説明

画像形成装置

【課題】 高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 その頂部が同一高さとなっている第1および第2ローラ51,52を含むローラ群5により潜像担持ベルト6が循環移動される。このため、潜像担持ベルト6は、ローラ51、52間で、そのベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動する。このように水平移動する水平移動領域に対応して液滴噴射ヘッド7および電荷付与部8が潜像担持ベルト6の上方側に配置されている。そして、水平状態のベルト表面の上方より液滴WLを噴射することで液滴像Wが潜像担持ベルト表面に形成される。このため、液滴像Wは安定して形成される。また、こうして形成された液滴像Wは水平姿勢のままニップ部NPまで水平移動される。このため、、ニップ部NPへの移動中における液滴像Wの乱れを抑えることができる。その結果、潜像Sの安定形成が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潜像担持ベルトに電荷注入することにより潜像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビームプリンタ、複写機やファクシミリ装置などの画像形成装置では、光導電層を持つ感光体を帯電させた後、画像信号に対応した光ビームを感光体に照射して潜像を形成し、これを現像剤で顕像化している。また、画質を向上させるために、例えば特許文献1に記載されているように、小粒径トナーに対して現像キャリアとして重合法で作成された樹脂キャリアを用いるとともに、感光体としてアモルファスシリコンドラムを用いることが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−345054号公報([0002]、[0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ビームを用いて潜像を形成する画像形成装置では、潜像の電位分布はガウシアン分布となり、スポット径は一般的に60〜80μm程度である。したがって、トナー粒径を小さくしたとしても、潜像自体が大きく、かつブロード(ガウシアン分布)となっているため、高画質化には一定の限界があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、高品質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、画像信号に対応するトナー像を形成する画像形成装置であって、上記目的を達成するため、第1および第2ローラを含むローラ群と、ローラ群に掛け渡されて所定方向に循環移動する潜像担持ベルトと、潜像担持ベルトの表面に向けて画像信号に応じて液滴を噴射して潜像担持ベルトに付着させて画像信号に対応する液滴像を形成する液滴噴射ヘッドと、潜像担持ベルトの移動方向における液滴像形成位置の下流側で、液滴像が形成された潜像担持ベルト表面に当接してニップ部を形成する電荷付与部と、電荷付与部に帯電バイアスを印加してニップ部において潜像担持ベルトを注入帯電させて液滴像に対応する潜像を形成する電荷付与制御手段と、潜像を現像する現像手段とを備え、第1および第2ローラ間で記潜像担持ベルトがベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動するように、第1および第2ローラは配置される一方、潜像担持ベルトがベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動する水平移動領域に対応して液滴噴射ヘッドおよび電荷付与部が潜像担持ベルトの上方側に配置されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明では、画像信号に応じて液滴が潜像担持ベルトに噴射付着されて画像信号に対応した液滴像が形成される。そして、ニップ部では潜像担持ベルト上の液滴を介して電荷付与部により注入帯電が実行されて該潜像担持ベルトに画像信号に対応した潜像が形成される。このように本発明は従来とは全く異なる方法により潜像を形成している。すなわち、液滴を用いて潜像を形成しているため、光ビームを用いた潜像形成とは異なりシャープな潜像が得られる。その結果、該潜像を現像することで形成されるトナー像もシャープが画像となり、画像品質を高めることができる。それに加えて、水平移動領域に対応して液滴噴射ヘッドおよび電荷付与部を潜像担持ベルトの上方側に配置しているため、次に説明するように、潜像を安定して形成することができる。すなわち、水平状態のベルト表面の上方より液滴が噴射されて液滴像が水平姿勢の潜像担持ベルト表面に形成されるため、液滴像を安定して形成することができる。また、こうして形成された液滴像はそのままニップ部まで水平移動されるため、ニップ部への移動中における液滴像の乱れを抑えることができる。その結果、上記したように潜像の安定形成が可能となる。
【0008】
ここで、液滴噴射ヘッドの配設位置については、次のように構成することができる。例えば液滴噴射ヘッドは潜像担持ベルト表面に対して液滴を垂直に噴射するように配置してもよい。このように構成することによって、液滴噴射ヘッドから噴射される液滴は潜像担持ベルト表面に対して直交することとなり、液滴を確実にベルト表面に押し付けて液滴像を確実に形成することができる。また、液滴噴射ヘッドを第1ローラの上方位置に配置したり、第1および第2ローラの間に設けられるバックアップ部材の上方位置に配置してもよく、このような配置状態で液滴噴射ヘッドから第1ローラやバックアップ部材に向けて噴射すると、第1ローラやバックアップ部材により裏面側から潜像担持ベルトが支持された状態で該ベルト表面に液滴が付着することとなる。したがって、潜像担持ベルトがばたつくことなく、液滴が付着されて画像信号に対応する液滴像を正確に形成することができる。
【0009】
ところで、潜像担持ベルト上に形成された液滴像はニップ部で電荷付与部と接触することとなる。ここで、液滴の一部が電荷付与部に付着し、そのまま残存してしまうと、潜像形成に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、電荷付与部の表面層を撥水性樹脂で形成するのが望ましい。というのも、このように撥水性樹脂層を形成することによりニップ部で液滴像を接触した際に液滴が電荷付与部に付着するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<ニップ部での液滴介在による効果>
本願発明の主要な構成要件のひとつが液滴を用いて液滴像を形成するとともに、該液滴像を介して潜像担持体を注入帯電させて液滴像に対応する潜像を形成する点である。このように液滴を用いることの技術的意義について検証結果を踏まえて詳述し、その後で本発明にかかる実施形態について説明する。
【0011】
潜像担持体に電荷注入することで該潜像担持体に潜像を形成するという技術に関しては、従来より周知であるが、潜像担持体に当接して電荷を付与する電荷付与部(従来技術における帯電部材や書込部材などに相当)と潜像担持体との接触状態によって接触抵抗が変動し、潜像担持体への潜像の形成精度に大きな影響を与えることがある。これは、潜像担持体と電荷付与部とのニップ部において潜像担持体を注入帯電する際に潜像担持体への帯電効率を向上させるには、該ニップ部における潜像担持体と電荷付与部との接触状態が非常に重要であることを示している。そこで、本願発明者は種々の物質を該ニップ部に介在させるとともに、それらの介在により潜像担持体と電荷付与部との接触状態の改善が認められるか否かを検証したところ、エタノールなどの液滴像をニップ部に介在させた状態で注入帯電を行うことで潜像担持体の帯電効率を高めることが可能となるという知見を得た。
【0012】
上記検証を行うべく、潜像担持体に帯電ローラ(本発明の「電荷付与部」に相当)を接触させ、その接触部分において帯電ローラによって潜像担持体表面を注入帯電する際に、潜像担持体と帯電ローラとのニップ部に種々の物質を介在させ、それぞれの場合の潜像担持体表面の帯電効率を比較した。この際、ニップ部の一の部分には物質を介在させ、他の部分には物質を介在させない状態で注入帯電を行い、それぞれの部分の帯電効率を比較している。
【0013】
図1は、上記した方法により得た潜像担持体の帯電効率の示す図である。同図は潜像担持体表面の表面電位を示す図であり、横軸を時間(S)、縦軸を表面電位(V)としたものである。潜像担持体と帯電ローラとのニップ部に介在させる物質として、低級アルコールであるエタノールを用いている。同図中の実線は、ニップ部においてエタノールが介在している一の部分の表面電位を示しており、破線はエタノールの介在していない他の部分の表面電位を示している。なお、時刻0で、帯電ローラによって潜像担持体の表面電位が所定の表面電位V0となるように予め設定した帯電バイアスが帯電ローラに印加されている。
【0014】
図1から明らかなように、帯電ローラに帯電バイアスが印加されると、液滴像が介在している潜像担持体の表面位置は瞬時に略設定電位V0に注入帯電される。ところが、液滴像が介在していない潜像担持体の表面位置は、液滴像が介在している潜像担持体の表面位置に比べ帯電効率が悪く、注入帯電されない。このように、この検証結果から、ニップ部において、エタノール等の液滴を部分的に介在させることによって、潜像担持体表面の任意の位置に注入帯電を行い該潜像担持体表面に任意の形状の潜像を形成することができるという知見が得られた。
【0015】
そこで、本実施形態はこれらの知見に基づき液滴を利用して潜像担持体、特に感光体ベルトなどの潜像担持ベルトに潜像を形成している。以下、図面を参照しつつ、各実施形態について詳述する。
【0016】
<実施形態>
図2は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図3は図2の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。さらに図4は図2の部分拡大斜視図である。この装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成するカラー印刷処理、およびブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する単色印刷処理を選択的に実行する画像形成装置である。この画像形成装置1では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令(印刷指令)がメインコントローラ3に与えられると、このメインコントローラ3のCPU31からの指令に応じてエンジンコントローラ4がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、普通用紙、厚紙およびOHP用透明シートなどのシート(記録材)SHに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
本実施形態の画像形成装置1では、図2に示すように、3個のローラ51〜53からなるローラ群5に対して潜像担持ベルト6が掛け渡されており、図示を省略する駆動モータによるローラ駆動によって潜像担持ベルト6が所定の移動方向D6に循環移動する。また、この実施形態では、3個のローラのうちローラ51、52がローラ53より上方位置で移動方向D6にこの順序で配置されている。すなわち、ローラ51が移動方向D6においてローラ52よりも上流側に配置されている。また、ローラ51、52の頂部が同一高さとなっている。このため、ローラ群5により循環移動される潜像担持ベルト6は、ローラ51、52間で、そのベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動する。なお、この明細書では、このようにベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動する領域HRを「水平移動領域」と称する。また、上記説明から明らかなように、ローラ51、52はそれぞれ本発明の「第1ローラ」、「第2ローラ」に相当している。
【0018】
また、この潜像担持ベルト6の周囲に移動方向D6に沿って、液滴噴射ヘッド7、電荷付与部8、4色の現像部9(9Y,9M,9C,9K)、クリーナ部10および除電部11が配設されている。この実施形態では、液滴噴射ヘッド7は図2および図4に示すように第1ローラ51の上方位置に配置されている。また、この液滴噴射ヘッド7は上記液滴として純水やエタノールなどの液体を貯留する液体貯留タンク(図示省略)と接続されている。そして、CPU41からの指令に応じてヘッド制御部43が画像形成指令に含まれる画像信号に対応して作動することで液滴噴射ヘッド7の先端噴射口71から第1ローラ51に向けて液滴WLを垂直直下噴射する。すなわち、液滴噴射ヘッド7は潜像担持ベルト6のベルト表面に対して液滴WLを垂直に噴射しており、これによって液滴噴射ヘッド7から噴射される液滴WLは潜像担持ベルト表面に対して直交することとなり、液滴WLを確実にベルト表面に押し付けて画像信号に対応する液滴像Wを確実に形成することができる。例えば、図4に示すように、全ての噴射口71から液滴が吐出された場合には、液滴像形成位置P7で潜像担持ベルト6の表面上に一本のライン状の液滴像が形成される。なお、液滴噴射ヘッド7から潜像担持ベルト6に吐出される液滴WLとしては、純水を用いることができるが、例えば、揮発性を有するエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを用いてもよい。なお、本実施形態では上述した実験結果より、液滴としてエタノールを用いて液滴像Wを形成している。
【0019】
潜像担持ベルト6の移動方向D6において、液滴像形成位置P7の下流側には帯電ローラなどにより構成された電荷付与部8が潜像担持ベルト6は挟んで第2ローラ52に対向配置されて潜像担持ベルト6の移動方向D6に従動する方向D8に回転自在となっている。そして、この電荷付与部8は潜像担持ベルト6に当接することによりニップ部NPを形成している。また、この電荷付与部8には、電荷付与制御部44が電気的に接続されており、所定のバイアスが電荷付与部8に印加されることによって、潜像担持ベルト6はニップ部NPにおいて電荷付与部8により注入帯電されて液滴位置が選択的に帯電されて画像信号に対応する潜像S(図4)が潜像担持ベルト6の表面層に形成される。
【0020】
こうして形成された潜像Sは現像部9の現像ローラ91に担持されているトナーによって顕像化される(現像工程)。この装置1では、4色の現像部9(9Y,9M,9C,9K)が潜像担持ベルト6に沿って上下方向に配置されている。各現像部9は、現像剤担持体としての現像ローラ91、供給ローラ92、2つのアジテータ93、94および層厚規制ブレード95を備えており、各現像ローラ91を潜像担持ベルト6の表面に接触または離間させることができるように、水平方向に移動可能に構成されている。そして、現像部9に収容されているトナーは、アジテータ94、93の回転により供給ローラ92に送り込まれ、さらに供給ローラ92の回転により、現像ローラ91に供給される。さらに、現像ローラ91上に供給されたトナーは、現像ローラ91の回転に伴って、層厚規制ブレード95と現像ローラ91との間に進入し、ここで摩擦帯電されて、一定の厚さの薄層として現像ローラ91上に担持される。
【0021】
また、現像制御部45からの制御指令に基づいて、4色の現像部9(9Y,9M,9C,9K)のうちの一の現像部9が潜像担持ベルト6に選択的に近接位置決めされると、当該現像部に設けられて選択された色の帯電トナーを担持するとともに所定の現像バイアスを印加された金属製の現像ローラ91から潜像担持ベルト6の表面にトナーを付与する。これによって、潜像担持ベルト6上の潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0022】
そして、上記のようにして現像部9で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で矢印方向D12に回転駆動されている中間転写ドラム12上に一次転写される。また、この実施形態では、潜像担持ベルト6の移動方向D6において1次転写位置TR1の下流側に、潜像担持ベルト6の表面をクリーナ部10が設けられており、潜像担持ベルト6の表面に当接することで1次転写後に潜像担持ベルト6の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。さらにクリーナ部10の下流側に除電部11が設けられており、除電制御部46により駆動制御されて潜像担持ベルト6の表面を除電する。
【0023】
上記のように潜像担持ベルト6が周回する間に潜像担持ベルト6上にトナー像が色単位で形成されるが、カラー画像をシートSHに転写する場合には、潜像担持ベルト6上に形成される各色のトナー像を中間転写ドラム12上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、二次転写ローラ13を離間位置(破線位置)から転写位置(実線位置)に移動させ、カセット14から1枚ずつ取り出され搬送経路に沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくるシートSH上にカラー画像を二次転写する。
【0024】
このとき、中間転写ドラム12上の画像をシートSH上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSHを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラ15が設けられており、中間転写ドラム12の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラ15が回転することにより、シートSHが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0025】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSHは加熱ローラ16と加圧ローラ17からなる定着ユニット18に搬送される。この加熱ローラ16には発熱体161が内蔵されており、エンジンコントローラ4のCPU41からの指令に応じて定着制御部42が作動し、発熱体161をコントロールすることで最適な定着温度に制御される。これによりシートSHに転写されたトナー像が熱定着される。さらに、このように熱定着されたシートSHは図示を省略する排出ローラを経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイに搬送される。
【0026】
なお、図3において、符号33はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース32を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ3に設けられた画像メモリである。また、符号48はCPU41が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶したり、CPU41における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するメモリである。
【0027】
次に潜像担持ベルト6上にトナー像Tを形成する工程について図5を参照しつつ詳述する。図5は本実施形態において潜像担持ベルト6上にトナー像Tが形成されるまでの工程を示す模式図である。
【0028】
(1)液滴像形成工程(図5(a))
ヘッド制御部43からの制御信号に従って複数の噴射口71のうち選択された噴射口71から潜像担持ベルト6の表面に向けて液滴WLが吐出される。そして、液滴像形成位置P7において画像信号に対応した液滴像Wが潜像担持ベルト6上に形成される。液滴噴射ヘッド7は液滴像形成位置P7において第1ローラ51の鉛直上方に固定されているが、潜像担持ベルト6は矢印方向D6に移動している。したがって、複数の噴射口71の液滴噴射タイミングを画像信号に応じて制御することにより、潜像担持ベルト6上には画像信号に対応した液滴像Wを形成することができる(図5(a)平面図参照)。
【0029】
(2)潜像形成工程(図5(b))
液滴像形成工程で形成された液滴像Wは、潜像担持ベルト6の移動に伴って、潜像担持ベルト6と電荷付与部8とが形成するニップ部NPに搬送される。そして、電荷付与制御部44から電荷付与部8に所定のバイアスが印加されることによって、ニップ部NPにおいて、潜像担持ベルト6上の液滴像Wの位置へ注入帯電が選択的に実行される。このように注入帯電が実行されることによって、潜像担持ベルト6の表面に画像信号に対応した潜像Sが形成される(図5(b)平面図参照)。なお、ニップ部NPに介在する液滴WLの作用効果は上記した実験結果に基づいている。
【0030】
また、液滴像Wを形成する液滴として揮発性を有するエタノールを用いている。そのため、ニップ部NPにおいて潜像担持ベルト6の表面の液滴像Wの位置へ注入帯電が実行されて潜像Sが形成された後、形成された潜像Sが潜像担持ベルト6の移動に伴って次の現像工程位置へ搬送される過程で該液滴像Wは揮発する。
【0031】
(3)現像工程(図5(c))
潜像形成工程で形成された潜像Sは、潜像担持ベルト6の移動に伴って現像位置(潜像担持ベルト6と現像ローラ91とが対向している位置)に搬送される。このとき、上記したように、潜像Sが現像位置へ搬送される過程で、液滴像Wは潜像担持ベルト6の表面から揮発除去されている。そして、現像位置において、現像ローラ91から潜像担持ベルト6へトナーが付与されることによって潜像Sは現像されて、潜像担持ベルト6の表面に画像信号に対応したトナー像Tが形成される(図5(c)平面図参照)。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、液滴WLによって画像信号に対応した液滴像Wを潜像担持ベルト6に形成する。そして、潜像担持ベルト6上の液滴像Wの位置へ電荷付与部8により注入帯電して該潜像担持ベルト6上に画像信号に対応した潜像Sを形成している。すなわち、ニップ部NPにおいて、液滴像Wが介在する位置でのみ電荷付与部8から潜像担持ベルト6への注入帯電が行われ、潜像担持ベルト6に潜像Sが形成される。したがって、画像信号に対応した液滴像Wと同一形状の潜像Sが潜像担持ベルト6上に形成される。よって、潜像担持ベルト6への静電潜像形成を安定して行うことができる。このように、潜像担持ベルト6に液滴像Wを介して電荷付与部8により注入帯電を実行した場合、液滴像Wを介さない場合に比べて注入帯電効率が極めて向上するとともに安定した注入帯電が行われることは、上記した「ニップ部での液滴介在による効果」の項で説明したとおりである。また、このように形成された潜像Sを現像してトナー像Tを得ているので、良好なトナー像Tを得ることができる。
【0033】
また、液滴WLを用いて潜像Sを形成しているため、光ビームを用いた潜像形成とは異なりシャープな潜像が得られる。例えば液滴噴射ヘッド7としてインクジェット方式のヘッドを採用した場合、液滴の容量を2ピコリットル程度に設定することができる。この場合には液滴の直径は約15μm程度となり、スポット径が60〜80μm程度となってしまう光ビーム露光方式に比べて高細密な潜像を形成することができる。
【0034】
また、この実施形態では、水平移動領域HRに対応して液滴噴射ヘッド7および電荷付与部8を潜像担持ベルト6の上方側に配置しているため、潜像Sを安定して形成することができる。すなわち、水平状態のベルト表面の上方より液滴WLを噴射することで液滴像Wが水平姿勢の潜像担持ベルト表面に形成されるため、液滴像Wを安定して形成することができる。また、こうして形成された液滴像Wは水平姿勢のままニップ部NPまで水平移動されるため、ニップ部NPへの移動中における液滴像Wの乱れを抑えることができる。その結果、潜像Sの安定形成が可能となる。
【0035】
また、液滴噴射ヘッド7から噴射される液滴WLが潜像担持ベルト表面に対して直交するように、液滴噴射ヘッド7は第1ローラ51の上方位置に配置されているので、液滴WLを確実にベルト表面に押し付けて液滴像Wを形成する。しかも、ベルト裏面側に第1ローラ51は存在しているため、潜像担持ベルト6がばたつくことなく、液滴WLが付着される。したがって、画像信号に対応する液滴像Wを正確に形成することができる。
【0036】
さらに、この実施形態では、液滴WLとして、揮発性を有するエタノールを用いて液滴像Wを形成している。したがって、ニップ部NPに液滴像Wが介在した状態で、該ニップ部NPにおいて潜像担持ベルト6へ電荷付与部8によって潜像Sが形成された後、該潜像Sが潜像担持ベルト6の移動に伴ってニップ部NPから離れていく過程で潜像担持ベルト6の表面からエタノールである液滴像Wは揮発する。よって、液滴像Wを潜像担持ベルト6の表面から除去するのになんらかの手段を講じる必要がない。また、液滴像Wが低級アルコールであるエタノールによって形成されているため、その洗浄効果により潜像担持ベルト6の表面をさらに清潔に保つことができる。
【0037】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、第1ローラ51の上方位置に液滴噴射ヘッド7を配置しているが、第1および第2ローラ51,52の中間位置に配置してもよい。ただし、その中間位置ではベルトのばたつきが発生することがあるため、図6に示すように、液滴像形成位置P7に対応してベルト裏面側にバックアップ部材19を設けるのが望ましい。このようにバックアップ部材19を設けることで液滴像形成位置P7でのベルトのばたつきを防止することができる。つまりバックアップ部材19の上方位置で、かつバックアップ部材19に向けて液滴WLを噴射するように液滴噴射ヘッド7を配置することで、上記実施形態と同様に、潜像担持ベルト6がばたつくことなく、液滴WLを付着することができ、その結果、画像信号に対応する液滴像Wを正確に形成することができる。
【0038】
また、潜像担持ベルト6上に形成された液滴像Wはニップ部NPで電荷付与部8と接触することとなるため、液滴の一部が電荷付与部8に付着し、そのまま残存してしまう可能性がある。このように電荷付与部8に液滴が残存してしまうと、潜像形成に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、電荷付与部8への液滴の残存を防止するためには、電荷付与部8の表面層を撥水性樹脂により形成してもよい。ここで、撥水性樹脂としてはフッ素樹脂が望ましく、例えば四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオルエチレン)、ポリトリフルオルクロルエチレン等があり、その他にフッ化ビニル・三フッ化エチレン・フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン・ジクロルジフルオルエチレン等の重合体および共重合体を用いることができる。このように構成することによって電荷付与部8への液滴付着を防止することができ、電荷付与を安定して行うことができる。
【0039】
また、上記実施形態では、カラー画像形成装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、単色の画像形成を行う画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】潜像担持体の帯電効率の示す模式図。
【図2】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図3】図2の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】図2の画像形成装置の要部拡大図。
【図5】潜像担持体にトナー像が形成されるまでの工程を示す模式図。
【図6】本発明にかかる画像形成装置の他の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1…画像形成装置、5…ローラ群、 6…潜像担持ベルト、 7…液滴噴射ヘッド、 8…電荷付与部、 9,9Y,9M,9C,9K…現像部(現像手段)、 44…電荷付与制御部、 51…第1ローラ、 52…第2ローラ、 D6…(潜像担持ベルトの)移動方向、 NP…ニップ部、 P7…液滴像形成位置、 S…潜像、 T…トナー像、 W…液滴像、 WL…液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に対応するトナー像を形成する画像形成装置において、
第1および第2ローラを含むローラ群と、
前記ローラ群に掛け渡されて所定方向に循環移動する潜像担持ベルトと、
前記潜像担持ベルトの表面に向けて前記画像信号に応じて液滴を噴射して前記潜像担持ベルトに付着させて前記画像信号に対応する液滴像を形成する液滴噴射ヘッドと、
前記潜像担持ベルトの移動方向における液滴像形成位置の下流側で、前記液滴像が形成された前記潜像担持ベルト表面に当接してニップ部を形成する電荷付与部と、
前記電荷付与部に帯電バイアスを印加して前記ニップ部において前記潜像担持ベルトを注入帯電させて前記液滴像に対応する潜像を形成する電荷付与制御手段と、
前記潜像を現像する現像手段とを備え、
前記第1および第2ローラ間で記潜像担持ベルトがベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動するように、前記第1および第2ローラは配置される一方、
前記潜像担持ベルトがベルト表面を上方に向け、しかも略水平状態で移動する水平移動領域に対応して前記液滴噴射ヘッドおよび前記電荷付与部が前記潜像担持ベルトの上方側に配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記液滴噴射ヘッドは前記潜像担持ベルト表面に対して液滴を垂直に噴射する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1ローラは前記潜像担持ベルトの移動方向において前記第2ローラの上流側に配置され、
前記液滴噴射ヘッドは前記第1ローラの上方位置に配置されるとともに、前記第1ローラに向けて液滴を噴射する請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1および第2ローラの間で、しかも前記潜像担持ベルトの裏面側に配置されて前記潜像担持ベルトを裏面側より水平支持するバックアップ部材をさらに備え、
前記液滴噴射ヘッドは前記バックアップ部材の上方位置に配置されるとともに、前記バックアップ部材に向けて液滴を噴射する請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電荷付与部は撥水性樹脂で形成された表面層を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−243088(P2006−243088A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55361(P2005−55361)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】