説明

画像形成方法

【課題】湿式定着方式において、高い定着強度が得られる画像形成方法を提供する。
【解決手段】静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像をポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナーを含む乾式現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を画像支持体に転写する転写工程と、画像支持体に転写されたトナー像に、トナーを膨潤または溶解する定着剤を供給する定着剤供給工程とを有する画像形成方法において、トナーとして、酢酸エチルに対する不溶分が10.0質量%以上30.0質量%以下、かつ、テトラヒドロフランに対する不溶分が5.0質量%以上15.0質量%以下であり、当該トナーの体積基準のメディアン径が3.5μm以上7.0μm以下であるものを用い、定着剤として、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有するものを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式定着方式による画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成方法において、トナーの画像支持体への定着方法としては、加熱加圧ローラなどによる加熱定着方式が採用されている。
【0003】
しかしながら、この加熱定着方式による定着方法はトナーを変形させることにより画像支持体に固着させて定着させるものであるために、多大なエネルギーを必要とし、省エネルギーの観点からは好ましくない。
【0004】
省エネルギー化が図られた定着方法として、定着剤を用いてトナーを膨潤または一部溶解させて画像支持体に定着させる湿式定着方式が提案されている。
例えば、特許文献1には、高沸点エステルを含む定着剤を泡状にして用いて、トナーを画像支持体に定着させる方法が開示されている。このような方法においては、定着剤の供給量を低減できることから、形成される画像においてタック感(粘着感)が抑制されるが、少量の定着剤で定着させるため、形成される画像に十分な定着強度が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−219105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、湿式定着方式において、高い定着強度が得られる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナーを含む乾式現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を画像支持体に転写する転写工程と、
前記画像支持体に転写されたトナー像に、トナーを膨潤または溶解する定着剤を供給する定着剤供給工程とを有する画像形成方法において、
トナーとして、酢酸エチルに対する不溶分が10.0質量%以上30.0質量%以下、かつ、テトラヒドロフランに対する不溶分が5.0質量%以上15.0質量%以下であり、当該トナーの体積基準のメディアン径が3.5μm以上7.0μm以下であるものを用い、
定着剤として、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有するものを用いることを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成方法においては、前記定着剤が、プロピレンカーボネートを含有することが好ましい。
【0009】
本発明の画像形成方法においては、前記結着樹脂を構成するポリエステル樹脂が、一部または全部がイソシアネート変性されたものであり、
前記定着剤が、水および多価アミン化合物を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の画像形成方法においては、前記多価アミン化合物がイソホロンジアミンであることが好ましい。
【0011】
本発明の画像形成方法においては、前記結着樹脂を構成するポリエステル樹脂が、酸成分としてコハク酸またはアジピン酸を含むものを用いることにより得られたものであることが好ましい。
【0012】
本発明の画像形成方法においては、前記ワックスが、エステル系ワックスまたは炭化水素系ワックスであることが好ましい。
【0013】
本発明の画像形成方法においては、前記ワックスが、トナー中5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含有されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成方法によれば、湿式定着方式において、トナーとして、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランに対する不溶分が特定範囲内であって、粒径が特定範囲内のものを用い、また、当該トナーを膨潤または溶融する定着剤として、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有するものを用いることにより、形成される画像において高い定着強度が得られる。
また、本発明の画像形成方法においては、トナーに一般的に含有されるワックスは、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有する定着剤に対して溶解度が低いものであることから、当該ワックスがタック防止剤として作用し、タック感(粘着感)が抑制された画像を形成することができる。
【0015】
また、本発明の画像形成方法によれば、トナーの結着樹脂を構成するポリエステル樹脂の一部または全部がイソシアネート変性されたものであり、定着剤に水および多価アミン化合物が含有されている場合においては、イソシアネート変性されたポリエステル樹脂と、多価アミン化合物との組み合わせにより、トナー像に対して定着剤を供給した後にイソシアネートとアミンとがウレア結合することにより架橋が形成され、形成される画像において定着強度がより一層高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図2】本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段および圧力付与手段の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図3】本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段の構成の他の例を示す説明用断面図である。
【図4】本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段の構成のさらに他の例を示す説明用断面図である。
【図5】本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は、少なくとも、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像を、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナーを含む乾式現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を画像支持体に転写する転写工程と、画像支持体に転写されたトナー像に、トナーを膨潤または溶解する定着剤を供給する定着剤供給工程とを有し、この定着剤供給工程において、画像支持体上に転写されたトナー像が当該画像支持体に定着されることにより、画像を形成する方法である。
【0019】
〔静電潜像形成工程〕
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
静電潜像担持体としては、特に限定されるものではないが、例えばアモルファスシリコン、セレンなどの無機感光体、または、ポリシラン、フタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行われる。
帯電手段および露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
【0020】
〔現像工程〕
現像工程は、静電潜像を、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナーを含む乾式現像剤により現像してトナー像を形成する工程である。
トナー像の形成は、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナーを含む乾式現像剤を用いて、例えば、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラとよりなる現像手段を用いて行われる。具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体の表面にトナー像が形成される。
【0021】
<トナー>
本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、少なくともポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナー粒子よりなるものである。トナー粒子には、必要に応じて、着色剤および荷電制御剤などの内添剤が含有されていてもよく、また当該トナー粒子に対して、流動化剤などの外添剤が外部添加されていてもよい。
【0022】
本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、酢酸エチルに対する不溶分が10.0質量%以上30.0質量%以下、好ましくは15.0質量%以上25.0質量%以下のものとされる。
酢酸エチルに対する不溶分が上記範囲内にあるトナーを用いることにより、形成される画像において高い定着強度が得られる。
酢酸エチルに対する不溶分が10.0質量%未満であるトナーを用いる場合においては、当該トナーが後述する定着剤に対して過度に軟化しやすいものとされることから、タック感が抑制された画像を形成することができないおそれがある。一方、酢酸エチルに対する不溶分が30.0質量%を超えるトナーを用いる場合においては、当該トナーが後述する定着剤に対して軟化し難いものとされることから、形成される画像において十分な定着強度が得られないおそれがある。
なお、トナーの酢酸エチルに対する不溶分としては、主に、結着樹脂自体の不溶分(架橋密度の高い成分)、ワックス、着色剤その他の内添剤、外添剤などとされる。
【0023】
本発明において、トナーの酢酸エチルに対する不溶分は、以下のようにして測定される。
トナー1.0gを秤量(W1(g))し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×100mm、東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかけ、酢酸エチル500mlを用いて、16時間抽出する。このとき、酢酸エチルの抽出サイクルが約4分間乃至5分間に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する(W2(g))。そして、下記数式(1)によりトナーの酢酸エチルに対する不溶分を算出する。
数式(1):不溶分(質量%)=(W2/W1)×100
【0024】
また、本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、テトラヒドロフランに対する不溶分が5.0質量%以上15.0質量%以下、好ましくは7.0質量%以上12.0質量%以下のものとされる。
テトラヒドロフランに対する不溶分が上記範囲内にあるトナーを用いることにより、形成される画像において高い定着強度が得られる。
テトラヒドロフランに対する不溶分が5.0質量%未満であるトナーを用いる場合においては、当該トナーが後述する定着剤に対して過度に軟化しやすいものとされることから、タック感が抑制された画像を形成することができないおそれがある。一方、テトラヒドロフランに対する不溶分が15.0質量%を超えるトナーを用いる場合においては、当該トナーが後述する定着剤に対して軟化し難いものとされることから、形成される画像において十分な定着強度が得られないおそれがある。
なお、トナーのテトラヒドロフランに対する不溶分としては、主に、結着樹脂自体の不溶分(架橋密度の高い成分)、ワックス、着色剤その他の内添剤、外添剤などとされるが、このうちワックスについては、酢酸エチルに対する不溶分に比べて、その寄与分が少ないものとされる。これは、ワックスが、パラフィンワックス、イソパラフィンワックス、ジアルキルケトン系ワックス、エステル系ワックス、アミド系ワックスなどである場合に、当該ワックスが酢酸エチルに不溶であってテトラヒドロフランには溶解しやすいものであることに起因する。
【0025】
本発明において、トナーのテトラヒドロフランに対する不溶分は、以下のようにして測定される。
トナー1.0gを秤量(W1(g))し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×100mm、東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかけ、テトラヒドロフラン500mlを用いて、16時間抽出する。このとき、テトラヒドロフランの抽出サイクルが約4分間乃至5分間に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する(W3(g))。そして、下記数式(2)によりトナーのテトラヒドロフランに対する不溶分を算出する。
数式(2):不溶分(質量%)=(W3/W1)×100
【0026】
また、本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、粒径が体積基準のメディアン径で3.5μm以上7.0μm以下、好ましくは4.0μm以上6.5μm以下のものとされる。
体積基準のメディアン径が上記範囲内にあるトナーを用いることにより、トナーの比表面積が十分に確保され、従って、後述する定着剤供給工程において、定着剤との接触面積が十分に確保されることから、トナー像を画像支持体に確実に定着させることができ、これにより、形成される画像において十分な定着強度を得ることができる。
体積基準のメディアン径が3.5μm未満であるトナーを用いる場合においては、定着剤の浸透性が良く、紙などの画像支持体に対し過剰に吸収されるおそれがあり、結果として高い定着強度が得られないおそれがある。一方、体積基準のメディアン径が7.0μmを超えるトナーを用いる場合においては、トナーの比表面積が小さく、後述する定着剤供給工程において、定着剤との接触面積が十分に確保されず、トナー像を画像支持体に確実に定着させることができなくなるおそれがある。
【0027】
本発明において、トナーの体積基準のメディアン径は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出される。
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメディアン径とされる。
【0028】
本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、トナー粒子の平均円形度が、転写効率の向上の観点から、0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。
【0029】
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定される。
具体的には、試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々の粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各粒子の円形度を加算し、全粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子役影像の周囲長)
【0030】
本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、ガラス転移点が、耐熱保管性および耐ブロッキング性の観点から、20〜80℃であることが好ましく、より好ましくは30〜70℃である。
【0031】
本発明において、トナーのガラス転移点は、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される。
具体的には、試料(トナー)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行う。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移点とする。
【0032】
(結着樹脂)
本発明に係るトナー粒子に含有される結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むものである。
結着樹脂においては、ポリエステル樹脂と共に、他の樹脂が含有されていてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂やスチレン−アクリル樹脂などが挙げられる。なお、他の樹脂の含有量は、ポリエステル樹脂に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明において、結着樹脂を構成するポリエステル樹脂は、公知の多価アルコール成分と、公知の多価カルボン酸成分とを原料として得ることができる。
多価アルコール成分としては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらの多価アルコール成分は単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。不飽和アルコールとしては、アルケンジオール、具体的には2−ブチン−1,4ジオールの他、3−ブチン−1,4ジオール、9−オクタデゼン−7,12ジオールなどが挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸などがあげられる。また、3価のカルボン酸としては、例えばトリメット酸などが挙げられる。これらの中では、得られるポリエステル樹脂と、後述する定着剤との相性の観点から、コハク酸、アジピン酸を用いることが好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂は、例えば上記多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中において、120〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。縮重合の際においては、必要に応じて公知のエステル化触媒を用いてもよい。
【0035】
ポリエステル樹脂は、一部または全部がイソシアネート変性されたもの(以下、「イソシアネート変性ポリエステル樹脂」ともいう。)であってもよい。
【0036】
イソシアネート変性ポリエステル樹脂としては、例えば多価アルコールと多価カルボン酸との重縮合物であって、かつ活性水素基を有するポリエステル樹脂を、さらに多価イソシアネート化合物(PIC)と反応させたものが挙げられる。
活性水素基としては、例えば、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらの中でも好ましいものはアルコール性水酸基である。
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族多価イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネートおよびこれら2種以上を併用したものなどが挙げられる。
【0037】
また、ポリエステル樹脂は、上記酢酸エチルおよびテトラヒドロフランの不溶分が本発明において規定する範囲内であれば、架橋されていてもよい。架橋方法としては、例えば、イソシアネート変性ポリエステル樹脂への2価アミン化合物による伸張重合などが挙げられる。
【0038】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2,000〜50,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜10,000である。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量が過小である場合においては、トナー粒子強度が低く、トナー飛散が発生するおそれがある。一方、ポリエステル樹脂の重量平均分子量が過大である場合においては、定着剤に対して軟化しづらくなり、高い定着強度が得られないおそれがある。
【0039】
本発明において、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
具体的には、GPC装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流し、試料(ポリエステル樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mLになるようにTHFに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0040】
ポリエステル樹脂のガラス転移点は、20〜80℃が好ましい。
ポリエステル樹脂のガラス転移点が上記範囲内にあることにより、トナーの保管性および十分な定着速度が得られる。
【0041】
本発明において、ポリエステル樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される。
具体的には、試料(ポリエステル樹脂)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行う。ガラス転移点は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点の値とする。
【0042】
(ワックス)
本発明に係るトナー粒子に含有されるワックスとしては、具体的には、以下に示すようなものが挙げられる。
(1)炭化水素系ワックス
マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなど
(2)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトンなど
(3)エステル系ワックス
カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど
(4)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどである。
これらの中でも、エステル系ワックス、炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。
上記のワックスは、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有する定着剤に対して溶解度が低いものであることから、本発明の画像形成方法においてはタック防止剤として作用するものである。
【0043】
トナー粒子中に含有されるワックスは、粒径が数平均粒子径で1.0μm以上2.5μm以下であることが好ましい。ワックスの数平均粒子径が1.0μm未満である場合においては、タック防止剤としての作用が発揮されないおそれがある。一方、ワックスの数平均粒子径が2.5μmを超える場合においては、形成される画像において十分な定着強度が得られないおそれがある。
【0044】
本発明において、ワックスの数平均粒子径は、以下のようにして測定される。
すなわち、トナー粒子を常温硬化性のアクリル樹脂中に十分分散し、包埋し硬化させた後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い薄片状のサンプルを切り出し、トナー粒子断面を透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子(株)製)により、加速電圧80kVにて10000倍で撮影する。この写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP」((株)ニレコ製)を用いて、トナー粒子中に分散しているワックス粒子の水平方向フェレ径(2本の垂直線でワックス粒子を挟んだときの2本の垂直線間の距離)を測定する。ワックス粒子を100個測定し、その平均値を数平均粒子径とした。なお、ワックス粒子の存在状態が確認しにくい場合においては、必要に応じて薄片状のトナーを四酸化ルテニウムの蒸気で染色した後に行うことができる。
【0045】
ワックスの含有量は、トナー中5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。
ワックスの含有量が5.0質量%未満である場合においては、タック防止剤として作用が発揮されないおそれがある。一方、ワックスの含有量が30.0質量%を超える場合においては、形成される画像において十分な定着強度が得られないおそれがある。
【0046】
(着色剤)
本発明に係るトナー粒子に着色剤が含有される場合においては、着色剤としては、特に限定されず、公知の染料および顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、例えばカーボンブラック、磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に用いることができる。
カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知の種々のものを任意に用いることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜9質量部である。
【0047】
(荷電制御剤)
本発明に係るトナー粒子に荷電制御剤が含有される場合においては、荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0048】
(外添剤)
本発明に係るトナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加した状態で用いることができる。
流動化剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、フェライト、ベンガラ、フッ化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ジルコニウム、マグネタイト、ステアリン酸マグネシウムなどよりなる無機微粒子などが挙げられる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、トナー粒子の表面への分散性向上、環境安定性向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
クリーニング助剤としては、例えば、ポリスチレン微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子などが挙げられる。
外添剤としては種々のものを組み合わせて用いることができる。
外添剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0049】
以上のようなトナーを製造する方法としては、例えば、粉砕法などの乾式方法や溶解脱溶法などの湿式方法など公知の方法を挙げることができる。
以下、溶解脱溶法について具体的に説明する。
【0050】
(1)樹脂溶液調製工程
樹脂溶液調製工程では、少なくとも結着樹脂および着色剤を含む樹脂混合物と、結着樹脂が溶解可能な非水溶性有機溶媒とを含む樹脂溶液を調製する。ここで、樹脂溶液とは、少なくとも結着樹脂が非水溶性有機溶媒中に溶解され、他の成分が非水溶性有機溶媒中に溶解または分散されてなるものである。結着樹脂としてのポリエステル樹脂は、例えば上記多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、120〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。縮重合の際においては、必要に応じてテトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなどの公知のエステル化触媒を用いてもよい。
【0051】
このポリエステル樹脂をイソシアネート変性する場合においては、40〜140℃の温度で多価イソシアネート化合物(PIC)を反応させることにより得ることができる。これらを反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランなどの多価イソシアネート化合物に対して不活性なものが挙げられる。
【0052】
樹脂溶液に使用される非水溶性有機溶媒としては、用いる結着樹脂が溶解可能なものであって、水に対して相溶しないものであれば特に制限されず、公知のものを使用でき、例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族類などが挙げられる。
【0053】
樹脂溶液は、結着樹脂、着色剤その他の内添剤などを乳化機または分散機などで非水溶性有機溶媒に溶解、懸濁または分散させることによって調製することができる。ここで乳化機、分散機としては、特に制限されず、公知のものを使用でき、例えば、「ウルトラタラックス」(IKA株式会社製)、「ポリトロンホモジナイザー」(キネマティカ社製)、「TKオートホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)、「ナショナルクッキングミキサー」(松下電器産業株式会社製)などのバッチ式乳化機、「エバラマイルダー」(荏原製作所株式会社製)、「TKパイプラインホモミクサー」、「TKホモミックラインフロー」、「フィルミックス」(以上、特殊機化工業株式会社製)、「コロイドミル」(神鋼パンテック株式会社製)、「スラッシャー」、「トリゴナル湿式微粉砕機」(以上、三井三池化工機株式会社製)、「キャビトロン」(ユーロテック社製)、「ファインフローミル」(太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)、「フィルミックス」(特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式または連続両用乳化機などが挙げられる。
【0054】
(2)水系媒体調製工程
水系媒体調製工程では、分散剤および水を含む水系媒体を調製する。
分散剤としては、後述する油滴粒子の分散を促進し得るものであれば特に制限されず、例えば、水に対する溶解度が低いアルカリ土類金属塩(難水溶性アルカリ土類金属塩)を使用できる。
難水溶性アルカリ土類金属塩の水に対する溶解度は特に制限されないが、好ましくは温度20℃の水1リットルに対する溶解度が50mg以下、より好ましくは30mg以下である。
このような難水溶性アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウムの炭酸塩、リン酸塩など、マグネシウムの炭酸塩、リン酸塩など、バリウムの炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。これらの中でも、得られるトナー粒子の粒度分布の幅をできるだけ狭くし、形状を均一にするという点を考慮すると、カルシウムの炭酸塩(以下、炭酸カルシウム塩と称する)、カルシウムのリン酸塩(以下、リン酸カルシウム塩と称する)が好ましい。
分散剤は1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0055】
水系媒体には、分散剤と共に分散安定剤が含有されていてもよい。分散安定剤を添加することにより、分散剤の水系媒体中での凝集を防止して分散性を向上させることができる。分散安定剤は、水中では一次粒子に近い形態で存在するので、水分散性が良好で、その濃度が高くなっても分散性が低下することがなく、濃度調整が容易である。
分散安定剤としては、例えば、界面活性剤、水溶性高分子化合物およびその金属塩またはアンモニウム塩などが挙げられる。
界面活性剤としては、たとえば、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどが挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガム、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸などが挙げられる。
分散安定剤は1種単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0056】
(3)油滴粒子分散液調製工程
油滴粒子分散液調製工程では、前記工程で調製された樹脂溶液と水系媒体とを混合して、水系媒体中に樹脂溶液を分散させ、水系媒体中に樹脂溶液の油滴粒子が分散されてなる分散液を調製する。
樹脂溶液と水系媒体との混合は、撹拌下において行うことが好ましく、さらにせん断力を加えながら行うことがより好ましい。このとき、加熱または加熱および加圧してもよい。樹脂溶液と水系媒体との混合は、さらに具体的には、例えば、乳化機や分散機などを用いて行われる。このような乳化機および分散機は市販されている。その具体例としては、例えば、「ウルトラタラックス」(IKAジャパン株式会社製)、「ポリトロンホモジナイザー」(キネマティカ社製)、「TKオートホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式乳化機、「エバラマイルダー」(株式会社荏原製作所製)、「TKパイプラインホモミクサー」、「TKホモミックラインフロー」、「フィルミックス」(以上、特殊機化工業株式会社製)、「コロイドミル」(神鋼パンテック(株)製)、「スラッシャー」、「トリゴナル湿式微粉砕機」(以上、三井三池化工機(株)製)、「キャビトロン」((株)ユーロテック製)、「ファインフローミル」(太平洋機工(株)製)などの連続式乳化機、「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)、「フィルミックス」(特殊機化工業(株)製)などが挙げられる。また、これら以外にも、前述の樹脂溶液の調製に用いられる市販の乳化機、分散機を用いることもできる。
【0057】
ポリエステル樹脂をイソシアネート変性し、2価アミン化合物で架橋させる場合においては、この工程の直前に2価アミン化合物を樹脂溶液に添加することにより、分子伸張または架橋されたウレア結合を有する油滴粒子の分散液を得ることができる。
【0058】
(4)非水溶性有機溶媒除去工程
非水溶性有機溶媒除去工程では、油滴粒子分散液調製工程で得られた油滴粒子分散液から、油滴に含まれる非水溶性有機溶媒を除去し、樹脂粒子を生成させる。
非水溶性有機溶媒の除去は、例えば、減圧蒸留などによって行なうことができる。
【0059】
(5)分散剤除去工程
分散剤除去工程では、非水溶性有機溶媒の除去後に樹脂粒子の表面に残存する分散剤を分解除去する。
樹脂粒子表面からの分散剤の除去は、例えば、非水溶性有機溶媒の除去後の混合液に、イオン性物質を添加することによって行うことができる。
イオン性物質としては、水への溶解性を有しており、水中で解離することによって分散剤を分解し、分散剤の水への溶解性を増大させるものであれば特に制限されず、公知のものを使用できる。その中でも、無機酸、有機酸などの酸が好ましい。無機酸としては公知のものを使用でき、その中でも、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸などの水溶性無機酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。有機酸としても公知のものを使用でき、その中でも、ギ酸、酢酸などの水溶性有機酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
【0060】
(6)分離・洗浄・乾燥工程
分離・洗浄・乾燥工程では、分散剤除去工程において表面から分散剤が分解除去された樹脂粒子を含む混合液中から、樹脂粒子を分離し、洗浄、乾燥することによりトナー粒子を得る。
樹脂粒子の混合液中からの分離および回収は公知の方法に従って実施でき、例えば、濾過、吸引濾過、遠心分離などによって行なうことができる。本工程では、トナー粒子を分離する前に、水洗を行ってもよい。または、トナー粒子を分離した後に水洗を行ってもよい。
乾燥は、凍結乾燥法、気流式乾燥法などの公知の方法に従って実施できる。
【0061】
(7)外添剤添加工程
外添剤添加工程は、得られたトナー粒子に対して外添剤を添加する。
外添剤の添加は、一般的に行われる公知の方法に従って行うことができる。
【0062】
<乾式現像剤>
本発明の画像形成方法に用いられる現像剤は、乾式のものとされ、磁性または非磁性のトナーのみよりなる一成分現像剤であっても、トナーとキャリアとが混合されてなる二成分現像剤であってもよい。
二成分現像剤である場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆した樹脂被覆型キャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
【0063】
キャリアは、粒径が体積基準のメディアン径で15〜100μmのものであることが好ましく、より好ましくは20〜80μmのものである。
キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0064】
〔転写工程〕
転写工程は、トナー像を画像支持体に転写する工程である。
トナー像の画像支持体への転写は、トナー像を画像支持体に剥離帯電することにより行われる。
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラなどを用いることができる。
また、転写工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を画像支持体上に二次転写する態様の他、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を直接画像支持体に転写する態様などによって行うこともできる。
【0065】
画像支持体としては、特に限定されず、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができる。
【0066】
〔定着剤供給工程〕
定着剤供給工程は、画像支持体に転写されたトナー像に、トナーを膨潤または溶解する定着剤を供給する工程である。
トナー像への定着剤の供給は、液状または泡状の定着剤を噴射、噴霧または塗布することにより行われる。
定着剤供給手段としては、例えば、インクジェットノズル、ローラなどが挙げられる。
【0067】
以下、定着剤の供給方法について具体的に説明する。
図1は、本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段の構成の一例を示す説明用断面図である。
この定着剤供給手段50Aは、ライン型インクジェットノズルよりなるものであり、トナー像担持体31の下流側に配置されている。
このような定着剤供給手段50Aにおいては、液滴化された定着剤Fが、画像支持体P上に転写されたトナー像Tの領域に従って、当該トナー像Tに供給される。
【0068】
このような定着剤供給手段50Aを構成するライン型インクジェットは、解像度が300dpi以上であることが好ましい。また、インクジェットの液滴サイズは、0.5〜50plであることが好ましい。
なお、定着剤供給手段50Aとしてインクジェットノズルを用いる場合においては、定着剤には耐溶剤性が必要とされる。
また、定着剤が室温で液体ではない場合、または、定着剤の粘度が高い場合においては、定着剤供給手段50Aにヒーターを設ける構成とすることもできる。
【0069】
本発明においては、定着剤供給工程の後において、定着剤Fが供給されたトナー像Tに圧力を付与する圧力付与工程を行うことができる。具体的には、図2に示すように、定着剤供給工程の後、一対の加圧ローラよりなる圧力付与手段70により、定着剤Fが供給されたトナー像Tに圧力を付与することを行うことできる。
圧力付与手段としては、例えば、表面が離型性を有するローラなど用いることもできる。加圧力は、特に限定されないが、例えば50kPa〜1MPaであることが好ましい。
この圧力付与工程が行われることにより、形成される画像においてより高い定着強度が得られる。
【0070】
図3は、本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段の構成の他の例を示す説明用断面図である。
この定着剤供給手段50Bは、定着剤塗布ローラ51と、この定着剤塗布ローラ51に対向して設けられた加圧ローラ52とにより構成される。この定着剤塗布ローラ51は、その一部が例えば液状の定着剤Fに浸漬されている。また、トナー像T上に供給すべき定着剤Fの量を制御するメタリングブレード53が、その先端部分が定着剤塗布ローラ51の表面から離間した状態で設けられている。
このような定着剤供給手段50Bにおいては、定着剤Fが、定着剤塗布ローラ51および加圧ローラ52の回転駆動により、定着剤塗布ローラ51上の液状の定着剤Fがその供給量がメタリングブレード53により規制されて、トナー像Tが転写された画像支持体P上の全面に液膜Mとして供給されると共に、加圧ローラ52において圧力が付与される。
液膜Mの膜厚は、特に限定されないが、例えば1〜100μmが好ましい。
また、加圧ローラ52の加圧力は、例えば50kPa〜1MPaが好ましい。
【0071】
図4は、本発明の画像形成方法に用いられる定着剤供給手段の構成のさらに他の例を示す説明用断面図である。
この定着剤供給手段50Cは、泡状の定着剤を生成する泡状発生装置54と、定着剤塗布ローラ55と、この定着剤塗布ローラ55に対向して設けられた加圧ローラ56とにより構成される。また、トナー像T上に供給すべき定着剤Fの量を制御する規制ブレード57が、その先端部分が定着剤塗布ローラ55の表面から離間した状態で設けられている。
このような定着剤供給手段50Cにおいては、定着剤Fが、定着剤塗布ローラ55および加圧ローラ56の回転駆動により、定着剤塗布ローラ55上の泡状の定着剤Fがその供給量が規制ブレード57により規制されて、トナー像Tが転写された画像支持体P上の全面に泡状膜Bとして供給されると共に、加圧ローラ56において圧力が付与される。
泡状膜Bの膜厚は、特に限定されないが、例えば1〜100μmが好ましい。
また、加圧ローラ56の加圧力は、例えば50kPa〜1MPaが好ましい。
【0072】
定着剤供給工程においては、定着剤が、トナー像を形成するためのトナーの質量に対して0.05〜0.5倍、より好ましくは0.05〜0.3倍の質量で供給される。
定着剤の供給量が過小である場合においては、十分な定着強度が得られないおそれがある。一方、定着剤の供給量が過多である場合においては、画像滲みやドキュメントオフセット現象が発生するおそれがある。
なお、「トナー像を形成するためのトナーの質量」とは、静電潜像形成工程において形成される静電潜像を顕像化するのに必要とされるトナーの量をいう。
【0073】
<定着剤>
本発明の画像形成方法に用いられる定着剤は、トナーを膨潤または溶解するものであり、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有するものである。
【0074】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、定着剤の安定性の観点から、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0075】
脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式:R1 (COOR2 −O−R3 2 で表される化合物であって、好ましくは、R1 は炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R2 は炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R3 は炭素数が1以上4以下のアルキル基である。このような脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、コハク酸ジ(2−(2−エトキシエトキシ)エタン−1−オール)エステル、アジピン酸ジメトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチルなどが挙げられる。
【0076】
本発明の画像形成方法に用いられる定着剤は、上述したように、トナーの結着樹脂を構成するポリエステル樹脂が、一部または全部がイソシアネート変性されたものである場合においては、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルと共に、水および多価アミン化合物が含有される。
本発明の画像形成方法においては、イソシアネート変性ポリエステル樹脂と、定着剤に含有される多価アミン化合物との組み合わせにより、トナー像に対して定着剤を供給した後にイソシアネートとアミンとがウレア結合することにより架橋が形成され、形成される画像において定着強度がより一層高くなる。この場合、定着剤には、多価アミン化合物と共に、水およびアルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルが含有されている。水はアルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの希釈成分として、また、多価アミン化合物の溶媒として作用することとなる。
【0077】
多価アミン化合物としては、具体的には、2価アミン化合物と3価アミン化合物が挙げられる。
2価アミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
3価以上の多価アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0078】
多価アミン化合物の含有量は、定着剤全量に対して0.1〜20.0質量%が好ましい。多価アミン化合物の含有量が0.1質量%未満である場合においては、高い定着強度が得る効果が低減し、多価アミン化合物の含有量が20.0質量%を超える場合においては、不快臭の原因となる。
また、水の含有量は、定着剤全量に対して5〜70質量%が好ましい。
【0079】
なお、本発明に用いられる定着剤においては、5質量%未満の割合であれば他の成分が含有されていてもよい。
例えば、図4の例に示したように、定着剤を泡状として供給する場合においては、他の成分としては、活性剤などが挙げられる。このような活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩、およびその誘導体類などを挙げることができる。
また、カチオン系界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などを挙げることができる。
さらに、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0080】
本発明の画像形成方法は、例えば、以下の画像形成装置により実行することができる。
図5は、本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
この画像形成装置10は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であって、ベルト状の中間転写体20に沿って設けられた複数の画像形成ユニット30Y,30M,30C,30Kと、中間転写体20上に各画像形成ユニットにより形成されたトナー像を画像支持体Pに転写する二次転写手段40と、画像支持体P上に転写されたトナー像に定着剤を供給する定着剤供給手段50とが設けられている。
【0081】
画像形成ユニット30Yは、イエローのトナー像を形成するものであって、静電潜像担持体であるドラム状の感光体31Yを備え、この感光体31Yの周囲に帯電手段32Y、露光手段33Y、現像手段34Y、一次転写手段35Y、クリーニング手段36Yが配置されて構成されている。
【0082】
画像形成ユニット30M,30C,30Kは、各々、イエローのトナー像を形成する代わりにマゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する他は、画像形成ユニット30Yと同様の構成を有する。
【0083】
中間転写体20は、複数の支持ローラ21A,21B,21Cに張架され、循環移動可能に支持されている。
【0084】
二次転写手段40は、トナー像を画像支持体Pに剥離帯電して転写する転写器よりなるものである。
【0085】
定着剤供給手段50は、トナー像に対して定着剤を液滴にて供給するものであり、例えばライン型インクジェットノズルよりなるものである。
【0086】
この画像形成装置10においては、以下のような画像形成処理が行われる。
画像形成ユニット30Yにおいて、感光体31Yが回転駆動されると、帯電手段32Yにより、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体31Yの表面に一様な電位が与えられる。一様に帯電された感光体31Yの表面上に画像データに基づいて、露光手段33Yにより、感光体31Yの回転方向に対して平行に走査し、露光を行うことによって静電潜像が形成される。次に、現像手段34Yにより、感光体31Yの表面電位と同極性に帯電されたトナーが感光体31Yの静電潜像に付着して反転現像が行われることによって、トナー像が形成され、循環移動する中間転写体20上に一次転写手段35Yにより転写される。これらの処理が、画像形成ユニット30M,30C,30Kにおいても行われ、各画像形成ユニット30Y,30M,30C,30Kより形成された各色のトナー像が、中間転写体20上に重畳されてカラートナー像が形成される。このカラートナー像が、所定のタイミングで搬送される画像支持体P上に二次転写手段40によりに二次転写される。次いで、定着剤供給手段50により画像データに基づいて定着剤が、画像支持体Pに二次転写されたトナー像に対して供給される。定着剤が供給されたトナー像は画像支持体Pに定着し画像が形成される。
一方、二次転写手段40により画像支持体Pにカラートナー像を転写した後、クリーニング手段60においては、画像支持体Pを曲率分離した中間転写体20上に残留する未転写トナーが除去される。また、クリーニング手段36Y,36M,36C,36Kにおいては、感光体31Y,31M,31C,31K上にそれぞれ残留する未転写トナーが除去される。
【0087】
本発明の画像形成方法によれば、湿式定着方式において、トナーとして、酢酸エチルおよびテトラヒドロフランに対する不溶分が特定範囲内であって、粒径が特定範囲内のものを用い、また、当該トナーを膨潤または溶融する定着剤として、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有するものを用いることにより、形成される画像において高い定着強度が得られる。
また、本発明の画像形成方法においては、トナーに含有されるワックスが、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有する定着剤に対して溶解度が低いものであることから、タック防止剤として作用し、タック感(粘着感)が抑制された画像を形成することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
〔トナーの作製例1〕
(1)樹脂溶液調製工程
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物675質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物88質量部、テレフタル酸281質量部、無水トリメリット酸25質量部およびジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下230℃で7時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧下で5時間反応し、ポリエステル樹脂〔1〕を得た。ポリエステル樹脂〔1〕の重量平均分子量は3000、ガラス転移点は54℃であった。
ポリエステル樹脂〔1〕320質量部、ベヘン酸ベヘニル(融点:76℃)64質量部および銅フタロシアニン16質量部に、酢酸エチル1500質量部を加え、撹拌しながら75℃まで昇温した。その後75℃で3時間撹拌し、固形分25質量%の樹脂溶液〔1〕を得た。
【0090】
(2)水系媒体調製工程
分散剤としてリン酸三カルシウム5質量部、分散安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05質量部を純水580質量部に溶解・分散させた溶液を、「TKホモミキサー」(特殊機化工業(株)社製)を用いて5000rpmにて15分間撹拌し、乳白色の水系媒体〔1〕を得た。
【0091】
(3)油滴粒子分散液調製工程
この水系媒体〔1〕に対して、樹脂溶液〔1〕を600質量部添加し、「TKホモミキサー」により12000rpmにて30分間撹拌することにより油滴粒子分散液〔1〕を調製した。
【0092】
(4)非水溶性有機溶媒除去工程、(5)分散剤除去工程および(6)分離・洗浄・乾燥工程
この油滴粒子分散液〔1〕を減圧蒸留装置に移し、非水溶性有機溶媒であるメチルエチルケトンを減圧下で除去した。得られたスラリーに対し、1mol/lの塩酸を当該スラリーのpHが1になるまで加え、30分間放置して、樹脂粒子表面からリン酸三カルシウムを除去した。その後、濾過、水洗および乾燥を行い、体積基準のメディアン径が5.2μmのトナー粒子〔1〕を得た。
【0093】
(7)外添剤添加工程
このトナー粒子〔1〕100質量部に対し、疎水性シリカ1.0質量部をヘンシェルミキサーで混合した。回転翼の周速24m/sとし、20分間混合した後、400MESHの篩を通過させ、トナー〔1〕を得た。
トナー〔1〕の酢酸エチルに対する不溶分は20.2質量%、テトラヒドロフランに対する不溶分は7.5質量%であった。
【0094】
〔トナーの作製例2〕
トナーの作製例1における(1)樹脂溶液調製工程において、樹脂溶液〔1〕に代えて、ポリエステル樹脂〔1〕360質量部、ベヘン酸ベヘニル(融点:76℃)24質量部および銅フタロシアニン16質量部に酢酸エチル1500質量部を加え、撹拌しながら75℃まで昇温し、その後75℃で3時間撹拌して得られた固形分25質量%の樹脂溶液〔2〕を用いたことの他は同様にしてトナー〔2〕を得た。
トナー〔2〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0095】
〔トナーの作製例3〕
トナーの作製例1における(1)樹脂溶液調製工程において、樹脂溶液〔1〕に代えて、ポリエステル樹脂〔1〕364質量部、ベヘン酸ベヘニル(融点:76℃)20質量部および銅フタロシアニン16質量部に酢酸エチル1500質量部を加え、撹拌しながら75℃まで昇温し、その後75℃で3時間撹拌して得られた固形分25%の樹脂溶液〔3〕を用いたことの他は同様にしてトナー〔3〕を得た。
トナー〔3〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0096】
〔トナーの作製例4〕
トナーの作製例1における(1)樹脂溶液調製工程において、樹脂溶液〔1〕に代えて、ポリエステル樹脂〔1〕200質量部、ベヘン酸ベヘニル(融点:76℃)42質量部および銅フタロシアニン16質量部に酢酸エチル1500質量部を加え、撹拌しながら75℃まで昇温し、その後75℃で3時間撹拌して得られた固形分25質量%の樹脂溶液〔4〕を用い、また、(3)油滴粒子分散液調製工程において、油滴粒子分散液〔1〕に代えて、樹脂溶液〔4〕600質量部に、後述するイソシアネート変性ポリエステル樹脂〔1〕48質量部、イソホロンジアミン0.5質量部をメチルエチルケトン0.5質量部に溶解させた溶液1質量部を添加し、「TKホモミキサー」により12000rpmにて30分間撹拌することによりえられた油滴粒子分散液〔2〕を用いたことの他は同様にしてトナー〔4〕を得た。
トナー〔4〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0097】
(1−2)イソシアネート変性ポリエステル樹脂の作製
(1)樹脂溶液調製工程において得られたポリエステル樹脂〔1〕400質量部と、イソホロンジイソシアネート87質量部および酢酸エチル500質量部とを、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器に入れて、100℃で5時間反応させ、イソシアネート変性ポリエステル樹脂〔1〕を得た。
【0098】
〔トナーの作製例5〕
トナーの作製例4における(3)油滴粒子分散液調製工程において、イソホロンジアミンの添加量を0.6質量部に変更したことの他は同様にしてトナー〔5〕を得た。
トナー〔5〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0099】
〔トナーの作製例6〕
トナーの作製例4における(1)樹脂溶液調製工程において、樹脂溶液〔4〕に代えて、ポリエステル樹脂〔1〕196質量部、ベヘン酸ベヘニル(融点:76℃)46質量部および銅フタロシアニン16質量部に酢酸エチル1500質量部を加え、撹拌しながら75℃まで昇温し、その後75℃で3時間撹拌して得られた固形分25質量%の樹脂溶液〔6〕を用いたことの他は同様にしてトナー〔6〕を得た。
トナー〔6〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0100】
〔トナーの作製例7〕
トナーの作製例1における(2)水系媒体調製工程において、分散剤としてリン酸三カルシウムの添加量を10質量部に変更し、「TKホモミキサー」(特殊機化工業(株)社製)の回転数を19500rpmに変更したことの他は同様にしてトナー〔7〕を得た。
トナー〔7〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0101】
〔トナーの作製例8〕
トナーの作製例1における(2)水系媒体調製工程において、分散剤としてリン酸三カルシウムの添加量を11質量部に変更し、「TKホモミキサー」(特殊機化工業(株)社製)の回転数を20000rpmに変更したことの他は同様にしてトナー〔8〕を得た。
トナー〔8〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0102】
〔トナーの作製例9〕
トナーの作製例1における(2)水系媒体調製工程において、「TKホモミキサー」(特殊機化工業(株)社製)の回転数を11000rpmに変更したことの他は同様にしてトナー〔9〕を得た。
トナー〔9〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0103】
〔トナーの作製例10〕
トナーの作製例1における(2)水系媒体調製工程において、「TKホモミキサー」(特殊機化工業(株)社製)の回転数を10700rpmに変更したことの他は同様にしてトナー〔10〕を得た。
トナー〔10〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0104】
〔トナーの作製例11〕
トナーの作製例1における(1)樹脂溶液調製工程において、テレフタル酸281質量部をコハク酸200質量部に代えて得られたポリエステル樹脂〔2〕を用いたことの他は同様にしてトナー〔11〕を得た。なお、ポリエステル樹脂〔2〕の数平均分子量は1900、ガラス転移点は50℃であった。
トナー〔11〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0105】
〔トナーの作製例12〕
トナーの作製例1における(1)樹脂溶液調製工程において、テレフタル酸281質量部をアジピン酸247質量部に代えて得られたポリエステル樹脂〔3〕を用いたことの他は同様にしてトナー〔12〕を得た。なお、ポリエステル樹脂〔3〕の数平均分子量は2100、ガラス転移点は52℃であった。
トナー〔12〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0106】
〔トナーの作製例13〕
トナーの作製例1における(1)樹脂溶液調製工程において、ベヘン酸ベへニル(融点:76℃)の代わりに、マイクロクリスタリン(融点:89℃)を用いたことの他は同様にしてトナー〔13〕を得た。
トナー〔13〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0107】
〔トナーの作製例14〕
「Imagio MP C5000」(リコー社製)の現像剤から電界によりトナーを分離し、トナー〔14〕を得た。
トナー〔14〕の酢酸エチルに対する不溶分、テトラヒドロフランに対する不溶分および粒径を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
〔乾式現像剤の作製例1〜14〕
作製されたトナー〔1〕〜〔14〕の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径が60nmのフェライトキャリアを、現像剤におけるトナー濃度が6質量%となるように混合し、乾式現像剤〔1〕〜〔14〕を作製した。
【0110】
〔定着剤の調製例1〜5〕
表2に示す化合物を用いて定着剤〔1〕〜〔5〕を得た。
【表2】

【0111】
〔実施例1〜12、比較例1〜6〕
画像形成装置「bizhub C 253」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)の加熱定着器を取り外して、下記に示す定着器〔1〕または〔2〕を搭載し、乾式現像剤、定着剤および定着器の種類を下記表3に示す組み合わせに従い、画像支持体「Jペーパー」(コニカミノルタ社製)上に、トナー付着量12g/m2 としてベタ画像を形成した。得られたベタ画像について下記評価を行った。結果を表3に示す。この画像形成においては、非加熱の状態で定着が行われた。
【0112】
・定着器〔1〕
定着器〔1〕は、図2に示すような定着剤供給手段および圧力付与手段から構成されるものであり、定着剤供給手段は、ライン型インクジェットノズルよりなり、圧力付与手段は一対の加圧ローラよりなる。
定着剤供給手段を構成するライン型インクジェットは、解像度が600dpiであり、液滴サイズが10〜15plである。
圧力付与手段を構成する一対の加圧ローラは、画像形成装置「bizhub C 253」の加熱定着器に用いられている加圧ローラを非加熱の状態で使用し、加圧力を200kPa程度とした。
【0113】
・定着器〔2〕
定着器〔2〕は、図4に示すような定着剤供給手段から構成されるものであり、定着剤供給手段は、泡状の定着剤を生成する泡状発生装置と、定着剤塗布ローラと、この定着剤塗布ローラに対向して設けられた加圧ローラとにより構成されるものである。
この定着剤供給手段により供給される泡状膜の膜厚は、50〜70μmである。また、加圧ローラの加圧力は200MPa程度である。
【0114】
〔評価〕
(1)定着強度
得られた画像について、「フィニッシャーFS−608」(コニカミノルタ社製)を改造した折り機を用いて折り、これに0.35MPaの空気を吹きつけ、折り目の状態について限度見本を参照して下記評価基準により評価した。評価基準3以上を合格レベルとする。
−評価基準−
5:全く折れ目に剥離が無い。
4:一部折り目に従い剥離がある。
3:折り目に従い細い線状の剥離がある。
2:折り目に従い太い剥離がある。
1:画像に大きな剥離がある。
【0115】
(2)タック感
得られた画像について、タック感(粘着感)の官能評価を下記評価基準により評価した。評価基準2以上を合格レベルとする。
−評価基準−
3:手で強く押しても全くタック感がない。
2:手で強く押すと若干タック感があるが問題のないレベル。
1:手で軽く押してもタック感があり手に貼り付く。
【0116】
【表3】

【符号の説明】
【0117】
10 画像形成装置
20 中間転写体
21A,21B,21C 支持ローラ
30Y,30M,30C,30K 画像形成ユニット
31 トナー像担持体
31Y,31M,31C,31K 感光体
32Y,32M,32C,32K 帯電手段
33Y,33M,33C,33K 露光手段
34Y,34M,34C,34K 現像手段
35Y,35M,35C,35K 一次転写手段
36Y,36M,36C,36K クリーニング手段
40 二次転写手段
50,50A,50B,50C 定着剤供給手段
51 定着剤塗布ローラ
52 加圧ローラ
53 メタリングブレード
54 泡状発生装置
55 定着剤塗布ローラ
56 加圧ローラ
57 規制ブレード
60 クリーニング手段
70 圧力付与手段
B 泡状膜
F 定着剤
M 液膜
T トナー像
P 画像支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂およびワックスを含有するトナーを含む乾式現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を画像支持体に転写する転写工程と、
前記画像支持体に転写されたトナー像に、トナーを膨潤または溶解する定着剤を供給する定着剤供給工程とを有する画像形成方法において、
トナーとして、酢酸エチルに対する不溶分が10.0質量%以上30.0質量%以下、かつ、テトラヒドロフランに対する不溶分が5.0質量%以上15.0質量%以下であり、当該トナーの体積基準のメディアン径が3.5μm以上7.0μm以下であるものを用い、
定着剤として、アルキレンカーボネートまたは脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含有するものを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記定着剤が、プロピレンカーボネートを含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記結着樹脂を構成するポリエステル樹脂が、一部または全部がイソシアネート変性されたものであり、
前記定着剤が、水および多価アミン化合物を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記多価アミン化合物がイソホロンジアミンであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記結着樹脂を構成するポリエステル樹脂が、酸成分としてコハク酸またはアジピン酸を含むものを用いることにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記ワックスが、エステル系ワックスまたは炭化水素系ワックスであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記ワックスが、トナー中5.0質量%以上30.0質量%以下の割合で含有されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97020(P2013−97020A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236843(P2011−236843)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】