説明

画像形成装置用の構造体、及びこれを用いた画像形成装置

【課題】精度の高い溶接治具やロボット溶接機を用いずに寸法精度の高い画像形成装置用の構造体が作成可能である。
【解決手段】画像形成装置用のベース部3を2枚の薄板プレス部品である第一の構造部材6及び第二の構造部材7で構成する。第一の構造部材6は、絞り加工され最も広い面積かつ外周の面部6dの四隅を絞り加工して4つの突部6aを設ける。中央には開口61を設ける。第二の構造部材7も、最も広い面積を備えかつ最も外周の面部7dの四隅を絞り加工して4つの円柱状の突部7aを設ける。第一の構造部材6及び第二の構造部材7を互いに嵌め込み、対応する平面部同士を重ね合わせ、カシメにより接合するとともに、側面をプレス締結し、2枚の薄板プレス部品で1枚の板状部材を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用の構造体と、これを使用した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコンソールタイプで高速層の画像形成装置では、原稿読取ユニットや画像形成ユニット等を収納し保持する上部骨格体と、給紙ユニット等を収納し保持する下部骨格体を有している。さらに下部骨格体は、ベース部、4隅の支柱部、断面形状がコの字型のチャンネル状の骨格部材、及び補強部材より構成されている。ベース部の一例としては、中央に板金部材を配置し、その四辺に矩形の枠を形成する角パイプ部材をアーク溶接により接合し、四隅には板金を箱型に形成したキャスタ取付部材をアーク溶接にて接合したものがある。
【0003】
ベース部は、給紙ユニット等を位置精度良く配置固定する必要があるため、高い寸法精度が要求され、また画像形成装置の重量を受けるため高い剛性が要求される。従来は数多くの部品を治具で位置を固定した状態でアーク溶接にて接合しているものが多い。しかし、個々のプレス部品及び溶接治具に高い寸法精度が要求され、また溶接箇所が数十箇所に及びロボット溶接が必須となる。そのため、加工可能な業者が限られてしまい、ベース部材のコストダウンが進まないという課題がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、ベース部材とチャンネル状の複数の骨格部材を溶接により固着して骨格体を形成し、ベース部材は上下2枚の板金部材を溶接により接合するとともに、上側板金部材の下面をキャスタ取付面とした画像形成装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、チャンネル形状の複数の骨格体部材とベース部から構成される構造体において、ベース部の各四隅に骨格体部材を立設し、同じく各四隅にキャスタ取付部材を配置し、フランジを設けたベース部材にてキャスタ取付部材を締結した画像形成装置が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、少なくとも側板、支柱、天板及び底板で構成される筐体フレームであって、底板を2枚の部材で構成し、両部材に平面部と壁部を形成して内部が空洞になるよう箱状に重ね合わせ、底板の片方の部材の平面部に複数個所の突出部を設け、他方に突出部との結合部を設け結合した電気機器が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のベース部材は、上下2枚の板金部材を溶接により複数箇所接合するため、ロボット溶接が必須となり、加工業者が限られるという課題がある。
【0008】
また特許文献2のベース部は、四隅に配置したキャスタ取付部材をフランジを設けたベース部材にスポット溶接等で接合しているが、フランジ部分には切り欠きや穴が形成されており、高速層の画像形成装置に必要な剛性を確保できないという課題がある。
【0009】
さらに特許文献3の底板は、上下2枚の板金部材を嵌め込み、側面部を溶接により接合する場合はロボット溶接が必須となり、また他の方法による接合方法の場合でも、側面部から突出させないような加工が必要なため、接合方法が限定されるという課題がある。
【0010】
そこで本発明においては、高い寸法精度の治具やロボット溶接機等を使用することなく製造可能な画像形成装置用の構造体と、これを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置用の構造体は、
それぞれ絞り加工した金属の薄板であって、ともに複数の平面部を有する第一の構造部材と第二の構造部材とからなり、
前記第一の構造部材は、前記複数の平面部の内で最も広い面積の平面部の四隅を絞り加工して四つの側面それぞれに複数の突部を形成したものであり、
前記第二の構造部材は、前記複数の平面部の内で最も広い面積の平面部の四隅を絞り加工して四つの側面それぞれに、前記第一の構造部材の突部に嵌め得る突部を形成したものであり、
前記第一の構造部材の下側に前記第二の構造部材を配して重ね合わせ、
重ね合わせにより対応する平面部同士をカシメて接合するとともに、前記側面の突部同士をプレス締結して、板状に構成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2枚の薄板プレス部品を重なり合う平面で複数箇所を圧入カシメにより接合し、側面は複数箇所をプレス締結により接合するため、精度の高い溶接治具やロボット溶接機が不要となり、加工業者を選ばずに寸法精度の高い構造体を作成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施対象に係る電子写真方式の画像形成装置の断面図
【図2】本発明による構造体を備える画像形成装置の構造体の斜視図
【図3】本実施形態による構造体を備える画像形成装置の下部骨格体の斜視図
【図4】同じくベース部の分解斜視図
【図5】同じくカシメ箇所とプレス締結箇所を示すベース部の斜視図
【図6】同じくプレス締結箇所について示す概念的断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態では、ベース部を2枚の薄板プレス部品で構成する。プレス部品は、絞り加工された平面を有し、最も広い面積を備える面部の四隅を絞り加工によって突出させ、側面は絞り加工により形成する。2枚の薄板プレス部品の一枚は、側面に、くさび状の突部を複数配置した第一の構造部材である。他の一枚は、絞り加工された平面を有し、最も広い面積を備える面部の四隅を絞り加工によって突出させ、側面に円柱状の突起を複数配置した第二の構造部材である。これらの重なり合う平面同士の複数箇所をTOX(登録商標)と称される圧入カシメ(以下、TOX(登録商標)カシメ、と記載する。)により接合し、側面はくさび状の突起を円柱状の突部にプレス締結する。すると、2枚の薄板プレス部品が1枚の板状部材として構成される。精度の高い溶接治具やロボット溶接機は不要である。したがって、加工業者を選ばずに寸法精度の高い構造体が作成可能である。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施対象に係る電子写真方式の画像形成装置の断面図である。図示の画像形成装置100は、光学装置200により光を照射され、4つの作像装置100Y、100C、100M、100Bkによりそれぞれ画像形成された4色のトナー像は、転写装置300にて各色のトナーが重ねられ、シート材Pに転写される。一方、シート材供給装置400に積載されたシート材Pは給紙コロ410によりピックアップされ、レジストローラ420から転写装置300にまで搬送され、シート材Pにトナー像が転写される。その後シート材Pはトナー像を定着する定着装置500により加熱定着され、シート材排出ローラ600まで搬送され、シート材積載部700にシート材が積載される。画像形成装置100においては、以上の工程にてシート材に画像が形成される。また、この画像形成装置において、各種装置は、後述する図2に示すような筐体の所定位置に配置され固定され、各装置の位置関係が定められている。
【0016】
図2は本発明による構造体を備える画像形成装置の構造体の斜視図である。図示した構造体は、上部骨格体1と下部骨格体2を有し、上部骨格体1は画像形成装置の原稿読取装置、書込光学装置、作像装置(感光体、現像ユニット、転写ユニット、クリーニングユニット等)や、定着装置等を支持するものである。また下部骨格体2は画像形成装置のシート材供給装置(給紙ユニットや給紙トレイ等)を支持する。上部骨格体1は、下部骨格体2に設ける位置決めピンにより、位置決めする構造である。
【0017】
図3は本実施形態による構造体を備える画像形成装置の下部骨格体の斜視図である。上部骨格体1は、下部骨格体2に設けた2本の位置決めピンにより、位置決めする。また下部骨格体2は、底部に位置するベース部3と、四隅に配置される支柱部4と、チャンネル状に形成された複数の部材を組み合わせた骨格部材5とを組み合わせ、溶接によって一体に固着したものである。固着はもちろん溶接以外の手段によってもよい。
【0018】
図4は上述したベース部3の分解斜視図であり、図5はベース部3の斜視図である。図示のように上側の第一の構造部材6は、薄板プレス部品であり、絞り加工された平面を複数有する。図示の例では4段の平面部が形成してある。そして、最も広い面積を備えかつ外周を構成する面部(図の例では図の上方から第2段目の面部6d)の四隅を絞り加工によって突出させ、それによって、面積が小さい4つの島状の平面を有する突部6aを形成し、各突部6aの第2段目の面6dに連なる側面は、絞り加工により斜面状に形成してある。また中央部分には、隅丸長方形の開口61が設けてある。開口61の形状は、円形、隅丸正方形等々、種々の形状を採用可能である。
【0019】
また下側の第二の構造部材7は、第一の構造部材6と同様に薄板プレス部品であり、絞り加工された平面を複数有する。そして、最も広い面積を備えかつ最も外周側の面部7dの四隅を絞り加工によって突出させ、それによって、頂部の平坦面の面積が小さい4つの円柱状の突部7aを4つ設けてある。この突部7aの個数と位置は、第一の構造部材6の4つの島状の突部6aに対応している。開口61には、底面部7eが対応している。
【0020】
また、各突部7aの最も外側の面部7dに連なる側面は、絞り加工により斜面状に形成してあり、第一の構造部材6の突部6aに下側から嵌めることができるようになっている。なお、第一の構造部材6及び第二の構造部材7の前記以外の面部とそれらに連なる各側面も斜面状に形成してある。
【0021】
そして、第一の構造部材6及び第二の構造部材7は互いに嵌め込み、第一の構造部材6の突部6aの下面側に第二の構造部材7の突部7aを嵌め、隅丸矩形環状の平面部6bの下面側に同形状の第二の構造部材7の平面部7bを位置させて受ける。さらに第一の構造部材6の平面部6cを第二の構造部材7の平面部7c上に重ね合わせ、ついで、例えばプレス工程にて実施するTOX(登録商標)カシメにより接合する。
【0022】
突部6a及び突部7aはキャスタ取付部である。画像形成装置の全高をできるだけ低く抑えるために、突部6a及び平面部7aを上側へ突出させ、四隅に配置される支柱部4が形成する空間内へ突出する形状としてある。なお、絞り加工により成形しているため、剛性が高められている。
【0023】
その他の平面部6b、7b等でも、上述したように、絞り加工により成形して構造体としての剛性を高めてある。そして、平面部6b及び平面部7bの接合及び各側面の締結により、第一の構造部材6及び第二の構造部材7の間に空洞部が形成され、環状の平面部の存在により、擬似的なパイプ構造を構成し、これによってもベース部3としての剛性を高めることを可能としてある。なお、図5中の符号31で示す×印はTOX(登録商標)カシメ箇所を、符号32で示すO印はプレス締結箇所を示す。
【0024】
図6は、前記プレス締結箇所について示す概念的断面図である。第一の構造部材6の側面60は既述のように絞り加工により成形し、くさび状の突起8を4面に複数配置してある。第二の構造部材7の側面70は曲げ加工により成形し、円柱状の突起9を4面に複数配置してある。本実施形態では、第一の構造部材6が第二の構造部材7を覆うように組み合わせ、くさび状の突起8を円柱状の突起9に嵌合させ、プレス加工により締結する。
【0025】
すなわち、第一の構造部材6と第二の構造部材7の重なり合う平面同士を複数のTOX(登録商標)カシメにより接合し、第一の構造部材6の側面に成形した複数のくさび状の突起8と、第二の構造部材7の側面に成形した複数の円柱状の突起9をプレス締結することによって、ベース部3を1枚の板状部材として構成する。このとき、第二の構造部材7の底面部7eは第一の構造部材6の開口61に対応位置して上方から見える(図2、図3参照)。なお、発明者の行った実験では、重なり合う平面部同士の接合箇所を、例えば42箇所以上のTOX(登録商標)カシメで接合することで、また、側面部を一面当たり例えば10〜14箇所のプレス締結で接合することにより、画像形成装置用にアーク溶接にて接合している従来の構造体と同等の剛性が確保できた。
【0026】
なお、本明細書において使用したTOX(登録商標)は、トックスプレッソテクニック(TOX PRESSOTECHNIK)社の登録商標である。
【0027】
また、本発明は前述の実施の形態に限定されるわけではなく、適宜な変更を行うことにより、その他の実施の形態でも実施し得るものである。すなわち、第一の構造部材6と第二の構造部材7をリベットカシメで締結することが可能である。あるいは、第一の構造部材6と第二の構造部材7をスリットバーリングで締結することも可能である。
【0028】
また既述のように、第一の構造部材6が、最も広い面積を備える面部に大きな開口61を有する構成とすることで軽量化が可能となり、また図示は省略するが、2枚の薄板プレス部品の間に形成される空間部分に、他部品と干渉することなく給紙バンクの除湿ヒーター等を配置することが可能となる。
【0029】
そして、前記構造部材を画像形成装置の装置本体としての底面部をなすように配置した画像形成装置においては、高精度かつ高剛性な構造部材が装置底面部に配置されることにより、給紙ユニット等の位置精度が保持され、装置全体の剛性が高まるため、最終的に高精度な画像品質を維持できるようになる。
【0030】
またさらに多くの変形も、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能であろう。
【符号の説明】
【0031】
1:上部骨格体
2:下部骨格体
3:ベース部
4:支柱部
5:骨格部材
6:構造部材
6a:突部
6b:平面部
6c:平面部
6d:外周を構成する面部
7:構造部材
7a:突部
7b:平面部
7c:平面部
7d:外周を構成する面部
7e:底面部
8:突起
9:突起
60:側面
61:開口
70:側面
100:画像形成装置
100Y〜100Bk:作像装置
200:光学装置
300:転写装置
400:シート材供給装置
410:給紙コロ
420:レジストローラ
500:定着装置
600:シート材排出ローラ
700:シート材積載部
P:シート材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開平06−175419公報
【特許文献2】特開2004−264705公報
【特許文献3】特開2002−16384公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ絞り加工した金属の薄板であって、ともに複数の平面部を有する第一の構造部材と第二の構造部材とからなり、
前記第一の構造部材は、前記複数の平面部の内で最も広い面積の平面部の四隅を絞り加工して四つの側面それぞれに複数の突部を形成したものであり、
前記第二の構造部材は、前記複数の平面部の内で最も広い面積の平面部の四隅を絞り加工して四つの側面それぞれに、前記第一の構造部材の突部に嵌め得る突部を形成したものであり、
前記第一の構造部材の下側に前記第二の構造部材を配して重ね合わせ、
重ね合わせにより対応する平面部同士をカシメて接合するとともに、前記側面の突部同士をプレス締結して、板状に構成してなることを特徴とする画像形成装置用の構造体。
【請求項2】
前記重ね合わせで対応する平面同士の接合は、前記第一の構造部材及び前記第二の構造部材のそれぞれ2つ以上の高さが異なる平面同士で接合することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置用の構造体。
【請求項3】
前記第一の構造部材は、前記複数の面部の内で最も内側の面部に略円形状又は隅丸の矩形状の大きな開口部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置用の構造体。
【請求項4】
前記重なり合う平面同士を圧入カシメにより接合してなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置用の構造体。
【請求項5】
前記重なり合う平面同士をリベットカシメにより接合してなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置用の構造体。
【請求項6】
前記重なり合う平面同士をスリットバーリングにより接合してなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置用の構造体。
【請求項7】
前記2枚の薄板プレス部品の間に形成される空間部分に、画像形成装置用の他部品を配置可能としてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置用の構造体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置用の構造体で画像形成装置の装置本体の底面部を構成してなることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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