種の保護オーバーコートパッチを含む、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
N−オキシルラジカル光安定剤が、
【化2】

である、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
熱転写可能な材料がさらに紫外線吸収材料を20質量%以下の量で含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の要素。
【請求項5】
熱転写可能な材料がさらに可塑剤を5質量%以下の量で含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の要素。
【請求項6】
熱転写可能な材料が、さらに、式I:
【化3】

(式中、nは10〜100である)
から選ばれる少なくとも1種の樹脂、スチレン/アリルアルコールコポリマー、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の要素。
【請求項7】
熱転写可能な材料が40〜90質量%の式Iの樹脂、及び2〜20%の紫外線吸収材料を含む、請求項6に記載の要素。
【請求項8】
熱転写可能なポリマーバインダー及び光安定剤を含み、当該光安定剤がヒンダードアミンから誘導されたN−オキシルラジカルであり、当該N−オキシルラジカルが下記式:
【化4】

(式中、R1 、R2 、R5 及びR6 は、直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンからそれぞれ独立に選ばれ、R3 及びR4 は、H、OH、OR、COOH又はCOOR(式中、Rは直鎖又は分岐C1〜C6アルキル又はアルケンである)からそれぞれ独立に選ばれる)
により表され、600以下の分子量を有する、熱転写可能なオーバーコート材料。
【請求項9】
N−オキシルラジカル光安定剤が、
【化5】

である、請求項9に記載のオーバーコート材料。
【請求項10】
さらに、紫外線吸収材料を20%以下の量で含む、請求項8又は9に記載のオーバーコート材料。
【請求項11】
さらに、可塑剤を0〜2%の量で含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載のオーバーコート材料。
【請求項12】
さらに、式I:
【化6】

(式中、nは10〜100である)
から選ばれる少なくとも1種の樹脂、スチレン/アリルアルコールコポリマー、及びそれらの組み合わせを含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載のオーバーコート材料。
【請求項13】
受容体材料を保護オーバーコート材料でコーティングする方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の供与体要素を受容体要素と接触させること、及び
供与体要素から受容体要素に保護オーバーコート材料を転写させるのに十分な熱又は圧力を加えること、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の供与体要素の少なくとも一部と接触した受容体要素を含むサーマル転写集成体。
【請求項15】
供与体要素が熱転写可能な材料の2又は3つ以上のパッチを含み、少なくとも1つのパッチが色素を含み、少なくとも1つのパッチが保護オーバーコート材料を含む、請求項14に記載の集成体。

【公表番号】特表2012−519097(P2012−519097A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552930(P2011−552930)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/000465
【国際公開番号】WO2010/101604
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】