説明

画像形成装置および用紙搬送装置

【課題】用紙(記録シート)の後端跳ねによる騒音の抑制とガイド機能の確保を両立させることができる画像形成装置および用紙搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】外側ガイド100は、剛体ガイド(金属板110)と、弾性変形可能な弾性ガイド(樹脂製シート120)とが重ね合わせて構成される。剛体ガイドは、搬送方向下流側の端部(先端部111)のうち搬送方向と直交する幅方向における少なくとも一部が搬送方向において異なる位置になる形状で形成される。弾性ガイドは、搬送方向下流側の端部(先端部121)が、剛体ガイドの最も搬送方向下流側に位置する端部(最先端部111A)と同じ位置まで延びることで、少なくとも一部が剛体ガイドの端部からはみ出して弾性変形可能な自由端となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した搬送路を備える画像形成装置および用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、湾曲した搬送路を用紙が通り抜ける際に用紙の後端が跳ね上がることによる騒音の発生を抑制するために、搬送路を、湾曲した用紙ガイド板と、用紙ガイド板に固定される弾性フィルムとで構成したものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、用紙ガイド板の搬送方向先端の中央部が、搬送方向上流側に向けて凹むように形成されるとともに、弾性フィルムの搬送方向先端が用紙ガイド板の搬送方向先端からすべて突出している。
【0003】
そして、この技術では、用紙ガイド板によって湾曲した状態で案内される用紙の後端が、用紙ガイド板の搬送方向先端から外れて勢いよく跳ね上がろうとしても、弾性フィルムのクッション作用によって勢いが抑えられることで、後端の跳ね上がりによる騒音の発生が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−269098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像形成装置の小型化に伴い、搬送路の湾曲がますますきつくなってきている。このような湾曲した搬送路において、特定の箇所(例えば一対のローラのニップ位置など)に用紙の先端を送り込む場合、上記従来技術のようなガイドでは、腰の強い用紙であると、用紙ガイド板の先端から突出している弾性フィルムが用紙の先端で押されて撓み、用紙の先端位置を特定の箇所に送り込むことが困難となる場合があった。このような問題は、一対のローラだけではなく、ベルトユニットなどの搬送手段のニップ位置に用紙をガイドしなくてはならない技術においても同様に生じる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、用紙(記録シート)の後端跳ねによる騒音の抑制とガイド機能の確保を両立させることができる画像形成装置および用紙搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置および用紙搬送装置は、記録シートを挟持して搬送する搬送手段と、前記搬送手段に向けて前記記録シートを搬送方向に円弧状に曲げながら案内する湾曲した搬送路を形成する案内手段とを備え、前記案内手段は、前記湾曲した搬送路の外周側に配された外側ガイドと、前記外側ガイドと対向するように内周側に配された内側ガイドと、を備え、前記外側ガイドは、剛体ガイドと弾性変形可能な弾性ガイドとが重ね合わせて構成され、前記剛体ガイドは、前記搬送方向下流側の端部のうち前記搬送方向と直交する幅方向における少なくとも一部が前記搬送方向において異なる位置になる形状で形成され、前記弾性ガイドは、前記搬送方向下流側の端部が、前記剛体ガイドの最も搬送方向下流側に位置する端部と同じ位置まで延びることで、少なくとも一部が前記剛体ガイドの端部からはみ出して弾性変形可能な自由端となっていることを特徴とする。
【0008】
ここで、「搬送方向に円弧状に曲げる」とは、記録シートの幅方向から見て円弧状に曲げることを意味する。
【0009】
本発明によれば、弾性ガイドの搬送方向下流側の端部と、剛体ガイドの最も搬送方向下流側に位置する端部とが同じ位置にあるので、記録シートの先端は、弾性ガイドのみで支持されることなく、その一部が剛体ガイドで最後まで支持される。そのため、ガイド機能の確保を図ることができる。
【0010】
また、剛体ガイドは、搬送方向下流側の端部のうち搬送方向と直交する幅方向における少なくとも一部が搬送方向において異なる位置になる形状で形成されている、すなわち、剛体ガイドの搬送方向下流側の端部の一部が搬送方向上流側に向けて退いている。さらに、剛体ガイドの端部(すなわち、退いた位置にある端部)から弾性ガイドがはみ出して自由端となっている。
【0011】
したがって、記録シートの後端が外側ガイドの先端を抜ける際には、まず、剛体ガイドの退いた位置にある端部から順に記録シートの後端が外れていく。この際、剛体ガイドから外れた記録シートの後端は、自由端となる弾性ガイドで支持され、跳ねる勢いが抑えられるので、後端跳ねによる騒音が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性ガイドの搬送方向下流側の端部が、剛体ガイドの最も搬送方向下流側に位置する端部と同じ位置まで延びるとともに、少なくとも一部が剛体ガイドの端部からはみ出して弾性変形可能な自由端となっているので、記録シートの後端跳ねによる騒音の抑制とガイド機能の確保を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
【図2】外側ガイドおよび内側ガイド周りの構造を示す拡大断面図である。
【図3】外側ガイドを示す斜視図(a)と、金属板から樹脂製フィルムを剥がした状態を示す分解斜視図(b)と、樹脂製フィルムを示す平面図(c)である。
【図4】用紙の先端が外側ガイドに当接する状態を示す断面図(a)と、用紙の先端が転写ローラに到達した状態を示す断面図(b)である。
【図5】外側ガイドで用紙の先端がレジストローラの挟持部付近に案内される状態を示す拡大断面図(a)と、用紙の後端が外側ガイドから抜ける際の状態を示す拡大断面図(b)である。
【図6】樹脂製フィルムを幅狭に形成した形態を示す斜視図(a)と分解斜視図(b)である。
【図7】(a)〜(c)は外側ガイドの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、画像形成装置の一例としてのカラープリンタの全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分を詳細に説明することとする。
【0015】
図1に示すように、カラープリンタ1は、装置本体10内に、記録シートの一例としての用紙Pを供給する給紙部20と、給紙された用紙Pに画像を形成する画像形成部30と、画像が形成された用紙Pを排出する排紙部90とを備えている。
【0016】
給紙部20は、用紙Pを収容する給紙トレイ21と、給紙トレイ21内の用紙Pを画像形成部30に供給する用紙供給機構22とを備えて構成されている。用紙供給機構22は、給紙ローラ23、分離ローラ24、分離パッド25、搬送ローラ26、紙粉取りローラ27、搬送手段の一例としての互いに接する一対のローラからなるレジストローラ28、案内手段としての外側ガイド100および内側ガイド200を備えている。なお、外側ガイド100や内側ガイド200の詳細構造は、後で詳述する。
【0017】
このように構成される給紙部20では、給紙トレイ21内の用紙Pが、一枚ずつ分離されて上方へ送られ、搬送ローラ26と紙粉取りローラ27の間を通過する過程で紙粉が除去された後、外側ガイド100および内側ガイド200で後ろ向きに方向転換され、一対のレジストローラ28間(挟持部)に案内される。そして、一対のレジストローラ28が用紙Pを挟持した状態で回転することで、用紙Pが画像形成部30に搬送される。
【0018】
画像形成部30は、4つのLEDユニット40と、4つのプロセスカートリッジ50と、ベルトユニット70と、定着ユニット80とから主に構成されている。
【0019】
LEDユニット40は、後述する感光ドラム53を露光するべく、複数のLEDを備えて構成されている。
【0020】
プロセスカートリッジ50は、前後方向に並んで配置され、トナー像(現像剤像)を担持する感光体の一例としての感光ドラム53や、符号を省略して示す公知の帯電器、現像ローラ、トナー収容室などを備えて構成されている。
【0021】
ベルトユニット70は、駆動ローラ71、従動ローラ72、搬送ベルト73および転写部材の一例としての転写ローラ74を主に備えている。
【0022】
駆動ローラ71および従動ローラ72は、前後方向に離間して平行に配置され、その間にエンドレスベルトからなる搬送ベルト73が張設されている。搬送ベルト73は、各感光ドラム53と対向するように配置されている。また、搬送ベルト73の内側には、各感光ドラム53との間で搬送ベルト73を挟持する転写ローラ74が、各感光ドラム53に対向して4つ配置されている。この転写ローラ74には、転写時に定電流制御によって転写バイアスが印加される。
【0023】
定着ユニット80は、加熱ローラ81と、加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを備えている。
【0024】
このように構成される画像形成部30では、まず、各感光ドラム53の表面が、帯電器により一様に帯電された後、各LEDユニット40で露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、各感光ドラム53上に画像データに基づく静電潜像が形成される。その後、静電潜像に現像ローラよりトナーが供給されることで、感光ドラム53上にトナー像が担持される。
【0025】
次に、用紙Pが各感光ドラム53と搬送ベルト73との間で搬送される際に各転写ローラ74に転写バイアスが印加され、各感光ドラム53上に形成されたトナー像が各転写ローラ74に引き付けられて用紙P上に転写される。その後、用紙Pが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過して、用紙P上に転写されたトナー像が熱定着される。
【0026】
排紙部90は、用紙Pを搬送する複数対の搬送ローラ92を主に備えている。トナー像が転写され、熱定着された用紙Pは、搬送ローラ92によって装置本体10の外部に排出されて排紙トレイ13に蓄積される。
【0027】
<外側ガイドおよび内側ガイドの構成>
次に、外側ガイド100および内側ガイド200の構成について説明する。
図2に示すように、外側ガイド100および内側ガイド200は、互いに間隔を開けて配置されており、それらの間で、レジストローラ28に向けて用紙Pを側面視円弧状(搬送方向に円弧状)に曲げながら案内する湾曲した搬送路Fを形成している。
【0028】
外側ガイド100は、湾曲した搬送路Fの外周側に配されており、この外側ガイド100と対向するように内側ガイド200が搬送路Fの内周側に配されている。外側ガイド100は、その先端部101(搬送方向下流側端部)がレジストローラ28の挟持部Nに近接して配されている。内側ガイド200は、その先端部201が外側ガイド100の先端部101よりも搬送方向上流側に位置しており、用紙Pを支持する側面視円弧状のリブ202を有している。
【0029】
そして、一対のレジストローラ28の挟持部N(ニップ位置)における共通接線TLに対して、下側(一方のレジストローラ28側)に外側ガイド100および内側ガイド200が位置し、外側ガイド100の先端部101も同じ側に位置している。そして、以上のように構成される外側ガイド100および内側ガイド200では、外側ガイド100の先端部101とそれよりも搬送方向上流側に位置する内側ガイド200の一部(例えばリブ202の頂部)とに接触した状態において用紙Pの搬送方向下流側先端がレジストローラ28の挟持部Nに向かうように案内される。
【0030】
<外側ガイドの詳細構造>
続いて、外側ガイド100の詳細構造について説明する。
図3(a),(b)に示すように、外側ガイド100は、剛体ガイドの一例としての金属板110(導電性部材)と、弾性ガイドの一例としての2枚の樹脂製フィルム120とを重ね合わせることで構成されている。
【0031】
金属板110は、幅が異なる少なくとも2種類の用紙Pに対応した幅で形成されている。すなわち、カラープリンタ1で印字可能な複数種類の大きさの用紙Pのうち最大幅の用紙Pの幅と略同等もしくはそれよりも幅広に形成されている。また、金属板110は、略L字状に屈曲形成されるとともに、電気的に接地されている。なお、金属板110は、電気抵抗素子や、ツェナーダイオードなどの電気素子を介して接地されていてもよい。
【0032】
金属板110は、その先端部111(搬送方向下流側の端部)のうち搬送方向と直交する幅方向における少なくとも一部が搬送方向において異なる位置になる形状で形成されている。具体的に、本実施形態では、金属板110の先端部111は、幅方向両側と幅方向中央とに形成される3つの最先端部111Aと、最先端部111Aから搬送方向上流側に凹むように各最先端部111Aの間に形成される2つの凹部111Bとを有した形状となっている。そして、各凹部111Bは、その底部が、カラープリンタ1で印字可能な複数種類の大きさの用紙Pのうち最も幅の狭い用紙P(はがき等)の幅方向両端縁に対応した位置に配置されるように形成されている。
【0033】
このように形成される金属板110の先端部111は、搬送される用紙Pの中央を基準として幅方向に対称形状となっている。そして、3つの最先端部111Aのうち真中の最先端部111Aの両側に略V字状の2つの凹部111Bが形成されることで、金属板110の先端部111の幅方向中央部が、真中の最先端部111A(搬送される用紙Pの中央に対応する部位)を頂点とする山型形状に形成されている。
【0034】
さらに、図2に示すように、金属板110のうち内側ガイド200とは反対側の面は、レジストローラ28に向けて用紙Pを直線状に案内する案内面112として平面状に形成されている。また、装置本体10には、手差し給紙口10Aが形成されるとともに、この手差し給紙口10Aから挿入される用紙Pを金属板110の案内面112に向けて案内する手差し用案内面14,15が形成されている。すなわち、手差し給紙口10Aから挿入される用紙Pを手差し給紙口10Aからレジストローラ28まで案内する手差し搬送路の一部が、金属板110によって形成されている。
【0035】
図3(b)に示すように、樹脂製フィルム120は、弾性変形可能なフィルムであり、金属板110の左右方向中央部のみが内側ガイド200に向けて露出するように、金属板110の搬送路F側の面(記録シート搬送面)の左右両側部分を覆うように1枚ずつ貼り付けられている。これにより、金属板110が、搬送方向上流側から送られてくる用紙Pの幅方向中央部と当接するようになっている。また、2枚の樹脂製フィルム120は、搬送される用紙Pの中央を基準として幅方向に対称形状となっている。
【0036】
樹脂製フィルム120の先端部121(搬送方向下流側の端部)は、金属板110の最先端部111Aに対して平行に形成される2つの最先端部121Aと、2つの最先端部121Aの間において搬送方向上流側に凹むように形成される切欠部121Bとを有した形状となっている。切欠部121Bは、その底部が、はがき等の最も幅の狭い用紙Pの幅方向両端縁に対応した位置、すなわち前述した金属板110の凹部111Bの底部に対応した位置に配置されるように形成されている。
【0037】
また、切欠部121Bは、金属板110の凹部111Bよりも開口幅が小さく形成されている。そのため、樹脂製フィルム120の左右方向内側の最先端部121Aは、金属板110の幅方向中央の最先端部111Aから幅方向外側に延びた後、幅方向両側の最先端部111Aに到達する前に凹部111Bの底部に向かうように屈曲形成されている。
【0038】
そして、各最先端部121Aが金属板110の最先端部111Aと略一致するように樹脂製フィルム120を金属板110の幅方向外側の部位に貼り付けると、図3(a)に示すように、樹脂製フィルム120の左右方向内側の最先端部121Aが、金属板110の凹部111Bの左右方向内側部分B1からはみ出すようになっている。すなわち、樹脂製フィルム120の左右方向内側の最先端部121Aは、金属板110の凹部111Bの左右方向内側部分B1からはみ出して金属板110の最先端部111Aと同じ位置まで延びる弾性変形可能な自由端となっている。
【0039】
また、樹脂製フィルム120は、搬送方向上流側の基部122(図の2点鎖線から搬送方向上流側の部分)のみが金属板110に接着剤で固定されており、この基部122よりも搬送方向下流側にある先端部121が自由端となっている。そして、2枚の樹脂製フィルム120の左右方向内側の各側面123のうち、先端部121に相当する部位123Aが搬送方向に沿って直線状に形成され、基部122に相当する部位123Bが搬送方向上流側に向かうにつれて広がるように傾斜している。より詳しくは、図3(c)に示すように、側面123のうち基部122に相当する部位123Bは、その搬送方向下流側の部分が先端部121に相当する部位123Aに沿って直線状に形成されている。
【0040】
このように樹脂製フィルム120が貼り付けられることで、図3(a)に示すように、外側ガイド100のうち金属板110が露出する露出領域DAが、金属板110の左右方向中央部において、用紙Pの搬送方向における金属板110の一端から他端まで連続して形成される。また、樹脂製フィルム120が金属板110上に貼り付けられることで、樹脂製フィルム120が金属板110よりも搬送路F側へ突出して、樹脂製フィルム120の側面123が金属板110に対して段差面STとなっている。
【0041】
<用紙供給機構の詳細構造>
次に、用紙供給機構22の詳細構造について説明する。
図1に示した用紙供給機構22は、外側ガイド100のうち樹脂製フィルム120で覆われた領域よりも露出領域DAに対応する部分の搬送力が強くなるように構成されている。
【0042】
具体的に、本実施形態においては、搬送ローラ26および紙粉取りローラ27を用紙Pの幅方向の中央部のみに設けることで、露出領域DAに対応する部分の搬送力が強くなるように構成されている。このような構成により、搬送ローラ26と紙粉取りローラ27とにより搬送された用紙Pの先端側は、その中央側が段差面STに沿って露出領域DA側へ押し付けられることにより、露出領域DAへ向けて突出した湾曲形状となる。
【0043】
また、レジストローラ28は、用紙Pの幅と略同じ長さで形成されている。これにより、用紙Pのうちレジストローラ28で挟持される部位の周辺部(特にレジストローラ28よりも用紙搬送方向上流側の部位)の形状は、湾曲することなく略平面形状となっている。
【0044】
<外側ガイドの作用>
次に、外側ガイド100の作用を説明する。
図4(a)に示すように、カラープリンタ1に印字指令が出されると、給紙トレイ21内の用紙Pが用紙供給機構22によって外側ガイド100に向けて送り出される。そして、用紙Pの先端の幅方向中央部が外側ガイド100に当接すると、用紙Pの幅方向中央部は図3(a)に示す一対の段差面STの間に入り込んで露出領域DAに向けて突出するように湾曲する。
【0045】
そして、このように先端部が湾曲した用紙Pは、その後部が給紙トレイ21内に残った状態で(図4(a)参照)、その先端部が金属板110の露出領域DAに当接する。これにより、用紙Pに溜まった静電気が金属板110を介して逃がされるので、用紙Pの重送を抑えることができる。
【0046】
その後、金属板110に当接した用紙Pの先端部は、搬送方向下流側に向かうにつれて間隔が狭まっていく一対の段差面STによって、金属板110から離れる方向に押されることで、略平面状となって2枚の樹脂製フィルム120のみに当接する。そして、この平面状となった用紙Pの先端部が、外側ガイド100の屈曲部を通り抜けた後は、図2に示すように、用紙Pの先端部以外の部位が外側ガイド100から徐々に離れていき、内側ガイド200で支持される。
【0047】
その後、図4(b)に示すように、用紙Pがレジストローラ28で搬送されて、その先端部が転写ローラ74に到達するときには、用紙Pが露出領域DAから浮いて樹脂製フィルム120のみに摺接するため、転写電流が転写ローラ74から吸湿した用紙Pや金属板110を介して漏れることを抑えることができる。
【0048】
その後は用紙Pの後端が外側ガイド100の先端部101を抜けることになるが、このような状況において当該用紙Pがはがきである場合には、図3(a)に示すように、用紙Pの後端の幅方向外側の部位から順に凹部111B(先端部111の中央にある山型形状部分の斜面)から外れていく。この際、凹部111Bから外れた用紙Pの後端の幅方向外側の部位は、図5(b)に示すように、自由端となる樹脂製フィルム120の一部を金属板110側に押し込んで撓ませるため、その側面視における曲率半径が外れる前に比べて大きくなる。これにより、用紙Pの後端の幅方向外側の部位から外側ガイド100に加わる力が樹脂製フィルム120の撓み変形により逃がされることになるので、用紙Pの後端の中央部が最後に最先端部111Aを外れるときには、その跳ねる勢いが抑えられて、後端跳ねによる騒音が抑制される。
【0049】
なお、用紙Pの先端部がレジストローラ28の挟持部Nに向けて案内される際には、図5(a)に示すように、用紙Pの先端部は、外側ガイド100の先端部101を抜ける際、剛体である金属板110の最先端部111Aで確実に支持されて、レジストローラ28の挟持部N付近に向けて案内される。この際、用紙Pがはがき(腰が強い幅狭の用紙)である場合であっても、その用紙Pの幅方向中央部が図3(a)に示す金属板110の真中に形成される最先端部111Aによって確実に案内される。さらに、用紙Pの左右端も、真中の最先端部111A付近の部位で支持された樹脂製フィルム120によって確実に案内される。ここで、樹脂製フィルム120の最先端部121Aは、金属板110の最先端部111Aと同じ位置まで延びている。つまり、外側ガイド100全体としては、用紙Pの幅方向の各位置を用紙搬送方向において同じ位置でガイドすることができ、用紙Pを精度良くレジストローラ28に向けて案内することができる。
【0050】
ここで、前述したように後端跳ねによる騒音を抑えるだけであれば、金属板110に凹部111Bを形成するだけで十分であるが、この場合、用紙Pの先端を案内するのが不安定となる。そこで、凹部111Bに重なるように樹脂製フィルム120を設けることで、後端跳ねと先端の案内の両立が図られている。
【0051】
なお、用紙Pの先端が外側ガイド100を抜ける際には、先端と一対のローラ26,27(図1参照)で挟持される部分との距離が長いことにより、先端から外側ガイド100に加わる力が小さいため、当該先端から力を受けて樹脂製フィルム120が撓むことはなく、良好に先端が案内される。これに対し、用紙Pの後端が外側ガイド100を抜ける際には、後端と一対のローラ28で挟持される部分との距離が短いことにより、後端から外側ガイド100に加わる力が大きいため、当該後端で樹脂製フィルム120が撓んで、後端跳ねによる騒音が抑制される。
【0052】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
樹脂製フィルム120の先端部121の一部が金属板110の先端部111(凹部111B)からはみ出して弾性変形可能な自由端となるとともに、樹脂製フィルム120の先端部121が金属板110の最先端部111Aからはみ出さないので、用紙Pの後端跳ねによる騒音の抑制とガイド機能の確保を両立させることができる。
【0053】
金属板110の搬送路F側の面に樹脂製フィルム120が固定されるので、金属板110の先端部111(図3(a)に示す凹部111Bの左右方向内側部分B1)と、樹脂製フィルム120との間に段差ができない。これに対し、金属板110の搬送路Fとは反対側の面に樹脂製フィルム120を固定した場合には、凹部111Bの左右方向内側部分B1と樹脂製フィルム120との間に段差ができる。そして、このように段差ができる場合には、この段差から用紙Pの後端が外れる際に樹脂製フィルム120と当接して騒音が発生するおそれがあるが、本実施形態では段差ができないので、このような騒音を抑えることができる。
【0054】
金属板110が、搬送される用紙Pの中央を基準として幅方向に対称形状となることで、用紙Pの先端部が幅方向において金属板110からバランス良く外れるので、用紙Pが斜行するのを抑えることができる。
【0055】
金属板110の先端部111の幅方向中央部が、真中の最先端部111Aを頂点とする山型形状に形成されているので、幅方向中央部が谷形状に形成される形態に比べ、用紙Pの中央部を確実にレジストローラ28の挟持部N付近に案内することができる。
【0056】
幅狭の用紙Pの幅方向両端縁に対応する位置に樹脂製フィルム120の自由端となる部分を配置したので、はがき等の腰が強い幅狭の用紙Pで強く生じる後端跳ねの騒音を良好に抑えることができる。また、金属板110の先端部111が、3つの最先端部111Aを有した形状となっているので、腰の弱いA4等の幅広の用紙Pを3つの最先端部111Aで良好に案内できる。
【0057】
外側ガイド100のうち内側ガイド200とは反対側の面を、レジストローラ28に向けて用紙Pを直線状に案内する案内面112として形成したので、手差し搬送路の一部を外側ガイド100で構成することができる。そのため、手差し搬送路の一部を形成する部材を外側ガイド100とは別に設ける必要がなくなり、装置の小型化を図ることができる。
【0058】
導電性部材である金属板110が、搬送方向上流側から送られてくる用紙Pと当接するように内側ガイド200に向けて露出しているので、用紙Pを除電して、用紙Pの重送を抑えることができる。
【0059】
接着剤が塗布されない樹脂製フィルム120の先端部121の側面123(123A)が搬送方向に沿って直線状に形成されるので、先端部121の側面123(123A)が搬送方向下流側に向かうにつれて狭まるように傾斜する形態に比べ、用紙Pによって樹脂製フィルム120の先端部121がめくれて、用紙Pの搬送が妨げられることを防止することができる。
【0060】
樹脂製フィルム120の基部122の側面123(123B)が、搬送方向上流側に向かうにつれて広がるように傾斜しているので、傾斜した各側面123によって金属板110に当接していた用紙Pを押し縮め、その反発力によって用紙Pを金属板110から離すことができる。そのため、転写電流が、転写ローラ74から用紙Pや金属板110を介して漏れることを抑えることができる。
【0061】
露出領域DAが用紙搬送方向における金属板110の一端から他端まで連続して形成されているので、金属板110と樹脂製フィルム120とで形成される段差面STに用紙Pが引っ掛かることなく、用紙Pの搬送をスムーズに行うことができる。
【0062】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば、モノクロプリンタ、中間転写方式のプリンタ、4サイクル方式のプリンタ、および複写機や複合機などに本発明を適用してもよいし、用紙搬送装置に本発明を適用してもよい。
【0063】
前記実施形態では、樹脂製フィルム120の先端部121に切欠部121Bを形成することで樹脂製フィルム120の一部を自由端としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6(a),(b)に示すように、前記実施形態に係る樹脂製フィルム120の切欠部121Bよりも幅方向外側部分を切り取ったような形状の樹脂製フィルム130を採用してもよい。すなわち、樹脂製フィルムの先端部が、剛体ガイドの幅方向中央の最先端部から幅方向外側に延びた後、幅方向両側の最先端部に到達する前に凹部の底部に向かうように屈曲形成されていればよい。
【0064】
また、剛体ガイドとしては、図7(a)に示すような先端部311の幅方向の全部が搬送方向において異なる位置となる剛体ガイド310や、図7(b)に示すような先端部411が全体的に山型形状となる剛体ガイド410や、図7(c)に示すような先端部511が全体的に谷型形状となる剛体ガイド510など、様々なもの採用できる。また、その際、各弾性ガイド320,420,520は、各剛体ガイド310,410,510の先端部311,411,511の少なくとも一部(搬送方向上流側の部分)からはみ出した後、最も搬送方向下流側となる部分まで延びるように、適宜形成・配置すればよい。
【0065】
前記実施形態では、剛体ガイドを導電性部材(金属板110)で形成したが、本発明はこれに限定されず、非導電性の部材で形成してもよい。また、導電性部材としては金属板110に限らず、例えば導電性樹脂で形成される板などを採用してもよい。また、弾性ガイドとしては、樹脂製フィルム120に限らず、例えば表面が平滑に形成されたゴムシートなどであってもよい。
【0066】
前記実施形態では、感光体として感光ドラム53を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体を採用してもよい。
前記実施形態では、転写部材として転写ローラ74を採用したが、本発明はこれに限定されず、ローラ状でない部材を採用してもよい。
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【0067】
前記実施形態では、樹脂製フィルム120が2分割されていたが、3分割以上であってもよい。また、前記実施形態では、樹脂製フィルム120を搬送される用紙Pの中央にて分割したが、中央から幅方向にずれた位置で分割してもよい。さらに、前記実施形態では、2分割された樹脂製フィルム120の中央側の各側面123のうち先端部121に相当する部位123Aを搬送方向に沿って直線状に形成したが、搬送方向下流側に向かうにつれて広がる傾斜状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 カラープリンタ
28 レジストローラ
100 外側ガイド
101 先端部
110 金属板
111 先端部
111A 最先端部
111B 凹部
112 案内面
120 樹脂製フィルム
121 先端部
121A 最先端部
121B 切欠部
122 基部
123 側面
123A 部位
123B 部位
200 内側ガイド
201 先端部
202 リブ
F 搬送路
N 挟持部
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートを挟持して搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に向けて前記記録シートを搬送方向に円弧状に曲げながら案内する湾曲した搬送路を形成する案内手段とを備え、
前記案内手段は、
前記湾曲した搬送路の外周側に配された外側ガイドと、
前記外側ガイドと対向するように内周側に配された内側ガイドと、を備え、
前記外側ガイドは、
剛体ガイドと弾性変形可能な弾性ガイドとが重ね合わせて構成され、
前記剛体ガイドは、
前記搬送方向下流側の端部のうち前記搬送方向と直交する幅方向における少なくとも一部が前記搬送方向において異なる位置になる形状で形成され、
前記弾性ガイドは、
前記搬送方向下流側の端部が、前記剛体ガイドの最も搬送方向下流側に位置する端部と同じ位置まで延びることで、少なくとも一部が前記剛体ガイドの端部からはみ出して弾性変形可能な自由端となっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記弾性ガイドは、樹脂製フィルムからなり、前記剛体ガイドの記録シート搬送面側に固定されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記剛体ガイドの搬送方向下流側の端部は、搬送される記録シートの中央を基準として前記幅方向に対称形状となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記剛体ガイドの搬送方向下流側の端部は、搬送される記録シートの中央に対応する部位を頂点とする山型形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記外側ガイドは、幅が異なる少なくとも2種類の記録シートに対応した幅で形成され、
前記剛体ガイドの搬送方向下流側の端部は、
幅方向両側と幅方向中央とに形成される3つの最先端部と、
最先端部から搬送方向上流側に凹むように各最先端部の間に形成され、最も幅の狭い記録シートの幅方向両端縁に対応した位置に形成される2つの凹部と、を有し、
前記弾性ガイドの搬送方向下流側の端部は、
前記幅方向中央の最先端部から幅方向外側に延びた後、幅方向両側の最先端部に到達する前に前記各凹部の底部に向かうように屈曲形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記外側ガイドは、前記搬送方向下流側端部が前記搬送手段の挟持部に近接して配されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記案内手段は、前記外側ガイドの前記搬送方向下流側端部とそれよりも前記搬送方向上流側に位置する内側ガイドの一部とに接触した状態において前記記録シートの搬送方向下流側先端が前記搬送手段の挟持部に向かうように案内することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送手段は、互いに接する一対のローラであり、
前記一対のローラのニップ位置における共通接線に対して、一方のローラ側に前記外側ガイドおよび前記内側ガイドが位置し、外側ガイドの搬送方向下流側の端部も同じ側に位置することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記外側ガイドのうち前記内側ガイドとは反対側の面が、前記搬送手段に向けて記録シートを直線状に案内する案内面として形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記剛体ガイドが、導電性部材で形成され、搬送方向上流側から送られてくる記録シートと当接するように前記内側ガイドに向けて露出していることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記弾性ガイドは、樹脂製フィルムからなり、搬送方向上流側の基部のみが前記剛体ガイドの記録シート搬送面側に接着剤で固定されて前記基部よりも搬送方向下流側にある先端部が自由端となるとともに、搬送される記録シートの中央にて2分割され、
2分割された弾性ガイドの前記中央側の各側面のうち、前記先端部に相当する部位が搬送方向に沿って直線状または搬送方向下流側に向かうにつれて広がる傾斜状に形成され、前記基部に相当する部位が搬送方向上流側に向かうにつれて広がるように傾斜していることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記搬送手段の搬送方向下流側に、
現像剤像を担持する感光体と、
前記感光体から前記現像剤像を引き付けるために転写バイアスが印加される転写部材と、を備えたことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
記録シートを挟持して搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に向けて前記記録シートを搬送方向に円弧状に曲げながら案内する湾曲した搬送路を形成する案内手段とを備え、
前記案内手段は、
前記湾曲した搬送路の外周側に配された外側ガイドと、
前記外側ガイドと対向するように内周側に配された内側ガイドと、を備え、
前記外側ガイドは、
剛体ガイドと弾性変形可能な弾性ガイドとが重ね合わせて構成され、
前記剛体ガイドは、
前記搬送方向下流側の端部のうち前記搬送方向と直交する幅方向における少なくとも一部が前記搬送方向において異なる位置になる形状で形成され、
前記弾性ガイドは、
前記搬送方向下流側の端部が、前記剛体ガイドの最も搬送方向下流側に位置する端部と同じ位置まで延びることで、少なくとも一部が前記剛体ガイドの端部からはみ出して弾性変形可能な自由端となっていることを特徴とする用紙搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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