説明

画像形成装置および記録媒体

【課題】特定の2方向から光学的に読み取られる画像をそれぞれ異ならせるようにする。
【解決手段】画像形成装置1は、記録媒体上に点状画像を配置して第1の情報を示す第1画像を形成する現像部13Hと、第1の情報と異なる第2の情報を示す第2画像を形成する現像部13Lとを備える。現像部13Hは、予め定められた帯域の光を吸収する顔料を含み、記録媒体上に配置されると前記光を正反射する割合が閾値以上であり、且つ、正反射方向と異なる方向である特定方向に当該光を反射する割合が閾値未満である第1トナーにより前記第1画像を形成する。現像部13Lは、前記光を吸収する顔料を含み、前記記録媒体上に配置されると前記光を正反射する割合が閾値未満であり、且つ、当該光を特定方向に反射する割合が閾値未満である第2トナーにより、前記第2画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体上に形成された画像の光沢差を情報の伝達に用いる技術が開発されている。例えば特許文献1には、冷却定着部によって定着処理を行うとトナー像の表面を一様に平滑にさせ、高温定着部によって定着処理を行うと弾性透明トナー像のみを隆起させる画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、冷却定着と高温定着とを繰り返すことで記録媒体上に形成された画像を不可視状態にしたり可視状態にしたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−15208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特定の2方向から光学的に読み取られる画像をそれぞれ異ならせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る画像形成装置は、予め定められた帯域の入射光を正反射方向及び前記正反射方向以外の特定方向に反射する割合がいずれも閾値以上である記録媒体の面に、前記入射光を前記正反射方向に反射する割合が前記閾値以上になり、前記特定方向に反射する割合が前記閾値よりも小さくなる第1画像を形成する第1画像形成手段と、前記入射光を前記正反射方向及び前記特定方向に反射する割合がいずれも前記閾値よりも小さくなる第2画像を、前記面のうち、当該第1画像が形成された位置と異なる位置に形成する第2画像形成手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る画像形成装置は、請求項1に記載の態様において、前記第1画像は、前記入射光を正反射方向に反射する割合が前記記録媒体以上になるとともに、前記入射光を前記特定方向に反射する割合が前記記録媒体よりも小さくなり、前記第2画像は、前記入射光を前記正反射方向及び前記特定方向に反射する割合が前記記録媒体よりも小さくなることを特徴とする。
また、本発明の請求項3に係る画像形成装置は、請求項1または2に記載の態様において、前記光は、赤外線であることを特徴とする。
また、本発明の請求項4に係る画像形成装置は、請求項1から3のいずれかに記載の態様において、前記第1画像におけるJIS規格P8142に基づく75度鏡面光沢度が25以上であり、前記第2画像における前記75度鏡面光沢度が20未満であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項5に係る記録媒体は、予め定められた帯域の入射光を正反射方向及び前記正反射方向以外の特定方向に反射する割合がいずれも閾値以上である面を有し、前記面の中に、前記入射光を前記正反射方向に反射する割合が前記閾値以上になり、前記特定方向に反射する割合が前記閾値よりも小さくなる第1画像が形成され、前記入射光を前記正反射方向及び前記特定方向に反射する割合がいずれも前記閾値よりも小さくなる第2画像が、前記面のうち、当該第1画像が形成された位置と異なる位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の画像形成装置によれば、特定の2方向から光学的に読み取られる画像をそれぞれ異ならせることができる。
請求項2に記載の画像形成装置によれば、入射する入射光の反射の割合が、記録媒体における反射の割合以上であるか否かに応じて、画像が読み取られる場合に、特定の2方向から光学的に読み取られる画像をそれぞれ異ならせることができる。
請求項3に記載の画像形成装置によれば、記録媒体から読み取られる少なくとも2種の画像が、不可視であり、可視光により視認される可視画像を妨げない。
請求項4に記載の画像形成装置によれば、読み取り装置により、特定の方向から表面の或る範囲を読み取った画像が、この方向と異なる方向からその範囲を読み取った画像と異なるように、記録媒体上に画像が一定の品質で形成される。
請求項5に記載の記録媒体によれば、読み取り装置により、特定の方向から表面の或る範囲を読み取ったときの画像と、この方向と異なる方向からその範囲を読み取ったときの画像がそれぞれ提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図2】点状画像の一例を示す図である。
【図3】トナー調製のための試験を説明するための図である。
【図4】入射光に対する反射光の強度の割合を示す図である。
【図5】画像形成装置により画像が形成された記録媒体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の説明に使用する用語を以下のように定義する。
「光」とは、可視光線のほか少なくとも赤外線を含む電磁波である。
「JIS規格P8142」とは、日本工業規格により定められた「紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法」である。
【0011】
1−1.画像形成装置の全体構成
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す図である。同図に示すように、画像形成装置1は、供給部11と、光走査部12と、現像部13H,13Lと、転写部14と、定着部15と、排出部16と、制御部19とを備えている。これらの供給部11、光走査部12、現像部13H,13L、転写部14、定着部15及び排出部16は、制御部19によって制御される。なお、符号末尾のアルファベットHは、光沢度の高い高光沢トナーに対応した構成を意味しており、アルファベットLは、この高光沢トナーに比べて光沢度の低い低光沢トナーに対応した構成であることを意味している。現像部13H,13Lのそれぞれは、用いるトナーが異なるのみであって、その構成に大きな差異はない。以下、高光沢トナーおよび低光沢トナーのそれぞれを特に区別する必要がない場合には、単にトナーという。また、現像部13H,13Lのそれぞれを特に区別する必要がない場合には、トナーの種類を示す符号末尾のアルファベットを省略して「現像部13」とする。各トナーの詳細については後述する。トナーはキャリアと混合されることによりキャリアから電荷を付与される。混合されたトナーとキャリアは現像剤として現像部13に供給される。
【0012】
供給部11は、予め定められたサイズにカットされた、記録媒体としての用紙Pを収容する。供給部11に収容されている用紙Pは、制御部19の指示により1枚ずつ取り出され、用紙搬送路を経由して転写部14へと搬送される。なお、記録媒体は用紙に限らず、
例えば樹脂製のシート等であってもよい。
制御部19は、トナーごとに個別の画像データをRAM(Random Access Memory)などに対応付けて記憶しており、光走査部12は、制御部19の制御の下、各画像データに応じたビーム光をそれぞれ生成して対応する現像部13H,13Lへ照射する照射装置を備えている。
トナーごとに対応付けられた画像データは、点状の画像である点状画像を格子状に配列し、その配列パターンによって情報を表すものである。点状画像およびその配置の詳細については後述する。
【0013】
転写部14は、中間転写ベルト141と、ベルト搬送ロール142と、二次転写ロール143と、クリーナバックアップロール144と、ステアリングロール145と、張架ロール146と、一次転写ロール147H,147L(以下、これらを特に区別する必要がない場合には、総称して一次転写ロール147という)と、ベルトクリーナ149とを備えており、現像部13によって形成された画像を用紙Pに転写する転写装置である。中間転写ベルト141は周回移動する無端の帯状部材であり、ベルト搬送ロール142と、クリーナバックアップロール144と、ステアリングロール145と、張架ロール146と、一次転写ロール147とによって掛け渡される。
【0014】
ベルト搬送ロール142にはモータ等の駆動部(図示せず)が歯車等を介して連結されており、中間転写ベルト141を図中の矢印D14方向に周回移動させる。なお、駆動部と連結されていない他のロールは、中間転写ベルト141の周回移動に伴って回転する。中間転写ベルト141が図中の矢印D14方向に周回移動して回転することにより、転写部14が転写した画像は、ベルト搬送ロール142と二次転写ロール143とが接する領域に移動させられる。二次転写ロール143は、中間転写ベルト141の外側においてベルト搬送ロール142に向かい合う位置に設けられており、ベルト搬送ロール142とともに中間転写ベルト141を挟持する。二次転写ロール143は、例えば接地されることにより、予め定められた電位が維持されている。
【0015】
ベルト搬送ロール142は、中間転写ベルト141と接触している部位を内側から外側に向けて押すとともに、この接触部位をトナーと同極性に帯電させる。これにより、中間転写ベルト141のうちこの接触部位と、二次転写ロール143との間に予め定められた電位差が生じるため、この電位差によって、中間転写ベルト141上の画像は供給部11から搬送されてきた用紙Pに転写される。
【0016】
ベルトクリーナ149は、中間転写ベルト141の表面に残留している未転写のトナーを取り除く。クリーナバックアップロール144は、ベルトクリーナ149に向かい合う位置において内側から中間転写ベルト141を支え、ベルトクリーナ149によるトナーの清掃を支援する。
【0017】
張架ロール146は、一次転写ロール147Hからベルト搬送ロール142までの中間転写ベルト141を内側から支える。そして、転写部14は、画像が転写された用紙Pを定着部15へと搬送する。
【0018】
各現像部13は、像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム131をそれぞれ備えている。各感光体ドラム131は、光走査部12から照射される光に応じた潜像を保持する。各現像部13は、それぞれ対応するトナーを用いて、感光体ドラム131が保持している潜像から各トナーに対応付けられた画像データにより示される画像をそれぞれ形成する。具体的には、感光体ドラム131の表面にトナーと同極性の電荷を保持させ、その表面に対して光走査部12により光を照射することで電荷を失った部分にトナーを付着させることで、現像部13は画像を形成する。
【0019】
そして、上述したとおり、中間転写ベルト141の内側において、各感光体ドラム131に向かい合う位置に一次転写ロール147が設けられている。一次転写ロール147は、中間転写ベルト141と接触している部位を内側から外側に向けて押すとともに、この接触部位をトナーと逆極性に帯電させる。これにより、中間転写ベルト141のうちこの接触部位と、一次転写ロール147に向かい合う感光体ドラム131との間に電位差が生じるため、中間転写ベルト141に画像が転写される。
画像が転写された後、感光体ドラム131の表面はクリーナによって除電されるとともに、残留している未転写のトナーが取り除かれる。
【0020】
定着部15は、加熱ロールと加圧ロールとを備え、これらを用いた加熱及び加圧により、用紙Pに転写された画像をその用紙Pに定着させる。排出部16は、定着部15による定着処理を経た用紙Pを画像形成装置1の上部に設けられた用紙置き場に排出する。制御部19は、通信可能に接続された外部機器2から受け取った指示の信号や、図示しない操作部によるユーザの操作等に応じて、現像部13等の画像形成装置1の各構成を制御して、用紙Pに画像を形成させる。
【0021】
1−2.点状画像
図2は、点状画像の一例を示す図である。同図に示すように用紙Pにはトナーにより点状の画像である点状画像が格子状に配置され、その配置パターンに応じた情報を示す画像が形成される。この画像が配置される位置には、上述した現像部13Hによる高光沢トナーまたは現像部13Lによる低光沢トナーが円形のドットすなわち点状画像として塗布される。なお、これらの点状画像は格子状に隙間なく配置されるのではなく、高光沢トナーおよび低光沢トナーのいずれも配置されない箇所もある。以下、同図に示すように、高光沢トナーによる点状画像を点状画像GH、低光沢トナーによる点状画像を点状画像GL、高光沢トナーおよび低光沢トナーのいずれも配置されていない領域を空白領域Bとする。点状画像GH、および点状画像GL、のそれぞれの配置により用紙P上には2種類の情報をそれぞれ示す画像が形成される。
【0022】
1−3.現像剤
1−3−1.キャリア
現像剤は、トナーとキャリアを含む、いわゆる二成分現像剤である。この二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等を挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0023】
1−3−2.トナー
トナーは顔料と樹脂とを含み、樹脂に顔料を分散させて成る。顔料は予め定められた帯域の光を吸収して、反射光に含まれるその帯域の光の強度を低下させる。樹脂は、顔料を分散させて保持するとともに塗布面における光沢度を決定する要因となる。なお、用紙P等の記録媒体には、上記した帯域の光を反射する割合が、予め定められた閾値V1以上になるものが用いられる。この閾値V1は、受光センサーが画像の有無を判定する際に反射光の強度と比較する値に応じて定められている。つまり、用紙Pは、予め定められた帯域の入射光を反射する割合が閾値以上である記録媒体の一例である。
【0024】
(1)顔料
トナーに含まれる顔料は、予め定められた帯域の光として、例えば、750nm〜1000nmの帯域の赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含む。この顔料は、赤外線吸収剤とし
て例えば、下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する。
【0025】
【化1】

【0026】
(2)樹脂
高光沢トナーおよび低光沢トナーは上述した顔料を分散させる樹脂が異なる。以下、高光沢トナーに含まれる高光沢トナー用樹脂と低光沢トナーに含まれる低光沢トナー用樹脂についてそれぞれ説明する。
【0027】
高光沢トナー用樹脂および低光沢トナー用樹脂は、いずれも、少なくとも熱可塑性の結着樹脂を含む。この結着樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレア系樹脂などの一般トナー用に用いられる公知の樹脂とその共重合体が挙げられる。これらの中でも、用紙との密着性、低温定着性、定着強度、保存性などのトナー特性を同時に満足し得る点でポリエステル系樹脂が好ましい。また、結着樹脂は、重量平均分子量が5000〜40000、かつ、ガラス転移点が55〜75度未満であることが好ましい。
【0028】
また、これらの樹脂は、粘弾性調整を目的として、無機粉体を含む。無機粉体としては、トナー表面の外添剤として使用されるものであればよく、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。これらの無機粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。高光沢トナー用樹脂は、低光沢トナー用樹脂よりも粘弾性が低くなるように上述した無機粉体の量が調整される。粘弾性が低いほど、塗布面における光沢が増すからである。
【0029】
(3)トナー調製のための試験
トナー調製のために添加される無機粉体の量は、以下の試験を満たすように決定される。
図3は、このトナー調製のための試験を説明するための図である。この試験は、記録媒体の表面Sにおける1点である点PGの光沢度を測定するものである。同図の光源P0は、上述した顔料によって吸収される赤外線を入射角αで表面Sの点PGに向けて照射する。点PGを通る表面Sの法線Nを挟んで光源P0と線対称の位置に受光点P1を有する第1受
光センサーが設けられている。すなわち、受光点P1は、光源P0から照射される赤外線の反射角が入射角αと等しくなる方向(以下、正反射方向という)に延びる線上にある。また、反射角が入射角αと異なるβである反射方向には、受光点P2を有する第2受光センサーが設けられている。なお、一般的なスキャナなどの読み取り装置は、正反射の影響を除くため、0ではない入射角(すなわち、α≠0)で光源P0から表面Sの点PGに向けて赤外線等の光を照射した場合に、点PGを通る表面Sの法線N上にある点Pnに受光センサーを設けて、その反射光を検知することが多い。この場合、β=0すなわち、α≠βであるから、点Pnは、反射角が入射角αと異なるβである反射方向に位置する受光点P2一例である。
【0030】
第1受光センサー及び第2受光センサーは、いずれも記録媒体の表面Sの或る位置から反射される反射光を検知して入射光に対する反射光の割合を測定する。そして、その割合が予め定められた閾値V1以上である場合には、その位置に画像がないと判定し、その割合が閾値V1未満である場合には、その位置に画像があると判定する。
【0031】
図4は、光源P0から照射される入射光に対する、各受光センサーで検知した反射光の強度の割合を示す図である。受光点P2を有する第2受光センサーは、正反射方向と異なる方向である特定方向に反射される赤外線を検知し、光源P0から照射した赤外線をその特定方向に反射する割合を測定する。この特定方向に反射する割合は、図4(a)に示すとおりであり、空白領域Bにおけるこの割合は、閾値V1以上であるのに対して、点状画像GHおよび点状画像GLのそれぞれにおけるこの割合は、いずれも閾値V1未満である。
【0032】
一方、受光点P1を有する第1受光センサーは、光源P0から照射される入射光(赤外線)にとって正反射方向に設けられており、入射光を正反射方向に反射する割合を測定する。入射光を正反射方向に反射する割合は、図4(b)に示すとおりであり、空白領域Bおよび点状画像GHのそれぞれにおけるこの割合は、いずれも閾値V1以上であるのに対して、点状画像GLにおけるこの割合は、閾値V1未満である。
【0033】
以上説明した条件を満たす点状画像GHおよび点状画像GLを形成するように、高光沢トナーおよび低光沢トナーは調製される。このため、例えば、高光沢トナー用樹脂には、低光沢トナー用樹脂よりも多くの無機粉体が添加される。
【0034】
なお、制御部19、供給部11、光走査部12、転写部14、定着部15、および現像部13Hは、用紙Pの面に、赤外線の入射光を正反射方向に反射する割合が閾値以上になり、特定方向に反射する割合が閾値よりも小さくなる第1画像である点状画像GHを高光沢トナーにより形成するので、「予め定められた帯域の入射光を反射する割合が閾値以上である記録媒体の面に、入射光を正反射方向に反射する割合が閾値以上になり、正反射方向以外の特定方向に反射する割合が閾値よりも小さくなる第1画像を形成する第1画像形成手段」の一例である。そして、高光沢トナーは、「画像形成後に、予め定められた帯域の入射光を正反射方向に反射する割合が閾値以上になり、その入射光を正反射方向以外の特定方向に反射する割合が閾値よりも小さくなる第1画像形成材料」の一例である。
【0035】
また、制御部19、供給部11、光走査部12、転写部14、定着部15、および現像部13Lは、用紙Pの面のうち、点状画像GHが形成された位置と異なる位置に、赤外線の入射光を正反射方向及び特定方向に反射する割合が閾値よりも小さくなる第2画像を低光沢トナーにより形成するので、「入射光を正反射方向及び特定方向に反射する割合が閾値よりも小さくなる第2画像を、記録媒体の面のうち、当該第1画像が形成された位置と異なる位置に形成する第2画像形成手段」の一例である。そして、低光沢トナーは、「画像形成後に、予め定められた帯域の入射光を正反射方向及び特定方向に反射する割合が閾値よりも小さくなる第2画像形成材料」の一例である。
【0036】
1−4.記録媒体
上記のように調製された各トナーを用いる画像形成装置1により、トナーごとに対応付けられた画像データの画像が形成された記録媒体について説明する。
図5は、画像形成装置1により画像が形成された記録媒体の一例を示す図である。例えば、図5(a)に示すように、縦線3本と横線3本とがそれぞれ交差する9つの点上には、5箇所に点状画像GHが、3箇所に点状画像GLがそれぞれ形成され、これ以外の1箇所は点状画像GHおよび点状画像GLのいずれも形成されていない空白領域Bとなっているとする。このとき、上述した第2受光センサーが、入射光を特定方向に反射する割合が閾値V1未満である領域と閾値V1以上である領域とを区別して検知すると、空白領域Bと点状画像GHおよび空白領域Bと点状画像GLのそれぞれは区別されるが、点状画像GHと点状画像GLとの区別はされない。したがって、この場合第2受光センサーは、図5(a)に示す画像と、この画像の点状画像GHを全て点状画像GLに置き換えた図5(b)に示す画像とを区別しないので、点状画像GLのみによって示される画像を得ることがない。
【0037】
一方、上述した第1受光センサーが、入射光を正反射方向に反射する割合が閾値V1未満である領域と閾値V1以上である領域とを区別して検知すると、空白領域Bと点状画像GHとは区別されないが、点状画像GHと点状画像GLとは区別される。したがって、この場合第1受光センサーは、図5(a)に示す画像と、この画像の点状画像GHを全て空白領域Bに置き換えた図5(c)に示す画像、すなわち点状画像GLのみが配置された画像と区別されないので、点状画像GLのみによって示される画像を得る。
【0038】
例えば、第2受光センサーとして、正反射方向に反射する光を受けない位置に受光部を有するスキャナが挙げられる。スキャナは正反射方向に反射する光を受けないように設計されているため、例えば正反射方向ではない特定方向にセンサーを設けて、その特定方向に反射する光を検知する。したがって、スキャナは、点状画像GHと点状画像GLとを区別することがなく、点状画像GLのみによって示される画像を得ることはない。したがって、この画像形成装置1によれば、スキャナやコピー機などによる画像情報の複製が制限される。
【0039】
一方、第1受光センサーとして、記録媒体から光を受ける角度を自由に変えられるペン状デバイスが挙げられる。このペン状デバイスは、記録媒体に配置された点状画像のパターンを読み取って、予め定められたパターンと照合し、読み取った部分の記録媒体上における位置を示す情報を特定するものであってもよい。この場合、このペン状デバイスにより、記録媒体の表面から正反射方向に反射された反射光を受光するように読み取り部分の角度を調整し、これを表面上に沿って動かすことによって文字や図形など(以下、文字等という)を描くと、その文字等の形状と、その文字等の記録媒体上における位置とが特定される。これにより、ペン状デバイスは、描いた文字等をデジタル情報として記憶する。
【0040】
以上、説明したように、正反射方向ではない特定方向への反射光を検知する場合には、2つの点状画像GH,GLは区別されないため、点状画像GHによって示される画像が点状画像GLのみによって示される画像を隠蔽することとなる。一方、正反射方向に反射する光を検知する場合には、点状画像GHの光沢によって入射光が正反射方向に反射する割合が閾値以上となるため、点状画像GHによる画像が空白領域と区別がつかなくなる。すなわち、2つの点状画像GH,GLは区別されるため、点状画像GLのみによって示される画像が顕現する。このように、画像形成装置1によれば、読み取りに際して、例えば上述した特許文献1のように別途、熱処理をすることなく、単に読み取り角度を変えるだけで読み取り可能な2種類の画像を、記録媒体上に重畳して形成する。
【0041】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
2−1.変形例1
上述した実施形態において、顔料は、赤外線吸収剤として例えば、式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有していたが、他の赤外線吸収剤を含有していてもよい。また、顔料は、予め定められた帯域の光として赤外線を吸収する赤外線吸収剤を含むものであったが、赤外線以外の帯域の光を吸収する吸収剤を含むものであってもよい。すなわち、顔料は、赤外線を吸収するものであっても、赤外線を吸収せず、赤外線以外の帯域の光を吸収するものであってもよい。要するに、顔料は、予め定められた帯域の光を吸収するものであればよい。
【0042】
2−2.変形例2
上述した実施形態において、各トナーに添加される無機粉体の量は、トナー調製のための試験を満たすように決定されていたが、上述した試験に代えて、JIS規格P8142の試験を行ってもよい。この場合、高光沢トナーは、記録媒体上に配置された領域においてJIS規格P8142に基づく75度鏡面光沢度が25以上であり、低光沢トナーは、記録媒体上に配置された領域においてこの75度鏡面光沢度が20未満であることが望ましい。
【0043】
2−3.変形例3
上述した実施形態において、画像形成装置1は、中間転写ベルト141の周回方向における上流側に現像部13Lが、下流側に現像部13Hがそれぞれ設けられていたが、これら現像部13の配置は逆であってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態において、画像形成装置1は、現像部13を2つ備えていたが、現像部13を3つ以上備えていてもよい。この場合、各現像部13は、それぞれ異なるトナーを用いて感光体ドラム131に画像を形成すればよい。
【0045】
例えば、現像部13が3つある場合、高光沢トナーを用いる現像部13Hと、低光沢トナーを用いる現像部13Lに加え、高光沢トナーよりも光沢度が低く低光沢トナーよりも光沢度が高い中間光沢トナーを用いる現像部13Mを有する構成であってもよい。
【0046】
この場合、高光沢トナーによる点状画像GH、低光沢トナーによる点状画像GL、中間光沢トナーによる点状画像GM、はいずれも第2受光センサーにより測定される、入射光を特定方向に反射する割合は閾値V1未満となるため、これら3種類の点状画像は第2受光センサーによって区別されない。一方、第1受光センサーにより測定される、入射光を正反射方向に反射する割合が、点状画像GLは閾値V1未満となり、点状画像GMは閾値V1以上閾値V2未満(V1<V2)となり、点状画像GH、は閾値V2以上閾値V3未満(V2<V3)となるように、各トナーの樹脂に添加する無機粉体の量が調節されているのであれば、第1受光センサーが閾値V1,V2,V3との比較によって、入射光を正反射方向に反射する割合を区別することにより、点状画像GL,GM,GHは区別される。したがって、第1受光センサーは、各トナーにそれぞれ対応付けられた画像データの画像を得る。
【0047】
なお、この場合、点状画像GLと点状画像GMとが区別されるのであれば、点状画像GMと点状画像GHとは区別されなくてもよく、また、点状画像GMと点状画像GHとを区別されるのであれば、点状画像GMと点状画像GLとは区別されなくてもよい。要するに、複数の水準に光沢度が区分されるトナーによってそれぞれ形成された複数種類の点状画像のうち、2種類以上が区別可能であればよい。
【0048】
また、これら現像部13に加えて、異なる顔料を含んだ別のトナーにより画像を形成す
る現像部を中間転写ベルト141の周回上に設けてもよい。例えば、現像部13H,13Lに加えて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなど、可視光(例えば、波長が400〜700nmの光)に対応した吸収帯域を有する顔料を含んだ現像部を設けた場合には、記録媒体上に赤外線の受光センサーに検知される不可視画像のほか、人間に視認される可視画像が形成される。
【0049】
2−4.変形例4
上述した実施形態において、高光沢トナーによる点状画像GHは、入射光を正反射方向に反射する割合が閾値V1以上であって空白領域Bよりも低かったが、点状画像GHは、入射光を正反射方向に反射する割合が空白領域Bよりも高くてもよい。
【0050】
また、閾値V1は空白領域Bの、入射光を正反射方向に反射する割合より低く定められていたが、空白領域Bを基準として定められていてもよい。この場合、点状画像GHは、入射光を正反射方向に反射する割合が空白領域B以上になるとともに、入射光を特定方向に反射する割合が空白領域Bよりも小さくなる。そして、点状画像GLは、入射光を正反射方向及び特定方向に反射する割合が空白領域Bよりも小さくなる。
【0051】
この場合、高光沢トナーは、「画像形成後に記録媒体上において、予め定められた帯域の入射光を正反射方向に反射する割合が記録媒体以上になり、入射光を正反射方向以外の特定方向に反射する割合が記録媒体よりも小さくなる第1画像形成材料」の一例である。
そして、低光沢トナーは、「画像形成後に記録媒体上において、入射光を正反射方向及び特定方向に反射する割合が記録媒体よりも小さくなる第2画像形成材料」の一例である。
【0052】
2−5.変形例5
上述した実施形態において、点状画像は円形のドットであったが、ドットの形状は円形に限られず、例えば矩形であってもよい。
また、上述した実施形態において、点状画像は、格子状に仮想的な縦線と横線とを引いた場合に、それら各線の交差点上に配置されていたが、この交差点からずれた位置に配置されてもよい。そして、このずれの量や方向を点状画像ごとに定め、各点状画像がそれぞれ対応する交差点からずれている量や方向の組み合わせによって、情報を表してもよい。
また、格子の間隔としては様々な値が採用し得るが、例えば、記録媒体がISO216に定めるA4サイズ(210mm×297mm)である場合に、格子の間隔を0.3mm程度とすると、点状画像の配置パターンの数は、記録媒体上の位置を特定するのに充分な量となるので望ましい。
【0053】
2−6.変形例6
上述した実施形態において、複数の点状画像が用紙P上に格子状に配置され、その配置パターンに応じた情報を示す画像が形成されていたが、用紙P上に形成される画像は点状画像に限られない。例えば、1次元のバーコードのように、複数種類の太さを有する線分が平行に配置されることで、その配置パターンに応じた情報を示す画像が形成されてもよい。
【0054】
また、複数の画像の配置パターンに応じて、特定の情報を示す画像が形成されるのではなく、1つの連結された領域に形成された画像の形状や大きさなどによって、その特定の情報を示す画像が形成されてもよい。例えば、現像部13H、転写部14および定着部15により高光沢トナーが、供給部11によって供給された用紙Pの面のうち、1つの連結された領域である連結領域として、用紙Pが閲覧される向きの上下方向に延びる1本の線上に塗布・定着されると、この1本の線が、高光沢トナーによる第1の画像として形成される。また、現像部13L、転写部14および定着部15により低光沢トナーが、供給部
11によって供給された用紙Pの面のうち、上述した連結領域以外の領域として、上述した1本の線の左右に隣り合う2つの矩形に塗布・定着されると、この2つの矩形が、低光沢トナーによる第2の画像として形成される。この場合であっても、用紙Pのこの面に入射する入射光が特定方向に反射する割合は、第1の画像および第2の画像のいずれにおいても閾値より小さいので、特定方向に設置された第2受光センサーは、第2の画像を第1の画像と区別して検出しない。一方、用紙Pのこの面に入射する入射光が正反射方向に反射する割合は、第2の画像においては閾値より小さいが、第1の画像においては閾値以上である。したがって、正反射方向に設置された第1受光センサーは、第2の画像を第1の画像と区別して検出する。
【0055】
2−7.変形例7
上述した実施形態において、点状画像GHにより入射光を正反射方向に反射する反射光の割合が閾値V1を超えるため、正反射方向に設けられた受光センサーにより点状画像GHと点状画像GLとが区別され、点状画像GLのみによって示される画像が認識されていた。すなわち、正反射方向ではない特定方向に設けられた受光センサーに対して、高光沢トナーで形成した画像により、低光沢トナーで形成した画像を隠す効果があったが、低光沢トナーで形成した画像だけでは完成していない画像に、高光沢トナーで形成した画像を加えることによって、読み取り装置に完成した画像を認識させるようにしてもよい。この場合、正反射方向に反射する反射光を検知する受光センサーでは目的の画像が読み取られることはないが、正反射方向ではない特定方向に反射する反射光を検知する受光センサーでは目的の画像が読み取られる。
【符号の説明】
【0056】
1…画像形成装置、11…供給部、12…光走査部、13…現像部、131…感光体ドラム、13,13H,13L…現像部、14…転写部、141…中間転写ベルト、142…ベルト搬送ロール、143…二次転写ロール、144…クリーナバックアップロール、145…ステアリングロール、146…張架ロール、147,147H,147L…一次転写ロール、149…ベルトクリーナ、15…定着部、16…排出部、19…制御部、2…外部機器、B…空白領域、GH、GL…点状画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた帯域の入射光を正反射方向及び前記正反射方向以外の特定方向に反射する割合がいずれも閾値以上である記録媒体の面に、前記入射光を前記正反射方向に反射する割合が前記閾値以上になり、前記特定方向に反射する割合が前記閾値よりも小さくなる第1画像を形成する第1画像形成手段と、
前記入射光を前記正反射方向及び前記特定方向に反射する割合がいずれも前記閾値よりも小さくなる第2画像を、前記面のうち、当該第1画像が形成された位置と異なる位置に形成する第2画像形成手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1画像は、前記入射光を正反射方向に反射する割合が前記記録媒体以上になるとともに、前記入射光を前記特定方向に反射する割合が前記記録媒体よりも小さくなり、
前記第2画像は、前記入射光を前記正反射方向及び前記特定方向に反射する割合が前記記録媒体よりも小さくなる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記光は、赤外線である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1画像におけるJIS規格P8142に基づく75度鏡面光沢度が25以上であり、
前記第2画像における前記75度鏡面光沢度が20未満である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
予め定められた帯域の入射光を正反射方向及び前記正反射方向以外の特定方向に反射する割合がいずれも閾値以上である面を有し、
前記面の中に、前記入射光を前記正反射方向に反射する割合が前記閾値以上になり、前記特定方向に反射する割合が前記閾値よりも小さくなる第1画像が形成され、
前記入射光を前記正反射方向及び前記特定方向に反射する割合がいずれも前記閾値よりも小さくなる第2画像が、前記面のうち、当該第1画像が形成された位置と異なる位置に形成されている
ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159743(P2012−159743A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20082(P2011−20082)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】