画像形成装置
【課題】いかなる使用環境下においても長期にわたって画像の中抜けおよび飛び散りを防止し、クリーニングブレードのめくれも防止された画像形成装置の提供。
【解決手段】固形潤滑材が塗布された第1像担持体1および第2像担持体2を有し、第1像担持体上に形成されたトナー画像が第2像担持体に転写される画像形成装置であって、第1像担持体に塗布される第1固形潤滑材の純水接触角θ1と、第2像担持体に塗布される第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、θ1>θ2の関係を満たす画像形成装置。
【解決手段】固形潤滑材が塗布された第1像担持体1および第2像担持体2を有し、第1像担持体上に形成されたトナー画像が第2像担持体に転写される画像形成装置であって、第1像担持体に塗布される第1固形潤滑材の純水接触角θ1と、第2像担持体に塗布される第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、θ1>θ2の関係を満たす画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライン画像や文字画像の中抜け防止といった転写性向上の観点から、表面に高離型層がコーティングされた感光体を使用したり、ステアリン酸亜鉛の固形物をファーブラシで感光体上に塗布し、感光体表面の離型性を向上させるといったことが行われてきた。しかし前者の感光体表面に高離型層を設ける場合、例えばフッ素微粒子を分散させた樹脂層をコーティングすることが行われているが、層を厚くするとフッ素微粒子が画像露光を散乱させ結果的に画像劣化してしまい、層を薄くすると耐久に伴う摩耗で層がすぐになくなり、結果的に長寿命化が達成できないといった課題があった。そこで、後者の感光体表面に固形潤滑材をファーブラシで塗布する方式が高画質化および長寿命化の両立を行う上で有利であり、広く実用化されてきている。
【0003】
しかし上記のような感光体に固形潤滑材を塗布するようにした画像形成装置の場合、その塗布量が周囲の環境で大きく変動してしまう。例えば低温低湿環境においては、ファーブラシの毛が硬くなってしまうため固形潤滑材をより多く削り、感光体に過剰に供給することになる。中間転写体を使用するような画像形成装置の場合、感光体への過剰な供給は結果的に不具合を発生する。つまり感光体で飽和した潤滑材は、感光体から中間転写体に回り込んでしまい、中間転写体の表面離型性も向上する。ある程度の離型性向上は紙への2次転写が有利になるのであるが、必要以上の離型性向上がなされると、感光体と中間転写体の離型性が接近してくることから、感光体から中間転写体への1次転写で転写できなくなるといった不具合(中抜け)が発生してしまう。
【0004】
上記不具合を解決するため、例えば、感光体の表面張力≦中間転写体の表面張力となるように、感光体の塗布量を中間転写体の塗布量(ともにステアリン酸亜鉛)よりも多くすることが提案されている(特許文献1)。しかし、感光体に固形潤滑材が多く塗布されるような条件では、中間転写体への回り込みが発生し、結果的に感光体の表面張力≦中間転写体の表面張力の関係を維持できなくなった。すなわち長期の使用時において転写性が低下し、中抜けが発生した。また、感光体の表面張力=中間転写体の表面張力の場合には初期から十分な転写性が確保できなかった。
【0005】
また例えば、中間転写体の摩擦係数−感光体の摩擦係数>−0.1になるようにすることが提案されている(特許文献2)。しかし転写性能は摩擦係数ではなく表面エネルギー(=離型性)に支配的であることが知られており、やはり転写性向上には不充分であった。
【特許文献1】特開平8−211755号公報
【特許文献2】特開2000−19858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、いかなる使用環境下においても、長期にわたって画像の中抜けを防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、いかなる使用環境下においても、長期にわたって画像の中抜けだけでなく、画像の飛び散りも防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、いかなる使用環境下においても、長期にわたって画像の中抜けおよび飛び散りを防止し、クリーニングブレードのめくれも防止された画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、固形潤滑材が塗布された第1像担持体および第2像担持体を有し、第1像担持体上に形成されたトナー画像が第2像担持体に転写される画像形成装置であって、第1像担持体に塗布される第1固形潤滑材の純水接触角θ1と、第2像担持体に塗布される第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、θ1>θ2の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置は、使用環境の変動等によってたとえ固形潤滑材の塗布量(供給量)が多くなりすぎても、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。すなわち、第1固形潤滑材が第2像担持体に回り込んだとしても、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。また画像の飛び散りも防止できる。さらにはクリーニングブレードのめくれも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の画像形成装置の一実施形態を図1に示す。図1に示す画像形成装置は、少なくとも第1像担持体(感光体)1および第2像担持体(中間転写体)2を有し、第1像担持体1上に形成されたトナー画像が第2像担持体2に転写されるものであり、通常は、さらに現像部3、感光体クリーニング部4、帯電チャージャー5、露光手段6、中間転写体クリーニング部7、1次転写ローラ8、および2次転写ローラ9が備わっている。図1において現像プロセスとしていわゆるタンデムプロセスを採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、4サイクルプロセスを採用してもよく、またフルカラー用またはモノクロ用であってもよい。また第2像担持体2として、ベルト形状を有する中間転写ベルトを使用しているが、この他にもドラム形状のものであっても良い。
【0012】
図1〜図3を用いて画像形成装置の動作について説明する。図2は、第1像担持体1、現像部3、感光体クリーニング部4、帯電チャージャー5および露光手段6からなるイメージングユニット部20の拡大構成図であり、図3は中間転写体クリーニング部7の拡大構成図である。
【0013】
まず、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の各イメージングユニット20において、帯電、露光、現像、転写およびクリーニングが行われる。詳しくは、帯電チャージャー5によって一様に帯電された感光体(第1像担持体)1上に、露光手段6によって画像データに基づいて変調された書込光(画像露光)を照射して、感光体1上に静電潜像を形成し、この静電潜像の形成された感光体に現像部3によりトナーを供給してトナー画像を感光体上に形成して現像する。形成されたトナー画像は1次転写ローラ部8でローラに印加された電圧によって中間転写体(第2像担持体)2に静電的に転写される。感光体とトナー間にはファンデルワールス力が働いているので静電的に転写することができないトナー、いわゆる転写残トナーが感光体上に残る。転写残トナーは感光体クリーニング部4でクリーニングブレード10により掻き取る等の方法により回収される。またクリーニング部4には、ロール状に形成された回転可能な塗布ブラシ11と、固形潤滑材(第1の固形潤滑材)12とが配備されており、固形潤滑材12は押圧バネ13により塗布ブラシに押圧され、塗布ブラシ11は感光体に接触した状態で保持されている。塗布ブラシ11は感光体の回転に伴って回転駆動され、固形潤滑材12から潤滑材を掻き取る。掻き取られた潤滑材は感光体表面に塗布され、クリーニングブレード10で引き伸ばされるようにして感光体表面にコーティングされる。
【0014】
次いで、各色のイメージングユニット20で形成された感光体(第1像担持体)1上のトナー画像は、中間転写体(第2像担持体)2上に順次転写され、最終的にフルカラー画像を形成する。形成されたフルカラー画像は2次転写ローラ9で記録紙に転写された後、定着部(図示せず)で加熱・加圧して記録紙上にトナーを定着させ排出する。
【0015】
中間転写体2表面に残留したトナーは中間転写体クリーニング部7でクリーニングブレード15により掻き取る等の方法により回収される。また中間転写体クリーニング部7には、イメージングユニット20のクリーニング部4と同様に塗布ブラシ16と、固形潤滑材(第2の固形潤滑材)17と押圧バネ18とが配備されており、潤滑材が中間転写体表面にコーティングされる。
【0016】
本発明において感光体(第1像担持体)1に塗布される第1固形潤滑材12と中間転写体(第2像担持体)2上に塗布される第2固形潤滑材17とは、純水に対する接触角(純水接触角)が異なるものを用い、詳しくは第1固形潤滑材の純水接触角θ1と第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、下式(I);
θ1>θ2 (I)
の関係、好ましくは下式(II);
10°≦θ1−θ2≦30° (II)
の関係を満たす。そのような関係を満たす第1および第2固形潤滑材を用いることによって、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。すなわち、使用環境の変動等によって塗布供給量が増大し、たとえ第1固形潤滑材が第2像担持体に回り込んだとしても、第2像担持体には純水接触角が比較的小さい別の第2固形潤滑材が塗布されるため、第1固形潤滑材の回り込みによる影響を有効に抑制できる。よって、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。θ1がθ2以下であると、比較的早期に中抜けが発生する。
【0017】
純水接触角とは、固形潤滑材を感光体表面に塗布し、形成された皮膜上に純水を滴下したときの接触角であり、物質固有の特性値である。純水接触角の詳しい測定方法を図4に示す。図4は円筒状の感光体(表面粗さRa:0.5μm程度)表面に固形潤滑材を塗布し、形成された皮膜上に純水の液滴を落としたときの模式図であるが、基本的には平面での測定と同じである。図4(A)は感光体の表面エネルギーが比較的大きい場合の模式図であり、図4(B)感光体の表面エネルギーが比較的小さい場合の模式図である。図4(A)のθaや図4(B)θbが純水接触角に相当する。液滴の量としては2〜5μLが適切であり、液滴を感光体表面に形成してからおよそ30秒以内で測定する必要がある。液滴を形成した後、真横から顕微鏡などで拡大観察し、液滴の頂上と側面の接触点を結んだ線と、感光体の稜線のなす角度(θ/2)を測定し、2倍した値が接触角θである。
【0018】
本発明においては上記式(II)を満たす第1固形潤滑材および第2固形潤滑材を用いることによって、中抜けをより有効に防止し、かつ飛び散りを防止することができる。飛び散りは、転写性が極端に良くなると弱い電界でもトナーが移動しやすくなり、感光体と中間転写体が接触する前の空間でトナーが移動することで、必要とする画像以外の部分に飛び散ったようにトナーが転写されてしまう現象である。
【0019】
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材としては、従来から、感光体および中間転写体の固形潤滑材として使用されている物質の中から式(I)、好ましくは式(II)の関係を満たすものを選択して使用すればよい。例えば、ステアリン酸、オレイン酸およびパルミチン酸等の脂肪酸およびそれらの金属塩等が使用可能である。好ましくは第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は脂肪酸金属塩、特にステアリン酸金属塩から選択されて使用される。
【0020】
ステアリン酸金属塩の具体例として、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる(これらの純水接触角は後述の図5参照)。
オレイン酸金属塩の具体例として、例えば、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸アルミニウム、オレイン酸バリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム等が挙げられる。
パルミチン酸金属塩の具体例として、例えば、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の式(I)を満たす組み合わせを以下に例示する。
(第1固形潤滑材,第2固形潤滑材)=
(1)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム)、
(2)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸マグネシウム)、
(3)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸バリウム)、
(4)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸)、
(5)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸ナトリウム)、
(6)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸マグネシウム)、
(7)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸バリウム)、
(8)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸リチウム)、
(9)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸)
(10)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(11)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸バリウム)、
(12)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸リチウム)、
(13)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸)、
(14)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(15)(ステアリン酸バリウム,ステアリン酸リチウム)、
(16)(ステアリン酸バリウム,ステアリン酸)、
(17)(ステアリン酸バリウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(18)(ステアリン酸リチウム,ステアリン酸)、
(19)(ステアリン酸リチウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(20)(ステアリン酸,ステアリン酸ナトリウム)
【0022】
上記組み合わせのうち、式(II)を満たすものとして、例えば、(1)、(4)、(8)、(9)、(12)、(13)、(15)、(16)、(18)、(20)等の組み合わせが挙げられる。
【0023】
本発明のより好ましい態様において、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は、式(I)、好ましくは式(II)を満たすだけでなく、摩擦力の低いものを選択して使用する。そのような固形潤滑材を組み合わせて使用することによって、中抜けや飛び散りだけでなく、感光体クリーニングブレードや中間転写体クリーニングブレードのめくれを防止できる。
【0024】
例えば、ステアリン酸金属塩の摩擦力と純水接触角の関係を図5に示す。粉末状の各種ステアリン酸金属塩を布につけ、感光体上にむらなく十分に塗布したものを用いた。摩擦力の測定は感光体の軸上に取り付けたトルク変換機(共和電業製TP−20KCE)を使用し、クリーニングブレードを20N/mの圧で当接し、トナー等を一切付着させない状態で感光体を駆動したときのトルクから算出したものである。
そのような摩擦力で10N以下、特に8N以下のものを使用することが好ましい。
【0025】
上記した式(II)を満たす組み合わせのうち、摩擦力の観点から好ましいものとして、例えば、(1)、(12)、(15)等の組み合わせが挙げられる。
【0026】
図1において第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は塗布ブラシを介して塗布されているが、この他にも発泡ゴムやソリッドゴムのローラ等で塗布されてもよいし、または当該固形潤滑材を直接的に感光体または中間転写体に当接させて塗布されても良い。
【0027】
本発明において第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量はそれぞれ、第1像担持体(感光体)および第2像担持体(中間転写体)の表面においてそれらの皮膜が形成される限り特に制限されるものではない。本発明において、特に、第1固形潤滑材の塗布量は多く設定されてもよい。たとえ第1固形潤滑材が第2像担持体に回り込んだとしても、画像の中抜けを有効に防止できるためである。そのような第1固形潤滑材の塗布量は通常、0.15〜0.7mg/m2の範囲内で継続して表面に存在するような量である。また第2固形潤滑材の塗布量は通常、0.05〜0.3mg/m2の範囲内で継続して表面に存在するような量である。塗布量は押圧バネ等を調整するなどして制御できる。
【0028】
第1固形潤滑材が塗布される第1像担持体は特に制限されず、通常は塗布前の表面で純水接触角70〜90°、摩擦係数0.2〜0.6が好適である。
【0029】
第2固形潤滑材が塗布される第2像担持体は特に制限されず、通常は塗布前の表面で純水接触角70〜90°、摩擦係数0.2〜0.6が好適である。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図1に示す構造を有するカラーMFP(コニカミノルタ社製)において、第1固形潤滑材としてステアリン酸亜鉛を、第2固形潤滑材としてステアリン酸リチウムを用いた画像形成装置を使用した。第1固形潤滑材の塗布量は押圧バネ等を調整するなどして感光体表面に0.5mg/m2の潤滑材が存在するように設定した。そのような第1固形潤滑材の塗布量は比較的過剰な量である。第2固形潤滑材の塗布量は押圧バネ等を調整するなどして中間転写体表面に0.2mg/m2の潤滑材が存在するように制御した。プリント速度はA4横の連続通紙で31枚/分である。使用したトナーは体積平均粒径が6.5μmの重合法トナーであり、付着量10g/m2のブルーのライン画像(シアンとマゼンタの2層重ね)を1000枚連続印字した。
【0031】
所定枚数の印字が完了するたびに、感光体表面の純水接触角θ3および中間転写体表面の純水接触角θ4を測定し、画像の中抜けおよび飛び散りならびにブレードめくれについて評価した。
θ3およびθ4は上述した図4に示す方法に準じて測定した。
【0032】
中抜けの評価結果についてはランク付けを行った。
5;ルーペ(倍率20倍)を用いても中抜けは全く観察できなかった;
4;ルーペで中抜けがわずかに観察できたが、目視では観察できず、実用上問題なかった;
3;目視で中抜けがわずかに観察できたが、実用上問題なかった;
2;目視で中抜けが観察でき、実用上問題があった;
1;中抜けが相当量観察できた。
【0033】
図6(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図6(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。飛び散りは連続印字終了時まで全く発生しなかった。また感光体のクリーニングブレードおよび中間転写体のクリーニングブレードのめくれは連続印字終了時まで全く発生しなかった。
【0034】
(比較例1)
第1固形潤滑材としてステアリン酸亜鉛を用い、第2固形潤滑材を用いなかったこと、第1固形潤滑材の塗布量を押圧バネ等を調整するなどして感光体表面に0.5mg/m2の潤滑材が存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
【0035】
図7(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図7(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。
【0036】
(実施例2)
第1固形潤滑材としてステアリン酸アルミニウムを、第2固形潤滑材としてステアリン酸ナトリウムを用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.5mg/m2および0.2mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図8(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図8(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。中抜けは耐久直後の200枚でランク5となり、その後もランク5で良好であった。飛び散りは200枚時点ではランク3で実用上問題ないレベルであったが、300枚時点ではランク1となりNGとなった。また700枚印字した時点で感光体のブレードめくれが発生した。
【0037】
(比較例2)
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材ともにステアリン酸亜鉛を用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.2mg/m2および0.1mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定した以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図9(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図9(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。第1固形潤滑剤および第2固形潤滑剤をともにステアリン酸亜鉛を塗布しており、それぞれの塗布量を通常量に設定しているため、実施例1や比較例1よりも純水接触角が飽和するまでの耐久枚数が多くなっている。また、第2固形潤滑剤の塗布量は第1固形潤滑剤の塗布量の半分に設定しているので、飽和した純水接触角θ4はθ3よりも6°ほど低くなっている。純水接触角の差(θ3−θ4)は最大で11°であり、また5000枚時点では6°となって飽和した。その結果、中抜けは最も良くなってランク3であり、最終的にはランク2となってNGであった。また耐久を通じてブレードめくれの発生はなかった。
【0038】
(実施例3)
第1固形潤滑材としてステアリン酸マグネシウムを、第2固形潤滑材としてステアリン酸リチウムを用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.5mg/m2および0.2mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図10(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図10(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。ステアリン酸マグネシウムはステアリン酸亜鉛よりも塗布性が劣るため、純水接触角が飽和するのが遅くなっているものの、概ねランク3以上を維持できている。
【0039】
(実施例4)
第1固形潤滑材としてステアリン酸バリウムを、第2固形潤滑材としてステアリン酸リチウムを用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.5mg/m2および0.2mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図11(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図11(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。
【0040】
なお、飛び散りのランクは以下のとおりである。
5:目視で飛び散りは全く観察できなかった;
3:目視で飛び散りがわずかに観察できたが、実用上問題なかった;
1:目視で飛び散りが観察でき、実用上問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態の概略構成図を示す。
【図2】図1に示す画像形成装置のイメージングユニット部の概略拡大図を示す。
【図3】図1に示す画像形成装置の中間転写体クリーニング部の概略拡大図を示す。
【図4】純水接触角の測定方法を説明するための模式図を示す。
【図5】ステアリン酸金属塩の摩擦力と純水接触角の関係を表すグラフを示す。
【図6】実施例1の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図7】比較例1の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図8】実施例2の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図9】比較例2の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図10】実施例3の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図11】実施例4の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【符号の説明】
【0042】
1;第1像担持体(感光体)、2;第2像担持体(中間転写体)、3;現像部、4;クリーニング部、5;帯電チャージャー、6;露光手段、7;クリーニング部、8;1次転写ローラ、9;2次転写ローラ、10;クリーニングブレード、11;塗布ブラシ、12;第1固形潤滑材、13;押圧バネ、15;クリーニングブレード、16;塗布ブラシ、17;第2固形潤滑材、18;押圧バネ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライン画像や文字画像の中抜け防止といった転写性向上の観点から、表面に高離型層がコーティングされた感光体を使用したり、ステアリン酸亜鉛の固形物をファーブラシで感光体上に塗布し、感光体表面の離型性を向上させるといったことが行われてきた。しかし前者の感光体表面に高離型層を設ける場合、例えばフッ素微粒子を分散させた樹脂層をコーティングすることが行われているが、層を厚くするとフッ素微粒子が画像露光を散乱させ結果的に画像劣化してしまい、層を薄くすると耐久に伴う摩耗で層がすぐになくなり、結果的に長寿命化が達成できないといった課題があった。そこで、後者の感光体表面に固形潤滑材をファーブラシで塗布する方式が高画質化および長寿命化の両立を行う上で有利であり、広く実用化されてきている。
【0003】
しかし上記のような感光体に固形潤滑材を塗布するようにした画像形成装置の場合、その塗布量が周囲の環境で大きく変動してしまう。例えば低温低湿環境においては、ファーブラシの毛が硬くなってしまうため固形潤滑材をより多く削り、感光体に過剰に供給することになる。中間転写体を使用するような画像形成装置の場合、感光体への過剰な供給は結果的に不具合を発生する。つまり感光体で飽和した潤滑材は、感光体から中間転写体に回り込んでしまい、中間転写体の表面離型性も向上する。ある程度の離型性向上は紙への2次転写が有利になるのであるが、必要以上の離型性向上がなされると、感光体と中間転写体の離型性が接近してくることから、感光体から中間転写体への1次転写で転写できなくなるといった不具合(中抜け)が発生してしまう。
【0004】
上記不具合を解決するため、例えば、感光体の表面張力≦中間転写体の表面張力となるように、感光体の塗布量を中間転写体の塗布量(ともにステアリン酸亜鉛)よりも多くすることが提案されている(特許文献1)。しかし、感光体に固形潤滑材が多く塗布されるような条件では、中間転写体への回り込みが発生し、結果的に感光体の表面張力≦中間転写体の表面張力の関係を維持できなくなった。すなわち長期の使用時において転写性が低下し、中抜けが発生した。また、感光体の表面張力=中間転写体の表面張力の場合には初期から十分な転写性が確保できなかった。
【0005】
また例えば、中間転写体の摩擦係数−感光体の摩擦係数>−0.1になるようにすることが提案されている(特許文献2)。しかし転写性能は摩擦係数ではなく表面エネルギー(=離型性)に支配的であることが知られており、やはり転写性向上には不充分であった。
【特許文献1】特開平8−211755号公報
【特許文献2】特開2000−19858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、いかなる使用環境下においても、長期にわたって画像の中抜けを防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、いかなる使用環境下においても、長期にわたって画像の中抜けだけでなく、画像の飛び散りも防止する画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、いかなる使用環境下においても、長期にわたって画像の中抜けおよび飛び散りを防止し、クリーニングブレードのめくれも防止された画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、固形潤滑材が塗布された第1像担持体および第2像担持体を有し、第1像担持体上に形成されたトナー画像が第2像担持体に転写される画像形成装置であって、第1像担持体に塗布される第1固形潤滑材の純水接触角θ1と、第2像担持体に塗布される第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、θ1>θ2の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像形成装置は、使用環境の変動等によってたとえ固形潤滑材の塗布量(供給量)が多くなりすぎても、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。すなわち、第1固形潤滑材が第2像担持体に回り込んだとしても、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。また画像の飛び散りも防止できる。さらにはクリーニングブレードのめくれも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の画像形成装置の一実施形態を図1に示す。図1に示す画像形成装置は、少なくとも第1像担持体(感光体)1および第2像担持体(中間転写体)2を有し、第1像担持体1上に形成されたトナー画像が第2像担持体2に転写されるものであり、通常は、さらに現像部3、感光体クリーニング部4、帯電チャージャー5、露光手段6、中間転写体クリーニング部7、1次転写ローラ8、および2次転写ローラ9が備わっている。図1において現像プロセスとしていわゆるタンデムプロセスを採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、4サイクルプロセスを採用してもよく、またフルカラー用またはモノクロ用であってもよい。また第2像担持体2として、ベルト形状を有する中間転写ベルトを使用しているが、この他にもドラム形状のものであっても良い。
【0012】
図1〜図3を用いて画像形成装置の動作について説明する。図2は、第1像担持体1、現像部3、感光体クリーニング部4、帯電チャージャー5および露光手段6からなるイメージングユニット部20の拡大構成図であり、図3は中間転写体クリーニング部7の拡大構成図である。
【0013】
まず、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)の各イメージングユニット20において、帯電、露光、現像、転写およびクリーニングが行われる。詳しくは、帯電チャージャー5によって一様に帯電された感光体(第1像担持体)1上に、露光手段6によって画像データに基づいて変調された書込光(画像露光)を照射して、感光体1上に静電潜像を形成し、この静電潜像の形成された感光体に現像部3によりトナーを供給してトナー画像を感光体上に形成して現像する。形成されたトナー画像は1次転写ローラ部8でローラに印加された電圧によって中間転写体(第2像担持体)2に静電的に転写される。感光体とトナー間にはファンデルワールス力が働いているので静電的に転写することができないトナー、いわゆる転写残トナーが感光体上に残る。転写残トナーは感光体クリーニング部4でクリーニングブレード10により掻き取る等の方法により回収される。またクリーニング部4には、ロール状に形成された回転可能な塗布ブラシ11と、固形潤滑材(第1の固形潤滑材)12とが配備されており、固形潤滑材12は押圧バネ13により塗布ブラシに押圧され、塗布ブラシ11は感光体に接触した状態で保持されている。塗布ブラシ11は感光体の回転に伴って回転駆動され、固形潤滑材12から潤滑材を掻き取る。掻き取られた潤滑材は感光体表面に塗布され、クリーニングブレード10で引き伸ばされるようにして感光体表面にコーティングされる。
【0014】
次いで、各色のイメージングユニット20で形成された感光体(第1像担持体)1上のトナー画像は、中間転写体(第2像担持体)2上に順次転写され、最終的にフルカラー画像を形成する。形成されたフルカラー画像は2次転写ローラ9で記録紙に転写された後、定着部(図示せず)で加熱・加圧して記録紙上にトナーを定着させ排出する。
【0015】
中間転写体2表面に残留したトナーは中間転写体クリーニング部7でクリーニングブレード15により掻き取る等の方法により回収される。また中間転写体クリーニング部7には、イメージングユニット20のクリーニング部4と同様に塗布ブラシ16と、固形潤滑材(第2の固形潤滑材)17と押圧バネ18とが配備されており、潤滑材が中間転写体表面にコーティングされる。
【0016】
本発明において感光体(第1像担持体)1に塗布される第1固形潤滑材12と中間転写体(第2像担持体)2上に塗布される第2固形潤滑材17とは、純水に対する接触角(純水接触角)が異なるものを用い、詳しくは第1固形潤滑材の純水接触角θ1と第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、下式(I);
θ1>θ2 (I)
の関係、好ましくは下式(II);
10°≦θ1−θ2≦30° (II)
の関係を満たす。そのような関係を満たす第1および第2固形潤滑材を用いることによって、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。すなわち、使用環境の変動等によって塗布供給量が増大し、たとえ第1固形潤滑材が第2像担持体に回り込んだとしても、第2像担持体には純水接触角が比較的小さい別の第2固形潤滑材が塗布されるため、第1固形潤滑材の回り込みによる影響を有効に抑制できる。よって、長期にわたって画像の中抜けを防止できる。θ1がθ2以下であると、比較的早期に中抜けが発生する。
【0017】
純水接触角とは、固形潤滑材を感光体表面に塗布し、形成された皮膜上に純水を滴下したときの接触角であり、物質固有の特性値である。純水接触角の詳しい測定方法を図4に示す。図4は円筒状の感光体(表面粗さRa:0.5μm程度)表面に固形潤滑材を塗布し、形成された皮膜上に純水の液滴を落としたときの模式図であるが、基本的には平面での測定と同じである。図4(A)は感光体の表面エネルギーが比較的大きい場合の模式図であり、図4(B)感光体の表面エネルギーが比較的小さい場合の模式図である。図4(A)のθaや図4(B)θbが純水接触角に相当する。液滴の量としては2〜5μLが適切であり、液滴を感光体表面に形成してからおよそ30秒以内で測定する必要がある。液滴を形成した後、真横から顕微鏡などで拡大観察し、液滴の頂上と側面の接触点を結んだ線と、感光体の稜線のなす角度(θ/2)を測定し、2倍した値が接触角θである。
【0018】
本発明においては上記式(II)を満たす第1固形潤滑材および第2固形潤滑材を用いることによって、中抜けをより有効に防止し、かつ飛び散りを防止することができる。飛び散りは、転写性が極端に良くなると弱い電界でもトナーが移動しやすくなり、感光体と中間転写体が接触する前の空間でトナーが移動することで、必要とする画像以外の部分に飛び散ったようにトナーが転写されてしまう現象である。
【0019】
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材としては、従来から、感光体および中間転写体の固形潤滑材として使用されている物質の中から式(I)、好ましくは式(II)の関係を満たすものを選択して使用すればよい。例えば、ステアリン酸、オレイン酸およびパルミチン酸等の脂肪酸およびそれらの金属塩等が使用可能である。好ましくは第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は脂肪酸金属塩、特にステアリン酸金属塩から選択されて使用される。
【0020】
ステアリン酸金属塩の具体例として、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる(これらの純水接触角は後述の図5参照)。
オレイン酸金属塩の具体例として、例えば、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸アルミニウム、オレイン酸バリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム等が挙げられる。
パルミチン酸金属塩の具体例として、例えば、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸バリウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の式(I)を満たす組み合わせを以下に例示する。
(第1固形潤滑材,第2固形潤滑材)=
(1)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸リチウム)、
(2)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸マグネシウム)、
(3)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸バリウム)、
(4)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸)、
(5)(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸ナトリウム)、
(6)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸マグネシウム)、
(7)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸バリウム)、
(8)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸リチウム)、
(9)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸)
(10)(ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(11)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸バリウム)、
(12)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸リチウム)、
(13)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸)、
(14)(ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(15)(ステアリン酸バリウム,ステアリン酸リチウム)、
(16)(ステアリン酸バリウム,ステアリン酸)、
(17)(ステアリン酸バリウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(18)(ステアリン酸リチウム,ステアリン酸)、
(19)(ステアリン酸リチウム,ステアリン酸ナトリウム)、
(20)(ステアリン酸,ステアリン酸ナトリウム)
【0022】
上記組み合わせのうち、式(II)を満たすものとして、例えば、(1)、(4)、(8)、(9)、(12)、(13)、(15)、(16)、(18)、(20)等の組み合わせが挙げられる。
【0023】
本発明のより好ましい態様において、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は、式(I)、好ましくは式(II)を満たすだけでなく、摩擦力の低いものを選択して使用する。そのような固形潤滑材を組み合わせて使用することによって、中抜けや飛び散りだけでなく、感光体クリーニングブレードや中間転写体クリーニングブレードのめくれを防止できる。
【0024】
例えば、ステアリン酸金属塩の摩擦力と純水接触角の関係を図5に示す。粉末状の各種ステアリン酸金属塩を布につけ、感光体上にむらなく十分に塗布したものを用いた。摩擦力の測定は感光体の軸上に取り付けたトルク変換機(共和電業製TP−20KCE)を使用し、クリーニングブレードを20N/mの圧で当接し、トナー等を一切付着させない状態で感光体を駆動したときのトルクから算出したものである。
そのような摩擦力で10N以下、特に8N以下のものを使用することが好ましい。
【0025】
上記した式(II)を満たす組み合わせのうち、摩擦力の観点から好ましいものとして、例えば、(1)、(12)、(15)等の組み合わせが挙げられる。
【0026】
図1において第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は塗布ブラシを介して塗布されているが、この他にも発泡ゴムやソリッドゴムのローラ等で塗布されてもよいし、または当該固形潤滑材を直接的に感光体または中間転写体に当接させて塗布されても良い。
【0027】
本発明において第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量はそれぞれ、第1像担持体(感光体)および第2像担持体(中間転写体)の表面においてそれらの皮膜が形成される限り特に制限されるものではない。本発明において、特に、第1固形潤滑材の塗布量は多く設定されてもよい。たとえ第1固形潤滑材が第2像担持体に回り込んだとしても、画像の中抜けを有効に防止できるためである。そのような第1固形潤滑材の塗布量は通常、0.15〜0.7mg/m2の範囲内で継続して表面に存在するような量である。また第2固形潤滑材の塗布量は通常、0.05〜0.3mg/m2の範囲内で継続して表面に存在するような量である。塗布量は押圧バネ等を調整するなどして制御できる。
【0028】
第1固形潤滑材が塗布される第1像担持体は特に制限されず、通常は塗布前の表面で純水接触角70〜90°、摩擦係数0.2〜0.6が好適である。
【0029】
第2固形潤滑材が塗布される第2像担持体は特に制限されず、通常は塗布前の表面で純水接触角70〜90°、摩擦係数0.2〜0.6が好適である。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図1に示す構造を有するカラーMFP(コニカミノルタ社製)において、第1固形潤滑材としてステアリン酸亜鉛を、第2固形潤滑材としてステアリン酸リチウムを用いた画像形成装置を使用した。第1固形潤滑材の塗布量は押圧バネ等を調整するなどして感光体表面に0.5mg/m2の潤滑材が存在するように設定した。そのような第1固形潤滑材の塗布量は比較的過剰な量である。第2固形潤滑材の塗布量は押圧バネ等を調整するなどして中間転写体表面に0.2mg/m2の潤滑材が存在するように制御した。プリント速度はA4横の連続通紙で31枚/分である。使用したトナーは体積平均粒径が6.5μmの重合法トナーであり、付着量10g/m2のブルーのライン画像(シアンとマゼンタの2層重ね)を1000枚連続印字した。
【0031】
所定枚数の印字が完了するたびに、感光体表面の純水接触角θ3および中間転写体表面の純水接触角θ4を測定し、画像の中抜けおよび飛び散りならびにブレードめくれについて評価した。
θ3およびθ4は上述した図4に示す方法に準じて測定した。
【0032】
中抜けの評価結果についてはランク付けを行った。
5;ルーペ(倍率20倍)を用いても中抜けは全く観察できなかった;
4;ルーペで中抜けがわずかに観察できたが、目視では観察できず、実用上問題なかった;
3;目視で中抜けがわずかに観察できたが、実用上問題なかった;
2;目視で中抜けが観察でき、実用上問題があった;
1;中抜けが相当量観察できた。
【0033】
図6(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図6(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。飛び散りは連続印字終了時まで全く発生しなかった。また感光体のクリーニングブレードおよび中間転写体のクリーニングブレードのめくれは連続印字終了時まで全く発生しなかった。
【0034】
(比較例1)
第1固形潤滑材としてステアリン酸亜鉛を用い、第2固形潤滑材を用いなかったこと、第1固形潤滑材の塗布量を押圧バネ等を調整するなどして感光体表面に0.5mg/m2の潤滑材が存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
【0035】
図7(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図7(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。
【0036】
(実施例2)
第1固形潤滑材としてステアリン酸アルミニウムを、第2固形潤滑材としてステアリン酸ナトリウムを用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.5mg/m2および0.2mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図8(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図8(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。中抜けは耐久直後の200枚でランク5となり、その後もランク5で良好であった。飛び散りは200枚時点ではランク3で実用上問題ないレベルであったが、300枚時点ではランク1となりNGとなった。また700枚印字した時点で感光体のブレードめくれが発生した。
【0037】
(比較例2)
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材ともにステアリン酸亜鉛を用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.2mg/m2および0.1mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定した以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図9(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図9(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。第1固形潤滑剤および第2固形潤滑剤をともにステアリン酸亜鉛を塗布しており、それぞれの塗布量を通常量に設定しているため、実施例1や比較例1よりも純水接触角が飽和するまでの耐久枚数が多くなっている。また、第2固形潤滑剤の塗布量は第1固形潤滑剤の塗布量の半分に設定しているので、飽和した純水接触角θ4はθ3よりも6°ほど低くなっている。純水接触角の差(θ3−θ4)は最大で11°であり、また5000枚時点では6°となって飽和した。その結果、中抜けは最も良くなってランク3であり、最終的にはランク2となってNGであった。また耐久を通じてブレードめくれの発生はなかった。
【0038】
(実施例3)
第1固形潤滑材としてステアリン酸マグネシウムを、第2固形潤滑材としてステアリン酸リチウムを用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.5mg/m2および0.2mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図10(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図10(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。ステアリン酸マグネシウムはステアリン酸亜鉛よりも塗布性が劣るため、純水接触角が飽和するのが遅くなっているものの、概ねランク3以上を維持できている。
【0039】
(実施例4)
第1固形潤滑材としてステアリン酸バリウムを、第2固形潤滑材としてステアリン酸リチウムを用い、第1固形潤滑材および第2固形潤滑材の塗布量をそれぞれ0.5mg/m2および0.2mg/m2の潤滑材が表面に存在するように設定したこと以外、実施例1と同様の方法で連続印字および評価を行った。
図11(A)に純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を示し、図11(B)に「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を示した。
【0040】
なお、飛び散りのランクは以下のとおりである。
5:目視で飛び散りは全く観察できなかった;
3:目視で飛び散りがわずかに観察できたが、実用上問題なかった;
1:目視で飛び散りが観察でき、実用上問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態の概略構成図を示す。
【図2】図1に示す画像形成装置のイメージングユニット部の概略拡大図を示す。
【図3】図1に示す画像形成装置の中間転写体クリーニング部の概略拡大図を示す。
【図4】純水接触角の測定方法を説明するための模式図を示す。
【図5】ステアリン酸金属塩の摩擦力と純水接触角の関係を表すグラフを示す。
【図6】実施例1の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図7】比較例1の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図8】実施例2の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図9】比較例2の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図10】実施例3の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【図11】実施例4の画像形成装置に関し、(A)は純水接触角θ(θ3およびθ4)と耐久枚数との関係を表すグラフを示し、(B)は「θ3−θ4」と耐久枚数との関係および中抜けの評価結果と耐久枚数との関係を表すグラフを示す。
【符号の説明】
【0042】
1;第1像担持体(感光体)、2;第2像担持体(中間転写体)、3;現像部、4;クリーニング部、5;帯電チャージャー、6;露光手段、7;クリーニング部、8;1次転写ローラ、9;2次転写ローラ、10;クリーニングブレード、11;塗布ブラシ、12;第1固形潤滑材、13;押圧バネ、15;クリーニングブレード、16;塗布ブラシ、17;第2固形潤滑材、18;押圧バネ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形潤滑材が塗布された第1像担持体および第2像担持体を有し、第1像担持体上に形成されたトナー画像が第2像担持体に転写される画像形成装置であって、第1像担持体に塗布される第1固形潤滑材の純水接触角θ1と、第2像担持体に塗布される第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、θ1>θ2の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
第1固形潤滑材の純水接触角θ1と第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、10°≦θ1−θ2≦30°の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項1】
固形潤滑材が塗布された第1像担持体および第2像担持体を有し、第1像担持体上に形成されたトナー画像が第2像担持体に転写される画像形成装置であって、第1像担持体に塗布される第1固形潤滑材の純水接触角θ1と、第2像担持体に塗布される第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、θ1>θ2の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
第1固形潤滑材の純水接触角θ1と第2固形潤滑材の純水接触角θ2とが、10°≦θ1−θ2≦30°の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
第1固形潤滑材および第2固形潤滑材は脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−330216(P2006−330216A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151785(P2005−151785)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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