説明

画像形成材料、画像保持媒体、画像検査装置及び画像形成装置

【課題】赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる潜像画像を、可視画像として読み取ることができる画像形成材料、画像保持媒体、画像検査装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】赤外領域に光吸収ピークを有する赤外線吸収剤、及び励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する蛍光物質を含む画像形成材料を用いて、画像保持媒体に潜像画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成材料、画像保持媒体、画像検査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蛍光物質を含有したバーコード等の情報表示部が印刷され、励起光の照射により蛍光物質から放射される蛍光を受光する光学読取り装置によって情報が読取られる情報表示ラベルにおいて、可視光を被着面の文字情報が視覚的に判別可能な範囲で透過し、かつ前記光学読取り装置によって読取り可能な蛍光に対する反射性が高い蛍光反射層を備え、他の層は視覚的に透過性があることを特徴とする情報表示ラベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−254952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる潜像画像を、可視画像として読み取ることができるようにした画像形成材料、画像保持媒体、画像検査装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、赤外領域に光吸収ピークを有する赤外線吸収剤と、励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する蛍光物質と、を含む画像形成材料である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記励起光が、紫外線又は赤外線である請求項1に記載の画像形成材料である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成材料により潜像画像が形成された画像保持媒体である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記潜像画像が、符号化された情報を含む請求項3に記載の画像保持媒体である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記符号化された情報が、各符号の位置座標を表す位置情報を含む請求項4に記載の画像保持媒体である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記符号化された情報が、前記画像保持媒体を識別する識別情報を含む請求項4又は5に記載の画像保持媒体である。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項3から請求項6までの何れか1項に記載の画像保持媒体に保持された画像を検査する画像検査装置であって、励起光を照射する励起光照射手段と、前記画像保持媒体から可視画像を読み取って検査画像情報を取得する取得手段と、を備えた画像検査装置である。
【0012】
請求項8に記載の発明は、前記検査画像情報と予め取得された基準画像情報とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて処理を行う処理手段と、を更に備えた請求項7に記載の画像検査装置である。
【0013】
請求項9に記載の発明は、前記画像保持媒体がシート状の媒体であり、前記励起光照射手段と前記取得手段とが、前記画像保持媒体の表裏両面から可視画像を読み取るように配置された、請求項7又は8に記載の画像検査装置である。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成材料により画像保持媒体に画像を形成する画像形成装置である。
【0015】
請求項11に記載の発明は、請求項7から請求項9までの何れか1項に記載の画像検査装置を備えた請求項10に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる潜像画像を形成し、形成された潜像画像を可視画像として読み取ることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、可視領域の励起光を用いる場合に比べて、潜像画像を鮮明な可視画像として読み取ることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる潜像画像を、可視画像として読み取ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、復号により解読される情報を、潜像画像に埋め込むことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、各符号の位置座標を表す位置情報を符号化して、潜像画像に埋め込むことができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、画像保持媒体を識別する識別情報を符号化して、潜像画像に埋め込むことができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、画像保持媒体に保持された潜像画像を、可視画像として読み取って検査することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、検査結果に応じた処理を行うことができる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、潜像画像の形成面が不明な場合でも、画像保持媒体に保持された潜像画像を可視画像として読み取ることができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、可視画像として読み取ることができる潜像画像(赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる画像)を形成することができる。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、画像形成装置により画像保持媒体に形成された潜像画像を、可視画像として読み取って検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)は潜像画像が形成された画像保持媒体を示す模式図である。(B)は潜像画像が赤外線を照射することにより読み取られる様子を示す模式図である。(C)は潜像画像が可視画像として読み取られる様子を示す模式図である。
【図2】画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】(A)及び(B)は画像検査部の構成の一例を示す概略図である。
【図5】(A)及び(B)は欠陥画像の一例を示す模式図である。
【図6】画像形成装置で実行される画像検査処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】励起光源が追加された画像読取部の構成の一例を示す概略構成図である。
【図8】(A)〜(C)は検査結果に応じた処理の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0029】
<画像保持媒体>
まず、本実施の形態に係る画像保持媒体について説明する。
本実施の形態に係る画像保持媒体は、媒体上に潜像画像を保持している。ここで「潜像画像」とは、自然光又は白色光の下では肉眼により視認することが困難であり、赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる画像である。本実施の形態では、媒体上に保持された潜像画像は、後述する励起光を照射することにより、可視画像として読み取られる。この機能を発揮する潜像画像の形成には、赤外領域に光吸収ピークを有する赤外線吸収剤と、励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する蛍光物質とを含む画像形成材料が用いられる。なお、本実施の形態に係る画像形成材料の詳細については後述する。
【0030】
画像保持媒体は、画像形成材料により画像が形成され、形成された画像が保持される媒体である。肉眼により視認することが困難な潜像画像を形成するためには、潜像画像と画像保持媒体との色差ΔEを6未満とする等、画像形成材料に応じて画像保持媒体を選択すればよい。或いは、画像保持媒体に応じて画像形成材料を調整すればよい。画像保持媒体としては、一般に、白色用紙、再生紙等、シート状の紙媒体や高分子フィルム等の樹脂媒体が用いられる。色差ΔEとは、CIE1976L*a*b*表色系において、L*、a*、b*の各値を用いて表される色差である。
【0031】
潜像画像は、文字、符号、図形等、任意の種類の画像としてもよい。潜像画像は、バーコード等の一次元コード、QRコードやグリフコード等の複数の画素(ドット)で表された二次元コード等、符号化された情報を含んでいてもよい。符号化された情報は、潜像画像を読み取って復号(デコード)される。例えば、各符号の位置座標を表す位置情報、画像保持媒体を識別する識別情報等が符号化されて、潜像画像に埋め込まれていてもよい。また、潜像画像は、画像保持媒体の片面又は両面、平面視した場合の全領域又は一部の領域等、画像保持媒体の任意の位置に保持されていてもよい。例えば、画像保持媒体の片面の全領域に、予め定めた情報を表す二次元コードを複数配置してもよい。
【0032】
図1(A)〜(C)は潜像画像を保持する画像保持媒体の一例を示す模式図である。図1(A)に示すように、画像保持媒体10には、本実施の形態に係る画像形成材料を用いて、F字状の潜像画像12が形成されている。潜像画像12は、第1の領域12A、第2の領域12B及び第3の領域12Cから構成されている。図1に示す例では、潜像画像12は、二次元コードが複数配列された画像である。潜像画像12には、各符号の位置座標を表す位置情報、画像保持媒体10を識別する識別情報が埋め込まれている。第1の領域12A、第2の領域12B及び第3の領域12Cの各々に、異なる情報が埋め込まれていてもよい。上記の通り、自然光又は白色光の下では、潜像画像12は肉眼により視認することができない。
【0033】
図1(B)に示すように、潜像画像12は、赤外線を照射して反射された赤外線を検出することにより読み取られる。潜像画像12を構成する画像形成材料には、赤外領域に光吸収ピークを有する赤外線吸収剤が含まれている。画像保持媒体10に赤外線が照射されると、赤外線吸収剤により赤外線が吸収され、吸収されなかった赤外線は反射される。可視画像を読み取る通常の画像読み取り装置では、赤外線は検出されず潜像画像12を読み取ることはできない。赤外線カメラ、赤外線イメージセンサ等、赤外線専用の画像読み取り装置を用いなければ、潜像画像12を読み取ることはできない。
【0034】
本実施の形態では、潜像画像12を構成する画像形成材料に、励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する蛍光物質が含まれている。図1(C)に示すように、画像保持媒体10に紫外線等の励起光が照射されると、蛍光物質から可視領域の蛍光が発生して、潜像画像12が可視化される。例えば、潜像画像12が緑色に発色して、肉眼でも視認されるようになる。従って、可視画像を読み取る通常の画像読み取り装置により、潜像画像12が可視画像として読み取られる。また、紫外線ランプ等の簡易光源から励起光を照射すれば、潜像画像12の有無や潜像画像12の形成位置が目視により確認される。
【0035】
励起光として、紫外線や赤外線等、可視領域以外の波長域の光を照射してもよい。紫外線や赤外線を励起光とした場合には、照射された励起光が反射されたとしても、通常の画像読み取り装置では検出されない。このため、可視領域の励起光を用いる場合に比べて、潜像画像12が鮮明な可視画像として読み取られる。例えば、符号化された情報を含む潜像画像を読み取る場合には、背景雑音が除去されて復号精度が向上する。
【0036】
また、潜像画像12の位置を示す可視画像(▲印等のベタ画像)を形成すると、可視画像の形成箇所には潜像画像を形成することができない。また、可視画像の形成により、肉眼で視認できないという潜像画像の機能が損なわれ、利用用途が制限される。本実施の形態では、潜像画像12自体が可視画像として読み取られるので、潜像画像12の位置を示す可視画像を別途形成する必要がない。従って、潜像画像を形成できない領域が発生せず、潜像画像の上記機能を損なうこともない。
【0037】
<画像形成材料>
次に、本実施の形態に係る画像形成材料について説明する。
本実施の形態に係る画像形成材料は、赤外領域に光吸収ピークを有する赤外線吸収剤と、励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する蛍光物質とを含み、画像保持媒体に上記の潜像画像を形成する材料である。画像形成方法としては、電子写真方式、インクジェット印刷、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、シルク印刷等、従来公知の方法を用いてもよい。従って、本実施の形態に係る画像形成材料は、画像形成方法に応じて、電子写真用現像剤、各種印刷用インク等、種々の形態で使用される。また、筆記具用のインクとしてもよい。
【0038】
(赤外線吸収剤)
赤外線吸収剤は、波長750nmから波長1000nmまでの赤外領域に光吸収ピークを有するものであればよい。潜像画像を形成する材料であるため、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光能力が十分に低いことが望まれる。「吸光能力が十分に低い」の意義については後述する。赤外線吸収剤としては、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等、従来公知の赤外線吸収剤を用いてもよい。
【0039】
赤外線吸収剤としては、例えば、有機系又は無機系の近赤外線吸収剤を用いてもよい。有機系近赤外線吸収剤としては、ジイモニウム系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール金属錯体系色素、置換ベンゼンジチオール金属錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素等が挙げられる。無機系近赤外線吸収剤としては、ATO(アンチモンドープ酸化錫)またはITO(錫ドープ酸化インジウム)等が挙げられる。
【0040】
スクアリリウム系色素としては、下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素が挙げられる。
【0041】
【化1】

【0042】
ここで、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、ナフタロシアニン系の材料など他の潜像画像に用いられる色素に比べて耐光性が高い。この理由としては、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、結晶性が高く、樹脂への溶解性が低い。このため、光の照射によって光エネルギーを吸収することによる分子内の結合の切断が抑制されると考えられる。
【0043】
構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、結晶性が高いが、具体的には、Cuターゲットで波長1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、少なくとも9.9°,13.2°,19.9°,20.8°,23.0°に回折ピークを示すものや、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピーク示すもの、8.9,17.1,18.4,22.6,24.2に回折ピークを示すもの等が挙げられる。中でも、上記17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピーク示すものが、耐光性の観点からよい。
【0044】
なお、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光能力が十分に低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光能力が十分に高いものである。
【0045】
この「吸光能力が十分に低い」とは、400nm以上450nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも8100M−1cm−1以下であり、450nm以上650nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも3400M−1cm−1以下であり、650nm以上690nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも8800M−1cm−1以下であり、690nm以上750nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも37000M−1cm−1以下であることを示している。
【0046】
また、「吸光能力が十分に高い」とは、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域の全領域における溶液のモル吸光係数の極大値が少なくとも1.5×10−1cm−1以上であることを示している。
【0047】
このため、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含む画像形成材料により形成された潜像画像は、可視光による非視認性と赤外読み取り性とが両立され易い。
【0048】
構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、例えば以下の反応スキームに従って得られる。
【0049】
【化2】

【0050】
より具体的には、触媒の存在下で、1,8−ジアミノナフタレンと、3,5−ジメチルシクロヘキサノンとを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、ペリミジン中間体(a)が得られる((A−1)工程)。
【0051】
(A−1)工程に使用する触媒としては、p−トルエンスルホン酸一水和物、ベンゼンスルホン酸一水和物、4−クロロベンゼンスルホン酸水和物、ピリジン−3−スルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。また、(A−1)工程に使用する溶媒としては、アルコール、芳香族炭化水素などが挙げられる。ペリミジン中間体(a)は高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製される。
【0052】
次に、ペリミジン中間体(a)と、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン(「スクアリン酸」又は「四角酸」とも呼ばれる)と、を、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素が得られる((A−2)工程)。該(A−2)工程は、窒素ガス雰囲気下で行うことがよい。
【0053】
(A−2)工程に使用する溶媒としては、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ペンタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が用いられる。また、アルコール類は単独で使用してもよいが、芳香族炭化水素、エーテル類、ハロゲン化炭化水素またはアミド類などの溶媒はアルコール類溶媒と混合して使用することがよい。
【0054】
溶媒としては、具体的には、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、1−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒、1−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、2−ブタノールとトルエンの混合溶媒、2−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒が挙げられる。混合溶媒を使う場合、アルコール類溶媒の濃度は、1容量%以上、または5容量%以上75容量%以下がよい。
【0055】
また、(A−2)工程において、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンに対するペリミジン誘導体(a)のモル比(ペリミジン誘導体(a)のモル数/3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンのモル数)は、1以上4以下、または1.5以上3以下が挙げられる。当該モル比が1未満の場合には構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が低下する場合があり、また、4を超えるとペリミジン誘導体(a)の利用効率が悪くなって、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の分離・精製が困難となる場合がある。
【0056】
更に、(A−2)工程は、脱水剤を用いると反応時間が短縮し、また、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が向上する傾向にある。脱水剤としては、ペリミジン中間体(a)及び3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンと反応しないものであれば特に制限されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エステル、モレキュラーシーブ等が挙げられる。
【0057】
(A−2)工程における反応温度は使用する溶媒の種類によって異なるが、反応液の温度としては60℃以上、または75℃以上である。例えば、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いる場合には、反応液の温度が75℃以上105℃であることがよい。
【0058】
また、(A−2)工程における反応時間は、溶媒の種類又は反応液の温度によって異なるが、例えば1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いて反応液の温度を90℃以上105℃以下として反応させる場合、反応時間は2時間以上4時間以下が挙げられる。
【0059】
(A−2)工程で生成した構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、溶媒洗浄、高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製される。
【0060】
また、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、顔料化処理を行うことがよいが、顔料化処理を行うと結晶系が変化しやすいと考えられる。そのため、顔料化処理の方法及び処理条件は、顔料化処理前のペリミジン系スクアリリウム色素粒子(原料)の結晶系の変換が抑制されるように調整することがよい。即ち、ペリミジン系スクアリリウム色素粒子のX線回折ピークを示すように調整されることがよい。具体的には、ペリミジン系スクアリリウム色素では、Cuターゲットで波長1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示すものがよいため、顔料化処理後のペリミジン系スクアリリウム色素が、該回折ピークを示すように調整されることが、耐光性向上の観点からよい。
【0061】
顔料化方法としては、例えば、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液とを混合し、その混合液について顔料化処理を行う方法が挙げられる。混合液には、必要に応じて水を加えて濃度を調節してもよい。また、顔料化処理に使用する装置としては、ビーズミル加工装置が挙げられる。
【0062】
構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を、粒子として含有することがよい。構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、分子間相互作用が大きく、また、それらの粒子は結晶性が高い。このため、粒子状の構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を画像形成材料に含有させることで、赤外領域の発色性及び耐光性がより高められると考えられる。
【0063】
構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子は、例えば(A−2)工程後の精製物をテトラヒドロフランに溶かして、その溶液を、注射器等を用いて、氷冷した蒸留水に撹拌しながら注入して沈殿物を生成させ、その沈殿物を吸引濾過により濾取し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥することによって得られる。このとき、溶液中における構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の濃度、溶液の注入速度、蒸留水の量又は温度、撹拌速度等を調整することにより、得られる沈殿物の粒子径が調整される。
【0064】
構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子のメジアン径d50としては、10nm以上300nm以下や、20nm以上200nm以下が挙げられる。構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子のメジアン径d50が上記範囲内であると、耐光性の低下が抑制され、且つ赤外領域の発色性が向上すると考えられる。
【0065】
なお、粒子化およびメヂアン径の制御のための上記処理は、上記顔料化処理の前後のいずれで行ってもよい。また、赤外線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0066】
本実施の形態では、赤外領域の発色性の観点から、赤外線吸収剤としてシアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等を用いてもよい。具体的には、バナジルナフタロシアニン等が用いられる。
【0067】
赤外線吸収剤の含有量は、不可視性の観点から、画像保持媒体上の単位面積当たりの赤外線吸収剤の量が、ドットをベタに換算した時に0.3g/m〜0.02g/mの範囲とすればよい。
【0068】
(蛍光物質)
蛍光物質は、励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する色材であればよい。ここで「可視領域」とは、波長400nmから波長750nmまでの波長域である。蛍光物質としては、フルオレセイン、ローダミン等、従来公知の蛍光染料や蛍光顔料を用いてもよい。フルオレセインは、紫外線を照射すると黄緑色の蛍光を発生する。ローダミンは、緑色の可視光を照射するとオレンジ色の蛍光を発生する。
【0069】
本実施の形態では、紫外線又は赤外線で励起される蛍光物質が用いられる。励起光として用いられる「紫外線」とは、波長10nmから波長400nmまでの光である。紫外線で励起される蛍光物質としては、Y(P,V)O:Eu、Y:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、YS:Eu、BaMgAl1017:Eu等が用いられる。励起光として用いられる「赤外線」とは、波長750nmから波長1000nmまでの光である。赤外線で励起される蛍光物質としては、(R1−x,Er(ただし、Rは、Y、La、Gd、およびLuのうちの少なくとも1種)等が用いられる。
【0070】
なお、上記の化学記号は下記元素を表す。Y(イットリウム)、P(りん)、V(バナジウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリウム)、B(ホウ素)、S(硫黄)、Ba(バリウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Er(エルビウム)、La(ランタン)、Lu(ルテチウム)である。また、Y:Euの表記は混合物を表す。例えば、Y:Euは、酸化イットリウム/ユーロピウム混合物を表す。
【0071】
蛍光物質の含有量は、トナー・インキ化適性と発光効率の観点から、例えば、赤外線吸収剤を上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素(ペリミジン系不可視顔料)とした場合には、ペリミジン系不可視顔料5重量部に対して1〜30重量部の範囲とすればよい。また、赤外線吸収剤として一般的に用いられることが多い赤外線吸収剤顔料であるナフタロシアニン系材料(バナジルナフタロシアニン等)は、中心金属によって分子量は多少変わるが、5重量部に対して2〜60重量部の範囲とすればよい。
【0072】
(電子写真用現像剤)
画像形成材料を電子写真用現像剤とした場合の組成について説明する。電子写真用現像剤は、結着樹脂、赤外線吸収剤、及び蛍光物質を含む電子写真用トナーを用いた1成分現像剤としてもよい。また、電子写真用現像剤は、上記の電子写真用トナーとキャリアとを組み合わせた2成分現像剤としてもよい。電子写真用現像剤は、ワックスや帯電制御剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。結着樹脂、各種添加剤、キャリアとしては、従来公知の材料を用いればよい。電子写真用現像剤は、混練粉砕法、湿式造粒法等、従来公知の製造方法により製造される。
【0073】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。帯電制御剤には、正帯電用と負帯電用がある。正帯電用の帯電制御剤としては、第4級アンモニウム系化合物が挙げられる。また、負帯電用の帯電防止剤としては、アルキルサリチル酸の金属錯体、極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤等が挙げられる。オフセット防止剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等が挙げられる。
【0074】
流動性、粉体保存性の向上、摩擦帯電制御、転写性能、クリーニング性能向上等のために、無機粒子あるいは有機粒子を外添剤としてトナー表面に添加してもよい。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム等が挙げられる。また目的に応じて無機粒子に公知の表面処理を施してもよい。また、有機粒子としては、フッ化ビニリデン、メチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート等を構成成分とする乳化重合体、ソープフリー重合体等が挙げられる。
【0075】
なお、電子写真用現像剤の具体的な構成の一例は「実施例」として示す。
【0076】
(印刷用インク)
画像形成材料を印刷用インクとした場合の組成について説明する。印刷用インクは、水、水溶性の有機溶媒、赤外線吸収剤、及び蛍光物質を含む水性インクとしてもよい。また、印刷用インクは、有機溶媒、赤外線吸収剤、及び蛍光物質を含む油性インクとしてもよい。印刷用インクは、樹脂、酸化防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。有機溶媒、各種添加剤としては、従来公知の材料を用いればよい。印刷用インクは、従来公知の製造方法により製造される。
【0077】
インクジェット印刷用インクは、水を含有する水性インクとしてもよい。インクの乾燥防止及び浸透性を向上させるために、水溶性の有機溶剤を更に含んでいてもよい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。また、有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−アルキルピロリドン類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、メタノール、ブタノール、フェノールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等のグリコールエーテル類等が挙げられる。使用される有機溶媒は1種類でも2種類以上でもよい。有機溶媒は、赤外線吸収剤及び蛍光物質の溶解度等を考慮して選択される。有機溶媒の含有率は、1質量%以上60質量%以下としてもよい。
【0078】
また、インクジェット印刷用インクは、インクジェットプリンターのシステムに要求される諸条件を満たすために、インクの成分として従来知られている添加物を含んでいてもよい。添加物としては、pH調製剤、比抵抗調製剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、金属封鎖剤等が挙げられる。pH調整剤としては、アルコールアミン類、アンモニウム塩類、金属水酸化物等が挙げられる。比抵抗調製剤としては、有機塩類、無機塩類が挙げられる。金属封鎖剤としては、キレート剤等が挙げられる。
【0079】
また、インクジェット印刷用インクは、噴封ノズル部の閉塞やインク吐出方向の変化等が生じない程度に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂等の水溶性樹脂を含んでいてもよい。
【0080】
他の印刷用インクとしては、ポリマーや有機溶剤を含有する油性インクとしてもよい。ポリマーとしては、一般的には、蛋白質、ゴム、セルロース類、シエラック、コパル、でん粉、ロジン等の天然樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂、レゾール型フェノール樹脂尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。有機溶媒としては、上記インクジェット印刷用インクの説明において例示された有機溶媒が挙げられる。
【0081】
また、他の印刷用インクは、印刷皮膜の柔軟性や強度を向上させるための可塑剤、粘度調整、乾燥性向上のための溶剤、乾燥剤、粘度調整剤、分散剤、各種反応剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0082】
なお、印刷用インクの具体的な構成の一例は「実施例」として示す。
【0083】
<画像形成装置>
次に、本実施の形態に係る画像形成装置について説明する。本実施の形態では、上記の電子写真用現像剤(以下では、「赤外線吸収トナー」という。)を用いて、画像保持媒体上に潜像画像を形成する電子写真方式の画像形成装置について説明する。なお、以下では、画像保持媒体が「用紙」である場合について説明する。従って、画像保持媒体10を「用紙10」と言い換える。
【0084】
図2は画像形成装置の構成の一例を示す概略構成図である。図3は図2に示す画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。図2及び図3に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置14は、制御部18、操作表示部20、画像読取部22、画像形成部24、用紙供給部26、用紙排出部28、画像検査部30、通信部32、及び記憶部34を備えている。画像形成部24、用紙供給部26、用紙排出部28、及び画像検査部30は、点線で図示した用紙搬送路に沿って、用紙供給部26、画像形成部24、画像検査部30、用紙排出部28の順序で配置されている。
【0085】
制御部18は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。即ち、制御部18は、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)18A、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)18B、プログラムの実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)18C、各種情報を記憶する不揮発性メモリ18D、及び入出力インターフェース(I/O)18Eを備えている。CPU18A、ROM18B、RAM18C、不揮発性メモリ18D、及びI/O18Eの各々は、バス18Fを介して接続されている。
【0086】
操作表示部20、画像読取部22、画像形成部24、用紙供給部26、用紙排出部28、画像検査部30、通信部32、及び記憶部34の各部は、制御部18のI/O18Eに接続されている。制御部18は、操作表示部20、画像読取部22、画像形成部24、用紙供給部26、用紙排出部28、画像検査部30、通信部32、及び記憶部34の各部を制御する。なお、画像形成装置14は、複数の搬送ローラ21を有している。複数の搬送ローラ21は、点線で図示した用紙搬送路に沿って配置されている。複数の搬送ローラ21は、画像形成動作に応じて用紙10を搬送する。
【0087】
操作表示部20は、スタートボタンやテンキー等の各種ボタン、設定画面等の各種画面を表示するためのタッチパネルなどを含んで構成されている。操作表示部20は、上記構成により、ユーザの操作を受け付けると共に、ユーザに各種情報を表示する。画像読取部22は、CCDイメージセンサ等、用紙上に形成された画像を光学的に読み取る画像読み取り装置、用紙を走査するための走査機構等を含んで構成されている。画像読取部22は、上記構成により、画像読取部22に置かれた原稿用紙の画像を読み取り、画像情報を生成する。
【0088】
画像形成部24は、電子写真方式により用紙10上に画像を形成するものである。画像形成部24は、画像形成ユニット50、定着装置52を含んで構成されている。画像形成ユニット50は、感光体ドラム50A、帯電装置50B、露光装置50C、現像装置50D、転写装置50E、クリーニング装置50F等を含んで構成されている。感光体ドラム50Aは、矢印A方向に回転するように構成されている。定着装置52は、用紙10を加熱及び加圧するローラを含んで構成されている。
【0089】
画像形成部24は、具体的には以下の手順で画像を形成する。感光体ドラム50Aが、帯電装置50Bにより帯電される。露光装置50Cは、帯電された感光体ドラム50A上を画像に応じた光で露光する。これにより、感光体ドラム50A上に画像に応じた静電潜像が形成される。現像装置50Dは、感光体ドラム50A上に形成された静電潜像をトナーにより現像する。転写装置50Eは、感光体ドラム50A上に形成されたトナー像を用紙10に転写する。定着装置52は、用紙10上に転写されたトナー像を定着させる。本実施の形態では、電子写真用現像剤として赤外線吸収トナーが用いられる。用紙10上には、赤外線吸収トナーにより潜像画像12が形成される。なお、赤外線吸収トナーは赤外線を吸収して発熱する。このため、定着装置52は、加熱及び加圧するローラに代えて、フラッシュランプ等の定着用光源を含む光定着器として構成してもよい。
【0090】
用紙供給部26は、用紙10が収容される用紙収容部54、用紙収容部54から画像形成部24に用紙10を供給する供給機構等を含んで構成されている。供給機構は、用紙収容部54から用紙10を取り出す取出ローラ56、搬送ローラ21等で構成されている。用紙10の種類やサイズに応じて、複数の用紙収容部54を備えていてもよい。用紙供給部26は、上記構成により、画像形成部24に用紙10を供給する。
【0091】
用紙排出部28は、用紙10が排出される排出部60、不要な用紙10が廃棄される廃棄部62、用紙10を排出部60上に排出させるための排出機構等を含んで構成されている。排出機構は、不要な用紙10が廃棄部62に廃棄されるように、搬送ローラ21の外に、用紙搬送路を切り替える搬送路切替部58を含んで構成されている。用紙排出部28は、上記構成により、画像検査部30による検査結果に応じて、画像形成部24で画像が形成された用紙10を、排出部60に排出するか、廃棄部62に廃棄する。
【0092】
画像検査部30は、画像形成部24により用紙10上に形成された画像を検査する。即ち、画像検査部30は、用紙10上に形成された検査対象画像を読み取って、「検査画像情報」を生成する。従って、画像検査部30は、用紙10上に形成された画像を光学的に読み取り、画像情報を生成する画像読み取り装置等を含んで構成されている。画像検査部30の具体的な構成については後述する。
【0093】
通信部32は、有線又は無線の通信回線を介して外部装置と通信を行うためのインターフェースである。例えば、LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されたコンピュータと通信を行うためのインターフェースとして機能する。通信部32は、コンピュータ等の外部装置から、例えば後述する「基準画像情報」等の画像情報、画像形成に要する画像形成情報を通信により取得する。
【0094】
記憶部34は、ハードディスク等の記憶装置を備えている。記憶部34には、ログデータ等の各種データ、制御プログラム等が記憶される。本実施の形態では、後述する画像検査処理の制御プログラムが、記憶部34に予め記憶されている場合について説明する。予め記憶された制御プログラムは、CPU18Aにより読み出されて実行される。
【0095】
なお、制御部18には、各種ドライブが接続されていてもよい。各種ドライブは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な可搬性の記録媒体からデータを読み込んだり、記録媒体に対してデータを書き込んだりする装置である。各種ドライブを備える場合には、可搬性の記録媒体に制御プログラムを記録しておいて、これを対応するドライブで読み込んで実行してもよい。
【0096】
ここで、画像検査部30の構成を具体的に説明する。図4(A)は画像検査部の構成の一例を示す概略図である。図4(A)に示すように、画像検査部30は、供給された用紙10の画像形成面10Aに対向するように配置されている。画像検査部30は、用紙10に励起光を照射する励起光源40、結像光学系42、CCDイメージセンサ等の光学的な画像読み取り装置44を含んで構成されている。
【0097】
本実施の形態では、蛍光物質を含む赤外線吸収トナーにより、用紙10上に潜像画像12が形成される。このため、用紙10に励起光が照射されると、潜像画像12を構成する蛍光物質から可視領域の蛍光が発生して、潜像画像12が可視画像として読み取られる。従って、画像読み取り装置44は、可視画像を読み取る通常のイメージセンサにより構成されている。結像光学系42は、潜像画像12が用紙10上のどの位置に形成されていても、用紙10上の潜像画像12から発生した蛍光が、画像読み取り装置44の検出面に結像するように配置されている。
【0098】
図4(A)に示すように、潜像画像の検査を行う場合には、励起光源40が点灯して、用紙10に励起光が照射される。励起光の照射により潜像画像12から発生した蛍光は、画像読み取り装置44の検出面に結像される。画像読み取り装置44は、用紙10上の画像を読み取って、検査画像情報を生成する。上記の通り、潜像画像12は可視画像として読み取られる。
【0099】
以上説明した通り、本実施の形態に係る画像形成装置14は、装置内に画像検査部30を備えているので、用紙10上に目視できない潜像画像12が形成された場合でも、励起光源40の点灯により潜像画像12が可視化されて、可視画像用の画像読み取り装置44により潜像画像12が可視画像として読み取られる。これにより、潜像画像12の検査が行われる。
【0100】
なお、上記の画像形成装置の構成は一例であり、不要な機能部を削除したり、新たな機能部を追加したり、各部の構成、配置を変更してもよい。例えば、上記では、画像形成部24が、赤外線吸収トナーにより潜像画像を形成する単一の画像形成ユニット50を備える場合について説明したが、画像形成部24が複数の画像形成ユニット50を備えていてもよい。以下では、赤外線吸収トナー像を形成する画像形成ユニット50を、「画像形成ユニット50IR」と称する。
【0101】
画像形成部24は、画像形成ユニット50IRの外に、黒色のトナー像を形成する画像形成ユニット50Kを備えていてもよい。画像形成ユニット50Kにより、用紙10上に白黒画像が形成される。また、画像形成ユニット50IRの外に、イエローのトナー像を形成する画像形成ユニット50Y、マゼンダのトナー像を形成する画像形成ユニット50M、シアンのトナー像を形成する画像形成ユニット50C、黒色のトナー像を形成する画像形成ユニット50Kを備えていてもよい。画像形成ユニット50Y、50M、50C、50Kの各々により、用紙10上に対応する色画像が形成される。また、中間転写体等を用いて各色画像が重ねられる構成とした場合には、用紙10上に多色画像が形成される。
【0102】
潜像画像の外に可視画像を形成する画像形成部24とする場合には、図4(B)に示すように、画像検査部30に白色光源46を追加して、用紙上に形成された可視画像を検査するようにしてもよい。可視画像を検査する従来の画像検査装置は、白色光源、結像光学系、画像読み取り装置を含んで構成されている。換言すれば、従来の画像検査装置の装置構成に、励起光源40を追加するだけで、潜像画像と可視画像の両方を検査する画像検査部30が構成される。
【0103】
可視画像の検査を行う場合には、白色光源46が点灯して、可視画像が形成された用紙10に白色光が照射される。白色光の照射により用紙10で反射された反射光は、画像読み取り装置44の検出面に結像される。画像読み取り装置44は、用紙10上の可視画像を読み取って、検査画像情報を生成する。
【0104】
例えば、潜像画像検査モード、可視画像検査モード等、複数のモードを用意し、操作者によるモード設定に応じて画像形成や画像検査を行うようにしてもよい。潜像画像検査モードでは、用紙10上に潜像画像12が形成され、励起光源40が点灯して検査対象画像が読み取られる。潜像画像12は可視画像として読み取られる。可視画像検査モードでは、用紙10上に可視画像が形成され、白色光源46が点灯して検査対象画像(可視画像)が読み取られる。
【0105】
<画像検査処理>
次に、画像形成装置14において実施される「画像検査処理」について説明する。本実施の形態に係る画像検査処理の制御プログラムは、制御部18のCPU18Aにより実行される。以下では、潜像画像検査モードが設定されており、上記の画像形成装置14により用紙10上に潜像画像12が形成され、検査される場合について説明する。
【0106】
まず、画像検査処理の概要について説明する。画像検査処理では、予め定めた基準画像に基づいて、検査対象画像の良否が判定される。また、良否の判定に留まらず、検査対象画像の良否に応じた処理を行ってもよい。この処理において「基準画像」とは、用紙10上に予め定めた潜像画像12を形成するために用意される画像である。この基準画像の画像情報が「基準画像情報」である。この処理において「検査対象画像」とは、画像形成装置14により用紙10上に潜像画像12が形成され、検査される画像である。この検査対象画像の画像情報が「検査画像情報」である。
【0107】
上記の検査対象画像と基準画像とを比較して、両画像の差異が閾値以下の場合には優良画像と判定し、両画像の差異が閾値を超える場合には欠陥画像と判定する。例えば、基準画像情報と検査画像情報との差分を算出し、算出された差分が閾値以下の場合には優良画像と判定し、算出された差分が閾値を超える場合には欠陥画像と判定する。基準画像情報と検査画像情報とを対応する画素毎に比較することで、基準画像情報と検査画像情報との差分が算出される。両画像が二値画像である場合には、各画素の画素値は「0」又は「1」となる。従って、画素値の異なる画素の個数に応じて、両画像の差分が算出される。
【0108】
本実施の形態では、図1(C)に示すように、F字状の潜像画像12を用紙10上に形成するために用意される二値画像を「基準画像」とする。F字状の潜像画像12は、第1の領域12A、第2の領域12B及び第3の領域12Cから構成されている。例えば、図5(A)に示すように、F字状の潜像画像12が回転する等、潜像画像12が基準画像とは異なる位置に形成された検査対象画像は、欠陥画像と判定される。また、図5(B)に示すように、潜像画像12の第3の領域12Cが欠落する等、基準画像の一部が欠けた検査対象画像は、欠陥画像と判定される。
【0109】
図6は画像検査処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理は、通信部32を介して情報を受信する等により、潜像画像の形成及び検査に要する画像情報及び画像形成情報が取得されると共に、操作表示部20の操作により潜像画像検査モードが設定される等により、潜像画像の画像検査処理の開始が指示された場合に開始される。
【0110】
まず、ステップ100で、取得された画像情報及び画像形成情報を画像形成部24に供給し、取得された情報に基づいて検査対象画像を形成するように画像形成部24に指示する。画像形成部24では、取得された情報に基づいて用紙10上に潜像画像12が形成される。
【0111】
次に、ステップ102で、画像検査部30から検査画像情報を取得する。画像検査部30では、励起光源40が点灯され、用紙10に励起光が照射される。画像読み取り装置44は、潜像画像12を可視画像として読み取って、検査画像情報を生成する。生成された検査画像情報は、制御部18に出力される。
【0112】
次に、ステップ104で、基準画像情報と検査画像情報との差分を算出する。ステップ102で取得された検査画像情報を二値化処理する。基準画像情報を記憶部34から読み出す。二値化された検査画像情報と基準画像情報とを画素毎に比較して、基準画像情報と検査画像情報との差分を算出する。
【0113】
次に、ステップ106で、基準画像情報と検査画像情報との差分が閾値以下か否かを判断する。差分の「閾値」は、検査対象画像と基準画像との差異が許容範囲か否かに応じて予め設定されている。ステップ106で差分が閾値以下の場合には、肯定判定してステップ108に進む。ステップ106で差分が閾値を超える場合には、否定判定してステップ110に進む。
【0114】
ステップ108では、用紙10を排出部60に排出するように用紙排出部28に指示して、処理ルーチンを終了する。用紙排出部28では、搬送ローラ21が駆動され、潜像画像12が形成された用紙10が排出部60に排出される。一方、ステップ110では、用紙10を廃棄部62に廃棄するように用紙排出部28に指示して、処理ルーチンを終了する。用紙排出部28では、搬送路切替部58により用紙搬送路が切り替えられ、搬送ローラ21が駆動されて、潜像画像12が形成された用紙10が廃棄部62に廃棄される。
【0115】
即ち、本実施の形態では、良否の判定に留まらず、検査対象画像の良否に応じた処理が行われる。差分が閾値以下の場合には、優良画像が形成された用紙10として、通常通り排出部60に排出される。一方、差分が閾値を超える場合には、欠陥画像が形成された用紙10として、抜き取られて廃棄部62に廃棄される。
【0116】
以上説明した通り、本実施の形態に係る画像検査処理では、潜像画像検査モードが設定された場合には、用紙10上に潜像画像12が検査対象画像として形成され、励起光源40の点灯により潜像画像12が可視化されて、可視画像用の画像読み取り装置44により検査対象画像が読み取られる。また、画像検査部30による検査結果に応じて、優良画像が形成された用紙10は通常通り排出され、欠陥画像が形成された用紙10は抜き取られて廃棄される。
【0117】
上記の画像検査処理では、基準画像と検査対象画像の差異が閾値以下か否かで検査対象画像の良否を判定する例について説明したが、予め定めた基準画像に基づいて検査対象画像の良否が判定されればよく、画像検査手法はこれに限定されるものではない。例えば、基準画像と検査対象画像の類似度を算出し、算出された類似度が閾値以上か否かで検査対象画像の良否を判定してもよい。
【0118】
基準画像と検査対象画像の類似度は、例えば、基準画像の特徴量と検査対象画像の特徴量との距離に基づいて算出してもよい。特徴量としては、画像の輝度分布、画像の周波数特性、オブジェクトの形状等がある。特徴量間の距離としては、ユークリッド距離等がある。基準画像と検査対象画像の類似度が閾値以上の場合には優良画像と判定し、両画像の類似度が閾値を下回る場合には欠陥画像と判定する。
【0119】
また、二次元コード等の符号化された情報が潜像画像に埋め込まれている場合には、符号化された情報を復号し、復号して得られた情報が符号化前の情報と一致しているか否かで、検査対象画像の良否を判定してもよい。
【0120】
なお、上記では、画像形成装置で行われる画像検査処理を制御プログラムとして説明したが、各手順に対応する回路を備えたハードウエア構成としてもよい。また、上記制御プログラムの処理ルーチンは一例であり、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0121】
<変形例>
なお、本実施の形態では、画像形成装置14の内部に画像検査部30を備える例について説明したが、画像形成装置14の外部に配置され、画像形成装置14とは独立した画像検査装置としてもよい。画像検査装置は、外部の画像形成装置で潜像画像12が形成された用紙10から、検査対象画像を読み取る。画像検査装置は、上記の画像形成装置14の用紙供給部26、画像検査部30、画像検査部30を制御する制御部18、用紙を搬送する搬送機構を含んで構成される。例えば、上記の画像形成装置14の各部のうち画像形成部24を省略した構成としてもよい。この場合は、既に潜像画像12が形成された用紙10が、用紙供給部26から画像検査部30に供給される。
【0122】
また、本実施の形態では、画像形成部24により用紙10上に形成された画像を検査する例について説明したが、予め潜像画像12が形成された用紙10から検査対象画像を読み取るようにしてもよい。例えば、予め潜像画像12が形成された用紙10を、用紙供給部26から供給する。画像形成部24では画像形成を行わずに、上記用紙10を画像検査部30に供給する。画像検査部30は、供給された上記用紙10上の画像を検査する。
【0123】
なお、予め潜像画像12が形成された用紙10は、潜像画像12が形成されている面や位置が識別できない。また、用紙10の両面に潜像画像12が形成されている場合もある。従って、用紙10の両面から検査対象画像を読み取るように画像検査部30を構成してもよい。
【0124】
例えば、図2に示したように、用紙10の一方の面に対向するように第1の画像検査部30(実線で図示)を配置すると共に、用紙10の他方の面に対向するように第2の画像検査部30(点線で図示)を配置して、用紙10の両面から検査対象画像を読み取るようにしてもよい。なお、第2の画像検査部30は、用紙10の他方の面から画像を読み取れるように配置されていればよく、その位置は点線で図示した位置に限定される訳ではない。また、検査対象画像と基準画像とを比較する場合に、検査対象画像の上下を反転させて、反転させた検査対象画像と基準画像とを比較してもよい。
【0125】
或いは、用紙搬送路において用紙10の表裏を反転させる用紙反転機構(図示せず)を追加し、用紙10の一方の面から検査対象画像を読み取った後に、用紙10の表裏を反転させて画像検査部30に供給し、用紙10の他方の面から検査対象画像を読み取るようにしてもよい。
【0126】
また、本実施の形態では、画像検査部30で検査対象画像を読み取る例について説明したが、予め潜像画像12が形成された用紙10から検査対象画像を読み取る場合には、画像読取部22に励起光源を追加して、画像読取部22で検査対象画像を読み取るようにしてもよい。図7は励起光源が追加された画像読取部22の構成の一例を示す概略構成図である。
【0127】
図7に示すように、画像読取部22は、筐体70、筐体70の開口部に配置されたプラテンガラス等の光透過部72、移動しながら光透過部72上に置かれた用紙10を光走査する走査ユニット74、用紙10で反射された反射光の光路を変更するミラー等の光路変更部80、CCDイメージセンサ等の光学的な画像読み取り装置82を含んで構成されている。走査ユニット74は、用紙10に励起光を照射する励起光源76、用紙10に白色光を照射する白色光源78、ミラー等の光路調整機構を含んで構成されている。また、画像検査部30と同様に、画像読み取り装置82は、可視画像を読み取る通常のイメージセンサとして構成されている。
【0128】
図7に示すように、潜像画像の検査を行う場合には、走査ユニット74内の励起光源76が点灯して、光透過部72上に置かれた用紙10が励起光で走査される。励起光の照射により潜像画像12から発生した蛍光は、反射光と同様に光路変更部80により光路が変更されて、画像読み取り装置82の検出面に結像される。画像読み取り装置82は、潜像画像12を可視画像として読み取って、検査画像情報を生成する。
【0129】
なお、通常の原稿画像の読み取りを行う場合には、走査ユニット74内の白色光源78が点灯して、光透過部72上に置かれた原稿用紙が白色光で走査される。白色光の照射により原稿用紙で反射された反射光は、光路変更部80により光路が変更されて、画像読み取り装置82の検出面に結像される。画像読み取り装置82は、原稿用紙の画像を読み取り、画像情報を生成する。
【0130】
また、本実施の形態では、優良画像が形成された用紙10は通常通り排出され、欠陥画像が形成された用紙10は抜き取られて廃棄される例について説明したが、欠陥画像が形成された用紙と優良画像が形成された用紙とを操作者が識別できればよく、検査結果に応じた処理はこの例に限定される訳ではない。例えば、操作表示部20に、欠陥画像が形成された用紙10である旨を報知する画面を表示してもよい。また、欠陥画像が形成された用紙10を、優良画像が形成された用紙10とは位置をずらして排出する、向きを変えて排出する等の処理を行ってもよい。
【0131】
或いは、画像検査部30と排出部60との間に後処理装置(図示せず)を配置して、検査結果に応じた後処理を行ってもよい。図8(A)〜(C)は検査結果に応じた処理の一例を示す模式図である。図8(A)に示すように、欠陥画像が形成された用紙10に貫通孔16Aを形成する「穴あけ処理」を行ってもよい。また、図8(B)に示すように、欠陥画像が形成された用紙10の一部を切り取って、切り欠き16Bを形成する「切り取り処理」を行ってもよい。
【0132】
また、図8(C)に示すように、欠陥画像が形成された用紙10にスタンプを押す等して、欠陥画像であることを表示する画像16Cを形成する「画像形成処理」を行ってもよい。また、欠陥画像が形成された用紙10に付箋を付す等の「添付処理」を行ってもよい。これらの後処理は、上記の後処理装置で行う代わりに、検査結果に応じて操作者が行ってもよい。例えば、操作表示部20により欠陥画像が形成された用紙10である旨が報知された場合に、操作者が上記の後処理を行ってもよい。
【0133】
また、上記各実施形態で説明した画像保持媒体、画像形成材料、画像形成装置、画像検査処理の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
<実施例1>
加熱乾燥したフラスコに、テレフタル酸80モル%、n−ドデセニルコハク酸10モル%、及びトリメリット酸10モル%からなる酸成分100モル部と、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン65モル部と、前記酸成分に対して0.05モル%のジブチル錫オキサイドと、を容器に入れた。容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150℃〜230℃で約12時間共縮重合反応させた。次いで210℃〜250℃で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂(A)を合成した。
【0136】
ゲルパーミエーション・クロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)により、得られた非結晶性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)は14,600であり、数平均分子量(Mn)は4,700であった。
【0137】
得られた非結晶性ポリエステル樹脂(A)96質量部と、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素16質量部と、をバンバリー型混練機を用いて溶融混練し、高濃度の着色樹脂組成物を得た。該着色樹脂組成物20質量部と、カルナバワックス5質量部と、前記非結晶ポリエステル75質量部と、を酢酸エチル100質量部に分散・溶解させ分散溶液を調製した。得られた分散溶液200質量部を、カルボキシメチルセルロース1質量部と炭酸カルシウム20質量部と水100質量部との混合液中に加え、ミキサーを用いて高速撹拌して分散させ、乳化液を得た。
【0138】
この乳化液をビーカーに移し、約5倍量の水を加え、撹拌しながら45℃の温浴中で10時間保持し、前記酢酸エチルを蒸発させた。前記炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、水とトナーとの混合物を得た。最後に、水を真空乾燥機を用いて45℃で蒸発させ、トナーを得た。
【0139】
以上のようにして製造されたトナーについて、コールターカウンター[TA-II]型(アパーチャー径:50μm;コールター社製)を用いて測定したところ、体積平均粒子径は7.8μmであり、個数平均粒子径は7.0μmであった。
【0140】
トナーは、結晶性ポリエステル100質量部に対して、ペリミジン系スクアリリウム顔料が1.5質量部と、蛍光剤(Y:Eu)1.5質量部と、外添剤としてチタニア微粉末をトナー100質量部に対して1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナーを得た。
【0141】
上記の方法で得られた現像剤を、市販の電子写真複写機(富士ゼロックス社製 700 Digital Color Press)を用いて富士ゼロックス社製のJ紙を使用し画像形成を行った。10%被覆率でドットを全面に印刷した紙は、目視では画像が印刷されているか否かが確認できなかったが、UVランプ(UVP社製 MINERALIGHT LAMP MULTIBAND)にかざすと紙全体が青く発光し、視覚的に確認が可能になった。
【0142】
<実施例2>
上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素、蛍光顔料「FZ−2001(シンロイヒ社製)」、グリセリン、BCBT(ブチルカルビトール)、界面活性剤「SFN465(日信化学工業社製)」及び水の各々を、0.3:0.3:10:5:0.75:31の重量比で混合・分散した。次に、5μmフィルタに通し、ろ液をインク液とした。上記の方法で得られたインクを、市販のインクジェット(EPSON社製 PM630)を用いてJ紙に出力した。10%被覆率でドットを全面に印刷した紙は、目視では画像が印刷されているか否かが確認できなかったが、UVランプ(UVP社製 MINERALIGHT LAMP MULTIBAND)にかざすと紙全体が赤く発光し、視覚的に確認が可能になった。
【0143】
<比較例1>
蛍光剤を含有しない以外は実施例1と同じ構成のトナー、蛍光顔料を含有しない以外は実施例2と同じ構成のインクを作製した。各トナー、インクを用いて画像形成を行ったが、それぞれの印刷物については、目視では画像を確認することはできなかった。UVランプ(UVP社製 MINERALIGHT LAMP MULTIBAND)にかざしても、画像を確認することはできなかった。
【符号の説明】
【0144】
10 画像保持媒体(用紙)
12 潜像画像
14 画像形成装置
18 制御部
20 操作表示部
21 搬送ローラ
22 画像読取部
24 画像形成部
26 用紙供給部
28 用紙排出部
30 画像検査部
32 通信部
34 記憶部
40 励起光源
42 結像光学系
44 画像読み取り装置
46 白色光源
50 画像形成ユニット
52 定着装置
58 搬送路切替部
60 排出部
62 廃棄部
70 筐体
72 光透過部
74 走査ユニット
76 励起光源
78 白色光源
80 光路変更部
82 画像読み取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外領域に光吸収ピークを有する赤外線吸収剤と、
励起光の照射により可視領域の蛍光を発生する蛍光物質と、
を含む画像形成材料。
【請求項2】
前記励起光が、紫外線又は赤外線である請求項1に記載の画像形成材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成材料により潜像画像が形成された画像保持媒体。
【請求項4】
前記潜像画像が、符号化された情報を含む請求項3に記載の画像保持媒体。
【請求項5】
前記符号化された情報が、各符号の位置座標を表す位置情報を含む請求項4に記載の画像保持媒体。
【請求項6】
前記符号化された情報が、前記画像保持媒体を識別する識別情報を含む請求項4又は5に記載の画像保持媒体。
【請求項7】
請求項3から請求項6までの何れか1項に記載の画像保持媒体に保持された画像を検査する画像検査装置であって、
励起光を照射する励起光照射手段と、
前記画像保持媒体から可視画像を読み取って検査画像情報を取得する取得手段と、
を備えた画像検査装置。
【請求項8】
前記検査画像情報と予め取得された基準画像情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に応じて処理を行う処理手段と、
を更に備えた請求項7に記載の画像検査装置。
【請求項9】
前記画像保持媒体がシート状の媒体であり、
前記励起光照射手段と前記取得手段とが、前記画像保持媒体の表裏両面から可視画像を読み取るように配置された、
請求項7又は8に記載の画像検査装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の画像形成材料により画像保持媒体に画像を形成する画像形成装置。
【請求項11】
請求項7から請求項9までの何れか1項に記載の画像検査装置を備えた請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−44973(P2013−44973A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183150(P2011−183150)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】