説明

画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】画像の高コントラスト性を維持しつつカブリの発生を抑え、繰り返し使用による画像濃度の低下を抑える画像形成装置の提供。
【解決手段】導電性支持体上に、下引層及び感光層を有する電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を交流電圧に直流電圧が重畳された接触帯電方式により帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置である。前記下引層は、アミノ基を有するカップリング剤により表面処理された金属酸化物粒子及びアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を、前記金属酸化物粒子100質量部に対し1質量部以上5質量部以下で含有し、体積抵抗率が交流インピーダンス法測定で3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置およびプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成は、近年、複写機及びレーザープリンター等の画像形成装置に幅広く利用されている。
例えば、特許文献1では、除電プロセスを持たないDC直接帯電方式の電子写真装置に使用され、導電性支持体の上に電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した感光層を設けてなる電子写真感光体において、該導電性支持体と該電荷発生層との間にホールブロッキング性を有する中間層が設けられており、かつ該中間層が金属酸化物を含有することを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電子写真感光体によれば、除電手段を持たないDC直接帯電方式の電子写真装置において、帯電ムラやゴーストによる画像劣化がなく、また連続使用や環境変化の影響による画像劣化もなく、常に高画質な画像が得られるとされている。
【0004】
また、特許文献2では、導電性支持体上に少なくとも電荷ブロッキング層、中間層、感光層の順に積層されてなる電子写真静電潜像担持体であって、該電荷ブロッキング層と中間層はそれぞれが少なくともバインダー樹脂と金属酸化物粒子とを含み、該電荷ブロッキング層に含まれる金属酸化物粒子は次式、MSb(ただし、Mは、金属元素を表す。x、y、及びzは、各元素のモル比を表す。)で表される少なくとも1種の導電性粒子であり、かつ該電荷ブロッキング層中の金属酸化物粒子の容積比(容積比=含有粒子の総容積/樹脂容積)を(C1)とし、該中間層に含まれる金属酸化物粒子の容積比を(C2)とした場合、C1≦C2の関係を満たすことを特徴とする静電潜像担持体が開示されている。
【0005】
特許文献2に記載の静電潜像担持体によれば、高温高湿から低温低湿環境にわたって安定して、残留電位を抑え、高コントラストな静電潜像を形成することができ、さらに支持体からの電荷の注入をブロックする機能によって地肌汚れを大幅に低減し、優れた耐久性と高品質の画像形成を長期間にわたり安定して行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−004292号公報
【特許文献2】特開2009−025506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、画像の高コントラスト性を維持しつつ、画像のカブリの発生を抑え、繰り返し使用による画像濃度の低下を抑える画像形成装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性支持体上に、アミノ基を有するカップリング剤により表面処理された金属酸化物粒子およびアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を、前記金属酸化物粒子100質量部に対し前記電子受容性化合物を1質量部以上5質量部以下で含有し、体積抵抗率が交流インピーダンス法による測定において3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲である下引層と、感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を、交流電圧に直流電圧が重畳された接触帯電方式により帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記電子受容性化合物が、ヒドロキシアントラキノン構造を有する電子受容性化合物である請求項1に記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
導電性支持体上に、アミノ基を有するカップリング剤により表面処理された金属酸化物粒子およびアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を、前記金属酸化物粒子100質量部に対し前記電子受容性化合物を1質量部以上5質量部以下で含有し、体積抵抗率が交流インピーダンス法による測定において3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲である下引層と、感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を、交流電圧に直流電圧が重畳された接触帯電方式により帯電させる帯電手段と、
を少なくとも備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、下引層が上記特定の金属酸化物粒子および電子受容性化合物を特定の範囲で含有せず又は体積抵抗率が上記特定の範囲から外れる場合に比べて、画像の高コントラスト性を維持しつつ、画像のカブリの発生を抑え、繰り返し使用による画像濃度の低下が抑えられる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、下引層に含有される電子受容性化合物が、ヒドロキシアントラキノン構造を有する電子受容性化合物でない場合に比べて、さらに繰り返し使用による画像濃度の低下が抑えられる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、下引層が上記特定の金属酸化物粒子および電子受容性化合物を特定の範囲で含有せず又は体積抵抗率が上記特定の範囲から外れる場合に比べて、画像の高コントラスト性を維持しつつ、画像のカブリの発生を抑え、繰り返し使用による画像濃度の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の画像形成装置の基本構成を示す概略図である。
【図3】第2実施形態の画像形成装置の基本構成を示す概略図である。
【図4】プロセスカートリッジの一例の基本構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する場合がある。
【0016】
<画像形成装置>
本実施形態の画像形成装置は、電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備える。前記帯電手段は、交流電圧に直流電圧を重畳する接触帯電方式である。前記電子写真感光体は、導電性支持体と、下引層と、感光層と、を少なくとも有する。そして前記下引層は、アミノ基を有するカップリング剤により表面処理された金属酸化物粒子と、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物とを含み、前記金属酸化物粒子100質量部に対し前記電子受容性化合物を1質量部以上5質量部以下で含有する。さらに下引層の体積抵抗率は、交流インピーダンス法による測定において3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲である。
【0017】
帯電手段として、交流電圧に直流電圧を重畳する接触帯電方式を採用すると、交流成分が帯電を均一化させ、直流成分により特定の電圧に収束させるため、表面電位の均一性が得られ易くなる。よって、画質の高コントラスト性を維持する観点から、交流電圧に直流電圧を重畳する接触帯電方式の帯電手段が採用される。
【0018】
しかしながら、交流電圧に直流電圧を重畳する接触帯電方式の帯電手段を用いて、電子写真感光体の表面を帯電させると、電子写真感光体の表面電位が高くなり、画像のカブリや、繰り返し使用による画像濃度の低下(以下「サイクル安定性」と称する場合がある)が発生しやすくなる。これに対して、下引層にアミノ基を有するカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子を分散させる方策が提案される。かかる金属酸化物粒子を分散した下引層を用いることによって、下引層と電荷発生層との界面でのブロッキング能が向上し、また抵抗調整機能が調節されて、カブリの発生が抑えられ、かつ電気特性が安定化し、繰り返し使用による濃度低下が抑えられる。
【0019】
しかしながら、金属酸化物粒子の表面処理状態によってはサイクル安定性の低下を招く場合がある。これは、下引層の膜抵抗と金属酸化物粒子の表面処理状態が関係していると推測され、下引層の膜抵抗が高いほどサイクル安定性が低下することが確認されている。サイクル安定性の低下は、アミノ基を有するカップリング剤と導電性支持体の酸化還元反応による導電性支持体の腐食が原因と考えられる。特に、電子写真感光体の帯電、露光、除電を施すプロセスにおいて下引層に印加される電圧が高いほど上記現象が発生しやすく、すなわち下引層の体積抵抗率が高いほど顕著になりやすいと考えられる。また、かかる作用においては、画像の高コントラスト化のために感光体の表面電位を高めに設定することも、サイクル安定性の低下を招きやすい。
【0020】
ここで、前記下引層に、アミノ基を有するカップリング剤で表面処理した金属酸化物粒子とともに、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物を前記金属酸化物粒子100質量部に対し1質量部以上5質量部以下で含有させ、且つ前記下引層の体積抵抗率を交流インピーダンス法による測定において3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲とすることで、画像の高コントラスト性を維持しつつ、画像のカブリの発生を抑え、繰り返し使用による画像濃度の低下が抑えられることが見出された。
【0021】
前記下引層に電子受容性化合物を含有させると、アミノ基を有するカップリング剤と導電性支持体の酸化還元反応が抑制されるものと考えられる。この効果を奏させる観点から、前記電子受容性化合物は、前記金属酸化物粒子100質量部に対し1質量部以上で含有させる。一方で、電子受容性化合物の添加は抵抗率の上昇を伴うため、電子受容性化合物は、前記金属酸化物粒子100質量部に対し5質量部以下で含有させるものとする。
【0022】
さらに上述の通り、下引層の体積抵抗率が高いほど、アミノ基を有するカップリング剤と導電性支持体の酸化還元反応が促進されて、導電性支持体の腐食が進み、サイクル安定性が低下する。そこで、前記金属酸化物粒子に対して前記電子受容性化合物を上記範囲で添加した上で、下引層の体積抵抗率は1.0×10Ωm以下とする。また、下引層の体積抵抗率が低くなりすぎると、下引層中を電荷が貫通しやすくなり、部分的な感光体表面の電位低下による画質欠陥のカブリの発生となって、画像のカブリやサイクル安定性の低下を引き起こしやすくなることから、下引層の体積抵抗率は3.5×10Ωm以上とする。
【0023】
また、作用機構は明らかではないが、前記電子受容性化合物としてヒドロキシアントラキノン構造を有する材料を用いることで、よりサイクル安定性が向上する。
以下、本実施形態の画像形成装置について、部材毎に詳細に説明する。
【0024】
〔電子写真感光体〕
図1は本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を概略的に示している。図1に示した電子写真感光体1は、電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられた機能分離型の感光層3を備え、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。
なお本明細書において、絶縁性とは、体積抵抗率で1012Ωcm以上の範囲を意味する。一方、導電性とは、体積抵抗率で1010Ωcm以下の範囲を意味する。
以下、感光体1の各要素について説明する。
【0025】
−導電性支持体−
導電性支持体2としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
導電性支持体2の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0026】
導電性支持体2として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0027】
−下引層−
下引層4は、少なくとも前記金属酸化物粒子及び前記特定電子受容性化合物を含有し、必要に応じてその他の材料を含んでもよい。下引層4としては、例えば、前記金属酸化物粒子と前記特定電子受容性化合物とを結着樹脂中に分散して形成されたものが挙げられる。
【0028】
(金属酸化物粒子)
前記金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化ジルコニウム等が挙げられ、2種以上混合して用いてもよい。
金属酸化物粒子の体積平均粒径としては、例えば50μm以上200μm以下が挙げられ、60μm以上180μm以下であることが好ましく、70μm以上120μm以下であることが好ましい。
【0029】
なお、上記金属酸化物粒子の体積平均粒径の測定は、例えばレーザ回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定を行う。測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待ったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
【0030】
下引層中に含まれる金属酸化物粒子の含有量としては、例えば、下引層全体に対し、2.5質量%以上の範囲が挙げられ、10質量%以上70質量%以下の範囲であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0031】
金属酸化物粒子は、アミノ基を有するカップリング剤によって表面処理されている。
アミノ基を有するカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤などが挙げられる。特に、抵抗を調整することでカブリが抑制される表面処理剤として、シランカップリング剤が挙げられる。
【0032】
上記シランカップリング剤は、有機シラン化合物(ケイ素原子を含有する有機化合物)であり、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0033】
金属酸化物粒子が、アミノ基を有するカップリング剤によって表面処理されているかの確認は、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどによる分子構造解析よって行われる。
【0034】
金属酸化物粒子の表面処理の方法は、特に限定されないが、例えば乾式法又は湿式法が挙げられる。
乾式法にて表面処理を施す場合には、例えば、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接表面処理剤を滴下するか、又は有機溶媒に溶解させた表面処理剤を滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させる。前記滴下又は前記噴霧は、例えば溶剤の沸点以下の温度で行われる。前記滴下又は前記噴霧の後、さらに100℃以上に加熱して焼き付けを行ってもよい。
【0035】
前記湿式法としては、例えば、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌し、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、表面処理剤溶液を添加し攪拌又は分散したのち、溶剤を除去する。溶剤除去方法としては、例えば、ろ過又は蒸留が挙げられる。溶剤除去後には、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物粒子含有水分を除去してもよく、その例としては、例えば、前記表面処理剤溶液に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、又は前記溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0036】
金属酸化物粒子100質量部の表面に付着した前記表面処理剤の量(以下「表面処理量」と称する場合がある)は、例えば0.5質量部以上3質量部以下の量が挙げられ、0.5質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.75質量部以上1.30質量部以下であることがより好ましい。
上記表面処理量(すなわち、金属酸化物粒子に付着した表面処理剤の量)を測定する方法としては、例えば、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどによる分子構造解析する方法が挙げられる。
【0037】
(電子受容性化合物)
前記電子受容性化合物は、前記の通り、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物である。ここで、「アントラキノン構造を有する化合物」は、具体的には、アントラキノン及びアントラキノン誘導体から選択される少なくとも1種であり、さらに具体的には、下記一般式(1)で表される化合物を意味する。
【0038】
【化1】

【0039】
上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水酸基、メチル基、メトキシメチル基、フェニル基、アミノ基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
なお、上記一般式(1)中、m及びnがいずれも0である化合物が前記アントラキノンであり、上記一般式(1)中、m及びnの少なくとも一方が1以上4以下の整数である化合物が前記アントラキノン誘導体である。すなわち前記アントラキノン誘導体は、アントラキノンが有する水素原子の少なくとも1つが、水酸基、メチル基、メトキシメチル基、フェニル基、アミノ基等の置換基によって置換された化合物を意味する。
【0040】
前記電子受容性化合物としては、上記の中でも特に、例えば、上記一般式(1)において、m及びnがいずれも0であるアントラキノン、又は、Rが水酸基であり、mが1以上3以下であり、かつ、nが0であるヒドロキシアントラキノンが挙げられる。
前記特定電子輸送性化合物の具体例としては、例えば、アントラキノン、プルプリン、アリザリン、エチルアントラキノン、アミノヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
【0041】
下引層がアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を含有していることの確認は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどの分析方法によって行われる。
【0042】
下引層4中に含まれる電子受容性化合物の含有量としては、下引層4に含まれる金属酸化物粒子100質量部に対し、1質量部以上5質量部以下であり、2質量部以上4質量部以下であることが好ましい。
【0043】
電子写真感光体の下引層4中に含まれる金属酸化物粒子と電子受容性化合物の含有比率は、NMRスペクトル、XPS、原子吸光分析法、電子線マイクロアナライザなどの 分析方法によって確認される。
【0044】
(結着樹脂)
下引層4に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの高分子化合物、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。
【0045】
下引層中に含まれる結着樹脂の含有量としては、例えば、下引層全体に対し、5質量%以上60質量%以下の範囲が挙げられ、10質量%以上55質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
(その他添加物)
下引層4には、表面粗さ調整のために樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等が挙げられる。
また、表面粗さ調整のために下引層4の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、例えば、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0047】
さらに下引層4には、硬化剤や硬化触媒を添加してもよい。硬化剤および硬化触媒を添加すると、硬化反応が十分となって下引層4からの不要な溶出が抑えられ、残留電位の上昇や感度低下が抑えられる。
【0048】
前記硬化剤としては、ブロック化イソシアネート化合物、メラミン樹脂などが挙げられ、ブロック化イソシアネート化合物が好適に用いられる。ブロックイソシアネート化合物はイソシアネート基がブロック化剤でマスクされているため、塗工液が経時でゲル化し増粘するのが抑えられ、作業性に優れる。
【0049】
前記硬化触媒としては、一般に用いられている公知の材料が挙げられ、その中でも酸触媒、アミン系触媒、金属化合物系触媒から選択することが好ましい。なお、硬化剤としてメラミン樹脂を用いた場合には酸触媒が、ブロックイソシアネート化合物を用いた場合にはアミン系触媒又は金属化合物系触媒を用いることが好ましい。金属化合物系触媒としては、例えば、酸化第一錫、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ナフテン酸亜鉛、三塩化アンチモン、カリウムオレート、ナトリウムO−フェニルフェネート、硝酸蒼鉛、塩化第二鉄、テトラ−n−ブチルチン、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、コバルト2−エチルヘキソエート、第二2−エチルヘキソエート鉄等が挙げられる。
前記硬化触媒の添加量は、前記硬化剤に対して0.0001質量%以上0.1質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.01質量%以下がより好ましい。
【0050】
(下引層の形成)
下引層4の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた塗布液(下引層形成用の塗布液)が使用される。
溶媒としては、例えば有機溶剤が挙げられ、具体的には、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;等が挙げられる。上記溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよく、特に限定されないが、上記結着樹脂を溶解する溶剤を用いることがよい。
【0051】
下引層形成用の塗布液に用いる溶媒の量は、上記結着樹脂が溶解する量であれば特に限定されないが、例えば、結着樹脂1質量部に対し、0.05質量部以上200質量部以下が挙げられる。
【0052】
下引層形成用の塗布液中に金属酸化物粒子を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機等が挙げられる。また、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などの方法を用いてもよい。
得られる下引層4の体積抵抗率を後述の規定の範囲内とするために、適切な分散方法を選択することが望ましく、具体的には、ガラスビーズを用いたサンドミル、ボールミルなどで分散することが好適である。ガラスビーズの粒径は、用いる金属酸化物粒子や結着樹脂などの成分に応じて調節され、具体的には、0.1mm以上10mm以下の粒径が挙げられる。
【0053】
下引層形成用の塗布液を導電性支持体2上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0054】
下引層形成用の塗布液を導電性支持体2上に塗布した後、乾燥や硬化のための加熱を行うことが好ましい。硬化剤や硬化触媒を用いた場合の硬化温度および加熱時間は、用いた硬化剤や硬化触媒の種類に応じて調整することが望ましく、具体的には例えば、160℃以上200℃以下の温度で、15分以上40分以下加熱することが挙げられる。
【0055】
(下引層の物性)
下引層4の厚さは10μm以上が望ましく、15μm以上40μm以下がより望ましい。
【0056】
下引層4の体積抵抗率は、交流インピーダンス法による測定において、3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲であり、4.0×10Ωm以上9.0×108Ωm以下の範囲であることが好ましい。
【0057】
下引層4の体積抵抗率の詳細な測定方法は、以下の通りである。
まず、下引層4のインピーダンスを測定する。インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプ等の導電性支持体を陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定する。この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで下引層4の体積抵抗率を得る。
【0058】
なお、電子写真感光体から、体積抵抗率測定用の下引層試料を作製する方法は、以下の通りである。
例えば、下引層を被覆している電荷発生層、電荷輸送層等の塗膜をアセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等の溶媒を用いて除去し、露出された下引層上に真空蒸着法やスパッタ法等により金電極を装着することで、体積抵抗率測定用の下引層試料とする。
【0059】
下引層4の体積抵抗率を上記範囲内に調整する方法としては、例えば、前記金属酸化物粒子の添加量や粒径を調整したり、前記下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の分散方法を変更したりする方法が挙げられる。
前記金属酸化物粒子の粒径が大きくなるにつれ、下引層4の体積抵抗率は低下する傾向にある。また、前記金属酸化物粒子の添加量を多くするにつれ、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。
また、前記下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の分散性を向上させると、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。具体的には、下引層形成用塗布液の分散処理時間を長くするにつれ、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。
【0060】
−中間層−
電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引層4上に必要に応じて中間層(図示せず)をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などがある。
中間層の形成は、例えば上記結着樹脂を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法が用いられる。
中間層の厚さは例えば0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。
【0061】
−電荷発生層−
電荷発生層5は、電荷発生材料が結着樹脂中に分散して形成されている。
電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用され、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶等が使用される。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して使用される。
【0062】
電荷発生層における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いられる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、使用する材料にもよるが例えば10:1から1:10の範囲である。
【0063】
電荷発生層5の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。
電荷発生材料を結着樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散手段としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や、液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0064】
このようにして得られる電荷発生層形成用の塗布液を下引層4上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層5の厚さは、望ましくは0.01μm以上5μm以下の範囲に設定される。
【0065】
−電荷輸送層−
電荷輸送層6は、例えば、電荷輸送材料を結着樹脂中に分散して形成される。
かかる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用する。
【0066】
結着樹脂としては、例えば、ビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられ、単独又は2種以上混合して用いる。
【0067】
また、電荷輸送層6が電子写真感光体の表面層(感光層の導電性支持体2から最も遠い側に配置される層)である場合、電荷輸送層6に潤滑性粒子(例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子)を含有させてもよい。これらの潤滑性粒子は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
さらに、電荷輸送層6が電子写真感光体の表面層である場合、電荷輸送層6にフッ素変性シリコーンオイルを添加してもよい。フッ素変性シリコーンオイルとしては、例えばフルオロアルキル基を有する化合物が挙げられる。
【0069】
なお、電荷輸送層6中における電荷輸送材料と結着樹脂との質量比としては、例えば10:1から1:5の範囲が挙げられる。すなわち、電荷輸送層6全体に対する電荷輸送材料の含有量としては、例えば17質量%以上91質量%以下の範囲が挙げられる。
【0070】
電荷輸送層6は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用の塗布液を用いて形成される。
上記溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合して使用される溶剤は、混合溶剤として結着樹脂を溶解するものであれば、いかなるものでもよい。
【0071】
上記電荷輸送層形成用の塗布液中に前記潤滑性粒子を分散させるための分散方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等のメディアレス分散機を利用する方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0072】
電荷輸送層6の形成方法としては、例えば、下引層4及び電荷発生層5が形成された導電性支持体2の電荷発生層5上に、上記電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、電荷発生層6を形成する方法が挙げられる。
上記電荷輸送層形成用の塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
そして上記塗布液を電荷発生層5上に塗布した後、加熱乾燥工程により塗布液中の溶剤を除去する。電荷輸送層6の膜厚としては、例えば5μm以上50μm以下の範囲が挙げられる。
【0073】
画像形成装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3を構成する各層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0074】
なお、本実施形態の感光体1は、電荷輸送層6が最表面層であるが、電荷輸送層上にさらに保護層が形成された構成であってもよい。
次に、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置について説明する。
【0075】
<画像形成装置>
−第1実施形態−
図2は、第1実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。
図2に示す画像形成装置200は、例えば、上記実施形態の電子写真感光体1と、電源209に接続され、電子写真感光体1を帯電させる接触帯電方式の帯電装置208(帯電手段)と、帯電装置208により帯電された電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成する露光装置210(静電潜像形性手段)と、露光装置210により形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211(現像手段)と、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212(転写手段)と、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213(トナー除去手段)と、電子写真感光体1の残留電位を除去する除電器214(除電手段)と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215(定着手段)と、を備える。なお、例えば、除電器214は必ずしも設けられている必要はない。
【0076】
帯電装置208は帯電部材を有しており、感光体1を帯電させる際には帯電部材に電圧が印加される。電圧の範囲としては、本実施形態では直流電圧に交流電圧を重畳する形態であるので、印加する電圧は、要求される感光体帯電電位に応じて、正又は負の50V以上2000V以下の直流電圧に400V以上1800V以下の交流電圧を重畳する形式が挙げられる。交流電圧の周波数は、例えば50Hz以上20000Hz以下が挙げられる。
【0077】
帯電部材としては、例えば、ローラ、ブラシ、フィルム等が挙げられる。その中でもローラ状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」と称する場合がある)としては、例えば電気抵抗が10Ω以上10Ω以下の範囲に調整された材料から構成されるものが挙げられる。また帯電ローラは、単層でもよく、複数の層から構成されていてもよい。
帯電部材として帯電ローラを用いる場合、感光体1に接触する圧力としては、例えば、250mgf以上600mgf以下の範囲が挙げられる。
【0078】
帯電部材を構成する材質としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等で構成されるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合したもの等が挙げられる。
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の手法により、積層して用いてもよい。
【0079】
帯電部材として帯電ロールを用いる場合、帯電ロールを感光体1の表面に接触させることにより、帯電手段が駆動手段を有していなくても感光体1に従動して回転するが、帯電ロールに駆動手段を取り付け、感光体1と異なる周速度で回転させてもよい。
【0080】
露光装置210としては、公知の露光手段が用いられる。具体的には、例えば、半導体レーザ、LED(Light Emitting Diode)、液晶シャッター等の光源により露光する光学系装置等が用いられる。書きこみ時の光量としては、例えば、感光体表面上で0.5mJ/m以上5.0mJ/mの範囲が挙げられる。
【0081】
現像装置211としては、例えば、キャリアとトナーとを含む現像剤が付着した現像ブラシ(現像剤保持体)を静電潜像保持体に接触させて現像させる二成分現像方式の現像手段、導電ゴム弾性体搬送ロール(現像剤保持体)上にトナーを付着させ静電潜像保持体にトナーを現像する接触式一成分現像方式の現像手段等が挙げられる。
トナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されない。具体的には、例えば、少なくとも結着樹脂が含まれ、必要に応じて着色剤、離型剤等が含まれたトナーであってもよい。
【0082】
トナーを製造する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、通常の粉砕法、分散媒中で作製する湿式溶融球形化法、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法によるトナー製造法等が挙げられる。
【0083】
現像剤がトナーとキャリアとを含む二成分現像剤である場合、キャリアとしては特に制限はなく、例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物などの芯材のみからなるキャリア(ノンコートキャリア)、これら芯材の表面に樹脂層を設けた樹脂コートキャリア等が挙げられる。二成分現像剤では、例えばトナーとキャリアとの混合比(質量比)として、トナー:キャリア=1:100から30:100の範囲が挙げられ、3:100から20:100の範囲であってもよい。
【0084】
転写装置212としては、ローラ状の接触型帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、又はコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0085】
トナー除去装置213は、転写工程後の電子写真感光体1の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体1は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。トナー除去装置213としては、異物除去部材(クリーニングブレード)の他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等が用いられるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
なお、例えば感光体1の表面にトナーが残留しにくい場合など、残留トナーが問題にならない場合は、トナー除去装置213は設ける必要がない。
【0086】
除電器214は、感光体1の残留電位を除電することで、残留電位が次のサイクルに持ち込まれるのを防止する。本実施形態では、残留電位が生じにくい感光体を用いているため、除電器214を設けなくてもよい。
【0087】
画像形成装置200の基本的な作像プロセスについて説明する。
まず、帯電装置208が感光体1の表面を、定められた電位に帯電させる。次に、帯電された感光体1の表面を、画像信号に基づいて、露光装置210によって露光して静電潜像を形成する。
【0088】
次に、現像装置211の現像剤保持体上に現像剤が保持され、保持された現像剤が感光体1まで搬送され、現像剤保持体と感光体1とが近接(又は接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像となる。
現像されたトナー像は、転写装置212の位置まで搬送され、転写装置212によって被転写媒体500に直接転写される。
【0089】
次いで、トナー像が転写された被転写媒体500は、定着装置215まで搬送され、定着装置215によってトナー像が被転写媒体500に定着される。定着温度としては、例えば100℃以上180℃以下が挙げられる。
【0090】
一方、トナー像が被転写媒体500に転写された後、転写されずに感光体1に残留したトナー粒子がトナー除去装置213との接触位置まで運ばれ、トナー除去装置213によって回収される。
そして残留トナーが回収された後、除電器214によって、感光体1に残留した残留電位が除電される。
以上のようにして、画像形成装置200による画像形成が行われる。
【0091】
−第2実施形態−
図3は第2実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。図3に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体1a,1b,1c,1dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。例えば、感光体1aがイエロー、感光体1bがマゼンタ、感光体1cがシアン、感光体1dがブラックの色の画像をそれぞれ形成する。
また、図3に示す画像形成装置220は、感光体表面のトナー像が転写された後、感光体表面に残留した電荷を除去する除電手段を備えない、イレーズレス方式の画像形成装置である。
【0092】
ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体1a,1b,1c,1dは、それぞれ本実施形態の電子写真感光体である。
電子写真感光体1a,1b,1c,1dはそれぞれ一方向(紙面上は反時計回り)に回転し、その回転方向に沿って帯電ロール402a,402b,402c,402d、現像装置404a,404b,404c,404d、1次転写ロール410a,410b,410c,410d、クリーニングブレード415a,415b,415c,415dが配置されている。現像装置404a,404b,404c,404dはそれぞれトナーカートリッジ405a,405b,405c,405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーを供給し、また、1次転写ロール410a,410b,410c,410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体1a,1b,1c,1dに接している。
【0093】
さらに、ハウジング400内にはレーザ光源(露光装置)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体1a,1b,1c,1dの表面に照射する。これにより、電子写真感光体1a,1b,1c,1dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニング(トナー等の異物除去)の各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。そして、中間転写ベルト409上にトナー像が転写された後の電子写真感光体1a,1b,1c,1dは、表面の電荷を除去する工程を経ずに次の画像形成プロセスが行われる。
【0094】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、背面ロール408及び支持ロール407によって張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転する。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して背面ロール408と接するように配置されている。背面ロール408と2次転写ロール413とに挟まれた位置を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406と対向して配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0095】
また、ハウジング400内には被転写媒体を収容する容器411が設けられており、容器411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413とに挟まれた位置、さらには相互に接する2個の定着ロール414に挟まれた位置に順次移送された後、ハウジング400の外部に排出される。
【0096】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよいし、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合、中間転写体の基材を構成する樹脂材料としては、公知の樹脂が用いられる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いてもよい。
【0097】
また、上記実施形態にかかる被転写媒体とは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。
また上記実施形態においては、帯電ロール402a,402b,402c,402dは、直流電圧に交流電圧を重畳する方式が採用される。
【0098】
<プロセスカートリッジ>
図4は、本実施形態の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの一例の基本構成を概略的に示している。このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1と共に、電子写真感光体1を帯電させる接触帯電方式の帯電装置208、露光により電子写真感光体1上に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213、露光のための開口部218、及び、除電露光のための開口部217を、取り付けレール216を用いて組み合わせて一体化したものである。
【0099】
そして、このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成する。
プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1、帯電装置208、現像装置211、トナー除去装置213、露光のための開口部218、及び除電露光のための開口部217のほかに、電子写真感光体1の表面を露光する露光装置(図示せず)を備えていてもよい。
なお、本実施形態の電子写真感光体では、電子写真感光体1と帯電装置208とを少なくとも備えていればよい。
【実施例】
【0100】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0101】
[電子写真感光体の作製]
<実施例1>
−下引層の形成−
酸化亜鉛粒子(テイカ社製、平均粒子径:70nm、比表面積値:15m/g)60質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(表面処理剤)として、KBM603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)を酸化亜鉛粒子100質量部に対し1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて除去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子を得た。
【0102】
前記シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子100質量部と、電子受容性化合物としてアントラキノン1質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)22.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)25質量部とを、メチルエチルケトン142質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.008質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)6.5質量部とを添加し、下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、24分の乾燥硬化を行い、厚さ15μmの下引層を得た。
【0103】
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用の塗布液を前記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0104】
−電荷輸送層の形成−
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)8質量部と、フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量:30000)0.015質量部と、テトラヒドロフラン4質量部と、トルエン1質量部と、を20℃の液温に保って48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを得た。
【0105】
次に、電荷輸送物質として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部と、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6質量部と、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1質量部と、を混合して、テトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解して、混合溶解液Bを得た。
【0106】
この混合溶解液Bに前記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、4900N/cm(500kgf/cm)まで昇圧しての分散処理を6回繰り返した。ここにフッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越化学工業社製)を5ppmとなるように添加し、撹拌して電荷輸送層形成用の塗布液を得た。
【0107】
この塗布液を電荷発生層上に32.0μmもしくは15.0μm塗布して140℃で25分間乾燥して電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A1、15.0μmのものを感光体B1とした。
【0108】
<実施例2>
下引層の作製において、電子受容性化合物を5質量部とし、酸化亜鉛粒子の平均粒子径を100nmとした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A2、15.0μmのものを感光体B2とした。
【0109】
<実施例3>
下引層の作製において、電子受容性化合物を1質量部ととした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A3、15.0μmのものを感光体B3とした。
【0110】
<実施例4>
下引層の形成において、電子受容性化合物を5質量部とし、サンドミルによる分散時間を2時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A4、15.0μmのものを感光体B4とした。
【0111】
<実施例5>
下引層の作製において、電子受容性化合物を3質量部とし、サンドミルによる分散時間を2時間とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A5、15.0μmのものを感光体B5とした。
【0112】
<実施例6>
下引層の作製において、電子受容性化合物をプルプリンとした以外は実施例5と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A6、15.0μmのものを感光体B6とした。
【0113】
<実施例7>
下引層の作製において、酸化亜鉛粒子のシランカップリング剤の処理量を0.75質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A7、15.0μmのものを感光体B7とした。
【0114】
<実施例8>
下引層の作製において、酸化亜鉛粒子のシランカップリング剤の処理量を1.30質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A8、15.0μmのものを感光体B8とした。
【0115】
<実施例9>
下引層の作製において、シランカップリング剤をKBM903(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A9、15.0μmのものを感光体B9とした。
【0116】
<比較例1>
下引層の作製において、電子受容性化合物を2質量部とし、サンドミルによる分散時間を7時間とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A10、15.0μmのものを感光体B10とした。
【0117】
<比較例2>
下引層の作製において、電子受容性化合物を2質量部とし、サンドミルによる分散時間を3時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A11、15.0μmのものを感光体B11とした。
【0118】
<比較例3>
下引層の作製において、電子受容性化合物を6質量部とし、サンドミルによる分散時間を3時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A12、15.0μmのものを感光体B12とした。
【0119】
<比較例4>
下引層の作製において、電子受容性化合物を0.5質量部とし、サンドミルによる分散時間を2時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体を作製した。以上の方法で得た感光体のうち、電荷輸送層が32.0μmのものを感光体A13、15.0μmのものを感光体B13とした。
【0120】
[下引層の抵抗率の測定]
−測定試料の作製−
上記実施例及び比較例の感光体を作製する際に用いた下引層用塗布液をそれぞれアルミプレート上にブレード塗布法により塗布、170℃24分で乾燥硬化した。この下引層単層膜について、対向電極として100nmの金電極を真空蒸着法により装着し、抵抗率測定用とした。
【0121】
−測定方法−
インピーダンスの測定には電源としてSI 1287 electrochemical interface(東陽テクニカ製)、電流計としてSI 1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ製)、電流アンプとして1296 dielectric interface(東陽テクニカ製)を用いた。
インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプを陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定し、この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで体積抵抗率を得た。実施例および比較例における体積抵抗率を表1に示す。
【0122】
[感光体における画質サイクル安定性の評価]
上記実施例および比較例で得られた感光体A1〜A13を、DocuCentre 505aの改造機に組み込み、28℃、湿度85%の条件下にて50000枚画像(A3サイズ)形成を行ったときの画像の状態を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
◎:濃度変化無し
○:わずかに濃度低下
△:濃度低下
×:著しい濃度低下
【0123】
[感光体における画質評価]
上記実施例および比較例で得られた感光体B1〜B13を、DocuCentre 505aの改造機に組み込み、20℃、湿度25%の条件下にて画像を出力し、カブリの程度を目視により評価した結果を表1に示す。評価基準は以下の通りである。
◎:カブリ発生無し
○:わずかにカブリ発生
△:カブリ発生
×:著しいカブリ発生
【0124】
[感光体における画質コントラストの評価]
上記実施例および比較例で得られた感光体A1〜A13を、DocuCentre 505aの改造機に組み込み、20℃、湿度25%の条件下にて、プロセス方向に対し用紙左半分にベタ画像(Cin100%)を印字し、ベタ画像部と非画像部の濃度をX−Rite濃度測定計で測定した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
問題なし:画像部と非画像部との濃度差が1.550以上
問題あり:画像部と非画像部との濃度差が1.550未満
【0125】
【表1】

【0126】
以上の評価結果より、実施例1〜9の電子写真感光体は、比較例1〜4の電子写真感光体に比べ、画質コントラストを維持しつつ、サイクル安定性およびカブリの発生の抑制が両立されることが確認された。
【符号の説明】
【0127】
1,1a,1b,1c,1d 電子写真感光体、2 導電性支持体、3 感光層、4下引層、5 電荷発生層、6電荷輸送層、200 画像形成装置、208 帯電装置、210 露光装置、211 現像装置、212 転写装置、213 トナー除去装置、214 除電器、215定着装置、220 画像形成装置、404a,404b,404c,404d 現像装置、500 被転写媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、アミノ基を有するカップリング剤により表面処理された金属酸化物粒子およびアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を、前記金属酸化物粒子100質量部に対し前記電子受容性化合物を1質量部以上5質量部以下で含有し、体積抵抗率が交流インピーダンス法による測定において3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲である下引層と、感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を、交流電圧に直流電圧が重畳された接触帯電方式により帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記電子受容性化合物が、ヒドロキシアントラキノン構造を有する電子受容性化合物である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
導電性支持体上に、アミノ基を有するカップリング剤により表面処理された金属酸化物粒子およびアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を、前記金属酸化物粒子100質量部に対し前記電子受容性化合物を1質量部以上5質量部以下で含有し、体積抵抗率が交流インピーダンス法による測定において3.5×10Ωm以上1.0×10Ωm以下の範囲である下引層と、感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を、交流電圧に直流電圧が重畳された接触帯電方式により帯電させる帯電手段と、
を少なくとも備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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